JP3555942B2 - 撹拌用羽根車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、撹拌槽内に収容された各種被撹拌物を撹拌するための、撹拌用羽根車に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の上記撹拌用羽根車として、U.S.Pat.5,297,938、U.S.Pat.4,468,130に係る羽根車がある。
これらの撹拌用羽根車によれば、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、その吐出量(回転する羽根車に対しての被撹拌流体等の軸方向流量)は、90%などと若干減少するが、その羽根車を回転させる駆動動力を、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、ほぼ同一性能のもの(吐出量がほぼ同一のもの)で、ほぼ50%以上も大幅にダウンさせることができる。そして、その羽根車の消費電力等のランニングコストを大幅に削減できる。
また、U.S.Pat.5,297,938に係る羽根車によれば、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、その羽根車の軸方向流量が大きいために、撹拌槽の底部に位置する被撹拌物をも含めて、撹拌槽内全体の被撹拌物を万遍なく効率良く撹拌できる。それと共に、羽根バランスが向上するために、羽根車を支持して回転させる回転軸、該軸を回転させる電動モータ及び減速ギヤ等からなる駆動手段をコンパクト化できる。そして、その設備費等のコストを大幅に低減できる。
そのために、これらの羽根車は、近時の省エネ化、省資源化用の羽根車として、広く利用される可能性がある。
ここで、パドル型の羽根車とは、複数枚の平らな帯板状の羽根が、回転軸周囲に嵌着されて回転軸と共に回転するハブ周囲に、その羽根表面をハブの軸心を垂直に横切る平面に対して45度等のほぼ均一角度に傾斜させて、ハブの軸心に対してほぼ垂直な方向に放射状に延設されてなる羽根車をいう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のU.S.Pat.5,297,938などの羽根車は、そのハブ周囲に放射状に延設された複数枚の羽根が、円弧状に複雑に湾曲した形状をしていて、その羽根の形成作業に、多大な手数と労力を要した。
そこで、本発明者は、鋭意研究の末、上記の羽根車における羽根の形成作業の容易化を図るためには、帯板に近い形状の平板を、円弧状ではなく、平面状に折り曲げて、上記の羽根車の羽根に似せた形状の羽根を形成すれば、良いことに想到した。
そして、上記のU.S.Pat.5,297,938の羽根車の羽根に似せた形状をした、帯板に近い形状の平板の所定箇所を平面状に折り曲げてなる羽根を、複数枚形成した。そして、その複数枚の羽根をハブ周囲に放射状に延設してなる羽根車を試作した。そして、その試作した羽根車を用いて、撹拌槽内に収容され流体の撹拌実験を行った。
すると、その撹拌用羽根車が、上記のU.S.Pat.5,297,938に係る羽根車とほぼ優劣のない性能を持つことが、判明した。
即ち、その試作した羽根車の駆動動力を、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、ほぼ同一性能のもので、ほぼ50%以上も大幅にダウンさせることができることが、判明した。また、その試作した羽根車によれば、その軸方向流量が高まって、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、撹拌槽の底部に位置する被撹拌物をも含めて、撹拌槽内全体の被撹拌物を万遍なく効率良く撹拌できることが、判明した。それと共に、羽根バランスが向上して、その試作した羽根車を支持する回転軸、該軸を回転させる電動モータ及び減速ギヤ等からなる駆動手段を大幅にコンパクト化できることが、判明した。
そして、このような試験結果に基づいて、帯板に近い形状の平板の所定箇所を平面状に折り曲げた単純な形状をした複数枚の羽根がハブ周囲に放射状に延設されてなる、駆動動力を大幅に低減できると共に、撹拌効率を大幅に向上させることのできる、撹拌用羽根車を開発した。
【0004】
