JP3560894B2 - クローラ走行装置及びセミクローラ形トラクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クローラ走行装置並びにセミクローラ形トラクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トラクタ、特に、農用トラクタを走行装置によって分類すると、車輪形(ホイール形)と履帯形(クローラ形)に大別できる。このうち、履帯形トラクタは、フルクローラ形とセミクローラ形とに細分類でき、フルクローラ形は、接地面積が大きく接地圧が車輪形トラクタに比べて小さいために柔軟地など不整地の走行が可能で、重量が大きく粘着係数も大きいために牽引力を必要とする重作業に適し、例えば、車輪形トラクタで作業不能な湿田等における排水性確保のためのサブソイラー等による農地造成、土地改良として専ら使用される所謂季節限定形の専用機である。
【0003】
これに対し、セミクローラ形トラクタは、専用機としてではなく、車輪形トラクタの後輪とクローラ走行体とを交換して用いる場合が主流であり、車輪形に比べて接地面積が大きくなることから湿田等の柔軟地での作業にも適し、更に、フルクローラ形に比べて機動性に富むという利点も有するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように履帯形トラクタは、主に湿田等の柔軟地で利用されるものであるため、走行によりクローラ走行体の下部内周面に泥土等が乗り上がり易く、この泥土等が転動輪に付着して巻き込まれることによって、トラックフレーム内、特に複数の転輪間に泥土等が堆積して泥詰まり等を発生することがあった。
このような泥詰まり等が発生すると、走行の障害となるだけでなく脱輪を招く恐れもあるため、清掃等のメンテナンスにおいてトラックフレーム内の泥土の排出を行うのであるが、トラックフレームが転動輪の左右両側を支持する構造の場合、転動輪の左右両側がトラックフレームの側壁によって塞がれるために泥土等の排出がし難く、また、セミクローラ形トラクタにあってはクローラ走行体(トラックフレーム)自体がコンパクトであることから、より泥土の排出が困難なものとなっており、場合によっては、トラクタからクローラ走行装置を取り外すとともにトラックフレームから転動輪を分解するといった面倒な作業を介して清掃等を行わなければならないこともあった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、トラックフレーム内の異物の堆積防止や、メンテナンス性の向上を図るクローラ走行装置及びセミクローラ形トラクタを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の目的を達成するたに次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明は、クローラ走行体の内周下部に配置された複数の転動輪の左右両側を門形状のトラックフレームの左右側壁で両持ち支持しているクローラ走行装置において、
前記トラックフレームの側壁に、該トラックフレーム内に侵入した泥等の異物を除去するための孔を転動輪の支軸よりも上側で形成していることを特徴とするものである。
ここで、異物を除去するための孔とは、クローラ走行装置の走行中やメンテナンス時等において、トラックフレーム内に侵入した異物を直接的に通過させて外部へ排出するための孔、又は、メンテナンス時に、異物除去用の器具等をトラックフレーム内に挿入するために用いる孔を言うものである。
【0007】
このような構成によって、走行中やメンテナンス時等に、前記孔を介してトラックフレーム内の異物の除去が容易に行えるようになり、堆積防止やメンテナンス性の向上を図れるものとなる。
また、本発明は、前記孔が前記複数の転動輪間に対応して形成されていることが望ましい。
このような構成によって、転動輪間に堆積した異物を孔を介して好適に除去(排出)できるようになる。
【0008】
さらに、本発明は、前記孔が、側面視において転動輪の外周部にオーバーラップしていることを特徴とするものである。
このような構成により転動輪に付着した泥等を孔から好適に排出でき、また、器具等により容易に除去することが可能となる。
本発明に係るセミクローラ形トラクタは、トラクタ車体の前部に車輪形の前輪を備え、後部に、後輪として上述のような構成のクローラ走行装置を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
