JP3556257B2 - 移送装置のガイドレール - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動機,搬送装置あるいは各種機器における移動体を移動案内支持するのに用いられて有用な移送装置のガイドレールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種機器あるいはコンベアなどにおける移動体を移動させるには主としてガイドレールに案内されて走行移動するようにされている。そして、その移動体は主にガイドレール上を転動するガイドローラによって走行され、その走行の駆動力については別途駆動体、たとえばロープやチエンによる牽引,あるいはリンクやロッドに連結されて移動される方式,または移動体に直接駆動機を搭載してその駆動機による動力でガイドレール上を走行させる方式などが汎用されている。
【0003】
そして、その移動体の走行路となるガイドレールとしては、ガイドローラの転動する案内面(軌道面)とその案内面に沿って転動するガイドローラが走行路から逸脱しないように案内する案内部を備えることが必須であり、さらに走行する移動体をガイドローラによってガイドレールに保持されることも要件となる。このようなことから、そのガイドレールの形状、特に断面形状は各種要件を満足させる必要がある場合、その断面形状が複雑になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のガイドレールは、前述のような条件を満足させる必要上複雑な断面形状に形成されることが多く、そのために工作上多くの問題点がある。すなわち、断面形状が複雑になると一体に構成するには溶接加工などを必要とされ、長い寸法の場合歪が生じやすいのでその修正に多くの手数を必要とする。しかも、加工精度を高めるのに多くの困難がある。また、一体構造に、例えば引抜き加工で得られるものであっても、ガイドローラの接触する案内面については研磨加工などを必要とすると工費が嵩むことになる。このようなことから、従来のガイドレールにあっては製作費が高くなるために、簡単に構成して目的を達成しようとすると精度の高いものが得られず、あるいは精度を必要とする部分とそうでない部分とに分離して組み立てねばならないので、全体として嵩高い構造となるのが回避できないなど多くの問題点がある。
【0005】
本発明ではこのような問題点を解決して、至極簡単な構造で精度を高め、かつ任意の長さ寸法のものを取扱容易な状態で提供できるように構成される移送装置のガイドレールを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の移送装置のガイドレールは、
フランジ部を外側方に向けて左右対称に配される一対の溝形部材と、これら一対の溝形部材間に位置して移動体の移動を案内する機能部材とを重ね合わせ、これら各部材を前記溝形部材のウエブ個所で長手方向に所要の間隔で前記各部材に共通して穿設された複数の孔を通じて締結部材により一体に結合され、前記溝形部材のフランジ部表面が移動体のガイドローラの軌道面となり、前記機能部材における前記軌道面に隣接する部分が前記ガイドローラを案内する部位となるように構成されることを特徴とするものである。
【0007】
本発明における前記機能部材は、移送装置における移動体との関係に応じて任意の形状構成のものが採用され、前記移動体のガイドローラの案内のみの場合は、前記溝形部材のフランジ部より外に突き出す寸法の板材あるいは厚肉材を用いるのが好ましい。また、その機能部材としては所要寸法の部材で前記溝形部材による軌道面より突き出す端面に歯を形成されたラックであることが好ましい。さらに、その機能部材としては所要寸法の部材で開放面となる部分に長手方向のT字形溝もしくはアリ溝が設けられて、前記溝部にセンサ,マイクロスイッチあるいはスイッチなどの制御機器類を操作する部品を所要位置にセットできる構成であるのが好ましい。そして、前記機能部材は、前述のような各種機能性を有する部材を複数組合わせて構成されるものであってもよい。もちろん、前記機能部材は用途に応じて鋼材(ステンレス鋼を含む)・アルミニウムもしくはアルミニウム合金・銅合金などの金属,強度の高いプラスチックなどが選択採用できる。
【0008】
また、本発明における前記溝形部材は、そのフランジ部をウエブに対して通常直角に配することはもちろん、そのフランジ部をウエブに対して適宜角度で仰角あるいは俯角にすることができ、このようにすることで移動体などに設けられるガイドローラとの接触関係を必要に応じて最適化させることができる。
