JP3560099B2 - 二輪車フレーム用歪み取り装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二輪車フレーム用歪み取り装置に係り、特に、二輪車フレームの製造時における溶接工程で生じる変形を除去するための二輪車フレーム用歪み取り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より二輪車フレームは、複数の部材を溶接等により結合させて所定の形状の骨格が形成されており、かかる二輪車フレームの各結合部には、溶接時の熱による変形が発生する場合がある。
【0003】
特に、前輪を保持するフロントホーク及びハンドルと回転自在に係合する円筒状のヘッドパイプの周辺に変形が発生すると、二輪車の前輪と後輪とが予め計算された位置関係に配設されなくなり、このため、乗り心地,バランス及び操作性等に影響を及ぼすことがあった。
【0004】
図15は、二輪車フレーム100の斜視図を示している。この二輪車フレーム100の図における右端部には、ヘッドパイプ101が固定装備されている。また、符号102は、後輪を保持するスイングアーム103と回動自在に係合する二つのスイングアームピボットである(一方は図示略)。
【0005】
この二輪車フレーム100において、溶接等を原因とする変形によりヘッドパイプ101には主に3種類のねじれ等が発生する。即ち、二輪車フレーム100の左右方向bを中心としたねじれcが生じる場合,二輪車フレーム100の前後方向dを中心とするねじれeが生じる場合及び二輪車フレーム100の左右方向bに沿ってヘッドパイプ101全体が平行にずれてしまう場合が挙げられる。
【0006】
これらについて図16乃至図18に基づいて詳述する。図16は、図20の矢印A方向からみた二輪車フレーム100の側面図を示している。前述のように、ヘッドパイプ101に二輪車フレーム100の左右方向bを中心とするねじれcが生じた場合、ヘッドパイプ101の中心軸aは、路面と成す角度αに変化が生じる。かかる角度αは、設計の段階で予め設定されており、このような変形が生じると、この二輪車フレーム100を装備した二輪車は、本来の走行性を得られなくなってしまう。
【0007】
また、図17(A)は、図15の矢印B方向からみた二輪車フレーム100の正面図を示している。前述のように、ヘッドパイプ101に二輪車フレーム100の前後方向dを中心とするねじれeが生じた場合、中心軸aは、二つのスイングアームピボット102の中心軸fとの成す角βが垂直にならない。
【0008】
その結果、かかる二輪車フレーム100に前輪103と後輪104が装備されると、図17(B)に示すように、後輪104に対して前輪103は傾きを生じ、場合によっては、バランス上,又直進性及び走行性に影響する場合が生じる。
【0009】
また、二輪車フレーム100の左右方向bに沿ってヘッドパイプ101全体が平行にずれてしまうと、図18(A)に示すように、中心軸aが、二つのスイングアームピボット102の中間を通らず(g≠h)、かかる二輪車フレーム100に基づいて前輪103と後輪104が装備されると、図18(B)に示すように、後輪104に対して前輪103にズレが生じ、図17の場合と同様に、場合によっては、バランス上,又直進性及び走行性に影響する場合が生る。
【0010】
以上のような不都合を排除するため、従来は、ヘッドパイプ101にねじれ等の変形が発生した場合には、バール(鉄の棒)等を使用したテコ方式や、油圧シリンダ,ハンマ等の機材を使用した手作業によって、変形の矯正(歪み取り)を行っていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来は、歪み取り作業を作業者の手作業によって行っており、かかる作業は、勘と経験に頼るところが大きく、熟練を要する作業であった。即ち、かかる熟練の作業者の人数によって歪み取り作業の効率が決定されてしまうため、大量の二輪車フレームの歪み取り作業の場合には不適であり、また、歪み取り作業を行う各作業者によって矯正の精度や作業時間が異なる等の理由で定量化が困難であった。
【0012】
さらに、昨今の生産技術の進歩に伴い二輪車フレームはより強度が向上しているため、バール等を使用する手作業は、作業者に大きな負担をかける等の不都合が生じていた。
【0013】
【発明の目的】
本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、作業者を手作業から開放すると共に大量の二輪車フレームに対して一定且つ精度の高い歪み取り作業を行い得る二輪車フレーム用歪み取り装置を提供することを、その目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、二輪車フレームのヘッドパイプを所定の自由度をもって保持するヘッドパイプクランプ機構と、二輪車フレームの二つのスイングアームピボットを固定保持するピボットクランプ機構と、ヘッドパイプクランプ機構を,当該ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプをいずれの方向へも傾斜させる傾斜付勢手段と、ピボットクランプ機構を,これに保持された二つのスイングアームピボットの中間で且つ二輪車フレームの上下方向を軸として回動させる回動付勢手段と、傾斜付勢手段の付勢によるヘッドパイプクランプ機構の変位量を検出する傾斜変位量検出手段と、回動付勢手段の付勢によるピボットクランプ機構の変位量を検出する回動変位量検出手段と、ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの自由度の範囲内で生じる位置ズレ量を検出する位置検出手段と、この位置検出手段の検出信号に基づいて傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御を行う動作制御手段とを備えるという構成を採っている。
【0015】
上記構成の場合、二輪車フレームは、二つのスイングアームピボットがピボットクランプ機構に固定され、またヘッドパイプは所定の自由度をもたせた状態でヘッドパイプクランプ機構に保持される。
【0016】
二輪車フレームに歪みが生じている場合、ヘッドパイプに自由度の範囲内で位置ズレが生じる。このヘッドパイプの位置ズレが、位置検出手段によって検出され動作制御手段に出力されると、動作制御手段では、この位置ズレ量に応じて、ヘッドパイプクランプ機構及びピボットクランプ機構の各変位量を決定し、これらの変位量と各変位検出手段から検出される変位量とが一致するように傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御が行われる。
【0017】
二輪車フレームは、一定時間これら傾斜付勢手段と回動付勢手段とから荷重が付加されることにより、歪みを修正する方向に弾塑性変形を生じる。そしてその後、荷重の付加が解除されると、二輪車フレームは、荷重が付加された方向と反対の方向に戻り現象を生じるため、この後で行われる位置ズレ量の測定をより正確に行うために、二輪車フレームは一定時間無負荷状態で放置される。
【0018】
さらにその後、ヘッドパイプクランプ機構におけるヘッドパイプの位置検出が行われ、理想位置に矯正されている場合には、歪み取り作業は終了する。また、位置ズレがある場合には、この位置ズレ量に基づいて、再び各付勢手段による歪み取り作業が繰り返される。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を有すると共に、傾斜付勢手段が,ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの中心軸が交差する平面上で互いに交わる二方向からヘッドパイプに傾斜を付勢すると共に、傾斜変位量検出手段が,各方向についての変位量を検出するという構成を採っている。
【0020】
上記構成の場合、上記の各二方向及びこれらの合成方向から傾斜を付勢して、ヘッドパイプは全ての方向に荷重が付加される。また、他の動作については、請求項1記載の構成と同様に行われる。
【0021】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を有すると共に、位置検出手段が、ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの上端部及び下端部近傍の各外周面に対向する二対の距離センサからなるという構成を採っている。
【0022】
上記構成の場合、ヘッドパイプの上端部と下端部のそれぞれについて二つの距離センサがその外周面に対する距離検出を行う。即ち、各距離センサが検出を行う二方向からなる位置座標によりヘッドパイプの上下端部の各位置が検出され、上下端部の各位置の差異により、ヘッドパイプ傾斜状態の検出が行われる。また、他の動作については、請求項1記載の発明と同様の動作制御が行われる。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を有すると共に、動作制御手段に、各付勢手段の作動時に各変位量検出手段に検出される変位量と各付勢手段の作動前後の位置検出手段に検出されるヘッドパイプの位置の変化とを経験値として記憶する記憶部と、この記憶部の経験値及び位置検出手段の検出信号に基づいて傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御を行う経験値参酌機能とを設けるという構成を採っている。
【0024】
上記の構成の場合、各付勢手段による付勢動作の各変位量と、当該付勢動作のによるヘッドパイプの位置の変化量が検出され経験値として記憶部に記憶される。
【0025】
即ち、記憶部に記憶される経験値とは、傾斜付勢手段により付勢されるヘッドパイプクランプ機構の変位量とこれによるヘッドパイプの位置変化量、又は、回動付勢手段により付勢されるピボットクランプ機構の変位量とヘッドパイプの位置変化量との関係を示すデータである。
【0026】
各付勢手段の動作前にヘッドパイプの位置ズレ量が検出され、この位置ズレ量と近似する位置変化量の経験値が記憶部に記憶されている場合に、経験値参酌機能により優先的にこの経験値に基づいて各付勢手段の動作における変位量が決定される。
【0027】
また、上記に該当する経験値が存在しない場合には、請求項1記載の構成と同様の動作が行われる。
【0028】
本発明は、上記各構成に基づいて、前述した目的を達成しようとするものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の位置実施形態を図1乃至図15に基づいて説明する。本実施形態は、図15に示した二輪車の二輪車フレーム100に生じた歪みを除去する二輪車フレーム用歪み取り装置10を示している。ここで、図1はこの二輪車フレーム用歪み取り装置10の正面図、図2は二輪車フレーム用歪み取り装置10の平面図を示している。
【0030】
