JP3557795B2 - シリンダブロックの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダブロックの製造方法にかかり、特に自動車用のエンジンに使用されるシリンダブロックの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車用のエンジン等の水冷式内燃機関のシリンダブロックは、近年特にアルミ化が進展している。ここで、シリンダブロックの形式としては、いわゆるクローズドデッキ式のものとオープンデッキ式のものがある。
【0003】
クローズドデッキ式とは、シリンダスリーブの周囲部に冷却水通路が形成されていると共に、冷却水通路の通路壁面の内、シリンダスリーブ側と外側の両部材が上端部で相互に連結されているものである。一方、オープンデッキ式とは、シリンダの周囲部全体に冷却水通路が形成されており、シリンダブロックの上端面の冷却水通路の周囲部全体が解放されて、冷却水通路がメガネ状に形成されているものである。
【0004】
また、クローズドデッキ式のものは構造上の理由から一般的に低圧鋳造法により製造され、一方、オープンデッキ式のものはダイカスト鋳造法により製造されている。ここで、オープンデッキ式のものは、シリンダブロックの上端部の全体が解放されているので、この領域の強度が低い。このため、従来より、以下のような改良が提案されているが実用に至っていない。
【0005】
例えば、特開平1−100352号公報(第一従来例)では、冷却水通路の開口部に、所定形状のピース部材を溶接固定する、という提案がなされている。また、特開平1ー147145号公報(第二従来例)では、第一従来例と同様に所定のピース部材を冷却水通路の解放部に溶接固定するものであるが、特に、ピース部材をシリンダブロック本体より高融点のアルミ合金により構成するものである。また特開平2ー105557号公報(第三従来例)では、所定のプラグ部材(ピース部材)をシリンダブロック本体より融点の低い材質で構成し、これをシリンダブロック本体に対してアークまたはレーザーなどの熱源により加熱して溶着するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来例には以下のような不都合が有った。即ち、低圧鋳造法によるシリンダブロックの製造は、シリンダブロックの如き複雑な形状のものに対しては、現在非常にコストが高くつく。また、ダイカスト鋳造法でシリンダブロック本体を製造する場合には、この製造法の特性上鋳物の内部にガス微細空隙となって分散してトラップされる。このため、通常の溶接方法(レーザー、アーク溶接等)ではガス欠陥が顕著に出現して十分な機械的結合強度を得ることができない、という不都合を生じていた。
【0007】
また、シリンダブロックの材質より低融点の金属材料を熱源の熱により融解させる第三従来例でも、以下のような不都合がある。即ち、鋳造後のシリンダブロックのアルミの地肌は強固な酸化被膜が形成されており、既存の溶接法等では強固に溶着させることはできない。これに対して、フラックス等を用いて表面処理をした後溶着する場合でも、接合強度を十分に確保することは困難である。逆にフラックスによるアルミ部材の腐食等を誘発する、という不都合を生じていた。
【0008】
更に、従来の溶接法等では、接合部のみならずその周囲の広い範囲に熱の影響が及び、アルミ部材に熱変形や熱応力を生じさせる等の不都合を生じていた。これは、特に精密加工が要求されるエンジンの部品については問題となる。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、特に機械的強度に優れたクローズドデッキ式のシリンダブロックを製造する方法を提供することを、その目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の発明では、冷却水通路が形成されたシリンダブロック本体と、この冷却水通路を形成する相対向した通路壁面間を相互に接合するプラグ部材とを備えたシリンダブロックにおいて、通路壁面の接合面に、冷却水通路の断面を上方に向かって広がる形状とする角度を通路壁面に対して有する接合面傾斜部を形成すると共に、プラグ部材の断面を略台形に構成することによって該プラグ部材の左右の両側面に接合面傾斜部に対応したプラグ部材傾斜部を形成し、接合面傾斜部の傾斜角の大きさをプラグ部材傾斜部の傾斜角以上に設定し、プラグ部材及びシリンダブロック本体の少なくとも一方に超音波振動を印加して表面に亜鉛合金はんだ層を形成し、しかる後に前記亜鉛合金はんだ層を溶解しつつ前記通路壁面間に前記プラグ部材を挿入し、前記通路壁面間から突出している前記プラグ部材を所定圧力で押圧することによりプラグ部材をシリンダブロック本体の接合面に接合する、という構成を採っている。
