JP3828823B2 - クローラ式走行装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クローラ式走行装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、4輪駆動トラクタの後輪タイヤの替わりにクローラユニット(セミクローラ)を、左右独立して取り付けた半履帯トラクタがある。
前記クローラユニットは、上部のスプロケットと、このスプロケットの下方に配置されたトラックフレームと、このトラックフレームの前後に設けられたアイドラと、トラックフレームの、前後アイドラ間に設けられた複数の転輪と、これらスプロケット,アイドラ,転輪に亘って巻き掛けられた無端帯状のクローラベルトとを備えて構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
クローラ式走行装置にあっては、タイヤ車輪に比べて、クローラベルトの接地面積が大きく、低接地圧であり、不整地走行に適しているが、旋回性能が悪いという問題がある。
本発明は、前記問題点に鑑みて、旋回性能の向上を図ったクローラ式走行装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明が技術的課題を解決するために講じた技術的手段は、回転駆動する駆動軸に取り付けられたスプロケットと、車体側に支持されるトラックフレームに取り付けられたアイドラ及び複数の転輪と、これらスプロケット,アイドラ及び複数の転輪に亘って巻き掛けられたクローラベルトとを備え、スプロケットを回転駆動することによってクローラベルトを周方向に循環回走するようにしたクローラ式走行装置であって、
走行時において転輪で車体側からの荷重を受けるようにしたクローラ式走行装置において、
前端側の転輪の下端が他の転輪の下端よりも高くなるように該前端側の転輪が他の転輪に対して上下動不能としてトラックフレームに取り付けられ、且つ、該前端側の転輪が他の転輪に対して、舗装路面走行時にあっては前端側の転輪以外の他の転輪で車体側からの荷重を受け、柔軟地走行時にあっては前端側の転輪と他の転輪とで車体側からの荷重を受け得る高さ位置に取り付けられていることを特徴とする。
【0005】
また、トラックフレームは、スプロケットの下方に配置されていて該スプロケットの下方に位置する揺動軸に、スプロケットの回転軸心と平行な軸心回りに揺動自在に支持され、このトラックフレームの前後にアイドラを支持すると共に、該トラックフレームの前後アイドラ間に複数の転輪を支持し、前後のアイドラは他の転輪よりも高い位置に取り付けられ且つ前端側の転輪は前側のアイドラよりも低い位置に取り付けられているのがよい
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1〜図9は本発明に係るクローラ式走行装置の実施の形態を示している。
図3において、1は、4輪駆動トラクタの後輪の替わりにクローラユニット2(セミクローラ)を左右独立して設けた半履帯トラクタ(車輌)であり、前輪7は操向輪とされている。
【0007】
このトラクタ1は、車体3の後部にキャビン4が搭載されたキャビン付きトラクタが例示されており、キャビン4内の後部には、運転席5が設けられ、運転席5の前方には、操縦ハンドル6が設けられている。
車体3は、エンジン8の後部にフライホイールハウジングを介して動力伝達ケース9を取り付けて構成され、動力伝達ケース9は、クラッチハウジング及びミッションケース等から構成されている。
【0008】
前輪7は、前車軸フレーム10に支持された前車軸ケースの左右両側に設けられ、前車軸ケースは、エンジン8から前方に突出するように、該エンジン8に取付固定された前車軸フレーム10に、前後軸回りに揺動自在に支持されている。
クローラユニット2は、図2に示すように、動力伝達ケース9(ミッションケース)の後端側に、左右方向突出状に設けられた後車軸ケース19(車軸ケース)の左右方向外端側に取り付けられている。
【0009】
なお、図2において、左右一方のクローラユニット2は、図示を省略している。
クローラユニット2は、図1及び図2に示すように、1つのスプロケット12と、前後一対のアイドラ13a,13bと、複数(本実施の形態では4つ)の転輪14a〜dと、これらスプロケット12,アイドラ13a,13b,転輪14a〜dに亘って巻き掛けられたクローラベルト15と、トラックフレーム16と、伝動ケース17(ギヤケース)とを備えており、スプロケット12を左右方向の軸心廻りに回転駆動することにより、クローラベルト15が周方向に循環回走され、これにより走行するように構成されている。