この二輪車フレーム用歪み取り装置10は、二輪車フレーム100のヘッドパイプ101を所定の自由度をもって保持するヘッドパイプクランプ機構2と、二輪車フレーム100の二つのスイングアームピボット102を固定保持するピボットクランプ機構3と、ヘッドパイプクランプ機構2を,当該ヘッドパイプクランプ機構2に保持されたヘッドパイプ101の中心軸a(図15参照)がいずれの方向にも傾斜するように付勢する傾斜付勢手段4と、ピボットクランプ機構3を,これに保持された二つのスイングアームピボット102の中間で二輪車フレーム100の上下方向を軸として回動させる回動付勢手段5と、傾斜付勢手段4の付勢によるヘッドパイプクランプ機構2の変位量を検出する傾斜変位量検出手段6と、回動付勢手段5の付勢によるピボットクランプ機構3の変位量を検出する回動変位量検出手段7と、ヘッドパイプクランプ機構2に保持されたヘッドパイプ101の自由度の範囲内についての位置検出を行う位置検出手段8(図4乃至図6参照)と、この位置検出手段8の検出信号に基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御を行う動作制御手段9を備えている。また、符号1は、上記各構成を所定の位置で固定する支持台である。
【0031】
以下各部を詳説する。
【0032】
図3は、ヘッドパイプクランプ機構2を示している。このヘッドパイプクランプ機構2は、主に、ヘッドパイプ101を保持するクランプ部21と、このクランプ部21を図3における上下左右方向に移動調節する調節部22と、この調節部22を左右方向にスライド自在に載置する載置台23と、傾斜付勢手段4からの傾斜動作をクランプ部21に伝達する伝達アーム24とをから構成される。
【0033】
クランプ部21の正面方向の断面図を図4に,側面図を図5に示す。このクランプ部21は、図4に示すように、右側面が開口した箱体211と、箱体211の上下端部が左右方向に回動自在として当該箱体211を保持する箱体保持部材212と、調節部22に上下に摺動自在に係合する連結部材213と、この連結部材213に対して箱体保持部材212を回動自在に結合させる軸受け214とを有している。
【0034】
上記箱体保持部材212は、図5に示すように軸受け212Aを介して箱体211の両側端部から保持しているため、箱体211を図4に示す矢印i方向に回動させることを可能としている。また、これと併せて、軸受け214により、箱体211は、図4の水平方向を軸として、図5に示す矢印j方向の回動を可能としている。
【0035】
箱体211の内部には、互いに同軸且つ上下動自在に配設された上側凸状部材215及び下側凸状部材216とが配設されている。これらの凸状部材215,216は、それぞれ円柱状の先端部を対向させて配設されると共に上下動作により二輪車フレーム100のヘッドパイプ101の内部に挿入することによりこのヘッドパイプ101の保持を行う。
【0036】
さらに、これらの凸状部材215,216は、共に先端部の外径がヘッドパイプ101の内径よりも幾分小さく設定されており、挿入時には、ヘッドパイプ101の内壁との間に遊びが生じる。この遊びにより、ヘッドパイプ101は、各凸状部材215,216に対して自由度をもって保持された状態となる。
【0037】
また、上側凸状部材215及び下側凸状部材216は、各々に上下動を付勢する上下動付勢手段217,218に保持されている。これら上下動付勢手段217,218は、それぞれ駆動モータ217A,218Aと伝達手段217B,218Bとから構成されている。即ち、駆動モータ217A,218Aの回転動作は、伝達手段217,218のネジ伝達機構により上下動作に変換されて各凸状部材215,216に伝えられる。ここで上下動付勢手段217,218の駆動源としては油圧シリンダを使用しても良い。
【0038】
二輪車フレーム100は、スイングアームピボット102が後述するピボットクランプ機構3により固定保持されるため、二輪車フレーム100のいずれかの箇所で歪みを生じている場合、凸状部材215,216に保持されたヘッドパイプ101はその中心軸aが、上述した遊びにより、凸状部材215,216の中心軸と不一致となり位置ズレを生じる(ここで、この位置ズレの距離を位置ズレ量とする)。
【0039】
この位置ズレ量を検出する手段として、各凸状部材215,216に保持されたヘッドパイプ101の上端部と下端部の各近傍に位置検出手段として一対のレーザ変位計8(距離センサ)がそれぞれ配設されている。
【0040】
ヘッドパイプ101の上下端部に近接する各対のレーザ変位計8は、図6に示すように、それぞれの検出方向が、各凸状部材215,216の中心軸で直交するように配設されている(γ=90゜)。これにより、ヘッドパイプ101の上端部と下端部の各中心軸位置と、凸状部材215,216の中心軸との相対的な位置ズレ量が検出される。そして、これらヘッドパイプ101の上端と下端における位置ズレ量の差異に基づいて、ヘッドパイプ101の中心軸aがどの方向に傾斜しているかが検出される。
【0041】
このヘッドパイプ101の傾斜に応じて、傾斜付勢手段4から箱体211に伝達アーム24を介して回動動作が付勢される。この伝達アーム24は、箱体211の下部に垂下状態で固定されており、その下端部には二股に形成されたV字部材241(図2に破線で示す)が設けられ、V字部材241の両端部にはそれぞれ後述する傾斜付勢手段4,4の付勢アーム41,41の先端部がそれぞれボールソケット継手41A,41Aを介して連結されている。
【0042】
箱体211は、上述したように軸受け214と箱体保持部材212とにより回動自在に保持されているため、このV字部材241は、伝達アーム24を介して、図7に示すように、軸受け214の回動軸kと箱体保持部材212の回動軸lとの交点を中心とする球面上を移動自在となっている。
【0043】
即ち、傾斜付勢手段4から回動が付勢された場合には、V字部材241は、矢印m方向若しくはn方向又はこれらの合成方向に移動し、これに応じて、箱体211は、回動軸k若しくは回動軸lを中心とする回動又はこれらの合成方向への回動を行い、各凸状部材215,216を介してヘッドパイプ101は、全ての方向に傾斜するように荷重が付加される。
【0044】
次に調節部22を図3に基づいて説明する。この調節部22は、載置台23上で摺動自在に載置された筺体である調節部本体221と、この調節部本体221を載置台23に対して左右方向に移動させる水平方向移動手段222と、前述した連結部材213を介してクランプ部21を上下方向に移動させる上下方向移動手段223とから構成される。
【0045】
図8は、図3中の矢印方向Cからみた載置台23とこれに載置される調節部本体221を示している。ここに示すように、調節部本体221の下端部の両側には、載置台23上に設けられたガイドレール231に係合する係合突片221Aが設けられており、これにより図3における一定の左右方向に案内される。
【0046】
また、図9には図3中の矢印方向Dからみた調節部本体221と連結部材213との係合状態を示している。ここに示すように、調節部本体221の連結部材213側の上下端部の両側にはガイドレール221Cが設けられており、連結部材213の左側に設けられた係合板213Aを図3における上下方向に摺動自在に保持している。
【0047】
さらに、図3に示すように、この調節部本体231の内側下部には、水平方向移動手段222が配設されている。この水平方向移動手段222は、載置台23の上面に固定されネジ穴を有する不動固定部224と、このネジ穴と螺合しその一端部で調節部本体221に回転自在に保持される水平移動付勢軸225と、この水平移動付勢軸225に回転力を付勢するためのハンドル226とから構成される。また、符号221Bは、調節部本体221の内側から載置台23側に貫通する長穴であり、この長穴221Bの範囲内で載置台23に対して調節部本体221が移動するようになっている。
【0048】
またさらに、この調節部本体221の内部右側には、上下方向移動手段223が配設されている。この上下方向移動手段223は、連結部材213の係合板213Aに固定されネジ穴を有する不動固定部227と、このネジ穴と螺合しその一端部で調節部本体221に回転自在に保持される垂直移動付勢軸228と、この垂直移動付勢軸228に回転力を付勢するためのハンドル229とから構成される。また、符号221Dは、調節部本体221の内側から連結部材213側に貫通する長穴であり、この長穴221Dの範囲内で調節部本体221に対してクランプ部21が上下移動するようになっている。
【0049】
載置台23は、図8に示すように、逆U字状に形成されており、U字の開口部232の内側には、後述するピボットクランプ機構3の回動板31の回動端部が載置台23の開口部232の幅の許容する範囲内で回動を行うようになっている。
【0050】
図10に、ピボットクランプ機構3を示す。この図10(A)はピボットクランプ機構3の平面図を示し、図10(B)は図10(A)の矢印方向Eからみたピボットクランプ機構3を示している。
【0051】
ピボットクランプ機構3は、一端部を軸受け32を介して支持台1上で回動自在に支持されると共に他端部を回動付勢手段5により回動を付勢される回動板31と、この回動板31上に固定装備され,二輪車フレーム100の二つのスイングアームピボット102をそれぞれ着脱自在に保持する保持手段33とから構成される。
【0052】
回動板31は、図10(A)における左側に向かってその幅が狭くなる形状の板状部材であり、その中央には略四角形状の貫通穴31Aが形成されている。この貫通穴31Aには、ヘッドパイプクランプ機構2の伝達アーム24が遊挿され、この貫通穴31Aの許容する範囲で伝達アーム24は箱体211側を中心とする回動動作が行われる。
【0053】
保持手段33は、二輪車フレーム100の二つのスイングアームピボット102にそれぞれ挿通されるピン34と、このピン34の出し入れを自在に行うピン出入付勢部35とから構成される。この保持手段33は、前述の軸受け32による回動板31の回動動作の中心部と二つのスイングアームピボット102の中間部とが一致するように各ピン34の位置が設定されている。
【0054】
次に、図2に基づいて傾斜付勢手段4について説明する。この傾斜付勢手段4は、回動板31の図における上下両側にそれぞれ一体ずつ装備されている。各傾斜付勢手段4は、前述の伝達アーム24のV字部材241にボールソケット継手41Aを介して一端部を連結された付勢アーム41と、この付勢アーム41の他端部とボールソケット継手41Bを介して連結され,図2における左右方向に往復自在の往復移動部材42と、この往復移動部材42の駆動源となる駆動モータ43と、この駆動モータ43の回転力を往復移動力にして往復移動部材42に伝達する伝達部(図示略)とから構成される。
【0055】
これら二つの傾斜付勢手段4の各駆動モータ43により二つの往復移動部材42に等距離または異なる距離の左右方向の往復動作が付勢されることより、各付勢アーム41を介してV字状部材241は、前述した球面上の一定の範囲内におけるあらゆる位置に移動させることが可能となっている。
【0056】
