JP3554703B2 - 情報端末装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は携帯情報端末(PDA)、携帯電話(PHSを含む)、テレビジョンやビデオなどの家電機器のリモコン装置、パソコンカメラ、および監視カメラなどの画像入力機能を持つ情報端末装置に関し、詳しくは、所望の静止画像や動画像とともに、デジタルコードまたは文字の近接静止画像を高い精度で読みとり、そのまま表示するか、あるいは読み取り結果を認識し、その認識したデジタルコードまたは文字の情報に基づいて各種処理を行うことができる情報端末装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
CCDなどの画像入力機能を持った情報端末装置においては、たとえば、使用者自身の映像や風景の映像など所望の映像とともに、デジタルコードの1種であるバーコードなどの近接画像を読みとることがきわめて有用であることが多い。このようなバーコードは、たとえばメールアドレス、ホームページアドレス、電話番号、FAX番号、会社名、所属、役職名など多くの情報を表すことができるので、これらのバーコードを上記所望の画像と組み合わせて使用することによって、きわめて有用なコミュニケーションが実現できる。
【0003】
上記バーコードの読みとりは、従来は専用の読みとり用スキャナーを用いて行われていた。また、パソコンなどの画像入力機器を用いてバーコードを読みとった例もあるが、この場合は、たとえば使用者や風景の像など、近距離(たとえばほぼ0.3m)から遠方の所望の距離にある被写体(このような被写体を本明細では第1の被写体と記す)の撮像に用いる画像入力用のレンズ(以下、第1のレンズと記す)を用いて、バーコードの読みとりも行っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記読みとり用スキャナーを用いる方法は、実用上きわめて複雑であり、また、使用者や風景など第1の被写体の撮像を行う上記第1のレンズを用いてバーコードの読みとりを行うと、解像度が不十分であるため、特に2次元バーコードなどの複雑な情報を読みとって認識することは困難であった。
【0005】
このような問題に対処するため、本発明者は、所望の距離にある第1の被写体と当該第1の被写体より近距離に配置された第2の被写体(上記第1の被写体より近距離にある被写体を本明細書では第2の被写体と記す)を、上記第1のレンズおよび上記第2の被写体を撮像するための接写用の第2のレンズを用いて、それぞれ結像させる携帯型情報端末装置を提案した(特願2000−245266)。この携帯型情報端末装置によって、上記従来の技術は著しく改善され、使用者自身や風景など、近距離から遠距離にある第1の被写体の撮像のみではなく、バーコードなど第1の被写体より近距離にある第2の被写体の撮像も、容易かつ高い精度で行なうことが可能になった。
【0006】
本発明は、上記携帯型情報端末装置の使用をさらに容易にするために行なわれたものであって、上記第1および第2の被写体を極めて容易かつ高い精度で撮像することができる情報端末装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の情報端末装置は、撮像レンズと、当該撮像レンズによって形成された映像を取り込む撮像素子と、当該撮像素子によって取り込まれた映像を格納する映像メモリを有し、上記撮像レンズは、所望の距離にある第1の被写体を撮像するに適した第1の焦点距離をもつ第1のレンズ部と、上記第1の被写体より近距離に配置された第2の被写体を撮像するに適した第2の焦点距離をもつ第2のレンズ部が、同一の面に一体化されて形成された多焦点レンズであることを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明の情報端末装置においては、近距離(たとえば0.3m)から無限遠の所望距離にある第1の被写体と、それより近い距離に配置された第2の被写体を、それぞれ第1および第2のレンズ部によって撮像して撮像素子に取り込み、さらに映像メモリに格納する。第1の被写体の撮像に用いる第1の焦点距離を持った第1のレンズ部とは異なる第2の焦点距離を持つ第2レンズ部によって、第2の被写体の撮像を行なっているので、従来よりはるかに高い解像度が得られる。しかも、第1および第2のレンズ部が、同一の面に配置されて、撮像レンズが一体化して構成されている。