これにより、比較的コンパクトに形成されるクローラ走行装置(セミクローラ)であっても、トラックフレーム内に侵入した泥土等を容易に除去することができ、メンテナンス性の向上が図られるものとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図3には、左右一対の前輪2と、左右一対の後輪(セミクローラ;本発明にかかるクローラ走行装置)3とで全駆動形走行装置(前輪2とセミクローラ3とを駆動するものをいう)を構成しているトラクタ1の側面図を示している。
なお、本明細書において前後方向とは、トラクタ1(クローラ走行装置3)の走行方向を言い、左右方向とは、前後方向に直交する横方向(後述する転動輪29の回転軸心方向)を言うものとする。
【0011】
トラクタ1は、その後側に備えられているリンク装着手段、例えば三点リンク機構4を介して作業機5を昇降自在に装着可能としている。図では、作業機5としてロータリ耕耘装置を装着した例を示している。
トラクタ1は、エンジン6をボンネット7で覆っており、操縦ハンドル8Aと座席8Bとを前後に備えて運転操縦装置を構成し、該運転操縦装置をキャビン9により覆っている。なお、キャビン9に代替して安全フレーム(ロプス)を具備したものであっても良く、勿論これらを具備しないトラクタであっても良い。
【0012】
左右の前輪2は、駆動輪であるとともに、操縦ハンドル8Aの操作によって左右に操向可能な操向車輪であり、前輪推進軸装置10からの動力によって図示省略した前輪デフおよび増・減速装置等を経由して前進方向及び後進方向に駆動可能である。
左右のセミクローラ3は、トラクタ1の後車軸11に取着されている回転駆動体12と、その下方のトラックフレーム13に軸架されている前後の回転従動体14,15とを側面視にて三角配置で備え、これら回転駆動体12及び前後回転従動体14,15とに無端帯状のクローラ走行体16を巻回することによって、側面視においてほぼおむすび形状に構成されている。
【0013】
クローラ走行体16はゴム等の弾性材料により形成され、帯長手方向に所定間隔をおいて芯金が埋設されているとともに、外周面(接地面側)には横一文字形、八の字形等のラグ16A(図1参照)が帯長手方向の間隔をおいて膨隆形成されていて、大きな牽引力を確保可能である。
更に、図3で示すように、後車輪11の軸芯を通る鉛直線V−Vを基準として前後接地長L1,L2が異なっており、前接地長L1が大で、後接地長L2が小とされており、ここに、トラクタ車体1Aよりセミクローラ3が後方に大きく突出されるのを防止して該トラクタ車体1Aの後部に備えている三点リンク手段4を介しての作業機(ロータリ,プラウ,サブソイラー,ブロードキャスタ尚)5の装着を容易とするとともに前後重量バランスを確保して作業機5を持上げての旋回操向(小廻り性能)を良好にし、かつ、作業機5を降下しての作業時において充分な接地長を確保しての傾斜地での横滑りを阻止し、大きな牽引力を確保している。
【0014】
また、操向輪でありかつ駆動輪でもある前側の左右の前輪2は、そのトレッド部に横一文字形、ハの字形等の配列のラグ2A、特に、ハイラグを有する空気入りゴムタイヤで構成されており、後側の左右のセミクローラ3との駆動力、すなわち、前後駆動力のバランスが確保されていて、ここに、トラクタ前方の浮上りを防止して前輪2の駆動力を充分に活かすようにされている。
図1又は図2を参照すると、セミクローラ3の詳細が例示されている。
左右のセミクローラ3における回転駆動体12は、ドラム形、ローラ形、スプロケット形等を採択できるが、図例ではクローラ走行体の長手方向間隔をおいて形成した係合孔に係脱するスプロケット形であり、後車軸11の軸端フランジ11Aに複数本のボルト等によって後車軸11の軸心と合致されて取着されている。
【0015】
なお、左右の後車軸11はトラクタ車体1A内に内蔵した走行系伝動装置によって回転駆動されるものであり、具体的には後部デフ装置およびこの出力軸並びに終減速装置等を経由して変速下で回転駆動されるとともに左右独立ブレーキ装置によって制動可能である。
左右の後車軸11は、トラクタ車体1Aの左右側面から外方に突出された後車軸凾17に内挿されて図示省略した軸受によって回転自在に支持されており、この左右の後車軸凾17のそれぞれに左右のセミクローラ3におけるトラックフレーム13が揺動支軸18を支点に上下揺動自在に装着されている。
【0016】