これにより、V字状部材241の移動から伝達アーム24を介して、ヘッドパイプクランプ機構2に保持されたヘッドパイプ101の中心軸aと交差する平面上で互いに交わる二方向から当該ヘッドパイプ101に傾斜が付勢される構成になっている。
【0057】
また、各傾斜付勢手段4には、傾斜変位量検出手段6として高精度測長器(リニアスケール)が併設されており、各往復移動部材42の左右方向の移動距離をヘッドパイプクランプ機構2の変位量として検出すると共に動作制御手段9に出力する。
【0058】
なお、上述した傾斜付勢手段4の駆動源は、油圧シリンダ等を使用しても良い。
【0059】
次に、回動付勢手段5を図2に基づいて説明する。この回動付勢手段5は、回動板31の図における左側端部にボールソケット継手51Aを介して一端部を連結された付勢アーム51と、この付勢アーム51の他端部とボールソケット継手51Bを介して連結され,図2における上下方向に往復自在の往復移動部材52と、この往復移動部材52の駆動源となる駆動モータ53と、この駆動モータ52の回転力を往復移動力にして往復移動部材に伝達する伝達部(図示略)とから構成される。
【0060】
この回動付勢手段5の駆動モータ53により往復移動部材52の左右方向の往復動作が付勢されることより、付勢アーム51を介して回動板31に軸受け32を中心とする回動動作が付勢される。
【0061】
なお、上述した回動付勢手段5の駆動源は、油圧シリンダ等を使用しても良い。
【0062】
図11に基づいて、動作制御手段9について説明する。この動作制御手段9は、ヘッドパイプ101の中心軸aの位置ズレ量に対応する予め設定された傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の各変位量のマップが記憶されたマップ記憶部91と、各レーザ変位計8の検出信号に応じてマップ記憶部91のマップに従い傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御を行う制御部92と、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作後のヘッドパイプ101の位置ズレ量の変化とその動作の際の各付勢手段4,5の変位量との組み合わせを経験値として随時記憶する経験値記憶部(記憶部)93とを備えている。
【0063】
さらに、各レーザ変位計8に検出されたヘッドパイプ101の位置ズレ量が、経験値記憶部93に記憶された経験値の位置ズレ量と近似する場合に、マップ記憶部91のマップに優先してこの経験値に基づく各付勢手段4,5の動作制御を行う経験値参酌機能94を制御部92に設けている。
【0064】
図12に、上記各構成の二輪車フレーム用歪み取り装置10の動作を示すフローチャートを示す。これに基づいて、本実施形態の動作を詳説する。
【0065】
まず、二輪車フレーム100の二つのスイングアームピボット102をピボットクランプ機構3に装着する。ピボットクランプ機構3では、二つのピン34がピン出入付勢手段35側に引っ込められた状態で、各ピン34の位置に二輪車フレーム100の各スイングアームピボット102が位置決めされた後に、各ピン34をこれらスイングアームピボット102内に挿入し、固定を行う(図10参照)。
【0066】
次に、二輪車フレーム100のヘッドパイプ101をヘッドパイプクランプ機構2に装着する。このとき、ヘッドパイプクランプ機構2のクランプ機構21は、調節部22のハンドル226及びハンドル229を操作し、所定の位置となるように調節される。
【0067】
その後、ヘッドパイプ101は、クランプ機構21の箱体211内部に遊挿され、この箱体211の内部において上方から上側凸状部材215が挿入される共に下方から下側凸状部材216が挿入され、これら凸状部材215,216に挟持されて保持される(図4参照,ステップS1)。
【0068】
そして、装着時のヘッドパイプ101の上下の各端部における中心軸aの上側凸状部材215及び下側凸状部材216の中心軸に対する位置ズレ量が、各レーザ変位計8により検出される(図6参照,ステップS2)。
【0069】
このとき、ヘッドパイプ101の上下端部が共に所定の値より小さいズレ量である場合には、位置ズレが生じていない状態,即ち二輪車フレーム100に歪みがない状態として制御部92は、二輪車フレーム用歪み取り装置10の動作を終了する。
【0070】
また、ヘッドパイプ101の少なくとも上下端部のいずれか一方に位置ズレが検出されると、各レーザ変位計8は、それぞれの検出距離に基づく出信号を動作制御手段9の制御部92に出力する(ステップS3)。
【0071】
レーザ変位計8からの出力を受けて、制御部92では、経験値参酌機能94が、当該ヘッドパイプの位置ズレ量に近似する経験値を,経験値記憶部93の既に蓄積されている中から検索する(ステップS4)。
【0072】
近似する経験値が存在する場合には、その経験値に基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の変位量が決定されると共にこれに基づいて動作制御が行われ(ステップS5)、存在しない場合には、マップ記憶部91のマップに基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の変位量が決定されると共にこれに基づいて動作制御が行われる(ステップS6)。
【0073】
ここで、傾斜付勢手段4の変位量とは、図2に示す往復移動部材42の左右方向の移動距離を示すものであり、また、回動付勢手段5の変位量とは、図2に示す往復移動部材52の上下方向の移動距離の示すものである。
【0074】
またここで、具体的に、ヘッドパイプ101の位置ズレ量とこれを矯正するために付加する荷重の方向の関係を図13及び図14に示す。
【0075】
図13(A)は上側凸状部材215が挿入された状態のヘッドパイプ101の上端近傍の上方からみた断面図を示し、図13(B)は下側凸状部材216が挿入された状態のヘッドパイプ101の下端近傍の上方からみた断面図を示している。これらに示すように、ヘッドパイプ101の上端部が左側に偏心し、下端部が右側に偏心している場合には、図13(C)に示すようにヘッドパイプ101に対して矢印方向pに回動させるように傾斜付勢手段4により荷重が加えられる。
【0076】
例えば、矢印方向pの回動が図2における上下方向を中心軸とする回動である場合には、二つの傾斜付勢手段4について、各往復移動部材42が同方向,等距離の移動が付勢される。伝達アーム24を介して箱体211に、図4における矢印i方向の回動が付勢される。このとき、各往復移動部材42の移動距離は、各傾斜付勢手段4ごとに併設された傾斜変位量検出手段6により検出されると共に動作制御手段9に出力され、これに基づき正確に所定変位の回動動作がヘッドパイプ101に付勢される。
【0077】
一方、矢印方向pの回動が図2における左右方向を中心軸とする回動である場合には、二つの傾斜付勢手段4について、各往復移動部材42に互いに異なる距離の移動が付勢され、伝達アーム24を介して箱体211に、図5における矢印j方向の回動が付勢される。上記と同様にして各傾斜付勢手段4の変位量が傾斜変位量検出手段6に検出され、それぞれ正確に所定変位となるように動作制御が行われる。
【0078】
図14(A)は上側凸状部材215が挿入された状態のヘッドパイプ101の上端近傍の上方からみた断面図を示し、図14(B)は下側凸状部材216が挿入された状態のヘッドパイプ101の下端近傍の上方からみた断面図を示している。これらに示すように、ヘッドパイプ101の上端部,下端部が共に、図における上側に偏心している場合には、図14(C)に示すようにピボットクランプ機構3側に矢印方向qの回動動作が回動付勢手段5により付勢される。
【0079】
即ち、回動付勢手段5の往復移動部材52は、この回動付勢手段5に併設された回動変位量検出手段7によりその移動距離が動作制御手段9に出力されつつ移動動作が付勢されるため、所定の移動距離により正確に合わせられる。これによりピボットクランプ機構3の回動板31は、軸受け32を中心とする回動動作が行われる。かかる場合、回動を付勢されるのはスイングアームピボット102側であるが、これにより、相対的にヘッドパイプ101の位置が矯正されることになる。
【0080】
上述した傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5による各動作の組み合わせによりヘッドパイプ101のあらゆる位置ズレ状態に対する矯正動作が行われる。またこのとき、傾斜付勢手段4又は回動付勢手段5によるヘッドパイプ101に対する荷重の付加は、一定時間継続して行われる(例えば、数十分〜数時間)。これにより二輪車フレーム100の各部の塑性変形が促される。
【0081】
ステップS5又はステップS6による各付勢手段4,5の動作後、二輪車フレーム100は、一定時間(例えば、数十分〜数時間)無付加状態で放置され、その後再び、各レーザ変位計8によるヘッドパイプ101の位置ズレ量の検出が行われる(ステップS7)。これにより各付勢手段4,5による荷重の付加による弾性変形が解消され、塑性変形のみによるヘッドパイプ101の変化が測定される。
【0082】
この検出により、動作制御手段9では、上記各付勢手段4,5の荷重の付加によるヘッドパイプ101の位置ズレ量の変化と各付勢手段4,5の各変位量との組み合わせを新たな経験値として経験値記憶部93に記憶される(ステップS8)。
【0083】
上記各レーザ変位計8により、ヘッドパイプ101の上下端部が共に所定の値より小さいズレ量と検出された場合には、位置ズレが生じていない状態,即ち二輪車フレーム100に歪みがない状態として制御部92は、二輪車フレーム用歪み取り装置10の動作を終了する。
【0084】
また、ヘッドパイプ101の少なくとも上下端部のいずれか一方に位置ズレが検出されると、各レーザ変位計8は、それぞれの検出距離に基づく出信号を動作制御手段9の制御部92に出力する(ステップS9)。
【0085】
この後、ステップS4以降の動作が行われ、同様の動作が二輪車フレーム100の歪みがなくなるまで繰り返される。
【0086】
本実施形態は、前述した各構成により以上の動作が行われるため、二輪車フレーム100の歪み取り作業の自動化を図ることが可能としている。
【0087】
このため、作業者を従来の手作業による歪み取り作業から開放し、この歪み取り作業に伴う大きな労働負担及び煩雑性の解消が可能となった。
【0088】
さらに、本実施形態は、位置検出手段8によりヘッドパイプ101の軸ズレ状態を検出する構成であるため、位置検出手段8として高精度なレーザ変位計を使用することにより、ヘッドパイプ101の位置ズレを正確に検出することが可能となった。
【0089】
また同様にして、本実施形態は、傾斜変位量検出手段6及び回動変位量検出手段7を高精度測長器を使用しているため、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御をより精密に行うことができ、ヘッドパイプ101の矯正の際により精度良く荷重を付加することが可能である。
