JP3557050B2 - 生体吸収性重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体吸収性重合体及びその製造方法、並びに該生体吸収性重合体から得られた医療用成形物に関する。詳しくは、優れた直線的引張強度、結紮引張強度等の機械的強度及び柔軟性を有し、且つ、適度の加水分解性を有する生体吸収性重合体及びその製造方法、並びに該生体吸収性重合体から得られた医療用成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸、ポリグリコール酸及び乳酸−グリコール酸共重合体等に代表されるポリエステルは、生体内で非酵素的に加水分解され、その分解生成物である乳酸、グリコール酸は代謝経路により最終的には炭酸ガスと水になり体外へ放出されてしまう生体吸収性重合体である。また、トリメチレンカーボネート、p−ジオキサノン、ε−カプロラクトン等のラクトン等の重合体又はそれらの共重合体においても同様に、生体内で分解され、最終的に炭酸ガスと水になり体外へ放出されてしまう性質が知られている。
【0003】
上記の生体吸収性重合体の製造方法として、オクタン酸錫等の触媒の存在下、グリコール酸の無水環状二量体であるグリコリド、乳酸の無水環状二量体であるラクチド、トリメチレンカーボネート、p−ジオキサノン及びε−カプロラクトン等、又はそれらの混合物を開環重合する方法が知られている。そして、これらの生体吸収性重合体の内、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体等は、縫合糸、ガーゼ等の無菌外科手術用品の資材として用いられている。
【0004】
しかしながら、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体等は剛性が大きいため、これらをモノフィラメント状で縫合糸等として用いた場合には、手術した患部を縫合する際に結紮を結ぶことが困難である。そのため、通常、柔軟性を持たせるために多数の細いモノフィラメントを形成し、それらを編組して、所謂、マルチフィラメントとして使用されている。しかし、マルチフィラメント状縫合糸は、その表面は粗く、縫合する際に、周囲の生体組織に傷を付ける等の問題があり、また、結紮時のフィラメントを滑り易くするためにコーティング剤等を塗布する必要がある等、製造工程が複雑になり経済的にも不利となる問題もある。
【0005】
上記状況に鑑み、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体等に代表される生体吸収性重合体の柔軟性を改善して、モノフィラメントの形態で手術用縫合糸等として使用し得る生体吸収性重合体として、乳酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体及びグリコール酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体等並びにそれらから成形された医療用成形物が提案されている。
【0006】
グリコール酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体として、例えば、特開昭59−82865号公報には、約20〜35重量%のε−カプロラクトンと約65〜80重量%のグリコリドに基づくシーケンスからなり且つ少なくとも30,000psiの引張強度と350,000psi未満のヤング率を有する重合体材料からなる殺菌した手術用製品、及び該重合体材料である共重合体の製造方法が開示されている。そして、該共重合体の製造方法として、ε−カプロラクトンとグリコリドの低分子量プレポリマーを生成させ、該プレポリマーは50重量%を超えるε−カプロラクトンを包含し、且つ220℃よりも低い温度で生成せしめ、且つ該プレポリマーに追加のグリコリドを添加し、且つ追加のグリコリドを含有する該混合物を140℃よりも高い温度で少なくとも80%の共重合体への転化率を与えるために充分な時間にわたって重合させて、少なくとも5%の結晶化度を有する共重合体を生じさせる方法が記載されている。
【0007】
該公報に開示されたグリコール酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体及び該共重合体から成形された手術用製品は、優れた柔軟性と機械的強度を有するため、モノフィラメントの形態で手術用縫合糸として利用できる利点がある。しかし、それらは加水分解速度が早過ぎ、生体内において速やかに分解する。そのため、治癒期間が長い患部の手術用縫合糸又はその資材としては満足し得るものではない。
【0008】
また、特開平4−226527号公報には、少なくとも2種の異なるエステル結合をもつ生体吸収性を示すセグメント化コポリマーが開示されている。該公報には、実質的にグリコラート結合からなる高速エステル交換結合と、トリメチレンカーボネート及びカプロエート結合からなる群から選択される低速エステル交換結合とからなるセグメント化コポリマーが開示されており、また、少なくとも2つの段階で少なくとも2種の異なる環状エステルモノマーの逐次添加を用い、第一環状エステルモノマーにカーボネート類及びラクトン類、第二環状エステルモノマーにラクチド類を用い、コポリマー溶融物生成後、更に加熱してエステル交換させることによる上記セグメント化コポリマーの製造方法が開示されている。該セグメント化コポリマーはランダムもしくはブロックコポリマーとは著しく異なる物性を示すとされている。
【0009】
しかしながら、このセグメント化コポリマーは、該公報にも示されているように、セグメント化が進めば進むほど、ポリマーの融点が低下するとともに、結晶性が低下する。このため、本発明者らの知見によれば、このセグメント化コポリマーは縫合糸としてモノフィラメント化した際に充分な引張強度を示すに至らない。また、同じく本発明者らの知見によれば、このセグメント化コポリマーは、その低い結晶性の為に、体内での加水分解が速すぎ、治癒期間が長い患部の手術用縫合糸又はその資材としては満足し得るものではない。
【0010】
また、乳酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体として、例えば、特開昭64−56055号公報には、乳酸単位を95〜65モル%、ヒドロキシカプロン酸単位を5〜35モル%含有する共重合体から形成されてなる生体分解性の医療用成形物及びその製造法が開示されている。該公報に開示された共重合体及び医療用成形物は、柔軟性を有するため、モノフィラメントの形態で手術用縫合糸として利用できる利点がある。しかし、機械的強度が低い上に、生体内における分解速度が遅すぎるため、必要以上に生体内に長く存在するので好ましくない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を克服し、優れた機械的強度及び柔軟性を有し、且つ適度の加水分解性を有する、外科用モノフィラメント縫合糸等の資材として適する生体吸収性重合体及びその製造方法、並びに該生体吸収性重合体から得られる医療用成形物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を重ねた結果、意外にも、予め末端に水酸基を有するポリ乳酸を合成して単離し、そのポリ乳酸の存在下、先ずε−カプロラクトンを開環重合せしめ、次いでグリコリドを反応系に添加して開環重合することにより、上記目的を達成し得る生体吸収性共重合体が得られ、且つ該生体吸収性共重合体がモノフィラメント状縫合糸の資材として適することを見出し、本発明に到った。
【0013】
すなわち、本発明は、末端に水酸基を有し、かつ2000以上500,000以下の重量平均分子量を有するポリ乳酸100重量部の存在下、まずε−カプロラクトン20〜1200重量部を開環重合し、次いで、該ε−カプロラクトンの開環重合の途中又は完了後にグリコリド15〜1200重量部を添加して開環重合することにより得られる、ポリ乳酸セグメント、ポリ(ε−カプロラクトン)セグメント及びポリグリコール酸セグメントからなり、重量平均分子量10,000〜1,000,000である3元ブロック共重合体である。
本発明の3元ブロック共重合体の分子量は10,000〜1,000,000である。3元ブロック共重合体の機械的強度、加水分解速度、生産性、加工性等を考慮すると、さらに好ましい分子量範囲は、50,000〜400,000である。
【0014】
本発明により提供される3元ブロック共重合体の一つは、下記式(1)(化2)で表される構造を有する共重合体である。
【化2】
(式中、x,y及びzは、正の数を表し、x:y:z=100:a:bであり、aは13〜810であり、bは20〜1593である。また、Pは水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基若しくはカルボシキアルキレン基であり、Qは水素原子又は1価若しくは多価の金属原子である)
【0015】
また、本発明の他の発明は、上記3元ブロック共重合体から成形された生体吸収性医療用成形物である。本発明の生体吸収性医療用成形物の好ましい態様として、モノフィラメント状縫合糸を挙げることができる。
【0016】
さらに、本発明の他の発明は、末端に水酸基を有し、かつ2000以上500,000以下の重量平均分子量を有するポリ乳酸100重量部の存在下、まずε−カプロラクトン20〜1200重量部を開環重合し、次いで、該ε−カプロラクトンの開環重合の途中又は完了後にグリコリド15〜1200重量部を添加して開環重合することからなり、ポリ乳酸セグメント、ポリ(ε−カプロラクトン)セグメント及びポリグリコール酸セグメントからなる、重量平均分子量50,000〜1,000,000である3元ブロック共重合体の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本発明におけるポリ乳酸、ε−ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸及び共重合体等の分子量(重量平均分子量、Mw)は、後述する実施例に記載した方法により測定した値である。
【0018】
本発明の生体吸収性重合体は、予め特定の分子量を有するポリ乳酸を合成して単離し、該ポリ乳酸とε−カプロラクトン(以降単にカプロラクトンという)とを混合し、そのポリ乳酸の存在下で、先ず、所定量のカプロラクトンを開環重合し、次いで、所定量のグリコリドを逐次的に反応系に添加して、開環重合することにより製造される。
【0019】
本発明に使用するポリ乳酸の分子量は、得られる共重合体の機械的強度、加水分解性等に影響を及ぼす。すなわち、ポリ乳酸の分子量が低過ぎると、例えば得られる共重合体の機械的強度が低くなり、かつ加水分解速度が大きくなる。
また、逆にポリ乳酸の分子量が高すぎると、ポリ乳酸の溶融粘度が高くなりすぎ、第1段のカプロラクトンの重合において、ポリ乳酸とカプロラクトンとが均一に分散混合されにくくなる。このことはすなわち、カプロラクトンの付加しないポリ乳酸やポリ(ε−カプロラクトン)(以降単にポリカプロラクトンという)単独重合体の生成が多くなり、所望のABC型ブロック共重合体が得られにくくなるため、希望する強度、柔軟性、分解速度といった諸物性のバランスがとりにくくなり易い。かかる観点から、使用するポリ乳酸の分子量は好ましくはおよそ2000以上500,000以下であり、さらに好ましくは5,000以上300,000以下、さらに好ましくは10,000以上150,000以下である。
【0020】
上記ポリ乳酸は、乳酸の脱水重縮合で製造されたものでもよいし、また、ラクチドの開環重合により製造されたものでもよい。脱水重縮合に用いる乳酸は、D−乳酸であってもよいし、またL−乳酸であってもよい。例えばL−乳酸のみを用いて、脱水重縮合により製造されたポリ乳酸は、重合反応途中のラセミ化により、通常L−乳酸単位を80〜99.9重量%、D−乳酸単位を0.1〜20重量%程度含有する。
【0021】
また、ラクチドには、L−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸が環状二量化したメソラクチド、及びL−ラクチドとD−ラクチドのラセミ混合物であるDL−ラクチドがあるが、本発明ではこれらのいずれのラクチドを開環重合して得られたポリ乳酸も使用できる。
