JP3558784B2 - 空気調和機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成する圧縮機として2シリンダのロータリ式圧縮機を備え、かつ冷凍サイクルに蓄熱槽を備えたバイパス路を付加し、暖房運転と除霜運転方式を改良した空気調和機に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒートポンプ式の冷凍サイクルを備え、冷暖房運転の切換えを容易にした空気調和機において、冷凍サイクルを構成する圧縮機として2シリンダのロータリ式圧縮機を用いることにより、圧縮効率と熱交換性能の向上化が図られている。
この種の空気調和機は、図14に示すような、冷凍サイクル構成をなす。すなわち、Aは第1のシリンダa1と、第2のシリンダa2を有する2シリンダのロータリ式圧縮機である。
【0003】
この圧縮機Aの吐出部には四方弁Bと、室内熱交換器Cと、減圧装置としての膨張弁Dと、室外熱交換器Eが順次冷媒管Pを介して接続され、さらに室外熱交換器Eは四方弁Bの別のポートを介して圧縮機Aの各シリンダa1,a2の吸込み部に連通される。
冷房運転と暖房運転との切換えは、上記四方弁Bを切換えることで可能である。特に暖房運転時には、室外熱交換器Eが外気から吸熱し、この熱を室内熱交換器Cにおいて放熱することにより、暖房作用が行なわれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、外気温が低い条件下での暖房起動時において、室内温度を短時間で上昇させるために、暖房安定時よりも大きな能力が要求されるが、外気からの吸熱だけでは不十分であり、室温が設定温度に到達するまでに長い時間(約20分間)かかってしまう。
また、暖房運転時には、室外熱交換器Eが蒸発器の作用をなすため、ドレン水が生成され、かつ外気温が低いところから、ドレン水が凍結して霜に代わり易い。この霜が固着したままであれば、当然、熱交換効率の低下を招くので、適宜タイミングで除霜の必要がある。
【0005】
暖房運転から除霜運転に切換えるには、通常、暖房サイクルから冷房サイクルに切換えて、室外熱交換器Eで冷媒を凝縮させ、この凝縮熱で霜を溶融し除霜するようになっている。
しかしながら、この除霜方式の欠点は暖房立上がりと同様、時間がかかることである。そして、除霜運転の間は、暖房作用が中断されるから、快適空調が損なわれてしまう。
【0006】
そこで従来から、冷凍サイクルに蓄熱槽を備えたバイパス路を付加し、除霜時には、冷媒をこのバイパス路に導いて蓄熱槽から吸熱し、これを室外熱交換器Eで放熱して除霜する方式が考慮されている。
この場合は、上記蓄熱槽を単一の蒸発器として使用するので、室外熱交換器と蓄熱槽に対する多くの部品からなる切換え手段が必要となり、コストに悪影響を与える。
【0007】
また、蓄熱槽に収容される蓄熱剤として、蓄熱密度を高めるため、パラフィンなどの蒸発潜熱を利用しているが、蒸発温度はパラフィンの融点(凝固温度)である45°Cよりも低くしなければならず、したがって蒸発温度レベルを高くすることができない。
そのため、蒸発温度が低いことによって圧縮比が大きくなり、当然、圧縮機仕事量も大きくなるので、装置全体として電流制限を受ける一般的な空気調和機の冷凍サイクルでは大能力化し難い。
【0008】
また、除霜時などに熱源としての必要能力を確保するためには、蓄熱槽へ大量の冷媒を流して多くの熱量を吸熱する必要があり、このような多くの熱量を蓄えるために蓄熱槽を大型化しなければならず、空気調和機として効率が悪い。
