JP3554924B2 - フリーヒドロキシルアミン水溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応によりフリーヒドロキシルアミンを製造する方法に於いて、その反応操作および/または反応後の液を蒸留する操作を、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールの共存下に行なう、フリーヒドロキシルアミン水溶液を安全且つ高収率に得る方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒドロキシルアミンは、医農薬中間原料や金属表面処理剤等工業的に幅広い用途で使用されている。
【0003】
しかしながら、フリーヒドロキシルアミンは、非常に不安定な性質により容易に分解するため、これまで一般的には比較的安定なヒドロキシルアミンの塩(ヒドロキシルアンモニウム塩)として合成され、あるいは使用されてきた。フリーヒドロキシルアミンの分解は、金属イオン、特に重金属イオン共存下および/または高濃度の状態および/または強アルカリ中および/または比較的高い温度等の条件において特に起こり易いため、いかに安全且つ高純度で高収率に製品のフリーヒドロキシルアミン水溶液を得るかを重要とし、これまで数々の試みがなされてきた。
【0004】
最近のフリーヒドロキシルアミンを得る方法として、硫酸ヒドロキシルアンモニウムとアルカリとの反応が挙げられるが、特にアルカリとして酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムを用いると、低コストでフリーヒドロキシルアミンを製造することができる。更に、この反応から生じる硫酸カルシウムは、水に対する溶解度が非常に低いために水溶液から容易に分離除去され、この後の蒸留操作を容易にし、高純度のヒドロキシルアミン水溶液を得られる点も有利である。しかしながら、この方法の場合、工業的に使用される酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムは、天然物を加工して得ていることから、種々の金属イオンを含有し、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応からフリーヒドロキシルアミンを製造する場合には、重金属イオンによる分解を特に考慮しなければならなかった。
【0005】
従来、例えば、米国特許第5472679号明細書および米国特許第5266290号明細書では、硫酸ヒドロキシルアンモニウムとアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の酸化物および/または水酸化物とを、アルコールを含まない水中で反応させてフリーヒドロキシルアミンを含む反応液を得、この反応液から65℃以下での単蒸留によってアルコールを含まない高濃度フリーヒドロキシルアミン水溶液を留出させて得ている。しかしながらこの方法では、硫酸ヒドロキシルアンモニウムとアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の酸化物および/または水酸化物との反応は、40℃以下および該反応後の液の単蒸留は減圧下65℃以下という穏やかな条件で操作しているが、これらの操作に於いては系中の金属イオンの存在を全く考慮しておらず、フリーヒドロキシルアミン安定剤なしで反応および蒸留を行なう場合は、安全上問題が残る可能性のある方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、一般に分解し易く取り扱いの困難とされるフリーヒドロキシルアミンを工業規模で生産する場合は、安全性および生産性が問題となる。
【0007】
そこで本発明の目的は、フリーヒドロキシルアミンの分解を抑制し、製品としてのフリーヒドロキシルアミン水溶液を安全且つ高収率に得る方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のフリーヒドロキシルアミン水溶液の製造方法は、硫酸ヒドロキシルアンモニウムを含む水溶液と、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムのスラリーとを混合して反応させフリーヒドロキシルアミン水溶液を製造する方法に於いて、その反応操作および/または反応後のフリーヒドロキシルアミン水溶液を得るための蒸留操作を、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールの共存下に行なうことを特徴とするフリーヒドロキシルアミン水溶液の製造方法である。
【0009】
本発明では、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応操作、および/または反応後の蒸留操作の際、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを反応系中に共存させておくことにより、操作中に起こるフリーヒドロキシルアミンの分解を抑制し、フリーヒドロキシルアミンを高収率に得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、フリーヒドロキシルアミン水溶液製造時のヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する安定剤に関するものであるが、本発明において目的の作用を得るためには、安定剤は以下に述べるような条件で使用することが好ましい。
【0012】
2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを反応系中に共存させても、極端な高温状態ではフリーヒドロキシルアミンの分解反応は起こり得るので、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応は、好ましくは80℃以下、より好ましくは40℃以下の反応温度で操作することが望ましい。実用的で好適な温度範囲は、20〜40℃である。