【0010】
先ず、このクローラユニット2の構成をおおまかに説明すると、トラックフレーム16は四角筒状の筒体によって構成され、前後方向に沿って配置されており、このトラックフレーム16にアイドラ13と転輪14a〜dとが支持されている。
アイドラ13a,13bは、トラックフレーム16の前及び後に配置され、転輪14a〜dはトラックフレーム16の下方に前後方向に配置されている。
【0011】
スプロケット12は、トラックフレーム16の上方で、且つ前後アイドラ13a,13b間の中途部上方に配置されていて、伝動ケース17に支持されている。
この伝動ケース17は、車体3後部の後車軸ケース19の左右方向外端側に取付固定されている。
【0012】
また、伝動ケース17の下部には、支持部21が設けられ、この支持部21には、揺動軸22が左右方向の軸心廻りに回動自在に支持されており、この揺動軸22にトラックフレーム16が取り付けられていて、該トラックフレーム16が、アイドラ13a,13b及び転輪14a〜dとともに、揺動軸22の軸心回りに揺動自在に支持されている。
【0013】
また、クローラユニット2は、後車軸ケース19に、ユニットとして一体的に着脱自在に取り付けられている。
したがって、トラクタ1の車体3側からの荷重は、伝動ケース17、支持部21、揺動軸22を介してトラックフレーム16に作用する。
クローラベルト15は、本体部分がゴムによって無端帯状に形成され、内周側には、ゴム製の駆動突部23が周方向に適宜間隔をおいて、且つ周方向に亘って設けられている。
【0014】
駆動突部23は、スプロケット12に周方向で係合してスプロケット12から駆動力を受け取る機能と、転輪14a〜d,スプロケット12及びアイドラ13a,13bに左右方向で係合して脱輪を防止する(クローラベルト15の外れを防止する)機能とを有する。
なお、後車軸ケース19には、キャビン4の後部を支持する支持台24が取り付けられるようになっている。
【0015】
次に、クローラユニット2の構成を詳述する。
図4に示すように、前記伝動ケース17内の下部には、左右方向の後車軸25(車軸)が設けられ、伝動ケース17内の上部には、後車軸25と平行に駆動軸26が設けられ、後車軸25と駆動軸26との間には、これらと平行に中間軸27が設けられている。
【0016】
後車軸25及び中間軸27は、伝動ケース17の左右方向外側壁と、後車軸ケース19の左右方向外端側の壁部との間で、ベアリングを介して左右方向の軸心廻りに回動自在に支持されている。
駆動軸26は、伝動ケース17の左右方向外側壁と内側壁との間で、ベアリングを介して左右方向の軸心廻りに回動自在に支持されていると共に、伝動ケース17から左右方向外方に突出しており、この突出端部にフランジ部28が設けられ、このフランジ部28にスプロケット12が取付固定されている。
【0017】
また、後車軸25には、第1ギヤ29が設けられ、駆動軸26には、第2ギヤ30が設けられ、中間軸27には、これら第1,第2ギヤ29,30に噛み合うアイドラギヤ31が設けられており、これら第1ギヤ29、第2ギヤ30、アイドラギヤ31からなるギヤ伝動機構(動力伝動機構)によって、後車軸25から駆動軸26に動力伝達が行われて、スプロケット12が駆動軸26の軸心回りに回転駆動される。
【0018】
前記構成のものにあっては、スプロケット12に動力を伝達する後車軸25の軸心Yよりも上方側にスプロケット12の回転軸心Xが位置するように、該スプロケット12が配置されており、これによって、スプロケット12に対するクローラベルト15の接触角度(接触範囲)を大きくすることができ、これにより、スプロケット12とクローラベルト15の駆動突部23との噛み合い率が高くなり、噛み合い歯数(クローラベルト15のスプロケット12に対する巻掛け部分における、スプロケット12の駆動突部23に係合する噛合部材40(噛合部)の数をいう)を増やすことができ、これによって、スプロケットの噛合部材40から駆動突部23へ作用する荷重負担が軽減され、クローラベルト15の寿命を伸ばすと共に、高速化に対応したクローラユニット2を提供できるのである。
【0019】
なお、本実施の形態では、噛合部材40は、12個設けられていて、そのうち4個が駆動突部23に噛み合うようになっている。
