JP3557979B2 - 電子ビーム照射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビーム照射装置に係わり、特に、電子ビームを照射することにより、インキ乾燥等の各種材料の生成処理、各種材料の表面処理、半導体処理等の各種の処理を行う電子ビーム照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紫外線を用いてインキ乾燥が行われていたが、近年、インキ乾燥の処理速度を上げるために、例えば、10μmという厚いインキ層乾燥のために、紫外線よりもエネルギーの大きい電子ビームを照射する方法が行われている。
【0003】
特表平8−510864号公報には、電子ビーム照射装置としては、電子ビーム管を千鳥状に配置して、移動するテーブル等に載せた被処理物に電子ビームを均一に照射する技術が開示されている。
【0004】
図6は、従来技術に係る電子ビーム照射装置の一例を示す平面断面図である。この装置は、図示していない被処理物を載せたワークを、複数個配列された電子ビーム管下を移動させて、被処理物に電子ビームを照射するように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来、電子ビーム照射装置を用いて、例えば、被処理物としてインキの乾燥を行う場合、インキの材質やインキの厚み応じて電子ビームのエネルギーを変える必要がある。電子ビームのエネルギーを変える一般的な手段としては、電子ビーム照射装置に供給する高圧電源電圧を可変する方法が採られる。
【0006】
図7および図8は、図6に示すような電子ビーム照射装置において、電子ビーム照射装置に供給される高圧電源電圧を、それぞれ50kVおよび60kVにした時の、複数の電子ビーム管より照射される電子ビームによる被処理物の相対吸収線量を表す図である。
【0007】
通常、電子ビームのエネルギーを高めるために印加電圧を上げると、各電子ビーム管から放射される電子ビームは、図9に示すように被処理物の深さ方向には吸収線量が増大するが、被処理物に照射される電子ビーム幅は狭められてしまう特性を有する。即ち、被処理物に電子ビームが絞られた状態で放射されため、印加電圧を50kVから60kVに上げた場合、図7に比べて図8に示す特性図から明らかなように、被処理物では吸収線量の強弱が顕著に現れ、インキ乾燥等の処理にムラが生じてしまう。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みて、電子ビームのエネルギーを高めた場合でも、被処理物全体における吸収線量を均一にすることができ、被処理物を電子ビームで均一に処理することを可能にした電子ビーム照射装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
【0010】
電子ビームを放射する直線状の窓部を有する複数の電子ビーム管を備え、前記複数の電子ビーム管を、前記窓部の長手方向が互いに略並行となるように配置すると共に、前記各窓部の長手方向が被処理物の移動方向に対して略直交するように配置した電子ビーム照射装置において、隣接する電子ビーム管から放射される電子ビームの重なり度を調節する調節手段を有し、前記調節手段は、第1の回動部材を回動可能に支持する支点部材と、前記複数の電子ビーム管を個別に支持する支持部材と、各支持部材に設けられ第1の回動部材に摺動可能に設けられるとともに当該支持部材に対して回動可能な保持部材と、前記複数の支持部材の両側に設けられた固定ガイド部材と、第1の回動部材に接続されると共に支点部材を中心に回動可能に設けられた第2の回動部材と、直動モータによって被処理物の移動方向に対して略直角方向へ移動可能な移動部材とよりなり、直動モータを駆動して移動部材を移動させることにより、第2の回転部材が移動し、第1の回転部材が支点部材を中心に回動することにより、各支持部材が隣接する固定ガイド部材または隣接する支持部材によって被処理物の移動方向に対して略直角方向に移動する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態を図1乃至図4を用いて説明する。
【0014】
図1および図2は、それぞれ本実施形態に係る電子ビーム照射装置の電子ビームの重なり度を調節する調節装置の構成を示す平面断面図および正面図である。
【0015】