【0009】
さらに、本発明では溝形部材を板材を曲げ加工によって形成するので、その構成材料として種々の材料が採用でき、構成材料として一般に構造用炭素鋼を用いるが、そのほかに高張力構造用鋼板を用いて厚みの薄いもので強度の高いガイドレールを得ることができる。また、鋼板の間に樹脂材を介在させた複合鋼板を用いて形成すれば振動を押さえたいわゆる制振機能を有するガイドレールとすることができ好ましい。さらに、ステンレス鋼板を採用することで耐蝕性のあるものとすることができる。さらにまた、前記溝形部材の外面に潤滑性の高い合成樹脂をコーティングしておけば、ガイドローラの転動を円滑化できて好ましい。あるいは、炭素繊維を混入して強化されたプラスチック層と鋼板とを一体に結合させた複合板で前記溝形部材を構成することもできる。このような複合板の場合そのプラスチック層がフランジ部の表面(軌道面)となるように配されているのが好ましい。また、この溝形部材を機械的強度の高い合成樹脂、例えばポリアミド系の樹脂あるいは炭素繊維入りの合成樹脂などで構成することができる。
【0010】
また、本発明のガイドレールを構成する前記両溝形部材と機能部材とを一体化するための締結部材は、中空鋲を用いることが好ましい。この中空鋲による締結によれば、その中空部がガイドレールの取付支持孔として使用できる利点を有する。もちろん実体のリベットあるいはボルトによる締結を行うこともできる。
【0011】
本発明の前記移送装置のガイドレールは、継手部として、溝形部材のフランジ部で一端部に受け鈎構造部を形成され、他端部で前記受け鈎構造部に係合する掛け鈎構造部を設け、その溝形部材のウエブの端部は突き合わせにされ、かつ前記機能部材の端部がそれぞれ前記ウエブ端より所定寸法短くされ、そのウエブ端より短い両機能部材によって接続時形成される両溝形部材間の空間部分に当該機能部材の厚み相当の別途継手片を挿入して両溝形部材の端部ウエブでボルト締結されて接続できるように構成されることを特徴とする。
【0012】
前記継手部における前記継手片は、対応する機能部材の構造と同じもので形成されることが、ガイドレールを連続して接続されるのに好ましい。
【0013】
さらに、本発明の移送装置のガイドレールは、前述の組合せ構造でローラの軌道面及び案内が、その機能部材の中心線を通る立面上で所要半径の曲線を描く彎曲に形成される曲線型とすることができる。そして、その曲線型ガイドレールにあっては、その両端部を適宜距離直線に形成して継手部を構成することが好ましい。
【0014】
また、本発明の前記移送装置のガイドレールは、両溝形部材に対して前記機能部材の一端部を接続に要する長さ寸法その溝形部材の一端から突き出させるとともに、他端を前記突き出し長さ相当分溝形部材の他端よりも短かくなるようにずらせた状態で組み合わされて、一端部には両溝形部材間に形成される空間部が、他端部には前記空間部に対応する機能部材による突出部がそれぞれ形成され、前記空間部に別のガイドレールにおける前記突出部を嵌め合わせ得るようにされ、前記両溝形部材の端部と前記機能部材の突出部の嵌め合わせ部分にそれぞれ合致する取付孔を設けて、その嵌め合わせ部で当該取付孔を通じて締結要素にて締結されることによりガイドレールの接続ができる構成であるのが好ましい。
【0015】
【作用】
このように構成される本発明のガイドレールは、一対の溝形部材の間に機能部材を介在させて、これら少なくとも3つの部材を重ね合わせて長手方向( 軸線方向 )に所要のピッチで締結部材により一体化されているので、その中間に配される機能部材を用途に応じて所要の機能を所持したものを組込むことにより、複雑な加工を必要とせずに所期目的の移送装置のガイドレールを形成することができるのである。しかも、両溝形部材の上下両フランジ部の表面を移動体のガイドローラの軌道面として、それら溝形部材間に位置する機能部材の隣接する側面部を前記ガイドローラの横方向の振れとめ案内とすることができて簡単な構造で安定走行できるガイドレールが得られる。もちろん、簡単な構成で加工も容易であるから安価に提供できる経済的効果の高いものとなし得る。
【0016】
