JP3559920B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極を用いてプラズマを発生させウエハなどにプラズマ処理を施すプラズマ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子の製造工程において、ウエハ上に回路パターンを形成するために、リソグラフィーによりウエハ上のレジストにマスクパターンを転写した後、エッチングする処理が行われる。このウエハをエッチングするのに用いられる装置として、プラズマエッチング装置が知られている。
【0003】
このプラズマエッチング装置の1つとして、平行平板型のプラズマエッチング装置がある。この装置は、処理室内に対向する上部電極と下部電極とを備え、この2つの電極間に塩素(Cl)やフッ素(F)などのエッチング用ガスを導入しつつ、電極間に高周波電力を供給し、プラズマを発生させて、下部電極上に載置されたウエハをエッチングするものである。
【0004】
この装置で用いられている電極は、一般にアルミニウムで作製され、塩素(Cl)やフッ素(F)などの腐食性ガスのプラズマに晒されるので、耐腐食性向上のためにプラズマに晒される電極表面にアルマイト皮膜が形成されている(特開昭57−43426号公報)。
【0005】
しかしながら、電極母材であるアルミニウムの腐食は抑えられるものの、アルマイト皮膜がプラズマによりスパッタされ、アルマイト皮膜が部分的に剥離し、ウエハ表面に付着して半導体素子の回路不良を起こすという問題、すなわちパーティクル発生の問題があった。
【0006】
特に、電極からの重金属汚染を低減するため電極母材のアルミニウムの純度を高めた場合、処理室内のパーティクル数が増加する傾向があり、問題となっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、パーティクル数を低減し半導体素子の製造歩留まりを向上できるプラズマ処理装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラズマ処理装置は、アルミニウムを主成分とする電極母材の表面にアルマイト皮膜が形成してある第1電極と、該第1電極に対向するように配置してある第2電極と、前記第1電極の前記第2電極に対向する側の外周部を覆うプラズマシールド部材とを備え、前記第1電極のアルマイト皮膜が皮膜表面に有する脆弱層は、前記第2電極に対向する側の前記プラズマシールド部材で覆われていない部分が除去してあることを特徴とする。
また、本発明のプラズマ処理装置は、アルミニウムを主成分とする電極母材の表面にアルマイト皮膜が形成してある第1電極と、該第1電極に高周波電力または直流電圧を印加する電源と、前記第1電極に対向するように配置してある接地側の第2電極とを備え、前記第1電極のアルマイト皮膜が皮膜表面に有する脆弱層は、前記第2電極に対向する部分が除去してあることを特徴とする。
さらに、本発明のプラズマ処理装置は、アルミニウムを主成分とする電極母材の表面にアルマイト皮膜が形成してある第1電極と、該第1電極に高周波電力または直流電圧を印加する電源と、前記第1電極に対向するように配置してある接地側の第2電極と、前記第1電極の前記第2電極に対向する側の外周部を覆うプラズマシールド部材とを備え、前記第1電極のアルマイト皮膜が皮膜表面に有する脆弱層は、前記第2電極に対向する側の前記プラズマシールド部材で覆われていない部分が除去してあることを特徴とする。
さらに、また、本発明のプラズマ処理装置は、前記第1電極には、プラズマ処理に係るガス供給用のガス供給孔が形成してあることを特徴とする。
た、本発明のプラズマ処理装置は、前記第1電極は、プラズマに晒されない部分のアルマイト皮膜を除去して電極母材が露出してあるコンタクト部を備えることを特徴とする。
【0009】
アルマイト処理(陽極酸化法)により形成されるアルマイト皮膜は、その表面に脆弱層と呼ばれる硬度の低い層を有している。この脆弱層は、皮膜内部と組成が異なり、プラズマに晒されるとスパッタされやすく、部分的に剥離する確率が高い。
【0010】
本発明のプラズマ処理装置に係る電極(第1電極)は、この剥離する確率の高い脆弱層がアルマイト皮膜から除去されている。そのため、プラズマに晒されたとき皮膜表面からの剥離が少なく、パーティクルの発生が少なくなる。
【0011】
また、本発明のプラズマ処理装置によれば、電極からのパーティクルの発生が少なく、処理室内のパーティクル数を低減させることができるので、半導体素子の製造歩留まりを向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のプラズマ処理装置の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0013】