【0011】
以上により、シリンダブロック本体はアルミニウム製(合金)鋳物によって形成され、またプラグ部材もアルミニウム合金によってそれぞれ個別に形成され、少なくとも其の一方の表面には、超音波振動の印加を利用して亜鉛合金はんだ層が形成される。
こうした亜鉛合金はんだ層の形成過程において、超音波振動のキャビテーションによって表面の酸化被膜が破壊されて活性な金属面が現れ、更に、この活性金属面と亜鉛合金はんだ中の亜鉛との間で合金反応が生じ、これによって、強固な亜鉛合金はんだ層が形成される。
しかる後、前述の亜鉛合金はんだ層を溶解しつつシリンダブロック本体の通路壁面間にプラグ部材を挿入し、通路壁面間から突出しているプラグ部材を所定圧力で押圧する。
プラグ部材を押圧する際にはプラグ部材またはシリンダブロック本体の表面の亜鉛合金はんだ層が溶融しているので、シリンダブロック本体とプラグ部材との接合部に亜鉛合金層が生成され、加熱を停止させることで接合部の温度が下がり、両者が強固に接合される。
通路壁面間へのプラグ部材の挿入および押圧に際して接合面全体の面圧が適切に上昇し、接合面傾斜部とプラグ部材傾斜部の相互間の亜鉛合金はんだが十分に溶融しあい良好な接合強度及び信頼性を得ることができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、接合面傾斜部の傾斜角をβ1、プラグ部材傾斜部の傾斜角をα1としたときα1<β1となるように構成したもの、つまり、接合面傾斜部の傾斜角の大きさをプラグ部材傾斜部の傾斜角よりも大きく設定したものである。
このような構成を適用することにより、冷却水通路内への亜鉛合金はんだの液だれが確実に防止される。
【0013】
また、請求項3記載の発明では、プラグ部材を複数個設けると共に、各プラグ部材をアーム部材により一体的に構成するという構成を採り、その他の構成は請求項1または請求項2に記載の発明と同様である。
以上より、各プラグ部材はアーム部材によって相互に連結されているので、一度の位置決めによって、すべてのプラグ部材の位置決めができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0015】
まず、図1において、符号3はエンジンのシリンダブロック本体を示し、符号5はプラグ部材を示し、符号7は超音波振動の印加による接合部を示す。ここで、図1はシリンダスリーブが冷却水に直接接触しないドライライナ式のシリンダブロックを示すが、本発明はこれに限定されるものではなく、いわゆるハーフウェットライナ型及びウェットライナ型のシリンダブロックにも適用することが可能である。
【0016】
上記シリンダブロック本体3はアルミニウム製(合金)鋳物によって形成され、またプラグ部材5もアルミニウム合金によってそれぞれ個別に形成される。そして、複数のプラグ部材5は、亜鉛合金はんだ層を介して冷却水通路9の通路壁面9aに挿入される。即ち、シリンダブロック本体3の上端部の解放された冷却水通路9の通路壁面9a相互間に接合するようになっている。
【0017】
この場合、通路壁面9aの接合部には当該通路壁面9aに対して所定の角度を有する接合面傾斜部が形成されると共に、プラグ部材5には接合面傾斜部に対応して所定のプラグ部材傾斜部が形成され、接合面傾斜部の傾斜角の大きさがプラグ部材傾斜部の傾斜角以上に設定される。そして、プラグ部材5及びシリンダブロック本体3の接合部7の少なくとも一方に超音波振動を印加して予め表面に亜鉛合金はんだ層を形成し、しかる後プラグ部材5をシリンダブロック本体3の接合面に接合するという手法を採っている。
【0018】
以下これを詳述すると、このシリンダブロック本体3はアルミ製のダイカスト鋳造品である。そして、この材質は、一般的に用いられているADC10,ADC12そしてADC14等である。また、シリンダスリーブ11の周囲部全体に冷却水通路9が形成されている。
【0019】