即ち、本発明は、帯板に近い形状の平板の所定箇所を平面状に折り曲げた単純な形状の複数枚の羽根がハブ周囲に放射状に延設されてなる、駆動動力を大幅に低減できると共に、撹拌効率を大幅に向上させることのできる、撹拌用羽根車を提供することを目的している。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的のために、本発明の撹拌用羽根車は、回転軸に取着されて回転軸と共に回転するハブと、該ハブ周囲に放射状に延設された複数枚の羽根とからなり、
その複数枚の羽根のそれぞれが、帯板の一方の長手方向の側縁がその中途部からその先端部にかけて帯板内方に斜め直線状にカットされると共に、その帯板の一方の長手方向の側縁中途部のカット開始点の反対側に位置する帯板の他方の長手方向の側縁中途部から前記斜め直線状にカットされた帯板の一方の長手方向の側縁中途部にかけて設定された斜め直線状の折り曲げ線を境に、帯板の先部が帯板の後部に対して斜め下方に折り曲げられた同一形状に形成され、
その帯板から形成された複数枚の羽根のそれぞれの後部が、該羽根の後部表面を前記ハブの軸心を垂直に横切る平面に対してほぼ均一の角度に傾斜させて、ハブの軸心に対してほぼ垂直な方向に向けて、ハブに取着されて、その複数枚の羽根のそれぞれの先端部表面の前記ハブの軸心を垂直に横切る平面に対しての傾斜角度βが、その羽根の後部表面のハブの軸心を垂直に横切る平面に対しての傾斜角度αよりも小角度に設定されたことを特徴としている。
【0006】
この撹拌用羽根車においては、その複数枚の羽根のそれぞれを、帯板の一方の長手方向の側縁をその中途部からその先端部にかけて帯板内方に斜め直線状に単純にカットすると共に、その帯板の一方の長手方向の側縁中途部のカット開始点の反対側に位置する帯板の他方の長手方向の側縁中途部から斜め直線状にカットした帯板の一方の長手方向の側縁中途部にかけて設定された斜め直線状の折り曲げ線を境に、帯板の先部を帯板の後部に対して斜め下方に平面状に単純に折り曲げるのみで、手数と労力を掛けずに容易かつ迅速に形成できる。
【0007】
本発明の撹拌用羽根車においては、前記ハブ周囲に延設された羽根の延設方向に対してほぼ垂直なハブの軸心を含む平面と、前記折り曲げ線を境に先部を折り曲げる前の平板状をなす帯板からなる羽根の先端部との間の距離をDとした場合に、前記帯板から形成された羽根の後部の幅が約D/6に設定され、前記羽根の延設方向に対してほぼ垂直なハブの軸心を含む平面と前記帯板の一方の長手方向の側縁中途部のカット開始点との間の距離が約0.4Dに設定され、前記羽根の先端部の幅が約D/9に設定され、前記折り曲げ線の帯板の他方の長手方向の側縁に対しての傾斜角度λが約45度に設定され、その折り曲げ線を境に下方に折り曲げられた帯板の先部の帯板の後部に対しての折り曲げ角度γが約15度に設定され、前記ハブに取着された羽根の後部表面のハブの軸心を垂直に横切る平面に対しての傾斜角度αが約30〜32度に設定され、前記ハブに後部が取着された羽根の先端部表面のハブの軸心を垂直に横切る平面に対しての傾斜角度βが約20〜22度に設定された構造とすることを好適としている。
【0008】
この撹拌用羽根車にあっては、その羽根車の駆動動力を、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、ほぼ同一性能のもので、ほぼ50%以下にダウンさせることができる。
また、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、その撹拌能力を大幅に向上させることができる。それと共に、羽根バランスを向上させて、その羽根車を支持する回転軸、該軸を回転させる電動モータ及び減速ギヤ等からなる駆動手段を大幅にコンパクト化できる。
【0009】
本発明の撹拌用羽根車においては、前記羽根の後部が前記ハブに着脱自在に取着された構造とすることを好適としている。
【0010】
この撹拌用羽根車にあっては、ハブ周囲に延設された羽根が、破損したり、摩耗したりして、その性能が低下した場合に、その破損したり摩耗したりした羽根の後部をハブから容易かつ迅速に取り外すことができる。そして、そのハブに、新品の羽根の後部を容易かつ迅速に取着し直すことができる。そして、その破損したり摩耗したりした羽根の交換を容易かつ迅速に行える。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1と図2は本発明の撹拌用羽根車の好適な実施の形態を示し、図1はその平面図、図2はその正面図である。以下に、この撹拌用羽根車を説明する。
【0012】