【0013】
2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを反応系中に共存させても、極端なアルカリ性条件下ではフリーヒドロキシルアミンの分解反応は起こり得るので、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応はpH計を備えた設備で行ない、弱アルカリ性条件のpHまで、特にpH9.0〜9.2で止めることが望ましい。pH9.2では、アルカリが過剰になることはないので、アルカリ性条件下でのフリーヒドロキシルアミンの分解反応を効果的に抑えることができる。
【0014】
2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールは、反応前の硫酸ヒドロキシルアンモニウムを含む水溶液、あるいは、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムのスラリーのいずれに添加しておいてもよいが、これらの両方に添加しておくとよりフリーヒドロキシルアミンの分解抑制に効果的である。
【0015】
また、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを、反応後の液に更に添加してから蒸留操作を行なうと、より安全に操作することができる。
【0016】
本発明で用いられる2−ヒドロキシエチルジスルフィド(沸点:158−163℃ / 3.5mmHg)、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオール(沸点:174.00℃ / 14.5mmHg)は、フリーヒドロキシルアミン(沸点:142℃)より高沸点のアルコール系化合物であり、特に2−ヒドロキシエチルジスルフィドが有効である。
【0017】
本発明で用いられる2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールは、アルコール系化合物でありながら、フリーヒドロキシルアミン水溶液の製造工程においては、重金属イオンが触媒となって進行する分解を効果的に抑制するだけでなく、単蒸留によるフリーヒドロキシルアミン水溶液を留出させて得る際に、高沸点をもつ2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールが蒸留残渣側に残り、容易に分離されるのでむしろ非常に有用な安定剤である。
【0018】
2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールの好ましい添加量は、反応前の反応物中の重金属イオンの量によって異なる。通常重金属イオン含有量の当量以上を添加することが好ましいが、2倍以上添加することが好ましい。また、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールの好ましい添加量の上限に一般的な使用限度は特に設けないが、市販されている試薬を該操作に用いる場合、並びに故意に分解反応を促進させるような要素のない状態で操作を行なう場合は、原料試薬の硫酸ヒドロキシルアンモニウム1モルに対し、および蒸留操作前のヒドロキシルアミン1モルに対し各々0.001モル以下で上記効果を十分発揮する。
【0019】
【実施例】
(実施例1)
還流冷却器、滴下口、温度計付きpH計および撹拌器を備えた2L容の四つ口フラスコに、市販されている粉末硫酸ヒドロキシルアンモニウム234.5gと水234.5gを仕込み、次いで2−ヒドロキシエチルジスルフィドを硫酸ヒドロキシルアンモニウム1モルに対し約0.00011モル量添加し、硫酸ヒドロキシルアンモニウムを含む水溶液とした。一方、1L容ビーカーに水酸化カルシウム110gと水675gを仕込んだ後、ローラーポンプに取り付けたマイクロチューブの一端をこれに浸し、他の一端を1L容四つ口フラスコの口に通した。四つ口フラスコにおいて撹拌下、25乃至30℃で水酸化カルシウムスラリーをpH9.2になるまで供給した。15分の熟成時間をおいた後、析出した固体状硫酸カルシウムを含むスラリーを濾過し、分離されたケークを100gの水で濾過洗浄した。洗浄液と併合した濾液1,108gは93.8gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。洗浄後のケークには0.2gの遊離ヒドロキシルアミンが付着していた。原料として使用された94.4gのヒドロキシルアミン分に対し、合計して94.0gの遊離ヒドロキシルアミンが生成したことになる。
【0020】
上記操作によって得られたヒドロキシルアミン濃度8.5%の反応濾液に、2−ヒドロキシエチルジスルフィドをヒドロキシルアミン1モルに対し約0.00011モル量添加した後、2L容蒸留フラスコに移した。フラスコ内液温を40℃に維持するよう減圧調整下にフリーヒドロキシルアミン水溶液を留出させた。これにより、ヒドロキシルアミン77.1gの遊離ヒドロキシルアミンを含む留出液を得た。蒸留残渣は13.9gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。すなわち、蒸留に附されたヒドロキシルアミン分に対して97.0%が安定に存在していたことになる。
【0021】
(参考例)
実施例1において、添加する安定剤を8−ヒドロキシキノリンとした以外は、実施例1と同様の操作を実施した。硫酸ヒドロキシルアンモニウムと水酸化カルシウムとの反応後、析出した固体状硫酸カルシウムを含むスラリーを濾過し、分離されたケークを100gの水で濾過洗浄した。洗浄液と併合した濾液1,107gは92.0gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。洗浄後のケークには0.2gの遊離ヒドロキシルアミンが付着していた。原料として使用された94.5gのヒドロキシルアミン分に対し、合計して92.2gの遊離ヒドロキシルアミンが生成したことになる。
【0022】