【0090】
また、従来のように複数の作業者の経験による手作業ではなく、マップ記憶部91に記憶された常に一定のマップに基づいて回動付勢手段4及び傾斜付勢手段5の動作制御が行われるため、複数の二輪車フレーム100に対して歪み取り作業を常に同一条件に仕上げることが可能となり、歪み取り作業の定量化を図ることが可能となった。このため、二輪車フレームの大量生産のラインに組み込むことも容易となった。
【0091】
さらに、本実施形態は、傾斜付勢手段4が、ヘッドパイプクランプ機構2に対する傾斜動作を、ヘッドパイプ101の中心軸aが交差する平面上で互いに交わる位置関係にある二つの付勢アーム41,41によって行うため、当該各付勢アーム41,41の配設方向の合成方向についてヘッドパイプ101を傾斜させることができる。即ち、これにより、ヘッドパイプ101をほぼ全ての方向に傾斜させて矯正することが可能となっている。
【0092】
また、本実施形態は、ヘッドパイプクランプ機構2に保持されたヘッドパイプ101の上端部及び下端部近傍の各外周面にそれぞれ対向する二対のレーザ変位計8を設け、対となる各レーザ変位計8の検出方向がヘッドパイプ101を保持する上下の凸状部材215,216の中心軸で直交するように配設している。このため、ヘッドパイプ101の上下の各端部において、各凸状部材215,216からの位置ズレ量を直交する二方向から検出することができ、これら各検出変位によりヘッドパイプ101の各端部がいかなる方向にずれているかを検知することを可能としている。
【0093】
さらにまた、本実施形態では、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5による矯正動作が行われる度に各付勢手段4,5の変位量とこれによるヘッドパイプ101の位置ズレの変化量とを経験値として記憶する経験値記憶部93と、この経験値に基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御を行う経験値参酌機能94とを動作制御手段9に設けている。
【0094】
二輪車フレーム100の歪み取り作業は、そのヘッドパイプ101の位置ズレ状態に応じて一定のマップに基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御を行っても、作業時の各条件に違いにより理論通りの結果とならない場合があり、かかる場合に、実際に行われた歪み取り作業に基づく経験値を記憶し、この経験値がより多く蓄積されると共にこれに基づいてヘッドパイプ101の歪み取り作業が行われることにより、より正確に且つ迅速に歪み取り作業を行うことが可能となる。
【0095】
ここで、上記の経験値記憶部93には、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の各変位量だけでなくこれら動作の付勢を継続する時間をさらなる経験値として記憶するようにしても良い。
【0096】
また、また、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の付勢アーム41,51毎に、荷重検出センサを設け、各動作の付勢時の各荷重を検出する共に、動作制御手段9により各荷重について所定の値となるように制御を行う構成としても良い。また、この場合の各荷重についても、経験値として経験値記憶部93に取り込む構成としても良い。
【0097】
また、一定量の経験値が蓄積された場合に、これらの経験値に基づいて変位量とヘッドパイプ101の矯正による位置ズレ量の変化との新たなマップを形成し、これをマップ記憶部91に入力し直すことが望ましい。これにより、二輪車フレームの歪み取り作業をより迅速化させることが可能となる。
【0098】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明では、前述した各構成により、二輪車フレームの歪み取り作業の自動化を図ることが可能となった。このため、作業者を従来の手作業による歪み取り作業から開放し、この歪み取り作業に伴う大きな労働負担及び煩雑性の解消が可能となった。
【0099】
さらに、位置検出手段によりヘッドパイプの軸ズレ状態を検出する構成であるため、位置検出手段に精度の高いものを使用することにより、ヘッドパイプの位置ズレを正確に検出することが可能となった。
【0100】
また同様にして、傾斜変位量検出手段及び回動変位量検出手段を精度の高いものとすることにより、傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御をより精密な動作制御を行うことができ、ヘッドパイプの矯正の際により精度良く荷重を付加することが可能である。
【0101】
また、従来のように複数の作業者の経験による手作業ではなく、動作制御手段により一定条件に従って回動付勢手段及び傾斜付勢手段の動作制御が行われるため、複数の二輪車フレームに対して歪み取り作業を常に同一条件に仕上げることが可能となり、歪み取り作業の定量化を図ることが可能となった。このため、二輪車フレームの大量生産のラインに組み込むことが可能である。
【0102】
請求項2記載の発明では、傾斜付勢手段が、ヘッドパイプクランプ機構に対する傾斜動作を、ヘッドパイプの中心軸が交差する平面上で互いに交わる二方向から行う構成であるため、これら二方向の合成方向ついてヘッドパイプを傾斜させることができ、これにより、ヘッドパイプをほぼ全ての方向に傾斜させるように荷重を付加することを可能としている。
【0103】
請求項3記載の発明では、位置検出手段が、ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの上端部及び下端部近傍の各外周面にそれぞれ対向する二対の距離センサからなり、各対の距離センサによりヘッドパイプの上端部及び下端部の位置ズレを二方向から検出する構成であるため、これら各検出変位によりヘッドパイプの各端部がいかなる方向にずれているかを有効に検知することが出来、上端部と下端部のズレ状態からヘッドパイプの傾斜方向を有効に検知することが可能となっている。
【0104】
請求項4記載の発明では、傾斜付勢手段及び回動付勢手段による矯正動作が行われる度に各付勢手段の変位量とこれによるヘッドパイプの位置ズレの変化量とを経験値として記憶する経験値記憶部と、この経験値に基づいて傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御を行う経験値参酌機能とを動作制御手段に設けているため、二輪車フレームの歪み取り作業が、実際に行われた歪み取り作業に基づいて蓄積された経験値に基づいてヘッドパイプの歪み取り作業が行われることにより、より正確且つ迅速に歪み取り作業を行うことが可能となる。
【0105】
本発明は以上のように構成され機能するので、これにより従来にない優れた二輪車フレーム用歪み取り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の正面図を示す。
【図2】本発明の一実施形態の平面図を示す。
【図3】ヘッドパイプクランプ機構を示す正面図である。
【図4】クランプ部の正面方向の断面図である。
【図5】クランプ部の側面図である。
【図6】位置検出手段の配置を示す説明図である。
【図7】箱体の保持状態と伝達アームの回動との関連を説明する説明図である。
【図8】図3における矢印C方向からみた載置台の正面図を示す。
【図9】図3における矢印D方向からみた載調節部本体と連結部材の係合状態を示す説明図である。
【図10】ピボットクランプ機構を示しており、図10(A)はピボットクランプ機構の平面図を示し、図10(B)は図10(A)中の矢印E方向からみたピボットクランプ機構を示す。
【図11】動作制御手段を示すブロック図である。ヘッドパイプクランプ機構を示す正面図である。
【図12】本実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図13】ヘッドパイプの軸ズレ状態の一例を示し、図13(A)はヘッドパイプの上端部近傍の断面を上方からみた図であり、図13(B)はヘッドパイプの下端部近傍の断面を上方からみた図であり、図13(C)はヘッドパイプに付加する荷重の方向を示す説明図である。
【図14】ヘッドパイプの軸ズレ状態の他の例を示し、図14(A)はヘッドパイプの上端部近傍の断面を上方からみた図であり、図14(B)はヘッドパイプの下端部近傍の断面を上方からみた図であり、図14(C)はスイングアームピボットに付加する荷重の方向を示す説明図である。
【図15】二輪車フレームを示す斜視図である。
【図16】路面とヘッドパイプの前後方向における傾斜角度の関係を説明する説明図である。
【図17】ヘッドパイプに生じる二輪車フレームの歪みの一例を示しており、図17(A)はヘッドパイプの左右方向の傾斜が生じた状態を示す説明図であり、図17(B)はこれによる前輪と後輪とのズレを示す説明図である。
【図18】ヘッドパイプに生じる二輪車フレームの歪みの他の例を示しており、図18(A)はヘッドパイプの左右方向の位置ズレが生じた状態を示す説明図であり、図18(B)はこれによる前輪と後輪とのズレを示す説明図である。
【符号の説明】
2 ヘッドパイプクランプ機構
3 ピボットクランプ機構
4 傾斜付勢手段
5 回動付勢手段
6 傾斜変位量検出手段(高精度測長器)
7 回動変位量検出手段(高精度測長器)
8 位置検出手段(レーザ検出計)
9 動作制御手段
93 経験値記憶部(記憶部)
94 経験値参酌機能
10 二輪車フレーム用歪み取り装置
100 二輪車フレーム
101 ヘッドパイプ
102 スイングアームピボット
a 中心軸
【発明の属する技術分野】
本発明は、二輪車フレーム用歪み取り装置に係り、特に、二輪車フレームの製造時における溶接工程で生じる変形を除去するための二輪車フレーム用歪み取り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より二輪車フレームは、複数の部材を溶接等により結合させて所定の形状の骨格が形成されており、かかる二輪車フレームの各結合部には、溶接時の熱による変形が発生する場合がある。
【0003】
特に、前輪を保持するフロントホーク及びハンドルと回転自在に係合する円筒状のヘッドパイプの周辺に変形が発生すると、二輪車の前輪と後輪とが予め計算された位置関係に配設されなくなり、このため、乗り心地,バランス及び操作性等に影響を及ぼすことがあった。
【0004】
図15は、二輪車フレーム100の斜視図を示している。この二輪車フレーム100の図における右端部には、ヘッドパイプ101が固定装備されている。また、符号102は、後輪を保持するスイングアーム103と回動自在に係合する二つのスイングアームピボットである(一方は図示略)。
【0005】