後車軸25は、伝動ケース17から左右方向内方に突出状とされ、後車軸ケース19内の伝動軸32とカップリング33を介して連動連結されている。
一方、エンジン8からの動力はクラッチを介して動力伝達ケース9内の変速機構を経た後、後輪デフ装置34に伝達され、ここから左右の後車軸ケース19内の伝動軸32に動力が分岐され、左右の各伝動軸32から後車軸25に動力が伝達されるようになっている。
【0020】
なお、後車軸ケース19内の左右方向内端側には、伝動軸32(スプロケット12)を制動するブレーキ装置35が設けられている。
前記駆動軸26は、後車軸25の鉛直方向上方側に位置し、後車軸25の鉛直方向下方側に、前記揺動軸22が位置する。
スプロケット12は、図5及び図6に示すように、駆動軸26のフランジ部28に取付固定されるリング状の取付ホイール38と、この取付ホイール38の左右両側に位置するリング状の側部ホイール39と、クローラベルト15の駆動突部23に噛み合う噛合部材40とを備えて構成され、周方向2分割されている(したがって、取付ホイール38及び左右の側部ホイール39が周方向2分割されている)。
【0021】
なお、スプロケット12は、周方向3分割又は4分割等されていてもよいし、また、分割されていなくてもよい。
また、クローラベルト15の交換時には、スプロケット12を一方のスプロケット構成体12Aが上部に位置し、他方のスプロケット構成体12Bが下部に位置した状態で、下部側のスプロケット構成体12Bを取り外すと共に、上部側に位置していたスプロケット構成体12Aを回転させて下部側に位置させることにより、クローラベルト15の緊張が緩んで、該クローラベルト15の交換が可能となる。
【0022】
取付ホイール38は、スプロケット12の回転軸心Xと同心状の円筒部41と、この円筒部41の内周面から径方向内方に突出する取付フランジ42とを有する。
一方、駆動軸26のフランジ部28の左右方向外面の外周側には、取付座43が形成され、この取付座43に取付ホイール38の取付フランジ42を重合し、取付フランジ42を貫通し、フランジ部28に形成されたネジ孔に螺合されるスタッドボルト44及び該スタッドボルト44に螺合されるナット45によって、取付ホイール38が駆動軸26に着脱自在に取付固定されている。
【0023】
側部ホイール39は内周部46が、取付ホイール38の円筒部41の側面に接当し、内周部46を貫通して円筒部41に螺合される取付ボルト47によって、左右の側部ホイール39が取付ホイール38に着脱自在に取付固定されている。
左右の側部ホイール39の外周部48は取付ホイール38よりも径方向外方に突出状とされ、左右の側部ホイール39の外周部48の対向面には、有底円柱状の軸支孔49が周方向に間隔をおいて形成されている。
【0024】
また、左右の側部ホイール39の外周部48には、左右方向外方(反対向側)に張り出して、クローラベルト15の内周面に接当するフランジ部50が形成されている。
噛合部材40はピンによって構成され、軸方向中央部の円柱状の径大の係合部51と、この係合部51の左右両側から左右方向外方に突出する小径の軸部52とから構成され、左右の軸部52が側部ホイール39の軸支孔49に挿脱自在に挿入されていて、噛合部材40が、左右の側部ホイール39間に挟み込まれて取り付けられて、保持されている。
【0025】
したがって、外側の側部ホイール39を取付ホイール38から取り外すことにより、噛合部材40が側部ホイール39間から取り外すことができ、噛合部材40の交換が可能とされている。
また、スプロケット12が周方向に分割状であるので、噛合部材40の交換を行う際において、クローラベルト15が巻き掛けられていない側(下部側)の側部ホイール39の構成体を外すことにより、側部ホイール39の取り外しが容易に行えるという効果を奏する(したがって、クローラベルト15が巻き掛けられている側の側部ホイール39の構成体を取り外す場合は、スプロケット12を回転させて、クローラベルト15が巻き掛けられていない側に位置させる)。
【0026】
また、噛合部材40は、側部ホイール39を取り外すことにより、複数の噛合部材の交換が可能であるので、噛合部材を1つずつ取り付けるものに比して交換が容易に行える。
また、軸部52には、ブッシュが外嵌され、軸支孔49の奥部にはシムが介在されていて、噛合部材40が左右方向の軸心回りに回転自在に支持されており、これにより、駆動突部23に接触することによる摩耗を少なくすると共に偏摩耗が防止されるようになっている。