加えて、パラフィンは可燃物であるため、ヒータなどの利用を極力避けるためにサイクルで蓄熱することが望ましく、効率が悪く回路が複雑化する。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、2シリンダロータリ式圧縮機を用いるとともに、バイパス路に蓄熱槽を備えることを前提として、蓄熱槽に熱量を効率よく蓄熱するとともに、その蓄熱された熱量を利用し、暖房立上がり時間および除霜完了時間の短縮化を図って、快適空調を得られる空気調和機を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を満足するための本発明の空気調和機は、圧縮機と、四方弁と、室内熱交換器と、膨張弁および室外熱交換器をヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成するように冷媒管を介して連通する冷凍サイクル回路を備えた空気調和機において、
上記圧縮機は、第1のシリンダと第2のシリンダとを備えたロータリ式圧縮機であり、暖房運転時の蒸発器である室外熱交換器の冷媒導出部と、上記ロータリ式圧縮機の第1のシリンダ吸込み部を第1の吸込み管で連通し、暖房運転時の凝縮器である室内熱交換器の冷媒導出部と上記膨張弁との間からバイパス路を分岐接続し、このバイパス路に、開閉弁と、減圧機構および蓄熱槽に収容される吸熱熱交換器を設け、このバイパス路の上記蓄熱槽吸熱熱交換器と、上記ロータリ式圧縮機の第2のシリンダの吸込み部を第2の吸込み管で連通し、この第2の吸込み管と上記第1の吸込み管を、中途部に逆止弁を備えた補助バイパス路で連通し、上記蓄熱槽に収容される蓄熱媒体は、水および一部空気層および/もしくは一部水蒸気層であり、上記蓄熱槽には、制御手段に接続される加熱手段および水温検出用のセンサが備えられ、上記制御手段は、水温検出用センサが検出する水温が大気圧以上の飽和水温となるように、加熱手段の加熱作用を行なわせる制御をなす。
さらに本発明は、上述したヒートポンプ式の冷凍サイクル回路を備えた空気調和機において、第1のシリンダと第2のシリンダとを備えたロータリ式圧縮機を備え、第2のシリンダの排除容量を第1のシリンダの排除容量よりも小さく設定し、暖房運転時の蒸発器である室外熱交換器の冷媒導出部と第1のシリンダ吸込み部を第1の吸込み管で連通し、暖房運転時の凝縮器である室内熱交換器の冷媒導出部と膨張弁との間から分岐接続するバイパス路に開閉弁と減圧機構および蓄熱槽に収容される吸熱熱交換器を設け、この吸熱熱交換器と第2のシリンダの吸込み部を第2の吸込み管で連通し、第2の吸込み管と第1の吸込み管を中途部に逆止弁を備えた補助バイパス路で連通した。
以上のような課題を解決するための手段を備えることにより、蓄熱槽に熱量を効率よく蓄熱し、その蓄熱された熱量を利用するとともに高暖房化が得られ、暖房立上がり時間が短縮するとともに除霜時間が短縮して、快適空調をなす。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1に、空気調和機の冷凍サイクルを示す。図中1は、互いに同一排出容量の第1のシリンダ1aと、第2のシリンダ1bとを備えたロータリ式圧縮機である。この圧縮機1は、圧縮した冷媒ガスの吐出部が共用されていて、ここに冷媒管Pが接続される。
【0012】
この冷媒管Pには、四方弁2の第1のポートb1と第2のポートb2を介して室内熱交換器3と、自動電子膨張弁4および室外熱交換器5が順次設けられる。そして、室外熱交換器5から四方弁2の第3のポートb3と、第4のポートb4を介して、ロータリ式圧縮機1の吸込み部に接続される。これらで、冷凍サイクルの主回路Sが構成される。
なお、上記ロータリ式圧縮機1に備えられる第1のシリンダ1aおよび第2のシリンダ1bは、それぞれ吸込み部を有しており、上記四方弁2の第4ポートb4から延出される冷媒管Pは、第1のシリンダ1aの吸込み部に接続される。この冷媒管を、ここでは第1の吸込み管Paと呼ぶ。