そのため、二つの撮像レンズを用いて、第1および第2の被写体をそれぞれ撮影した場合とは異なり、二つの撮像レンズが取り付けられた円盤を回転させたり、両撮像レンズをスライドさせたりして、レンズを切り替えあるいは交換する操作は不要である。第1および第2のレンズ部の切り替えは、撮像素子の画面を分割することによって容易かつ迅速に行なうことができ、実用上極めて有利である。また、撮像対象を第1の被写体と第2の被写体間で切り替えることによって撮像素子の同じ画面を用いても実効的にレンズの切り替えは可能である。第1および第2のレンズ部が配置される上記面としては、上記撮像レンズの光軸に直交する面であることが最も好ましい。
【0009】
上記第1のレンズ部としては平面形状が円形若しくは多角形のレンズ、第2のレンズ部としては平面形状が環状(ドーナツ形)のレンズをそれぞれ用い、この環状の第2のレンズ部が、上記第1のレンズ部の外縁部に接し、この第1のレンズ部と同心すなわち第1および第2のレンズ部の光軸が一致する同心円型構造とすると、極めて好ましい結果が得られる。第1および第2のレンズ部の配置を逆にして、第2のレンズ部の平面形状を円形若しくは多角形として内側に配置し、第1のレンズ部を環状として外側に配置してもよいことはいうまでもない。
【0010】
このような多焦点の撮像レンズは、図13(A)に示したように、ガラス製の長焦点レンズ65および短焦点レンズ66を用意し、図13(B)に示したように、上記長焦点レンズ65の中央部65aと短焦点レンズ66の周辺部66bを組み合わせればよい。これにより、図13(C)に示したように、上記長焦点レンズ65の円形の中央部65aを第1のレンズ部61とし、短焦点レンズ66の環状の周辺部66bを第2のレンズ部62とする撮像レンズが得られる。なお、上記のように、両レンズの関係を逆にして、上記長焦点レンズ65の環状の周辺部を第2のレンズ部とし、短焦点レンズ66の円形の中央部を第1のレンズ部とする、多焦点の撮像レンズを構成してもよい。
【0011】
なお、本発明において使用される撮像レンズは、焦点距離が互いに異なる第1および第2のレンズ部を有していればよいのであるから、上記のように焦点距離が互いに異なる二つのガラス製のレンズをそれぞれ別途作製して、両者を合体させるばかりではなく、例えばアクリル樹脂などのプラスチックを成形加工して、一体化された第1および第2のレンズ部を同時に作製してもよい。前者の場合は、第1および第2のレンズ部の間の境界は、明確な線状になるが、後者の場合は、第1および第2のレンズ部の境界部は連続的になって、明確な境界線は形成されないが、実用上の支障はない。
【0012】
また、内側のレンズ部の平面形状は、円形のみではなく、楕円形若しくは多角形であってもよい。これらの多角形の角部が丸みを有していてもよいことは、いうまでもない。本明細書では、これらの円形、楕円形および多角形を総称して、円形若しくは多角形と記した。同様に外側の環状のレンズの平面形状に関しても、円環状だけではなく、外縁形状および内縁形状が円形以外にも、楕円形若しくは多角形であってもよい。これらの多角形の角部が丸みを有していてもよいことは、いうまでもない。さらに、例えば、外縁形状が多角形で、内縁形状が円形のように、外縁形状と内縁形状が互いに異なっていてもよい。本明細書では、これらの形状を総称して、環状と記した。上記のように、これら内側のレンズ部と外側の環状のレンズ部の光軸は、互いに一致して配置される。
【0013】
また、第1および第2のレンズ部の平面形状を半円形、半楕円形若しくは多角形とし、両レンズ部の直線部分が互いに接するように配置しても、好ましい結果が得られる。この場合も、上記のように、ガラス製の二つのレンズ部をそれぞれ別途作製した後に一体化してもよく、プラスチックを成形加工して、一体化された両レンズ部を同時に形成してもよい。上記のように、プラスチックを成形加工した場合は、第1および第2のレンズ部の境界部は連続的になって明確な直線にならないが、実用上支障はない。さらに、各レンズ部の平面形状も、上記のように半円形のみではなく、半楕円形や多角形としてもよいことはいうまでもなく、本明細書では、これらを総称して半円形若しくは多角形と記した。
【0014】
上記撮像素子の結像部にそれぞれ形成された、上記第1および第2の被写体にそれぞれ対応する第1および第2の映像は、上記映像メモリに格納されて、それぞれ第1および第2の映像信号とされる。これらの第1および第2の映像は、それぞれ例えば使用者などの動画像およびバーコードなどの静止画像として上記映像メモリに格納することができる。