【0027】
すなわち、スプロケット12を回転駆動すると、クローラベルト15の駆動突部23がスプロケット12外周部の噛合部材40間に相対的に挿入し、噛合部材40が駆動突部23に接当して、噛み合い、スプロケット12から駆動突部23にトルクが伝達されるが、このとき噛合部材40が回転自在とされているので、駆動突部23と接当することによる摩耗が少ないと共に偏摩耗が防止されるのである。
【0028】
なお、内側の側部ホイール39は、取付ホイール38に一体形成されていてもよいが、内外の側部ホイール39を共通な形状とすることにより、安価に製造できる。また、噛合部材40は、左右の側部ホイール39の外周部48間に設けられる軸と、この軸に軸心回りに回転自在に外嵌されたカラーとから構成してもよい。この場合、カラーが駆動突部23に接当する係合部とされる。
【0029】
また、側部ホイール39の外周側に左右方向外方に張り出すフランジ部50が設けられているスプロケット12であっても、噛合部材40を、左右の側部ホイール39で挟み込んで取付固定することにより、噛合部材40を極力スプロケット12の外周寄りに設けることができ、これによって、噛合部材12を駆動突部23の基部側に係合させることができる。
【0030】
図4、図7及び図8に示すように、揺動軸22を支持する支持部21は、左右方向の軸心を有する筒部54と、この筒部54を伝動ケース17に一体的に連結する連結リブ55とを有する。
前記筒部54に揺動軸22が左右方向外方側から挿通されて左右方向の軸心回りに回動自在に支持されている。
【0031】
なお、揺動軸22と筒部54内面との間には、グリスが注入される。
筒部54の左右方向内方側の端面側には、カラー56を介してカバー板57が接当され、このカバー板57を貫通して揺動軸22に形成したネジ孔にボルト58が螺合されることにより、揺動軸22にカバー板57が固定され、これにより、揺動軸22が抜け止めされている。
【0032】
揺動軸22は筒部54の左右方向外端側から左右方向外方に突出しており、この揺動軸2の左右方向外端側は、トラックフレーム16の上方側で且つスプロケット12の下方側に位置している。
この揺動軸22の左右方向外端側は、左右方向内外一対のフランジ59,60を挿通しており、内側のフランジ59は、カラー65を介して支持部21の筒部54の左右方向外端面に接当していると共に、トラックフレーム16の上面に溶接等によって固定された固定プレート61に溶接等によって固定され、外側のフランジ60は、該外側のフランジ60及び揺動軸22に溶接等によって固定された連結部材62によって揺動軸22に固定されている。
【0033】
また、内外フランジ59,60は、外側のフランジ60を貫通して内側のフランジ59に形成されたネジ孔に螺合されたボルト63によって相互に接合されており、これによって、トラックフレーム16が揺動軸22を介して支持部21に左右方向の軸心廻りに揺動自在に支持されている。
また、前記固定プレート61は、トラックフレーム16から左右方向内方側に突出され、この突出部分とトラックフレーム16の左右方向内側の壁部とに亘って補強部材64が設けられている。
【0034】
また、筒部の54の前後には、径方向外方に突出する接当部36が設けられ、この接当部36が、内側のフランジ59に設けられた前後一対のストッパ37のいずれかに接当することにより、トラックフレーム16等の揺動軸22軸心回りの揺動規制がなされるように構成されている。
トラックフレーム16の下面側には、転輪14a〜dを取り付ける取付プレート66が溶接等によって固定され、取付プレート66には、下方側からネジ孔67が形成されている。
【0035】
一方、転輪14a〜dは、左右方向の軸心を有する筒部70と、この筒部70に挿通されて軸受を介して左右方向の軸心回りに回転自在に支持された支軸71と、筒部70の左右両側に配置されると共に支軸71に外嵌されて抜け止めされた輪体72とから構成されている。
筒部70は、駆動突部23の上方に位置しており、左右の輪体72は駆動突部23の左右両側に位置していて、クローラベルト15の内周面を転動する。
【0036】
また、筒部70には、前記取付プレート66の下面に接当する取付ブラケット73が一体的に延出されて設けられ、取付ブラケット73の取付プレート66に対する接当部分を貫通して、取付プレート66のネジ孔67に螺合されるボルト74によって、転輪14a〜dがトラックフレーム16に着脱自在に取り付けられている。
