JP3561108B2 - 水素化方法及び電解槽 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、有機化合物や無機化合物あるいはガス単体の水素化又は還元反応を電解を利用して効率良くかつ連続的に更に高電流効率で行なうための方法及び電解槽に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
有機化合物の水素化(水素添加)反応は種々の化学分野で利用され、例えば石油のクラッキング反応では重質油を水素化することによりガソリンや灯油が得られ、又タール分の水素化により液状にして、より合目的な使用条件に適合させることなどの水素化反応が実際に利用され、更に不飽和炭化水素を対応する飽和炭化水素に転化する反応にも水素化が利用される。更にこの反応は有機化合物のみならず無機物質にも利用され、例えば酸素ガスの還元(水素化)による過酸化水素の製造、及び窒素と水素の反応によるアンモニア合成等が工業的に行なわれている。
【0003】
この水素化反応は通常均一系で進行し、つまり被反応物を反応槽中で接触触媒の存在下に水素を添加しながら反応が行なわれ、パラジウムなどの貴金属が不飽和炭化水素の水素化反応の優れた触媒であることが知られている(S. Siegel, in Comprehensive Organic Synthesis, ed., B. M. Trost and I. Fleming, Pergamon Press, Oxford, 1991, vol. 8) 。このような反応では高圧水素を使用するため高圧容器が必要でありかつ反応温度も比較的高いことが多く、更に使用する水素の純度によっては爆発の危険があるなどの問題点があった。更に反応選択性も十分でなく副反応生成物が生ずるという欠点もあった。
【0004】
反応選択性を高めしかもエネルギー消費を減少させるために不均一系反応である電解還元法が採用されることがある [▲1▼ A. M. Couper, D. Pletcher and F. C. Walsh, Chem. Rev., 1990, 90, 837, ▲2▼ T. Nonaka, M. Takahashi and T. Fuchigami, Bull. Chem. Soc. Jpn., 183 56, 2584. ▲3▼ M. A. Casadei and D. Pletcher, Electrochim. Acta, 33, 117 (1988), ▲4▼ T. Yamada, T. Osa and T. Matsue, Chem. Lette., 1989(1987), ▲5▼ L. Coche, B. Ehui, and J. C. Moutet, J. Org. Chem., 55, 5905 (1990), ▲6▼ J. C. Moutet, Y. Ouennoughi, AOurari and S. Hamar−Thibault, Electrochim. Acta, 40, 1827 (1995)]。ラネーニッケル等の大表面積を有する電極触媒を使用すると電気化学的に水素化反応を行なうことが可能であり良好な電力効率が期待できるとともに、操作が安全かつ容易になるという特徴がある。しかし電解で有機反応を行なうためには被反応物自身が導電性であるか、そうでない場合には添加物を加えて被反応物を含む電解液を導電性とする必要がある。有機化合物の多くは非導電性であり添加物を加えることによる反応系の複雑化等の問題がある。
更に添加物を加えることによって操作が複雑化するとともに、不純物レベルが高くなるという問題点もある。
均一系及び不均一系のいずれの触媒を使用する場合でも触媒上に生成した原子状水素が水素化反応を促進する機能を有することが知られている。
【0005】
安全かつ高効率で水素化反応を行なう他の方法として、パラジウムや水素吸蔵金属合金等の水素を保持できる金属と接触させる方法が知られている[K. Ohkawa, K. Hashimoto, A. Fujishima, Y. Noguchi and S. Nakayama, J. Electroanal. Chem., 345, 445 (1993)] 。前述のパラジウム及び水素吸蔵金属合金の多くが触媒作用を有するため、又パラジウムや他の水素吸蔵金属中の水素は活性な水素として強い反応性を有するため、該パラジウム等が水素供給源及び水素化触媒として機能し有機化合物の水素化方法として高い機能を示すと言われている。しかしこのパラジウム又は水素吸蔵金属合金を使用する水素化反応ではその中に吸蔵できる水素量に限界があるため、反応の進行に従って吸蔵水素が枯渇し、より以上の反応が進行しなくなり、所謂バッチ式の反応しか進行しないという欠点があり、実験室規模では問題がないが、工業的規模では連続的な操業が不可能であり、極めて非能率であるという問題点があった。