【0015】
上記第2の被写体は、例えば1次元若しくは2次元のバーコード等のデジタルコードまたは文字であり、この場合は、このデジタルコードまたは文字を解読する手段および上記デジタルコードまたは文字を解読した後、解読完了を報知または表示する手段を有し、さらに、解読された上記デジタルコードまたは文字の情報にもとづいて、所望の通信を行なう手段を具備することができる。
【0016】
上記撮像レンズと撮像素子の間には、上記第1のレンズ部と第2のレンズ部を切り替えるための光学シャッターを配置することができ、このような光学シャッターとしては、液晶を用いたシャッターが実用上すぐれている。また、上記第2の被写体を撮像する際に、上記撮像素子の走査タイミングと同期して、フラッシュ光を発光させる機構を有することができる。第2の被写体は極めて近接していることが多いが、撮像する際に上記撮像素子の走査タイミングと同期してフラッシュ光を発光させるようにすれば、使用者などの影の発生は効果的に防止されて鮮明な映像を得ることができ、第2の被写体の撮像に有用である。なお、上記フラッシュ光としては、通常の写真撮影用フラッシュから得られるフラッシュ光のみではなく、赤外線を発するフラッシュおよび紫外線を発するフラッシュから、それぞれ得られるフラッシュ光を用いることができ、本明細書では、これらを総称してフラッシュ光と記す。
【0017】
上記撮像素子からの飽和電流を検出する手段と、当該検出する手段からの信号にもとづいて、上記撮像素子の駆動回路を駆動させる手段を具備することができる。これは、光の蓄積時間を長くすることによって、感度を向上させるものであって、撮像素子が出す飽和電子を利用することにより、適切な蓄積時間を検知することができる。また、所望の色フィルタを用いて上記第2の被写体を撮像する手段を具備することも実用上有用であり、これにより、第2の被写体を高いコントラストで撮像することができる。上記第2の被写体を撮像して得られた映像を、所望の色に合わせて信号処理する手段を具備するようにすれば、映像のコントラスト向上に有効である。
【0018】
上記第2の被写体が蛍光を発する場合は、蛍光物質を活性化する励起光を照射しながら撮像し、得られた映像の信号と上記励起光を照射することなしに撮像して得られた映像の信号の差から、上記第2の被写体の映像を求めることができる。このようにすれば、励起光の照射によって発光するインクなどによって形成されたバーコードなどの検出に極めて有用である。上記励起光としては、使用された蛍光物質の発する光より短波長の光(例えば紫外線)が用いられ、上記蛍光物質が赤外領域の光を発する場合は、可視光に近い赤外光を用いることができる。
【0019】
また、液晶表示手段をさらに設けて、上記第2のレンズ部の光軸が上記液晶表示手段の画面の側にあるようにすれば、液晶表示手段が有する照明装置を、被写体の照明に用いることができる。なお、本発明は、携帯電話、PHS(personal handy−phone system)およびPDA(personal digital assistants)などに用いることができる。
【0020】
第2の被写体を撮像する際に、被写体までの距離の設定が不正確であると、良好な結果を得るのが困難である。しかし、所望の通信を行なうためのアンテナを具備し、当該アンテナを格納した際における当該アンテナの外部における長さによって、上記第2のレンズと上記第2の被写体の間の距離を制御し、上記長さと距離が等しいようにすれば、極めて容易かつ迅速に第2の被写体までの距離を正確に設定できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
実施例1
図1および図2を用いて本発明の第1の実施例を説明する。本実施例においては、撮像レンズ22を構成するガラス製の第1および第2のレンズ部61、62の境界は直線であり、半円形の第1のレンズ部61の下縁部に、半円形の第2のレンズ部62の上縁部を接して配置した。第1のレンズ部61の焦点距離は5mmであり、図2(A)に示したように、近傍にある被写体(たとえば距離0.3mにある携帯電話の利用者の顔など)や遠距離の風景など、所望の第1の被写体81を撮像素子21の第1の領域に第1の像91として結像させた。また、第2のレンズ部62の.焦点距離は4.3mmであり、たとえばデジタルコードの1種であるバーコードなど、上記第1の被写体より近距離にある第2の被写体82の像を、撮像素子21の第2の領域に第2の像92として結像させた。