この二輪車フレーム100において、溶接等を原因とする変形によりヘッドパイプ101には主に3種類のねじれ等が発生する。即ち、二輪車フレーム100の左右方向bを中心としたねじれcが生じる場合,二輪車フレーム100の前後方向dを中心とするねじれeが生じる場合及び二輪車フレーム100の左右方向bに沿ってヘッドパイプ101全体が平行にずれてしまう場合が挙げられる。
【0006】
これらについて図16乃至図18に基づいて詳述する。図16は、図20の矢印A方向からみた二輪車フレーム100の側面図を示している。前述のように、ヘッドパイプ101に二輪車フレーム100の左右方向bを中心とするねじれcが生じた場合、ヘッドパイプ101の中心軸aは、路面と成す角度αに変化が生じる。かかる角度αは、設計の段階で予め設定されており、このような変形が生じると、この二輪車フレーム100を装備した二輪車は、本来の走行性を得られなくなってしまう。
【0007】
また、図17(A)は、図15の矢印B方向からみた二輪車フレーム100の正面図を示している。前述のように、ヘッドパイプ101に二輪車フレーム100の前後方向dを中心とするねじれeが生じた場合、中心軸aは、二つのスイングアームピボット102の中心軸fとの成す角βが垂直にならない。
【0008】
その結果、かかる二輪車フレーム100に前輪103と後輪104が装備されると、図17(B)に示すように、後輪104に対して前輪103は傾きを生じ、場合によっては、バランス上,又直進性及び走行性に影響する場合が生じる。
【0009】
また、二輪車フレーム100の左右方向bに沿ってヘッドパイプ101全体が平行にずれてしまうと、図18(A)に示すように、中心軸aが、二つのスイングアームピボット102の中間を通らず(g≠h)、かかる二輪車フレーム100に基づいて前輪103と後輪104が装備されると、図18(B)に示すように、後輪104に対して前輪103にズレが生じ、図17の場合と同様に、場合によっては、バランス上,又直進性及び走行性に影響する場合が生る。
【0010】
以上のような不都合を排除するため、従来は、ヘッドパイプ101にねじれ等の変形が発生した場合には、バール(鉄の棒)等を使用したテコ方式や、油圧シリンダ,ハンマ等の機材を使用した手作業によって、変形の矯正(歪み取り)を行っていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来は、歪み取り作業を作業者の手作業によって行っており、かかる作業は、勘と経験に頼るところが大きく、熟練を要する作業であった。即ち、かかる熟練の作業者の人数によって歪み取り作業の効率が決定されてしまうため、大量の二輪車フレームの歪み取り作業の場合には不適であり、また、歪み取り作業を行う各作業者によって矯正の精度や作業時間が異なる等の理由で定量化が困難であった。
【0012】
さらに、昨今の生産技術の進歩に伴い二輪車フレームはより強度が向上しているため、バール等を使用する手作業は、作業者に大きな負担をかける等の不都合が生じていた。
【0013】
【発明の目的】
本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、作業者を手作業から開放すると共に大量の二輪車フレームに対して一定且つ精度の高い歪み取り作業を行い得る二輪車フレーム用歪み取り装置を提供することを、その目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、二輪車フレームのヘッドパイプを所定の自由度をもって保持するヘッドパイプクランプ機構と、二輪車フレームの二つのスイングアームピボットを固定保持するピボットクランプ機構と、ヘッドパイプクランプ機構を,当該ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプをいずれの方向へも傾斜させる傾斜付勢手段と、ピボットクランプ機構を,これに保持された二つのスイングアームピボットの中間で且つ二輪車フレームの上下方向を軸として回動させる回動付勢手段と、傾斜付勢手段の付勢によるヘッドパイプクランプ機構の変位量を検出する傾斜変位量検出手段と、回動付勢手段の付勢によるピボットクランプ機構の変位量を検出する回動変位量検出手段と、ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの自由度の範囲内で生じる位置ズレ量を検出する位置検出手段と、この位置検出手段の検出信号に基づいて傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御を行う動作制御手段とを備えるという構成を採っている。
【0015】
上記構成の場合、二輪車フレームは、二つのスイングアームピボットがピボットクランプ機構に固定され、またヘッドパイプは所定の自由度をもたせた状態でヘッドパイプクランプ機構に保持される。
【0016】
二輪車フレームに歪みが生じている場合、ヘッドパイプに自由度の範囲内で位置ズレが生じる。このヘッドパイプの位置ズレが、位置検出手段によって検出され動作制御手段に出力されると、動作制御手段では、この位置ズレ量に応じて、ヘッドパイプクランプ機構及びピボットクランプ機構の各変位量を決定し、これらの変位量と各変位検出手段から検出される変位量とが一致するように傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御が行われる。
【0017】
二輪車フレームは、一定時間これら傾斜付勢手段と回動付勢手段とから荷重が付加されることにより、歪みを修正する方向に弾塑性変形を生じる。そしてその後、荷重の付加が解除されると、二輪車フレームは、荷重が付加された方向と反対の方向に戻り現象を生じるため、この後で行われる位置ズレ量の測定をより正確に行うために、二輪車フレームは一定時間無負荷状態で放置される。
【0018】
さらにその後、ヘッドパイプクランプ機構におけるヘッドパイプの位置検出が行われ、理想位置に矯正されている場合には、歪み取り作業は終了する。また、位置ズレがある場合には、この位置ズレ量に基づいて、再び各付勢手段による歪み取り作業が繰り返される。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を有すると共に、傾斜付勢手段が,ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの中心軸が交差する平面上で互いに交わる二方向からヘッドパイプに傾斜を付勢すると共に、傾斜変位量検出手段が,各方向についての変位量を検出するという構成を採っている。
【0020】
上記構成の場合、上記の各二方向及びこれらの合成方向から傾斜を付勢して、ヘッドパイプは全ての方向に荷重が付加される。また、他の動作については、請求項1記載の構成と同様に行われる。
【0021】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を有すると共に、位置検出手段が、ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの上端部及び下端部近傍の各外周面に対向する二対の距離センサからなるという構成を採っている。
【0022】
上記構成の場合、ヘッドパイプの上端部と下端部のそれぞれについて二つの距離センサがその外周面に対する距離検出を行う。即ち、各距離センサが検出を行う二方向からなる位置座標によりヘッドパイプの上下端部の各位置が検出され、上下端部の各位置の差異により、ヘッドパイプ傾斜状態の検出が行われる。また、他の動作については、請求項1記載の発明と同様の動作制御が行われる。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を有すると共に、動作制御手段に、各付勢手段の作動時に各変位量検出手段に検出される変位量と各付勢手段の作動前後の位置検出手段に検出されるヘッドパイプの位置の変化とを経験値として記憶する記憶部と、この記憶部の経験値及び位置検出手段の検出信号に基づいて傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御を行う経験値参酌機能とを設けるという構成を採っている。
【0024】
上記の構成の場合、各付勢手段による付勢動作の各変位量と、当該付勢動作のによるヘッドパイプの位置の変化量が検出され経験値として記憶部に記憶される。
【0025】
即ち、記憶部に記憶される経験値とは、傾斜付勢手段により付勢されるヘッドパイプクランプ機構の変位量とこれによるヘッドパイプの位置変化量、又は、回動付勢手段により付勢されるピボットクランプ機構の変位量とヘッドパイプの位置変化量との関係を示すデータである。
【0026】
各付勢手段の動作前にヘッドパイプの位置ズレ量が検出され、この位置ズレ量と近似する位置変化量の経験値が記憶部に記憶されている場合に、経験値参酌機能により優先的にこの経験値に基づいて各付勢手段の動作における変位量が決定される。
【0027】
また、上記に該当する経験値が存在しない場合には、請求項1記載の構成と同様の動作が行われる。
【0028】
本発明は、上記各構成に基づいて、前述した目的を達成しようとするものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の位置実施形態を図1乃至図15に基づいて説明する。本実施形態は、図15に示した二輪車の二輪車フレーム100に生じた歪みを除去する二輪車フレーム用歪み取り装置10を示している。ここで、図1はこの二輪車フレーム用歪み取り装置10の正面図、図2は二輪車フレーム用歪み取り装置10の平面図を示している。
【0030】
この二輪車フレーム用歪み取り装置10は、二輪車フレーム100のヘッドパイプ101を所定の自由度をもって保持するヘッドパイプクランプ機構2と、二輪車フレーム100の二つのスイングアームピボット102を固定保持するピボットクランプ機構3と、ヘッドパイプクランプ機構2を,当該ヘッドパイプクランプ機構2に保持されたヘッドパイプ101の中心軸a(図15参照)がいずれの方向にも傾斜するように付勢する傾斜付勢手段4と、ピボットクランプ機構3を,これに保持された二つのスイングアームピボット102の中間で二輪車フレーム100の上下方向を軸として回動させる回動付勢手段5と、傾斜付勢手段4の付勢によるヘッドパイプクランプ機構2の変位量を検出する傾斜変位量検出手段6と、回動付勢手段5の付勢によるピボットクランプ機構3の変位量を検出する回動変位量検出手段7と、ヘッドパイプクランプ機構2に保持されたヘッドパイプ101の自由度の範囲内についての位置検出を行う位置検出手段8(図4乃至図6参照)と、この位置検出手段8の検出信号に基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御を行う動作制御手段9を備えている。また、符号1は、上記各構成を所定の位置で固定する支持台である。
【0031】
以下各部を詳説する。
【0032】