図1は、本発明のプラズマ処理装置に係る電極の製造工程を説明する模式図である。
【0014】
▲1▼電極母材11aは、JIS−A1050などの材質のアルミニウム板を所定の形状に機械加工したものである(図1(a))。
【0015】
▲2▼電極母材11aにアルマイト処理を施し、電極母材11aの表面にアルマイト皮膜11bを形成する。アルマイト皮膜11bの表面部分には脆弱層11cが存在する(図1(b))。なお、アルマイト皮膜はガス供給孔11e内にも形成されるが、図中では省略されている。
【0016】
このアルマイト処理には、硬質アルマイト皮膜を形成できる硫酸法アルマイト処理(サンフォード・プラス法)を用いることが好ましい。また、アルマイト処理後に、アルマイト皮膜に封孔処理が施される。
【0017】
▲3▼アルマイト皮膜11bの一部を機械加工により除去し、電極母材11aを露出させて、高周波電源とのコンタクト部11dを形成する(図1(c))。
【0018】
▲4▼電極母材11aを被覆するアルマイト皮膜11bのうちプラズマに晒される部分について、脆弱層11cを除去し、表面が硬度の高い内部層となるようにする(図1(d))。
【0019】
このアルマイト皮膜の脆弱層を除去する方法として、アルマイト皮膜への重金属汚染を考慮すると、例えば高純度のアルミナ粉(Al)やダイヤモンド粉(C)等でバフ研磨処理することが好ましい。ラッピング処理する場合には、一般に用いられる銅製定盤ではアルマイト皮膜への重金属汚染が発生しやすいので、セラミックス製定盤を用いることが望ましい。
【0020】
なお、アルマイト皮膜の表面から研磨除去する量は、脆弱層の厚みを測定することにより経験的に決めれば良い。通常は、5μm程度で除去すれば脆弱層は除去され、20μm以上除去すれば確実に除去することができる。
【0021】
このようにして得られた電極は、電極表面のアルマイト皮膜に脆弱層がなく表面が高硬度であるので、プラズマに晒されたとしても、アルマイト皮膜はスパッタされにくく皮膜表面からの剥離が少なくなり、パーティクルの発生が低減される。
【0022】
特に、例えばJIS−A1050、JIS−A1060、JIS−A1070などのようにアルミニウムの純度が99%以上の材料を電極母材に用いる場合、これらの材料のアルマイト皮膜の脆弱層は剥離しやすいので、脆弱層を除去することの効果は大きい。
【0023】
なお、本発明のプラズマ処理装置に係る電極はプラズマに晒される場所であればいずれの場所でも効果を発揮する。さらに、その電極に高周波電力や直流電圧が印加される場合には、プラズマによる電極のスパッタ効果が高いため本発明のプラズマ処理装置に係る電極はより効果を発揮する。
【0024】
図2は、本発明のプラズマ処理装置の模式的縦断面図である。この装置は、処理室10内に対向するように上部電極11と下部電極21とを備えており、この2つの電極間に塩素やフッ素などのエッチング用ガスを導入しつつ、電極間に高周波電力を供給し、プラズマを発生させて、下部電極21上に載置されたウエハ1をエッチングするものである。
【0025】
上部電極11は、上記の電極の製造方法により、アルミニウムを母材としてその表面にアルマイト皮膜が形成され、アルマイト皮膜のうちプラズマに晒される部分の脆弱層が除去されている。下部電極21は、アルミニウムで作製されている。
【0026】
上部電極11にはアルミニウム製の上部真空封止板12を介して高周波電源29が接続され、下部電極21および処理容器壁19は接地されている。上部電極11は絶縁部材18により処理容器壁19から絶縁され、また上部電極11の外周部はプラズマシールド部材17によりプラズマ照射から保護されている。同じく、下部電極21は絶縁部材24により処理容器壁19から絶縁され、また下部電極21の外周部はプラズマシールド部材25によりプラズマ照射から保護されている。恒温流体循環路15および23に恒温流体を循環させることにより、上部電極11および下部電極21は所定の温度に保持される。
【0027】
エッチング用ガスは、ガス供給路16から導入され、拡散空間14で拡散され、ガス供給孔11eから処理室10に供給され、排気路26から排気される。
【0028】
この装置を用いて、例えばシリコンウエハ上に成膜されたポリシリコンをエッチングする方法について説明する。
【0029】
▲1▼ウエハ1を下部電極21に載置する。
【0030】
▲2▼上部電極11と下部電極21の電極間距離を所定の距離とする。
【0031】
▲3▼エッチングガスとして塩素系やフッ素系のガスを処理室10内に供給して所定の圧力とする。
【0032】
▲4▼高周波電力を上部電極11に印加してプラズマを発生させ、ウエハ1の表面のポリシリコンをエッチングする。
【0033】