ポリ乳酸のL−乳酸単位とD−乳酸単位の含有比は得られる共重合体の結晶化度に影響を及ぼす。引張強度等の機械的特性を考慮すると、L−乳酸単位を90〜99.9重量%、D−乳酸単位を0.1〜10重重量%含むものが好ましく使用される。
【0022】
本発明で使用するポリ乳酸は、末端に水酸基を有するポリ乳酸である。片末端に水酸基を有するポリ乳酸は、上記のラクチドの開環重合において、水、アルコール類、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基含有化合物を開始剤(連鎖調節剤)として用いて重合を行うことにより調製することができる。また、上記の乳酸の脱水重縮合法によっても調製することができる。また、両末端に水酸基をもつポリ乳酸は、例えばエチレングリコール等のジヒドロキシ化合物を開始剤に用いてラクチドの開環重合を行うことにより調製することができる。
【0023】
上記方法により合成したポリ乳酸は、再沈澱法等の公知の方法を用いて合成反応系から単離することが好ましい。さらに、単離操作にともない、ラクチドや乳酸等の未反応モノマーを除去することが好ましい。好ましい未反応モノマーの残存量は、得られるポリ乳酸に対して10重量%以下である。さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。再沈澱法等の単離操作のみでは、未反応モノマーの除去が不十分である場合には、再沈澱精製、溶媒抽出、加熱減圧等の操作により、未反応モノマー量を低減することが好ましい。
【0024】
本発明で使用するポリ乳酸は、一般の合成高分子がそうであるように、通常分子量に分布がある。分子量分布は、一般に重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)で表される。例えば、上記脱水重縮合法で製造されたポリ乳酸は、分子量分布が比較的広く、Mw/Mnが2〜6程度である。また、例えばラクチドの開環重合法で得られるポリ乳酸は、Mw/Mnが1.2〜4程度である。本発明の製造方法では、分子量分布が狭いポリ乳酸を用いても良いが、生成する共重合体の機械的性質(強度、柔軟性等)や生体内での分解速度等の観点から、ポリ乳酸の分子量分布は中程度のものがよく、重量平均分子量と数平均分子量との比の値が、2以上6未満であるものがよい。
【0025】
また、本発明の共重合体の製造方法において用いるポリ乳酸は、末端に水酸基を有し、かつ2000以上500,000以下の重量平均分子量を有するポリ乳酸であればよく、枝分かれ状、櫛状、スターポリマー状、デンドリマー状の何れの構造を有していても良い。
【0026】
原料として使用するポリ乳酸の形態は、ポリ乳酸とカプロラクトンとの分散混合の容易性を考慮すると、ペレット状又は粉体状であることが好ましい。特に好ましくは粉体状である。
【0027】
本発明に使用するポリ乳酸は、実質的にポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸単位以外の他の構造単位が含まれていてもよい。含まれ得る構造単位には特に制限はないが、ヒドロキシカプロン酸単位、グリコール酸単位、ヒドロキシブチレート単位、ヒドロキシバレレート単位等のヒドロキシカルボン酸単位、ジオール単位、ジカルボン酸単位等が例示できる。その量は含まれる構造単位の種類にもよるが、実質的にポリ乳酸特有の性質を損なわない程度であることを考慮すると、およそ20モル%未満である。
【0028】
使用するポリ乳酸中及びカプロラクトン中に含まれる水分量の管理は重要である。なぜならば、カプロラクトンの開環重合の段階において、これら水分の存在によってカプロラクトンの単独重合体が生成しやすくなり、好ましくない物性の変化をもたらすからである。水分含有量が0.1〜200ppmであることが好ましい。カプロラクトンは、例えば、モレキュラーシーブス等を用いて乾燥し、さらに蒸留する等して水分を除去するとよい。ポリ乳酸は例えば室温ないし120℃程度の温度にて減圧乾燥することにより水分を除去するとよい。
また、使用するグリコリドの水分含有量は、得られる共重合体の分子量に影響を及ぼすので、水分含有量が0.1〜200ppmであることが好ましい。グリコリドは室温〜50℃程度において減圧乾燥したり、グリコリドを溶解しない親水性非アルコール性有機溶剤中でスラッジングする等して水分を除去するとよい。
【0029】
さらに、ラクチド、カプロラクトン、グリコリド及びその他のラクトンには、通常、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸、乳酸等の遊離のヒドロキシカルボン酸が含まれる。遊離のヒドロキシカルボン酸は得られる共重合体の分子量に影響を及ぼすので、その含有量を可能な限り低減し、10〜500ppm程度の範囲とすることが好ましい。より好ましくは10〜200ppmである。
【0030】
本発明の生体吸収性重合体は、上記のポリ乳酸100重量部の存在下で、先ず、カプロラクトン20〜1200重量部を開環重合し、次いで、グリコリド15〜1200重量部を逐次的に反応系に添加して開環重合することによって製造することができる。
この3成分の使用割合は、生成共重合体の繰り返し構成単位のモル比に換算すると、乳酸単位100モル部に対して、ヒドロキシカプロン酸単位13〜810モル部、グリコール酸単位20〜1593モル部である。
【0031】
カプロラクトンの使用量は、特に、得られる共重合体の柔軟性に影響を及ぼす。カプロラクトンの使用量が多くなると得られる共重合体の柔軟性が向上する。ポリ乳酸及びグリコリドの使用量は、特に、得られる共重合体の機械的強度に影響を及ぼす。ポリ乳酸及びグリコリドの使用量が少ないと機械的強度が低下し、逆に多いと機械的強度が向上する傾向を示す。
【0032】
また、ポリ乳酸、カプロラクトン、グリコリドの使用量は、得られる共重合体の加水分解速度に影響を及ぼす。ポリ乳酸、カプロラクトンの使用量が多すぎると加水分解が遅くなる傾向を示し、グリコリドの使用量が多い場合には加水分解が速すぎる傾向を示す。
かかる観点から、ポリ乳酸、カプロラクトン及びグリコリドをそれぞれ上記の如き割合で用い、且つ、上記方法及び順序で反応系内に添加することにより、機械的強度、柔軟性及び加水分解性等が適度にバランスした生体吸収性共重合体が得られる。
【0033】
さらに生体吸収性モノフィラメント縫合糸に適する生体吸収性重合体として、より好適な引張強度、柔軟性及び加水分解性を兼ね備えるために、ポリ乳酸、カプロラクトン、グリコリドの使用割合は、モノフィラメントの適度な柔軟性の発揮のために、カプロラクトンの使用量を、全体(ポリ乳酸量+カプロラクトン量+グリコリド量)の15%以上にすること及びモノフィラメントの加水分解速度を適度なものとするために、使用するポリ乳酸とカプロラクトンの合計量を全体の30%以上、90%以下とすることがより好ましい。
【0034】
本発明においては、上記3成分の原料の他、共重合用単量体として他のラクトンをカプロラクトンやグリコリドとともに併用してもよい。他のラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、p−ジオキサノン、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、トリメチレンカーボネート等が挙げられる。本発明の目的を考慮すると、これらの他のラクトンの使用量はポリ乳酸100重量部に対して10重量部以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の製造法において、強度、柔軟性、分解速度がバランスされた共重合体を得るためには、第2段階のグリコリドの添加時には、第1段階のカプロラクトンが未反応モノマーとして残存している量が、グリコリドに対して少ないことが好ましい。好ましくは残存カプロラクトン量は、第2段階で添加するグリコリド量に対して10重量%以下であることが好ましい。第2段階でのグリコリド添加直前の反応系中の未反応カプロラクトンを少なくする方法には例えば、▲1▼第1段階のカプロラクトンの重合を適切且つ十分な反応条件で行うことにより、カプロラクトンの転化率を高める方法、▲2▼第1段階の重合反応の後半から、あるいは重合反応の終了後の第2段階の重合反応の直前において、反応系を減圧条件下に加熱することにより、未反応カプロラクトンを除去する方法等が挙げられる。上記▲1▼の方法では、触媒量、反応温度、反応時間を適宜調節することにより、転化率を99%程度にまで高めることが可能である。本発明の製造方法においては、好ましい機械的強度、分解速度等の物性を示す共重合体を得るためには、第1段階のカプロラクトンの転化率を少なくとも70%以上に高めることが好ましい。好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0036】
グリコリドの反応系への添加方法は特に制限されない。しかしながら、ポリ乳酸の存在下でカプロラクトンを重合させて得られる溶融物は高粘度であり、一方、添加したグリコリドは反応系内で低粘度の溶融液となるため、一時に大量のグリコリドを系内に添加すると、両者は良好に混合されず、反応が不均一になりやすい。このことは、共重合体中のポリグリコール酸セグメントの付加を不均一にし、好ましい物性の発現が期待できなくなる。したがって好ましいグリコリドの添加方法は、1分間あたりのグリコリド添加量が、ポリ乳酸とカプロラクトンとの重量の合計の20%を超えない量となるように、所定量のグリコリドを少量ずつ連続的にあるいは間欠的に添加する方法である。
【0037】
グリコリドの転化率は、得られる共重合体の機械的強度に影響する。そのため、グリコリドの転化率が95重量%以上となるまで開環重合することが好ましい。
【0038】
ポリ乳酸、カプロラクトン及びグリコリドの使用割合、並びにこれら3成分の反応系への添加方法及びその順序は、得られる共重合体の機械的強度、柔軟性、加水分解性等に影響を及ぼす。得られる共重合体に優れた機械的強度、柔軟性等を付与し、且つ適度の加水分解性を付与するためには、上記方法と順序に従ってそれぞれを反応系に添加することが重要である。
【0039】
ポリ乳酸の存在下で、カプロラクトン及びグリコリドを開環重合する方法として、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられる。しかし、有機溶媒、懸濁安定剤等の混入防止を考慮すると、溶融状態で実施する塊状重合法が好ましい。カプロラクトン、グリコリドの開環重合は、好ましくは130℃以上、270℃未満の範囲で行うことができる。特にカプロラクトンの重合温度は、共存するポリ乳酸が溶融する温度以上であることが好ましい。ポリ乳酸が完全に溶融しない温度では、カプロラクトンの重合がポリ乳酸の末端水酸基から開始しないことが多くなり、カプロラクトン単独重合体の副生が多くなり好ましくない。一方、過度に高温で重合を行うと、生成重合体の分解が起こるため好ましくない。かかる点を考慮すると、カプロラクトンの好ましい重合温度範囲は、およそ170〜250℃程度である。また、同様に好ましいグリコリドの重合温度範囲は、およそ150〜250℃程度である。通常、窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0040】
開環重合時間には特に制限はないが、カプロラクトンの開環重合はカプロラクトンの転化率が少なくとも70重量%に達するまでグリコリドを添加することなしに開環重合することが重要である。上記温度範囲であれば、かかる転化率に到達する時間は、通常、0.2〜10時間程度である。また、グリコリドの開環重合はグリコリドの転化率が95重量%以上になるまで実施することが好ましい。グリコリドは、好ましくは0.1〜2時間、より好ましくは0.1〜1時間かけて添加することが好ましい。かくして、グリコリドの転化率は95重量%以上に到達する。尚、グリコリドを反応系に添加するためには、該グリコリドを100〜150℃に加熱して溶融状態で扱うことが好ましい。
【0041】
カプロラクトン及びグリコリドの共重合体への転化率は、例えば、反応混合物をヘキサフルオロ−2−プロパノールに溶解し、残存するモノマー類をガスクロマトグラフィーを用いて定量して算出される。
【0042】
