JP3559497B2 - 超音波探触子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波診断装置などに用いられる超音波探触子に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波探触子は、生体を対象とした超音波診断装置などに用いられている。従来の超音波探触子として、例えば、特開平8−122310号公報に開示されたものがある。図5はこの公報に開示された超音波探触子の構成を示す縦断面図である。同図において、圧電素子11は板状に形成され、板面の両面に電極が披着され、両電極間に交流電圧を印加して超音波を送信したり、超音波を受信して両電極間に電圧を誘起させたりするための素子である。
【0003】
圧電素子11の一方の面上、すなわち、図面の上方の面上には導体でなる音響整合層15が積層されている。この音響整合層15は被検体(生体)との間で超音波を効率よく送受信するためのものである。また、高分子フィルム14aの一方の面には蒸着などによって導体層14が形成され、この高分子フィルム14aは導体層14を音響整合層15に接触させた状態で積層されている。この高分子フィルム14aの他方の面上には超音波を収束させる音響レンズ16が装着されている。圧電素子11の他方の面上、すなわち、図面の下方の面上には導電パターンを形成してなるFPC17が積層され、さらに、FPC17の外側面には背面負荷材18が積層されている。
【0004】
このように構成することにより、外部からの機械的な衝撃によって圧電素子11が割れたとしても、電気的には接続されており、故障することが少なくなって品質が安定するという構成を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の超音波探触子にあっては、音響整合層15として導体で、かつ、加工性に優れた材料であることを要求される。そのため、音響整合層15として所望の音響インピーダンスを有する材料を選択することが難しく、超音波探触子に望まれる音響特性、特に周波数特性の広帯域化の達成が困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、音響インピーダンスの値を自由に選択でき、超音波探触子にそれぞれ要求される音響特性、特に周波数特性の広帯域化を可能にするとともに、良好な感度を有する超音波探触子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、板状に成形された板面の両面にそれぞれ電極が形成された圧電素子と、
前記圧電素子の一方の電極面側に設けた少なくとも1層以上の音響整合層と、
前記圧電素子の他方の電極面に接触させた電気端子取出しフィルムと、
前記電気端子取出しフィルム側に設けた背面負荷材と、
前記圧電素子の電極面と前記1層以上の音響整合層の間に設けたことにより周波数特性及び感度に影響を及ぼす導体層とを備えた超音波探触子であって、
前記導体層が前記圧電素子より形状が大きく電気端子として側方に導出し、前記導体層の厚みは、周波数の広帯域化及び高感度化のため、前記圧電素子の共振振動によって発生する超音波の波長の1/90以下で、かつ前記圧電素子の共振振動の周波数が1から10MHzの範囲のとき、10μm以下の厚みを除く厚さである超音波探触子である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る超音波探触子の第1の実施の形態の構成を示す縦断面図である。同図において、圧電素子1はPZT系などの圧電セラミックスや、PZN、KNbO3などの単結晶などを用いて板状に形成され、これによって超音波を送受信するものである。この圧電素子1の一方の面、すなわち、図面の上方の面には金や銀をスパッタリングで披着したり、銀を焼き付けたりして接地電極2を形成している。この圧電素子1の他方の面、すなわち、図面の下方の面には接地電極2と同じように金や銀をスパッタリングで披着したり、銀を焼き付けたりして信号用電極3を形成している。
【0014】
圧電素子1の接地電極2の表面上には導電層4が電気的に接続するように接着されている。この導電層4は側方、すなわち、図面の左右方向に延出する延出端部を有している。圧電素子1から見て導電層4の外側に第1の音響整合層5が積層され、さらに、その外側に第2の音響整合層6が積層されている。
【0015】
一方、圧電素子1の信号用電極3の表面上にはプリント配線が信号用電極3と電気的に接続するように電気端子取出しフィルムとしてのFPC(Frexible Print Circuit)7が接着され、さらに、このFPC7を圧電素子1とで挟むように背面負荷材8が装着されている。この背面負荷材8は不要な超音波を減衰させたり、有用な超音波を保持したりする機能を有している。なお、圧電素子1の信号用電極3の表面上の一部に電気端子取出しフィルムとしてのFPC7が接着されて、さらに、この信号電極3とFPC7の一部に背面負荷材8が装着されても同様の効果が得られる。さらに、図示を省略するが、第2の音響整合層6上に超音波ビームを収束する音響レンズなどが設けられる。
【0016】