【0022】
すなわち、上記第1のレンズ部61を用いて第1の被写体81を撮像し、駆動回路14によって撮像素子21を動作させて、第1の像91の映像信号を撮像素子21から取り出した。得られた第1の被写体81の映像信号を、カメラ制御ユニット(以下「CCU」と略称)11によって処理した後、動画像または静止画像として映像メモリ12に蓄積した。なお、本実施例において、第1のレンズ部61の主面と撮像素子21との間隔は5mm〜5.1mmとした。また、図2(A)に示したように、撮像レンズ22の第1および第2のレンズ部61、62の周りにはシールド63を配置して、第2のレンズ部62を通過する光が、撮像素子21における第1の像91の結像部に到達するのを防止した。
【0023】
次に、距離約30mmの位置にある2次元バーコードを、第2の被写体82として撮像した。まず、第2のレンズ部62を用いて、第2の被写体82を撮像し、さらに、駆動回路14によって撮像素子21を動作させて、第2の像82の映像信号を取り出し、静止画像として映像メモリ12に蓄積した。なお、上記のように、第1および第2のレンズ部61、62の周りには、光シールド63が配置されているので、第1のレンズ部61を通過した光が、第2の像92の結像部に到達するのも、同様に防止された。
【0024】
静止画像として映像メモリ12に蓄積された、上記第2の被写体82の映像信号を、制御プログラム16を用いて中央演算処理装置(以下「CPU」と略称)15で演算処理した。なお、上記各回路に必要な電力は電源19によって供給した。
【0025】
本実施例により、0.3mから無限遠方までにおける第1の被写体81と、当該第1の被写体81より近距離にある第2の被写体82(バーコード)を撮像して、映像メモリ12にそれぞれ動画像および静止画像として記憶させることができた。
【0026】
第1および第2のレンズ部61、62の周りにそれぞれ設けた上記シールド63を除いた例を、図2(B)示した。この場合は第1のレンズ部61を通る光91aは撮像素子21の全面に入射される。同様に、第2のレンズ部62を通る光92aも、撮像素子21の全面に入射する。そのため、第1の被写体81を撮像している場合は、第2のレンズ部62を通過した光が、結像していない光として撮像素子21に入射するのでコントラストが低下する。しかし、CCU11によってコントラストを補正することにより、ほぼ正常な画像を得ることができた。同様に、第2の被写体82を撮像する場合は、第1のレンズ部61を通過した光が、結像していない光として撮像素子21に入射し、コントラストを低下させるが、CCU11によってコントラストを補正して、ほぼ正常な画像にすることができた。
【0027】
実施例2
本実施例は、図3に示したように、図1に示した情報端末装置に液晶表示装置13、液晶等を用いた光学シャッタによるレンズ選択用切り替え用回路17、スイッチ20およびメモリ18を付加した例である。撮像用レンズ22としては、環状の第2のレンズ部62が、円形である第1のレンズ部61の外縁部に接して当該第1のレンズ部61と同心に配置され、両レンズ部61、62が一体化された多焦点の撮像レンズ22を用い、撮像素子21などは上記実施例1と同じものを使用した。
【0028】
上記実施例1の場合と同様に、撮像レンズ22の第1および第2のレンズ部61、62を用いて第1の被写体および第2の被写体(2次元バーコード)を撮像する際、スイッチ20を押し込んで切替回路17を動作させ、それぞれ動画像および静画像として映像メモリ12に蓄積し、処理プログラム16によってCPU15で演算し、2次元バーコードの内容を静画像として液晶表示装置13に表示した。
【0029】
さらに、処理プログラム16とCPU15によって解析された2次元バーコードに関する情報をメモリ18に記憶し、記憶された情報にもとづいてCPU15を動作させて情報の授受を行なった。その結果、2次元バーコードを撮像するだけで、当該2次元バーコードが示す電話番号を認識したり、または当該バーコードが示すインターネットホームページのアドレスを認識して、液晶表示装置13に表示することができた。
【0030】
実施例3