本発明のプラズマ処理装置によれば、プラズマに晒される上部電極表面がアルマイト皮膜の高硬度部であるので、スパッタされにくく剥離が少ない。その結果、電極からのパーティクルの発生が抑制され、処理室内のパーティクル数が低減するので、半導体素子の製造歩留まりを向上させることができる。
【0034】
本発明のプラズマ処理装置は、塩素系やフッ素系の腐食性ガスのプラズマを用いる装置に好適であって、エッチングのみならずCVDなどにも適用することができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明のプラズマ処理装置の実施例について説明する。
【0036】
(実施例1)
本発明のプラズマ処理装置に係る電極のアルマイト皮膜の硬度をマイクロビッカース硬度により評価した。サンプルは、JIS−A1050のアルミニウム板にアルマイト処理を施してアルマイト皮膜を形成し、その後研磨により脆弱層を除去する方法で作製した。サンプルの表面を斜めに機械加工することによって、皮膜表面からの距離に対するアルマイト皮膜のマイクロビッカース硬度を測定した。なお、比較例として脆弱層を除去しないアルマイト皮膜についても測定した。
【0037】
アルマイト処理および研磨の方法は次の通りである。
【0038】
アルマイト処理:硫酸法アルマイト処理により硬質アルマイト皮膜を厚さ70μm形成し、その後、純水封孔処理を施した。
【0039】
研磨:最大研磨箇所で約20μm研磨した。
【0040】
(1) 平面出し研磨:アルマイト処理後に形成されたアルマイト皮膜は若干凹になっているため、エメリー#320および#800で研磨した。
【0041】
(2) 水洗 :石鹸を溶かした水道水で洗浄した。
【0042】
(3) ラッピング :銅製定盤を用いて粒径3μmのダイヤモンド粉で研磨した。
(4) 水洗 :水道水で洗浄した。
【0043】
(5) 純水洗浄 :純水超音波洗浄を施した。
【0044】
図3は、アルマイト皮膜の厚み方向のマイクロビッカース硬度(記号:Hv)を示すグラフである。○は、脆弱層を除去する本発明方法で形成されたアルマイト皮膜に関する結果(本発明例)であり、△は、脆弱層を除去しないアルマイト皮膜に関する結果(比較例)である。
【0045】
本発明例(○)では表面より5μm以上でHv350以上を示すが、比較例では表面から40μm以上でようやくHv350以上を示す。すなわち、比較例の結果からアルマイト処理直後のアルマイト皮膜の表面には脆弱層が存在していること、この本発明例では、20μm程度研磨すれば脆弱層を除去できることが確認できた。
【0046】
(実施例2)
本発明のプラズマ処理装置に係る電極を、図2に示すプラズマ処理装置の上部電極に適用し、発生するパーティクル数の評価を行った。
【0047】
電極の製造方法について、図1に基づき説明する。
【0048】
▲1▼電極母材11aは、JIS−A1050のアルミニウム板を所定の形状に機械加工したものである(図1(a))。
【0049】
▲2▼電極母材11aに硫酸法アルマイト処理を施し、その表面に硬質アルマイト皮膜11bを厚さ76μm形成した。アルマイト処理後に、アルマイト皮膜に純水封孔処理を施した。
【0050】
▲3▼アルマイト皮膜11bの一部を機械加工により除去し、電極母材11aを露出させて、高周波電源とのコンタクト部11dを形成した(図1(c))。
【0051】
▲4▼プラズマに晒される側のアルマイト皮膜を最大研磨箇所で約20μm研磨して脆弱層11cを除去した(図1(d))。
【0052】
研磨の工程は次の通りである。
【0053】
(1) 平面出し研磨:アルマイト処理後に形成されたアルマイト皮膜は若干凹になっているため、エメリー#320および#800で研磨した。
【0054】
(2) 水洗 :石鹸を溶かした水道水で洗浄した。
【0055】
(3) バフ研磨 :グリセリン[潤滑剤]、ルーブリカント(商品名)(主成分エタノール)[潤滑剤]およびダイヤテック(商品名)(粒径3μmのダイヤモンド粉をエチレングリコールモノメチルエーテル溶媒に懸濁させたもの)[研磨剤]で研磨した。
【0056】
(4) 水洗 :水道水で洗浄した。
【0057】
(5) 純水洗浄 :純水超音波洗浄を施した。
【0058】
このようにして作製した電極を、図1に示すプラズマ処理装置の上部電極に用いて、プラズマを発生させパーティクル数の測定を行った。なお、比較例として、脆弱層を除去していないアルマイト皮膜を有する電極を上部電極に用いて、同様にパーティクル数の測定を行った。
【0059】
パーティクル数の測定は、8インチシリコンウエハ上のポリシリコン膜をエッチングする処理を繰り返し、所定の時間毎に8インチシリコンウエハを下部電極21上に載置して、ウエハ上のパーティクル(0.2μm以上)数を測定する方法によった。エッチング条件は、エッチングガス:He、SF、O、圧力:400mTorr、高周波の周波数:13.56MHz、高周波の電力:250W、電極間距離:1.1cmである。