図3は、ヘッドパイプクランプ機構2を示している。このヘッドパイプクランプ機構2は、主に、ヘッドパイプ101を保持するクランプ部21と、このクランプ部21を図3における上下左右方向に移動調節する調節部22と、この調節部22を左右方向にスライド自在に載置する載置台23と、傾斜付勢手段4からの傾斜動作をクランプ部21に伝達する伝達アーム24とをから構成される。
【0033】
クランプ部21の正面方向の断面図を図4に,側面図を図5に示す。このクランプ部21は、図4に示すように、右側面が開口した箱体211と、箱体211の上下端部が左右方向に回動自在として当該箱体211を保持する箱体保持部材212と、調節部22に上下に摺動自在に係合する連結部材213と、この連結部材213に対して箱体保持部材212を回動自在に結合させる軸受け214とを有している。
【0034】
上記箱体保持部材212は、図5に示すように軸受け212Aを介して箱体211の両側端部から保持しているため、箱体211を図4に示す矢印i方向に回動させることを可能としている。また、これと併せて、軸受け214により、箱体211は、図4の水平方向を軸として、図5に示す矢印j方向の回動を可能としている。
【0035】
箱体211の内部には、互いに同軸且つ上下動自在に配設された上側凸状部材215及び下側凸状部材216とが配設されている。これらの凸状部材215,216は、それぞれ円柱状の先端部を対向させて配設されると共に上下動作により二輪車フレーム100のヘッドパイプ101の内部に挿入することによりこのヘッドパイプ101の保持を行う。
【0036】
さらに、これらの凸状部材215,216は、共に先端部の外径がヘッドパイプ101の内径よりも幾分小さく設定されており、挿入時には、ヘッドパイプ101の内壁との間に遊びが生じる。この遊びにより、ヘッドパイプ101は、各凸状部材215,216に対して自由度をもって保持された状態となる。
【0037】
また、上側凸状部材215及び下側凸状部材216は、各々に上下動を付勢する上下動付勢手段217,218に保持されている。これら上下動付勢手段217,218は、それぞれ駆動モータ217A,218Aと伝達手段217B,218Bとから構成されている。即ち、駆動モータ217A,218Aの回転動作は、伝達手段217,218のネジ伝達機構により上下動作に変換されて各凸状部材215,216に伝えられる。ここで上下動付勢手段217,218の駆動源としては油圧シリンダを使用しても良い。
【0038】
二輪車フレーム100は、スイングアームピボット102が後述するピボットクランプ機構3により固定保持されるため、二輪車フレーム100のいずれかの箇所で歪みを生じている場合、凸状部材215,216に保持されたヘッドパイプ101はその中心軸aが、上述した遊びにより、凸状部材215,216の中心軸と不一致となり位置ズレを生じる(ここで、この位置ズレの距離を位置ズレ量とする)。
【0039】
この位置ズレ量を検出する手段として、各凸状部材215,216に保持されたヘッドパイプ101の上端部と下端部の各近傍に位置検出手段として一対のレーザ変位計8(距離センサ)がそれぞれ配設されている。
【0040】
ヘッドパイプ101の上下端部に近接する各対のレーザ変位計8は、図6に示すように、それぞれの検出方向が、各凸状部材215,216の中心軸で直交するように配設されている(γ=90゜)。これにより、ヘッドパイプ101の上端部と下端部の各中心軸位置と、凸状部材215,216の中心軸との相対的な位置ズレ量が検出される。そして、これらヘッドパイプ101の上端と下端における位置ズレ量の差異に基づいて、ヘッドパイプ101の中心軸aがどの方向に傾斜しているかが検出される。
【0041】
このヘッドパイプ101の傾斜に応じて、傾斜付勢手段4から箱体211に伝達アーム24を介して回動動作が付勢される。この伝達アーム24は、箱体211の下部に垂下状態で固定されており、その下端部には二股に形成されたV字部材241(図2に破線で示す)が設けられ、V字部材241の両端部にはそれぞれ後述する傾斜付勢手段4,4の付勢アーム41,41の先端部がそれぞれボールソケット継手41A,41Aを介して連結されている。
【0042】
箱体211は、上述したように軸受け214と箱体保持部材212とにより回動自在に保持されているため、このV字部材241は、伝達アーム24を介して、図7に示すように、軸受け214の回動軸kと箱体保持部材212の回動軸lとの交点を中心とする球面上を移動自在となっている。
【0043】
即ち、傾斜付勢手段4から回動が付勢された場合には、V字部材241は、矢印m方向若しくはn方向又はこれらの合成方向に移動し、これに応じて、箱体211は、回動軸k若しくは回動軸lを中心とする回動又はこれらの合成方向への回動を行い、各凸状部材215,216を介してヘッドパイプ101は、全ての方向に傾斜するように荷重が付加される。
【0044】
次に調節部22を図3に基づいて説明する。この調節部22は、載置台23上で摺動自在に載置された筺体である調節部本体221と、この調節部本体221を載置台23に対して左右方向に移動させる水平方向移動手段222と、前述した連結部材213を介してクランプ部21を上下方向に移動させる上下方向移動手段223とから構成される。
【0045】
図8は、図3中の矢印方向Cからみた載置台23とこれに載置される調節部本体221を示している。ここに示すように、調節部本体221の下端部の両側には、載置台23上に設けられたガイドレール231に係合する係合突片221Aが設けられており、これにより図3における一定の左右方向に案内される。
【0046】
また、図9には図3中の矢印方向Dからみた調節部本体221と連結部材213との係合状態を示している。ここに示すように、調節部本体221の連結部材213側の上下端部の両側にはガイドレール221Cが設けられており、連結部材213の左側に設けられた係合板213Aを図3における上下方向に摺動自在に保持している。
【0047】
さらに、図3に示すように、この調節部本体231の内側下部には、水平方向移動手段222が配設されている。この水平方向移動手段222は、載置台23の上面に固定されネジ穴を有する不動固定部224と、このネジ穴と螺合しその一端部で調節部本体221に回転自在に保持される水平移動付勢軸225と、この水平移動付勢軸225に回転力を付勢するためのハンドル226とから構成される。また、符号221Bは、調節部本体221の内側から載置台23側に貫通する長穴であり、この長穴221Bの範囲内で載置台23に対して調節部本体221が移動するようになっている。
【0048】
またさらに、この調節部本体221の内部右側には、上下方向移動手段223が配設されている。この上下方向移動手段223は、連結部材213の係合板213Aに固定されネジ穴を有する不動固定部227と、このネジ穴と螺合しその一端部で調節部本体221に回転自在に保持される垂直移動付勢軸228と、この垂直移動付勢軸228に回転力を付勢するためのハンドル229とから構成される。また、符号221Dは、調節部本体221の内側から連結部材213側に貫通する長穴であり、この長穴221Dの範囲内で調節部本体221に対してクランプ部21が上下移動するようになっている。
【0049】
載置台23は、図8に示すように、逆U字状に形成されており、U字の開口部232の内側には、後述するピボットクランプ機構3の回動板31の回動端部が載置台23の開口部232の幅の許容する範囲内で回動を行うようになっている。
【0050】
図10に、ピボットクランプ機構3を示す。この図10(A)はピボットクランプ機構3の平面図を示し、図10(B)は図10(A)の矢印方向Eからみたピボットクランプ機構3を示している。
【0051】
ピボットクランプ機構3は、一端部を軸受け32を介して支持台1上で回動自在に支持されると共に他端部を回動付勢手段5により回動を付勢される回動板31と、この回動板31上に固定装備され,二輪車フレーム100の二つのスイングアームピボット102をそれぞれ着脱自在に保持する保持手段33とから構成される。
【0052】
回動板31は、図10(A)における左側に向かってその幅が狭くなる形状の板状部材であり、その中央には略四角形状の貫通穴31Aが形成されている。この貫通穴31Aには、ヘッドパイプクランプ機構2の伝達アーム24が遊挿され、この貫通穴31Aの許容する範囲で伝達アーム24は箱体211側を中心とする回動動作が行われる。
【0053】
保持手段33は、二輪車フレーム100の二つのスイングアームピボット102にそれぞれ挿通されるピン34と、このピン34の出し入れを自在に行うピン出入付勢部35とから構成される。この保持手段33は、前述の軸受け32による回動板31の回動動作の中心部と二つのスイングアームピボット102の中間部とが一致するように各ピン34の位置が設定されている。
【0054】
次に、図2に基づいて傾斜付勢手段4について説明する。この傾斜付勢手段4は、回動板31の図における上下両側にそれぞれ一体ずつ装備されている。各傾斜付勢手段4は、前述の伝達アーム24のV字部材241にボールソケット継手41Aを介して一端部を連結された付勢アーム41と、この付勢アーム41の他端部とボールソケット継手41Bを介して連結され,図2における左右方向に往復自在の往復移動部材42と、この往復移動部材42の駆動源となる駆動モータ43と、この駆動モータ43の回転力を往復移動力にして往復移動部材42に伝達する伝達部(図示略)とから構成される。
【0055】
これら二つの傾斜付勢手段4の各駆動モータ43により二つの往復移動部材42に等距離または異なる距離の左右方向の往復動作が付勢されることより、各付勢アーム41を介してV字状部材241は、前述した球面上の一定の範囲内におけるあらゆる位置に移動させることが可能となっている。
【0056】
これにより、V字状部材241の移動から伝達アーム24を介して、ヘッドパイプクランプ機構2に保持されたヘッドパイプ101の中心軸aと交差する平面上で互いに交わる二方向から当該ヘッドパイプ101に傾斜が付勢される構成になっている。
【0057】
また、各傾斜付勢手段4には、傾斜変位量検出手段6として高精度測長器(リニアスケール)が併設されており、各往復移動部材42の左右方向の移動距離をヘッドパイプクランプ機構2の変位量として検出すると共に動作制御手段9に出力する。
【0058】
なお、上述した傾斜付勢手段4の駆動源は、油圧シリンダ等を使用しても良い。
【0059】
次に、回動付勢手段5を図2に基づいて説明する。この回動付勢手段5は、回動板31の図における左側端部にボールソケット継手51Aを介して一端部を連結された付勢アーム51と、この付勢アーム51の他端部とボールソケット継手51Bを介して連結され,図2における上下方向に往復自在の往復移動部材52と、この往復移動部材52の駆動源となる駆動モータ53と、この駆動モータ52の回転力を往復移動力にして往復移動部材に伝達する伝達部(図示略)とから構成される。
【0060】
この回動付勢手段5の駆動モータ53により往復移動部材52の左右方向の往復動作が付勢されることより、付勢アーム51を介して回動板31に軸受け32を中心とする回動動作が付勢される。
【0061】