【0006】
本発明者らは、この問題点を解決するために、陽極及び水素吸蔵材料から成る陰極を有する電解槽の前記陰極の前記陽極との反対面に被反応物を接触させながら電解を行ない、前記陰極で発生する活性水素を吸蔵しかつ該陰極の陽極との反対面側に透過させたこの活性水素により前記被反応物の水素化を行なう方法及び電解槽を提案している(特願平7−352862号)。この方法では実用的に理論発生水素の93%程度の電流効率を得ているが、被反応物の種類によってはこの電流効率がかなり低くなることがある。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、前述の従来技術の問題点、つまり均一系の水素化反応における高圧容器の必要性や爆発の危険性、通常の電解による水素化反応における添加物の添加、及び水素吸蔵金属合金の吸蔵水素の枯渇の問題点を一挙に解決し、安全、容易かつ確実に実施でき、更に本発明者らが提案した前記水素化方法及び電解槽を使用するよりも高電流効率で被反応物の水素化反応を実施できる方法及び電解槽を提供することを目的とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段】
本発明方法は、陽極及び水素吸蔵材料から成る陰極を有する電解槽の前記陰極の前記陽極との反対面に被反応物を接触させながら電解を行ない、前記陰極で発生し吸蔵、透過した活性水素により前記被反応物の水素化を行なう水素化方法において、前記陰極の水素化室側に多孔性の水素吸蔵体を電気的に接続し、該水素吸蔵体により前記被反応物の水素化を行なうことを特徴とする被反応物の水素化方法であり、本発明の電解槽は、水素吸蔵材料から成る陰極により、陽極を含む電解室と被反応物が供給され水素化される水素化反応室に区画され、該水素化反応室に前記陰極に電気的に接続された多孔性の水素吸蔵体を充填したことを特徴とする被反応物の水素化用電解槽である。
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明方法の特徴は、水電解等によりその表面で発生する水素を吸蔵して貯蔵する機能を有する水素吸蔵性材料から成る陰極内に発生水素を原子状水素として吸蔵し、更にこの吸蔵水素を前記陰極の被反応物側に存在する水素吸蔵体方向に導きかつ該水素吸蔵体に吸蔵させることにより、水素吸蔵能を有する材料の絶対量を増加させかつ被反応物との接触面積を十分大きく取ることを可能にして前記陰極で発生する水素を効率良く前記被反応物の水素化反応に使用することを可能にするものである。
【0010】
この水素吸蔵性材料から成る陰極及び水素吸蔵体を使用すると電解の継続に伴って連続して生成する水素を最大水素吸蔵量の範囲内で連続的に吸蔵できるとともに、いわゆる原子状水素又は活性水素が連続的に供給されるので、従来の水素吸蔵金属との接触/水素化反応のように水素が枯渇することがなく、連続的な有機化合物の水素化反応や無機物質の水素化や還元を高効率で進行させることができる。又従来の均一系反応と異なり高温及び高圧が不要でかつ水素の爆発の危険性も回避できる。
前記水素化室側表面に透過した水素はいわゆる原子状水素又は活性水素として被反応物と直ちに反応することが可能である。
【0011】
本発明方法では、多孔性の水素吸蔵体が前記水素化室内に前記陰極に電気的に接続されている状態で存在するため、前記陰極の水素化室側に透過した活性水素は該水素化室内に被反応物が存在しなくても、前記多孔性水素吸蔵体に吸蔵される。吸蔵された水素は該水素吸蔵体内に保持され、被反応物と接触すると該被反応物を水素化して消費される。従って本発明方法では発生した活性水素が被反応物に接触せずに浪費されることが殆どなく、発生した水素の実質的に全部が被反応物の水素化あるいは還元に使用されるため、高電流効率での運転が可能になる。