さらに、所要寸法で画一的に加工できる(例えば精密プレス加工,ロールフォーミング加工などによる)溝形部材に対して機能部材は、締結用の孔を前記溝形部材と統一して設けておけばその寸法形状などを用途に応じて各種のものを製作して組み合わせるようにすることで、単なるガイドレールではなく複合された機能を有するガイドレールが至極簡単に得られることになる。しかも、それらは量産可能な構成であるので容易に提供できることになる。また、前記機能部材を選択することにより、長い距離の搬送用ガイドレールから短い移動範囲で使用される直線運動機構のガイド体として広範な直線運動用のガイドとして活用できる。またさらに、溝形部材についてはその構成材を鋼板単一材から前述のようなプラスチック材との複合材を選択使用することによって、使用箇所の環境改善,装置の軽量化を容易に図ることができる。
【0017】
また、本発明では、前述のような組合せによってガイドレールが構成されるので、比較的長さの長い製品を容易に得られるから短い寸法のものは所要長さに切断して使用できる。しかし、長い距離のガイドレールとするには接続の必要があり、この場合は継手部として、溝形部材の端部のフランジ部に設けられる一方の受け鈎構造部に対して、他方端部の掛け鈎構造部を係合させるとともに、それらフランジ部より短くされているウエブ端を突き合わせて接合させた後に両溝形部材間に形成される空間部に継手片を挿入して継手片を両溝形部材のウエブで挟んで締結することにより、ずれを生じさせることなく連結でき、しかも簡単な操作で強力な接続が可能になる。さらに、その継手片を機能部材と同様な形状のものを用いることによって当該接続部分におけるガイドレールの機能を途切れさせることなく接続できる利点を有するのである。
【0018】
そして、前述のガイドレールを彎曲させて曲線型にすれば、前述の直線型のガイドレールと連結することによって高低差のある移送ラインを構築することができる。その際、その曲線型のガイドレールの端部を適宜区間直線にすれば、継手部の構造を容易にできる。
【0019】
【実施例】
次に、本発明の移送装置のガイドレールについて、その実施例を具体的に図面を参照しつつ説明する。
図1に示すのは本発明に係る移送装置のガイドレールの最も基本的な構成の具体例の斜視図であり、図2は図1におけるII−II視断面図であり、図3は図1におけるIII −III 視断面図である。
【0020】
これらの図において、ガイドレール1は断面状態で左右一対の溝形部材2とそれらの中間に介在される機能部材3とを所定のピッチで共通した設けられる孔を通じて中空鋲5により締結されて一体に構成されている。そして、それら両溝形部材2,2は鋼板を所要寸法で溝形に屈曲加工されたものを左右対称に配される。これら両溝形部材2,2はそのフランジ部2aの上面(下側のものでは下面)がガイドローラの軌道面7となるようにされ、ウエブ2bに所定のピッチで多数の取付孔4が設けられる。なお、その取付孔4については等ピッチで設けられて、好ましくは溝側の面に中空鋲5のかしめ部が沈み得るように座ぐり部4aを形成される。また、機能部材3は適宜厚みの鋼板で図示されるように前記溝形部材2,2の各フランジ部2aの表面(軌道面7)よりも適宜量外に突き出す寸法の平板からなり、その中間部に軸線方向に前記両溝形部材2,2のウエブ2bに設けられる取付孔4と等ピッチで取付孔6が穿設されている。なお、このガイドレール1は全長(例えば2m〜3m)の両端部で図1にてその一方を示されるように両溝形部材2,2の端部よりも適宜寸法(高さ寸法の1.5〜2倍,ただしこの寸法に限定されない)中間の機能部材3を短くして組み合わされている。そして、その両端部の機能部材3が短くされた部分において後述する継手片30が組合わさるようにされている。
【0021】
このように構成される本発明の最も基本的な構成のガイドレール1は、例えば図4にて示されるように、両溝形部材2,2と機能部材3とを一体化している中空鋲5の孔部を取付用の孔として機台Aその他ガイドレール1の取付部に対してボルトなどによって取り付けて敷設される。この実施例図(図4)では搬送機のガイドレールに用いられており、溝形部材2,2が上下に位置してそれら溝形部材2,2のフランジ部2aから突き出されている機能部材3の突出部3aと両溝形部材2,2のフランジ部2aの外面、即ち軌道面7,7とに搬送移動台100 付設の左右複数組の各2個のガイドローラ101 ,101 が接触して案内移動されるようになっている。なお、前記各組のガイドローラ101 ,101 はガイドレール1の図上左右で当該ガイドレール1を挟むようにして案内される。
【0022】