【0013】
一方、この冷凍サイクルの主回路Sにはバイパス路Saが付加される。なお説明すれば、バイパス路Saの一端部は、上記室内熱交換器3と電子自動膨張弁4とを連通する冷媒管Pの中途部に接続される。
このバイパス路Saには、上記室内熱交換器3と膨張弁4とを連通する冷媒管P側から、順次、電磁開閉弁6と、減圧機構としての膨張弁7および蓄熱槽8が設けられる。
上記蓄熱槽8は、槽内に蓄熱剤Wが充填されるとともに、吸熱熱交換器9と、加熱手段としての電気ヒータ10および蓄熱剤温検知手段である温度センサ(水温センサ)11が配設される。
【0014】
図5に、上記蓄熱槽8の詳細を図示する。耐圧性(3〜4Kg/cm2)のある密閉容器である蓄熱槽8の全外周面には断熱材12が貼着されて、断熱構造となっている。槽内の蓄熱剤Wは、水が9分目ほど収容されているとともに水面上の残りの空間部に空気層が形成される。すなわち、蓄熱剤Wは大部分が水であり、残り一部が空気である。
なお、蓄熱槽8への水の充填は、真空にされた蓄熱槽8内に水を9分目ほど充填したあと、蓄熱槽8を封印するため、上記空気層は水蒸気層であっても、空気層と水蒸気層であっても、空気層と水蒸気層との混合層であってもよい。
【0015】
上記吸熱熱交換器9は、熱交換パイプを螺旋状に曲成していて、その大部分が蓄熱剤Wである水内に浸漬される。上記電気ヒータ10は、槽の底部近傍に配置され、水に対する有効加熱を図っている。
再び図1に示すように、上記バイパス路Saは、蓄熱槽8の吸熱熱交換器9と連通しており、ここに冷媒が導かれ槽内に収容される蓄熱剤Wと熱交換するようになっている。
【0016】
そして、上記吸熱熱交換器9から延出される冷媒管Pは、上記ロータリ式圧縮機1の第2のシリンダ1b吸込み部に連通される。この冷媒管をここでは、第2の吸込み管Pbと呼ぶ。
上記第1の吸込み管Paと第2の吸込み管Pbとは、中途部に逆止弁13を備えた補助バイパス路Sbによって連通される。上記逆止弁13は、第1の吸込み管Pa側から第2の吸込み管Pb側への冷媒の流れを許容し、第2の吸込み管Pb側から第1の吸込み管Pb側への冷媒の流れを阻止する。
【0017】
このような冷凍サイクルが構成される空気調和機であり、別途備えられる制御手段としての制御部15には、上記ロータリ式圧縮機1、四方弁2、電子自動膨張弁4の他、上記バイパス路Saに設けられる電磁開閉弁6、膨張弁7および蓄熱槽8内の電気ヒータ10、温度センサ11などが電気的に接続されており、後述するような制御がなされる。
たとえば暖房運転を行なうには、予め、蓄熱槽8に対する加熱作用をなす。すなわち、制御部15は電気ヒータ10に対して加熱信号を送り、蓄熱剤Wを加熱する。温度センサ11はこの蓄熱剤Wの温度上昇を検知して、逐一、検知信号を制御部へ送る。
【0018】
上記制御部15は、この温度センサ11で検出される水温が大気圧以上の飽和水温(設定水温:たとえば120°C)となるように、電気ヒータ10を通電制御する。
なお、120°Cは、圧力が0.2MPaの雰囲気中で水が沸騰する温度であるが、密閉容器である蓄熱槽8内は蓄熱剤Wの温度上昇によって気圧が0.4MPa程度になるので、上記の設定温度120°Cでは容器中の水は沸騰することがなく、蓄熱槽8の安全性は確保される。
【0019】
蓄熱剤Wの温度が設定温度に到達したことを確認できたら、暖房運転を立上げる。このときは、バイパス路Saの電磁開閉弁6を開放する。すなわち、同図に実線矢印に示すように、ロータリ式圧縮機1から吐出される高温高圧の冷媒ガスは、四方弁2を介して室内熱交換器3に導かれ、被空調室内へ凝縮熱を放熱して温度上昇させ、冷媒自体は液化する。
