JP3558842B2 - 厚鋼板の冷却装置およびその冷却方法 - Google Patents

厚鋼板の冷却装置およびその冷却方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3558842B2
JP3558842B2 JP32404997A JP32404997A JP3558842B2 JP 3558842 B2 JP3558842 B2 JP 3558842B2 JP 32404997 A JP32404997 A JP 32404997A JP 32404997 A JP32404997 A JP 32404997A JP 3558842 B2 JP3558842 B2 JP 3558842B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cooling
steel plate
thick steel
heat transfer
time
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP32404997A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11156422A (ja
Inventor
多一郎 福田
洋一 原口
祐一 谷野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP32404997A priority Critical patent/JP3558842B2/ja
Publication of JPH11156422A publication Critical patent/JPH11156422A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3558842B2 publication Critical patent/JP3558842B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatments In General, Especially Conveying And Cooling (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度と高靱性とを有する厚鋼板を得るために、熱間圧延工程の仕上げ圧延終了後に厚鋼板の強制冷却を行う際における、厚鋼板(35mm以上の厚鋼板を対象とする)の冷却装置およびその冷却方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に高強度と高靱性とを有する厚鋼板を得るために、熱間圧延工程の仕上げ圧延終了後に鋼板の強制冷却が行われている。
【0003】
この場合の鋼板冷却装置は、図10に示されるように、仕上げ圧延機後方の搬送テーブルに対して設置される。仕上げ圧延機1にして仕上げ圧延された後の厚鋼板は、搬送テーブル2に設置された鋼板冷却装置3へと搬送される。鋼板冷却装置3においては、給水ポンプ4から冷却水を鋼板冷却スプレーヘッダー5に送水し、送水された冷却水を鋼板冷却スプレーヘッダー5を介して、所定の通板速度で通板中の厚鋼板の上下面に対して投射し、厚鋼板が冷却するものである。
【0004】
また、鋼板冷却スプレーヘッダー5への給水量は、配管に設けられた流量調節弁6等により適宜調節することができる。
【0005】
上記のような装置を用いる鋼板を冷却する方法において、均一な機械的性質を有する鋼板を得るためには、冷却時の温度コントロールはきわめて重要であり、これを改良する方法として、特開昭63−115610号公報では、予備冷却時の冷却開始および終了温度と通板速度の実測値とから鋼板の熱伝達係数を求め、この熱伝達係数から後段の冷却時に温度を所定値にする方法を開示している。
【0006】
特開昭63−144814号公報には、金属板の通板速度および表面温度の温度変化にともなう熱伝達係数の変化から伝熱方程式を解き、この伝熱方程式から冷却水の噴射量および通板速度を決定して鋼板を所定の温度にする方法が開示されている。また、特開平6−330155号公報には、スケール厚さを制御することによって熱伝達係数を制御し、該鋼板の冷却速度および/または冷却停止温度を制御する方法が開示されている。
【0007】
