JP3556626B2 - パターン転写用マスク、パターン転写用マスクの製造方法、パターン形成方法及び半導体装置の製造方法 - Google Patents
パターン転写用マスク、パターン転写用マスクの製造方法、パターン形成方法及び半導体装置の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パターン転写用マスク、パターン転写用マスクの製造方法、パターン形成方法及び半導体装置の製造方法に関し、特に、電子線投影露光法により微細パターンの転写を行う際に用いるパターン転写用マスク並びにその製造方法及びこのマスクを用いたパターン形成方法並びに半導体装置の製造方法に適用して好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来から半導体集積回路の製造においては、マスクを用いた光による転写技術が主流として用いられてきた。これはマスクによる転写が非常にスループットが高く、量産性に富んでいるためである。
【0003】
一方、電子線露光技術は、その高い解像性から次世代の露光技術として注目を集めている。電子線露光技術では光の波長が微細化の妨げとならないため、ステッパーによる露光と比較してより高解像度の露光を行うことが可能である。
【0004】
電子線露光技術に用いられる露光装置として、EB(Electron Beam)露光装置が知られている。EB露光装置で使用されるシリコンのステンシルマスクは、可変矩形用と部分一括露光用とに大別される。より加工が複雑なパターンを有する部分一括露光用のステンシルマスクを例に挙げると、ウェーハ上に露光されるパターンはステンシルマスク上のパターンの1/25〜1/100倍程度である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在、電子線露光技術に用いられるステンシルマスクは、電子線の透過領域に開孔を形成することによってマスクパターンを構成しているため、開孔内にパーティクル(ゴミ等の微粒子)やコンタミネーションが付着するとウェーハ上に転写されるパターン形状の精度が劣化するという問題が生じる。
【0006】
これらのパーティクルは、露光装置外においては主としてハンドリングの際にステンシルマスク表面に付着する。また、露光装置へステンシルマスクを装着した後においても露光装置内でパーティクルが付着するという問題がある。これは、露光を行う毎に被露光対象であるウェーハからのコンタミネーションの発生によりアウトガスだけでなくゴミ等のパーティクルも発生するためである。
【0007】
ハンドリングの際に付着したパーティクルを洗浄等により除去する場合、特にシリコン等の材料からなるステンシルマスクへのパーティクルの密着性は比較的高いため、洗浄したとしても完全に除去することは難しく、特に、開孔内にパーティクルが付着してしまった場合には、これを除去することは非常に困難であった。
【0008】
特に、近年注目を集めているEPL(Electron Beam Projection Lithograph)装置においては、マスク上に1チップに用いられるパターンの全てを形成しているため、ウェーハ上に露光されるパターンはステンシルマスク上のパターンの1/4倍と小さい。更に、電子線露光技術におけるスループットを光露光装置のステッパーの場合に少しでも近づけるためには倍率の小さいステンシルマスクは有効であるが、このような更に小さな倍率のステンシルマスクにおいては、マスクパターンに付着したパーティクルがウェーハ上のパターン形状に及ぼす影響がますます大きくなる。更に、従来の部分一括露光用EB描画装置においても、スループットの向上を目的として、より複雑な部分一括パターンを一枚のステンシルマスクに数多く形成する必要が生じている。従って、部分一括法においてもマスクに付着したパーティクルによって基板上のパターン精度が劣化することが懸念される。
【0009】
この発明は上述のような問題を解決するためになされたものであり、この発明の第1の目的は、荷電粒子線を透過させるパターン転写用マスクにパーティクルが付着することを抑止して、精度の高いパターニングを行うことにある。
【0010】