この撹拌用羽根車では、図1に示したように、ハブ10周囲に放射状に延設される複数枚(図では3枚)の羽根20のそれぞれを、均等幅の帯板22の一方の長手方向の側縁24を、その中途部からその先端部23にかけて帯板22内方に斜め直線状にカットすると共に、その帯板の一方の長手方向の側縁24中途部のカット開始点25の反対側に位置する帯板の他方の長手方向の側縁26中途部から斜め直線状にカットされた帯板の一方の長手方向の側縁24中途部にかけて設定された斜め直線状の折り曲げ線28を境に、帯板の先部27を帯板の後部29に対して斜め下方に折り曲げた同一形状に形成している。
【0013】
帯板22から形成された同一形状をした複数枚の羽根のそれぞれの後部29は、図2に示したように、該羽根の後部29表面をハブの軸心12を垂直に横切る平面14に対してほぼ均一の角度に傾斜させて、ハブの軸心12に対してほぼ垂直な方向に向けて、ハブ10に溶接等により取着している。そして、その複数枚の羽根20のそれぞれの先端部23表面のハブの軸心12を垂直に横切る平面14に対しての傾斜角度βを、その羽根の後部29表面のハブの軸心12を垂直に横切る平面14に対しての傾斜角度αよりも小角度に設定している。
【0014】
ハブ10は、筒状をしていて、回転軸30周囲に嵌挿して、ハブ10周壁に螺挿されたねじ40等を締め付けることにより、回転軸30の所定部位に取着できる構造をしている。
【0015】
この撹拌用羽根車においては、その複数枚の羽根20のそれぞれを、帯板22一方の側縁の先部を帯板22内方に斜め直線状に単純にカットしたり、帯板22中途部に設定された斜め直線状の折り曲げ線28を境に、帯板の先部27を帯板の後部29に対して斜め下方に平面状に単純に折り曲げたりするのみで、手数と労力を掛けずに容易かつ迅速に形成できる。
【0016】
図1と図2に示した撹拌用羽根車においては、図3、図4及び図5に示したように、ハブ10周囲に延設された羽根20の延設方向に対してほぼ垂直なハブの軸心12を含む平面18と、折り曲げ線28を境に先部27を折り曲げる前の平板状をなす帯板22からなる羽根の先端部23との間の距離をDとした場合に、その帯板22から形成された羽根の後部29の幅を約D/6に設定し、羽根20の延設方向に対してほぼ垂直なハブの軸心12を含む平面18と帯板22の一方の長手方向の側縁24中途部のカット開始点25との間の距離を約0.4Dに設定し、その羽根の先端部23の幅を約D/9に設定し、その折り曲げ線28の帯板22の他方の長手方向の側縁26に対しての傾斜角度λを約45度に設定し、その折り曲げ線28を境に下方に折り曲げた帯板の先部27の帯板の後部29に対しての折り曲げ角度γを約15度に設定し、そのハブ10に取着した羽根の後部29表面のハブの軸心12を垂直に横切る平面14に対しての傾斜角度αを約30〜32度に設定し、そのハブ10に後部29を取着した羽根の先端部23表面のハブの軸心12を垂直に横切る平面14に対しての傾斜角度βを約20〜22度に設定すると良い。
【0017】
実験結果によれば、このように設定した撹拌用羽根車(I)にあっては、下記の表1に示したように、その羽根車の駆動動力(負荷動力)を、従来汎用のパドル型の羽根車(P)に比べて、ほぼ同一性能のもの(吐出量がほぼ同一のもの)で、ほぼ50%以下にダウンさせることができることが、判明した。
また、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、その撹拌能力を大幅に向上させることができることが、判明した。それと共に、羽根バランスを向上させて、その羽根車を支持する回転軸、該軸を回転させる電動モータ及び減速ギヤ等からなる駆動手段を大幅にコンパクト化できることが、判明した。
【0018】
【表1】
【0019】
図6と図7は本発明の撹拌用羽根車の他の好適な実施の形態を示し、図6はその平面図、図7はその正面図である。以下に、この撹拌用羽根車を説明する。
【0020】
この撹拌用羽根車では、羽根の後部29を、ハブ10に延設された支持腕16に複数本のボルト18等を用いて着脱自在に取着している。その他は、図1と図2に示した前述の撹拌用羽根車と同様に構成している。
【0021】