他方、特公平7−47166号公報には、Ar3 点〜500℃近傍において熱伝達率2500Kcal/m2・h・℃(約2150W/m2・K)以上の条件で強冷却し、500〜200℃において熱伝達率150〜2000Kcal/m2・h・℃の条件で弱冷却する方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特に厚鋼板のように1スラブごとに加熱圧延されるものにおいては、鋼板温度がその時々で異なり、また圧延形状の相違なども要因として位置的な温度差を生じ、さらにスケール厚の相違に起因して、熱伝達率は大きく変化する。
【0009】
したがって、熱伝達率の推定値を用いて行われる特開昭63−115610号公報、特開昭63−144814号公報、および特開平6−330155号公報記載の方法によっては、鋼板の長手方向平均、幅方向、および上・下面の温度が均一になるように温度コントロールを行うことは、工業的にきわめて困難であり、温度のばらつきを避けることはできず、機械的特性や形状不良などの原因となる。
【0010】
一方、水冷において、図2に示す沸騰曲線のとおり、鋼板表面温度に対する熱伝達率は、高温側(約600℃以上、TA 以上の温度)では低く、かつ低温側(約600℃以下、TA 以下の温度)では急峻に高くなるというように変化することが知られている。
【0011】
しかるに、前記の特公平7−47166号公報記載の方法においては、鋼板温度の変化に対応して目的の熱伝達率を示すように冷却するためには、前段において鋼板の温度の均一性を確保することが必要となる。しかし、これを実施するためには、前述のように、600℃近傍での急激な熱伝達率の変化を正確に予想することが前提となり、このために高精度な制御を行うことが必須となるところ、現実には、その高精度の冷却制御は困難であるために、現状では、工業的に温度の均一化に伴う鋼板の機械的特性を均一化することは難しい。
【0012】
そこで本発明の主たる課題は、機械的特性の均一な厚鋼板を得るために、鋼板温度の均一性を確保できる冷却装置およびその冷却方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の請求項1記載の発明は、厚鋼板の熱間圧延機の後方に設けた厚鋼板を冷却する鋼板冷却装置において、
(1)前記厚鋼板の板厚が35mm以上であって、該厚鋼板の冷却開始から該厚鋼板の表面温度が300℃まで冷却される時間が、0.2秒以上1秒未満で、かつ、熱伝達率h1 ≧8000(W/m2・K)の条件で強冷却する前段強冷却ゾーンと、
(2)前記強冷却開始時点から1秒以上経過した時点で、前記厚鋼板の板厚をt(m)として、熱伝達率h2 ≧(350/t)−2000(W/m2・K) の条件で弱冷却する後段弱冷却ゾーンと、
が、順に設けられていることを特徴とする厚鋼板の冷却装置である。
【0014】
請求項2記載の発明は、厚鋼板の熱間圧延機の後方に設けた厚鋼板を冷却する冷却方法において、
(1)前記厚鋼板の板厚が35mm以上であって、該厚鋼板の冷却開始から該厚鋼板の表面温度が300℃まで冷却される時間が、0.2秒以上1秒未満で、かつ、熱伝達率h1 ≧8000(W/m2・K) の条件で強冷却し、
(2)その後、前記強冷却開始時点から1秒以上経過した時点で、前記厚鋼板の板厚をt(m)として、熱伝達率h2 ≧(350/t)−2000(W/m2・K) の条件で弱冷却することを特徴とする厚鋼板の冷却方法である。
【0015】
請求項3記載の発明は、厚鋼板の熱間圧延機の後方に設けた厚鋼板を冷却する冷却方法において、
(1)前記厚鋼板の板厚が35mm以上であって、該厚鋼板の冷却開始から該厚鋼板の表面温度が300℃まで冷却される時間が、0.2秒以上1秒未満で、かつ、熱伝達率h1 ≧8000(W/m2・K) の条件で強冷却する工程を、経時的に複数回繰り返し、
(2)その後、前記複数回のうちの最終の強冷却する工程の冷却開始時点から1秒以上経過した時点で、前記厚鋼板の板厚をt(m)として、熱伝達率h2 ≧(350/t)−2000(W/m2・K) の条件で弱冷却することを特徴とする厚鋼板の冷却方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図面に示す実施の形態を参照しながらさらに詳説する。
図1は本発明の冷却装置を含む設備例を示したもので、仕上げ圧延機1を経て仕上げ圧延された厚鋼板は、その圧延機1の下流側における搬送テーブル2に対して設置された鋼板冷却装置3において冷却される。
【0017】
本発明においては、鋼板冷却装置3が、短時間に当該厚鋼板の表面温度を300℃まで冷却できる能力を有する前段強冷却ゾーン31と、後段弱冷却ゾーン32とに分かれて設置される。
【0018】
ここに、前段強冷却ゾーン31は、前記厚鋼板の冷却開始から冷却終了時点までの時間が、0.2秒以上1秒未満の時間内において、熱伝達率h1 ≧8000(W/m2・K)の条件で強冷却するものである。