すなわち、後車軸凾17の下面に支持具19が、該凾17の前後に配置したボルト締結具20、該凾17の下面からのボルト締結具21および後面からのボルト締結具22によって取着されており、該支持具19は、後車軸凾17の下方に揺動支軸18の軸受部23を有しており、該軸受部23は左右の支持片23A,23B間に円筒体23Cを固着してなり、この円筒体23Cに揺動支軸18が挿通されて抜け止体23Dで位置決めされており、円筒体23Cには三点リンク機構4のロワーリンクチェックチェーンのための取付片23Eが一体に形成されている。
【0017】
セミクローラ3のトラックフレーム13は、図2で示すように下方開放状の断面倒立溝形(門形)に形成されており、このトラックフレーム13の上面には左右の間隔を有してゴムクローラの張力調節手段24が備えられているとともにこの左右の張力調節手段24間に回転駆動体12が位置することによって上下方向にコンパクトな構成とされており、このため、トラックフレーム13の上面には回転駆動体12の外周一部が臨入する窓13Aが形成されている。
トラックフレーム13の内側には揺動支軸18の取付板25が固着されているとともに、この取付板25と揺動支軸18の前後に側面視にて鞍形の前後補強板26が固着され、揺動支軸18を強固に支持しており、このように支持された揺動支軸18が軸受23の外方から内方に向かって挿通されて該挿通端にて抜け止体23Dで位置決めされ、この際、取付板25と円筒体23Cとの間にはダストシールを有する円環形カラー27が介在されている。
【0018】
図1に示すように、トラックフレーム13の左右側壁下縁には、下方開口状とした溝形の支持部28がフレーム長手方向で間隔をおいて複数形成されており、この左右支持部28には長手方向(前後方向)で間隔を有して備えられている複数の転動輪29の支軸30が嵌装されている。支軸30は、ボルトナット等の締結具31によって締め上げることで不測に外れないように装着されている。
これにより、各転動輪29がクローラ走行体16の内周下部に配置され、トラックフレーム13の支持部28によって前後において位置決めされた状態で左右両持ち状に支持される。
【0019】
なお、前回転従動体14および後回転従動体15についても支持部28、支軸14A,15A、締結具31等は転動輪29と同じ構成とされている。
左右のセミクローラ3は、そのトラックフレーム13が左右独立して揺動支軸18を支点に上下方向に揺動することによって圃場等の凹凸に倣った(追従した)したピッチング動作し、湿田走行、荒地走行等を円滑に行えるようになっており、その上下揺動量を所定範囲で牽制する揺動量牽制手段32が具備されている。
【0020】
この揺動量牽制手段32は、支持具19より前方(後方又は前後双方であっても良いが以下では前方のみで説明する)に取付板33が固着延伸されており、この取付板33の外面に前後対のL形フランジ34がボルト止めされており、この対のフランジ34間に前下り(後方のときは後下り)の前後方向軸心廻りに回転するローラ体35が軸架されている。
一方、トラックフレーム13側には、ローラ体35の外側面側に位置する外取付板36が立設固着され、この外取付板36には、略同形の内取付板(図示略)がローラ体35の内側面側に位置するようにボルト締結具等によって固着連結され、内外取付板36間には、両者のディスタンスカラーを兼ねた上下ストッパ40,41が取り付けられて、該上下ストッパ40,41がローラ35に当接することによってトラックフレーム13の上下揺動量が所定範囲で牽制されるようになっている。
【0021】
回転駆動体12がF方向に回転するときのゴムクローラ16の弛み側である前回転従動体14は、テンション(張力)調節装置24にて緊張調整自在とされており、このテンション(張力)調節装置24は、従動体支持具42の軸部(ピストン)をコイルバネ43を内蔵した筒体44に摺動自在に嵌挿し、ネジ送り可能な当板を有する調整具45のネジ送り量によって強弱調整可能とされている。
なお、張力調節手段(装置)24はバネ式に代替して流体圧式とすることもできる。
【0022】
前記トラックフレーム13の左右外側の側壁13Bには、トラックフレーム13内に侵入した泥やワラクズ等の異物を除去するための孔40が、当該側壁13Bを左右に貫通するように設けられている。
この孔40は、複数の転動輪29間に対応して設けられるようになっており、したがって、図例では、前後3個の転動輪29間に対応して2箇所に形成されている。また、孔40は、前後の転動輪29の上部側(支軸30より上側)で、その外周部に側面視でオーバーラップするように前後に長い長孔状に形成されている。
【0023】