なお、上述した回動付勢手段5の駆動源は、油圧シリンダ等を使用しても良い。
【0062】
図11に基づいて、動作制御手段9について説明する。この動作制御手段9は、ヘッドパイプ101の中心軸aの位置ズレ量に対応する予め設定された傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の各変位量のマップが記憶されたマップ記憶部91と、各レーザ変位計8の検出信号に応じてマップ記憶部91のマップに従い傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御を行う制御部92と、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作後のヘッドパイプ101の位置ズレ量の変化とその動作の際の各付勢手段4,5の変位量との組み合わせを経験値として随時記憶する経験値記憶部(記憶部)93とを備えている。
【0063】
さらに、各レーザ変位計8に検出されたヘッドパイプ101の位置ズレ量が、経験値記憶部93に記憶された経験値の位置ズレ量と近似する場合に、マップ記憶部91のマップに優先してこの経験値に基づく各付勢手段4,5の動作制御を行う経験値参酌機能94を制御部92に設けている。
【0064】
図12に、上記各構成の二輪車フレーム用歪み取り装置10の動作を示すフローチャートを示す。これに基づいて、本実施形態の動作を詳説する。
【0065】
まず、二輪車フレーム100の二つのスイングアームピボット102をピボットクランプ機構3に装着する。ピボットクランプ機構3では、二つのピン34がピン出入付勢手段35側に引っ込められた状態で、各ピン34の位置に二輪車フレーム100の各スイングアームピボット102が位置決めされた後に、各ピン34をこれらスイングアームピボット102内に挿入し、固定を行う(図10参照)。
【0066】
次に、二輪車フレーム100のヘッドパイプ101をヘッドパイプクランプ機構2に装着する。このとき、ヘッドパイプクランプ機構2のクランプ機構21は、調節部22のハンドル226及びハンドル229を操作し、所定の位置となるように調節される。
【0067】
その後、ヘッドパイプ101は、クランプ機構21の箱体211内部に遊挿され、この箱体211の内部において上方から上側凸状部材215が挿入される共に下方から下側凸状部材216が挿入され、これら凸状部材215,216に挟持されて保持される(図4参照,ステップS1)。
【0068】
そして、装着時のヘッドパイプ101の上下の各端部における中心軸aの上側凸状部材215及び下側凸状部材216の中心軸に対する位置ズレ量が、各レーザ変位計8により検出される(図6参照,ステップS2)。
【0069】
このとき、ヘッドパイプ101の上下端部が共に所定の値より小さいズレ量である場合には、位置ズレが生じていない状態,即ち二輪車フレーム100に歪みがない状態として制御部92は、二輪車フレーム用歪み取り装置10の動作を終了する。
【0070】
また、ヘッドパイプ101の少なくとも上下端部のいずれか一方に位置ズレが検出されると、各レーザ変位計8は、それぞれの検出距離に基づく出信号を動作制御手段9の制御部92に出力する(ステップS3)。
【0071】
レーザ変位計8からの出力を受けて、制御部92では、経験値参酌機能94が、当該ヘッドパイプの位置ズレ量に近似する経験値を,経験値記憶部93の既に蓄積されている中から検索する(ステップS4)。
【0072】
近似する経験値が存在する場合には、その経験値に基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の変位量が決定されると共にこれに基づいて動作制御が行われ(ステップS5)、存在しない場合には、マップ記憶部91のマップに基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の変位量が決定されると共にこれに基づいて動作制御が行われる(ステップS6)。
【0073】
ここで、傾斜付勢手段4の変位量とは、図2に示す往復移動部材42の左右方向の移動距離を示すものであり、また、回動付勢手段5の変位量とは、図2に示す往復移動部材52の上下方向の移動距離の示すものである。
【0074】
またここで、具体的に、ヘッドパイプ101の位置ズレ量とこれを矯正するために付加する荷重の方向の関係を図13及び図14に示す。
【0075】
図13(A)は上側凸状部材215が挿入された状態のヘッドパイプ101の上端近傍の上方からみた断面図を示し、図13(B)は下側凸状部材216が挿入された状態のヘッドパイプ101の下端近傍の上方からみた断面図を示している。これらに示すように、ヘッドパイプ101の上端部が左側に偏心し、下端部が右側に偏心している場合には、図13(C)に示すようにヘッドパイプ101に対して矢印方向pに回動させるように傾斜付勢手段4により荷重が加えられる。
【0076】
例えば、矢印方向pの回動が図2における上下方向を中心軸とする回動である場合には、二つの傾斜付勢手段4について、各往復移動部材42が同方向,等距離の移動が付勢される。伝達アーム24を介して箱体211に、図4における矢印i方向の回動が付勢される。このとき、各往復移動部材42の移動距離は、各傾斜付勢手段4ごとに併設された傾斜変位量検出手段6により検出されると共に動作制御手段9に出力され、これに基づき正確に所定変位の回動動作がヘッドパイプ101に付勢される。
【0077】
一方、矢印方向pの回動が図2における左右方向を中心軸とする回動である場合には、二つの傾斜付勢手段4について、各往復移動部材42に互いに異なる距離の移動が付勢され、伝達アーム24を介して箱体211に、図5における矢印j方向の回動が付勢される。上記と同様にして各傾斜付勢手段4の変位量が傾斜変位量検出手段6に検出され、それぞれ正確に所定変位となるように動作制御が行われる。
【0078】
図14(A)は上側凸状部材215が挿入された状態のヘッドパイプ101の上端近傍の上方からみた断面図を示し、図14(B)は下側凸状部材216が挿入された状態のヘッドパイプ101の下端近傍の上方からみた断面図を示している。これらに示すように、ヘッドパイプ101の上端部,下端部が共に、図における上側に偏心している場合には、図14(C)に示すようにピボットクランプ機構3側に矢印方向qの回動動作が回動付勢手段5により付勢される。
【0079】
即ち、回動付勢手段5の往復移動部材52は、この回動付勢手段5に併設された回動変位量検出手段7によりその移動距離が動作制御手段9に出力されつつ移動動作が付勢されるため、所定の移動距離により正確に合わせられる。これによりピボットクランプ機構3の回動板31は、軸受け32を中心とする回動動作が行われる。かかる場合、回動を付勢されるのはスイングアームピボット102側であるが、これにより、相対的にヘッドパイプ101の位置が矯正されることになる。
【0080】
上述した傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5による各動作の組み合わせによりヘッドパイプ101のあらゆる位置ズレ状態に対する矯正動作が行われる。またこのとき、傾斜付勢手段4又は回動付勢手段5によるヘッドパイプ101に対する荷重の付加は、一定時間継続して行われる(例えば、数十分〜数時間)。これにより二輪車フレーム100の各部の塑性変形が促される。
【0081】
ステップS5又はステップS6による各付勢手段4,5の動作後、二輪車フレーム100は、一定時間(例えば、数十分〜数時間)無付加状態で放置され、その後再び、各レーザ変位計8によるヘッドパイプ101の位置ズレ量の検出が行われる(ステップS7)。これにより各付勢手段4,5による荷重の付加による弾性変形が解消され、塑性変形のみによるヘッドパイプ101の変化が測定される。
【0082】
この検出により、動作制御手段9では、上記各付勢手段4,5の荷重の付加によるヘッドパイプ101の位置ズレ量の変化と各付勢手段4,5の各変位量との組み合わせを新たな経験値として経験値記憶部93に記憶される(ステップS8)。
【0083】
上記各レーザ変位計8により、ヘッドパイプ101の上下端部が共に所定の値より小さいズレ量と検出された場合には、位置ズレが生じていない状態,即ち二輪車フレーム100に歪みがない状態として制御部92は、二輪車フレーム用歪み取り装置10の動作を終了する。
【0084】
また、ヘッドパイプ101の少なくとも上下端部のいずれか一方に位置ズレが検出されると、各レーザ変位計8は、それぞれの検出距離に基づく出信号を動作制御手段9の制御部92に出力する(ステップS9)。
【0085】
この後、ステップS4以降の動作が行われ、同様の動作が二輪車フレーム100の歪みがなくなるまで繰り返される。
【0086】
本実施形態は、前述した各構成により以上の動作が行われるため、二輪車フレーム100の歪み取り作業の自動化を図ることが可能としている。
【0087】
このため、作業者を従来の手作業による歪み取り作業から開放し、この歪み取り作業に伴う大きな労働負担及び煩雑性の解消が可能となった。
【0088】
さらに、本実施形態は、位置検出手段8によりヘッドパイプ101の軸ズレ状態を検出する構成であるため、位置検出手段8として高精度なレーザ変位計を使用することにより、ヘッドパイプ101の位置ズレを正確に検出することが可能となった。
【0089】
また同様にして、本実施形態は、傾斜変位量検出手段6及び回動変位量検出手段7を高精度測長器を使用しているため、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御をより精密に行うことができ、ヘッドパイプ101の矯正の際により精度良く荷重を付加することが可能である。
【0090】
また、従来のように複数の作業者の経験による手作業ではなく、マップ記憶部91に記憶された常に一定のマップに基づいて回動付勢手段4及び傾斜付勢手段5の動作制御が行われるため、複数の二輪車フレーム100に対して歪み取り作業を常に同一条件に仕上げることが可能となり、歪み取り作業の定量化を図ることが可能となった。このため、二輪車フレームの大量生産のラインに組み込むことも容易となった。
【0091】
さらに、本実施形態は、傾斜付勢手段4が、ヘッドパイプクランプ機構2に対する傾斜動作を、ヘッドパイプ101の中心軸aが交差する平面上で互いに交わる位置関係にある二つの付勢アーム41,41によって行うため、当該各付勢アーム41,41の配設方向の合成方向についてヘッドパイプ101を傾斜させることができる。即ち、これにより、ヘッドパイプ101をほぼ全ての方向に傾斜させて矯正することが可能となっている。
【0092】
また、本実施形態は、ヘッドパイプクランプ機構2に保持されたヘッドパイプ101の上端部及び下端部近傍の各外周面にそれぞれ対向する二対のレーザ変位計8を設け、対となる各レーザ変位計8の検出方向がヘッドパイプ101を保持する上下の凸状部材215,216の中心軸で直交するように配設している。このため、ヘッドパイプ101の上下の各端部において、各凸状部材215,216からの位置ズレ量を直交する二方向から検出することができ、これら各検出変位によりヘッドパイプ101の各端部がいかなる方向にずれているかを検知することを可能としている。