【0019】
また、後段弱冷却ゾーンは、前記冷却開始時点から1秒以上経過した時点で、前記厚鋼板の板厚をtとして、熱伝達率h2 ≧(350/t)−2000(W/m2・K) の条件で弱冷却するものである。
【0020】
この条件を達成するために、図1に示すように、鋼板冷却装置3内の前段強冷却ゾーン31の出側で、後段弱冷却ゾーンの入側に、インライン温度計5を設置し、このインライン温度計5からの厚鋼板表面温度信号に基づいて制御装置10により、給水ポンプ4による流量をコントロールするフィールドバック温度制御を行うことができる。さらに、搬送テーブル2の適宜の位置に鋼板搬送速度計7を設け、制御装置10により鋼板速度を制御し、鋼板冷却装置3における厚鋼板の滞留時間を制御することにより、厚鋼板の温度コントロールを行うことが望ましい。
【0021】
一般に、伝熱面温度を液体の飽和温度以上に上げていくと、伝熱面上で蒸発を伴う伝熱、すなわち沸騰伝熱を生じる。横軸に厚鋼板の表面温度を、縦軸に熱伝達率を取った場合、図2に示す沸騰特性曲線に沿った変化を示す。鋼板の表面温度がTA より高い場合には膜沸騰、TA 〜TB 間である場合には遷移沸騰、またTB より低い場合には核沸騰である。
【0022】
水冷方式の場合、鋼板表面から熱が奪われるために、鋼板表面の温度が低下する。しかるに、図2に示すように、鋼板表面温度がTA より高温の場合には、熱伝達率がほぼ一定であるために、鋼板表面温度変化はほぼ一定である。しかし、TA 〜TB 間の場合には、沸騰特性曲線が負の傾きを有するので、表面温度の低下が始まると、鋼板表面温度はTB に達するまで(B点に達するまで)下がり続ける。これは、鋼板位置によってA点に達するまでの時間が異なると、鋼板位置相互間の温度差が増幅されることを意味している。したがって、鋼板が冷却装置3に進入する前において、鋼板位置によって温度差があったり、冷却装置による冷却能を支配する鋼板のスケール厚の差および鋼板表面の凸凹がある場合には、TA 〜TB (A〜B点)間での冷却を行うと、水冷中の温度差が増幅する。
【0023】
一方、TB 〜TC (B〜C点)間では、沸騰特性曲線が正の傾きを有し、TB より低温側では低温になればなるほど熱伝達率hが低くなるので、冷却装置3に進入する前における前述の温度差要因があったとしても、その温度差要因は解消する傾向を示し、TB 〜TC 間では鋼板内の温度差は縮まることとなる。
【0024】
したがって、本発明の第1の主題は、冷却の前段において、鋼板表面温度をTB 近傍(B点近傍)、たとえばB〜C点間に冷却し、温度差(要因)を解消させることにより、均一化した冷却を行うことにある。しかるに、本発明に従って、一旦、鋼板表面温度がTB 近傍に冷却してしまう限り、その後、鋼板の水冷中において復熱が生じた場合でも、TA 〜TB (A〜B点)間では沸騰特性曲線が負の傾きを示すので、その温度は温度TB に戻ろうとする作用が生じるから、鋼板位置による温度差の発生がきわめて小さくなる。
【0025】
また、本発明の第2の主題は、鋼板表面温度をTB 近傍(B点近傍)に冷却すると、B点近傍では安定した熱伝達率を常時得ることができ、この安定した熱伝達率は、鋼板の冷却装置前段における滞留時間のみで温度コントロールが可能であるため、たとえば水冷量などをコントロールして温度制御することに比較して、安定した温度制御が可能となる。
【0026】
次に、本発明に係る条件についてさらに具体的に説明する。
(B点近傍が成立する条件について)
図4は、温度TO (℃)の半無限固体の表面温度がTS (℃)となった後、時間τ秒後の、半無限固体内の温度勾配を示す。ここで、xは固体内の厚さ方向の深さ(mm) 、δ(τ)はある時間τ秒後の温度浸透深さ(mm)である。しかるに、αを温度伝導率とすると、以下の式(1)〜(3)が成立する。
【数1】
Figure 0003558842
【数2】
Figure 0003558842
【数3】
Figure 0003558842
式(1)〜(3)を解くと、
【数4】
Figure 0003558842
が導かれ、式(4)より、
【数5】
Figure 0003558842
となる。一方、hを熱伝達率(W/m2・K) およびλを熱伝導度とすると、熱バランスから、式(6)が成立する。
【数6】
Figure 0003558842
式(5)および式(6)より、式(7)が得られる。TW は冷却水の温度(℃)である。
【数7】
Figure 0003558842