また、第2の目的は、パターン転写用マスクの耐汚染性を高めてハンドリング性を向上させるとともに、マスクの長寿命化を達成することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明のパターン転写用マスクは、荷電粒子線を透過させる領域に1又は複数の開孔が形成され、前記開孔以外の領域における前記荷電粒子線の透過を遮断して、前記荷電粒子線を選択的に被露光対象に照射するためのマスクであって、前記開孔の少なくとも一部の領域を含む所定箇所に、前記開孔の内壁とその近傍のみを覆うように保護膜が形成されているものである。
【0013】
また、前記保護膜が前記開孔の少なくとも一部の領域の全域に埋め込まれているものである。
【0014】
また、前記荷電粒子線を透過させる領域と、前記荷電粒子線を散乱させる領域とを備え、前記荷電粒子線を散乱させる領域に対する前記荷電粒子線を透過させる領域のエネルギー透過率の比が2以上である。これにより、コントラストよくウェーハ上のレジスト膜にパターンの転写が可能である。
【0015】
また、この発明のパターン転写用マスクは、荷電粒子線を透過させる開孔と荷電粒子線を散乱させて遮断する領域とを備え、前記開孔の少なくとも一部が前記荷電粒子線を遮断する領域よりもエネルギー透過率の高い膜で埋め込まれているものである。
【0016】
また、前記荷電粒子線を透過させる領域の周辺を覆うように導電性薄膜が形成されているものである。
【0017】
また、この発明のパターン転写用マスクの製造方法は、パターン転写用マスクの材料となる基板に1又は複数の開孔を形成して、当該開孔からなる所定のパターンを形成する第1の工程と、前記開孔の少なくとも一部の領域を含む所定箇所に、前記開孔の内壁とその近傍のみを覆うように保護膜を形成する第2の工程とを有するものである。
【0019】
また、前記第2の工程において、前記開孔の少なくとも一部の領域の全域を埋め込むように前記保護膜を形成するものである。
【0020】
また、前記第2の工程の前に、前記基板に所定の表面処理を行うものである。
【0021】
また、この発明のパターン形成方法は、荷電粒子線を透過させる領域が保護膜で覆われたパターン転写用マスクを用いて被露光対象上にパターン形成を行う方法であって、前記パターン転写用マスクを露光装置内に装着するステップと、前記パターン転写用マスクにプラズマを照射して前記保護膜を除去するステップと、前記パターン転写用マスクに荷電粒子線を選択的に透過させて、前記被露光対象に荷電粒子線を照射するステップとを有するものである。
【0022】
また、前記パターン転写用マスクを露光装置内に装着した後、前記被露光対象への露光を行う前に前記プラズマを照射するものである。
【0023】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記のパターン転写用マスクを用いて半導体装置を製造するものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施の形態に係るステンシルマスク(パターン転写用マスク)3を備えた電子線投影露光装置、例えばEB露光装置又はEPL装置を用いて、電子線投影リソグラフィ技術によってシリコンウェーハ等の基板1に電子線を照射している状態を示す概略斜視図である。
【0025】
図1に示すように、電子銃から照射される電子線は第1成形アパーチャ2を透過してステンシルマスク3に照射される。ステンシルマスク3には基板1上に形成する回路パターンが露光領域4a,4b,4c,4d・・・ごとに分割して形成されている。基板1上の1チップのパターンは、これらの露光領域4a,4b,4c,4d・・・を順次透過させた電子線をサブフィールドイメージとして基板1上の所定の位置に照射することによってパターン形成される。図1において、半導体基板10上に示した格子状の線は、サブフィールドに対応した仮想線を示している。
【0026】
図2は、図1に示す露光領域4bの周辺を詳細に示す断面図であって、図1に示す一点鎖線I−I’に沿った断面に対応した図である。ここで、図2は図1に示すステンシルマスク3の状態を上下逆向きにして示したものである。また、図3は図2の斜め上側からステンシルマスク3を俯瞰した状態を示す斜視図である。図2に示すように、ステンシルマスク3は薄膜部3a、及び薄膜部3aから突出した梁部3b(図1において不図示)を有して構成されている。梁部3bは、各露光領域4a,4b,4c,4d・・・の間に格子状に形成されている。
【0027】