この液冷媒は、一部は電子自動膨張弁4を介して室外熱交換器5に導かれ、蒸発する。そして、四方弁2を介して第1の吸込み管Paから上記ロータリ式圧縮機1の第1のシリンダ1aに吸込まれて圧縮される。
【0020】
室内熱交換器3から導出される残りの液冷媒は、主回路Sからバイパス路Saに分流される。すなわち、電磁開閉弁6と膨張弁7を介して蓄熱槽8の吸熱熱交換器9に導かれる。ここで、蓄熱槽8内の蓄熱剤Wから吸熱して蒸発する。
上記吸熱熱交換器9から導出される蒸発冷媒は、第2の吸込み管Pbを介して圧縮機1の第2のシリンダ1bに吸込まれ圧縮される。この第2のシリンダ1bと、上記第1のシリンダ1aで圧縮された冷媒ガスは、一旦、圧縮機内に吐出され、ここで先に述べた経路を循環する。
【0021】
なお、上記制御部は、室外熱交換器5のSH(スーパヒート)量が最適になるように電子自動膨張弁4の開度を調整するとともに、上記吸熱熱交換器9でのSH量が充分大きな最適量となすよう、バイパス路Sの膨張弁7の開度調整を行なう。したがって、吸熱熱交換器9での蒸発圧力は、室外熱交換器5での蒸発圧力よりも大になる。
このようにして、暖房立上がり運転は、主回路Sの室外熱交換器5が外気から吸熱するとともに、バイパス路Saの吸熱熱交換器9が蓄熱槽蓄熱剤Wから吸熱するところから、比較的短時間で室温が設定温度に到達する。
【0022】
この暖房立上がり運転状態を、図12に、モリエル線図として表す。線分e−fは、室外熱交換器5の外気からの吸熱であり、線分f−bは第1シリンダ1Aでの圧縮となる。線分d−gは、吸熱熱交換器9の蓄熱剤Wからの吸熱であり、線分g−aは第2シリンダ1Bでの圧縮となる。
凝縮(暖房立上がり)のエンタルピは、これらの和となり、空気側である室外熱交換器5で吸熱することのほか、従来に比べ高い温度に維持されている蓄熱槽8の蓄熱剤Wから吸熱熱交換器9で吸熱することにより、吸熱熱交換器での冷媒の蒸発温度を従来に比べ高くするとともに、圧縮比も小さくできるので、圧縮機仕事量を抑えて効率のよいサイクルを構成でき、暖房能力が顕著に大となる。
【0023】
室温が設定温度に到達したことを制御部15が確認したら、制御部は通常暖房運転に切換える制御信号を、バイパス路Saの電磁開閉弁6と、膨張弁7および電気ヒータ10に送る。
すなわち、電磁開閉弁6に閉成信号が送られ、電気ヒータ10に対して断電信号が送られる。なお、圧縮機1と、四方弁2および電子自動膨張弁4は、暖房立上がり運転と同一の状態を保持する。
【0024】
図2に、実線矢印で示すように、冷媒はロータリ式圧縮機1−四方弁2−室内熱交換器3−電子自動膨張弁4−室外熱交換器5−四方弁2と順次送られ、ここから第1の吸込み管Paから圧縮機1の第1のシリンダ1aに吸込まれる冷媒と、補助バイパス路Sbの逆止弁13を介して第2の吸込み管Pbに導かれ、圧縮機1の第2のシリンダ1bに吸込まれる冷媒に分流される。
【0025】
結局、第1,第2のシリンダ1A,1Bでは、これまで通りの圧縮作用が行なわれ、通常の暖房運転モードとなる。
なお、上記蓄熱運転は、暖房運転に先立って行なわれるばかりでなく、暖房運転中においても熱放出にともなう温度低下があれば、当然、行なわれる。
この場合の制御部15の制御条件として、電気ヒータ10に対する通電信号を、設定水温以下で、圧縮機1の回転数が所定回転数以下(たとえば、最高回転数の1/4以下:約30Hz)のときに送る。
【0026】
これによれば、圧縮機1の入力電流が少ないときに電気ヒータ10に通電するため、装置全体としての消費電流が電流制限値を上回ることがなく、効率的な蓄熱運転が行なえる。
あるいは、制御部15は、室温が設定値(10°C以下)の場合、および/もしくは、外気温が設定値(5°C以下)の場合に、電気ヒータ10に通電信号を送り蓄熱運転を行なう。