この(7)式において、先に述べたように、本発明では、鋼板表面温度をTB 近傍(B点近傍)に冷却するものを前提にしているものであるから、表面温度TS は、表面温度TBに等しく、x=0の下で、TBをTSに代入すれば、その(7)式は、強冷却における熱伝達率h1 の必要な理論的境界条件を示し、したがって、熱伝達率h1 が(7)式の右辺の値より大きい条件の下では、良好な強冷却を行うことができる。……当初明細書に記載がないが、何を根拠にするのか?根拠があるのであれば、証拠などが必要。
【0027】
また、鋼板を上下面から冷却した場合の経時的温度分布の変化は図6に示すものとなる。すなわち、冷却(水冷)開始時(τ=0)において、鋼板全体が一定温度であるものが、鋼板上下面からの冷却によって鋼板内において温度勾配を示すようになり、一定時間経過後のτ3 の時点となると、冷却温度浸透深さδ(τ)が、板厚の1/2に達する。このτ3 時点以降の冷却を、本発明に従ってTS (=TB)=300℃近傍の温度域で行う限り、鋼板冷却中における抜熱と熱伝導とがバランスし、鋼板内の温度勾配は以後も一定になる。
【0028】
このことは、逆に、冷却温度浸透深さδ(τ)が板厚の1/2に達した時点からの熱伝達率hは一定となることを意味している。したがって、(4)式において、δ=t/2とすることができ、(8)式が与えられる。この(8)式は、弱冷却の条件を与えるものである。
【数8】
Figure 0003558842
この式(8)を式(7)に代入すると、弱冷却の条件における(9)式が与えられる。
【数9】
Figure 0003558842
したがって、熱伝達率h2 が(9)式の右辺の値より大きい条件の下では、良好な弱冷却を行うことができる。
【0029】
〔実施例〕
次に実施例により本発明の効果を明らかにするとともに、実験の結果からみた前述の条件などについても考察する。
【0030】
実施例での設備の概要を図7に示す。この設備は、基本的に図1に示すものと同様であるが、前段強冷却ゾーン31と、後段弱冷却ゾーン32との間に、前段強冷却による後段弱冷却への影響を防止するために、鋼板Mの上下面に当接して回転し冷却水の鋼板M表面上の移動を阻止する拘束ローラー9を設けたものである。また、実施例では、前段強冷却ゾーンノズル31aとしてスリットノズル(上下それぞれ水量15m3/分)が、後段弱冷却ゾーンノズル32aとしてスプレーノズル(上下それぞれ水量1m3/m2・分)が用いた。なお、前段強冷却ゾーンノズル31aの噴射有効長さ(換言すれば前段強冷却ゾーンの有効長)は0.1mである。これらは、スリットジェットノズル、ミスティングジェットノズル、スリットノズル、またはスプレーノズル等のいずれのノズル形式も用いることができる。
【0031】
かかる設備の下で、板厚tが40mm、搬送速度24m/分で搬送される仕上げ圧延後の約800℃の厚鋼板に対して、温度が30℃の冷却水により強冷却および弱冷却を行った。
【0032】
この条件下では、強冷却時間τは、0.1m÷24m/分=0.25秒であり、このτ値を式(4)に代入するとδ≒0.008mである。(4)式と(7)式とにより、式(10)が得られる。
【数10】
Figure 0003558842
この式(10)に、TS =300℃、TW =30℃およびTO =800℃を代入すると、式(11)となる。
【数11】
Figure 0003558842
式(11)におけるλは35W/m・Kであるから、δ=0.008mを代入すると、次記の強冷却における熱伝達率となる。
ha=3.7×35÷0.008≒16189(W/m2・K) …(A)
他方、弱冷却時においては、(9)式において、t=0.04m、TO =800℃、TS =300℃、TW =30℃およびλ=35W/m・Kを代入すると、次記の弱冷却における熱伝達率となる。
hb=259/t=259/0.04=6475(W/m2・K) …(B)
かかる条件の下で得られた鋼板は、板形状が良好であり、かつ機械的特性にも優れたものであった。
【0033】
<第2例>
第2例においては、板厚tが58mmの厚鋼板については、搬送速度を10m/分として冷却した。この場合においては、同様に計算を行うと、τ=0.6秒、δ=0.012mであるから、強冷却における熱伝達率は次記となる。
hc=3.7×35÷0.012≒10792(W/m2・K) …(C)
また、弱冷却における熱伝達率は次記となる。
hd=259/t=259/0.058=4465(W/m2・K) …(D)
この第2例においても、得られた鋼板は、板形状が良好であり、かつ機械的特性にも優れたものであった。
【0034】
(まとめ)