ガイドレール1はこのような状態で、搬送移動台100 側に付設されている各組の2個のガイドローラ101 ,101 が外周転動面をそれぞれ軌道面7,7に接触されるようにして、かつ機能部材3の突出部3aの側面(図上上下面)にそれらの各組の2個のガイドローラ101 ,101 の周側縁部を接触させてずれないように案内する機能を発揮させる。したがって、このガイドレール1に案内される搬送移動台100 は上下左右に振れることなく、確実に案内されて移動できる。なお、前記ガイドレール1の取付態様を図5で示されるように、丁度90°変位させた状態で取り付けて使用される場合、1本のガイドレール1でもって片持ち状態になる吊下げ搬送体120 でもガイドローラ101 ,101 部がガイドレール1の軌道面7,7と機能部材3の突出部3aとによって案内保持されて無理なく移動させることができる。
【0023】
そして、前述のガイドレール1では、前記ガイドローラ(負荷ローラ)101 ,101 とガイドレール1の軌道面7,7とが線接触してガイドローラ1個の許容荷重は小さいが2個のガイドローラ101 ,101 が同時に両軌道面7,7を転動され、両ガイドローラ101 ,101 がそれぞれ機能部材3の突出部3aの側面に対しても面状の接触で軸方向のスラストを受けて移動することになり、軽快で静粛な走行が確保されるのである。
【0024】
次に、図6及び図7(a) (b) に示されるガイドレール1Aは本発明の他の実施例であって、前記一対の溝形部材2,2の間に介在される機能部材3Aが上述の平板とは異なり断面において所要寸法の幅広い部材で、その一方の短辺部(図6において上側)に全長にわたってラック20が設けられたものである。そして、そのラック20を備える機能部材3Aは、両溝形部材2,2と所要のピッチで中空鋲5によって一体に締結されている。なお、図上前記実施例と同じ部分については前記実施例と同一の符号を付して詳細な説明を省略している。
【0025】
このような構成のガイドレール1Aは、例えば図8で示されるように、機体Bにブラケット105 にて取り付けられる2個1組とするガイドローラ101 ,101 を複数組(例えば4組)で、それらの各ガイドローラ101 ,101 が前記溝形部材2,2の上下軌道面7,7にそれぞれ当接して支持されるように配置して、前記ブラケット105 の一方に取り付けられた減速駆動モータ106 の出力軸に取り付くピニオン106aをその機能部材3Aのラック20に噛み合わせ、当該ガイドレール1Aが減速駆動モータ106 の駆動によって直線運動されるような使用ができる。
【0026】
このような使用によると、このガイドレール1Aは丁度シリンダにおけるピストンのような働きをするのに適用できる。この際も、機能部材3Aの軌道面7,7より突き出す部分の両側面はガイドローラ101 ,101 の横振れを防止する案内面となる。もちろん、このガイドレール1Aはその組立に用いられている中空鋲5の孔の部分で固定体(機体など)にボルトにて取り付けて固定させ、逆に減速駆動モータを備える移動体(例えば搬送台)に付設される2個1組とするガイドローラ101 ,101 を複数組、このガイドレール1Aの軌道面7,7に接触させてガイドレール1Aに保持されるように上下から挟み、減速駆動モータによってラック20に噛み合わせたピニオンを駆動させることによって、その移動体を自走させる機構に採用できる。なお、前述のような自走する移動体のガイドレール1Aとして使用される場合、そのガイドレール1Aの取り付け支持は移動体側の走行に支障を来さないように片持ちとなる。
【0027】
また、別の実施例としてガイドレール1Bが高さの高い形状のものを用いる場合の具体例を図9によって示す。この態様では両溝形部材2A,2Aのウエブ高さがフランジ部の幅に比べて著しく大で、このような形態の場合両溝形部材2A,2Aの間に介在される機能部材3B,3B’ は上下2分割されたものを用いて、それら各機能部材3B,3B’ の間に空間を設けて軽量化を図っている。この形状にされたガイドレール1Bにおいては、例えば一方の機能部材3Bに前述の実施例と同様にラック20を全長にわたって設け、他方の機能部材3B’ はガイドローラ101 ,101 の案内となるように一部を軌道面7,7から突き出して配されている。その他の部分については前述のものと同様である。なお、一方の機能部材3Bについてはラック以外の機能を備えたものとすることができる。
【0028】