【0060】
本発明のプラズマ処理装置に係る電極を用いたときのパーティクル数は平均95個(測定数47)で、比較例の平均190個(測定数27)に比べて約半分に減少した。
【0061】
すなわち、上部電極のプラズマに晒される表面を、脆弱層を除去し高硬度部を露出させたアルマイト皮膜とすることにより、アルマイト皮膜からのパーティクル発生を抑制し、処理室内のパーティクル数を低減させることができることを確認された。
【0062】
【発明の効果】
本発明のプラズマ処理装置に係る電極は、プラズマに晒されたときアルマイト皮膜表面からの剥離が少ないので、パーティクルの発生が少なくなる。また、電極の外周部をプラズマシールド部材で覆うことで、プラズマ照射から電極の外周部を保護できる。
【0063】
そのため、この電極を用いる本発明のプラズマ処理装置は、電極からのパーティクルの発生が少なく、処理室内のパーティクル数を低減できるので、半導体素子の製造歩留まりを向上させることができる。
また、本発明のプラズマ処理装置に係る電極は、ガス供給孔が形成してあるため、エッチング用ガスのようなプラズマ処理に係るガスをプラズマ処理装置の処理室に電極を通じて供給できる。
さらに、本発明のプラズマ処理装置に係る電極は、電極母材が露出したコンタクト部を備えるので、コンタクト部で電気的な接続を行える。
また、本発明のプラズマ処理装置は、電極に高周波電力または直流電圧を印加する電源を備えるので、スパッタに伴うパーティクル発生を低減した上で、高周波電力または直流電圧を電極に印加したプラズマ処理を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電極の製造工程を説明する模式図である。
【図2】本発明のプラズマ処理装置の模式的縦断面図である。
【図3】アルマイト皮膜の厚み方向のマイクロビッカース硬度(記号:Hv)を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ウエハ
10 処理室
11 上部電極
11a 電極母材
11b アルマイト皮膜
11c アルマイト皮膜の脆弱層
11d コンタクト部
11e ガス供給孔
12 上部真空封止板
14 拡散空間
15 恒温流体循環路
16 ガス供給路
17 プラズマシールド部材
18 絶縁部材
19 処理容器壁
21 下部電極
23 恒温流体循環路
24 絶縁部材
25 プラズマシールド部材
26 排気路
29 高周波電源

Claims (5)

  1. アルミニウムを主成分とする電極母材の表面にアルマイト皮膜が形成してある第1電極と、
    該第1電極に対向するように配置してある第2電極と、
    前記第1電極の前記第2電極に対向する側の外周部を覆うプラズマシールド部材と
    を備え、
    前記第1電極のアルマイト皮膜が皮膜表面に有する脆弱層は、前記第2電極に対向する側の前記プラズマシールド部材で覆われていない部分が除去してあることを特徴とするプラズマ処理装置。
  2. アルミニウムを主成分とする電極母材の表面にアルマイト皮膜が形成してある第1電極と、
    該第1電極に高周波電力または直流電圧を印加する電源と、
    前記第1電極に対向するように配置してある接地側の第2電極と
    を備え、
    前記第1電極のアルマイト皮膜が皮膜表面に有する脆弱層は、前記第2電極に対向する部分が除去してあることを特徴とするプラズマ処理装置。
  3. アルミニウムを主成分とする電極母材の表面にアルマイト皮膜が形成してある第1電極と、
    該第1電極に高周波電力または直流電圧を印加する電源と、
    前記第1電極に対向するように配置してある接地側の第2電極と、
    前記第1電極の前記第2電極に対向する側の外周部を覆うプラズマシールド部材と
    を備え、
    前記第1電極のアルマイト皮膜が皮膜表面に有する脆弱層は、前記第2電極に対向する側の前記プラズマシールド部材で覆われていない部分が除去してあることを特徴とするプラズマ処理装置。
  4. 前記第1電極には、プラズマ処理に係るガス供給用のガス供給孔が形成してある請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  5. 前記第1電極は、プラズマに晒されない部分のアルマイト皮膜を除去して電極母材が露出してあるコンタクト部を備える請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
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