図2におけるB点の温度は、厚鋼板と水との関係では、鋼板表面温度TB ≒300℃であることを知見しているので、TS =300℃およびTW =30℃を、また、鋼板冷却開始時の条件としてTO =800℃、および物性として熱伝導率α=2×10-5、熱伝導度λ=35W/m・Kをそれぞれ式(7)に代入し、かつ対象とする板厚の種類を考慮すると、強冷却における最適の熱伝達率の境界条件として、図5に示す実線のグラフが得られる。このグラフから、τ=1では熱伝達率h1 ≒8000(W/m2・K)であることが判る。
【0035】
他方、弱冷却における熱伝達率の境界条件は、理論的には、前記の(8)式または(9)式で与えられ、熱伝達率h2 は、板厚tと強く相関し、図5のグラフ上でもあらわすことができる。ちなみに、多くの実験の下で、板形状が良好であり、かつ機械的特性にも優れたものの場合における、熱伝達率h2 は、板厚t=40mmのとき6475W/m2・K、板厚t=50mmのとき5180W/m2・K、板厚t=60mmのとき4316/m2・Kであることを知見している。
【0036】
さらに、外乱要素を含めると、好適な弱冷却における熱伝達率h2 の境界条件は、図3に示すグラフとなり、次記式で近似できる。
熱伝達率h2 =(350/t)−2000(W/m2・K)
【0037】
なお、図5に示すグラフは、本発明における、前段強冷却ゾーンによって行われる強冷却の際、TS =300℃にするのに必要な熱伝達率h1 と、後段弱冷却ゾーンによって行われる弱冷却の際、強冷却により達成された表面温度を維持するために必要な熱伝達率h2 とを示しており、例えばt=40mmの場合は、図5のグラフにおいて、鋼板冷却開始から実線部分とt=40mmに対応する破線部分とが交差する時点までは、強冷却し、それ以降は弱冷却することによって、T0 =300℃で鋼板全体を均一に冷却できることとなる。
【0038】
本発明において、強冷却の時点τは、0.2秒以上1秒未満の時間内とするのは、τと冷却開始温度T0 との関係、およびτと板厚tとの関係が存在し、理論的には、(8)式および(9)式によって限定されるものと考えられるものの、現実的観点からみて、τの下限時間は0.2秒以上と限定される。τの上限時間(1秒未満)も同様に現実的観点から定めた。
【0039】
弱冷却の開始時点は、(8)式を変形すれば判るように、理論的には次記式で表すことができる。
τ≧(t2 /4)×(1/12α)
この時点までは、理論的には(9)式の右辺より大きい、現実的には8000(W/m2・K)以上の熱伝達率h1 をもって冷却する必要がある。
【0040】
図8は各種の板厚の鋼板について、鋼板搬送速度を変化させたとき、鋼板の反り量を調べたものである。この結果によれば、鋼板の板厚に応じて適切な搬送速度を選定すれば、鋼板の反りが確実に防止できることを意味している。
【0041】
ところで、強冷却において、鋼板の表面温度を300℃以下にすることができないことがある。この場合には、請求項3記載の発明に従って、0.2秒以上1秒未満の時間内において、熱伝達率h1 ≧8000(W/m2・K) の条件で強冷却する工程を、経時的に複数回繰り返すことができる。これを図9によって模式的に示す。τ1 <1およびτ2 <1である。この場合、設備的には、前段強冷却ゾーンを区分して複数設置し、その後の下流側において後段弱冷却ゾーンを設けることとなる。
【0042】
【発明の効果】
以上のとおり本発明によれば、機械的特性が均一で、板形状が良好な厚鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る厚鋼板の冷却設備の概要図である。
【図2】沸騰特性曲線である。
【図3】本発明に係る弱冷却における鋼板の熱伝達率と鋼板の板厚との関係を示すグラフである。
【図4】半無限固体内の温度勾配を示すグラフである。
【図5】鋼板冷却中において、鋼板表面温度が300℃で保持されるために必要とされる熱伝達率と冷却開始からの経過時間と鋼板の板厚との関係を示すグラフである。
【図6】冷却過程における温度分布変化図である。
【図7】実施例での鋼板冷却装置の概要図である。
【図8】鋼板の搬送速度と鋼板の反り量との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の他の例の模式的説明図である。
【図10】従来の鋼板冷却装置の概要図である。
【符号の説明】
1…仕上げ圧延機、2…搬送テーブル、3…鋼板冷却装置、4…給水ポンプ、5…インライン温度計、7…鋼板搬送速度計、10…制御装置、31…前段強冷却ゾーン、32…後段弱冷却ゾーン。