冷却水通路9は、プラグ部材5を挿入する前には上端部が解放されている。また、シリンダブロック本体3の上端部は、図示しないシリンダヘッドが装着されるように、平らに加工されている。更に、冷却水通路9は、各シリンダの周囲を囲むように形成されている。また、シリンダブロック本体3の下方領域は、内部に所定のクランク軸(図示略)が装着されるようにクランクケース13が形成されている。このクランクケース13の下端部は、図示しないボトムケースと当接するように平面状で構成され、図示しないボルト部材により相互に結合されるようになっている。
【0020】
次に、シリンダブロック1の具体的な製造方法について説明する。ここで、図2はシリンダブロック本体3の上端部の接合面3aを示す拡大図である。この図2から判るように、本実施形態では、冷却水通路9の上端部全体が解放されたオープンデッキ式のシリンダブロック本体3を用いる。また、シリンダブロック本体3の接合面3aは上方に向かってその冷却水通路9の断面が広がる形状となり、接合面傾斜部3bとして構成されている。ここで、接合面傾斜部3bは、鋳造によって直接形成しても良いし、また、鋳造後の機械加工によって形成するようにしてもよい。
【0021】
一方、プラグ部材5もダイカスト鋳造法により冷却水通路9の通路壁面9aに挿入できるような形状及び大きさで形成される。具体的には、断面が略台形に構成され、左右の両側面がプラグ部材傾斜部5bとして形成される。そして、このプラグ部材傾斜部5bは上記したように鋳造によって形成してもよいし、鋳造によって立方体を構成した後、所定の機械加工で形成してもよい。尚、製造法としてはダイカスト鋳造法には限定されず、例えば、展伸材から所定形状を削り出して製造するようにしてもよい。
【0022】
また、接合面傾斜部3bの傾斜角を図2に示すようにそれぞれβ1,β2とし、プラグ部材傾斜部5bの傾斜角を図3に示すようにα1,α2とすると、各図における右側の角度α1とβ1との間には、以下の式▲1▼〜▲3▼に示すような関係がある。
0.1°< α1 <15°・・・・・・・・・・・・・▲1▼
0.1°< β1 <15°・・・・・・・・・・・・・▲2▼
α1+1° ≦ β1・・・・・・・・・・・・・・・・▲3▼
【0023】
また、左側の角度α2とβ2との間にも以下の式▲4▼〜▲6▼に示すような関係がある。
0.1°< α2 <15°・・・・・・・・・・・・・▲4▼
0.1°< β2 <15°・・・・・・・・・・・・・▲5▼
α2+1° ≦ β2・・・・・・・・・・・・・・・・▲6▼
【0024】
次に、以上のような条件を満たす接合面傾斜部及びプラグ部材傾斜部の接合について具体的に説明する。先ず、図4は、α1<β1という条件を満足している場合を示す。具体的には、シリンダブロック本体3の接合面傾斜部3bの傾斜角β1がプラグ部材傾斜部5bの傾斜角α1より大きい場合を示している。また同時に、プラグ部材5の下端部の幅は、冷却水通路9の所定位置の幅(2W)より長く形成されている。
【0025】
そして、シリンダブロック本体3とプラグ部材5との接合に際しては、先ず、シリンダブロック本体3の接合面傾斜部3b及びプラグ部材5のプラグ部材傾斜部5bの両方に、超音波振動の印加による亜鉛合金はんだ層を形成する。シリンダブロック本体3はシリンダヘッド(図示略)が装着される側の端部領域のみ亜鉛合金はんだ層を形成し、具体的には上端面から約30[mm]程度まで亜鉛合金はんだ層を形成する。この場合、亜鉛合金はんだとしては、例えば、融点が約382[℃]であるAH−Z95A(JIS Z3281)が使用される。そして、この亜鉛合金はんだを溶解して410[℃]から430[℃]に保持し、溶融した亜鉛合金はんだ浴中に前述した接合面傾斜部3bを浸漬して超音波振動を印加する。
【0026】
超音波の周波数としては、約18[KHz]から20[KHz]程度に設定し、発振器出力は100から500[W]の範囲で印加する。また、具体的印加時間は数秒である。これにより、シリンダブロック本体3の接合面傾斜部3bに所定の亜鉛合金はんだ層が形成される。
【0027】
ここで、超音波振動をシリンダブロック本体3に印加するための装置について詳述すると、シリンダブロック本体3は、図11に示すように所定の振動板17に担持され、上記したシリンダブロック本体3の接合面傾斜部3bを含む領域が溶融はんだ浴15中に浸漬される。この溶融はんだ浴15を保持しているのは、ヒータ付はんだ槽19であり、溶融したはんだの温度を上記した所定値に維持している。また、振動板17には、超音波発振装置21が係合されており、超音波振動が伝達されるようになっている。この超音波発振装置21は、上記振動板17に振動を付与するホーン23と、このホーン23に振動を伝える振動子25と、当該振動子25に発振信号を伝達する発振器27より構成される。