【0037】
また、前記スプロケット12は、その回転軸心Xが後車軸25の軸心Yよりも上方側に位置するように配置されているので、スプロケット12の下方側の空間が大きく採れ、これにより、前記転輪14a〜d及び取付ブラケット73とからなる転輪ユニットが、トラックフレーム16の下面側に下方側から取り付き得るように、該トラックフレーム16の下方側空間を十分に大きく採れ(トラックフレーム16の高さを十分に採れ)、トラックフレーム16の下面に転輪ユニットを着脱自在に取付固定することで、転輪14a〜dの取付強度の確保が図られている。
【0038】
前側のアイドラ13aは、クローラベルト15の張りを調整する張力調整装置75に設けられたブラケット76に左右方向の軸心廻りに回転自在に支持され、張力調整装置75はトラックフレーム16の前部に固定されている。
張力調整装置75は、トラックフレーム16に溶接等によって固定された外筒部83と、この外筒部83に出退自在に前方側から挿入された内筒部84と、これら外筒部83及び内筒部84に収納された緊張機構85とを備えている。
【0039】
内筒部84の前端側には、前側のアイドラ13aを支持するブラケット76が取付固定されている。
緊張機構85は、押圧部材86と、この押圧部材86と前記ブラケット76との間に介在された圧縮コイルバネ87と、押圧部材86と外筒部83の後壁83aとの間に介在されて押圧部材86をバックアップするグリスシリンダ88とを備えており、前記コイルバネ87によってアイドラ13aを介してクローラベルト15を付勢することにより、クローラベルト15に張りを与えていると共に、グリスシリンダ88のピストンロッドを進退させることにより、クローラベルト15の張りが調整できるようになっている。
【0040】
また、後側のアイドラ13bは、トラックフレーム16の後端側に固定されたブラケット77に左右方向の軸心廻りに回転自在に支持されている。
また、前後のアイドラ13a,13bは、図9に示すように、左右方向の軸心を有する筒部79と、この筒部79に挿通されて軸受を介して左右方向の軸心回りに回転自在に支持された支軸80と、筒部79の左右両側に配置されると共に支軸80に外嵌されて抜け止めされた輪体81とから構成されており、左右の輪体81は駆動突部23の左右両側に位置していて、クローラベルト15の内周面を転動する。
【0041】
また、図8に示すように、前端側の転輪14aを取り付ける取付プレート66は、他の転輪14b〜14dを取り付ける取付プレート66よりも上下方向の肉厚が薄く形成されていて、前端側の転輪14a下端の接地面からの高さが、他の転輪14b〜d下端よりもLだけ高くなるように、前端側の転輪14aがトラックフレーム16に取り付けられている。
【0042】
また、前後のアイドラ13a,13b下端の接地面からの高さも、前端側の転輪14a以外の転輪14b〜d下端よりも、それぞれM1,M2だけ高くなるように取り付けられている。
したがって、このクローラユニット2にあっては、舗装路面走行時におけるクローラベルト15の接地長E(クローラベルト15が前後方向に関して接地する範囲、クローラベルト15の周方向の接地長さ)が、柔軟地走行時において転輪14a〜dによって接地するクローラベルト15の接地長Fよりも短くなるように構成されている。
【0043】
圃場等の柔軟地(軟弱地)を走行する場合には、クローラベルト15は、例えば、前側のアイドラ13aの支軸80の略直下(直下近傍)から後側のアイドラ13bの支軸80の略直下(直下近傍)までの範囲Gで接地するが、舗装路面では、クローラベルト15は、前から2番目の転輪14bの支軸71の略直下から後端側の転輪14dの支軸71略直下の範囲Eで接地することとなる。
【0044】
すなわち、クローラベルト15の接地長は、柔軟地と舗装路面とでは、舗装路面の方がクローラベルト15の接地長が短くなり(クローラベルト15の接地面積、又は車体3からの荷重が作用する範囲が狭くなり)、これによって、舗装路面走行時において、走行及び旋回が比較的容易に行えるように構成されていると共に、圃場での走行時にあっては、クローラベルト15の接地面積が広く、低接地圧であり、不整地走行に適したものとなる。
【0045】
前記構成の実施の形態において、前端側の転輪14aをトラックフレーム16に上下動可能に支持すると共に、該転輪14aを油圧シリンダ等のアクチュエータによって昇降させるようにするなどして、転輪14aをトラックフレーム16に上下位置調整可能に支持し、舗装路面走行時に、転輪14aを若干持ち上げるようにしてもよい。