しかも陰極の電解室側表面で連続して生成する水素を水素化すべき被反応物が存在する水素化室に透過して連続的に供給できるため水素の枯渇がなく、連続的な水素化あるいは還元反応を進行させることができる。更に電解槽が前記陰極により電解室と水素化室に区画されているため、電解室内の電解液と水素化室内の被反応物が混合することがなく、極めて高い純度に保持されるとともに、一旦生成した水素化又は還元化合物が酸化されて水素化前の有機化合物等に戻ることがない。又従来の均一系反応と異なり高温及び高圧が不要でかつ水素の爆発の危険性も回避できる。
【0012】
更に本発明の電解槽では、前記水素化室内に前記水素吸蔵体を充填しているため、該水素吸蔵体に吸蔵された水素と被反応物の接触頻度が高くなり、水素化反応の速度が増大する。
本発明では陰極反応が水素発生反応になるように電解反応を選択し、最も好ましい電解反応は水電解反応である。通常水電解反応は比較的濃厚な水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム水溶液を電解液として使用する。その反応式は
O + e → Had + OH ▲1▼
(式中、Hadは吸着水素)であり、陰極により電解槽が電解室と水素化室に区画されており、原子状水素が電解室側の陰極表面に生成し、陰極自体を透過して水素化室側表面に達し、該表面上に吸着状態で保持される。該吸着水素は次に式▲2▼(式中Habは吸蔵水素)に従って吸蔵状態に変換される。
ad → Hab ▲2▼
このHabが水素化室中の被反応物と直接反応し、あるいは一旦水素化室内の水素吸蔵体に吸蔵された後に、前記水素吸蔵体を水素化又は還元し、目的の生成物が得られる。
【0013】
本発明により水素化又は還元可能な物質としては有機化合物及び無機単体又は化合物がある。有機化合物の水素化反応としては、二重結合又は三重結合を有する脂肪族又は芳香族不飽和炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、1−オクテンや2−オクテン、アセチレン、スチレン等の対応する飽和炭化水素への還元反応があり、該反応によりそれぞれエタン、プロパン、n−オクテン、n−オクテン、エタン、エチルベンゼンが生成する。又パラフィン等の長鎖炭化水素を結合を水素化により切断し2種類以上の短鎖炭化水素を生成させること(クラッキング)も可能である。この他に、ベンズアルデヒドの水素化によるベンジルアルコールの生成やニトロベンゼンの水素化によるニトロソベンゼンやアニリンの生成に本発明を適用することもできる。
無機物質としては、硝酸イオン、酸素、二酸化炭素等があり、例えば硝酸イオンは、窒素ガス、アンモニアガス等に分解又は還元されて大気中に放散される。
【0014】
本発明では、陰極として前述の通り水素吸蔵性及び水素透過性機能を有する材料を使用し、該材料は水素化反応に対する触媒活性を有することが望ましい。代表的な金属としてパラジウムがあり、パラジウムは水素の透過能が極めて高いことが知られておりしかも水素化に対する触媒活性があるため最も好ましい金属の1つであり、パラジウム・銀合金等のパラジウム合金も使用可能である。他の好ましい代表的な金属又は合金として、ランタン・ニッケル合金等の希土類金属合金やミッシュメタル・ニッケル合金や、水素吸蔵が可能なチタンやジルコウニム合金がある。特にニッケル基水素吸蔵合金は水素解離触媒活性が強いため、水素添加反応に対するより活性な触媒としての作用があるので、より望ましい。
【0015】
本発明で使用するこれらの陰極の形状は前述の通り、電解室と水素化室を区画する形状を有すること以外は特に限定されないが、陰極の電解室側表面で生成した水素が該陰極の反対面に出来るだけ速くかつ出来るだけ多く移動することが必要であり、そのためには陰極中の水素の拡散速度が十分に速いこと、水素の濃度勾配が大きいことが望ましい。更に水素化反応をスムーズに進行させるためには被反応物と陰極との接触面積が十分に大きいことが好ましく、そのためには接触部分の表面が十分に荒れていることが望ましい。表面粗化のためには陰極表面をブラスト処理したりエッチング処理を行なうことが望ましい。処理の程度は特に限定されないがブラスト処理は15〜20メッシュ程度のアルミナグリッドを使用することが良く、これにより実質表面積が2〜3倍になる。
【0016】