図2及び図3に示すように、露光領域4a,4b,4c,4d・・・には開孔5からなる所定形状のパターンが形成されている。この開孔5からなるパターンは薄膜部3aをエッチングして形成したものであり、図3においてはゲートパターンを例示している。ゲートパターン以外にも様々なパターンを形成することができ、また、ステンシルマスク3上のパターンの基板1上での倍率に応じてパターン密度も異なる。電子銃から照射された電子線は、開孔5を透過して基板1へ照射される。開孔5以外の領域に照射された電子は散乱するため、基板1上に到達する電子線量は開孔5に照射された電子線に比して小さい。従って、開孔5を透過した電子線と散乱した電子線のコントラスト差により、基板1上で開孔5のパターンに倣ったパターニングが行われる。なお、薄膜部3aの膜厚が十分厚い場合には、開孔5以外の領域に照射された電子線の殆どは散乱して基板1上には到達しない。
【0028】
図2及び図3に示すように、開孔5の側壁面を含むステンシルマスク3の表裏面には、電子線透過率の高い保護膜(ぺリクル膜)6が形成されている。保護膜6は、例えば有機系材料(アルカン系材料等)からなる膜、又は無機系材料(SiO系の材料等)からなる膜であって、パーティクルとの密着性が低い膜である。保護膜6は、CVD法、塗布、コーティング等の方法によってステンシルマスク3の表裏面に形成される。
【0029】
このように、ステンシルマスク3の表面にパーティクルとの密着性の低い保護膜6を形成することによって、ハンドリングの際にステンシルマスク3にパーティクルが付着してしまうことを最小限に抑えることができる。また、露光装置に装着する前にステンシルマスク3を洗浄することにより、保護膜6上にパーティクルが残存していても確実に除去することができる。特に、保護膜6としてテフロン系の膜を使用した場合には、パーティクルとの密着性が非常に小さいため、パーティクル付着量を最小限に抑えることができ、また、洗浄によって確実に除去することが可能となる。
【0030】
特に、開孔5内にパーティクルが残存している場合には、露光時にこれが障害となって基板1に形成されるパターン形状が劣化してしまうが、本実施の形態のように開孔5内に保護膜6を形成することによって、開孔5内にパーティクルが付着することを抑止できる。従って、ステンシルマスク3がパーティクル等により汚染されてしまうことを抑え、ハンドリング性を向上させることが可能となる。
【0031】
また、開孔5内に付着したパーティクルに起因してパターン寸法精度が劣化することを最小限に抑えることができるため、基板1上に高精度にパターンを形成することが可能となる。これにより、露光処理におけるスループットを向上させることができる。更に、開孔5を含むステンシルマスク3上を保護膜6で保護することにより、ステンシルマスク3の基体が薬液等によって侵されることを抑止できるとともに、機械的強度を高めることが可能となる。これにより、ステンシルマスク3の長寿命化を達成することも可能となる。
【0032】
また、ステンシルマスク3の表面にパーティクルが残存していた場合であっても、露光装置に装着後、露光装置のプラズマ発生手段(保護膜除去手段)においてO2プラズマ等のプラズマを発生させることにより、保護膜6とともにパーティクルをステンシルマスク3上から除去することが可能である。この場合には、保護膜6として有機系材料の膜を用いるとともに、エッチャントとしてO2系、CF系のガスを用いるのが好適である。これにより、パーティクルの発生を最小限に抑えた状態で露光装置内で保護膜6を除去することができる。
【0033】
露光装置内で保護膜6を除去する場合、露光装置に装着した後、1回目の露光を行う前にプラズマを発生させることにより、主としてハンドリング時に付着したパーティクルを除去することができる。
【0034】
また、露光に応じたコンタミネーション等により基板1から発生するパーテーィクル汚染に対しては、露光装置にステンシルマスク3を装着した後、パーティクルの付着量に応じてプラズマを発生させるようにする。この際、パーティクルの付着量を検出してパーティクルが所定量を超えた時点でプラズマを発生させて保護膜6を除去しても良いし、所定回数の露光後又は所定時間の経過後にプラズマを発生させて保護膜6を除去することもできる。これにより、露光装置内でのパーティクル汚染の度合いに応じてステンシルマスク3をクリーニングすることが可能となる。
【0035】
