JP3595755B2 - 超音波探触子 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、超音波探触子、特に、医療用画像診断等に用いられる超音波診断装置用の超音波探触子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、超音波診断装置に接続される超音波探触子は、診断装置本体から供給される電気信号を圧電振動子に印可し、この電気信号により発生する機械的歪みを超音波として生体内に放射し、生体内組織境界部から発生する反射超音波信号を診断装置本体で信号処理を行い、生体内の組織情報を画像化処理して診断装置本体上に表示するものであり、超音波探触子として電気・機械の変換効率の高さと短いパルス特性が要求される。
【0003】
従来、この種の超音波探触子には、特開平8−122310号公報に記載されたものが知られている。
【0004】
図4は、従来の超音波探触子の構成図である。
【0005】
図4において圧電振動子1の一方の面には正極電極2が、他方の面には接地電極3が形成されている。このそれぞれの電極2,3はガラスと銀が配合され焼成処理された焼き付け銀や、金のメッキ、スパッタリングまたは蒸着等により形成され、短いパルス特性を実現するために0.5μmから10μmの厚さで設けられる。
【0006】
正極電極2の背面には正極側導体層12および正極側基材層5が積層されている。
【0007】
正極側基材層5は高分子のフィルム等からなり、正極側導体層12はこの基材層上に銅や金の金属材質をメッキやスパッタリングまたは蒸着等若しくは金属箔を固着させる等の方法で形成されるものであり、必要に応じてパターンが形成される。
【0008】
さらに、正極側基材層5の背面には、圧電振動子に制動をかけ短いパルス特性を実現するように背面負荷材9が形成されている。
【0009】
また、接地電極2の前面(被検体側)には例えばグラファイト等の導体材料からなる第1の音響整合層8が積層され、さらにその前面には接地極側導体層13および接地極側基材層7が積層されている。
【0010】
接地極側基材層7は高分子のフィルム等からなり、接地側導体層13はこの基材層7上に銅や金の金属材質をメッキやスパッタリングまたは蒸着等若しくは金属箔を固着させる等の方法で形成されるものであるが、図示されるように接地側同体層13は下向きに配置される。さらに、接地極側基材層7の前面には超音波ビームの収束を図るべく音響レンズ10が設けられている。
【0011】
このような構成において、正極側導体層12および接地極側導体層13間に超音波診断装置本体(図示せず)から供給される電気信号によって圧電振動子1は機械的歪みを生じ、超音波を送波する。
【0012】
この圧電振動子1から送波された超音波は、音響整合層8により生体への伝搬効率が高められ、音響レンズ10により超音波ビームの収束が図られて生体内(図示せず)へ送信される。
【0013】
生体内へ送信された超音波ビームは、生体内の組織境界によって反射波を生じ、同一の経路を経て圧電振動子1によって受信され、再び電気信号に変換され受信信号として超音波診断装置に送られる。超音波診断装置においては、この受信信号を基に生体内情報を画像化し、診断を行うものである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の超音波探触子においては、一般的に25〜35MRaylと高い値を有する圧電振動子1から送信される超音波を1.5MRayl程度の音響インピーダンスを有する生体内に効率良く伝搬させるために音響整合層8を設け、音響整合層8の音響インピーダンスおよびその厚みを調整することによって音響的整合の最適化を図り、短いパルス長でかつ高い伝搬効率を実現しているにも関わらず、音響整合層8と音響レンズ10の間に金属材質である接地極側導体層13が介在してしまうことによって、音響的整合が崩れてしまい、パルス長ならびに伝搬効率の劣化を引き起こしてしまうものある。
【0015】
これらは、正極側導体層においても同様であり、超音波の周波数が高くなるほどその影響は顕著となってくる。
【0016】
このパルス長ならびに伝搬効率の劣化を低減させるためには、各導体層の厚みを5μm以下に抑える必要があるが、導体層厚を薄くした場合は、電気的抵抗(電気的インピーダンス)が大きくなり、電気的導体経路上における駆動電気信号の低下が生じ圧電振動子1に印可される電気信号が低くなることによって、結果的に診断装置本体から見た場合の電気機械変換効率の低下を引き起こしてしまう。
【0017】