前記ガイドレール1Bは、例えば図10で示されるように機体Cの適所に中空鋲5の孔を利用してボルト締着されて配置される。この例ではウエブ2b’ が広いので安定した取り付けができる。また、ガイドレール1Bの断面二次モーメントが大きくなるので荷重の大きい搬送物の移動用として効果的に使用できる。なお、この具体例はガイドレール1Bに対してキャリア130 がそのガイドレール1Bの上下両軌道面7,7に2個1組とされるガイドローラ101 ,101 をそれぞれ当接させて吊下げられ、同時に機能部材3B,3B’ の突出部両側面にそれらガイドローラ101 ,101 の側部を案内されて、そのキャリア130 に搭載のモータ106 の駆動でラック20と噛み合うピニオン106aを駆動させて自走できるものを表している。
【0029】
次に、図11に示されるガイドレール1Cは、上述の溝形部材2,2と同様の構成の両溝形部材2,2の間に、機能部材3Cとしてその両溝形部材2,2の各ウエブ2b,2b内面に沿わせてそれぞれ軌道面7,7よりも外側に適宜寸法突き出す板材にてなる横振れ止めガイド板3c’ が配され、それら両横振れ止めガイド板3c’ ,3c’ で挟まれるようにして図上上下をそれぞれ前記軌道面より低く設定される角形断面のスペーサー3c” を配され、これら各部材3c’ ,3c” を上述のガイドレール1Bと同様に所定の間隔で複数の中空鋲5によって一体に結合させた構成のものである。
【0030】
このように構成されたガイドレール1Cは、例えば図12で示されるように機体Cに対してブラケット107 にて中空鋲5の孔を利用して取り付けられ、そのガイドレール1Cの上下両軌道面7,7にそれぞれ2個1組とするガイドローラ101 ,101 を当接して、これらガイドローラ101 ,101 を備えるキャリア140 に対してたとえば無端歯付きベルト(あるいはチエーン)のような巻掛け伝導帯108 の一部を金具108aで連結してその巻掛け伝導帯108 に加えられる動力で、そのキャリア140 が走行するような機構に採用できる。この場合、駆動用の巻掛け伝導帯108 は、両横振れ止めガイド板3c’ とスペーサー3c” とによって形成される空間部を通じて有効に操作できる。
【0031】
さらに、図13で示されるように、前述のスペーサー3c” に対応する機能部材3Dの上面に基部を狭めて逆勾配にされた突条11を軸線方向に形成して、下面側にラック20を形成される構造にされたガイドレール1Dとすることもできる。このようなガイドレール1Dの場合は、突条11に例えばドッグ112 を取り付けてこのガイドレール1Dに沿って走行するキャリアに取り付けられたスイッチなど(図示せず)をそのドッグ112 によって操作させて走行範囲を制御させることができる。なお、ラック20にキャリア140 付設の駆動機の出力軸に取り付くピニオン(図示せず)を噛み合わせて自走させる。そのキャリア140 に付設のガイドローラ101 ,101 は、前述の実施例と同様であり、前述のものと同一の部分については同一の符号を付して説明を省略している。
【0032】
また、図14に示されるガイドレール1Eは、図11で示される具体例のものにおいて機能部材3Eの上面にはアリ溝12を設け、下面にはT字溝13を設けて、そのアリ溝12にはドック113 を所要位置にてはめ込み固定し、T字溝13にはプラスチックで作られた帯状のラック21を全長にわたって嵌め込んで前記具体例のものと同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
このほかに、例えば図15(a) (b) で示されるガイドレール1Fは、図示のように機能部材3Fを両溝形部材2,2の軌道面7,7より突き出して両側を案内面とされ、その機能部材3Fの一方の突き出し部の端面(上面または下面)に突条15を設けてドッグなどの取付部とする(図15(a) )か、あるいは両側に突条16を設けて、その突条16を例えば巻掛け駆動チエン115 のガイド(図15(b) )とすることもできる。
【0034】
以上は直線状態のガイドレールについて説明したが、図16及び図17で示されるように両溝形部材2’,2’を所要半径で描く円弧状の彎曲されたガイドレール1Gとすることができる。このような彎曲ガイドレール1Gは、両溝形部材2’,2’をプレス加工によって対称に形成し、機能部材3Gとしては厚板を用途に応じて前述のように形成された部材を曲げ加工して所要ピッチで中空鋲5により一体にかしめて結合させることにより構成できる。なお、機能部材3Gについては必要に応じて板材をレーザカットによって複数枚製作して、それら板材を重ね合わせて組み立てることもできる。そして、このような彎曲ガイドレール1Gはその両端部について適宜長さの直線部1G’ ,1G’ を設けて、接続が容易なように構成するのが好ましい。図中符号3gはガイドローラの横振れ防止案内板である。