図4は開孔5の近傍のみに保護膜6を形成した例を示す概略断面図である。開孔5以外の領域にパーティクルが付着した場合の基板1上での転写パターン形状に与える影響は、パーティクルが開孔5内に付着した場合に比べて小さい。従って、図4に示すように開孔5の近傍のみに保護膜を形成した場合であってもパーティクルの付着によるパターンの形状劣化を抑止することができる。
【0036】
なお、開孔5の周辺を覆うように更に導電性薄膜を形成することにより、図2〜図4に示した構造において蓄積電荷の影響を最小限に抑えることができる。
【0037】
以上説明したように、この発明の実施の形態1によれば、基板1への転写パターンとなる開孔5を含む領域にパーティクルとの密着性の低い保護膜6を形成したことにより、開孔5内に付着するパーティクルを最小限に抑えることができる。また、パーティクルが付着した場合であっても、ステンシルマスク3を露光装置に装着する前に洗浄することにより容易に除去することが可能となる。更に、露光装置にステンシルマスク3を装着した後に露光装置内でプラズマを発生させることにより、付着したパーティクルを保護膜6とともに除去することが可能となる。
【0038】
これにより、ステンシルマスク3がパーティクルによって汚染されることを抑えることができ、ステンシルマスク3のハンドリングを向上させることが可能となる。また、パーティクルの付着を最小限に抑えることにより、基板1上でのパターン形成を高い精度で実現することができ、露光処理工程におけるスループットを向上させることが可能となる。更に、形成したパターンの再検査等の工程を低減できるため、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0039】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。図5は実施の形態2のステンシルマスク3を示す概略断面図であって、図2と同様に図1に示す一点鎖線I−I’に沿った断面を示している。
【0040】
実施の形態2は、保護膜6として電子線の透過率の高い膜を用い、開孔5を埋めるように保護膜6を形成したものである。保護膜6によって開孔5を充填することにより、開孔5内にパーティクルが付着してしまうことを確実に抑止できる。
【0041】
この場合、保護膜6としてフッ素(F)を含有した樹脂剤を用いることが望ましい。フッ素の含有は、樹脂剤の基体内に含有させる場合と側鎖に結合させる場合がある。フッ素を含有した保護膜6はマスクのパターン部よりも透過性が高いため、開孔5を充填した場合であっても開孔5に電子線を透過させることができる。従って、開孔5の領域とそれ以外の電子線を散乱させる領域との間において、基板1上でのパターン形成が可能となるレベルの荷電粒子線のエネルギー透過率の比を確保することができる。ここで、本発明者らは、開孔5における荷電粒子線のエネルギー透過率が開孔5以外の領域のエネルギー透過率に対して2倍以上であれば、基板1上にパターン(100nm幅)形成を行うことが可能であることを確認した。なお、パターン形成の可否はレジスト膜の特性等の他のパラメータにも依存するが、開孔5の領域を透過した電子線と開孔5以外の領域で散乱せずに透過した電子線のコントラストに差が発生すれば、すなわち両領域のエネルギー透過率が異なればパターン形成は可能である。従って、電子線を散乱させる領域よりも電子線が透過する割合の高い膜で開孔5を覆うことにより、基板1上でのパターン形成が可能である。
【0042】
また、開孔5を保護膜6で充填する場合には、開孔5内における保護膜6の膜厚を十分に薄くすることが望ましい。これにより、開孔5内を充填する保護膜6における荷電粒子線のエネルギー透過率を十分に高くすることができる。従って、基板1上に確実にパターン形成を行うことが可能となる。
【0043】
以上説明したように、この発明の実施の形態2によれば、開孔5を充填するように保護膜6を形成したことにより、開孔5内にパーティクルが付着してしまうことを確実に抑止することができる。これにより、パーティクルが基板1上に転写されるパターンの形状がパーティクルによって劣化してしまうことを抑止でき、高い精度でパターニングを行うことが可能となる。また、開孔5以外の領域に対する開孔5の領域の荷電粒子線の透過率を2倍以上とすることにより、開孔5とそれ以外の領域間でパターン形成に必要な荷電粒子線量のコントラスト差を生じさせることができる。特に、開孔5のエネルギー透過率をそれ以外の領域のエネルギー透過率の2倍以上確保することにより、基板1上に高い精度でパターニングを行うことが可能となる。