上記操作によって得られたヒドロキシルアミン濃度8.3%の反応濾液を、8−ヒドロキシキノリン添加の後蒸留することにより、ヒドロキシルアミン71.8gの遊離ヒドロキシルアミンを含む留出液を得た。蒸留残渣は14.7gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。すなわち、蒸留に附されたヒドロキシルアミン分に対して94.0%が安定に存在していたことになる。
【0023】
(比較例1)
実施例1において、安定剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を実施したが、生成するフリーヒドロキシルアミンの分解が見られた。また、析出した固体状硫酸カルシウムを含むスラリーを濾過し、分離されたケークを100gの水で濾過洗浄した。洗浄液と併合した濾液1,112gは61.1gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。洗浄後のケークには0.2gの遊離ヒドロキシルアミンが付着していた。原料として使用された94.5gのヒドロキシルアミン分に対し、合計して61.3gの遊離ヒドロキシルアミンが生成したことになる。
【0024】
上記操作によって得られたヒドロキシルアミン濃度5.5%の反応濾液を蒸留したところ、蒸留フラスコ内において発熱を伴う激しい分解反応がおこり始めたため、蒸留操作を直ちに中止した。
【0025】
【発明の効果】
一般に分解し易く取り扱いの困難とされるフリーヒドロキシルアミンを、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応により得る方法に於いて、本発明によればその反応操作および/または反応後の液を蒸留する操作を、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを系中に共存させることにより、フリーヒドロキシルアミンの分解を抑制し、製品としてのフリーヒドロキシルアミン水溶液を安全且つ高収率に得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応によりフリーヒドロキシルアミンを製造する方法に於いて、その反応操作および/または反応後の液を蒸留する操作を、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールの共存下に行なう、フリーヒドロキシルアミン水溶液を安全且つ高収率に得る方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒドロキシルアミンは、医農薬中間原料や金属表面処理剤等工業的に幅広い用途で使用されている。
【0003】
しかしながら、フリーヒドロキシルアミンは、非常に不安定な性質により容易に分解するため、これまで一般的には比較的安定なヒドロキシルアミンの塩(ヒドロキシルアンモニウム塩)として合成され、あるいは使用されてきた。フリーヒドロキシルアミンの分解は、金属イオン、特に重金属イオン共存下および/または高濃度の状態および/または強アルカリ中および/または比較的高い温度等の条件において特に起こり易いため、いかに安全且つ高純度で高収率に製品のフリーヒドロキシルアミン水溶液を得るかを重要とし、これまで数々の試みがなされてきた。
【0004】
最近のフリーヒドロキシルアミンを得る方法として、硫酸ヒドロキシルアンモニウムとアルカリとの反応が挙げられるが、特にアルカリとして酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムを用いると、低コストでフリーヒドロキシルアミンを製造することができる。更に、この反応から生じる硫酸カルシウムは、水に対する溶解度が非常に低いために水溶液から容易に分離除去され、この後の蒸留操作を容易にし、高純度のヒドロキシルアミン水溶液を得られる点も有利である。しかしながら、この方法の場合、工業的に使用される酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムは、天然物を加工して得ていることから、種々の金属イオンを含有し、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応からフリーヒドロキシルアミンを製造する場合には、重金属イオンによる分解を特に考慮しなければならなかった。
【0005】
従来、例えば、米国特許第5472679号明細書および米国特許第5266290号明細書では、硫酸ヒドロキシルアンモニウムとアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の酸化物および/または水酸化物とを、アルコールを含まない水中で反応させてフリーヒドロキシルアミンを含む反応液を得、この反応液から65℃以下での単蒸留によってアルコールを含まない高濃度フリーヒドロキシルアミン水溶液を留出させて得ている。しかしながらこの方法では、硫酸ヒドロキシルアンモニウムとアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の酸化物および/または水酸化物との反応は、40℃以下および該反応後の液の単蒸留は減圧下65℃以下という穏やかな条件で操作しているが、これらの操作に於いては系中の金属イオンの存在を全く考慮しておらず、フリーヒドロキシルアミン安定剤なしで反応および蒸留を行なう場合は、安全上問題が残る可能性のある方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、一般に分解し易く取り扱いの困難とされるフリーヒドロキシルアミンを工業規模で生産する場合は、安全性および生産性が問題となる。
【0007】