これによれば、室温や外気温が低い暖房運転の高負荷時に、蓄熱を利用しての暖房運転の継続が可能であり、効率のよい暖房運転が行なえる。
【0027】
また、暖房運転中に、蓄熱利用運転を行なうことができる。すなわち、制御部15は、暖房運転時に室温が設定温度以下(10°C以下)の場合、および/もしくは、外気温が設定値以下(5°C以下)の場合に、バイパス路Saの電磁開閉弁6を開放して蓄熱槽8の吸熱熱交換器9に冷媒を導く制御をなす。吸熱熱交換器9は蓄熱剤Wから充分な量の熱を吸収して、凝縮温度を高く保持し、設定温度に到達させる。
一方、外気温が低下して、室外熱交換器5に付着する霜が厚くなると熱交換効率が低下する。このとき制御部15は、除霜運転に切換える制御をなす。
【0028】
図3に示すように、制御部15はバイパス回路Saの電磁開閉弁6を開放制御し、主回路Sの電子自動膨張弁4に対して全開信号を送る。すなわち、蓄熱利用運転をもって、除霜運転となす。
この除霜運転では、冷媒は実線矢印に示すように導かれる。冷媒は暖房立上がり運転と同一の状態で導かれるが、上記電子自動膨張弁4は全開状態になっているので、室内熱交換器3から導出される液冷媒は、電子自動膨張弁4をそのまま導通して室外熱交換器5に導かれ、ここでも凝縮熱を放出する。したがって、室外熱交換器5に付着する霜は、凝縮熱を吸収して早急に溶融し、除去される。
【0029】
バイパス回路Saを導かれる冷媒は、膨張弁7で減圧されたあと蓄熱槽8で吸熱熱交換器10に導きかれ、ここで蓄熱剤Wから吸熱する。冷媒は蒸発して第2のシリンダ1bに吸込まれ、圧縮される。
すなわち、特に第2のシリンダ1bに導かれる冷媒は、蓄熱剤Wから吸熱するところから、室外熱交換器5で外気から吸熱する以上に高温である。結局、室外熱交換器5により高温の冷媒を導き、多量の凝縮熱を放出して、比較的短時間で除霜を完了させ得る。
【0030】
そして、除霜と暖房の熱量をほとんどを蓄熱槽8の蓄熱剤Wから吸熱するので、暖房運転を中断せず、継続したまま除霜運転を行なえる。換言すれば、除霜運転を気付かれることなく開始し、かつ終了するので、快適空調が保持される。
図13に、この除霜運転時のモリエル線図を示す。線分h−jで暖房が行なわれる。線分k−lで室外熱交換器5に対する除霜をなし、線分l−iで第1シリンダ1aの圧縮がなされる。線分m−nで蓄熱槽8での吸熱がなされ、線分n−oで第2のシリンダ1bの圧縮がなされて、充分な除霜用のエンタルピを得る。
【0031】
除霜運転中の暖房運転が不要である場合には、図4に示すような制御である、一般的なリバース除霜制御を行なうとよい。このとき、四方弁2を暖房運転モードから冷房運転モードに切換える。それ以外の制御は不要である。
ロータリ式圧縮機1から吐出される高温冷媒は、直接、室外熱交換器5に導かれ、ここで凝縮熱を放出して付着した霜を早急に溶融除去する。室外熱交換器5から導出された液冷媒は、電子自動膨張弁4で減圧されたあと、一部は室内熱交換器3に導かれて蒸発し、四方弁2を介して圧縮機1の第1のシリンダ1aに吸込まれる。
【0032】
残りの冷媒は主回路Sからバイパス路Saに導かれ、蓄熱槽8において吸熱熱交換器9が蓄熱剤Wから吸熱する。そして、第2のシリンダ1bで圧縮される。ここでも蓄熱剤Wから吸熱して高い蒸発温度を保持でき、除霜時間のより短縮化を得られる。
なお、上記実施の形態では、ロータリ式圧縮機1における第1のシリンダ1aの排除容積と、第2のシリンダ1bの排除容積を同一としたが、これに限定されるものではない。図6に示すように、第2のシリンダ1b1 の排除容積を,第1のシリンダ1a1 の排除容積よりも小とした、ロータリ式圧縮機1Aであってもよい。すなわち、図1のように圧縮機1における第1のシリンダ1aと第2のシリンダ1bとの排除容積を同一とした場合、バイパス路Saを流れる冷媒の蒸発温度および圧力が高く設定されるので、室外熱交換器5に比べバイパス路Saにより多くの冷媒が流入することになる。