いずれの開環重合も短時間で終了させ、高分子量の共重合体を得るためには重合触媒を用いることが好ましい。重合触媒としては、例えば、オクタン酸第一錫、四塩化錫、塩化亜鉛、四塩化チタン、塩化鉄、三フッ化ホウ素エーテル錯体、塩化アルミニウム、三フッ化アンチモン、酸化鉛等の主として多価金属を含む化合物が挙げられ、中でも錫化合物又は亜鉛化合物が好ましく使用される。オクタン酸第一錫が特に好ましい。重合触媒の使用量は、仕込んだ原料の総重量に対し、0.001〜0.03重量%程度であることが好ましい。
【0043】
開環重合で得られた共重合体は、溶融状態のまま減圧して、又は、冷却、粉砕した後、減圧下で加熱することにより未反応モノマーを除去する。溶融状態のまま減圧して未反応モノマーを除去する場合、200〜240℃において、0.2〜1時間かけて最終的に13,300Pa以下の圧力において減圧、脱気し、その状態を0.3〜2時間維持する方法が挙げられる。130Pa程度まで減圧すること好ましい。
【0044】
また、共重合体を冷却、粉砕した後、減圧下で加熱して、未反応モノマーを除去する場合、共重合体の形状は粉末、ペレット状等のできるだけ細かい形状とすることが好ましい。40〜130℃において、13,300Pa以下の圧力において減圧、脱気し、0.5〜72時間減圧、脱気が維持され続けるのがよい。130Pa程度まで減圧すること好ましい。いずれの方法においても、攪拌下であっても非攪拌下であってもよい。
【0045】
本発明の3元ブロック共重合体の製造方法は、予め末端に水酸基を有するポリ乳酸を合成して単離し、該ポリ乳酸の存在下でカプロラクトンを開環重合させることに一つの特徴がある。このことは、強度、柔軟性、加水分解性を適度に兼ね備えた3元ブロック共重合体の製造方法として重要な意味をもつ。即ち、所望あるいは既知の構造(分子量、分子量分布、光学活性等)を有するポリ乳酸を予め合成したのち単離し、該ポリ乳酸を所定量使用して3元ブロック共重合体を製造する方法であるため、機械的強度及び加水分解性に大きく影響するポリ乳酸セグメントの構造がよく規定された(tailor−made )ブロック共重合体を製造することができる。
【0046】
本発明の3元ブロック共重合体の製造法は、他の製造方法、例えば、初めにラクチドを開環重合してポリ乳酸を生成させ、次いで該反応系から、ポリ乳酸を単離することなしに、該反応系へカプロラクトンを添加して共重合体を生成させ、さらにそこへグリコリドを添加して開環重合する方法(以降、連続3段重合法と呼ぶ)に比べて以下の点で優れている。
【0047】
連続3段重合法では、2段目のカプロラクトンの添加するときの温度を、1段目で生成しているポリ乳酸の溶融状態を保持するために、少なくとも200℃以上に保つ必要がある。この場合、本発明者らの知見によれば、200℃以上の温度では、ポリ乳酸とラクチドとの平衡(ポリマー←→モノマー)により、およそ10%以上のラクチドモノマーが混在する。第2段目のカプロラクトンの重合の際にラクチドモノマーが混在すると、3元ブロック共重合体の第2セグメントが乳酸単位とカプロラクトン単位とが混在するランダム共重合体セグメントとなってしまう。このことは、例えば、機械的強度の低下や室温でのべたつき等の物性の低下につながるため、好ましくない。
【0048】
また、連続3段重合法では、溶融している高温高粘度のポリ乳酸に、室温で低粘度液体のカプロラクトンを添加するため、両者の混合分散が不均一になり易く、ポリ乳酸末端からのポリカプロラクトン)の生長が良好に進行せず、カプロラクトン単独重合体の混入が多くなるため、物性の低下を招き好ましくない。
【0049】
本発明の製造方法によれば、まず末端に水酸基を有するポリ乳酸の存在下でカプロラクトンの開環重合を行うことにより、ポリ乳酸の末端水酸基からポリカプロラクトンのセグメントが生長し、ポリ乳酸−ポリカプロラクトンAB型ブロック共重合体が生成する。次いでそこへグリコリドを逐次的に添加して開環重合させることにより、ポリカプロラクトン鎖の末端水酸基からグリコリドの重合体鎖(ポリグリコール酸セグメント)が生長する。従って、例えば片末端に水酸基を有するポリ乳酸を用いた場合には、ポリ乳酸(A)−ポリカプロラクトン(B)−ポリグリコール酸(C)のABC型3元ブロック共重合体が生成する。また、例えば両末端に水酸基を有するポリ乳酸を用いることにより、CBABC型3元ブロック共重合体が生成する。
【0050】
得られる生体吸収性重合体の分子量は、機械的強度、加水分解性等に関係する。そのため、本発明の生体吸収性重合体の分子量は50,000〜1,000,000程度であることが好ましい。手術用縫合糸、骨補強材等として使用するときは、通常、分子量が50,000〜1,000,000程度である。好ましくは50,000〜400,000である。
【0051】
かくして、本発明により提供される好適な生体吸収性重合体の一つは、乳酸単位100モル部に対して、ヒドロキシカプロン酸単位13〜810モル部及びグリコール酸単位20〜1593モル部を含む、ポリ乳酸セグメント(A)、ポリカプロラクトンセグメント(B)、ポリグリコール酸セグメント(C)が、式(1)(化3)で表されるA−B−C型あるいはC−B−A−B−C型に結合した、分子量が50,000〜1,000,000の3元ブロック共重合体である。
【化3】
【0052】
本発明の製造方法により生成する重合体中には、上記3元ブロック共重合体の他、少量のカプロラクトン単独重合体、グリコール酸単独重合体、ポリカプロラクトン−ポリグリコール酸(BC型)ブロック共重合体、及び、さらに少量のポリ乳酸、ポリ乳酸−ポリカプロラクトン(AB型又はBAB型)ブロック共重合体、ポリ乳酸−ポリグリコール酸(AC型又はCAC型)ブロック共重合体等が混在していてもよい。
【0053】
これらの副生するポリマーの量は、原料であるポリ乳酸、カプロラクトン、グリコリド中の水分やヒドロキシカルボン酸等の不純物の量、反応第1段階でのポリ乳酸とカプロラクトンとの混合の均一性、第2段階でのグリコリド添加時のポリマーとグリコリドとの混合の均一性等によって変化する。
また、副生ポリマーの量は、例えば、3元ブロック共重合体からソックスレー抽出等により副生ポリマーを溶解抽出すること、3元ブロック共重合体を良溶媒に溶解し、副生ポリマーを溶解し3元ブロック共重合体を溶解しない溶媒を添加して、3元ブロック共重合体のみを再沈澱させること等の方法により知ることができる。
【0054】
上記の如くして製造された本発明の生体吸収性重合体は、公知の方法により医療用成形物に成形加工される。医療用成形物として、モノフィラメント状縫合糸、骨補強用板、外科用網状体、徐放性薬剤等が挙げられる。
【0055】
モノフィラメント状縫合糸の製造方法は、特に制限はなく公知の方法が適用できる。例えば、本発明の生体吸収性重合体を、紡糸金型が装着された押出機等を用いて、混練、溶融して、紡糸口金を通してモノフィラメント状繊維に成形する。次いで、繊維を延伸して配向させ、さらに配向された繊維をアニールし、さらに熱処理を施す方法が挙げられる。
【0056】
モノフィラメントの成形条件として、紡糸温度は、共重合体の融点以上、分解温度未満であればよい。通常、好適には120〜250℃である。延伸温度は、フィラメントのガラス転移温度を基準として選定されるが、通常、好適には15〜80℃程度である。より好ましくは25〜70℃である。延伸倍率は、フィラメントの長さ方向に3〜20倍が好ましい。さらに好ましくは3〜10倍である。延伸されたフィラメントは、引張強度、寸法安定性、加水分解性等の特性を均一なものとするためにアニール及び熱処理が施されることが好ましい。アニールは0.5〜10%の緩和下、又は緊張下で好適には40〜130℃において、0.01秒〜30秒間程度実施することが好ましい。
【0057】
熱処理はアニール後、40〜150℃、130〜100,000Paの減圧下において張力下で、1〜72時間実施することが好ましい。熱処理のさらに好ましい温度は50〜125℃である。また、好ましい圧力は130〜16,000Pa、さらに好ましくは130〜8,000Paである。
本発明のモノフィラメント状縫合糸の太さには特に制限はないが、通常、直径が0.005〜1mmである。好ましくは0.02〜0.8mmである。本発明のモノフィラメント状縫合糸は、必要に応じて、少なくとも一方の端に縫合用針を取り付けることが好ましい。
【0058】
本発明の好適な具体化において、本発明の外科手術用モノフィラメント状縫合糸は、少なくとも200MPaの直線的引張強度、少なくとも170MPaの結紮引張強度を有する。ヤング率は、2.1GPa以下である。加水分解性、すなわち、生体内における直線的引張強度の残率(元の引張強度に対する割合)は、後述する条件下において、6日間経過後の値が10〜90%である。好ましい態様においては20〜80%である。さらに好ましい態様においては30〜70%である。また、本発明のモノフィラメント状縫合糸は結紮安定性が良好で、一度作った結紮の結び目が緩くなることがない。これらの特性の評価、測定方法は後述の実施例において詳述する。
【0059】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。尚、実施例に示したポリ乳酸及び共重合体等の分子量、ε−カプロラクトン、グリコリド、及びラクチドの転化率、共重合体組成、共重合体融点、直線的引張強度、ヤング率、加水分解後の直線的引張強度の残率、結紮安定性は下記方法により測定した。
【0060】
(1)ポリ乳酸及び3元ブロック共重合体等の分子量
ポリ乳酸はクロロホルム、それ以外の重合体はヘキサフルオロ−2−プロパノール(以下、HFPという)に溶解して濃度が0.2重量%の溶液を調製し、該溶液をゲルパーミエーションクロマトクラフィー(昭和電工(株)製、形式:GPC−SYSTEM21、以下、GPCという)を用いて測定した。ポリ乳酸はポリスチレン、それ以外の重合体はポリメチルメタクリレートを標準物質として重量平均分子量(Mw)を算出する。
【0061】
(2)ε−カプロラクトン、グリコリド、及びラクチドの転化率
生成した重合体をHFPに溶解し、キャピラリーガスクロマトグラフィによりポリマー中のε−カプロラクトン、グリコリド、及びラクチドの含有量(残存モノマー量)を測定することにより、算出する。
【0062】
(3)共重合体組成(重量部)
核磁気共鳴装置(日本電子(株)製、形式:FX−90Q)を用いて、溶媒としてHFPと重クロロホルムの混合溶媒(容積混合比:HFP:CDCl3=2:1)を使用し、1H核について1〜9ppmの範囲で測定し、乳酸に基づくメチル基(5.2ppm)、ヒドロキシカプロン酸に基づくメチレン基(2.4ppm)、グリコール酸に基づくメチレン基(4.8ppm)の各共鳴強度から、試料中の各組成比(重量部)を求める。以下、H−NMR分析という。
【0063】
(4)共重合体融点(℃)
示差走査熱量計〔(株)RIGAKU製、型式:DSC−8230〕を用いて、毎分10℃の加熱割合で作動する示差走査熱量計のピークによって示される融点を測定する。
【0064】
(5)直線的引張強度(MPa)、ヤング率(GPa)
JIS L−1069に規定される方法により、引張試験機のチャック幅40mm、引張速度100mm/minで測定する。直線的引張強度は、試料が破断するまでの最大荷重(N)を示す。ヤング率は、応力(荷重)−歪み曲線の初期直線的弾性領域の勾配から次式により算出する。
ヤング率=(tanθ×L・C・S)/(H×A)
〔式中、θ:応力(荷重)−歪み曲線の初期直線部と歪み軸(X軸)との角度(°)、L:チャック幅(mm)、C:チャート速度(mm/min)、S:応力軸1目盛り当たりの荷重(N/mm)、H:引張速度(mm/min)、A:試料断面積(mm2 )〕
【0065】
(6)加水分解後の直線的引張強度の残率(%)
pH7.27、温度50℃の燐酸塩緩衝溶液中に試料(モノフィラメント)を6日間浸漬し、乾燥した後、第(5)項に記載した方法により直線的引張強度を測定して、未浸漬時の値に対する百分率(%)で示す。
【0066】
(7)結紮安定性
試料(モノフィラメント)を直径20mmのガラス管に密着するように2回巻き付けて外科結びを施した後、温度23℃、相対湿度50%において所定期間放置し、その結び目の緩み具合の経時変化を目視にて観察する。ガラス管上の試料の結紮の結び目の緩み具合の程度により、試料の結紮安定性を評価する。評価基準は次の通りとする。
ランクA:結び目に緩みが無くガラス管に密着している状態。
ランクB:結び目に緩みがあるがガラス管に付着している状態。
ランクC:結び目の緩みが大きく、ガラス管から結び目が離れている状態。
【0067】
実施例1