図4を用いて本発明の第3の実施例を説明する。図4から明らかなように、本実施例の情報端末装置3は、図3に示した構成の情報端末装置に無線送受信機構31を付加した構造を有しており、撮像レンズ22としては上記実施例2と同じものを使用した。上記実施例2と同様に、処理プログラム16とCPU15によって解析され2次元バーコードの情報は、メモリ18に記憶され、記憶された情報をもとにして携帯電話やPHS中の無線送受信機構31を動作させて、情報の授受を行なった。その結果、2次元バーコードを撮像するだけで、当該2次元バーコードが示す電話番号へ発信したり、または当該バーコードが示すインターネットのホームページをダウンロードして、ホームページの内容を液晶表示装置13に表示するなど、バーコードの内容にもとづいて多くのことを実行することができた。
【0031】
実施例4
図5を用いて本発明の第4の実施例を説明する。図5から明らかなように、本実施例の情報端末装置3は、図4に示した上記実施例3に、さらにスピーカー41および発光機構42を付加したものであり、撮像レンズ22としては、上記実施例2、3において使用したものと同じものを使用した。
【0032】
本実施例は、上記実施例3において、2次元バーコードを解析した後、処理の完了を利用者に通知する機能として、音声または確認音を発生するスピーカー41、または光信号を発する発光機構42を有している。さらに液晶表示装置13に解析結果を表示する機構を有しているので、情報の授受が正当であることを利用者が確認することができる。これにより、使用者の誤動作を効果的に防止することができた。
【0033】
実施例5
図6から明らかなように、本実施例は、図4に示した上記実施例3に、さらに照明制御機構43および照明ランプ44が付加されており、撮像レンズ22としては上記実施例2〜4において用いたものと同じものを使用した。バーコードなど、極めて近距離(たとえば30mm前後)に配置された第2の被写体の撮像を行なう場合、照明制御機構43から供給される電力によって照明ランプ44を点灯する。したがって、本実施例によれば、携帯型情報端末装置3自体によって、天井照明や室内の自然光などによる照明が遮られても、鮮明な画像を得ることができ、処理プログラム16およびCPU15による2次元バーコードの情報の解析を、容易に行なうことができた。特に、照明が不足してCCU11からの画像信号のレベルが低い場合は、画像信号レベルから照明制御機構43へ信号を送って、照明ランプ44への電力供給を増加させ、上記画像信号のレベルを高くすることが可能になった。
【0034】
また、処理プログラム16とCPU15によって、解析された2次元バーコードの情報をメモリ18に記憶し、その情報をもとにして無線電話機構31を動作させて、情報の授受を行なうことが可能となった。そのため、2次元バーコードを撮像するだけで、当該2次元バーコードが示す電話番号へ電話をしたり、当該バーコードが示すインターネットのホームページを読み出して、ホームページの内容を液晶表示装置13に表示することができた。
【0035】
実施例6
本実施例は携帯電話におけるバーコードの撮像に関する例であり、図7を用いて説明する。本実施例における情報端末装置3は、図7に示したように、携帯電話若しくはPHSである。机51などの上に置かれた接写すべき第2の被写体(たとえば2次元バーコード)5を撮像する際には、上記のように第2のレンズ部62を用いて、撮像素子21に被写体5の像を結像させる。この際、被写体5と撮像システムのレンズとの間隔は重要であり、精度よく合わせる必要がある。
【0036】
図7に示したように、情報端末装置3の有するアンテナ32の先端方向に机51が位置するようにした後、アンテナ32がスタンバイの状態になるまで情報端末装置3を下方に移動させる。このようにすると、アンテナ32が短縮されて格納されている状態になる。したがって、このときの接写用のアタッチメントレンズ25と被写体5との間隔が最適になるように、アンテナ32のスタンバイ時の長さを決めておけば、アンテナ32がスタンバイの状態になるまで情報端末装置3を移動させることによって、情報端末装置3とバーコード5の間の距離を容易に最適とすることができる。
【0037】
本実施例では、アンテナ32の格納時の長さ15mm、撮像レンズの第1のレンズ部(図示せず)の焦点距離を5mmとし、第2のレンズ部62の焦点距離を3.8mmとした場合、約15mmの位置にある第2の被写体5であるバーコードを良好に撮像することができ、2次元バーコードの解析精度が向上した。
【0038】