ここで、導体層4は、例えばエポキシ樹脂などの接着剤を極めて薄くして接着することにより接地電極2と電気的に接続したり、導電性接着剤で接着することにより接地電極2と電気的に接続したりする方法があるが、何れの方法でも電気的に接続できればよい。また、導体層4の構成材料としては、電気抵抗の低い材料であればよく、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、金、銀などの金属又はこれらの金属の合金でなる金属フィルム、あるいは、これらの金属フィルムを積層した、いわゆる複層化フィルムが望ましい。また導体層4は圧電素子1の接地電極と電気的に接続されてこの導体層4がケーブルを介して超音波診断装置に接続されることになるので、圧電素子1より長く形成し、圧電素子1の側方に延出させて電気的に接続しやすくしている。
【0017】
一方、導体層4は圧電素子1と第1の音響整合層5との間に設けられているため、音響特性の周波数特性(帯域幅)、感度に影響を及ぼすことになる。したがって、導体層4の厚みの設定が重要となる。図2及び図3はその影響の計算結果を示した線図である。これは導体層4の材料として、例えば銅(密度:8.9kg/m3、音速:4.7km/s)を用い、波長に換算される厚みを変えた時の比帯域(−6dB)の変化を図2に示し、感度の変化を図3に示している。図2及び図3から明らかなように、導体層4の厚みが厚くなるにつれ、比帯域、感度ともに低下していく。これらの特性の劣化は少ないことが望ましいが、実際に製作する過程で特性にばらつきを生じる一方、ばらつきがあったとしても超音波画像に差異が見られない程度の劣化であれば問題は無いとされる状況にある。
【0018】
問題のないばらつきのレベルは、周波数特性の比帯域で約−7.5%で、感度では1.5dBである。しかし、これらの許容できるばらつきのレベルの値は、超音波探触子全体の値であり、各材料のばらつきや、各接着層のばらつきなどが含まれているので、導体層4の厚みはもっと小さく抑えることが必要である。このような観点から導体層4は、少なくとも比帯域では−3.5%、感度は約−1.0dBになる厚みに制限することが望ましい。したがって、この特性を満足する導体層4の厚みは約1/90波長以下であることが望ましい。
【0019】
次に、第1の音響整合層5及び第2の音響整合層6は、音響インピーダンスが圧電素子1と被検体としての生体との間の値を有する材料が選択される。より詳細には、この音響インピーダンスの値により周波数特性の帯域幅が大きく変わり、要望される特性に合わせてその材料が選択される。この場合、超音波画像を高分解能、かつ、高感度にできるという点で、周波数の帯域幅を広げることが強く望まれる。一般的には、圧電素子1はPZT系の圧電セラミックスを使用しているので、この音響インピーダンスは約30Mraylであり、生体の音響インピーダンスは約1.6Mraylである。したがって、第1の音響整合層5として例えば8Mrayl前後の音響インピーダンスを持つ材料が用いられ、第2の音響整合層6として例えば3Mrayl前後の音響インピーダンスを持つ材料が用いられる。
【0020】
この構成によれば、第1の音響整合層5の材料として、導体、絶縁体を問わずに選択できることになり、このうち導体ではグラファイト、絶縁体では高分子に充填材を充填して音響インピーダンスを調整できる材料、あるいはガラス系、あるいはマシナブルのセラミックを用いてもよい。また、第2の音響整合層6としてはエポキシ樹脂を代表とする高分子材料が用いられる。なお、これら第1の音響整合層5及び第2の音響整合層6のそれぞれの厚みは基本的には1/4波長に選ばれる。しかし、これらの厚みは要望される特性により1/4波長からずれる場合もある。
【0021】
上述したように、本発明に係る超音波探触子の第1の実施の形態によれば、圧電素子1と第1の音響整合層5との間に導体層4を設けているため、第1の音響整合層5として、従来装置に要求されたように導体で、かつ、加工性に優れたものという制約がなくなり、音響インピーダンスの値に着目してその材料を自由に選択できるため、それぞれに要求される音響特性、特に周波数特性の広帯域化を可能にするとともに、良好な感度を有する超音波探触子を提供することができる。この結果、超音波診断装置の画像の高分解能化、高感度化を可能にすることができる。
【0022】
図4は本発明に係る超音波探触子の第2の実施の形態の構成を示す縦断面図である。図中、第1の実施の形態を示す図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。これは、圧電素子1に積層された導体層4が圧電素子1よりも横方向にはみ出した部位の圧電素子1側の表面に高分子材料層9を披着した点、並びに、導体層4が圧電素子1よりも横方向にはみ出した方向の圧電素子1の側面にそれぞれ絶縁層として所定の厚さの接着剤10を塗着した点が第1の実施の形態と構成を異にしている。
【0023】
ここで、高分子材料層9は、導体層4を薄いフィルム状のものにしたとき、超音波探触子を製作する過程で、圧電素子1に面接触する部位以外のはみだした部分の導体層4が破損しやすくなるため、この破損を防止する機能と、導体層4を最終的にはFPC7の側面及び背面負荷材8の側面に沿わせた構成にするとき、FPC7の導体部と導体層4とを電気的に絶縁する機能とを有しているもので、柔軟性のあるものが好適である。高分子材料層9としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリスルフォンなどの材料が望ましく、厚みは柔軟性があり折り曲げられる程度の厚みであればよく、例えば、10ないし50μm程度でよい。これらの高分子材料層9は導体層4に直接披着しても、接着剤を用いて接着してもよい。