この撹拌用羽根車にあっては、ハブ10周囲に延設された羽根20が、破損したり、摩耗したりして、その性能が低下した場合に、そのハブ10に延設された支持腕16にボルト18等を用いて取着された破損したり摩耗したりした羽根の後部29をボルト18を緩める等してハブ10から容易かつ迅速に取り外すことができる。そして、そのハブ10に延設された支持腕16に、新品の羽根の後部29を複数本のボルト18等を用いて容易かつ迅速に取着し直すことができる。そして、その破損したり摩耗したりした羽根20の交換を容易かつ迅速に行える。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の撹拌用羽根車によれば、そのハブ周囲に放射状に延設する羽根のそれぞれを、帯板の一方の側縁の先部を帯板内方に斜め直線状に単純にカットしたり、帯板中途部に設定された斜め直線状の折り曲げ線を境に、帯板の先部を帯板の後部に対して斜め下方に平面状に単純に折り曲げたりするのみで、手数と労力を掛けずに容易かつ迅速に形成できる。そして、撹拌用羽根車の製造工程の大幅な簡易化、容易化が図れる。
また、その撹拌用羽根車の駆動動力を、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、ほぼ同一性能のもので、ほぼ50%以上も大幅にダウンさせることができる。また、従来汎用のパドル型の羽根車に比べて、撹拌槽の底部に位置する被撹拌物をも含めて、撹拌槽内全体の被撹拌物を万遍なく効率良く撹拌できる。それと共に、その撹拌用羽根車を支持する回転軸、該軸を回転させる電動モータ及び減速ギヤ等からなる駆動手段を大幅にコンパクト化できる。そして、省エネタイプの撹拌効率の良い羽根車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の撹拌用羽根車の平面図である。
【図2】本発明の撹拌用羽根車の正面図である。
【図3】本発明の撹拌用羽根車の羽根の寸法図である。
【図4】本発明の撹拌用羽根車の羽根を折り曲げ線方向から見た図である。
【図5】本発明の撹拌用羽根車の羽根の正面図である。
【図6】本発明の撹拌用羽根車の平面図である。
【図7】本発明の撹拌用羽根車の正面図である。
【符号の説明】
10 ハブ
12 ハブの軸心
14 ハブの軸心を垂直に横切る平面
16 支持腕
18 羽根の延設方向に対してほぼ垂直なハブの軸心を含む平面
20 羽根
22 帯板
23 羽根の先端部
25 カット開始点
27 帯板の先部
28 折り曲げ線
29 帯板の後部
30 回転軸
Claims (3)
- 回転軸に取着されて回転軸と共に回転するハブと、該ハブ周囲に放射状に延設された複数枚の羽根とからなり、
その複数枚の羽根のそれぞれが、帯板の一方の長手方向の側縁がその中途部からその先端部にかけて帯板内方に斜め直線状にカットされると共に、その帯板の一方の長手方向の側縁中途部のカット開始点の反対側に位置する帯板の他方の長手方向の側縁中途部から前記斜め直線状にカットされた帯板の一方の長手方向の側縁中途部にかけて設定された斜め直線状の折り曲げ線を境に、帯板の先部が帯板の後部に対して斜め下方に折り曲げられた同一形状に形成され、
その帯板から形成された複数枚の羽根のそれぞれの後部が、該羽根の後部表面を前記ハブの軸心を垂直に横切る平面に対してほぼ均一の角度に傾斜させて、ハブの軸心に対してほぼ垂直な方向に向けて、ハブに取着されて、その複数枚の羽根のそれぞれの先端部表面の前記ハブの軸心を垂直に横切る平面に対しての傾斜角度βが、その羽根の後部表面のハブの軸心を垂直に横切る平面に対しての傾斜角度αよりも小角度に設定されたことを特徴とする撹拌用羽根車。 - 前記ハブ周囲に延設された羽根の延設方向に対してほぼ垂直なハブの軸心を含む平面と、前記折り曲げ線を境に先部を折り曲げる前の平板状をなす帯板からなる羽根の先端部との間の距離をDとした場合に、前記帯板から形成された羽根の後部の幅が約D/6に設定され、前記羽根の延設方向に対してほぼ垂直なハブの軸心を含む平面と前記帯板の一方の長手方向の側縁中途部のカット開始点との間の距離が約0.4Dに設定され、前記羽根の先端部の幅が約D/9に設定され、前記折り曲げ線の帯板の他方の長手方向の側縁に対しての傾斜角度λが約45度に設定され、その折り曲げ線を境に下方に折り曲げられた帯板の先部の帯板の後部に対しての折り曲げ角度γが約15度に設定され、前記ハブに取着された羽根の後部表面のハブの軸心を垂直に横切る平面に対しての傾斜角度αが約30〜32度に設定され、前記ハブに後部が取着された羽根の先端部表面のハブの軸心を垂直に横切る平面に対しての傾斜角度βが約20〜22度に設定された請求項1記載の撹拌用羽根車。
- 前記羽根の後部が前記ハブに着脱自在に取着された請求項1又は2記載の撹拌用羽根車。
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