【0046】
また、前から2番目の転輪14bも前端側の転輪14aと同様に高い位置に配置させてもよく、転輪14a〜dの数がもっと多い場合には、3以上の転輪の高さを高くするようにしてもよい(複数個の転輪の位置を他の転輪よりも高い位置に配置してもよい)。
なお、本実施の形態では、揺動軸22が、クローラユニット2の前後方向後方側に寄っているので、前端側の転輪14aを高くしているが、揺動軸22が、クローラユニット2の前後方向前方側に寄っている或いは前後方向中央部に位置する場合等には、後端側の転輪14dの位置を高くすることにより、クローラベルト15の接地長を、舗装路面走行時に短くなるように構成してもよい。
【0047】
また、揺動軸22が、クローラユニット2の前後方向中央部に位置する場合、前端側及び後端側の転輪14a,14dを他の転輪14b,14cよりも高くすることにより、クローラベルト15の接地長を短くするようにしてもよい。
舗装路面走行時に、設けられている転輪14a〜dの数よりも少ない数の転輪14b〜dによって、車体3からの荷重を支持できるように構成することにより、舗装路面走行時のクローラベルト15の接地長が短くなるようになっていればよい。
【0048】
図10〜12は、他の形態に係るクローラユニット2を示しており、この形のものにあっては、クローラベルト15の接地長を変更可能とする機構を設けたものを例示しており、具体的には、トラックフレーム16を揺動軸22の軸心回りに強制的に揺動させることにより、後側のアイドラ13bと、該アイドラ13b近傍の転輪14c,14dとによってクローラベルト15を接地させることにより、クローラベルト15の接地長を短くするようにしたものを示している。
【0049】
図10及び図11において、トラックフレーム16には、前後一対の揺動ブラケット90F,90Rが支軸91を介して左右方向の軸心回りに揺動自在に支持されており、この揺動ブラケット90F,90Rには、斜め下方に延びるアーム部92が設けられ、各アーム部92の下部に、転輪14a〜14dが左右方向の支軸71を介して回転自在に取り付けられている。
【0050】
また、後車軸ケース19側と、トラックフレーム16側との間には、トラックフレーム16を強制揺動させるための油圧シリンダ93が介装されている。
前記油圧シリンダ93は、シリンダ本体94の基部側が、後車軸ケース19及び伝動ケース17に固定された取付台97に左右方向の支軸98を介して該支軸98の軸心回りに回動自在に支持され、油圧シリンダ93のピストンロッド95の先端側は、トラックフレーム16に固定された取付台99に左右方向の支軸100を介して該支軸100の軸心回りに回動自在に枢着されている。
【0051】
また、この油圧シリンダ93は、ピストン101の頂部側の油室102に圧油を供給することにより、ピストンロッド95が突出する単動形油圧シリンダで構成され、ピストン101とピストンロッド95とは分離されている。
その他の構成については、前記実施の形態と略同様に構成されるので、図示及び説明を省略する。
【0052】
の形態のものにあっては、通常走行時において、頂部側油室102はドレン回路に連通されていて、ピストンロッド95が自由に出退自在とされており、アイドラ13a,13b及び転輪14a〜14dが地面の凹凸に追従するように、トラックフレーム16の揺動軸22回りの揺動が許容されるようになっている。
また、クローラベルト15の接地長を短くする場合には、頂部側油室102に圧油を供給することにより、ピストンロッド95を伸長させる。すると、図12に示すように、トラックフレーム16が揺動軸22回りに矢示A方向に揺動し、後側のアイドラ13b及び後部側の転輪14c,14dによってクローラベルト15が接地し、これによって、クローラベルト15の接地長が短くできるようになっている。
【0053】
の形のクローラユニット2のように、クローラベルト15の接地長が変更可能な接地長可変形のクローラユニット2にあっては、舗装路面を走行する時に、クローラベルト15の接地長を短くするようにしてもよいし、旋回するとき(舗装路面走行時、圃場での走行時のどちらでもよい)に、クローラベルト15の接地長を短くして旋回するようにしてもよく、旋回するときに、クローラベルト15の接地長が短くなっていればよい。
【0054】