機械的攪拌装置、及び減圧脱気装置を取り付け、加熱減圧乾燥した1Lの反応機に、粉末状で分子量が86,000であるポリ乳酸(以下、PLAという)100重量部、ε−カプロラクトン(以下、CLという)100重量部、及びオクタン酸第一錫をCLに対して0.015重量%となる量装入した。
反応機内を、30℃、130〜1,300Paにおいて約2時間減圧、脱気し、トルエン(オクタン酸第一錫の溶媒)を除去した。次いで、窒素を通気して約101,000Paにした。約5分間窒素を通気した後、窒素雰囲気のままで反応混合物を約20分間かけて220℃まで加熱し、2時間この温度を保持した。このとき、CLの共重合体への転化率は約98%であった。
【0068】
次いで、約110℃に加熱、溶融したグリコリド(以下、GLDという)100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加し、5分間激しく攪拌した。その後、攪拌は緩やかに行いながら反応温度を235℃まで上げ、その状態を約1時間保持した。GLDの共重合体への転化率は約99重量%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。得られた共重合体の組成、分子量、及び融点を上記方法により測定し、その結果を表1(表1)に示す。
【0069】
次に、得られた共重合体を、押出機を用いて、240℃において溶融押出し、モノフィラメントを成形した。得られたモノフィラメントを50℃において長さ方向に7.4倍に延伸した。その後緊張下で、60℃において数秒間アニールした後、さらに、減圧状態下110℃において、3時間熱処理を施し、太さが0.2mmのモノフィラメント状縫合糸を製造した。得られた縫合糸の直線的引張強度、ヤング率、加水分解後の強度残存率を上記方法により測定し、下記判定基準により判定した。結果を表2(表2)に示す。
【0070】
▲1▼直線的引張強度
A:400MPa以上
B:300MPa以上〜400MPa未満
C:250MPa以上〜300MPa未満
D:200MPa以上〜250MPa未満
F:200MPa未満
▲2▼ヤング率
A:1.3GPa以下
B:1.3GPa超〜2.1GPa以下
C:2.1GPa超〜3.0GPa以下
F:3.0GPa超
▲3▼加水分解後の強度残存率
A:30%以上〜70%以下
B:20%以上〜30%未満又は70%超〜80%以下
C:10%以上〜20%未満又は80%超〜90%以下
F:10%未満又は90%超
【0071】
実施例2〜9及び比較例1〜6
表1(表1)及び表3(表3)に示す分子量のPLAを表1(表1)及び表3(表3)に示す重量部使用し、且つ、CL及びGLDを表1(表1)及び表3(表3)に示す重量部使用した以外、実施例1と同様にして、共重合体を製造した。得られた共重合体の各特性値を実施例1と同様にして測定し、結果を表1(表1)及び表3(表3)に示す。また、紡糸温度、延伸温度、延伸倍率及びアニール温度を表2(表2)及び表4(表4)に示す条件とした以外、実施例1と同様にしてモノフィラメント状縫合糸を製造した。得られた縫合糸の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表2(表2)及び表4(表4)に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
比較例7
Mw86,000のPLA粉末100重量部の存在下で、先ずGLD100重量部を開環重合した(使用オクタン酸スズ量はGLDに対して0.015重量%)。重合は220℃で行ったが、反応機内のポリマー粘度が高くなりすぎ、攪拌が困難となった上、反応内温が235℃を超えたため、反応機の外温設定温度を235℃とした。1時間後、GLDの転化率は97重量%に到達した。CLを100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加したが、反応機内のポリマー溶融物とCLとがよく混ざり合わず、不均一のままであった。3時間後、ようやくほぼ均一の溶融物となったが濃褐色に着色した低粘度の溶融物であった。CLの転化率は89%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPLAの分子量、仕込み組成及び反応系への仕込みシーケンスを表5(表5)に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。得られた濃褐色の共重合体を紡糸することを試みたが、異様な臭気が発生し、低粘度の溶融液が押出機から排出されるのみで、フィラメントは得られなかった。
【0077】
比較例8
Mw150,000のPCLペレット100重量部の存在下で、先ずLTD100重量部を220℃で開環重合した(使用オクタン酸スズ量はLTDに対して0.015重量%)。1時間後、LTDの転化率は約90重量%に到達した。重合時間をさらに2時間延長したが、LTDの転化率は上昇しなかった。そこへ加熱、溶融したGLD100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加し、5分間激しく攪拌した。その後、攪拌は緩やかに行いながら反応温度を235℃まで上げ、その状態を約1時間保持した。GLDの共重合体への転化率は約99重量%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPCAの分子量、仕込み組成及び反応系への仕込みシーケンスを表5(表5)に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。紡糸温度、延伸温度、延伸倍率及びアニール温度を表6(表6)に示す条件とした以外、実施例1と同様にして太さが0.2mmのモノフィラメント状縫合糸を製造した。得られた縫合糸の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6(表6)に示す。
【0078】
比較例9
Mw150,000のPCLペレット100重量部の存在下で、先ずGLD100重量部を220℃で開環重合した(使用オクタン酸スズ量はLTDに対して0.015重量%)。重合は当初220℃で行ったが、反応機内のポリマー粘度が高くなりすぎ、攪拌が困難となった上、反応内温が235℃を超えたため、反応機の外温設定温度を235℃とした。1時間後、GLDの転化率は98重量%に到達した。LTD100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加したが、反応機内のポリマー溶融物とLTDとがよく混ざり合わず、不均一のままであった。2時間後、ようやくほぼ均一の溶融物となったが激しく濃褐色に着色した低粘度の溶融物であった。LTDの転化率は86%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPCLの分子量、仕込み組成及び反応系への仕込みシーケンスを表5(表5)に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。紡糸温度、延伸温度、延伸倍率及びアニール温度を表6(表6)に示す条件とした以外、実施例1と同様にして太さが0.2mmのモノフィラメント状縫合糸を製造した。得られた縫合糸の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6(表6)に示す。
【0079】
比較例10
Mw89,000のポリグリコール酸ペレット(以下、PGAという)100重量部の存在下で、先ずCL100重量部を開環重合を試みた(使用オクタン酸スズ量はCLに対して0.015重量%)。重合は当初220℃で行ったが、PGAが溶融せず、不均一の反応系であったため、反応温度を235℃とした。2時間後、反応系がわずかに増粘した。サンプリングしたところ、黄褐色のポリマーの所々に黒色のPGA粒が不均一に分散したものであった。CLの転化率は70%であった。
LTD100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加した。4時間後、LTDの転化率は86%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPGAの分子量、仕込み組成及び 反応系への仕込みシーケンスを5に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。得られた濃褐色の共重合体を紡糸することを試みたが、異様な臭気が発生し、低粘度の溶融液が押出機から排出されるのみで、フィラメントは得られなかった。
【0080】
比較例11
Mw89,000のPGA100重量部の存在下で、先ずLTD100重量部を開環重合を試みた(使用オクタン酸スズ量はLTDに対して0.015重量%)。重合は当初220℃で行ったが、PGAが溶融せず、不均一の反応系であったため、反応温度を235℃とした。2時間後、反応系が増粘しのでサンプリングしたところ、生成物は黄褐色のポリマーであった。LTDの転化率は85%であった。
CL100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加した。3時間後、CLの転化率は86%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPGAの分子量、仕込み組成及び反応系への仕込みシーケンスを表5(表5)に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。得られた濃褐色の共重合体を紡糸することを試みたが、異様な臭気が発生し、低粘度の溶融液が押出機から排出されるのみで、フィラメントは得られなかった。
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
<結紮安定性の評価>
実施例1〜9で得られたモノフィラメント状縫合糸について、結紮安定性を上記方法により評価したところ、何れのモノフィラメントも評価はAであり、3日間安定に結び目を保持した。
【0084】
【発明の効果】
本発明の生体吸収性重合体は、優れた機械的強度及び柔軟性を有する。そのため、該生体吸収性重合体から機械的強度及び柔軟性に優れたモノフィラメント状縫合糸等の医療用成形物を製造することができる。また、本発明の生体吸収性重合体から得られたモノフィラメント状縫合糸は、pHが7.27、温度が50℃の燐酸塩緩衝溶液中に6日間浸漬した後の引張強度の残率が10〜90%程度であり、適度の加水分解性を有する。しかも、優れた結紮安定性を有する。そのため、本発明の生体吸収性重合体から成形されたモノフィラメント状縫合糸は、特に、外科手術から抜糸までの期間が1週間から10日間程度である外科手術の縫合糸として特に有用である。かかる特性を有する生体吸収性重合体は、本発明の方法を採用することのみによって得られるものであり、医療用成形物の資材用重合体の製造方法として極めて有用な方法である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体吸収性重合体及びその製造方法、並びに該生体吸収性重合体から得られた医療用成形物に関する。詳しくは、優れた直線的引張強度、結紮引張強度等の機械的強度及び柔軟性を有し、且つ、適度の加水分解性を有する生体吸収性重合体及びその製造方法、並びに該生体吸収性重合体から得られた医療用成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸、ポリグリコール酸及び乳酸−グリコール酸共重合体等に代表されるポリエステルは、生体内で非酵素的に加水分解され、その分解生成物である乳酸、グリコール酸は代謝経路により最終的には炭酸ガスと水になり体外へ放出されてしまう生体吸収性重合体である。また、トリメチレンカーボネート、p−ジオキサノン、ε−カプロラクトン等のラクトン等の重合体又はそれらの共重合体においても同様に、生体内で分解され、最終的に炭酸ガスと水になり体外へ放出されてしまう性質が知られている。
【0003】
上記の生体吸収性重合体の製造方法として、オクタン酸錫等の触媒の存在下、グリコール酸の無水環状二量体であるグリコリド、乳酸の無水環状二量体であるラクチド、トリメチレンカーボネート、p−ジオキサノン及びε−カプロラクトン等、又はそれらの混合物を開環重合する方法が知られている。そして、これらの生体吸収性重合体の内、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体等は、縫合糸、ガーゼ等の無菌外科手術用品の資材として用いられている。