【0033】
すると、室外熱交換器5が有効に利用されなくなるとともに、蓄熱槽8の蓄熱剤Wの熱量が必要以上に多く消費されることになり、蓄熱利用時間が短縮され、蓄熱利用の効率が低下することもある。
なおこの場合、上記膨張弁7を絞ることによってバイパス路Saに流入する冷媒量を制限することも可能であるが、膨張弁7を絞ることは冷媒の蒸発温度および圧力を低下させることになるので、上述した実施の態様で説明した効果を充分に利用できないことになる。
【0034】
そこで、上記蓄熱槽8の吸熱熱交換器9に連通する第2のシリンダ1b1の排除容積を、室外熱交換器5に連通する第1のシリンダ1a1の排除容積よりも小とする。
これによれば、バイパス路Saを流れる冷媒は、蒸発温度および圧力が高いままで、密度の濃い冷媒となっているので、第2のシリンダ1b1の排除容積が小さくても冷媒循環量は多く、実質的に排除容積の大きな第1のシリンダ1a1と同等の冷媒循環量を得ることができ、吸熱熱交換器9と室外熱交換器5とに流れる冷媒の流量がバランスし、室外熱交換器5を有効に利用するとともに、蓄熱利用時間を延長させ、電気ヒータ10のランニングコストを抑制して、蓄熱利用の効率が低下させないようにすることができる。
【0035】
また、上記実施の形態では、第1の吸込み管1aと、第2の吸込み管1bを補助バイパス路Sbで連通し、この補助バイパス路の中途部に逆止弁13を設けたが、これに限定されるものではない。
図7に示すように、第1のシリンダ1aと、第2のシリンダ1bとに接続される各吸込み管Pa,Pbを単体のサクションカップ20に接続してもよい。そして、第1の吸込み管Pa端部には逆止弁13が設けられる。
【0036】
本来、サクションカップは、圧縮機の吸込み部に接続される配管途中に設けられていて、圧縮機に吸込まれる直前の蒸発冷媒を導入し、ここで気液分離をなすとともに整圧し、かつ消音機能を有するものである。
これまで説明した実施の態様では図示を省略したが、第1,第2の吸込み管Pa,Pbそれぞれに専用のサクションカップを備えても、各サクションカップの大きさは、図7の共通化サクションカップ20のおよそ2/3程度であり、さらにこれらサクションカップの吸込み側に上記補助バイパス路Sbを備え、中途部に逆止弁13を設ける必要があり、圧縮機1の周囲の配管スペースを大きくとらなければならない。
【0037】
図7の実施の形態では、サクションカップ20を共通化し、かつこの内部に逆止弁13を収容することにより、コンパクト化を図れる。そして、ロー付け箇所が低減して、製造性の向上を図れる。
なお、蓄熱槽8の吸熱熱交換器9に接続される第2の吸込み管Pbは、補助サクションカップ21を設ける。
また、各上記実施の形態では、蓄熱槽8に収容する熱交換器として吸熱熱交換器9のみを収容したが、これに限定されるものではなく、図8および図9に示すような蓄熱槽8Aであってもよい。
上記蓄熱槽8Aとして、電気ヒータ10、温度センサ11および蓄熱剤Wは同一であり、さらに蓄熱剤Wに浸漬される後述する吸熱熱交換器9Aおよび放熱熱交換器30を備えている。
【0038】
すなわち、これら吸熱熱交換器9Aおよび放熱熱交換器30とも同一の形態をなす熱交換器であるが、熱交換容量として、吸熱熱交換器9Aは放熱熱交換器30よりも遥かに大きな熱交換容量を有する。
上記吸熱熱交換器9Aは、第2のシリンダ1bに第2の吸込み管Pbを介して連通することは、この実施の形態でも同様である。(同図では、作図上の理由から、第1,第2のシリンダ1a,1bの位置が、これまで説明した実施の形態とは左右逆になっているが、実質的に同一である。以下同じ)