【0035】
しかして、上述の各実施例における各部の材質については、溝形部材として一般に鋼板を用いて、この鋼板をプレス曲げ加工により所要寸法に成形される。そして、機能部材としては単純形状の場合構造用炭素鋼を使用し、溝部や突条を備える場合にはアルミニウム,アルミニウム合金,機械的強度の高いプラスチックで押し出しもしくは引き抜き加工によって成形されたものを選択使用される。特に、機能部材については、その用途に応じて比較的強度の高いものが要求される場合、金属製のものを採用し、突条や凹部,溝を有する場合にはアルミニウム,アルミニウム合金,機械的強度の高いプラスチックで押し出しもしくは引き抜き加工されたものを使用することによって加工性を高めるとともに、安価に提供できる。なお、機能部材にステンレス鋼を使用すれば耐蝕性のあるガイドレールとして設置環境のよくない場所での使用に適するものが得られる。また、機能部材としてはそれらが中実のものあるいは中空のものなどを任意採用することができる。その機能部材に中空のものを採用した場合は軽量化のほかに中空内部を利用することもできる。
【0036】
また、溝形部材については、高張力構造用鋼板をプレス曲げ加工して形成したものを使用すれば、板の厚みを薄くできて、しかも機械的強度を高め得る。さらに、鋼板の表面に潤滑性を有するプラスチック(たとえば四弗化エチレンなど)でコーティングされたものを使用したり、あるいは軌道面を構成する部分となる面に潤滑性を有するプラスチックの層を形成した鋼板(実質的に加工する鋼板の片側の面に潤滑性を有するプラスチックの層が形成された鋼板)をプレス曲げ加工して形成されたものを使用することができ、このような材料によれば、ガイドレールの軌道面の摩擦係数を低減できて有効である。このほかに、溝形部材には二枚の鋼板の間に合成樹脂層を挟んで一体にされた複合鋼板(制振鋼板ともいわれる)で構成すれば、振動の発生を防止できる。また、この溝形部材はステンレス鋼板を曲げ加工して使用すれば耐蝕性の高いものとすることができる。さらに、必要に応じてポリアミド系の合成樹脂,炭素繊維入り合成樹脂など機械的強度の高い材料で押し出し成形されたものを採用することもできる。
【0037】
以上の実施例にては、溝形部材がすべてウエブに対してフランジ部を直角に屈曲させた形状のものについて説明したが、図18(a) で示されるようにウエブ2bに対してフランジ部2cを図上上側を下向きに、そして下側を上向きにそれぞれ所要角度で傾斜させることもできる。また、図18(b) で示されるようにウエブ2bに対してフランジ部2dを図上上側を上向きに、そして下側を下向きにそれぞれ所要角度で傾斜させることもできる。これらのような形状の溝形部材にすればガイドローラの周面が軸線に対して鋭角または鈍角に形成されたものを用いることもできる。あるいは前述のようなフランジ部2c,2dがウエブ2bに対して傾斜する形状の場合、それらの軌道面7,7に対して通常のガイドローラをその回転軸を傾斜させて対応させることができる。
【0038】
また、前記図11で示されるような構成のガイドレール1Cにあっては、そのスペーサ3c” を図19で示されるように適宜間隔で設けるようにすることができる。もちろん、この場合はスペーサ3c” が配置された位置で中空鋲5にて締結される。このようにすれば軽量化できる。
【0039】
以上に説明したように本発明に係るガイドレールは溝形部材と機能部材とを締結一体化するにあたり中空鋲を使用されているが、この中空鋲に換えて通常のリベット,ネジ止めあるいは溶接によって一体化することもできる。
【0040】
また、本発明に係るガイドレールは、前述の各種形状のものにおいて連続して長い距離で配置させる必要があるときには、図20で示されるようにガイドレール1の両端部で機能部材3を短くして前述のように一部空間部Eを形成し、その空間部Eにはまり込む継手片30を用いることにより長く連結することができる。このような場合、例えば前述のガイドレール1の場合のように、それら両ガイドレール1,1の端部を突き合わせて前記両端部での機能部材3,3の短い部分によって生じる空間部Eに対応する長さの継手片30を、その空間部Eに挿入して予め設けられている溝形部材2,2側と継手片30との複数の取付孔31,32にそれぞれボルトあるいはリベットを挿入して締結することによって長尺のガイドレールを形成できるのである。なお、その継手片30は連結される機能部材3と同じものを用いることにより機能を損なわれることがない。また、両溝形部材2,2のフランジ部端部の一方にはへこみ部2i,2iを、そして他方には鈎状に突部2j,2jを設けて、これらへこみ部2i,2iと突部2j,2jとの係合で両者を対応させることで正しく連結することができる。