【0044】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は上述した各実施の形態におけるステンシルマスク3の製造方法である。最初に、図7、図8及び図9の工程図に基づいて、実施の形態2のステンシルマスク3の製造方法を説明する。先ず、図7(a)に示すように、支持体となるシリコン基板11、エッチングストッパーとしてのシリコン酸化膜12及びパターン形成膜としてのシリコン薄膜13から構成されるステンシルマスク3の基体となる積層基板は、シリコンウェーハ貼り合わせ技術等により形成する。
【0045】
次に、図7(b)に示すように、支持体となるシリコン基板11をエッチングして、梁部3bを形成する。その後、シリコン薄膜13をエッチングして、シリコン薄膜13に所定のパターンを形成する。これにより、図7(c)に示すようにシリコン酸化膜12上に開孔5が形成される。なお、図7(c)の状態では開孔5の下部にエッチングストッパーとしてのシリコン酸化膜12が残存しているため、開孔5は貫通していない。
【0046】
なお、梁部3bを形成する前にシリコン薄膜13にパターン形成を行っても良い。この場合には、図7(a)の工程後、図7(d)に示すように先にシリコン薄膜13をエッチングして開孔5を形成し、その後、シリコン基板11をエッチングして梁部3bを形成することにより図7(c)に示す構造を完成させる。開孔5及び梁部3bを形成する際には、シリコン酸化膜12がエッチングストッパーとして機能するため、シリコン酸化膜12とシリコン基板11又はシリコン薄膜13との選択比を利用して精度良くエッチングを行うことができる。ここで言うエッチングとは、異方性を含む化学エッチング及びドライエッチングを指す。
【0047】
次に、図8及び図9に基づいて、図7(c)に示す状態から開孔5内を含む領域に保護膜6を形成する方法について説明する。先ず、図8(a)に示すように、シリコン酸化膜12をストッパー膜として開孔5の側壁及びシリコン薄膜13上を覆うように保護膜6aを形成する。保護膜6の形成はCVD法、塗布、コーティング等の方法により行う。
【0048】
次に、図8(b)に示すように、シリコン基板11側から梁部3bの間のシリコン酸化膜12を除去する。次に、図8(c)に示すように、シリコン基板11側から保護膜6bを塗布等の方法により形成する。これにより、開孔5において保護膜6aと保護膜6bが接続され、一体の保護膜6となる。なお、保護膜6bの形成もCVD法、塗布、コーティング等の方法により行うことができるが、図8(c)に示す工程では保護膜6bを梁部3bの間に形成するため、CVD法により形成するのが好適である。
【0049】
なお、塗布工程により保護膜6を形成する場合には、予めステンシルマスク3にヘキサメチルジシラザン(HMDS:hexamethyl disilazane)による表面処理を例えば温度100℃、時間60秒程度行うことが望ましい。これにより、保護膜6をムラなく塗布することができ、保護膜6とシリコン基板11,13との密着性を高めることができる。
【0050】
図9(a)〜図9(c)は、実施の形態1のステンシルマスク3の製造方法において、保護膜6を形成する他の方法を示している。この方法では、先にシリコン基板11側から保護膜6bを形成するようにしている。先ず、図9(a)に示すように、図7(c)に示す状態からシリコン酸化膜12を除去する。次に、図9(b)に示すように、保護膜6bをシリコン基板11側から形成する。保護膜6bの形成はCVD法又は塗布法により行い、開孔5内においては保護膜6bが開孔5の側壁を覆うように形成する。その後、保護膜6aをシリコン薄膜13側から形成することにより、シリコン基板11、シリコン薄膜13の表面及び開孔5の側壁を保護膜6a,6bで覆う。これにより、実施の形態1のステンシルマスク3の構造が完成する。図8に示す方法と図9に示す製造方法は、加工上の歪等を考慮して適宜選択することができる。そして、図8及び図9に示す2種類の製造方法により、表側又は裏側から形成した保護膜6で開孔5の側面を覆った2種類の構造を得ることができる。
【0051】