水素化(還元)反応を効率良く進行させるためには陰極の厚さは薄いことが望ましいが、一方陰極としての機械的強度を十分に有しかつ通電量を確保するためにはある程度の厚さが必要である。これらを加味して陰極の厚さが決定され、通常は0.01〜2mmが望ましい。又工業設備として使用する場合には、薄箔状の水素透過金属に、その支持体及び給電体を兼ねてその裏側に金属メッシュを張り付けても良い。この薄箔状の水素透過金属から成る陰極の強度が不十分である場合には支持体を併用することが望ましく、この場合には水素吸蔵合金の存在しない電解室側に支持体を設置する。
前述の水素化室内に陰極と電気的接続が維持された状態で存在しあるいは前記水素化室内に充填される水素吸蔵体は、前記陰極で例示した材料から選択することが望ましく、被反応物との接触効率を向上させるために多孔性とする。前記被反応物との接触効率を考慮すると、水素化室内全体に充填することが望ましいが、前記陰極側にのみ偏在させること等も可能である。
一方陽極としてはニッケルやステンレススチールが好ましく使用できるが、他の材質例えば炭素等も使用可能である。
【0017】
前記陰極で電解槽を電解室と水素化室に区画し更に該陰極に水素吸蔵体を電気的に接続した状態で電解を行なうと、陽極から酸素が陰極からは水素がそれぞれ発生する。しかし条件にも依るが本発明では発生する水素はそのまま陰極に吸収されガス発生は殆ど観察されない。この水素は陰極内を透過し水素化室側に透過するが、その透過速度は水素の拡散係数、濃度差及び温度により決定する。
水素化室側に透過した水素は該水素化室中に存在する有機化合物等の被反応物と接触し該被反応物を水素化又は還元するか、一旦前記水素吸蔵体に吸蔵された後、被反応物と接触して該被反応物を水素化する。
水素吸蔵能が陰極単独の場合より飛躍的に増大し、10A/dm以上の大電流密度下での電解でも発生水素は前記陰極あるいは水素吸蔵体に吸蔵され、浪費されることが殆どない。水素化反応速度は水素が十分供給されていると、水素化室側の陰極表面積と多孔性水素吸蔵体の表面積にほぼ比例する。従って陰極のみを水素吸蔵体として使用する場合と比較して反応速度も大幅に向上する。
【0018】
電解条件は特に限定されないが、水素発生速度が水素化室側で消費される水素量より大きいと過剰の水素が陰極に吸収されずに電解室側にガスとして発生する。又水素発生速度が小さ過ぎると水素化室での被反応物の水素化反応速度がその分低下する。従って電流密度は水素化室での水素化反応で消費される水素に見合った量の水素が電解により生ずるように設定することが望ましく、通常は0.1 〜10A/dmが好ましく、1〜5A/dmが特に好ましい。なお処理される被反応物は液状である必要はなく、ガス状であっても固体であっても良い。ガス状の場合は加圧ガスをそのまま、又は加圧して水素化室にガスを通じれば良く、より良く反応を行なわせるためには該陰極に吹き付けるようにすれば良い。又固体の場合には、溶媒に懸濁し接触させても良いし、粉体にしたものをそのまま吹き付けても良い。
陰極への給電を考慮すると、比較的硬質の例えば平板状の導電性材料(集電体)に前述の水素吸蔵体を電気的に接続したものを陰極として使用することが望ましい。
【0019】
図1は本発明装置の一例を示す概略断面図である。
1は被反応物の水素化用電解槽であり、該電解槽1は、薄肉プレート状又は箔状等の陰極2により、電解室3と、該陰極2に電気的に接続された水素吸蔵合金が収容された水素化室4に区画されている。該電解室3には水酸化カリウム水溶液等が電解液として収容され該電解室3の前記陰極2と反対側の壁面近傍にはプレート状の陽極5が設置されている。6は陽極ガス取出口、7は被反応物溶液供給口、8は生成物取出口、9は被反応物溶液貯留タンク、10はポンプ、11は両極間に通電する電源である。
【0020】
このような構成から成る電解槽1の水素化室4中に、スチレン等の有機化合物の有機溶媒溶液である陰極液をポンプ10により被反応物溶液貯留タンク9から供給し、かつ電解室3には前述した水酸化カリウム水溶液等の陽極液を満たしかつ陽極5及び陰極2間に電源11を使用して通電すると、陰極2の電解室3側で生成する水素が陰極2に吸収されかつ該陰極2を透過して陰極2の水素化室4側に達し、該陰極表面で有機化合物と接触して該有機化合物例えばスチレンを水素化してエチルベンゼンを生成するか、あるいは前記水素化室4側に達した水素が前記水素吸蔵合金に吸蔵される。該合金中に吸蔵された水素は被反応物が供給されると該被反応物を水素化又は還元して所望生成物に変換する。
水素化処理された被反応物を含む電解液は生成物取出口8から取り出され、水素化が十分な場合はそのまま所定用途に使用され、不十分な場合は前記被反応物溶液貯留タンクに循環して再度水素化処理を行なうようにしても良い。