の形のクローラユニット2にあっても、舗装路面を走行する場合に、トラックフレーム16を強制的に揺動させて、後側のアイドラ13b及び後部側の転輪14c,14dによってクローラベルト15を接地させることにより、舗装路面走行時におけるクローラベルト15の接地長Eが、柔軟地走行時のクローラベルト15の接地長G及び柔軟地走行時に転輪14a〜dによって接地するクローラベルト15の接地長Fよりも短くなるように構成されている。
【0055】
なお、トラックフレーム16を強制的に揺動させるのに、前記油圧シリンダ93の代わりにグリスシリンダ、又は他のアクチュエータを採用してもよい。この場合も、通常走行時には、トラックフレーム16の揺動軸22回りの揺動が許容されるように構成される。
また、揺動軸22がクローラユニット2の前後方向中央部から前側寄りに設けられているものにあっては、前側のアイドラ13aと、その近傍の転輪14a,14bとによってクローラベルト15を接地させるように構成してもよい。
【0056】
また、トラクタ1は、圃場での作業時等の走行時と、舗装路面での移動走行時とでは、走行速度を異ならせて走行させるので、この走行速度の違いによって、クローラベルト15の接地長を自動的に切り換えるようにしてもよい。
すなわち、圃場走行時(作業時等)では遅く走行し(例えば、10km/時以下)、舗装路面での移動走行時では速く走行する(例えば、35km/時)ので、柔軟地での走行か、舗装路面での走行かを速度センサ等によって判別し、クローラベルト15の接地長が変わるように、前記油圧シリンダ93を制御するようにする。
【0057】
また、旋回時に、クローラベルト15の接地長を短くして、旋回するようにする場合にあっては、例えば、旋回するときに、クローラベルト15の接地長を手動によって切り替えるか、又は、直進走行か旋回かをハンドル6の切れ角を検出することによって判別し、このハンドル6の切れ角によってクローラベルト15の接地長が切り替わるようにしてもよい。
【0058】
図13及び図14は他の形態のクローラユニット2を示しており、転輪14cを油圧シリンダ104(又はその他のアクチュエータ)を介して、トラックフレーム16によって昇降可能に支持したものである。
前記油圧シリンダ104のシリンダ本体104Aは、トラックフレーム16に固定され、ピストンロッド104Bの先端側に、後から2番目の転輪14cを支持する支軸71が左右方向の軸心回りに回動自在に支持されている。
【0059】
その他の構成については、前記実施の形態と略同様に構成されるので、図示及び説明を省略する。
この図13及び図14に示す形態のものにあっては、油圧シリンダ104のピストンロッド104Bを伸長させることにより、トラックフレーム16が揺動軸22回りに、図13の矢示B方向に揺動し、図14に示すように、後側のアイドラ13b及び後部側の転輪14c,14dによってクローラベルト15が接地し、これによって、クローラベルト15の接地長を短くできるようになっている。
【0060】
図15は他の形態のクローラユニット2を示しており、複数の転輪14b〜d(図例では、前から2番目及び3番目並びに後端側の転輪の3つの転輪)を、トラックフレーム16に対して上下動可能に支持すると共に、油圧シリンダ等のアクチュエータによって上下に駆動できるようにしたものである。
その他の構成については、前記実施の形態と略同様に構成されるので、図示及び説明を省略する。
【0061】
の形のクローラユニット2にあっては、複数の転輪14b〜dを、仮想線で示すように、トラックフレーム16に対して下方移動させることにより、クローラベルトの接地長を短くできるようにしている。
なお、この形のクローラユニット2にあっては、複数の転輪14b〜dを下方移動させると、該転輪14b〜dを介してクローラベルト15に張りが付与されるように、該転輪14b〜dによって該クローラベルト15が押圧されるが、クローラベルト15は、前述したように、張力調整装置75のコイルバネ87によって、張りが付与されるように構成されているので、また、転輪14b〜dの移動量は左程大きくないことから、前記転輪14b〜dによって該クローラベルト15が押圧された分、張力調整装置75によって吸収可能(自動調整可能)とされている。
【0062】
図16及び図17は他の実施の形態を示しており、前後一側にスプロケット12を配置し、前後他側にアイドラ13を配置し、スプロケット12とアイドラ13間に複数の転輪14を配置したフルクローラ形のクローラユニット2が採用され、このクローラユニット2に、前記実施の形態と同様に、前後方向端部側の転輪14の高さを他の転輪14の高さよりも高い位置に配置したものである。