そこで本発明の目的は、フリーヒドロキシルアミンの分解を抑制し、製品としてのフリーヒドロキシルアミン水溶液を安全且つ高収率に得る方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のフリーヒドロキシルアミン水溶液の製造方法は、硫酸ヒドロキシルアンモニウムを含む水溶液と、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムのスラリーとを混合して反応させフリーヒドロキシルアミン水溶液を製造する方法に於いて、その反応操作および/または反応後のフリーヒドロキシルアミン水溶液を得るための蒸留操作を、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールの共存下に行なうことを特徴とするフリーヒドロキシルアミン水溶液の製造方法である。
【0009】
本発明では、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応操作、および/または反応後の蒸留操作の際、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを反応系中に共存させておくことにより、操作中に起こるフリーヒドロキシルアミンの分解を抑制し、フリーヒドロキシルアミンを高収率に得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、フリーヒドロキシルアミン水溶液製造時のヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する安定剤に関するものであるが、本発明において目的の作用を得るためには、安定剤は以下に述べるような条件で使用することが好ましい。
【0012】
2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを反応系中に共存させても、極端な高温状態ではフリーヒドロキシルアミンの分解反応は起こり得るので、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応は、好ましくは80℃以下、より好ましくは40℃以下の反応温度で操作することが望ましい。実用的で好適な温度範囲は、20〜40℃である。
【0013】
2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを反応系中に共存させても、極端なアルカリ性条件下ではフリーヒドロキシルアミンの分解反応は起こり得るので、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応はpH計を備えた設備で行ない、弱アルカリ性条件のpHまで、特にpH9.0〜9.2で止めることが望ましい。pH9.2では、アルカリが過剰になることはないので、アルカリ性条件下でのフリーヒドロキシルアミンの分解反応を効果的に抑えることができる。
【0014】
2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールは、反応前の硫酸ヒドロキシルアンモニウムを含む水溶液、あるいは、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムのスラリーのいずれに添加しておいてもよいが、これらの両方に添加しておくとよりフリーヒドロキシルアミンの分解抑制に効果的である。
【0015】
また、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを、反応後の液に更に添加してから蒸留操作を行なうと、より安全に操作することができる。
【0016】
本発明で用いられる2−ヒドロキシエチルジスルフィド(沸点:158−163℃ / 3.5mmHg)、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオール(沸点:174.00℃ / 14.5mmHg)は、フリーヒドロキシルアミン(沸点:142℃)より高沸点のアルコール系化合物であり、特に2−ヒドロキシエチルジスルフィドが有効である。
【0017】
本発明で用いられる2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールは、アルコール系化合物でありながら、フリーヒドロキシルアミン水溶液の製造工程においては、重金属イオンが触媒となって進行する分解を効果的に抑制するだけでなく、単蒸留によるフリーヒドロキシルアミン水溶液を留出させて得る際に、高沸点をもつ2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールが蒸留残渣側に残り、容易に分離されるのでむしろ非常に有用な安定剤である。
【0018】
2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールの好ましい添加量は、反応前の反応物中の重金属イオンの量によって異なる。通常重金属イオン含有量の当量以上を添加することが好ましいが、2倍以上添加することが好ましい。また、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールの好ましい添加量の上限に一般的な使用限度は特に設けないが、市販されている試薬を該操作に用いる場合、並びに故意に分解反応を促進させるような要素のない状態で操作を行なう場合は、原料試薬の硫酸ヒドロキシルアンモニウム1モルに対し、および蒸留操作前のヒドロキシルアミン1モルに対し各々0.001モル以下で上記効果を十分発揮する。
【0019】
【実施例】
(実施例1)
還流冷却器、滴下口、温度計付きpH計および撹拌器を備えた2L容の四つ口フラスコに、市販されている粉末硫酸ヒドロキシルアンモニウム234.5gと水234.5gを仕込み、次いで2−ヒドロキシエチルジスルフィドを硫酸ヒドロキシルアンモニウム1モルに対し約0.00011モル量添加し、硫酸ヒドロキシルアンモニウムを含む水溶液とした。一方、1L容ビーカーに水酸化カルシウム110gと水675gを仕込んだ後、ローラーポンプに取り付けたマイクロチューブの一端をこれに浸し、他の一端を1L容四つ口フラスコの口に通した。四つ口フラスコにおいて撹拌下、25乃至30℃で水酸化カルシウムスラリーをpH9.2になるまで供給した。15分の熟成時間をおいた後、析出した固体状硫酸カルシウムを含むスラリーを濾過し、分離されたケークを100gの水で濾過洗浄した。洗浄液と併合した濾液1,108gは93.8gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。洗浄後のケークには0.2gの遊離ヒドロキシルアミンが付着していた。原料として使用された94.4gのヒドロキシルアミン分に対し、合計して94.0gの遊離ヒドロキシルアミンが生成したことになる。