【0041】
このほかに、図21で示されるように前述の各種ガイドレールにおいて、機能部材3の一端部を両溝形部材2,2の端より所要寸法短くして、他端部をその短くされた寸法だけ長くなるように、言い換えると機能部材3を所要寸法ずらせて溝形部材2,2と結合させ、へこみ側の部分eに突き出し側の部分fを嵌め合わせて両溝形部材2,2の外側から当て板33,33を当てがって予め対応する位置に設けられた取付孔35,35’ ,35” と隣接する位置の中空鋲5の孔部に対する取付孔36にてボルト締結されることにより結合連結することができる。
【0042】
また、本発明のガイドレールによれば、溝形部材を前述のように鋼板をプレス曲げ加工によって形成されるので、その寸法精度を高めることが容易であり、その構成材質を選択することによって耐久性のあるガイドレールを安価に提供することができる。したがって、前述の機能部材に例えばラックを備えるものを使用する場合、その長さを適宜短い寸法に切断して使用すれば、単なるガイドレールではなく案内部を備えたラックとして機械部品に組み込むのに便利である。
【0043】
また、本発明のガイドレールは、図22によって示されるように、断面構造が両溝形部材2,2のウエブ2b,2bの各内側に沿わせて横向きのリップ37,37を備える溝形部材よりも背の高い機能部材3Hを対称に配して、それら機能部材3H,3Hの間にスペーサー38を介在させて所要のピッチで中空鋲5によって一体に形成される構成のガイドレール1Hとすることができる。このようなガイドレール1Hは、その断面二次モーメントが大きくなるので長尺のレールはもとより比較的短い寸法にして、前述のようにこのガイドレール1Hの上下の軌道面7,7に2個1組とする複数組のガイドローラを係合させて、それらガイドローラ対とこのガイドレール1Hとを相対的に移動させることにより直線運動装置として組み込んで自動機などの駆動要素としてより有効に使用できる。
【0044】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、直接的にガイドローラが案内される軌道面を備えた部分を2個の溝形部材により構成され、2個のガイドローラを1軸上で所要の間隔に配されたものを、それらガイドローラの横方向(支持軸線方向)への振れを前記両溝形部材間に介在させる機能部材の一部で前記軌道面から突出させた部分によって案内させて円滑な走行案内ができ、かかる溝形部材と用途に応じた構造の機能部材とを任意選択して組み合わせることによって、従来製作が困難であった構造のガイドレールが至極容易に、かつ安価に提供できるようになった。そして、それら両溝形部材と機能部材とを個々に製作して組み合わせる構成であるから、加工精度を高めることができる。また、継手構造についても簡単に構成できるので長い寸法のガイドレールの構築も容易になる。またさらに、ガイドレールのみならず比較的短い所要寸法にして、機械の駆動を伴う駆動の一要素として組み込むような用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る移送装置のガイドレールの最も基本的な構成の具体例の斜視図である。
【図2】図1におけるII−II視断面図である。
【図3】図1におけるIII −III 視断面図である。
【図4】本発明に係る移送装置のガイドレールの最も基本的な構成の具体例の使用態様を示す一例図である。
【図5】本発明に係る移送装置のガイドレールの最も基本的な構成の具体例の他の使用態様を示す図である。
【図6】機能部材としてラックを備えた移送装置のガイドレールの斜視図である。
【図7】図6における断面図を示し、(a) はa−a視断面で、(b) はb−b視断面である。
【図8】図7で示されるラックを備えたガイドレールの使用態様を表す一例の図である。
【図9】本発明に係るガイドレールの他の実施例の縦断面図である。
【図10】図9で示されるガイドレールの使用態様の一例を表す図である。