次に、図10及び図11に基づいて実施の形態2に係るステンシルマスク3の製造方法について説明する。図7(c)までの工程は実施の形態1のステンシルマスク3の製造方法と同様である。なお、以下の図10、図11では、図8、図9の場合と異なり、シリコン薄膜13に複数のスリットからなる開孔5を形成した例を示す。
【0052】
先ず、図10(a)に示すように、図7(c)に示す状態から、シリコン酸化膜12をストッパー膜として開孔5内及びシリコン薄膜13上に保護膜6aを形成する。これにより、スリットの開孔5が保護膜6aによって充填される。次に、図10(b)に示すように、シリコン基板11側から梁部3b間のシリコン酸化膜12を除去する。次に、図10(c)に示すように、シリコン基板11側から保護膜6bを塗布等の方法により形成する。これにより、開孔5において保護膜6aと保護膜6bが接続され、一体の保護膜6となる。図10に示す方法によれば、保護膜6bよりも先に保護膜6aを形成して開孔5を充填するため、特に保護膜6aの表面の平坦性を高めることができる。
【0053】
図11(a)〜図11(c)は、実施の形態2のステンシルマスク3の製造方法において、保護膜6を形成する他の方法を示している。この方法は、先にシリコン基板11側から保護膜6bを形成するようにしている。先ず、図11(a)に示すように、図7(c)に示す状態からシリコン酸化膜12を除去する。次に、図11(b)に示すように、保護膜6bをシリコン基板11側から塗布して開孔5を充填する。その後、保護膜6aをシリコン薄膜13側から形成する。これにより、開孔5において保護膜6aと保護膜6bが接続され、一体の保護膜6となる。図11の方法によれば、シリコン酸化膜12を除去した後に保護膜6bが開孔5内に埋め込まれるため、開孔5内に気泡等が残ることを抑止できる。
【0054】
以上説明したように、この発明の実施の形態3によれば、ステンシルマスク3の基体となるシリコン基板11、シリコン酸化膜12及びシリコン薄膜13を貫通する開孔5を形成した後、一方の面に保護膜6aを形成し、その後、他方の面に保護膜6bを形成することにより、開孔5において保護膜6a及び保護膜6bを接続することができる。これにより、開孔5内及び表裏面が保護膜6a,6bで覆われたステンシルマスク3を形成することができる。
【0055】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0056】
パターン転写用マスクの荷電粒子線を透過させる領域をパーティクルとの密着性の低い保護膜で覆うことにより、マスクパターンの領域へのパーティクルの付着を最小限に抑えることができる。これにより、被露光対象上でのパターン形成を高い精度で実現することができ、露光処理工程におけるスループットを向上させることが可能となる。
【0057】
荷電粒子線を透過させる領域に形成された開孔の内壁を覆うように保護膜を形成することにより、特にパーティクルの除去が困難な開孔のマスクパターン部にパーティクルが付着してしまうことを防止できる。
【0058】
荷電粒子線を透過させる領域に形成された開孔を充填するように保護膜を形成することにより、特にパーティクルの除去が困難な開孔のマスクパターン部にパーティクルが付着してしまうことを抑止できる。
【0059】
荷電粒子線を散乱させる領域に対する荷電粒子線を透過させる領域のエネルギー透過率の比を2以上とすることにより、荷電粒子線を透過させる領域に保護膜を形成しても、被露光対象上で荷電粒子線のコントラスト差を生じさせることができ、被露光対象上で確実にパターン形成を行うことができる。
【0060】
パターン転写用マスクを露光装置に装着した後にプラズマを照射することにより、露光装置内で保護膜を除去することが可能となる。これにより、露光毎のコンタミネーションによりパーティクル汚染が生じても、パーティクルを保護膜とともにマスク上から除去することができる。この場合、保護膜を有機系材料の膜とすることにより、パーティクルの発生を最小限に抑えた状態で保護膜を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係るステンシルマスクを用いて、基板に電子線を照射している状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の露光領域の周辺を詳細に示す概略断面図である。
【図3】図2の上側からステンシルマスクを俯瞰した状態を示す概略斜視図である。
【図4】開孔の近傍のみに保護膜を形成した例を示す概略断面図である。