【0020】
上記操作によって得られたヒドロキシルアミン濃度8.5%の反応濾液に、2−ヒドロキシエチルジスルフィドをヒドロキシルアミン1モルに対し約0.00011モル量添加した後、2L容蒸留フラスコに移した。フラスコ内液温を40℃に維持するよう減圧調整下にフリーヒドロキシルアミン水溶液を留出させた。これにより、ヒドロキシルアミン77.1gの遊離ヒドロキシルアミンを含む留出液を得た。蒸留残渣は13.9gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。すなわち、蒸留に附されたヒドロキシルアミン分に対して97.0%が安定に存在していたことになる。
【0021】
(参考例)
実施例1において、添加する安定剤を8−ヒドロキシキノリンとした以外は、実施例1と同様の操作を実施した。硫酸ヒドロキシルアンモニウムと水酸化カルシウムとの反応後、析出した固体状硫酸カルシウムを含むスラリーを濾過し、分離されたケークを100gの水で濾過洗浄した。洗浄液と併合した濾液1,107gは92.0gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。洗浄後のケークには0.2gの遊離ヒドロキシルアミンが付着していた。原料として使用された94.5gのヒドロキシルアミン分に対し、合計して92.2gの遊離ヒドロキシルアミンが生成したことになる。
【0022】
上記操作によって得られたヒドロキシルアミン濃度8.3%の反応濾液を、8−ヒドロキシキノリン添加の後蒸留することにより、ヒドロキシルアミン71.8gの遊離ヒドロキシルアミンを含む留出液を得た。蒸留残渣は14.7gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。すなわち、蒸留に附されたヒドロキシルアミン分に対して94.0%が安定に存在していたことになる。
【0023】
(比較例1)
実施例1において、安定剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を実施したが、生成するフリーヒドロキシルアミンの分解が見られた。また、析出した固体状硫酸カルシウムを含むスラリーを濾過し、分離されたケークを100gの水で濾過洗浄した。洗浄液と併合した濾液1,112gは61.1gの遊離ヒドロキシルアミンを含有していた。洗浄後のケークには0.2gの遊離ヒドロキシルアミンが付着していた。原料として使用された94.5gのヒドロキシルアミン分に対し、合計して61.3gの遊離ヒドロキシルアミンが生成したことになる。
【0024】
上記操作によって得られたヒドロキシルアミン濃度5.5%の反応濾液を蒸留したところ、蒸留フラスコ内において発熱を伴う激しい分解反応がおこり始めたため、蒸留操作を直ちに中止した。
【0025】
【発明の効果】
一般に分解し易く取り扱いの困難とされるフリーヒドロキシルアミンを、硫酸ヒドロキシルアンモニウムと酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムとの反応により得る方法に於いて、本発明によればその反応操作および/または反応後の液を蒸留する操作を、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールを系中に共存させることにより、フリーヒドロキシルアミンの分解を抑制し、製品としてのフリーヒドロキシルアミン水溶液を安全且つ高収率に得ることができる。
Claims (2)
- 硫酸ヒドロキシルアンモニウムを含む水溶液と、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムのスラリーとを混合して反応させフリーヒドロキシルアミン水溶液を製造する方法に於いて、その反応操作および/または反応後のフリーヒドロキシルアミン水溶液を得るための蒸留操作を、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、または、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオールの共存下に行なうことを特徴とするフリーヒドロキシルアミン水溶液の製造方法。
- 反応を、80℃以下の温度で行ないpH9.0〜9.2で止めることを特徴とする請求項1記載のフリーヒドロキシルアミン水溶液の製造方法。
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JP2000260831A JP3554924B2 (ja) | 2000-08-30 | 2000-08-30 | フリーヒドロキシルアミン水溶液の製造方法 |
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JP2000260831A JP3554924B2 (ja) | 2000-08-30 | 2000-08-30 | フリーヒドロキシルアミン水溶液の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2002068719A JP2002068719A (ja) | 2002-03-08 |
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ID=18748776
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