【0093】
さらにまた、本実施形態では、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5による矯正動作が行われる度に各付勢手段4,5の変位量とこれによるヘッドパイプ101の位置ズレの変化量とを経験値として記憶する経験値記憶部93と、この経験値に基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御を行う経験値参酌機能94とを動作制御手段9に設けている。
【0094】
二輪車フレーム100の歪み取り作業は、そのヘッドパイプ101の位置ズレ状態に応じて一定のマップに基づいて傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の動作制御を行っても、作業時の各条件に違いにより理論通りの結果とならない場合があり、かかる場合に、実際に行われた歪み取り作業に基づく経験値を記憶し、この経験値がより多く蓄積されると共にこれに基づいてヘッドパイプ101の歪み取り作業が行われることにより、より正確に且つ迅速に歪み取り作業を行うことが可能となる。
【0095】
ここで、上記の経験値記憶部93には、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の各変位量だけでなくこれら動作の付勢を継続する時間をさらなる経験値として記憶するようにしても良い。
【0096】
また、また、傾斜付勢手段4及び回動付勢手段5の付勢アーム41,51毎に、荷重検出センサを設け、各動作の付勢時の各荷重を検出する共に、動作制御手段9により各荷重について所定の値となるように制御を行う構成としても良い。また、この場合の各荷重についても、経験値として経験値記憶部93に取り込む構成としても良い。
【0097】
また、一定量の経験値が蓄積された場合に、これらの経験値に基づいて変位量とヘッドパイプ101の矯正による位置ズレ量の変化との新たなマップを形成し、これをマップ記憶部91に入力し直すことが望ましい。これにより、二輪車フレームの歪み取り作業をより迅速化させることが可能となる。
【0098】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明では、前述した各構成により、二輪車フレームの歪み取り作業の自動化を図ることが可能となった。このため、作業者を従来の手作業による歪み取り作業から開放し、この歪み取り作業に伴う大きな労働負担及び煩雑性の解消が可能となった。
【0099】
さらに、位置検出手段によりヘッドパイプの軸ズレ状態を検出する構成であるため、位置検出手段に精度の高いものを使用することにより、ヘッドパイプの位置ズレを正確に検出することが可能となった。
【0100】
また同様にして、傾斜変位量検出手段及び回動変位量検出手段を精度の高いものとすることにより、傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御をより精密な動作制御を行うことができ、ヘッドパイプの矯正の際により精度良く荷重を付加することが可能である。
【0101】
また、従来のように複数の作業者の経験による手作業ではなく、動作制御手段により一定条件に従って回動付勢手段及び傾斜付勢手段の動作制御が行われるため、複数の二輪車フレームに対して歪み取り作業を常に同一条件に仕上げることが可能となり、歪み取り作業の定量化を図ることが可能となった。このため、二輪車フレームの大量生産のラインに組み込むことが可能である。
【0102】
請求項2記載の発明では、傾斜付勢手段が、ヘッドパイプクランプ機構に対する傾斜動作を、ヘッドパイプの中心軸が交差する平面上で互いに交わる二方向から行う構成であるため、これら二方向の合成方向ついてヘッドパイプを傾斜させることができ、これにより、ヘッドパイプをほぼ全ての方向に傾斜させるように荷重を付加することを可能としている。
【0103】
請求項3記載の発明では、位置検出手段が、ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの上端部及び下端部近傍の各外周面にそれぞれ対向する二対の距離センサからなり、各対の距離センサによりヘッドパイプの上端部及び下端部の位置ズレを二方向から検出する構成であるため、これら各検出変位によりヘッドパイプの各端部がいかなる方向にずれているかを有効に検知することが出来、上端部と下端部のズレ状態からヘッドパイプの傾斜方向を有効に検知することが可能となっている。
【0104】
請求項4記載の発明では、傾斜付勢手段及び回動付勢手段による矯正動作が行われる度に各付勢手段の変位量とこれによるヘッドパイプの位置ズレの変化量とを経験値として記憶する経験値記憶部と、この経験値に基づいて傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御を行う経験値参酌機能とを動作制御手段に設けているため、二輪車フレームの歪み取り作業が、実際に行われた歪み取り作業に基づいて蓄積された経験値に基づいてヘッドパイプの歪み取り作業が行われることにより、より正確且つ迅速に歪み取り作業を行うことが可能となる。
【0105】
本発明は以上のように構成され機能するので、これにより従来にない優れた二輪車フレーム用歪み取り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の正面図を示す。
【図2】本発明の一実施形態の平面図を示す。
【図3】ヘッドパイプクランプ機構を示す正面図である。
【図4】クランプ部の正面方向の断面図である。
【図5】クランプ部の側面図である。
【図6】位置検出手段の配置を示す説明図である。
【図7】箱体の保持状態と伝達アームの回動との関連を説明する説明図である。
【図8】図3における矢印C方向からみた載置台の正面図を示す。
【図9】図3における矢印D方向からみた載調節部本体と連結部材の係合状態を示す説明図である。
【図10】ピボットクランプ機構を示しており、図10(A)はピボットクランプ機構の平面図を示し、図10(B)は図10(A)中の矢印E方向からみたピボットクランプ機構を示す。
【図11】動作制御手段を示すブロック図である。ヘッドパイプクランプ機構を示す正面図である。
【図12】本実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図13】ヘッドパイプの軸ズレ状態の一例を示し、図13(A)はヘッドパイプの上端部近傍の断面を上方からみた図であり、図13(B)はヘッドパイプの下端部近傍の断面を上方からみた図であり、図13(C)はヘッドパイプに付加する荷重の方向を示す説明図である。
【図14】ヘッドパイプの軸ズレ状態の他の例を示し、図14(A)はヘッドパイプの上端部近傍の断面を上方からみた図であり、図14(B)はヘッドパイプの下端部近傍の断面を上方からみた図であり、図14(C)はスイングアームピボットに付加する荷重の方向を示す説明図である。
【図15】二輪車フレームを示す斜視図である。
【図16】路面とヘッドパイプの前後方向における傾斜角度の関係を説明する説明図である。
【図17】ヘッドパイプに生じる二輪車フレームの歪みの一例を示しており、図17(A)はヘッドパイプの左右方向の傾斜が生じた状態を示す説明図であり、図17(B)はこれによる前輪と後輪とのズレを示す説明図である。
【図18】ヘッドパイプに生じる二輪車フレームの歪みの他の例を示しており、図18(A)はヘッドパイプの左右方向の位置ズレが生じた状態を示す説明図であり、図18(B)はこれによる前輪と後輪とのズレを示す説明図である。
【符号の説明】
2 ヘッドパイプクランプ機構
3 ピボットクランプ機構
4 傾斜付勢手段
5 回動付勢手段
6 傾斜変位量検出手段(高精度測長器)
7 回動変位量検出手段(高精度測長器)
8 位置検出手段(レーザ検出計)
9 動作制御手段
93 経験値記憶部(記憶部)
94 経験値参酌機能
10 二輪車フレーム用歪み取り装置
100 二輪車フレーム
101 ヘッドパイプ
102 スイングアームピボット
a 中心軸
Claims (4)
- 二輪車フレームのヘッドパイプを所定の自由度をもって保持するヘッドパイプクランプ機構と、二輪車フレームの二つのスイングアームピボットを固定保持するピボットクランプ機構と、前記ヘッドパイプクランプ機構を,当該ヘッドパイプクランプ機構に保持された前記ヘッドパイプをいずれの方向へも傾斜させる傾斜付勢手段と、前記ピボットクランプ機構を,当該ピボットクランプ機構に保持された前記二つのスイングアームピボットのほぼ中間且つ前記二輪車フレームの上下方向を軸として回動させる回動付勢手段と、前記傾斜付勢手段の付勢による前記ヘッドパイプクランプ機構の変位量を検出する傾斜変位量検出手段と、前記回動付勢手段の付勢による前記ピボットクランプ機構の変位量を検出する回動変位量検出手段と、前記ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの前記自由度の範囲内で生じる位置ズレ量の検出を行う位置検出手段と、この位置検出手段の検出信号に基づいて前記傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御を行う動作制御手段を備えることを特徴とする二輪車フレーム用歪み取り装置。
- 前記傾斜付勢手段が,前記ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの中心軸が交差する平面上で互いに交わる二方向から前記ヘッドパイプに傾斜を付勢すると共に、前記傾斜変位量検出手段が,前記二方向について各々の変位量を検出することを特徴とする請求項1記載の二輪車フレーム用歪み取り装置。
- 前記位置検出手段が,前記ヘッドパイプクランプ機構に保持されたヘッドパイプの上端部及び下端部近傍のそれぞれの外周面に対向する二対の距離センサからなることを特徴とする請求項1記載の二輪車フレーム用歪み取り装置。
- 前記動作制御手段に、前記各付勢手段の作動時に前記各変位量検出手段に検出される変位量と,前記各付勢手段の作動前後の前記位置検出手段に検出される前記ヘッドパイプの位置の変化量とを経験値として記憶する記憶部と、
この記憶部の経験値と前記位置検出手段の検出信号とに基づいて前記傾斜付勢手段及び回動付勢手段の動作制御を行う経験値参酌機能とを設けたことを特徴とする請求項1記載の二輪車フレーム用歪み取り装置。
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- 1996-04-03 JP JP10633696A patent/JP3560099B2/ja not_active Expired - Fee Related
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