また、電気的導体経路上の電気的インピーダンスの増加は、外来電気的ノイズの排除能力をも劣化させ、外来電磁波ノイズによる診断画像の劣化を引き起こしてしまうものであり、音響的な整合条件の最適化と電気的導体経路の最適化の両立が困難となってしまうものであり、正確な超音波画像診断を阻害し、引いては誤診をも引き起こす重大な問題を有している。
【0018】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、高分解能化が進む超音波探触子において、音響的な整合条件の最適化と電気的導体経路の最適化の両立を実現し、高精度な超音波画像診断情報を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために本発明は、圧電振動子の電極部分と重複する部分と重複しない部分の厚みが異なる導体層を用い、それぞれの部分における導体層厚を音響的・電気導体経路的に最適化を可能にしたものである。
【0020】
すなわち、請求項1に記載された発明は、一方の面に正極電極、他方の面に接地電極が設けられた圧電振動子と、前記圧電振動子の少なくとも一方の電極に一部分が重複するように積層して設けられ、前記電極と異なる材料の銅あるいはニッケルの導体層とを有し、前記導体層は、前記電極と重複する部分と重複しない部分の厚みが異なり、少なくとも音響的影響エリア内の前記導体層の厚みが音響的影響エリア外の厚みよりも薄いことを特徴とする超音波探触子である。
【0021】
この構成により、圧電振動子の電極部分と重複する部分(音響的影響エリア)の導体層厚は薄くし、音響的悪影響を低下させ、その他の電気的導体経路部の導体層厚は厚くする事によって電気的インピーダンスを低くする事によって音響的な整合条件の最適化と電気的導体経路の最適化の両立を実現することを可能とするものである。
【0022】
請求項2に記載の発明は、前記導体層が基材上に設けられたことを特徴とする請求項1記載の超音波探触子である。
【0023】
この構成により、請求項1と同様の作用・効果に加えて、導体層の薄肉部分の導体部分がしわや折れ癖等による組成変形を引き起こしにくくなり、導体層および超音波探触子の生産上の扱いが容易になると言う格別の効果も有する。
【0024】
請求項3に記載された発明は、一方の面に正極電極、他方の面に接地電極が設けられた圧電振動子と、前記接地電極の前面に設けられた音響整合層と、前記音響整合層の前面に設けられ、基材層上に配置された銅あるいはニッケルの導体層とを有し、前記導体層は、前記接地電極と重複する部分と重複しない部分の厚みが異なり、少なくとも音響的影響エリア内の前記導体層の厚みが音響的影響エリア外の厚みよりも薄いことを特徴とする超音波探触子である。
【0025】
この構成により、請求項1及び2と同様の作用・効果に加えて、前記基材層が第2の音響整合層として機能するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0027】
図1は本発明の第1の実施の形態による超音波探触子を示す。
【0028】
図1において圧電振動子1は圧電セラミックス等の電歪素子であり駆動周波数により最適化された厚みを有するものである。圧電振動子1の前面には接地電極3および背面には正極電極2が予め設けられている。これらの電極は、厚みが0.5μmから10μmであり、金のスッパッタリング、若しくは蒸着やメッキ等の方法により形成されるが、材質については金に限定するものではない。圧電振動子1が正極電極2と接地電極3に挟まれ、分極処理を受けた部分が超音波の送受信を行う実質的な超音波送受信領域であり音響的影響エリア11となる。接地電極3の前面には接地電極3と電気的導通を図るべく接地極側導体層13が設けられるが、この接地極側導体層13の少なくとも音響的影響エリア11に重複する部分の接地極側導体層(薄肉部分)13−aの厚さは0.5から10μmであり、その他の部分である接地極側導体層(厚肉部分)13−bの厚みは15から50μmと部分的に厚みの異なる導電体で構成される。
【0029】
この部分的に厚みの異なる接地極側導体層13は、予め0.5μmから10μmの厚みの銅箔に所望のパターンでマスキングを施し、メッキ処理により導体を厚肉化し、後にマスキングを除去する方法により形成することができる。また、15μmから50μmの厚みの銅箔に所望のマスキングを施し、エッチング処理により部分的に銅箔を薄肉化した後にマスキングを除去する方法によっても形成することもできる。さらに、接地極側導体層13の前面には音響的整合を図るための音響整合層8、及び超音波の収束を図るためのシリコーンゴム等の材質からなる音響レンズ11が設けられる。
【0030】