一方、上記放熱熱交換器30の一端部は、ロータリ式圧縮機1の吐出部と連通される。他端部は、上記四方弁2の第1のポートb1に連通される。すなわち、ロータリ式式圧縮機1の吐出部と、四方弁2との間に上記放熱熱交換器30が設けられることになる。
この場合の上記電気ヒータ10も、水温センサ11が水温を検知し、ここでは図示しない制御部15が大気圧以上の飽和水温となるように通電制御する。さらにまた、蓄熱槽8Aの水温が設定水温以下で、かつ上記ロータリ式圧縮機1の回転数が所定回転数以下のときも通電される。
そして、いずれの運転モードでも、ロータリ式圧縮機1から吐出される冷媒ガスは、はじめに蓄熱槽8Aの放熱熱交換器30に導かれ、ここで蓄熱剤Wである水に放熱する。
【0039】
暖房立上がり運転や、通常暖房運転、蓄熱利用の暖房運転、蓄熱利用の除霜運転および冷房モードでの除霜運転など、全て先に説明した冷凍サイクルと同一であるので、ここではその説明を省略する。
上記蓄熱槽8Aの水温は、電気ヒータ10の発熱と、放熱熱交換器30の放熱によって早急に上昇する。そして、所定水温に到達した状態では、吸熱熱交換器9Aによる蓄熱剤Wからの吸熱作用があっても、その熱は放熱熱交換器30が補充することになり、蓄熱剤温度の低下の影響が少ない。したがって、電気ヒータ10に通電する時間が少なくてすみ、ランニングコスト低減に寄与する。
【0040】
図10に示すように、蓄熱槽8Aに吸熱熱交換器9Aと放熱熱交換器30を備えることを前提として、ロータリ式圧縮機1Aは、第2のシリンダ1b1の排除容積を、第1のシリンダ1a1の排除容積よりも小としてもよい。
すなわち、第1のシリンダ1a1は四方弁2を介して室外熱交換器5に連通しており、蓄熱槽8Aの吸熱熱交換器9Aに連通する第2のシリンダ1b1よりも大きな圧縮仕事をなす。
【0041】
換言すれば、室外熱交換器5で充分な吸熱を行なわせ、蓄熱槽8Aでの吸熱を抑え気味にできる。蓄熱槽8Aの蓄熱剤Wは熱を奪われることがさらに少なくなって、電気ヒータ10のランニングコストを抑制できる。
図11に示すように、第1のシリンダ1aと、第2のシリンダ1bとに接続される各吸込み管Pa,Pbを単体のサクションカップ20に接続し、サクションカップ20内の第1の吸込み管Pa端部に逆止弁13を設けてもよい。
【0042】
したがって、サクションカップ20を共通化してコンパクト化を図るとともに、この内部に逆止弁13を収容することにより、ロー付け箇所が低減して、製造性の向上を図れる。
さらに、蓄熱槽8の吸熱熱交換器9に接続される第2の吸込み管Pbは、補助サクションカップ21を設ける。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、特に、外気温の低い条件下での暖房立上がり運転時および通常暖房運転時において、外気からの吸熱に加えて蓄熱槽からの吸熱があり、冷媒を高い蒸発温度に保持できるので、短時間の立上がりが可能となり、高い暖房能力を得られる。そして、除霜運転も同様に、蓄熱槽からの吸熱があるところから、短時間で除霜が完了し、快適空調を保持できる。
さらに、制御手段による効率のよい温度制御をなすとともに、蓄熱槽からの吸熱による第2のシリンダの圧縮仕事を第1のシリンダの圧縮仕事よりも抑制して、第1および第2のシリンダによる冷媒循環量をほぼ同等とすることができ、蓄熱槽からの吸熱を抑え気味 にして、高い暖房能力が継続して得られるなどの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す、空気調和機の冷凍サイクルと電気回路図。
【図2】同実施の形態の、通常暖房運転時の冷凍サイクル図。
【図3】同実施の形態の、蓄熱利用の除霜運転時の冷凍サイクル図。
【図4】同実施の形態の、運転モードを変更しての除霜運転時の冷凍サイクル図。