【0021】
【実施例】
次に本発明に係わる水素化方法及び電解槽による水素化の実施例を記載するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【0022】
【実施例1】
図1の電解槽を使用してスチレンの水素化反応を行なった。
まず有効面積が0.19dmである厚さ0.05mmのパラジウム板を次のように加工した。該パラジウム板の電解室側表面に、パラジウム黒の電解めっきを行ない、水素化室側表面は#60のアミルナサンドによってブラスト掛けを行ない更に100 ℃の35%塩酸を使用して酸洗処理を行ない、陰極とした。陽極としては厚さ1mmのニッケル製のエクスパンドメッシュを使用した。
【0023】
前記陰極を隔壁として使用して箱型電解槽を電解室と水素化室に区画し、電解室内には前記陽極を設置し、更に前記水素化室内にはランタン−ニッケル合金であるLaNi水素吸蔵合金を充填密度約30%となるように充填した。
前記水素化室内にスチレンを通し、かつ前記陰極に電解室内のジルコニウム製のワイヤメッシュを通して通電し、温度40℃、電流密度10A/dmで電解を行なった。
この条件では電解室側では水素の発生は実質的に観察されず、発生水素のほぼ全量が前記パラジウム陰極を透過して水素吸蔵合金側に移行した。又水素化室から取り出される反応生成物中の原料であるスチレンから生成物であるエチルベンゼンへの転化の電流効率を液体クロマトグラフィーを使用して測定したところ、93〜94%であった。
【0024】
【比較例1】
水素化室内にLaNi水素吸蔵合金を充填しなかったこと以外は実施例1と同一条件でスチレンのエチルベンゼンへの転化の電流効率を測定したところ約84%であり、前記水素吸蔵合金の水素化室内への充填により約10%電流効率が上昇したことが判った。
【0025】
【実施例2】
実施例1で使用したLaNi水素吸蔵合金の粉末をバインダーであるデキストリンと共に成型しかつ水素ガス中450 ℃でルースシンタリングして多孔体とした。この多孔体を実施例1で使用したパラジウム板にアルゴン雰囲気中で抵抗溶接し、これを実施例1の電解槽内に、実施例1の水素吸蔵合金を充填した陰極の代わりに設置した。このときの水素吸蔵合金の充填率は理論値に対して40〜45%であった。
【0026】
水素化室内にエチレンガス(圧力が大気に対して水柱で20cm)を通し、かつ前記陰極に電解室内のジルコニウム製のワイヤメッシュを通して通電し、温度40℃、電流密度5A/dmで電解を行なった。
この条件では電解室側では水素の発生は実質的に観察されず、発生水素のほぼ全量が前記パラジウム陰極を透過して水素吸蔵合金側に移行した。又水素化室から取り出される反応生成物中の原料であるエチレンから生成物であるエタンへの転化の電流効率を液体クロマトグラフィーを使用して測定したところ、約85%であった。
【0027】
【実施例3】
水素吸蔵合金としてミッシュメタル系水素吸蔵合金MmNi4.2Al0.3Mn0.3 を使用した。この合金粉末をアルゴン雰囲気中1300℃で3時間焼結し更にアルゴン雰囲気中で鍛造して厚さ0.8 mmの板とした。この板の片面に同じミッシュメタル系水素吸蔵合金の粉末をデキストリンをバインダーとして塗布し、水素ガス中450 ℃でルースシンタリングした。この片面に多孔性の合金層を有する陰極の該多孔性部分との反対側表面を#60のアミルナサンドでブラスト掛けを行ない表面を荒らして活性化した。前記ミッシュメタル系水素吸蔵合金板にに対する多孔性部分の充填率は約33%であった。
【0028】
この多孔性部分を有する陰極板を該陰極板が陽イオン交換膜に密着するように設置し、該陽イオン交換膜の反対側に、厚さ0.5 mmのチタンエクスパンドメッシュの表面に硝酸イリジウム及び硝酸タンタルの水溶液を塗布し熱分解して酸化イリジウム(75%)−酸化タンタル(25%)を電極物質として被覆した不溶性陽極を密着させた。
電解室内はイオン交換水を満たし、水素化室内にはパラフィン粒子を懸濁したエチルアルコール(パラフィン粒子の体積割合は約20%)を流し、温度40℃、電流密度5A/dmで電解を行なった。
この条件では電解室側では水素の発生は実質的に観察されず、又水素化室内に油状物質の形成が認められた。これはパラフィンの一部に水素添加が起こり長鎖の断裂が起こったためと推測できた。
【0029】
【実施例4】