【0028】
また、プラグ部材も、シリンダブロック本体3の場合と同様に最高380[℃]程度に予熱され、また溶融はんだ浴中に浸漬され超音波を印加される。このとき、亜鉛合金はんだ層形成の条件は上記したシリンダブロック本体3の場合とほぼ同様である。但し、プラグ部材に対する超音波振動の印加時間は約2から5[秒]程度に制限する。以上により、プラグ部材の表面に亜鉛合金はんだ層が形成される。ここで、プラグ部材を亜鉛合金はんだ浴中に浸漬するとプラグ部材の全体に亜鉛合金はんだ層が形成されるが、特に製造上は問題とならない。
【0029】
ここで、亜鉛合金はんだ層の形成機構を説明すると、まず、亜鉛合金はんだ浴15中に設置されている振動板17に超音波振動を印加することによってキャビテーションが発生する。次に、この発生したキャビテーションによってシリンダブロック本体3の通路壁面9aやプラグ部材の表面の酸化被膜が破壊されて活性な金属面が現れる。そして、この活性金属面と亜鉛合金はんだ浴中の亜鉛との間で合金反応が生じ、これによって、強固な亜鉛合金はんだ層が形成される。
【0030】
次に、シリンダブロック本体3にプラグ部材5を挿入して接合を行う行程について説明する。上記の如く、互いに亜鉛合金はんだ層が形成されたシリンダブロック本体3とプラグ部材5が用意され、図4に示すようにプラグ部材5がシリンダブロック本体3の上端部であって冷却水通路9の接合面傾斜部3bに挿入される。
【0031】
続いて、プラグ部材5が通路壁面9aに挿入されたシリンダブロック本体3は、図12に示すように、別に設けられた超音波接合装置28に設置される。この超音波接合装置28は、シリンダブロック本体3を担持すると共に後述する超音波振動子29に接合されたホーン31にこのシリンダブロック本体3を当接させるためのエアシリンダ33を備えている。また、エアシリンダ33の上方には、所定の超音波発振装置37が配設されている。この超音波発振装置37は、図12に示すように、プラグ部材5を直接加振するホーン31とこのホーン31に振動を伝達する振動子29と、この振動子29に発振信号を付与する発振器35よりなる。
【0032】
また、上記したホーン31の近傍には、所定の加熱装置(図示略)が装備されている。この加熱装置は、シリンダブロック本体3とプラグ部材5の接合部を予熱しておくためのものであり、高周波加熱器より構成されている。だたし、加熱装置としては、これに限定されるものではなく、例えばLPGガスを用いるガスバーナー等であってもよい。
【0033】
そして、エアシリンダ33上に担持されたシリンダブロック本体3は、エアシリンダ33の作用により上方に移動せられ、その上方に配設されているホーン31に当接する。正しくは、通路壁面9aに挿入され、未だ突出しているプラグ部材5がホーン31に当接することとなる。その後、接合部は、上記した加熱装置により加熱されると共に超音波振動が印加される。このとき、エアシリンダ33は、シリンダブロック本体3をホーン31に対して常時所定圧力で押圧しているので、加熱及び超音波振動の印加と共に亜鉛合金はんだ層が融解し、プラグ部材5がシリンダブロック本体3の中へ挿入されてゆく。
【0034】
以上の行程により、図4に示すようにシリンダブロック本体3とプラグ部材5は一体となる。このとき、上記したようにα1<β1の関係があるので、シリンダブロック本体3にプラグ部材5を押圧する際には、接合面傾斜部3b全体で面圧が上げられるという特徴を有する。
【0035】
そして、最後に所定の機械加工が加えられてシリンダブロック1が完成する訳であるが、最後の機械加工は、図4に示すデッキ面加工位置6から上部をフライス加工等によって切除することにより行う。このため、この機械加工を施しても、最も押圧力が大きい(接合強度も大きい)ポイントXがそのまま残り、シリンダブロック自体の強度が高い水準に維持される。また、接合面傾斜部3bとプラグ部材傾斜部5bの相互間で亜鉛合金はんだの充填が良くなり適切な亜鉛合金はんだ層4が形成されると共に、プラグ部材5の最下端部で接合面傾斜部3bと強固に接合しているので、冷却水通路9内への溶融した亜鉛合金はんだの液だれも防止される。
【0036】
以上は、シリンダブロック本体3とプラグ部材5の接合に際しても超音波振動を印加する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、超音波振動を印加せず接合部近傍を亜鉛合金はんだの融点より高い温度に加熱すると共に所定の押圧力を加えて接合するだけでも同様の効果を得ることができる。