同図において、1は複数個の電子ビーム管、2は各電子ビーム管1に設けられる電子ビームを放射する窓部、3は各電子ビーム管1を支持する支持部材、4は第1の回動部材、5は各支持部材3に設けられ、第1の回動部材4に対して摺動可能に設けられると共に、支持部材3に対して回動可能に設けられる保持部材、6は複数個の支持部材3の両側に設けられ、後述するワーク12の移動方向に対して略直角方向への移動をガイドする固定ガイド部材、7は後述する直動モータ8によってワーク12の移動方向に対して略直角方向へ移動可能な移動部材、9は長穴10を有し、一端が第1の回動部材4の一端と接続されると共に、移動部材7の一端部が長穴10内に被摺動可能に設けられ、全体として支点部材11を中心に回動可能に設けられる第2の回動部材、11は第1の回動部材4の他端が接続され第1の回動部材4を回動可能に支持する支点部材、12は図示していない被処理物を載せて図示矢印方向に移動可能なワークである。なお、ここで第1の回動部材4、保持部材5、固定ガイド部材6、移動部材7、直動モータ8、第2の回動部材9、支点部材11は、全体として電子ビームの重なり度を調節する調節装置を構成する。ここでいう重なり度とは、ワーク12の移動方向から見て電子ビーム管1の窓部2の端部が重なり、各窓部2から放射される電子ビームが重なる度合のことをいう。
【0016】
これらの図に示すように、ワーク12は矢印方向への移動の過程において、ワーク12上の被処理物は複数個の電子ビーム管1の窓部2から放射される電子ビームにより、インク乾燥等の所定の処理が行われる。
【0017】
ここで、インキの材質やインキの厚み応じて、例えば、電子ビームのエネルギーを強くしたい場合は、電子ビームのエネルギーを高めるために電子ビーム照射装置に印加する高圧電源電圧を高くすると同時、直動モータ8を駆動して移動部材7を図示下方向に移動する。この移動によって移動部材7の一端部は可動部材9の長穴10下部に移動すると共に、第2の回動部材9も図示矢印X方向に移動し、第1の回動部材4は支点部材11を中心に時計方向に回動する。それに伴って、電子ビーム管1を保持する各支持部材3は、隣接する固定ガイド部材6または隣接する支持部材3に沿って図示下方向に移動され、その結果、隣接する電子ビーム管1の窓部2の端部はワーク12の移動方向から見て重なり、隣接する電子ビームの重なり度を増すことができる。
【0018】
図3は、本実施形態の電子ビーム照射装置に印加される高圧電源電圧を60kVとした時の、複数の電子ビーム管より照射される電子ビームによる被処理物の相対吸収線量を表す特性図である。
【0019】
この特性図から明らかなように、従来技術の図8に示す同じ60kVの高電圧の場合に比べて、電子ビームのエネルギーを強めた場合に発生する各隣接する電子ビームによって生じる被処理物の吸収線量の強弱を防止することができる。
【0020】
このように、本実施形態の電子ビーム照射装置によれば、電子ビーム照射装置に印加される高圧電源電圧を高くしても、調節装置により電子ビームの重なり度を調節することができるので、被処理物全体における吸収線量の強弱ムラを小さくでき、被処理物を電子ビームでより均一に処理することができ、インキ乾燥等の処理を高精度かつ高速度で行うことができる。
【0021】
図4は、図1乃至図2に示した電子ビーム照射装置と異なる構成を示す正面図であり、本装置では、所定のガス雰囲気に確保された照射チャンバー内で、電子ビームによる被処理物への照射処理を行う場合を示す。
【0022】
次に、本発明の第2の実施形態を図5を用いて説明する。
【0023】
図5は、本実施形態に係る電子ビーム照射装置の電子ビームの重なり度を調節する調節装置の構成を示す平面図である。
【0024】
同図において、21は複数の電子ビーム1を一体に支持する支持部材、22は支持部材21を回動可能に支持する支点部材である。その他の構成は図1に示す同符号の構成に対応する。
【0025】
ここで、ワーク12は矢印方向へ移動するものであり、電子ビーム管1の各窓部2は、ワーク12の移動に対して、略直交するように配置されている。そしてワーク12は矢印方向への移動の過程において、ワーク12上の被処理物は複数個の電子ビーム管1の窓部2から放射される電子ビームにより、インク乾燥等の所定の処理が行われる。
【0026】
ここで、第1の実施形態と同様に、電子ビームのエネルギーを強くしたい場合は、電子ビームのエネルギーを高めるために電子ビーム照射装置に印加される高圧電源電圧を高くすると同時、図示していない駆動装置により、図5(a)に示す状態から図5(b)に示す状態に、支点部材22を中心に支持部材21を回動させる。その結果、ワークの移動方向から見て電子ビーム管1の窓部2の端部が重なり、電子ビーム間の重なり度を強めることができ、各隣接する電子ビームによって生じる被処理物の吸収線量の強弱ムラを小さくし、被処理物を電子ビームでより均一に処理することができ、インキ乾燥等の処理を高精度かつ高速度で行うことができる。