図1の電解槽の水素化室側に硝酸イオン340 ppm を含む水溶液を供給した。液量は外部タンク9内と合わせて500 mlとし、ポンプ10により電解槽内に10ml/分で供給し、かつ前記タンク9へ循環させた。又電解室側には20%の水酸化ナトリウム水溶液を満たした。
隔壁を兼ねる陰極としてパラジウム−銀(23%)の合金箔を使用し、水素化室内には0.3 g/mに相当するパラジウムを置換めっきしたニッケル製セルメット(住友電工株式会社製#4)を4枚重ね合わせて充填した。
温度40℃、電流密度10A/dmで電解を行なったところ、硝酸イオン濃度は5時間後に20ppm に、又10時間後には1ppm 未満となった。
硝酸イオンの減少に伴ってアンモニウムイオンが副生するが、これも徐々に減少し、24時間経過後の総窒素減少率は70%であった。
【0030】
【比較例2】
水素化室内にセルメットを充填しなかったこと以外は実施例4と同一条件で電解を行なったところ、10時間後の硝酸イオン濃度は250 ppm であり、多量の硝酸イオンが検出された。
【0031】
【発明の効果】
本発明方法は、陽極及び水素吸蔵材料から成る陰極を有する電解槽の前記陰極の前記陽極との反対面に被反応物を接触させながら電解を行ない、前記陰極で発生し吸蔵、透過した活性水素により前記被反応物の水素化を行なう水素化方法において、前記陰極の水素化室側に多孔性の水素吸蔵体を電気的に接続し、該水素吸蔵体により前記被反応物の水素化を行なうことを特徴とする被反応物の水素化方法である。
本発明方法によると、電解により陰極表面で生成する水素がそのまま陰極に吸収され吸蔵されかつ原子状水素又は活性水素として水素化室に供給される。そして該水素化室には水素吸蔵合金が存在するため、被反応物が存在せずあるいは少量の被反応物しか存在しない場合でも、過剰の活性水素はそのまま放出されることなく前記水素吸蔵合金内に吸蔵される。従って実質的に全ての電解生成水素を被反応物の水素化又は還元に有効に使用できる。
【0032】
更に電解により水素が連続的に供給されるため、従来の水素吸蔵金属を使用する水素化法と異なって水素が枯渇することがなく、連続して有機化合物等の水素化を行なうことができる。
水素化に使用する活性水素は任意の水素発生電解反応により得られるが、電解反応や材料の簡便性等から水電解により前記活性水素を得ることが望ましい。
【0033】
本発明装置は、水素吸蔵材料から成る陰極により、陽極を含む電解室と被反応物が供給され水素化される水素化反応室に区画され、該水素化反応室に前記陰極に電気的に接続された多孔性の水素吸蔵体を充填したことを特徴とする被反応物の水素化用電解槽である。
本発明装置によっても、前述した本発明方法の場合と同様に連続的に被反応物を水素化して目的の有機化合物等を得ることができる。
使用する水素吸蔵及び/又は水素透過能を有する陰極の材質としてはパラジウム又はその合金が最適であり、更にニッケルを含む水素吸蔵合金の使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の一例を示す概略断面図。
【符号の説明】
1・・・水素化用電解槽 2・・・陰極 3・・・電解室 4・・・水素化室5・・・陽極 6・・・陽極ガス取出口 7・・・被反応物溶液供給口 8・・・生成物取出口 9・・・被反応物溶液貯留タンク 10・・・ポンプ 11・・・電源 12・・・隔膜 13・・・集電体

Claims (4)

  1. 陽極及び水素吸蔵材料から成る陰極を有する電解槽の前記陰極の前記陽極との反対面に被反応物を接触させながら電解を行ない、前記陰極で発生し吸蔵、透過した活性水素により前記被反応物の水素化を行なう水素化方法において、前記陰極の水素化室側に多孔性の水素吸蔵体を電気的に接続し、該水素吸蔵体により前記被反応物の水素化を行なうことを特徴とする被反応物の水素化方法。
  2. 活性水素を生成する電解反応が水電解である請求項1に記載の水素化方法。
  3. 水素吸蔵材料から成る陰極により、陽極を含む電解室と被反応物が供給され水素化される水素化反応室に区画され、該水素化反応室に前記陰極に電気的に接続された多孔性の水素吸蔵体を充填したことを特徴とする被反応物の水素化用電解槽。
  4. 水素吸蔵体が、パラジウム、パラジウム合金、及びニッケルを含む水素吸蔵合金から選択される請求項3に記載の水素化用電解槽。
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