【0004】
しかしながら、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体等は剛性が大きいため、これらをモノフィラメント状で縫合糸等として用いた場合には、手術した患部を縫合する際に結紮を結ぶことが困難である。そのため、通常、柔軟性を持たせるために多数の細いモノフィラメントを形成し、それらを編組して、所謂、マルチフィラメントとして使用されている。しかし、マルチフィラメント状縫合糸は、その表面は粗く、縫合する際に、周囲の生体組織に傷を付ける等の問題があり、また、結紮時のフィラメントを滑り易くするためにコーティング剤等を塗布する必要がある等、製造工程が複雑になり経済的にも不利となる問題もある。
【0005】
上記状況に鑑み、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体等に代表される生体吸収性重合体の柔軟性を改善して、モノフィラメントの形態で手術用縫合糸等として使用し得る生体吸収性重合体として、乳酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体及びグリコール酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体等並びにそれらから成形された医療用成形物が提案されている。
【0006】
グリコール酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体として、例えば、特開昭59−82865号公報には、約20〜35重量%のε−カプロラクトンと約65〜80重量%のグリコリドに基づくシーケンスからなり且つ少なくとも30,000psiの引張強度と350,000psi未満のヤング率を有する重合体材料からなる殺菌した手術用製品、及び該重合体材料である共重合体の製造方法が開示されている。そして、該共重合体の製造方法として、ε−カプロラクトンとグリコリドの低分子量プレポリマーを生成させ、該プレポリマーは50重量%を超えるε−カプロラクトンを包含し、且つ220℃よりも低い温度で生成せしめ、且つ該プレポリマーに追加のグリコリドを添加し、且つ追加のグリコリドを含有する該混合物を140℃よりも高い温度で少なくとも80%の共重合体への転化率を与えるために充分な時間にわたって重合させて、少なくとも5%の結晶化度を有する共重合体を生じさせる方法が記載されている。
【0007】
該公報に開示されたグリコール酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体及び該共重合体から成形された手術用製品は、優れた柔軟性と機械的強度を有するため、モノフィラメントの形態で手術用縫合糸として利用できる利点がある。しかし、それらは加水分解速度が早過ぎ、生体内において速やかに分解する。そのため、治癒期間が長い患部の手術用縫合糸又はその資材としては満足し得るものではない。
【0008】
また、特開平4−226527号公報には、少なくとも2種の異なるエステル結合をもつ生体吸収性を示すセグメント化コポリマーが開示されている。該公報には、実質的にグリコラート結合からなる高速エステル交換結合と、トリメチレンカーボネート及びカプロエート結合からなる群から選択される低速エステル交換結合とからなるセグメント化コポリマーが開示されており、また、少なくとも2つの段階で少なくとも2種の異なる環状エステルモノマーの逐次添加を用い、第一環状エステルモノマーにカーボネート類及びラクトン類、第二環状エステルモノマーにラクチド類を用い、コポリマー溶融物生成後、更に加熱してエステル交換させることによる上記セグメント化コポリマーの製造方法が開示されている。該セグメント化コポリマーはランダムもしくはブロックコポリマーとは著しく異なる物性を示すとされている。
【0009】
しかしながら、このセグメント化コポリマーは、該公報にも示されているように、セグメント化が進めば進むほど、ポリマーの融点が低下するとともに、結晶性が低下する。このため、本発明者らの知見によれば、このセグメント化コポリマーは縫合糸としてモノフィラメント化した際に充分な引張強度を示すに至らない。また、同じく本発明者らの知見によれば、このセグメント化コポリマーは、その低い結晶性の為に、体内での加水分解が速すぎ、治癒期間が長い患部の手術用縫合糸又はその資材としては満足し得るものではない。
【0010】
また、乳酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体として、例えば、特開昭64−56055号公報には、乳酸単位を95〜65モル%、ヒドロキシカプロン酸単位を5〜35モル%含有する共重合体から形成されてなる生体分解性の医療用成形物及びその製造法が開示されている。該公報に開示された共重合体及び医療用成形物は、柔軟性を有するため、モノフィラメントの形態で手術用縫合糸として利用できる利点がある。しかし、機械的強度が低い上に、生体内における分解速度が遅すぎるため、必要以上に生体内に長く存在するので好ましくない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を克服し、優れた機械的強度及び柔軟性を有し、且つ適度の加水分解性を有する、外科用モノフィラメント縫合糸等の資材として適する生体吸収性重合体及びその製造方法、並びに該生体吸収性重合体から得られる医療用成形物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を重ねた結果、意外にも、予め末端に水酸基を有するポリ乳酸を合成して単離し、そのポリ乳酸の存在下、先ずε−カプロラクトンを開環重合せしめ、次いでグリコリドを反応系に添加して開環重合することにより、上記目的を達成し得る生体吸収性共重合体が得られ、且つ該生体吸収性共重合体がモノフィラメント状縫合糸の資材として適することを見出し、本発明に到った。
【0013】
すなわち、本発明は、末端に水酸基を有し、かつ2000以上500,000以下の重量平均分子量を有するポリ乳酸100重量部の存在下、まずε−カプロラクトン20〜1200重量部を開環重合し、次いで、該ε−カプロラクトンの開環重合の途中又は完了後にグリコリド15〜1200重量部を添加して開環重合することにより得られる、ポリ乳酸セグメント、ポリ(ε−カプロラクトン)セグメント及びポリグリコール酸セグメントからなり、重量平均分子量10,000〜1,000,000である3元ブロック共重合体である。
本発明の3元ブロック共重合体の分子量は10,000〜1,000,000である。3元ブロック共重合体の機械的強度、加水分解速度、生産性、加工性等を考慮すると、さらに好ましい分子量範囲は、50,000〜400,000である。
【0014】
本発明により提供される3元ブロック共重合体の一つは、下記式(1)(化2)で表される構造を有する共重合体である。
【化2】
(式中、x,y及びzは、正の数を表し、x:y:z=100:a:bであり、aは13〜810であり、bは20〜1593である。また、Pは水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基若しくはカルボシキアルキレン基であり、Qは水素原子又は1価若しくは多価の金属原子である)
【0015】
また、本発明の他の発明は、上記3元ブロック共重合体から成形された生体吸収性医療用成形物である。本発明の生体吸収性医療用成形物の好ましい態様として、モノフィラメント状縫合糸を挙げることができる。
【0016】
さらに、本発明の他の発明は、末端に水酸基を有し、かつ2000以上500,000以下の重量平均分子量を有するポリ乳酸100重量部の存在下、まずε−カプロラクトン20〜1200重量部を開環重合し、次いで、該ε−カプロラクトンの開環重合の途中又は完了後にグリコリド15〜1200重量部を添加して開環重合することからなり、ポリ乳酸セグメント、ポリ(ε−カプロラクトン)セグメント及びポリグリコール酸セグメントからなる、重量平均分子量50,000〜1,000,000である3元ブロック共重合体の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本発明におけるポリ乳酸、ε−ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸及び共重合体等の分子量(重量平均分子量、Mw)は、後述する実施例に記載した方法により測定した値である。
【0018】
本発明の生体吸収性重合体は、予め特定の分子量を有するポリ乳酸を合成して単離し、該ポリ乳酸とε−カプロラクトン(以降単にカプロラクトンという)とを混合し、そのポリ乳酸の存在下で、先ず、所定量のカプロラクトンを開環重合し、次いで、所定量のグリコリドを逐次的に反応系に添加して、開環重合することにより製造される。
【0019】
本発明に使用するポリ乳酸の分子量は、得られる共重合体の機械的強度、加水分解性等に影響を及ぼす。すなわち、ポリ乳酸の分子量が低過ぎると、例えば得られる共重合体の機械的強度が低くなり、かつ加水分解速度が大きくなる。
また、逆にポリ乳酸の分子量が高すぎると、ポリ乳酸の溶融粘度が高くなりすぎ、第1段のカプロラクトンの重合において、ポリ乳酸とカプロラクトンとが均一に分散混合されにくくなる。このことはすなわち、カプロラクトンの付加しないポリ乳酸やポリ(ε−カプロラクトン)(以降単にポリカプロラクトンという)単独重合体の生成が多くなり、所望のABC型ブロック共重合体が得られにくくなるため、希望する強度、柔軟性、分解速度といった諸物性のバランスがとりにくくなり易い。かかる観点から、使用するポリ乳酸の分子量は好ましくはおよそ2000以上500,000以下であり、さらに好ましくは5,000以上300,000以下、さらに好ましくは10,000以上150,000以下である。
【0020】
上記ポリ乳酸は、乳酸の脱水重縮合で製造されたものでもよいし、また、ラクチドの開環重合により製造されたものでもよい。脱水重縮合に用いる乳酸は、D−乳酸であってもよいし、またL−乳酸であってもよい。例えばL−乳酸のみを用いて、脱水重縮合により製造されたポリ乳酸は、重合反応途中のラセミ化により、通常L−乳酸単位を80〜99.9重量%、D−乳酸単位を0.1〜20重量%程度含有する。
【0021】
また、ラクチドには、L−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸が環状二量化したメソラクチド、及びL−ラクチドとD−ラクチドのラセミ混合物であるDL−ラクチドがあるが、本発明ではこれらのいずれのラクチドを開環重合して得られたポリ乳酸も使用できる。
ポリ乳酸のL−乳酸単位とD−乳酸単位の含有比は得られる共重合体の結晶化度に影響を及ぼす。引張強度等の機械的特性を考慮すると、L−乳酸単位を90〜99.9重量%、D−乳酸単位を0.1〜10重重量%含むものが好ましく使用される。
【0022】
本発明で使用するポリ乳酸は、末端に水酸基を有するポリ乳酸である。片末端に水酸基を有するポリ乳酸は、上記のラクチドの開環重合において、水、アルコール類、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基含有化合物を開始剤(連鎖調節剤)として用いて重合を行うことにより調製することができる。また、上記の乳酸の脱水重縮合法によっても調製することができる。また、両末端に水酸基をもつポリ乳酸は、例えばエチレングリコール等のジヒドロキシ化合物を開始剤に用いてラクチドの開環重合を行うことにより調製することができる。
【0023】
上記方法により合成したポリ乳酸は、再沈澱法等の公知の方法を用いて合成反応系から単離することが好ましい。さらに、単離操作にともない、ラクチドや乳酸等の未反応モノマーを除去することが好ましい。好ましい未反応モノマーの残存量は、得られるポリ乳酸に対して10重量%以下である。さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。再沈澱法等の単離操作のみでは、未反応モノマーの除去が不十分である場合には、再沈澱精製、溶媒抽出、加熱減圧等の操作により、未反応モノマー量を低減することが好ましい。
【0024】
本発明で使用するポリ乳酸は、一般の合成高分子がそうであるように、通常分子量に分布がある。分子量分布は、一般に重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)で表される。例えば、上記脱水重縮合法で製造されたポリ乳酸は、分子量分布が比較的広く、Mw/Mnが2〜6程度である。また、例えばラクチドの開環重合法で得られるポリ乳酸は、Mw/Mnが1.2〜4程度である。本発明の製造方法では、分子量分布が狭いポリ乳酸を用いても良いが、生成する共重合体の機械的性質(強度、柔軟性等)や生体内での分解速度等の観点から、ポリ乳酸の分子量分布は中程度のものがよく、重量平均分子量と数平均分子量との比の値が、2以上6未満であるものがよい。
【0025】
また、本発明の共重合体の製造方法において用いるポリ乳酸は、末端に水酸基を有し、かつ2000以上500,000以下の重量平均分子量を有するポリ乳酸であればよく、枝分かれ状、櫛状、スターポリマー状、デンドリマー状の何れの構造を有していても良い。
【0026】
原料として使用するポリ乳酸の形態は、ポリ乳酸とカプロラクトンとの分散混合の容易性を考慮すると、ペレット状又は粉体状であることが好ましい。特に好ましくは粉体状である。
【0027】
本発明に使用するポリ乳酸は、実質的にポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸単位以外の他の構造単位が含まれていてもよい。含まれ得る構造単位には特に制限はないが、ヒドロキシカプロン酸単位、グリコール酸単位、ヒドロキシブチレート単位、ヒドロキシバレレート単位等のヒドロキシカルボン酸単位、ジオール単位、ジカルボン酸単位等が例示できる。その量は含まれる構造単位の種類にもよるが、実質的にポリ乳酸特有の性質を損なわない程度であることを考慮すると、およそ20モル%未満である。
【0028】
使用するポリ乳酸中及びカプロラクトン中に含まれる水分量の管理は重要である。なぜならば、カプロラクトンの開環重合の段階において、これら水分の存在によってカプロラクトンの単独重合体が生成しやすくなり、好ましくない物性の変化をもたらすからである。水分含有量が0.1〜200ppmであることが好ましい。カプロラクトンは、例えば、モレキュラーシーブス等を用いて乾燥し、さらに蒸留する等して水分を除去するとよい。ポリ乳酸は例えば室温ないし120℃程度の温度にて減圧乾燥することにより水分を除去するとよい。
また、使用するグリコリドの水分含有量は、得られる共重合体の分子量に影響を及ぼすので、水分含有量が0.1〜200ppmであることが好ましい。グリコリドは室温〜50℃程度において減圧乾燥したり、グリコリドを溶解しない親水性非アルコール性有機溶剤中でスラッジングする等して水分を除去するとよい。
【0029】
さらに、ラクチド、カプロラクトン、グリコリド及びその他のラクトンには、通常、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸、乳酸等の遊離のヒドロキシカルボン酸が含まれる。遊離のヒドロキシカルボン酸は得られる共重合体の分子量に影響を及ぼすので、その含有量を可能な限り低減し、10〜500ppm程度の範囲とすることが好ましい。より好ましくは10〜200ppmである。
【0030】
本発明の生体吸収性重合体は、上記のポリ乳酸100重量部の存在下で、先ず、カプロラクトン20〜1200重量部を開環重合し、次いで、グリコリド15〜1200重量部を逐次的に反応系に添加して開環重合することによって製造することができる。
この3成分の使用割合は、生成共重合体の繰り返し構成単位のモル比に換算すると、乳酸単位100モル部に対して、ヒドロキシカプロン酸単位13〜810モル部、グリコール酸単位20〜1593モル部である。
【0031】
カプロラクトンの使用量は、特に、得られる共重合体の柔軟性に影響を及ぼす。カプロラクトンの使用量が多くなると得られる共重合体の柔軟性が向上する。ポリ乳酸及びグリコリドの使用量は、特に、得られる共重合体の機械的強度に影響を及ぼす。ポリ乳酸及びグリコリドの使用量が少ないと機械的強度が低下し、逆に多いと機械的強度が向上する傾向を示す。
【0032】
また、ポリ乳酸、カプロラクトン、グリコリドの使用量は、得られる共重合体の加水分解速度に影響を及ぼす。ポリ乳酸、カプロラクトンの使用量が多すぎると加水分解が遅くなる傾向を示し、グリコリドの使用量が多い場合には加水分解が速すぎる傾向を示す。
かかる観点から、ポリ乳酸、カプロラクトン及びグリコリドをそれぞれ上記の如き割合で用い、且つ、上記方法及び順序で反応系内に添加することにより、機械的強度、柔軟性及び加水分解性等が適度にバランスした生体吸収性共重合体が得られる。
【0033】
さらに生体吸収性モノフィラメント縫合糸に適する生体吸収性重合体として、より好適な引張強度、柔軟性及び加水分解性を兼ね備えるために、ポリ乳酸、カプロラクトン、グリコリドの使用割合は、モノフィラメントの適度な柔軟性の発揮のために、カプロラクトンの使用量を、全体(ポリ乳酸量+カプロラクトン量+グリコリド量)の15%以上にすること及びモノフィラメントの加水分解速度を適度なものとするために、使用するポリ乳酸とカプロラクトンの合計量を全体の30%以上、90%以下とすることがより好ましい。
【0034】
本発明においては、上記3成分の原料の他、共重合用単量体として他のラクトンをカプロラクトンやグリコリドとともに併用してもよい。他のラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、p−ジオキサノン、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、トリメチレンカーボネート等が挙げられる。本発明の目的を考慮すると、これらの他のラクトンの使用量はポリ乳酸100重量部に対して10重量部以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の製造法において、強度、柔軟性、分解速度がバランスされた共重合体を得るためには、第2段階のグリコリドの添加時には、第1段階のカプロラクトンが未反応モノマーとして残存している量が、グリコリドに対して少ないことが好ましい。好ましくは残存カプロラクトン量は、第2段階で添加するグリコリド量に対して10重量%以下であることが好ましい。第2段階でのグリコリド添加直前の反応系中の未反応カプロラクトンを少なくする方法には例えば、▲1▼第1段階のカプロラクトンの重合を適切且つ十分な反応条件で行うことにより、カプロラクトンの転化率を高める方法、▲2▼第1段階の重合反応の後半から、あるいは重合反応の終了後の第2段階の重合反応の直前において、反応系を減圧条件下に加熱することにより、未反応カプロラクトンを除去する方法等が挙げられる。上記▲1▼の方法では、触媒量、反応温度、反応時間を適宜調節することにより、転化率を99%程度にまで高めることが可能である。本発明の製造方法においては、好ましい機械的強度、分解速度等の物性を示す共重合体を得るためには、第1段階のカプロラクトンの転化率を少なくとも70%以上に高めることが好ましい。好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0036】
グリコリドの反応系への添加方法は特に制限されない。しかしながら、ポリ乳酸の存在下でカプロラクトンを重合させて得られる溶融物は高粘度であり、一方、添加したグリコリドは反応系内で低粘度の溶融液となるため、一時に大量のグリコリドを系内に添加すると、両者は良好に混合されず、反応が不均一になりやすい。このことは、共重合体中のポリグリコール酸セグメントの付加を不均一にし、好ましい物性の発現が期待できなくなる。したがって好ましいグリコリドの添加方法は、1分間あたりのグリコリド添加量が、ポリ乳酸とカプロラクトンとの重量の合計の20%を超えない量となるように、所定量のグリコリドを少量ずつ連続的にあるいは間欠的に添加する方法である。
【0037】
グリコリドの転化率は、得られる共重合体の機械的強度に影響する。そのため、グリコリドの転化率が95重量%以上となるまで開環重合することが好ましい。
【0038】
ポリ乳酸、カプロラクトン及びグリコリドの使用割合、並びにこれら3成分の反応系への添加方法及びその順序は、得られる共重合体の機械的強度、柔軟性、加水分解性等に影響を及ぼす。得られる共重合体に優れた機械的強度、柔軟性等を付与し、且つ適度の加水分解性を付与するためには、上記方法と順序に従ってそれぞれを反応系に添加することが重要である。
【0039】
ポリ乳酸の存在下で、カプロラクトン及びグリコリドを開環重合する方法として、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられる。しかし、有機溶媒、懸濁安定剤等の混入防止を考慮すると、溶融状態で実施する塊状重合法が好ましい。カプロラクトン、グリコリドの開環重合は、好ましくは130℃以上、270℃未満の範囲で行うことができる。特にカプロラクトンの重合温度は、共存するポリ乳酸が溶融する温度以上であることが好ましい。ポリ乳酸が完全に溶融しない温度では、カプロラクトンの重合がポリ乳酸の末端水酸基から開始しないことが多くなり、カプロラクトン単独重合体の副生が多くなり好ましくない。一方、過度に高温で重合を行うと、生成重合体の分解が起こるため好ましくない。かかる点を考慮すると、カプロラクトンの好ましい重合温度範囲は、およそ170〜250℃程度である。また、同様に好ましいグリコリドの重合温度範囲は、およそ150〜250℃程度である。通常、窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0040】
開環重合時間には特に制限はないが、カプロラクトンの開環重合はカプロラクトンの転化率が少なくとも70重量%に達するまでグリコリドを添加することなしに開環重合することが重要である。上記温度範囲であれば、かかる転化率に到達する時間は、通常、0.2〜10時間程度である。また、グリコリドの開環重合はグリコリドの転化率が95重量%以上になるまで実施することが好ましい。グリコリドは、好ましくは0.1〜2時間、より好ましくは0.1〜1時間かけて添加することが好ましい。かくして、グリコリドの転化率は95重量%以上に到達する。尚、グリコリドを反応系に添加するためには、該グリコリドを100〜150℃に加熱して溶融状態で扱うことが好ましい。
【0041】
カプロラクトン及びグリコリドの共重合体への転化率は、例えば、反応混合物をヘキサフルオロ−2−プロパノールに溶解し、残存するモノマー類をガスクロマトグラフィーを用いて定量して算出される。
【0042】
いずれの開環重合も短時間で終了させ、高分子量の共重合体を得るためには重合触媒を用いることが好ましい。重合触媒としては、例えば、オクタン酸第一錫、四塩化錫、塩化亜鉛、四塩化チタン、塩化鉄、三フッ化ホウ素エーテル錯体、塩化アルミニウム、三フッ化アンチモン、酸化鉛等の主として多価金属を含む化合物が挙げられ、中でも錫化合物又は亜鉛化合物が好ましく使用される。オクタン酸第一錫が特に好ましい。重合触媒の使用量は、仕込んだ原料の総重量に対し、0.001〜0.03重量%程度であることが好ましい。
【0043】
開環重合で得られた共重合体は、溶融状態のまま減圧して、又は、冷却、粉砕した後、減圧下で加熱することにより未反応モノマーを除去する。溶融状態のまま減圧して未反応モノマーを除去する場合、200〜240℃において、0.2〜1時間かけて最終的に13,300Pa以下の圧力において減圧、脱気し、その状態を0.3〜2時間維持する方法が挙げられる。130Pa程度まで減圧すること好ましい。
【0044】
また、共重合体を冷却、粉砕した後、減圧下で加熱して、未反応モノマーを除去する場合、共重合体の形状は粉末、ペレット状等のできるだけ細かい形状とすることが好ましい。40〜130℃において、13,300Pa以下の圧力において減圧、脱気し、0.5〜72時間減圧、脱気が維持され続けるのがよい。130Pa程度まで減圧すること好ましい。いずれの方法においても、攪拌下であっても非攪拌下であってもよい。
【0045】
本発明の3元ブロック共重合体の製造方法は、予め末端に水酸基を有するポリ乳酸を合成して単離し、該ポリ乳酸の存在下でカプロラクトンを開環重合させることに一つの特徴がある。このことは、強度、柔軟性、加水分解性を適度に兼ね備えた3元ブロック共重合体の製造方法として重要な意味をもつ。即ち、所望あるいは既知の構造(分子量、分子量分布、光学活性等)を有するポリ乳酸を予め合成したのち単離し、該ポリ乳酸を所定量使用して3元ブロック共重合体を製造する方法であるため、機械的強度及び加水分解性に大きく影響するポリ乳酸セグメントの構造がよく規定された(tailor−made )ブロック共重合体を製造することができる。
【0046】
本発明の3元ブロック共重合体の製造法は、他の製造方法、例えば、初めにラクチドを開環重合してポリ乳酸を生成させ、次いで該反応系から、ポリ乳酸を単離することなしに、該反応系へカプロラクトンを添加して共重合体を生成させ、さらにそこへグリコリドを添加して開環重合する方法(以降、連続3段重合法と呼ぶ)に比べて以下の点で優れている。
【0047】
連続3段重合法では、2段目のカプロラクトンの添加するときの温度を、1段目で生成しているポリ乳酸の溶融状態を保持するために、少なくとも200℃以上に保つ必要がある。この場合、本発明者らの知見によれば、200℃以上の温度では、ポリ乳酸とラクチドとの平衡(ポリマー←→モノマー)により、およそ10%以上のラクチドモノマーが混在する。第2段目のカプロラクトンの重合の際にラクチドモノマーが混在すると、3元ブロック共重合体の第2セグメントが乳酸単位とカプロラクトン単位とが混在するランダム共重合体セグメントとなってしまう。このことは、例えば、機械的強度の低下や室温でのべたつき等の物性の低下につながるため、好ましくない。
【0048】
また、連続3段重合法では、溶融している高温高粘度のポリ乳酸に、室温で低粘度液体のカプロラクトンを添加するため、両者の混合分散が不均一になり易く、ポリ乳酸末端からのポリカプロラクトン)の生長が良好に進行せず、カプロラクトン単独重合体の混入が多くなるため、物性の低下を招き好ましくない。
【0049】
本発明の製造方法によれば、まず末端に水酸基を有するポリ乳酸の存在下でカプロラクトンの開環重合を行うことにより、ポリ乳酸の末端水酸基からポリカプロラクトンのセグメントが生長し、ポリ乳酸−ポリカプロラクトンAB型ブロック共重合体が生成する。次いでそこへグリコリドを逐次的に添加して開環重合させることにより、ポリカプロラクトン鎖の末端水酸基からグリコリドの重合体鎖(ポリグリコール酸セグメント)が生長する。従って、例えば片末端に水酸基を有するポリ乳酸を用いた場合には、ポリ乳酸(A)−ポリカプロラクトン(B)−ポリグリコール酸(C)のABC型3元ブロック共重合体が生成する。また、例えば両末端に水酸基を有するポリ乳酸を用いることにより、CBABC型3元ブロック共重合体が生成する。
【0050】
得られる生体吸収性重合体の分子量は、機械的強度、加水分解性等に関係する。そのため、本発明の生体吸収性重合体の分子量は50,000〜1,000,000程度であることが好ましい。手術用縫合糸、骨補強材等として使用するときは、通常、分子量が50,000〜1,000,000程度である。好ましくは50,000〜400,000である。
【0051】
かくして、本発明により提供される好適な生体吸収性重合体の一つは、乳酸単位100モル部に対して、ヒドロキシカプロン酸単位13〜810モル部及びグリコール酸単位20〜1593モル部を含む、ポリ乳酸セグメント(A)、ポリカプロラクトンセグメント(B)、ポリグリコール酸セグメント(C)が、式(1)(化3)で表されるA−B−C型あるいはC−B−A−B−C型に結合した、分子量が50,000〜1,000,000の3元ブロック共重合体である。
【化3】
【0052】
本発明の製造方法により生成する重合体中には、上記3元ブロック共重合体の他、少量のカプロラクトン単独重合体、グリコール酸単独重合体、ポリカプロラクトン−ポリグリコール酸(BC型)ブロック共重合体、及び、さらに少量のポリ乳酸、ポリ乳酸−ポリカプロラクトン(AB型又はBAB型)ブロック共重合体、ポリ乳酸−ポリグリコール酸(AC型又はCAC型)ブロック共重合体等が混在していてもよい。
【0053】
これらの副生するポリマーの量は、原料であるポリ乳酸、カプロラクトン、グリコリド中の水分やヒドロキシカルボン酸等の不純物の量、反応第1段階でのポリ乳酸とカプロラクトンとの混合の均一性、第2段階でのグリコリド添加時のポリマーとグリコリドとの混合の均一性等によって変化する。
また、副生ポリマーの量は、例えば、3元ブロック共重合体からソックスレー抽出等により副生ポリマーを溶解抽出すること、3元ブロック共重合体を良溶媒に溶解し、副生ポリマーを溶解し3元ブロック共重合体を溶解しない溶媒を添加して、3元ブロック共重合体のみを再沈澱させること等の方法により知ることができる。
【0054】
上記の如くして製造された本発明の生体吸収性重合体は、公知の方法により医療用成形物に成形加工される。医療用成形物として、モノフィラメント状縫合糸、骨補強用板、外科用網状体、徐放性薬剤等が挙げられる。
【0055】
モノフィラメント状縫合糸の製造方法は、特に制限はなく公知の方法が適用できる。例えば、本発明の生体吸収性重合体を、紡糸金型が装着された押出機等を用いて、混練、溶融して、紡糸口金を通してモノフィラメント状繊維に成形する。次いで、繊維を延伸して配向させ、さらに配向された繊維をアニールし、さらに熱処理を施す方法が挙げられる。
【0056】
モノフィラメントの成形条件として、紡糸温度は、共重合体の融点以上、分解温度未満であればよい。通常、好適には120〜250℃である。延伸温度は、フィラメントのガラス転移温度を基準として選定されるが、通常、好適には15〜80℃程度である。より好ましくは25〜70℃である。延伸倍率は、フィラメントの長さ方向に3〜20倍が好ましい。さらに好ましくは3〜10倍である。延伸されたフィラメントは、引張強度、寸法安定性、加水分解性等の特性を均一なものとするためにアニール及び熱処理が施されることが好ましい。アニールは0.5〜10%の緩和下、又は緊張下で好適には40〜130℃において、0.01秒〜30秒間程度実施することが好ましい。
【0057】
熱処理はアニール後、40〜150℃、130〜100,000Paの減圧下において張力下で、1〜72時間実施することが好ましい。熱処理のさらに好ましい温度は50〜125℃である。また、好ましい圧力は130〜16,000Pa、さらに好ましくは130〜8,000Paである。
本発明のモノフィラメント状縫合糸の太さには特に制限はないが、通常、直径が0.005〜1mmである。好ましくは0.02〜0.8mmである。本発明のモノフィラメント状縫合糸は、必要に応じて、少なくとも一方の端に縫合用針を取り付けることが好ましい。
【0058】
本発明の好適な具体化において、本発明の外科手術用モノフィラメント状縫合糸は、少なくとも200MPaの直線的引張強度、少なくとも170MPaの結紮引張強度を有する。ヤング率は、2.1GPa以下である。加水分解性、すなわち、生体内における直線的引張強度の残率(元の引張強度に対する割合)は、後述する条件下において、6日間経過後の値が10〜90%である。好ましい態様においては20〜80%である。さらに好ましい態様においては30〜70%である。また、本発明のモノフィラメント状縫合糸は結紮安定性が良好で、一度作った結紮の結び目が緩くなることがない。これらの特性の評価、測定方法は後述の実施例において詳述する。
【0059】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。尚、実施例に示したポリ乳酸及び共重合体等の分子量、ε−カプロラクトン、グリコリド、及びラクチドの転化率、共重合体組成、共重合体融点、直線的引張強度、ヤング率、加水分解後の直線的引張強度の残率、結紮安定性は下記方法により測定した。
【0060】
(1)ポリ乳酸及び3元ブロック共重合体等の分子量
ポリ乳酸はクロロホルム、それ以外の重合体はヘキサフルオロ−2−プロパノール(以下、HFPという)に溶解して濃度が0.2重量%の溶液を調製し、該溶液をゲルパーミエーションクロマトクラフィー(昭和電工(株)製、形式:GPC−SYSTEM21、以下、GPCという)を用いて測定した。ポリ乳酸はポリスチレン、それ以外の重合体はポリメチルメタクリレートを標準物質として重量平均分子量(Mw)を算出する。
【0061】
(2)ε−カプロラクトン、グリコリド、及びラクチドの転化率
生成した重合体をHFPに溶解し、キャピラリーガスクロマトグラフィによりポリマー中のε−カプロラクトン、グリコリド、及びラクチドの含有量(残存モノマー量)を測定することにより、算出する。
【0062】
(3)共重合体組成(重量部)
核磁気共鳴装置(日本電子(株)製、形式:FX−90Q)を用いて、溶媒としてHFPと重クロロホルムの混合溶媒(容積混合比:HFP:CDCl3=2:1)を使用し、1H核について1〜9ppmの範囲で測定し、乳酸に基づくメチル基(5.2ppm)、ヒドロキシカプロン酸に基づくメチレン基(2.4ppm)、グリコール酸に基づくメチレン基(4.8ppm)の各共鳴強度から、試料中の各組成比(重量部)を求める。以下、H−NMR分析という。
【0063】
(4)共重合体融点(℃)
示差走査熱量計〔(株)RIGAKU製、型式:DSC−8230〕を用いて、毎分10℃の加熱割合で作動する示差走査熱量計のピークによって示される融点を測定する。
【0064】
(5)直線的引張強度(MPa)、ヤング率(GPa)
JIS L−1069に規定される方法により、引張試験機のチャック幅40mm、引張速度100mm/minで測定する。直線的引張強度は、試料が破断するまでの最大荷重(N)を示す。ヤング率は、応力(荷重)−歪み曲線の初期直線的弾性領域の勾配から次式により算出する。
ヤング率=(tanθ×L・C・S)/(H×A)
〔式中、θ:応力(荷重)−歪み曲線の初期直線部と歪み軸(X軸)との角度(°)、L:チャック幅(mm)、C:チャート速度(mm/min)、S:応力軸1目盛り当たりの荷重(N/mm)、H:引張速度(mm/min)、A:試料断面積(mm2 )〕
【0065】
(6)加水分解後の直線的引張強度の残率(%)
pH7.27、温度50℃の燐酸塩緩衝溶液中に試料(モノフィラメント)を6日間浸漬し、乾燥した後、第(5)項に記載した方法により直線的引張強度を測定して、未浸漬時の値に対する百分率(%)で示す。
【0066】
(7)結紮安定性
試料(モノフィラメント)を直径20mmのガラス管に密着するように2回巻き付けて外科結びを施した後、温度23℃、相対湿度50%において所定期間放置し、その結び目の緩み具合の経時変化を目視にて観察する。ガラス管上の試料の結紮の結び目の緩み具合の程度により、試料の結紮安定性を評価する。評価基準は次の通りとする。
ランクA:結び目に緩みが無くガラス管に密着している状態。
ランクB:結び目に緩みがあるがガラス管に付着している状態。
ランクC:結び目の緩みが大きく、ガラス管から結び目が離れている状態。
【0067】
実施例1
機械的攪拌装置、及び減圧脱気装置を取り付け、加熱減圧乾燥した1Lの反応機に、粉末状で分子量が86,000であるポリ乳酸(以下、PLAという)100重量部、ε−カプロラクトン(以下、CLという)100重量部、及びオクタン酸第一錫をCLに対して0.015重量%となる量装入した。
反応機内を、30℃、130〜1,300Paにおいて約2時間減圧、脱気し、トルエン(オクタン酸第一錫の溶媒)を除去した。次いで、窒素を通気して約101,000Paにした。約5分間窒素を通気した後、窒素雰囲気のままで反応混合物を約20分間かけて220℃まで加熱し、2時間この温度を保持した。このとき、CLの共重合体への転化率は約98%であった。
【0068】
次いで、約110℃に加熱、溶融したグリコリド(以下、GLDという)100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加し、5分間激しく攪拌した。その後、攪拌は緩やかに行いながら反応温度を235℃まで上げ、その状態を約1時間保持した。GLDの共重合体への転化率は約99重量%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。得られた共重合体の組成、分子量、及び融点を上記方法により測定し、その結果を表1(表1)に示す。
【0069】
次に、得られた共重合体を、押出機を用いて、240℃において溶融押出し、モノフィラメントを成形した。得られたモノフィラメントを50℃において長さ方向に7.4倍に延伸した。その後緊張下で、60℃において数秒間アニールした後、さらに、減圧状態下110℃において、3時間熱処理を施し、太さが0.2mmのモノフィラメント状縫合糸を製造した。得られた縫合糸の直線的引張強度、ヤング率、加水分解後の強度残存率を上記方法により測定し、下記判定基準により判定した。結果を表2(表2)に示す。
【0070】
▲1▼直線的引張強度
A:400MPa以上
B:300MPa以上〜400MPa未満
C:250MPa以上〜300MPa未満
D:200MPa以上〜250MPa未満
F:200MPa未満
▲2▼ヤング率
A:1.3GPa以下
B:1.3GPa超〜2.1GPa以下
C:2.1GPa超〜3.0GPa以下
F:3.0GPa超
▲3▼加水分解後の強度残存率
A:30%以上〜70%以下
B:20%以上〜30%未満又は70%超〜80%以下
C:10%以上〜20%未満又は80%超〜90%以下
F:10%未満又は90%超
【0071】
実施例2〜9及び比較例1〜6
表1(表1)及び表3(表3)に示す分子量のPLAを表1(表1)及び表3(表3)に示す重量部使用し、且つ、CL及びGLDを表1(表1)及び表3(表3)に示す重量部使用した以外、実施例1と同様にして、共重合体を製造した。得られた共重合体の各特性値を実施例1と同様にして測定し、結果を表1(表1)及び表3(表3)に示す。また、紡糸温度、延伸温度、延伸倍率及びアニール温度を表2(表2)及び表4(表4)に示す条件とした以外、実施例1と同様にしてモノフィラメント状縫合糸を製造した。得られた縫合糸の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表2(表2)及び表4(表4)に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
比較例7
Mw86,000のPLA粉末100重量部の存在下で、先ずGLD100重量部を開環重合した(使用オクタン酸スズ量はGLDに対して0.015重量%)。重合は220℃で行ったが、反応機内のポリマー粘度が高くなりすぎ、攪拌が困難となった上、反応内温が235℃を超えたため、反応機の外温設定温度を235℃とした。1時間後、GLDの転化率は97重量%に到達した。CLを100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加したが、反応機内のポリマー溶融物とCLとがよく混ざり合わず、不均一のままであった。3時間後、ようやくほぼ均一の溶融物となったが濃褐色に着色した低粘度の溶融物であった。CLの転化率は89%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPLAの分子量、仕込み組成及び反応系への仕込みシーケンスを表5(表5)に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。得られた濃褐色の共重合体を紡糸することを試みたが、異様な臭気が発生し、低粘度の溶融液が押出機から排出されるのみで、フィラメントは得られなかった。
【0077】
比較例8
Mw150,000のPCLペレット100重量部の存在下で、先ずLTD100重量部を220℃で開環重合した(使用オクタン酸スズ量はLTDに対して0.015重量%)。1時間後、LTDの転化率は約90重量%に到達した。重合時間をさらに2時間延長したが、LTDの転化率は上昇しなかった。そこへ加熱、溶融したGLD100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加し、5分間激しく攪拌した。その後、攪拌は緩やかに行いながら反応温度を235℃まで上げ、その状態を約1時間保持した。GLDの共重合体への転化率は約99重量%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPCAの分子量、仕込み組成及び反応系への仕込みシーケンスを表5(表5)に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。紡糸温度、延伸温度、延伸倍率及びアニール温度を表6(表6)に示す条件とした以外、実施例1と同様にして太さが0.2mmのモノフィラメント状縫合糸を製造した。得られた縫合糸の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6(表6)に示す。
【0078】
比較例9
Mw150,000のPCLペレット100重量部の存在下で、先ずGLD100重量部を220℃で開環重合した(使用オクタン酸スズ量はLTDに対して0.015重量%)。重合は当初220℃で行ったが、反応機内のポリマー粘度が高くなりすぎ、攪拌が困難となった上、反応内温が235℃を超えたため、反応機の外温設定温度を235℃とした。1時間後、GLDの転化率は98重量%に到達した。LTD100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加したが、反応機内のポリマー溶融物とLTDとがよく混ざり合わず、不均一のままであった。2時間後、ようやくほぼ均一の溶融物となったが激しく濃褐色に着色した低粘度の溶融物であった。LTDの転化率は86%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPCLの分子量、仕込み組成及び反応系への仕込みシーケンスを表5(表5)に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。紡糸温度、延伸温度、延伸倍率及びアニール温度を表6(表6)に示す条件とした以外、実施例1と同様にして太さが0.2mmのモノフィラメント状縫合糸を製造した。得られた縫合糸の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6(表6)に示す。
【0079】
比較例10
Mw89,000のポリグリコール酸ペレット(以下、PGAという)100重量部の存在下で、先ずCL100重量部を開環重合を試みた(使用オクタン酸スズ量はCLに対して0.015重量%)。重合は当初220℃で行ったが、PGAが溶融せず、不均一の反応系であったため、反応温度を235℃とした。2時間後、反応系がわずかに増粘した。サンプリングしたところ、黄褐色のポリマーの所々に黒色のPGA粒が不均一に分散したものであった。CLの転化率は70%であった。
LTD100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加した。4時間後、LTDの転化率は86%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPGAの分子量、仕込み組成及び 反応系への仕込みシーケンスを5に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。得られた濃褐色の共重合体を紡糸することを試みたが、異様な臭気が発生し、低粘度の溶融液が押出機から排出されるのみで、フィラメントは得られなかった。
【0080】
比較例11
Mw89,000のPGA100重量部の存在下で、先ずLTD100重量部を開環重合を試みた(使用オクタン酸スズ量はLTDに対して0.015重量%)。重合は当初220℃で行ったが、PGAが溶融せず、不均一の反応系であったため、反応温度を235℃とした。2時間後、反応系が増粘しのでサンプリングしたところ、生成物は黄褐色のポリマーであった。LTDの転化率は85%であった。
CL100重量部を反応機内に約10分間かけて連続的に添加した。3時間後、CLの転化率は86%であった。反応機内を徐々に減圧にして、未反応残存モノマーを除去した。
使用したPGAの分子量、仕込み組成及び反応系への仕込みシーケンスを表5(表5)に示す。また、得られた共重合体組成等の特性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表5(表5)に示す。得られた濃褐色の共重合体を紡糸することを試みたが、異様な臭気が発生し、低粘度の溶融液が押出機から排出されるのみで、フィラメントは得られなかった。
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
<結紮安定性の評価>
実施例1〜9で得られたモノフィラメント状縫合糸について、結紮安定性を上記方法により評価したところ、何れのモノフィラメントも評価はAであり、3日間安定に結び目を保持した。
【0084】
【発明の効果】
本発明の生体吸収性重合体は、優れた機械的強度及び柔軟性を有する。そのため、該生体吸収性重合体から機械的強度及び柔軟性に優れたモノフィラメント状縫合糸等の医療用成形物を製造することができる。また、本発明の生体吸収性重合体から得られたモノフィラメント状縫合糸は、pHが7.27、温度が50℃の燐酸塩緩衝溶液中に6日間浸漬した後の引張強度の残率が10〜90%程度であり、適度の加水分解性を有する。しかも、優れた結紮安定性を有する。そのため、本発明の生体吸収性重合体から成形されたモノフィラメント状縫合糸は、特に、外科手術から抜糸までの期間が1週間から10日間程度である外科手術の縫合糸として特に有用である。かかる特性を有する生体吸収性重合体は、本発明の方法を採用することのみによって得られるものであり、医療用成形物の資材用重合体の製造方法として極めて有用な方法である。
Claims (13)
- 末端に水酸基を有し、かつ2000以上500,000以下の重量平均分子量を有するポリ乳酸100重量部の存在下、まずε−カプロラクトン20〜1200重量部を開環重合し、次いで、該ε−カプロラクトンの開環重合の途中又は完了後にグリコリド15〜1200重量部を添加して開環重合することにより得られる、ポリ乳酸セグメント、ポリ(ε−カプロラクトン)セグメント及びポリグリコール酸セグメントからなり、重量平均分子量が10,000〜1,000,000である3元ブロック共重合体。
- 重量平均分子量が10,000以上であるポリ乳酸100重量部に対し、ε−カプロラクトン20〜300重量部とグリコリド25〜1200重量部を使用する請求項1記載の3元ブロック共重合体。
- 重量平均分子量が50,000〜400,000である請求項1記載の3元ブロック共重合体。
- 使用するε−カプロラクトンの量が、ポリ乳酸、ε−カプロラクトン及びグリコリドの合量の15%以上であり、使用するポリ乳酸とε−カプロラクトンの合量が、ポリ乳酸、ε−カプロラクトン及びグリコリドの合量の30%以上、90%以下である請求項3記載の3元ブロック共重合体。
- 末端に水酸基を有し、かつ2000以上500,000以下の重量平均分子量を有するポリ乳酸100重量部の存在下、まずε−カプロラクトン20〜1200重量部を開環重合し、次いで、該ε−カプロラクトンの開環重合の途中又は完了後にグリコリド15〜1200重量部を添加して開環重合することからなり、ポリ乳酸セグメント、ポリ(ε−カプロラクトン)セグメント及びポリグリコール酸セグメントからなる、重量平均分子量10,000〜1,000,000である3元ブロック共重合体の製造方法。
- 重量平均分子量が10,000以上であるポリ乳酸100重量部に対し、ε−カプロラクトン20〜300重量部とグリコリド25〜1200重量部を使用する請求項6記載の3元ブロック共重合体の製造方法。
- 使用するε−カプロラクトンの量が、ポリ乳酸、ε−カプロラクトン及びグリコリドの合量の15%以上であり、使用するポリ乳酸とε−カプロラクトンの合量が、ポリ乳酸、ε−カプロラクトン及びグリコリドの合量の30%以上、90%以下である請求項6記載の3元ブロック共重合体の製造方法。
- ε−カプロラクトンの転化率が少なくとも70重量%に到達した時点でグリコリドの添加を開始する請求項8記載の3元ブロック共重合体の製造方法。
- 1分間あたりのグリコリド添加量が、使用するポリ乳酸とε−カプロラクトンとの重量の合計量の20%を超えない量となるように、グリコリドを連続的あるいは間欠的に添加する請求項9記載の3元ブロック共重合体の製造方法。
- グリコリドの開環重合を、グリコリドの転化率が少なくとも95重量%以上となるまで行う請求項10記載の3元ブロック共重合体の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の3元ブロック共重合体から作られた生体吸収性医療用組成物。
- 生体吸収性医療用成形物が、モノフィラメント状縫合糸である請求項12記載の生体吸収性医療用成形物。
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