【図11】本発明に係るガイドレールの他の実施例の縦断面図である。
【図12】図11で示されるガイドレールの使用態様の一例を表す図である。
【図13】本発明に係るガイドレールの他の実施例の縦断面図で、ガイドローラとの関係を併記されている。
【図14】本発明に係るガイドレールの他の実施例の縦断面図で、ガイドローラとの関係を併記されている。
【図15】本発明に係るガイドレールの他の実施例の縦断面図である。
【図16】本発明に係るガイドレールの他の実施例で彎曲されたガイドレールの正面図である。
【図17】図16の拡大縦断面図である。
【図18】本発明に係るガイドレールの他の実施例の縦断面図である。
【図19】本発明に係るガイドレールの他の実施例の一部横断平面図である。
【図20】本発明に係るガイドレールの継手部を示す一部分解斜視図である。
【図21】本発明に係るガイドレールの継手部の他の例を示す一部分解斜視図である。
【図22】本発明に係るガイドレールの他の実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H ガイドレール
2,2’ 溝形部材
2a,2c,2d フランジ部
2b,2b’ ウエブ
3,3A,3B,3B’,3C,3D,3E,3F,3G 機能部材
3a 機能部材の突出部
4,6 取付孔
5 中空鋲
7 軌道面
11,15,16 突条
12 アリ溝
13 T字溝
20,21 ラック
30 継手片
100 搬送移動台
101 ガイドローラ
Claims (10)
- フランジ部を外側方に向けて左右対称に配される一対の溝形部材と、これら一対の溝形部材間に位置して移動体の移動を案内する機能を備えた機能部材とを重ね合わせ、これら各部材を前記溝形部材のウエブ個所で長手方向に所要の間隔で前記各部材に共通して穿設された複数の孔を通じて締結部材により一体に結合され、前記溝形部材のフランジ部表面が移動体のガイドローラの軌道面となり、前記機能部材における前記軌道面に隣接する部分が前記ガイドローラを案内する部位となるように構成することを特徴とする移送装置のガイドレール。
- 前記機能部材は、前記溝形部材のフランジ部より外に突出す寸法の板材あるいは厚肉材で形成されている請求項1に記載の移送装置のガイドレール。
- 前記機能部材は、所要寸法の部材で前記溝形部材による軌道面より突き出す端面に歯を形成されたラックである請求項1に記載の移送装置のガイドレール。
- 前記機能部材は、所要寸法の部材で開放面となる部分に長手方向のT字形溝もしくはアリ溝が設けられて、前記溝部にセンサ,マイクロスイッチあるいはスイッチなどの制御機器類を操作する部品を所要位置にセットできる構成である請求項1に記載の移送装置のガイドレール。
- 前記機能部材は、プラスチックで構成される請求項1〜4のいずれかに記載の移送装置のガイドレール。
- 前記溝形部材は、プラスチックで形成されている請求項1に記載の移送装置のガイドレール。
- 前記両溝形部材と前記機能部材とを一体化するための締結部材は、中空鋲であることを特徴とする請求項1に記載の移送装置のガイドレール。
- 前記両溝形部材と前記機能部材との組合わせ構造で、前記ガイドローラの軌道面と案内部位とが形成され、その機能部材の上下方向の中心線を基準とする所要半径の曲線を描いて彎曲に形成される曲線型のガイドレールである請求項1〜7に記載の移送装置のガイドレール。
- 前記曲線型のガイドレールは、その両端部をそれぞれ少なくとも継手部を形成できる区間が直線に形成されている請求項8に記載の移送装置のガイドレール。
- 前記移送装置のガイドレールは、両溝形部材に対して前記機能部材の一端部を接続に要する長さ寸法その溝形部材の一端から突き出させるとともに、他端を前記突き出し長さ相当分溝形部材の他端よりも短かくなるようにずらせた状態で組み合わされて、一端部には両溝形部材間に形成される空間部が、他端部には前記空間部に対応する機能部材による突出部がそれぞれ形成され、前記空間部に別のガイドレールにおける前記突出部を嵌め合わせ得るようにされ、前記両溝形部材の端部と前記機能部材の突出部の嵌め合わせ部分にそれぞれ合致する取付孔を設けて、その嵌め合わせ部で当該取付孔を通じて締結要素にて締結されることによりガイドレールの接続ができる構成である請求項1〜9に記載の移送装置のガイドレール。
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