【0037】
尚、以上説明したシリンダブロック本体とプラグ部材との接合の対比として、α1>>β1である場合について図5に基づいて説明する。この図5から判るように、接合面傾斜部3bの傾斜角β1がプラグ部材傾斜部5bの傾斜角α1より小さく設定されているので、接合面傾斜部3bとプラグ部材傾斜部5bとは接合面傾斜部3bの上端部のポイントYで最も強固に接合される。このため、シリンダブロック本体3に対してプラグ部材5を押圧しても、局部的にしか面圧を上げることができない。また、接合後にデッキ面の機械加工を施すと、ポイントYも切除されてしまうので、機械的な接合強度を上げることができない。加えて、図に示すように、溶融した亜鉛合金はんだが冷却水通路9内へ漏洩してしまうという不都合も発生する。
【0038】
また、図6は接合面傾斜部3bの傾斜角とプラグ部材傾斜部5bの傾斜角が等しい場合、即ち理想的な条件を満たしている場合を示す図である。このように構成される場合には、接合面傾斜部3bとプラグ部材傾斜部5bの全面で均一な面圧が生じると共に、形成される亜鉛合金はんだ層の層厚も一定になるので、気密性及び接合強度に優れたシリンダブロックを製造することができる。
【0039】
次に、上記した実施形態の変形例について図7に基づいて説明すると、当該変形例では、シリンダブロック本体3の接合面傾斜部3bの高さh3よりもプラグ部材5の挿入される高さh4が大きくなるように構成されている。これと同時に、プラグ部材5の下端部の幅は接合面傾斜部5の下端部の幅(片側がWであり全体で2W)より小さく構成されている。このため、上記実施形態と同様に機械加工を施しても、最も押圧力が大きい(接合強度も大きい)ポイントXがそのまま残り、シリンダブロック自体の強度が高い水準に維持される。また、接合面傾斜部3bとプラグ部材傾斜部5bの相互間で亜鉛合金はんだの充填が良くなり適切な亜鉛合金はんだ層4が形成されると共に、プラグ部材5の最下端部で接合面傾斜部3bと強固に接合しているので、冷却水通路9内への溶融した亜鉛合金はんだの液だれも防止される。
【0040】
また、図8ないし図10に他の変形例を示す。この変形例ではシリンダブロック本体3は上記した実施形態とほぼ同様に構成されている。しかし、接合面傾斜部3bの傾斜は高さh1について傾斜角度β1及びβ2となっている。また、図9に示すようにプラグ部材5は複数個設けられ、これらのプラグ部材5がアーム部材5cによって相互に一体的に構成されている。そして、プラグ部材傾斜部5bの傾斜角は接合面傾斜部3bに対応して高さh2について傾斜角度α1及びα2となっている。このとき、接合面傾斜部3bの傾斜角とプラグ部材傾斜部5bの傾斜角とは必ずしもα1=α2、β1=β2(左右対称)である必要はない。即ち、複数のプラグ部材5が一体的に構成されている場合には、複数の接合面で同時に位置決めできるからである。
【0041】
また、プラグ部材5の断面の内、最も幅の広い部分の長さW1は、接合面傾斜部3bの最大相互間距離よりも僅かに長く形成されている。これは、プラグ部材5をシリンダブロック本体3に挿入したときに、プラグ部材5が所定の位置で停止してそれ以上進入しないようにするためである。そして、図10に示すようにアーム部材5cと一体となったプラグ部材5をシリンダブロック本体3に挿入し、上記した実施形態と同様に加熱しながらプラグ部材5を押圧し、同時に超音波振動を印加して両者を接合する。
【0042】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明では、オープンデッキ式のシリンダブロック本体及びプラグ部材の少なくとも一方に超音波振動を印加して表面に亜鉛合金はんだ層を形成するようにしているので、この過程で超音波振動のキャビテーションによって表面の酸化被膜が破壊されて活性な金属面が現れ、更に、この活性金属面と亜鉛合金はんだ中の亜鉛との間で合金反応が生じて強固な亜鉛合金はんだ層が形成されることになり、この亜鉛合金はんだ層を介してシリンダブロック本体にプラグ部材をはんだ付けしてプラグ部材で冷却水通路の通路壁面を接合するようにしているので、シリンダブロック本体をダイカスト鋳造法等を用いて安価に製造することができると共に、機械的強度に優れたクローズドデッキ式と同様の強度を有するシリンダブロックを製造することができる、という優れた効果を生じる。また、ダイカスト鋳造法を用いることができるので、生産性を向上させることができる。
【0043】