Claims (3)

  1. 厚鋼板の熱間圧延機の後方に設けた厚鋼板を冷却する鋼板冷却装置において、
    (1)前記厚鋼板の板厚が35mm以上であって、該厚鋼板の冷却開始から該厚鋼板の表面温度が300℃まで冷却される時間が、0.2秒以上1秒未満で、かつ、熱伝達率h1 ≧8000(W/m2・K)の条件で強冷却する前段強冷却ゾーンと、
    (2)前記冷却開始時点から1秒以上経過した時点で、前記厚鋼板の板厚をt(m)として、熱伝達率h2 ≧(350/t)−2000(W/m2・K) の条件で弱冷却する後段弱冷却ゾーンと、
    が、順に設けられていることを特徴とする厚鋼板の冷却装置。
  2. 厚鋼板の熱間圧延機の後方に設けた厚鋼板を冷却する冷却方法において、
    (1)前記厚鋼板の板厚が35mm以上であって、該厚鋼板の冷却開始から該厚鋼板の表面温度が300℃まで冷却される時間が、0.2秒以上1秒未満で、かつ、熱伝達率h1 ≧8000(W/m2・K) の条件で強冷却し、
    (2)その後、前記冷却開始時点から1秒以上経過した時点で、前記厚鋼板の板厚をt(m)として、熱伝達率h2 ≧(350/t)−2000(W/m2・K) の条件で弱冷却することを特徴とする厚鋼板の冷却方法。
  3. 厚鋼板の熱間圧延機の後方に設けた厚鋼板を冷却する冷却方法において、
    (1)前記厚鋼板の板厚が35mm以上であって、該厚鋼板の冷却開始から該厚鋼板の表面温度が300℃まで冷却される時間が、0.2秒以上1秒未満で、かつ、熱伝達率h1 ≧8000(W/m2・K) の条件で強冷却する工程を、経時的に複数回繰り返し、
    (2)その後、前記複数回のうちの最終の強冷却する工程の冷却開始時点から1秒以上経過した時点で、前記厚鋼板の板厚をt(m)として、熱伝達率h2 ≧(350/t)−2000(W/m2・K) の条件で弱冷却することを特徴とする厚鋼板の冷却方法。
JP32404997A 1997-11-26 1997-11-26 厚鋼板の冷却装置およびその冷却方法 Expired - Fee Related JP3558842B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32404997A JP3558842B2 (ja) 1997-11-26 1997-11-26 厚鋼板の冷却装置およびその冷却方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32404997A JP3558842B2 (ja) 1997-11-26 1997-11-26 厚鋼板の冷却装置およびその冷却方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11156422A JPH11156422A (ja) 1999-06-15
JP3558842B2 true JP3558842B2 (ja) 2004-08-25