【0027】
また、本実施形態の調節装置は、第1の実施形態のものに比べて、簡便な構成で実現するメリットを有する。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、電子ビーム照射装置に印加される高圧電源電圧を高くしても、調節手段により隣接する電子ビームの重なりを調節することにより、各隣接する電子ビームによって生じる被処理物の吸収線量の強弱ムラを小さくし、被処理物を電子ビームでより均一に処理することができ、インキ乾燥等の処理を高精度かつ高速度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る電子ビーム照射装置の電子ビームの重なり度を調節する調節装置の構成を示す平面断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る電子ビーム照射装置の電子ビームの重なり度を調節する調節装置の構成を示す正面図である。
【図3】第1の実施形態に係る電子ビーム照射装置に印加される高圧電源電圧を60kVとした時の、複数の電子ビーム管より照射される電子ビームによる被処理物の相対吸収線量を表す特性図である。
【図4】図1乃至図2に示した電子ビーム照射装置と異なる構成を示す正面図である。
【図5】第2の実施形態に係る電子ビーム照射装置の電子ビームの重なり度を調節する調節装置の構成を示す平面図である。
【図6】従来技術に係る電子ビーム照射装置の一例を示す平面断面図である。
【図7】従来技術に係る電子ビーム照射装置において、電子ビーム照射装置に印加する高圧電源電圧を50kVにした時の、複数の電子ビーム管より照射される電子ビームによる被処理物の相対吸収線量を表す図である。
【図8】従来技術に係る電子ビーム照射装置において、電子ビーム照射装置に印加する高圧電源電圧を60kVにした時の、複数の電子ビーム管より照射される電子ビームによる被処理物の相対吸収線量を表す図である。
【図9】電子ビーム照射装置に異なる高圧電源電圧を印加した時の、複数の電子ビーム管より照射される電子ビームによる被処理物(ナイロン)の深さ方向の相対吸収線量を表す図である。
【符号の説明】
1 電子ビーム管
2 窓部
3,21 支持部材
4 第1の回動部材
5 保持部材
6 固定ガイド部材
7 移動部材
8 直動モータ
9 第2の回動部材
10 長穴
11,22 支点部材
12 ワーク
Claims (2)
- 電子ビームを放射する直線状の窓部を有する複数の電子ビーム管を備え、前記複数の電子ビーム管を、前記窓部の長手方向が互いに略並行となるように配置すると共に、前記各窓部の長手方向が被処理物の移動方向に対して略直交するように配置した電子ビーム照射装置において、
隣接する電子ビーム管から放射される電子ビームの重なり度を調節する調節手段を有し、
前記調節手段は、第1の回動部材を回動可能に支持する支点部材と、前記複数の電子ビーム管を個別に支持する支持部材と、各支持部材に設けられ第1の回動部材に摺動可能に設けられるとともに当該支持部材に対して回動可能な保持部材と、前記複数の支持部材の両側に設けられた固定ガイド部材と、第1の回動部材に接続されると共に支点部材を中心に回動可能に設けられた第2の回動部材と、直動モータによって被処理物の移動方向に対して略直角方向へ移動可能な移動部材とよりなり、
直動モータを駆動して移動部材を移動させることにより、第2の回転部材が移動し、第1の回転部材が支点部材を中心に回動することにより、各支持部材が隣接する固定ガイド部材または隣接する支持部材によって被処理物の移動方向に対して略直角方向に移動することを特徴とする電子ビーム照射装置。 - 電子ビームを放射する直線状の窓部を有する複数の電子ビーム管を備え、前記複数の電子ビーム管を、前記窓部の長手方向が互いに略並行となるように配置すると共に、前記各窓部の長手方向が被処理物の移動方向に対して略直交するように配置した電子ビーム照射装置において、
隣接する電子ビーム管から放射される電子ビームの重なり度を調節する調節手段を有し、
前記調節手段は、複数の電子ビーム管を一体に支持する支持部材と、支持部材を回動可能に支持する支点部材とよりなり、
前記支持部材は支点部材を中心に回動することを特徴とする電子ビーム照射装置。
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