【図5】実施の形態2のステンシルマスクを示す概略断面図である。
【図6】図5の上側からステンシルマスクを俯瞰した状態を示す概略斜視図である。
【図7】ステンシルマスクの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図8】図7に続いて実施の形態1に係るステンシルマスクの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図9】実施の形態1に係るステンシルマスクの別の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図10】図7に続いて、実施の形態2に係るステンシルマスクの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図11】実施の形態2に係るステンシルマスクの別の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板、 2 第1成形アパーチャ、 3 ステンシルマスク、 3a 薄膜部、 3b 梁部、 4a,4b,4c,4d 露光領域、 5 開孔、 6,6a,6b 保護膜、 11 シリコン基板、 12 シリコン酸化膜、 13 シリコン薄膜。
Claims (11)
- 荷電粒子線を透過させる領域に1又は複数の開孔が形成され、前記開孔以外の領域における前記荷電粒子線の透過を遮断して、前記荷電粒子線を選択的に被露光対象に照射するためのマスクであって、
前記開孔の少なくとも一部の領域を含む所定箇所に、前記開孔の内壁とその近傍のみを覆うように保護膜が形成されていることを特徴とするパターン転写用マスク。 - 前記保護膜が前記開孔の少なくとも一部の領域の全域に埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載のパターン転写用マスク。
- 前記荷電粒子線を透過させる領域と、前記荷電粒子線を散乱させる領域とを備え、前記荷電粒子線を散乱させる領域に対する前記荷電粒子線を透過させる領域のエネルギー透過率の比が2以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン転写用マスク。
- 荷電粒子線を透過させる開孔と荷電粒子線を散乱させて遮断する領域とを備え、前記開孔の少なくとも一部が前記荷電粒子線を遮断する領域よりもエネルギー透過率の高い膜で埋め込まれていることを特徴とするパターン転写用マスク。
- 前記荷電粒子線を透過させる領域の周辺を覆うように導電性薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパターン転写用マスク。
- パターン転写用マスクの材料となる基板に1又は複数の開孔を形成して、当該開孔からなる所定のパターンを形成する第1の工程と、
前記開孔の少なくとも一部の領域を含む所定箇所に、前記開孔の内壁とその近傍のみを覆うように保護膜を形成する第2の工程とを有することを特徴とするパターン転写用マスクの製造方法。 - 前記第2の工程において、前記開孔の少なくとも一部の領域の全域を埋め込むように前記保護膜を形成することを特徴とする請求項6記載のパターン転写用マスクの製造方法。
- 前記第2の工程の前に、前記基板に所定の表面処理を行うことを特徴とする請求項6又は7記載のパターン転写用マスクの製造方法。
- 荷電粒子線を透過させる領域が保護膜で覆われたパターン転写用マスクを用いて被露光対象上にパターン形成を行う方法であって、
前記パターン転写用マスクを露光装置内に装着するステップと、
前記パターン転写用マスクにプラズマを照射して前記保護膜を除去するステップと、
前記パターン転写用マスクに荷電粒子線を選択的に透過させて、前記被露光対象に荷電粒子線を照射するステップとを有することを特徴とするパターン形成方法。 - 前記パターン転写用マスクを露光装置内に装着した後、前記被露光対象への露光を行う前に前記プラズマを照射することを特徴とする請求項9記載のパターン形成方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のパターン転写用マスクを用いて半導体装置を製造することを特徴とする半導体装置の製造方法。
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