一方、正極電極2の背面には、銅箔等の電気的導電性を有する材質からなる正極側導体層12が正極電極2と電気的導通が図られるように積層される。この正極側導体層12も接地極側導体層13と同様に、少なくとも音響的影響エリア11に重複する部分の正極側導体層(薄肉部分)12−aの厚さは0.5μmから10μmであり、その他の部分である正極側導体層(厚肉部分)12−bの厚みは15μmから50μmと部分的に厚みの異なる導電体で構成される。正極側導体層12においては接地極側導体層13と同様の方法で形成することが可能であり、必要に応じて予め所望のパターンを設けることができる。正極側導体層12背面には、背面負荷材9が設けられ超音波探触子を構成している。
【0031】
上記構成においては、正極側、接地極側ともに導体層の厚みが異なる様に記載しているが、これらは、一方だけに限っても良く、また各正極側、接地極側の導体層が音響影響エリアの一部にしか配置されていない場合も同様である。また、導体の材質を銅として記載しているが、これらは銅に限らず、ニッケル等の導電材料であれば構わない。更に、上記記載においては音響整合層が1層である場合について記載したが、2層以上の複数の音響整合層を形成した場合でも同様である。
【0032】
上記構成によれば、圧電振動子の電極部分と重複する部分と重複しない部分の厚みが異なる導体層を用いることにより、実際に超音波振動を起こし音響的整合が要求される音響的影響エリア11内の導体層厚は薄いために、音響的な不整合の発生を抑制でき、かつその他の電気的導体経路部の導体層厚は厚くする事によって低い電気的インピーダンスで電気信号の伝達が行えると言う作用を有する。
【0033】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施の形態によれば、一般的に音響インピーダンス的に不整合を引き起こす材料が音響的影響エリア11内に介在したとしても、送受信される超音波の波長の20分の1波長以下の厚みであればその音響的不整合による悪影響は極めて低く抑えることが可能であるため、その超音波探触子の設計周波数によって異なるが、音響的影響エリア11内の導体層厚を約5μm以下することによって、超音波の送受信における周波数特性の劣化や感度の低下も生じることなく、高感度で高分解能な超音波探触子を提供することができる。
【0034】
また、電気的導体経路として機能する部分の導体層厚を厚くすることによって電気的インピーダンスを低く抑えることが可能となるため、外来電気的ノイズの排除能力を向上させることが可能であり、外来電磁波ノイズによる診断画像の劣化を引き起こすことなく、高分解能な超音波診断画像を提供することが可能となる。
【0035】
本発明は、このような構成によって、音響的な整合条件の最適化と電気的導体経路の最適化の両立を実現し、高精度な超音波画像診断情報を提供することが可能となる。
【0036】
図2は、本発明の第1の実施の形態における導体層に代えて、部分的に厚みの異なる導体層が予め基材層上に形成された構成を示す斜視図である。
【0037】
図2において、接地極側基材層7は、例えば厚みが5μmから50μm程度のポリイミドの絶縁性高分子フィルムであり、その一方の面には部分的に厚みの異なる接地極側導体層13が形成されている。この接地極側導体層13は、少なくとも音響的影響エリア11に重複する中央部の接地極側導体層(薄肉部分)13−aとその両側にある接地極側導体層(厚肉部分)13−bを有し、薄肉部分の厚みは0.5μmから10μmであり、厚肉部分の厚みは15μmから50μmであるのが好ましい。
【0038】
この部分的に厚みの異なる接地極側導体層13は、予め5μmから50μm程度のポリイミド基材上にメッキ若しくはスパッタリング等の方法によって銅層を0.5μmから10μmの厚さに形成した後、薄肉とする部分に所望のパターンでマスキングを施し、メッキ処理により厚肉とする部分に導体をメッキして厚肉化し、後にマスキングを除去する方法により形成することができる。
【0039】
また、予めポリイミドの基材上に銅を15μmから50μmメッキし、厚肉とする部分に所望のマスキングを施し、マスクされない部分をエッチング処理により部分的にエッチングして、銅箔を薄肉化した後、マスキングを除去する方法によっても形成することもできる。
【0040】
これらの製造プロセスは、フレキシブルプリント回路の生産において一般的に行われているものと同様である。
【0041】
図2は接地極側導体層の厚さの違う構造を示しているが、正極側導体層においても同様である。この際、必要に応じて予め所望のパターンを設けることも可能である。
【0042】