【0063】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されることはなく、種種設計変更可能であり、クローラユニット2の形式としては、揺動しない形式のクローラユニットを採用してもよく、また、クローラ式走行装置の形式として、クローラユニットを左右に独立に備えたものに限らず、トラックフレームの左右両側に設けたサイドフレームに、スプロケット,アイドラ,複数の転輪及びクローラベルトを設けた形式のものであってもよい。
【0064】
また、本発明を採用する車輌としては、前輪の替わりにクローラユニットを取り付けたもの、前後4輪の車輪の替わりに、4つのクローラユニットをそれぞれ独立に取り付けたもの等であってもよい。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、旋回性能のよいクローラ式走行装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 施の形態に係るクローラユニットの側面図である。
【図2】 同トラクタ後部の背面断面図である。
【図3】 同トラクタの側面図である。
【図4】 同クローラユニット上部の背面断面図である。
【図5】 同スプロケットの側面図である。
【図6】 同スプロケットの正面断面図である。
【図7】 同クローラユニット下部の背面断面図である。
【図8】 同クローラユニット下部の側面図である。
【図9】 同アイドラの断面図である。
【図10】 他の形態に係るクローラユニットの側面図である。
【図11】 同クローラユニットの背面図である。
【図12】 同クローラユニットの接地長が短くなった状態を示す側面図である。
【図13】 他の形態に係るクローラユニットの側面図である。
【図14】 同クローラユニットの接地長が短くなった状態を示す側面図である。
【図15】 他の形態に係るクローラユニットの側面図である。
【図16】 他の実施の形態に係るクローラユニットの側面図である。
【図17】 他の実施の形態に係るクローラユニットの側面図である。
【符号の説明】
12 スプロケット
13a アイドラ
13b アイドラ
14a〜d 転輪
15 クローラベルト
16 トラックフレーム

Claims (2)

  1. 回転駆動する駆動軸(26)に取り付けられたスプロケット(12)と、車体側に支持されるトラックフレーム(16)に取り付けられたアイドラ(13a,13b)及び複数の転輪(14a〜d)と、これらスプロケット(12),アイドラ(13a,13b)及び複数の転輪(14a〜d)に亘って巻き掛けられたクローラベルト(15)とを備え、スプロケット(12)を回転駆動することによってクローラベルト(15)を周方向に循環回走するようにしたクローラ式走行装置であって、
    走行時において転輪(14a〜d)で車体側からの荷重を受けるようにしたクローラ式走行装置において、
    前端側の転輪(14a)の下端が他の転輪(14b〜d)の下端よりも高くなるように該前端側の転輪(14a)が他の転輪(14b〜d)に対して上下動不能としてトラックフレーム(16)に取り付けられ、且つ、該前端側の転輪(14a)が他の転輪(14b〜d)に対して、舗装路面走行時にあっては前端側の転輪(14a)以外の他の転輪(14b〜d)で車体側からの荷重を受け、柔軟地走行時にあっては前端側の転輪(14a)と他の転輪(14b〜d)とで車体側からの荷重を受け得る高さ位置に取り付けられていることを特徴とするクローラ式走行装置。
  2. トラックフレーム(16)は、スプロケット(12)の下方に配置されていて該スプロケットの下方に位置する揺動軸(22)に、スプロケット(12)の回転軸心と平行な軸心回りに揺動自在に支持され、このトラックフレーム(16)の前後にアイドラ(13a,13b)を支持すると共に、該トラックフレームの前後アイドラ(13a,13b)間に複数の転輪(14a〜d)を支持し、前後のアイドラ(13a,13b)は他の転輪(14b〜d)よりも高い位置に取り付けられ且つ前端側の転輪(14a)は前側のアイドラ(13a)よりも低い位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のクローラ式走行装置。
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