したがって、セミクローラの走行中等においては、クローラ走行体16の下部内周面に乗り上がった異物が転動輪29に巻き込まれてトラックフレーム13内に侵入したとしても、孔40を通して直接的に外部に排出可能であり、これによりトラックフレー13内の異物の堆積を防止できるようになっている。
また、図2に示すように、清掃等のメンテナンス時においては、ドライバーやヘラ等の異物除去用の器具41を孔40を介してトラックフレーム13内へ挿入可能であり、該トラックフレーム13内に堆積した異物や転動輪29に付着した異物を下方へ削ぎ落として取り除くことができる。
【0024】
特に、前記孔40を、各転動輪29の前後間に対応して形成することで、該間の異物を容易に除去可能であり、転動輪29の外周部にオーバーラップすることで、該外周部に付着した異物を容易に除去可能とある。
また、孔40の存在により、側壁13Bの内側面に対する泥の付着を少なくでき、清掃等の負担を軽減できるようになっている。
前記孔40は、全転動輪29の前後に亘るように長く形成することも可能であるが、トラックフレーム13の強度低下を防ぐため、上記実施形態のように各転動輪29間に対応して形成するのが好ましく、転動輪29の上部側に対応して設けることにより、異物の除去がより困難となるトラックフレーム13内の上部(溝形の底部分)の清掃が容易なものとなる。
【0025】
また、前後に長い楕円形に形成したり、図4に他の実施形態として示すように、円形のものを各転動輪29間に1又は複数形成することも可能である。また、トラックフレーム13の左右内側の側壁13Cにも、図1又は図4に示すような異物除去用の孔を形成することができる。
本発明は、所謂フルクローラにも採用することができるが、上述のように比較的コンパクトな構成とされるセミクローラに対してより有用であり、農用の走行車以外にも、建設機械等の走行車としても採用可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上詳述した通り本発明によれば、トラックフレーム内の異物の堆積防止や、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかるクローラ走行装置の側面図である。
【図2】同正面断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるクローラ走行装置を装着したセミクローラ形トラクタを示す側面図である。
【図4】トラックフレームの他の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 トラクタ(セミクローラ形トラクタ)
2 前輪
3 セミクローラ(クローラ走行装置)
13 トラックフレーム
13B 側壁
16 クローラ走行体
29 転動輪
40 孔
Claims (4)
- クローラ走行体(16)の内周下部で前後に配置された複数の転動輪(29)のそれぞれを門形状のトラックフレーム(13)の左右側壁で両持ち支持しているクローラ走行装置において、
前記トラックフレーム(13)の側壁(13B)に側面視において転動輪(29)の支軸(30)より上側でかつ前後の転動輪(29)の外周部とオーバーラップした位置に、異物除去用の前後に長い孔(40)を形成していることを特徴とするクローラ走行装置。 - クローラ走行体(16)の内周下部に配置された複数の転動輪(29)のそれぞれを門形状のラックフレーム(13)の左右側壁で両持ち支持しているクローラ走行装置において、
前記トラックフレーム(13)の側壁(13B)の側面視において転動輪(29)の支軸(30)より上側でかつ転動輪(29)の外周部とオーバーラップした位置に、異物除去用の孔(40)を形成していることを特徴とするクローラ走行装置。 - 前記孔(40)をトラックフレーム(13)の左右側壁の両方に形成していることを特徴とする請求項1または2に記載のクローラ走行装置。
- トラクタ車体(1A)の前部に車輪形の前輪(2)を備え、後部に後輪(3)として請求項1〜3のいずれかに記載のクローラ走行装置を備えていることを特徴とするセミクローラ形トラクタ。
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JP2000056184A JP3560894B2 (ja) | 2000-03-01 | 2000-03-01 | クローラ走行装置及びセミクローラ形トラクタ |
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Publications (2)
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