また、接合の際にシリンダブロック本体に対してプラグ部材を押圧し超音波振動を印加する場合、接合面全体の面圧が適切に上昇し、且つ接合面全体が超音波振動で共振し易くなり、接合面傾斜部とプラグ部材傾斜部の相互間の亜鉛合金はんだが十分に溶融しあい良好な接合強度及び信頼性を得ることができる、という優れた効果を生じる。
【0044】
請求項2記載の発明では、特に、接合面傾斜部の角度をプラグ部材傾斜部の角度より大きく設定したので、冷却水通路内への溶融した亜鉛合金はんだの液だれが確実に防止できる、という優れた効果を生じる。
また、接合面傾斜部とプラグ部材傾斜部の内、下方領域に最も押圧力の高い部分が存在するので、接合後にデッキ面を機械加工しても当該部分が残り、シリンダブロックの機械的強度の水準を高く維持することができる、という優れた効果を生じる。
【0045】
また、接合面傾斜部とプラグ部材傾斜部との面圧が適切に確保することができることから、接合時の超音波振動の発振器出力を抑制することができ、また、条件によっては接合に際し加熱のみすれば、超音波振動が不要になる場合もある、という優れた効果を生じる。
【0046】
更に請求項3記載の発明では、プラグ部材を複数個設けると共に、各プラグ部材をアーム部材により一体的に構成するという手段を採っている。このため、一度の位置決めですべてのプラグ部材を所定位置に設置でき、シリンダブロックの製造効率が向上する、という優れた効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるシリンダブロックを示す断面図である。
【図2】図1に開示したシリンダブロックの接合面傾斜部の拡大断面図である。
【図3】図1に開示したプラグ部材の拡大断面図である。
【図4】シリンダブロック本体にプラグ部材を接合した状態を示す拡大断面図である。
【図5】図4に開示した実施形態との比較のために開示した不都合な例を示す拡大断面図である。
【図6】接合面傾斜部及びプラグ部材傾斜部が最適な条件を満たしている場合を示す拡大断面図である。
【図7】本発明の一変形例にかかる接合面傾斜部及びプラグ部材傾斜部を示す拡大断面図である。
【図8】本発明の他の変形例にかかるシリンダブロック本体の接合面傾斜部を示す拡大断面図である。
【図9】図8に開示した接合面傾斜部に接合されるプラグ部材を示す断面図である。
【図10】図8に開示したシリンダブロック本体に図9に開示したプラグ部材を挿入する状態を示す断面図である。
【図11】シリンダブロック本体に対し超音波振動の印加による亜鉛合金はんだ層の形成をするはんだ層形成装置を示す断面図である。
【図12】相互に一体となったシリンダブロック本体とプラグ部材とを接合する超音波接合装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダブロック
3 シリンダブロック本体
3a 接合面
3b 接合面傾斜部
5 プラグ部材
5b プラグ部材傾斜部
7 接合部
9 冷却水通路
9a 通路壁面
11 シリンダスリーブ
Claims (3)
- 冷却水通路が形成されたシリンダブロック本体と、この冷却水通路を形成する相対向した通路壁面間を相互に接合するプラグ部材とを備えたシリンダブロックにおいて、
前記通路壁面の接合面に、前記冷却水通路の断面を上方に向かって広がる形状とする角度を通路壁面に対して有する接合面傾斜部を形成すると共に、前記プラグ部材の断面を略台形に構成することによって該プラグ部材の左右の両側面に前記接合面傾斜部に対応したプラグ部材傾斜部を形成し、前記接合面傾斜部の傾斜角の大きさを前記プラグ部材傾斜部の傾斜角以上に設定し、
前記プラグ部材及びシリンダブロック本体の少なくとも一方に超音波振動を印加して表面に亜鉛合金はんだ層を形成し、しかる後に前記亜鉛合金はんだ層を溶解しつつ前記通路壁面間に前記プラグ部材を挿入し、前記通路壁面間から突出している前記プラグ部材を所定圧力で押圧することにより前記プラグ部材をシリンダブロック本体の接合面に接合することを特徴としたシリンダブロックの製造方法。 - 前記接合面傾斜部の傾斜角をβ1、前記プラグ部材傾斜部の傾斜角をα1としたとき、α1<β1であることを特徴とした請求項1記載のシリンダブロックの製造方法。
- 前記プラグ部材を複数個設けると共に、各プラグ部材をアーム部材により一体的に構成することを特徴とした請求項1または請求項2記載のシリンダブロックの製造方法。
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