【図5】同実施の形態の、蓄熱槽の概略の縦断面図。
【図6】他の実施の形態の、異なる構造の圧縮機を備えた冷凍サイクル図。
【図7】さらに他の実施の形態の、異なる構成の冷凍サイクル図。
【図8】さらに他の実施の形態の、異なる構成の冷凍サイクル図。
【図9】同実施の形態の、蓄熱槽の概略の縦断面図。
【図10】他の実施の形態の、異なる構造の圧縮機を備えた冷凍サイクル図。
【図11】さらに他の実施の形態の、異なる構成の冷凍サイクル図。
【図12】暖房運転時のモリエル線図。
【図13】除霜運転時のモリエル線図。
【図14】従来の、冷凍サイクル図。
【符号の説明】
1,1A…ロータリ式圧縮機、2…四方弁、3…室内熱交換器、4…電子自動膨張弁、5…室外熱交換器、P…冷媒管、S…主回路、1a,1a1…第1のシリンダ、1b,1b1…第2のシリンダ、Pa…第1の吸込み管、Sa…バイパス路、6…電磁開閉弁、7…減圧機構(膨張弁)、8,8A…蓄熱槽、9,9A…吸熱熱交換器、13…逆止弁、Sb…補助バイパス路、30…放熱熱交換器、10…加熱手段(電気ヒータ)、11…水温検出用センサ、20…サクションカップ、21…補助サクションカップ。

Claims (2)

  1. 圧縮機と、四方弁と、室内熱交換器と、膨張弁および室外熱交換器をヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成するように冷媒管を介して連通する冷凍サイクル回路を備えた空気調和機において、
    上記圧縮機は、第1のシリンダと第2のシリンダとを備えたロータリ式圧縮機であり、暖房運転時の蒸発器である室外熱交換器の冷媒導出部と、上記ロータリ式圧縮機の第1のシリンダ吸込み部を第1の吸込み管で連通し、
    暖房運転時の凝縮器である室内熱交換器の冷媒導出部と上記膨張弁との間からバイパス路を分岐接続し、このバイパス路に、開閉弁と、減圧機構および蓄熱槽に収容される吸熱熱交換器を設け、
    このバイパス路の上記蓄熱槽吸熱熱交換器と、上記ロータリ式圧縮機の第2のシリンダの吸込み部を第2の吸込み管で連通し、この第2の吸込み管と上記第1の吸込み管を、中途部に逆止弁を備えた補助バイパス路で連通し、
    上記蓄熱槽に収容される蓄熱媒体は、水および一部空気層および/もしくは一部水蒸気層であり、上記蓄熱槽には、制御手段に接続される加熱手段および水温検出用のセンサが備えられ、
    上記制御手段は、水温検出用センサが検出する水温が大気圧以上の飽和水温となるように、上記加熱手段の加熱作用を行なわせる制御をなすことを特徴とする空気調和機。
  2. 圧縮機と、四方弁と、室内熱交換器と、膨張弁および室外熱交換器をヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成するように冷媒管を介して連通する冷凍サイクル回路を備えた空気調和機において、
    上記圧縮機は、第1のシリンダと第2のシリンダとを備えたロータリ式圧縮機であり、上記第2のシリンダの排除容量を上記第1のシリンダの排除容量よりも小さく設定し、暖房運転時の蒸発器である室外熱交換器の冷媒導出部と、上記ロータリ式圧縮機の第1のシリンダ吸込み部を第1の吸込み管で連通し、暖房運転時の凝縮器である室内熱交換器の冷媒導出部と上記膨張弁との間からバイパス路を分岐接続し、このバイパス路に、開閉弁と、減圧機構および蓄熱槽に収容される吸熱熱交換器を設け、このバイパス路の上記蓄熱槽吸熱熱交換器と、上記ロータリ式圧縮機の第2のシリンダの吸込み部を第2の吸込み管で連通し、この第2の吸込み管と上記第1の吸込み管を、中途部に逆止弁を備えた補助バイパス路で連通したことを特徴とする空気調和機。
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