Family

ID=18161589

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32404997A Expired - Fee Related JP3558842B2 (ja) 1997-11-26 1997-11-26 厚鋼板の冷却装置およびその冷却方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3558842B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5206156B2 (ja) * 2008-06-30 2013-06-12 Jfeスチール株式会社 熱間圧延における近赤外線カメラを用いた熱延金属帯の冷却制御方法および熱延金属帯の製造方法
JP5206155B2 (ja) * 2008-06-30 2013-06-12 Jfeスチール株式会社 熱間圧延における近赤外線カメラを用いた熱延金属帯の冷却制御方法および熱延金属帯の製造方法
KR101277914B1 (ko) * 2010-12-28 2013-06-21 주식회사 포스코 후판재 냉각장치

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11156422A (ja) 1999-06-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5218435B2 (ja) 厚鋼板の制御冷却方法
US8945319B2 (en) Manufacturing method and manufacturing apparatus of hot-rolled steel sheet
TW200810851A (en) Method of cooling steel sheet
JP3796133B2 (ja) 厚鋼板冷却方法およびその装置
JP5327140B2 (ja) 熱間圧延鋼板の冷却方法
JP5217509B2 (ja) 厚鋼板の製造方法および製造設備
JP3558842B2 (ja) 厚鋼板の冷却装置およびその冷却方法
JPH08215734A (ja) 鋼板の均一冷却方法
JP3656707B2 (ja) 熱間圧延鋼板の制御冷却方法
JP3458758B2 (ja) 鋼板の冷却方法およびその装置
JPH02179825A (ja) 熱間圧延鋼板の冷却制御装置
JP3287254B2 (ja) 高温鋼板の冷却方法および装置
JP2009028747A (ja) 厚鋼板の圧延方法
JP3800722B2 (ja) 高温鋼板の冷却方法
JP2015174134A (ja) 鋼板の製造方法
JP3783396B2 (ja) 高温鋼板の冷却方法
JPH11169941A (ja) 厚鋼板の制御冷却方法およびその装置
JP2019155372A (ja) 厚鋼板冷却方法
JP3978141B2 (ja) 厚鋼板の冷却方法及び冷却装置
JP2003191005A (ja) 熱延鋼帯の冷却方法およびその製造方法
JP3173574B2 (ja) 高温鋼板の冷却装置
JP7128163B2 (ja) 厚鋼板冷却方法
JP3518504B2 (ja) 鋼板の冷却条件設定方法
JPS63144814A (ja) 冷却制御方法
JP2001335847A (ja) 鋼材の冷却方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040401

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040519

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090528

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100528

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110528

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110528

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120528

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120528

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130528

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130528

Year of fee payment: 9

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130528

Year of fee payment: 9

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140528

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees