JP3556985B2 - スピンドルモータ - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光・磁気ディスク駆動装置等の記録ディスクを回転駆動する為に好適な流体動圧軸受を用いたスピンドルモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
光・磁気ディスク等を回転駆動するスピンドルモータは、ディスク搭載方向、即ち軸方向にロータハブのがたつきが防止されると共に精度良く回転支持される必要がある。このため、ロータハブの軸受手段として従来のボールベアリングから、オイル等の流体潤滑剤を用いた動圧軸受手段が採用されている。この動圧軸受手段には、回転軸に対して半径方向に動圧支持するラジアル動圧軸受と回転軸方向に位置規制すると共に動圧支持するスラスト動圧軸受とから構成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような構造によるスピンドルモータにおいて、モータ内部には流体潤滑剤として、通常、オイルが注入されているが、流体動圧軸受の不良を起こす最大の原因は、このオイルがモータ外部へ漏れ出てしまうことにある。例えば、流体動圧軸受の組み立て時やモータ回転時に流体動圧軸受のオイルに空気が混入することがある。こうした場合、流体動圧軸受部位の温度上昇や、流体動圧軸受部位に対してモータ外部等が低圧になると、大幅に上記空気が膨張して、流体動圧軸受から外部へオイルが押し出されて、オイル漏れが発生する。また一方で、何等かの理由により、モータ外部から衝撃荷重や遠心力がモータに加わることがある。この場合も流体動圧軸受部で保持しきれなくなったオイルが飛散してオイル漏れを起こす原因となる。
【0004】
オイル漏れが発生すると、流体動圧軸受に保持されるオイル量が減少して、精度の良い安定した軸受支持が困難となり、しかも軸受寿命を著しく低下させる。加えて、モータ外部へ漏出したオイルがディスク収容室を汚染してディスクの読み書き障害を引き起こす要因となる。
【0005】
本発明は、従来技術に存した上記のような問題点に鑑み行われたものであって、その課題とするところは、モータ内外部の気圧差やモータ外部から加わる荷重等に起因した流体潤滑剤の漏出を、簡単な構成により解消できるスピンドルモータを提供することである。さらに本発明の別の課題は、流体潤滑剤の漏出防止により安定した高精度の回転支持が得られる信頼性の高いスピンドルモータを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明に係るスピンドルモータは、ハウジングと、ハウジングに固定された軸部材と、軸部材に対して相対的に回転自在であるロータハブと、軸部材とロータハブとの間に介在された流体潤滑剤を用いた動圧流体軸受手段と、を具備するスピンドルモータにおいて、軸部材には半径方向外方に突出するスラストプレートが設けられており、ロータハブは、軸部材に回転自在に支持されたスリーブと、スラストプレートを覆うスラストカバーとを含み、スリーブと軸部材との間に動圧流体軸受手段の一部を構成するラジアル軸受部が設けられ、スリーブの端部とスラストプレートとの間、及びスラストカバーとスラストプレートとの間に、夫々、動圧流体軸受手段の他を構成するスラスト軸受部が設けられており、スラストプレートの外周側には、スリーブ及びスラストカバーによって規定された環状空間が設けられ、スリーブ又はスラストカバーには、環状空間の圧力をモータ外部の圧力と実質上等しくさせるための通気孔が設けられ、環状空間には、軸方向に連通孔を有するコニカルシールの連通孔がスリーブ又はスラストカバーの通気孔に連通するように設けられ、コニカルシールの連通孔の開口端が環状空間のほぼ中央部に位置している。
【0007】
そして、通気孔の環状空間側の開口端周縁にはすり鉢状の座ぐりが設けられ、コニカルシールがその小径部分側を座ぐりに嵌合させて固定されていることが望ましい。更に、コニカルシールは少なくとも表面が撥油処理されていることが望ましい。。
【0008】
【作用】
本発明のスピンドルモータによれば、ロータハブを軸方向へ位置規制して動圧軸受支持する二つのスラスト軸受部、即ちスリーブの端部とスラストプレートとの間、及びスラストカバーとスラストプレートとの間には、それぞれ別々に流体潤滑剤が介在して充填されている。そしてこれらの流体潤滑剤は、スラストプレートの外周側に設けられた環状空間に連通している。しかも環状空間には、モータ内外部の圧力を実質上等しくする通気孔が設けられている。この通気孔により、モータ内外部の気圧差が解消される。即ち、流体潤滑剤に気泡等が含まれていても容易にこの間隙にて脱泡される。またモータの温度上昇等による気圧変化要素があっても、実質上気圧差を生じないから、流体潤滑剤が押し出されて漏出することが防止される。
【0009】
仮りに、モータ外部から何等かの理由により、衝撃荷重や遠心力等の作用力を受けて、スラストプレートの両端面に保持される流体潤滑剤が、環状空間内に飛散または漏出しても、環状空間にコニカルシールの連通孔が通気孔に連通するように設けられているので、流体潤滑剤はこのコニカルシールを乗り越えてモータ外部へ漏出することはなく、環状空間内に貯留される。そして貯留された流体潤滑剤は、元の保持部に容易に回収され、流体潤滑剤の枯渇を招くことがない。なお、連通孔がモータ内部へ連通している場合には、流体潤滑剤が通気孔から万一漏出しても、モータ内部に滞留することになり、モータ外部へ直接漏出する事故が未然に防止され、ディスク室内を汚染することがない。
【0010】
また、通気孔の環状空間側の開口端周縁に設けられたすり鉢状の座ぐりにコニカルシールの連通孔が連通するように嵌合させ固定することにより、コニカルシールの取付けが容易にでき、組立、作業性の向上が図れる。更にコニカルシールの表面に流体潤滑剤を撥油する撥油剤を塗布すれば、環状空間内に飛散した流体潤滑剤はコニカルシールの表面に付着することがその摩擦抵抗の低下により防止され、元の保持部へ回収され易くなる。
【0011】
【実施例】
本発明に従うスピンドルモータの実施例について、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、例えば磁気ディスクを駆動する本発明に従うスピンドルモータの実施例を示す断面図、図2は図1の環状空間部分の拡大断面図、図3は図1のフレキシブル回路基板部分の拡大断面図である。
【0012】
図1及び図2において、ハウジング1は直接または間接的に駆動装置のベース部材に取り付けられており、例えばアルミ合金により形成されている。ハウジング1の中央部には、環状に突出したボス部22が一体に形成されており、このボス部22には孔部23が穿設されている。そして孔部23には、シャフト2の一端部(下部)が嵌め込まれて固定されている。シャフト2は、例えば鉄基合金材等から形成されている。上記ハウジング1及びシャフト2により、本スピンドルモータの静止部材となす。
【0013】
ハウジング1のボス部22の上端部の外周側には、段溝60が形成され、この段溝60にステータ4が外嵌して固定されている。ステータ4は、電磁鋼板が複数枚積層されて形成されたステータコア18と、ステータコア18に巻回された(電機子)コイル17とから構成されている。ハウジング1の上面には、フレキシブル回路基板10が貼り付けられて固定されており、このフレキシブル回路基板10の端部はハウジング1の上面に形成された切込み93を通して、モータ外部へ導出される。コイル17から引き出されたコイル線61は、ハウジング1の底部14に穿設された孔部16を通して、その上部に位置付けられたフレキシブル回路基板10のランド部へ電気接続され、これにより電気的にモータ外部へ導出される。
【0014】
フレキシブル回路基板10は、図3に示すように、通常ベースフィルム、銅箔及びカバーフィルムの積層構造をなしているが、ランド部に対応する位置にはコイル線61の挿通孔が透設され、銅箔が挿通孔の内周面を通ってベースフィルム表面にまで形成され、コイル線61はフレキシブル回路基板10の下面のランド部における銅箔に孔部16からはんだ付けされる。コイル線61をフレキシブル回路基板10の下面のランドにはんだ付けする際に、はんだが、挿通孔の銅箔を通って上面にまわり込むことがある。また、洗浄後、フラックスや洗浄液中の残滓がランドのはんだ付けしない面に残り、ランドを汚すことがあった。
【0015】
これらのことを防止するために、本実施例では、ランド部における上面の銅箔や挿通孔内周面の銅箔に、撥油剤や撥水剤を塗布したり、フッ素化樹脂をコーティングしている。すると、はんだ付けする面から、はんだ付けしない面へはんだがまわり込もうとしても、はんだ付けしない面の表面張力が小さいため、はんだが弾かれて、はんだ付けしない面にはんだがまわり込まない。そのため、はんだがランド部の上面に高く盛られてしまう不具合を解消でき、モータ内部での絶縁不良、はんだのロータマグネット5とのスレをなくすことができる。また、水洗浄後も水、フラックス、はんだ残滓を弾くので、はんだ付けしない面がクリーンに保たれるため、モータ内部での絶縁不良、スレをなくすことができる。
【0016】
ハウジング1に固定されたシャフト2の他端部(上部)は、その軸心部に図示省略の孔部が穿設されている。孔部は、磁気ディスク駆動装置の上側蓋体にネジ止めされて固定される。そしてシャフト2の他端部(上部)側には、半径方向外向へ全周にわたり張り出して形成されたスラストプレート6が一体に形成されている。シャフト2とスラストプレート6とは同軸状に構成されている。またスラストプレート6の上下端面38、39は、シャフト2に対して実質上直角に形成されている。すなわち、上下端面38、39は実質上平行に形成されている。そして、スラストプレート6の外周部32の上下端には、全周にわたりテーパ状をなすテーパ部11,33が形成されている。
【0017】
そしてその上下端面38、39には、図示省略するが、周方向に所定の間隔で設けられた略V字状やヘリングボーン状、或いはダブルヘリカル状の溝による動圧グルーブが形成されている。また一方、シャフト2の略中央部における外周部24にも同様のヘリングボーン状等の溝による動圧グルーブ19,19が周方向に所定の間隔で設けられると共に、これらは上下方向に二列が整列して設けられている。
【0018】
次に、シャフト2に対して回転支持されるロータハブ3は、軸受支持されるスリーブ8、スラストカバー7、ハブ9そしてロータマグネット5から構成されている。スリーブ8は、例えば銅基合金等が用いられて形成されており、筒状の垂下部29と、この垂下部29よりも大径に形成されると共にこれと同軸状に設けられた筒状の周壁(大径周壁)48と、垂下部29と大径周壁48とを、連結固定した基部21(スリーブ8の端部)とから構成される。
【0019】
スラストカバー7は、略円盤状をなし、中央部にシャフト2の端部を挿通する孔部62が穿設されている。スラストカバー7は、その外周側においてスリーブ8に固定されている。すなわち、スラストカバー7における外周側の下端面が、スリーブ8の基部21へ載置され、またスラストカバー7の外周端部と、大径周壁48の上部内周壁とが当接されて保持される。そして大径周壁48の上面内周縁を軸側(内側)へ塑性変形加工することにより、スラストカバー7はスリーブ8に加締められてきつく固定される。その際、スラストカバー7の下端面並びにスリーブ8の垂下部29の上端面は、それぞれ僅かな隙間をもって、スラストプレート6の上下端面38、39と対向配置されており、このそれぞれの隙間には流体潤滑剤としてオイルが充填されている。
【0020】
スラストプレート6の外周端側には、これを包囲するように全周にわたって間隙(環状空間)73が形成されている。環状空間73は、スラストカバー7の下端面(スラストプレート外周側)と、スリーブ8の周壁48の上部内周壁と、スリーブ8の基部21の底面とにより環状に形成されている。そして、環状空間73に対応するスリーブ8の基部21には、軸方向へ貫通する通気孔20が穿設されており、通気孔20はモータ内部を経てモータ外部へ連通している。加えて、この通気孔20は、スラストカバー7の下端面とスラストプレート6、並びにスラストプレート6とスリーブ8の上端面とによる(後述する)動圧発生部にそれぞれ連通している。通気孔20は、シャフト2の軸芯を中心として、基部21の周方向に複数個が均等配置されており、本実施例では、三箇所、120度回転対称状に(図1において右側に表われている)設けられている。通気孔20はロータ3の回転動バランスを考慮して、複数個設ける場合は、周方向へ均等配置させることが望ましい。
【0021】
通気孔20の環状空間73側の開口端周縁には、図2に示すように、下方に向かって縮径しているすり鉢状の座ぐり90が設けられている。この座ぐり90にはコニカルシール91の小径側端部が嵌合固定されており、コニカルシール91の連通孔92が環状空間73の通気孔20と連通し、連通孔92の上面開口端が環状空間73のほぼ中央部に位置している。
【0022】
本実施例によれば、スラストカバー7の下端面とスラストプレート6の上端面、及びスラストプレート6の下端面とスリーブ8の垂下部29の上端面、によりスラスト動圧軸受手段が構成され、これにより、ロータハブ3を軸方向に位置規制すると共に、動圧軸受による軸方向の回転支持を行なう。なお、スラスト動圧軸受として、動圧グルーブがスラストプレート6に設けられたものに代えて、スラストカバー7及びスリーブ8(の垂下部29)側に設けられていてもよい。
【0023】
一方、スリーブ8の垂下部29の内周部と、シャフト2の外周部とは、僅かな隙間をもって軸方向に沿って対向配置されている。そして、この隙間には流体潤滑剤としてオイルが充填されている。これにより、ロータハブ3はシャフト2に対して、半径(ラジアル)方向に動圧軸受支持される。本実施例では、ラジアル動圧軸受として、動圧グルーブがシャフト2側に設けられているが、これとは逆に、スリーブ8側に設けられていてもよい。
【0024】
スリーブ8の大径周壁48の外周部にはアルミ合金等により形成されるハブ9が固定されており、このハブ9の内周部にロータマグネット5が環状に配設されている。ロータマグネット5は周方向へ所定の磁極数が着磁されている。なお、ロータマグネット5は、スリーブ8における大径周壁48の下端に当接して軸方向の高さ位置決めが行なわれており、ステータ4の高さ位置に対応してハブ9に固定されている。そして、フレキシブル回路基板10の導出端部に所要の信号が通電されると、ステータ4とロータマグネット5との電磁気的作用によって、ロータハブ3が回転駆動される。なお、図示省略の磁気ディスクは、ハブ9の外周部28に嵌め込まれて装着され、下方に形成された鍔部12にて受け止められ、そして既に公知のクランプ手段により固定される。
【0025】
上述の通り、本発明のスピンドルモータには、ラジアル及びスラスト動圧軸受支持されており、所定部位には流体潤滑剤としてのオイルが介在して充填されている。充填されたオイルがモータ外部へ漏れ出ることを防止するために、またこれに加えて、安定した軸受支持を維持させるために、本発明のスピンドルモータにおいては同様の図1及び図2を用いて、以下に説明する構成がなされている。これらの図において、まずラジアル動圧軸受として、一方(図の下側;モータ外側)について説明する。シャフト2の外周部24と、スリーブ8の垂下部29との間には、その下端側において、空隙が設けられている。この空隙は、シャフト2の外周部24と垂下部29の内周部とに、それぞれ全周にわたる凹部65とテーパ状の環状溝66が形成され、これらが半径方向に対向して配置されることにより形成される。凹部65の表面には、オイルを溌油する溌油剤が塗布されている。
【0026】
従って動圧グルーブ19におけるオイルが、モータ外方(図の下側方向)へ漏れ出ようとしても、シャフト2の外周部24と垂下部29の内周部との隙間が、環状溝66によりテーパ状に開口しているため、毛細管現象により確実に保持される。そしてさらに凹部65に溌油剤が塗布してあるため、表面張力により漏れでることがより一層防止される。
【0027】
スラスト動圧軸受においては、スラストプレート6を挟み、この上端面38とスラストカバー7の下端面、及びスラストプレート6の下端面39と垂下部29の上端面、のそれぞれの間隙(即ち動圧発生部をなす)にオイルが充填されている。特にスラスト動圧軸受の場合、モータの回転及び停止の動作に伴い、ロータハブ3の荷重により、それぞれの動圧軸受の間隙が変化する。しかも回転による動圧発生時と回転停止時とで、動圧発生部の中心部(動圧発生グルーブが設けられている)におけるオイルの保持量が変化する。このため、この動圧発生部において保持しきれないオイルは、スラストプレートの外周部32の上下端に設けられたテーパ部11,33と、それぞれ図の上下方向に対向する、スラストカバー下端面,スリーブ基部底面で形成されるテーパ状の環状溝52,54にて保持される。
【0028】
環状溝52,54はオイルの漏出方向(即ち環状空間73方向)に対して、軸方向(図の上下方向)間隙が順次大きくなるよう形成されている。このため、毛細管現象により保持されるオイルの量が所定の部位にて均衡するよう設けられている。すなわちオイルの量に対応して、連続的に間隙が変化しているため、オイルの移動に対して保持しえると共に、溝形状により所望のオイル量が保持される。そして、オイル量の変動、移動に対して円滑に移動させることができる。このため、オイルが環状空間73側、図2の右側へ漏出することが防止される。なお、これらシール部である環状溝52,54にて保持されるオイル量は、それぞれ動圧発生部に保持されるオイル量より多めのオイル量が保持されるように設定することが望ましい。
【0029】
スラストプレート6の上側に保持されるオイル、即ちスラストカバー下端面とスラストプレート上端面38との間に介在されるオイルは、モータの外部側である孔部62方向へ漏出する恐れがある。このため、スラストカバー7のシャフト2側(内周側)にはテーパ状の環状溝70が形成されている。環状溝70はオイルの漏出方向(孔部62側)に対して、(シャフト2の外周部24から)半径方向間隙が順次大きく形成されている。このため、オイルの漏出に伴う移動に際しても、確実にオイルを保持できるシール手段が得られる。また環状溝70は前述の環状溝66と同様にオイルの貯溜溝を兼ねている。本実施例では、環状溝70の漏出側(孔部62側)において、スラストカバー7に突出部76が全周にわたり設けられている。突出部76はシャフト2の外周部24に対して近接して配置されており、シャフト2とのラビリンスシール構造をなし、孔部62からの万一のオイル漏出に対して、二重に防止するものである。なお、この突出部76には、撥油剤が塗布されている。
【0030】
スラストプレート6の両端部に保持されたオイルが衝撃や遠心力等の理由により、環状溝52,54を越えて環状空間73内へ飛散・落下した場合、環状空間73の内面に付着して保持される。オイルは表面張力により、濡れ状に付着すると共に、連続した状態でこれらの内面に付着しやすい。このため、モータの回転始動や、姿勢変化等により、ほどなく、スラストプレート6側の動圧発生部(オイル保持部)側へオイルが容易に回収される。このため、オイルの枯渇が防止され、信頼性の確保と高精度の軸受支持が実現できる。なお、オイルの量を多めに充填しても、動圧発生部にて保持しきれないオイルが環状空間73にて保持される。
【0031】
環状空間73は通気孔20により、外気と連通している。このため、それぞれのオイル保持部である動圧発生部はモータ外気と実質上同一の圧力であり、気圧差が解消されている。従ってオイル中に気泡等が含まれていたり、モータの温度上昇等により、オイルが押し出されて移動するようなことが生じない。即ちオイル漏れが防止される。なおオイル中に含まれた気泡は環状空間73にて脱泡される。また環状空間73内には、コニカルシール91がその連通孔92を通気孔20に連通させて設けられているので、オイルはコニカルシール91を乗り越えてモータ外部側へ漏出することが防止される。コニカルシール91は、これを撥油剤に漬け、乾燥させることにより表面が撥油処理されているのでオイルが通気孔20に入り込むことが確実に防止される。特に環状空間73を規定する内面が、オイルに対して濡れ状となって保持されるため、撥油剤をコニカルシール91周辺に塗布することはオイル漏出防止の上で、より望ましい。特にコニカルシール91の撥油処理に際して、撥油剤に漬けて乾燥させるだけなので、撥油剤を塗布するよりも作業時間を短縮することができる。
【0032】
図に示すように、通気孔20はモータ内部側(ステータ4側)に連通し、ハブ9とハウジング1との間を通してモータ外部へ通気している。モータ内部からモータ外部への出口にあたる部位、即ち、ハブ9の鍔部12とハウジング1とは、半径方向に微小間隙をもって対向したラビリンスシール構造が形成されている。このため、この部位でも更にオイルの漏出が防止される。即ち通気孔20がモータ内部側にて連通しているため、万一通気孔20からオイルが漏出しても、オイルはラビリンスシール構造により、二重に漏出防止される。これにより、ディスク室内の清浄な空気を汚染することがない。
【0033】
通気孔20の内径は、可能な限り小さい方が望ましいが、加工上の容易性を考慮して、本実施例では通気孔20の内径は約0.3mm径に形成されている。またコニカルシール91の底面72からの高さは、可能な限り高い(長い)方が望ましいが、同様に本実施例では1乃至2mmに形成されている。
【0034】
以上、本発明のスピンドルモータの実施例について説明したが、本発明の主旨を逸脱しない範囲で設計変更乃至修正等自由である。即ち本実施例で示した種々の部分的な構成を組み合わせて用いることができる他、動圧軸受の動圧グルーブの形態や数量等、自由に選定することができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明のスピンドルモータは、上述の構成を有しているので、次の効果を奏する。即ち、ロータハブ3を軸方向へ位置規制して動圧軸受支持するスラストプレート6の上下端面38,39にはそれぞれ別々にオイルが介在して充填されている。これらはスラストプレートの外周部側において形成された環状空間73に連通している。そしてこの環状空間73には通気孔20が設けられ、通気孔20に連通するように連通孔92を有するコニカルシール91が設けられている。このため、モータ内外部の気圧差が解消され、オイルに気泡が含まれていたり、モータの温度上昇等によってオイルが押し出されて移動することがなく、気泡も脱泡され、従ってオイルの漏出が防止される。もし、オイルが環状空間73内に落下しても、コニカルシール91を乗り越えてオイルがモータ外部へ漏出することはなく、また、環状空間73内に滞留したオイルは容易に元の動圧発生部へ回収される。こうして、精度良く且つ安定した動圧軸受を有するスピンドルモータが得られる。
【0036】
また、コニカルシール91の少なくとも表面にオイルを撥油する撥油剤を塗布することにより、オイルの摩擦抵抗が低下し、動圧発生部へオイルを回収することがより容易にでき、オイルの枯渇を防ぎ、なお、一層の信頼性向上が図れるスピンドルモータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従うスピンドルモータの実施例を示す断面図である。
【図2】図1の環状空間部分の拡大断面図である。
【図3】図1のフレキシブル回路基板部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 シャフト
3 ロータハブ
4 ステータ
5 ロータマグネット
6 スラストプレート
7 スラストカバー
8 スリーブ
20 通気孔
73 環状空間
90 座ぐり
91 コニカルシール
92 連通孔
【産業上の利用分野】
本発明は、光・磁気ディスク駆動装置等の記録ディスクを回転駆動する為に好適な流体動圧軸受を用いたスピンドルモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
光・磁気ディスク等を回転駆動するスピンドルモータは、ディスク搭載方向、即ち軸方向にロータハブのがたつきが防止されると共に精度良く回転支持される必要がある。このため、ロータハブの軸受手段として従来のボールベアリングから、オイル等の流体潤滑剤を用いた動圧軸受手段が採用されている。この動圧軸受手段には、回転軸に対して半径方向に動圧支持するラジアル動圧軸受と回転軸方向に位置規制すると共に動圧支持するスラスト動圧軸受とから構成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような構造によるスピンドルモータにおいて、モータ内部には流体潤滑剤として、通常、オイルが注入されているが、流体動圧軸受の不良を起こす最大の原因は、このオイルがモータ外部へ漏れ出てしまうことにある。例えば、流体動圧軸受の組み立て時やモータ回転時に流体動圧軸受のオイルに空気が混入することがある。こうした場合、流体動圧軸受部位の温度上昇や、流体動圧軸受部位に対してモータ外部等が低圧になると、大幅に上記空気が膨張して、流体動圧軸受から外部へオイルが押し出されて、オイル漏れが発生する。また一方で、何等かの理由により、モータ外部から衝撃荷重や遠心力がモータに加わることがある。この場合も流体動圧軸受部で保持しきれなくなったオイルが飛散してオイル漏れを起こす原因となる。
【0004】
オイル漏れが発生すると、流体動圧軸受に保持されるオイル量が減少して、精度の良い安定した軸受支持が困難となり、しかも軸受寿命を著しく低下させる。加えて、モータ外部へ漏出したオイルがディスク収容室を汚染してディスクの読み書き障害を引き起こす要因となる。
【0005】
本発明は、従来技術に存した上記のような問題点に鑑み行われたものであって、その課題とするところは、モータ内外部の気圧差やモータ外部から加わる荷重等に起因した流体潤滑剤の漏出を、簡単な構成により解消できるスピンドルモータを提供することである。さらに本発明の別の課題は、流体潤滑剤の漏出防止により安定した高精度の回転支持が得られる信頼性の高いスピンドルモータを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明に係るスピンドルモータは、ハウジングと、ハウジングに固定された軸部材と、軸部材に対して相対的に回転自在であるロータハブと、軸部材とロータハブとの間に介在された流体潤滑剤を用いた動圧流体軸受手段と、を具備するスピンドルモータにおいて、軸部材には半径方向外方に突出するスラストプレートが設けられており、ロータハブは、軸部材に回転自在に支持されたスリーブと、スラストプレートを覆うスラストカバーとを含み、スリーブと軸部材との間に動圧流体軸受手段の一部を構成するラジアル軸受部が設けられ、スリーブの端部とスラストプレートとの間、及びスラストカバーとスラストプレートとの間に、夫々、動圧流体軸受手段の他を構成するスラスト軸受部が設けられており、スラストプレートの外周側には、スリーブ及びスラストカバーによって規定された環状空間が設けられ、スリーブ又はスラストカバーには、環状空間の圧力をモータ外部の圧力と実質上等しくさせるための通気孔が設けられ、環状空間には、軸方向に連通孔を有するコニカルシールの連通孔がスリーブ又はスラストカバーの通気孔に連通するように設けられ、コニカルシールの連通孔の開口端が環状空間のほぼ中央部に位置している。
【0007】
そして、通気孔の環状空間側の開口端周縁にはすり鉢状の座ぐりが設けられ、コニカルシールがその小径部分側を座ぐりに嵌合させて固定されていることが望ましい。更に、コニカルシールは少なくとも表面が撥油処理されていることが望ましい。。
【0008】
【作用】
本発明のスピンドルモータによれば、ロータハブを軸方向へ位置規制して動圧軸受支持する二つのスラスト軸受部、即ちスリーブの端部とスラストプレートとの間、及びスラストカバーとスラストプレートとの間には、それぞれ別々に流体潤滑剤が介在して充填されている。そしてこれらの流体潤滑剤は、スラストプレートの外周側に設けられた環状空間に連通している。しかも環状空間には、モータ内外部の圧力を実質上等しくする通気孔が設けられている。この通気孔により、モータ内外部の気圧差が解消される。即ち、流体潤滑剤に気泡等が含まれていても容易にこの間隙にて脱泡される。またモータの温度上昇等による気圧変化要素があっても、実質上気圧差を生じないから、流体潤滑剤が押し出されて漏出することが防止される。
【0009】
仮りに、モータ外部から何等かの理由により、衝撃荷重や遠心力等の作用力を受けて、スラストプレートの両端面に保持される流体潤滑剤が、環状空間内に飛散または漏出しても、環状空間にコニカルシールの連通孔が通気孔に連通するように設けられているので、流体潤滑剤はこのコニカルシールを乗り越えてモータ外部へ漏出することはなく、環状空間内に貯留される。そして貯留された流体潤滑剤は、元の保持部に容易に回収され、流体潤滑剤の枯渇を招くことがない。なお、連通孔がモータ内部へ連通している場合には、流体潤滑剤が通気孔から万一漏出しても、モータ内部に滞留することになり、モータ外部へ直接漏出する事故が未然に防止され、ディスク室内を汚染することがない。
【0010】
また、通気孔の環状空間側の開口端周縁に設けられたすり鉢状の座ぐりにコニカルシールの連通孔が連通するように嵌合させ固定することにより、コニカルシールの取付けが容易にでき、組立、作業性の向上が図れる。更にコニカルシールの表面に流体潤滑剤を撥油する撥油剤を塗布すれば、環状空間内に飛散した流体潤滑剤はコニカルシールの表面に付着することがその摩擦抵抗の低下により防止され、元の保持部へ回収され易くなる。
【0011】
【実施例】
本発明に従うスピンドルモータの実施例について、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、例えば磁気ディスクを駆動する本発明に従うスピンドルモータの実施例を示す断面図、図2は図1の環状空間部分の拡大断面図、図3は図1のフレキシブル回路基板部分の拡大断面図である。
【0012】
図1及び図2において、ハウジング1は直接または間接的に駆動装置のベース部材に取り付けられており、例えばアルミ合金により形成されている。ハウジング1の中央部には、環状に突出したボス部22が一体に形成されており、このボス部22には孔部23が穿設されている。そして孔部23には、シャフト2の一端部(下部)が嵌め込まれて固定されている。シャフト2は、例えば鉄基合金材等から形成されている。上記ハウジング1及びシャフト2により、本スピンドルモータの静止部材となす。
【0013】
ハウジング1のボス部22の上端部の外周側には、段溝60が形成され、この段溝60にステータ4が外嵌して固定されている。ステータ4は、電磁鋼板が複数枚積層されて形成されたステータコア18と、ステータコア18に巻回された(電機子)コイル17とから構成されている。ハウジング1の上面には、フレキシブル回路基板10が貼り付けられて固定されており、このフレキシブル回路基板10の端部はハウジング1の上面に形成された切込み93を通して、モータ外部へ導出される。コイル17から引き出されたコイル線61は、ハウジング1の底部14に穿設された孔部16を通して、その上部に位置付けられたフレキシブル回路基板10のランド部へ電気接続され、これにより電気的にモータ外部へ導出される。
【0014】
フレキシブル回路基板10は、図3に示すように、通常ベースフィルム、銅箔及びカバーフィルムの積層構造をなしているが、ランド部に対応する位置にはコイル線61の挿通孔が透設され、銅箔が挿通孔の内周面を通ってベースフィルム表面にまで形成され、コイル線61はフレキシブル回路基板10の下面のランド部における銅箔に孔部16からはんだ付けされる。コイル線61をフレキシブル回路基板10の下面のランドにはんだ付けする際に、はんだが、挿通孔の銅箔を通って上面にまわり込むことがある。また、洗浄後、フラックスや洗浄液中の残滓がランドのはんだ付けしない面に残り、ランドを汚すことがあった。
【0015】
これらのことを防止するために、本実施例では、ランド部における上面の銅箔や挿通孔内周面の銅箔に、撥油剤や撥水剤を塗布したり、フッ素化樹脂をコーティングしている。すると、はんだ付けする面から、はんだ付けしない面へはんだがまわり込もうとしても、はんだ付けしない面の表面張力が小さいため、はんだが弾かれて、はんだ付けしない面にはんだがまわり込まない。そのため、はんだがランド部の上面に高く盛られてしまう不具合を解消でき、モータ内部での絶縁不良、はんだのロータマグネット5とのスレをなくすことができる。また、水洗浄後も水、フラックス、はんだ残滓を弾くので、はんだ付けしない面がクリーンに保たれるため、モータ内部での絶縁不良、スレをなくすことができる。
【0016】
ハウジング1に固定されたシャフト2の他端部(上部)は、その軸心部に図示省略の孔部が穿設されている。孔部は、磁気ディスク駆動装置の上側蓋体にネジ止めされて固定される。そしてシャフト2の他端部(上部)側には、半径方向外向へ全周にわたり張り出して形成されたスラストプレート6が一体に形成されている。シャフト2とスラストプレート6とは同軸状に構成されている。またスラストプレート6の上下端面38、39は、シャフト2に対して実質上直角に形成されている。すなわち、上下端面38、39は実質上平行に形成されている。そして、スラストプレート6の外周部32の上下端には、全周にわたりテーパ状をなすテーパ部11,33が形成されている。
【0017】
そしてその上下端面38、39には、図示省略するが、周方向に所定の間隔で設けられた略V字状やヘリングボーン状、或いはダブルヘリカル状の溝による動圧グルーブが形成されている。また一方、シャフト2の略中央部における外周部24にも同様のヘリングボーン状等の溝による動圧グルーブ19,19が周方向に所定の間隔で設けられると共に、これらは上下方向に二列が整列して設けられている。
【0018】
次に、シャフト2に対して回転支持されるロータハブ3は、軸受支持されるスリーブ8、スラストカバー7、ハブ9そしてロータマグネット5から構成されている。スリーブ8は、例えば銅基合金等が用いられて形成されており、筒状の垂下部29と、この垂下部29よりも大径に形成されると共にこれと同軸状に設けられた筒状の周壁(大径周壁)48と、垂下部29と大径周壁48とを、連結固定した基部21(スリーブ8の端部)とから構成される。
【0019】
スラストカバー7は、略円盤状をなし、中央部にシャフト2の端部を挿通する孔部62が穿設されている。スラストカバー7は、その外周側においてスリーブ8に固定されている。すなわち、スラストカバー7における外周側の下端面が、スリーブ8の基部21へ載置され、またスラストカバー7の外周端部と、大径周壁48の上部内周壁とが当接されて保持される。そして大径周壁48の上面内周縁を軸側(内側)へ塑性変形加工することにより、スラストカバー7はスリーブ8に加締められてきつく固定される。その際、スラストカバー7の下端面並びにスリーブ8の垂下部29の上端面は、それぞれ僅かな隙間をもって、スラストプレート6の上下端面38、39と対向配置されており、このそれぞれの隙間には流体潤滑剤としてオイルが充填されている。
【0020】
スラストプレート6の外周端側には、これを包囲するように全周にわたって間隙(環状空間)73が形成されている。環状空間73は、スラストカバー7の下端面(スラストプレート外周側)と、スリーブ8の周壁48の上部内周壁と、スリーブ8の基部21の底面とにより環状に形成されている。そして、環状空間73に対応するスリーブ8の基部21には、軸方向へ貫通する通気孔20が穿設されており、通気孔20はモータ内部を経てモータ外部へ連通している。加えて、この通気孔20は、スラストカバー7の下端面とスラストプレート6、並びにスラストプレート6とスリーブ8の上端面とによる(後述する)動圧発生部にそれぞれ連通している。通気孔20は、シャフト2の軸芯を中心として、基部21の周方向に複数個が均等配置されており、本実施例では、三箇所、120度回転対称状に(図1において右側に表われている)設けられている。通気孔20はロータ3の回転動バランスを考慮して、複数個設ける場合は、周方向へ均等配置させることが望ましい。
【0021】
通気孔20の環状空間73側の開口端周縁には、図2に示すように、下方に向かって縮径しているすり鉢状の座ぐり90が設けられている。この座ぐり90にはコニカルシール91の小径側端部が嵌合固定されており、コニカルシール91の連通孔92が環状空間73の通気孔20と連通し、連通孔92の上面開口端が環状空間73のほぼ中央部に位置している。
【0022】
本実施例によれば、スラストカバー7の下端面とスラストプレート6の上端面、及びスラストプレート6の下端面とスリーブ8の垂下部29の上端面、によりスラスト動圧軸受手段が構成され、これにより、ロータハブ3を軸方向に位置規制すると共に、動圧軸受による軸方向の回転支持を行なう。なお、スラスト動圧軸受として、動圧グルーブがスラストプレート6に設けられたものに代えて、スラストカバー7及びスリーブ8(の垂下部29)側に設けられていてもよい。
【0023】
一方、スリーブ8の垂下部29の内周部と、シャフト2の外周部とは、僅かな隙間をもって軸方向に沿って対向配置されている。そして、この隙間には流体潤滑剤としてオイルが充填されている。これにより、ロータハブ3はシャフト2に対して、半径(ラジアル)方向に動圧軸受支持される。本実施例では、ラジアル動圧軸受として、動圧グルーブがシャフト2側に設けられているが、これとは逆に、スリーブ8側に設けられていてもよい。
【0024】
スリーブ8の大径周壁48の外周部にはアルミ合金等により形成されるハブ9が固定されており、このハブ9の内周部にロータマグネット5が環状に配設されている。ロータマグネット5は周方向へ所定の磁極数が着磁されている。なお、ロータマグネット5は、スリーブ8における大径周壁48の下端に当接して軸方向の高さ位置決めが行なわれており、ステータ4の高さ位置に対応してハブ9に固定されている。そして、フレキシブル回路基板10の導出端部に所要の信号が通電されると、ステータ4とロータマグネット5との電磁気的作用によって、ロータハブ3が回転駆動される。なお、図示省略の磁気ディスクは、ハブ9の外周部28に嵌め込まれて装着され、下方に形成された鍔部12にて受け止められ、そして既に公知のクランプ手段により固定される。
【0025】
上述の通り、本発明のスピンドルモータには、ラジアル及びスラスト動圧軸受支持されており、所定部位には流体潤滑剤としてのオイルが介在して充填されている。充填されたオイルがモータ外部へ漏れ出ることを防止するために、またこれに加えて、安定した軸受支持を維持させるために、本発明のスピンドルモータにおいては同様の図1及び図2を用いて、以下に説明する構成がなされている。これらの図において、まずラジアル動圧軸受として、一方(図の下側;モータ外側)について説明する。シャフト2の外周部24と、スリーブ8の垂下部29との間には、その下端側において、空隙が設けられている。この空隙は、シャフト2の外周部24と垂下部29の内周部とに、それぞれ全周にわたる凹部65とテーパ状の環状溝66が形成され、これらが半径方向に対向して配置されることにより形成される。凹部65の表面には、オイルを溌油する溌油剤が塗布されている。
【0026】
従って動圧グルーブ19におけるオイルが、モータ外方(図の下側方向)へ漏れ出ようとしても、シャフト2の外周部24と垂下部29の内周部との隙間が、環状溝66によりテーパ状に開口しているため、毛細管現象により確実に保持される。そしてさらに凹部65に溌油剤が塗布してあるため、表面張力により漏れでることがより一層防止される。
【0027】
スラスト動圧軸受においては、スラストプレート6を挟み、この上端面38とスラストカバー7の下端面、及びスラストプレート6の下端面39と垂下部29の上端面、のそれぞれの間隙(即ち動圧発生部をなす)にオイルが充填されている。特にスラスト動圧軸受の場合、モータの回転及び停止の動作に伴い、ロータハブ3の荷重により、それぞれの動圧軸受の間隙が変化する。しかも回転による動圧発生時と回転停止時とで、動圧発生部の中心部(動圧発生グルーブが設けられている)におけるオイルの保持量が変化する。このため、この動圧発生部において保持しきれないオイルは、スラストプレートの外周部32の上下端に設けられたテーパ部11,33と、それぞれ図の上下方向に対向する、スラストカバー下端面,スリーブ基部底面で形成されるテーパ状の環状溝52,54にて保持される。
【0028】
環状溝52,54はオイルの漏出方向(即ち環状空間73方向)に対して、軸方向(図の上下方向)間隙が順次大きくなるよう形成されている。このため、毛細管現象により保持されるオイルの量が所定の部位にて均衡するよう設けられている。すなわちオイルの量に対応して、連続的に間隙が変化しているため、オイルの移動に対して保持しえると共に、溝形状により所望のオイル量が保持される。そして、オイル量の変動、移動に対して円滑に移動させることができる。このため、オイルが環状空間73側、図2の右側へ漏出することが防止される。なお、これらシール部である環状溝52,54にて保持されるオイル量は、それぞれ動圧発生部に保持されるオイル量より多めのオイル量が保持されるように設定することが望ましい。
【0029】
スラストプレート6の上側に保持されるオイル、即ちスラストカバー下端面とスラストプレート上端面38との間に介在されるオイルは、モータの外部側である孔部62方向へ漏出する恐れがある。このため、スラストカバー7のシャフト2側(内周側)にはテーパ状の環状溝70が形成されている。環状溝70はオイルの漏出方向(孔部62側)に対して、(シャフト2の外周部24から)半径方向間隙が順次大きく形成されている。このため、オイルの漏出に伴う移動に際しても、確実にオイルを保持できるシール手段が得られる。また環状溝70は前述の環状溝66と同様にオイルの貯溜溝を兼ねている。本実施例では、環状溝70の漏出側(孔部62側)において、スラストカバー7に突出部76が全周にわたり設けられている。突出部76はシャフト2の外周部24に対して近接して配置されており、シャフト2とのラビリンスシール構造をなし、孔部62からの万一のオイル漏出に対して、二重に防止するものである。なお、この突出部76には、撥油剤が塗布されている。
【0030】
スラストプレート6の両端部に保持されたオイルが衝撃や遠心力等の理由により、環状溝52,54を越えて環状空間73内へ飛散・落下した場合、環状空間73の内面に付着して保持される。オイルは表面張力により、濡れ状に付着すると共に、連続した状態でこれらの内面に付着しやすい。このため、モータの回転始動や、姿勢変化等により、ほどなく、スラストプレート6側の動圧発生部(オイル保持部)側へオイルが容易に回収される。このため、オイルの枯渇が防止され、信頼性の確保と高精度の軸受支持が実現できる。なお、オイルの量を多めに充填しても、動圧発生部にて保持しきれないオイルが環状空間73にて保持される。
【0031】
環状空間73は通気孔20により、外気と連通している。このため、それぞれのオイル保持部である動圧発生部はモータ外気と実質上同一の圧力であり、気圧差が解消されている。従ってオイル中に気泡等が含まれていたり、モータの温度上昇等により、オイルが押し出されて移動するようなことが生じない。即ちオイル漏れが防止される。なおオイル中に含まれた気泡は環状空間73にて脱泡される。また環状空間73内には、コニカルシール91がその連通孔92を通気孔20に連通させて設けられているので、オイルはコニカルシール91を乗り越えてモータ外部側へ漏出することが防止される。コニカルシール91は、これを撥油剤に漬け、乾燥させることにより表面が撥油処理されているのでオイルが通気孔20に入り込むことが確実に防止される。特に環状空間73を規定する内面が、オイルに対して濡れ状となって保持されるため、撥油剤をコニカルシール91周辺に塗布することはオイル漏出防止の上で、より望ましい。特にコニカルシール91の撥油処理に際して、撥油剤に漬けて乾燥させるだけなので、撥油剤を塗布するよりも作業時間を短縮することができる。
【0032】
図に示すように、通気孔20はモータ内部側(ステータ4側)に連通し、ハブ9とハウジング1との間を通してモータ外部へ通気している。モータ内部からモータ外部への出口にあたる部位、即ち、ハブ9の鍔部12とハウジング1とは、半径方向に微小間隙をもって対向したラビリンスシール構造が形成されている。このため、この部位でも更にオイルの漏出が防止される。即ち通気孔20がモータ内部側にて連通しているため、万一通気孔20からオイルが漏出しても、オイルはラビリンスシール構造により、二重に漏出防止される。これにより、ディスク室内の清浄な空気を汚染することがない。
【0033】
通気孔20の内径は、可能な限り小さい方が望ましいが、加工上の容易性を考慮して、本実施例では通気孔20の内径は約0.3mm径に形成されている。またコニカルシール91の底面72からの高さは、可能な限り高い(長い)方が望ましいが、同様に本実施例では1乃至2mmに形成されている。
【0034】
以上、本発明のスピンドルモータの実施例について説明したが、本発明の主旨を逸脱しない範囲で設計変更乃至修正等自由である。即ち本実施例で示した種々の部分的な構成を組み合わせて用いることができる他、動圧軸受の動圧グルーブの形態や数量等、自由に選定することができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明のスピンドルモータは、上述の構成を有しているので、次の効果を奏する。即ち、ロータハブ3を軸方向へ位置規制して動圧軸受支持するスラストプレート6の上下端面38,39にはそれぞれ別々にオイルが介在して充填されている。これらはスラストプレートの外周部側において形成された環状空間73に連通している。そしてこの環状空間73には通気孔20が設けられ、通気孔20に連通するように連通孔92を有するコニカルシール91が設けられている。このため、モータ内外部の気圧差が解消され、オイルに気泡が含まれていたり、モータの温度上昇等によってオイルが押し出されて移動することがなく、気泡も脱泡され、従ってオイルの漏出が防止される。もし、オイルが環状空間73内に落下しても、コニカルシール91を乗り越えてオイルがモータ外部へ漏出することはなく、また、環状空間73内に滞留したオイルは容易に元の動圧発生部へ回収される。こうして、精度良く且つ安定した動圧軸受を有するスピンドルモータが得られる。
【0036】
また、コニカルシール91の少なくとも表面にオイルを撥油する撥油剤を塗布することにより、オイルの摩擦抵抗が低下し、動圧発生部へオイルを回収することがより容易にでき、オイルの枯渇を防ぎ、なお、一層の信頼性向上が図れるスピンドルモータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従うスピンドルモータの実施例を示す断面図である。
【図2】図1の環状空間部分の拡大断面図である。
【図3】図1のフレキシブル回路基板部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 シャフト
3 ロータハブ
4 ステータ
5 ロータマグネット
6 スラストプレート
7 スラストカバー
8 スリーブ
20 通気孔
73 環状空間
90 座ぐり
91 コニカルシール
92 連通孔
Claims (3)
- ハウジングと、前記ハウジングに固定された軸部材と、前記軸部材に対して相対的に回転自在であるロータハブと、前記軸部材と前記ロータハブとの間に介在された流体潤滑剤を用いた動圧流体軸受手段と、を具備するスピンドルモータにおいて、
前記軸部材には半径方向外方に突出するスラストプレートが設けられており、
前記ロータハブは、前記軸部材に回転自在に支持されたスリーブと、前記スラストプレートを覆うスラストカバーとを含み、前記スリーブと前記軸部材との間に前記動圧流体軸受手段の一部を構成するラジアル軸受部が設けられ、前記スリーブの端部と前記スラストプレートとの間、及び前記スラストカバーと前記スラストプレートとの間に、夫々、前記動圧流体軸受手段の他を構成するスラスト軸受部が設けられており、
前記スラストプレートの外周側には、前記スリーブ及び前記スラストカバーによって規定された環状空間が設けられ、
前記スリーブ又は前記スラストカバーには、前記環状空間の圧力をモータ外部の圧力と実質上等しくさせるための通気孔が設けられ、
前記環状空間には、軸方向に連通孔を有するコニカルシールの前記連通孔が前記通気孔に連通するように設けられ、前記コニカルシールの連通孔の開口端が前記環状空間のほぼ中央部に位置していることを特徴とするスピンドルモータ。 - 前記通気孔の前記環状空間側の開口端周縁にはすり鉢状の座ぐりが設けられ、前記コニカルシールがその小径部分側を前記座ぐりに嵌合させて固定されている請求項1記載のスピンドルモータ。
- 前記コニカルシールは少なくとも表面が撥油処理されている請求項1又は請求項2記載のスピンドルモータ。
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