【0024】
一方、接着剤10は、圧電体素子1の側面に塗着されるとともに、圧電素子1から側方にはみだした導体層4の基部における高分子材料層9にも塗着した構成になっている。これにより、導体層4を折り曲げてFPC7及び背面負荷材8の側面に固定する時、導体層4と高分子材料層9の延出基部の破損を未然に防止する機能を果たしている。接着剤10としてはエポキシ樹脂などに代表されるような一般的な接着剤であればよいが、硬度的にはショア硬度で約80以上のものであれば、接着剤10の効果は十分である。
特に、このような構成でその効果を発揮するのは、図4の紙面と直交する方向に圧電素子1、導体層4、第1の音響整合層5及び第2の音響整合層6を、例えば、0.1mmから0.3mmのピッチで数百個並設する、いわゆる、アレイ型超音波探触子の場合である。
【0025】
上述した第2の実施の形態によれば、圧電素子1と第1の音響整合層5との間に導体層4を設けているため、第1の音響整合層5として、従来装置に要求されたように導体で、かつ、加工性に優れたものという制約がなくなり、音響インピーダンスの値に着目してその材料を自由に選択できるため、それぞれに要求される音響特性、特に周波数特性及び感度を有する超音波探触子を提供することができる。この結果、超音波診断装置の画像の高分解能化、高感度化を可能にすることができる。
【0026】
また、圧電素子1に積層された導体層4が圧電素子1よりも側方にはみ出した部位の圧電素子1側の表面に高分子材料層9を披着し、さらに、導体層4が圧電素子1よりも横方向にはみ出した方向の圧電素子1の側面にそれぞれ所定の厚さの接着剤10を塗着したので、導体層4を折り曲げてFPC7及び背面負荷材8の側面に固定する時、導体層4と高分子材料層9の延出基部の破損を未然に防止することができるという効果も得られる。
【0027】
なお、上記各実施の形態では、導体層の外側に第1の音響整合層5及び第2の音響整合層6を設け2層としたが、所望の周波数特性及び感度を満たすことができれば音響整合層を1層としても、あるいは必要に応じて3層以上にしても上述したのと同様な効果が得られる。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかなように、本発明によれば、圧電素子と、音響整合層の間に導体層を設けたことにより、音響整合層が導体で、かつ、加工性に優れた材料でなければならないという制約はなくなり、音響インピーダンスに着目した材料を自由に選択でき、それぞれの超音波探触子に要望される音響特性、特に周波数特性の広帯域化を可能にするとともに、良好な感度を有する超音波探触子を提供することができる。この結果、超音波診断装置の画像を高分解能化、高感度化を可能にすることができる。
【0029】
また、導体層を圧電素子より平面形状を大きく形成するとともに、側方に導出した部位の、圧電素子側の導体層の表面に高分子材料を披着したことにより、導体層を折り曲げて背面負荷材の側面に固定する時、導体層の延出基部の破損を未然に防止することができるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波探触子の第1の実施形態の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示した超音波探触子の第1の実施形態における導体層の厚みと比帯域幅との関係を示した線図である。
【図3】図1に示した超音波探触子の第1の実施形態における導体層の厚みと感度との関係を示した線図である。
【図4】本発明に係る超音波探触子の第2の実施形態の構成を示す縦断面図である。
【図5】従来の超音波探触子の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 圧電素子
2 接地電極
3 信号用電極
4 導体層
5 第1の音響整合層
6 第2の音響整合層
7 FPC(電気端子取出しフィルム)
8 背面負荷材
9 高分子材料層
10 接着剤(絶縁層)
Claims (1)
- 板状に成形された板面の両面にそれぞれ電極が形成された圧電素子と、
前記圧電素子の一方の電極面側に設けた少なくとも1層以上の音響整合層と、
前記圧電素子の他方の電極面に接触させた電気端子取出しフィルムと、
前記電気端子取出しフィルム側に設けた背面負荷材と、
前記圧電素子の電極面と前記1層以上の音響整合層の間に設けたことにより周波数特性及び感度に影響を及ぼす導体層とを備えた超音波探触子であって、
前記導体層が前記圧電素子より形状が大きく電気端子として側方に導出し、前記導体層の厚みは、周波数の広帯域化及び高感度化のため、前記圧電素子の共振振動によって発生する超音波の波長の1/90以下で、かつ前記圧電素子の共振振動の周波数が1から10MHzの範囲のとき、10μm以下の厚みを除く厚さである超音波探触子。
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