また、基材層についてもポリイミドに限定するものではなく、組成変形しにくい材質であればよい。
【0043】
以上のようにして基材層上に形成された導体層を用いることにより、第1の実施の形態の作用・効果に加えて導体層の薄肉部分の導体部分がしわや折れ癖等による組成変形を引き起こしにくくなり、導体層および超音波探触子の生産上の扱いが容易になると言う格別の効果も奏する。
【0044】
図3は、本発明の第2の実施の形態の超音波探触子を示す。
【0045】
図3において、第2の実施の形態の超音波探触子は、一方の面に正極電極、他方の面に接地電極が設けられた圧電振動子1と、接地電極の前面に設けられた音響整合層8と、前記音響整合層8の前面に設けられ、接地極側基材層7上に配置された厚みが部分的に異なる接地極側導体層13と、さらにその前面に音響レンズ10を有する。この構成により、本発明は、接地極側基材層7が第2の音響整合層として機能する超音波探触子である。
【0046】
図3において、音響整合層8はグラファイト等の電気的導電性を有する材料からなり、圧電振動子1の前面に構成された接地電極3と電気的導通を図るべく構成されている。そして、音響整合層8と音響レンズ10の間には、図2により説明したと同様に接地極側基材層7と厚みの異なる接地極側導体層13とが設けられている。この接地極側導体層13は予め接地極側基材層7上に形成されたものであり、音響整合層8と電気的導通を図るべく構成されている。
【0047】
この際、接地極側基材層7は第2の音響整合層として機能すべく考慮されたものであり、具体的には、接地極側基材層7は、その材質の音響インピーダンスの値が音響整合層8と音響レンズ10の材質の値の間にあるものであり、その厚みは、送受信される超音波の周波数の約4分の1波長とするのが好適である。
【0048】
接地極側基材層7を接地電極3と音響整合層8の間に設けた場合には、この接地極側基材層7の有する音響インピーダンスの値により音響的不整合を生じる要因となる。しかし、接地極側基材層7を音響整合層8と音響レンズ10との間に設けた場合には、接地極側基材層7の音響インピーダンスおよびその厚みを最適化することにより、第2の音響整合層として積極的に利用することができる。従って、本発明の第2の実施の形態による超音波探触子は、音響的不整合を回避できるのみでなく、さらに音響的整合を最適化することが可能となり、送受信感度ならびに周波数特性の良化により高感度で高分解能な超音波探触子を得ることができる。
【0049】
第2の実施の形態における接地極側基材層7の材質としては、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーネイト、ポリエチレン等の音響インピーダンスが2.5〜4.5程度の高分子フィルムが好ましい。
【0050】
その他の作用・効果は、第1の実施の形態による超音波探触子、および図2に示した基材層7を用いた超音波探触子と同様である.
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による超音波探触子
【図2】部分的に厚みの異なる導体層が予め基材層上に形成された構成を示す斜視図
【図3】本発明の第2の実施の形態による超音波探触子
【図4】従来の超音波探触子
【符号の説明】
1 圧電振動子
2 正極電極
3 接地電極
5 正極側基材層
7 接地極側基材層
8 音響整合層
9 背面負荷材
10 音響レンズ
11 音響的影響エリア
12 正極側導体層
13 接地極側導体層
Claims (3)
- 一方の面に正極電極、他方の面に接地電極が設けられた圧電振動子と、前記圧電振動子の少なくとも一方の電極に一部分が重複するように積層して設けられ、前記電極と異なる材料の銅あるいはニッケルの導体層とを有し、前記導体層は、前記電極と重複する部分と重複しない部分の厚みが異なり、少なくとも音響的影響エリア内の前記導体層の厚みが音響的影響エリア外の厚みよりも薄いことを特徴とする超音波探触子。
- 前記導体層が基材層上に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
- 一方の面に正極電極、他方の面に接地電極が設けられた圧電振動子と、前記接地電極の前面に設けられた音響整合層と、前記音響整合層の前面に設けられ、基材層上に配置された銅あるいはニッケルの導体層とを有し、前記導体層は、前記接地電極と重複する部分と重複しない部分の厚みが異なり、少なくとも音響的影響エリア内の前記導体層の厚みが音響的影響エリア外の厚みよりも薄いことを特徴とする超音波探触子。
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