また、接写時には情報端末装置3が通常と上下が反転するが、液晶表示装置13への画像表示も、水平方向および垂直方向の走査方向を逆にすることにより、接写撮像中の画像および解析結果の表示を読みやすくすることができた。なお、第1のレンズ部で撮像すると、約30cmから50cmのところにいる人物に焦点が合うようになった。なお、本実施例において、撮像レンズとしては上記実施例2〜5において用いたものと同じものを用い、第1のレンズ部による第1の被写体の撮像については、説明を省略した。また、図7において、符号33はスピーカー、34はダイヤルボタン、35はマイクロフォンを、それぞれ表す。本実施例においても、撮像レンズが環状の第2のレンズ部と円形の第1のレンズ部が一体化された多焦点レンズが使用されているため、装置は極めてコンパクトになり、取り扱い操作も容易になった。
【0039】
実施例7
本実施例を図8を用いて説明する。記録用紙9の上にはバーコード10が印刷されており、これを情報端末装置3で読み取って、認識終了時にブザーまたは光で知らせる。この時、情報端末装置3には円形の第1のレンズ部(図示せず)と環状の第2のレンズ部62が一体化された撮像レンズと液晶表示装置13が設けられている。当該液晶表示装置13には照明手段(図示せず)が付属しているので、上記第2のレンズ部62を経由してバーコード情報が読み取られる。バーコード10には電話番号、E−mailアドレス、URLアドレス等の各種情報が格納されており、携帯型情報端末装置3はこの情報を読み取って内容を認識し、たとえば特開平8−69436や特開平10−254802などに記載されているように、所定のアドレスと通信を行い、音声通信やホームページ表示などの操作を行う。なお、本実施例において、撮像レンズとしては上記実施例2〜6において用いたものと同じものを用いた。
【0040】
実施例8
上記実施例2〜7において使用した撮像レンズの作用について説明する。この撮像レンズは、図9(A)に示したように、円形の第1のレンズ部61を中心に配置し、当該第1のレンズ部61の外側に環状(ドーナツ型)の第2のレンズ部62を、両者の光軸が一致するように配置して一体化して形成された、同心円型の多焦点レンズである。第1の被写体は一般に明るいので、第1の被写体を撮像する際はレンズのアイリスが絞られ、そのため、中心部に配置された第1のレンズ部61によって主な撮像が行なわれて、焦点の正しく合った第1の画像が得られる。
【0041】
第2の被写体を撮像する際は、周辺部に置かれた環状の第2のレンズ部62によってコントラストが十分高い画像信号が得られるが、中央部である第1のレンズ部61が関与する画像は大きくぼけてしまい、第2のレンズ部62による画像のコントラストを低下させる。しかし、第2の被写体は、例えばバーコードのように、明暗のはっきりした2値の信号であるため、コントラストの低下は信号処理によって容易に改善することができ、実用上問題がない。
【0042】
また、上記実施例1において用いた第1および第2のレンズ部の境界が直線である撮像レンズを用いた場合と同様に、撮像レンズと撮像素子の間に光シャッターを配置すると、明暗のコントラストがさらに高い画像が形成された。すなわち、第1の被写体81を撮像する際は、図9(B)に示したように、第2のレンズ部62の光シャッターを閉じて第1のレンズ部61のみによって撮像を行なう。また、第2の被写体82を撮像する際は、図9(C)に示したように、第1のレンズ部61の光シャッターを閉じて、第2のレンズ部62のみによって撮像を行なう。この場合、第2のレンズ部62は環状であるが、被写体からの光64は撮像素子21の焦点面では一点に集光して、コントラストの高い像が得られた。
【0043】
なお、本実施例では、第1のレンズ部61を円形として中心部に配置し、第2のレンズ部を環状としてその外側に配置したが、両者を逆にして、第2のレンズ部を円形として内側に配置し、第1のレンズ部を環状としてその外側に配置してもよいことはいうまでもない。また、上記光シャッターとしては、液晶シャッターが実用上好ましい。この液晶シャッターは、前方および後方透明板の互いに対向する片面に、それぞれ前方および後方透明電極を配置し、両者の間に液晶物質層を配置して密封したものであり、上記液晶物質層に電圧が印加されているときは光を遮断し、電圧が印加されていないときは光が透過される。したがって、第1のレンズ部および第2のレンズ部61、62を通る光を、それぞれ独立して通過および遮断することができる。
【0044】
実施例9
本実施例は、第2の被写体であるバーコードが、励起光の照射によって特定の色の蛍光を発光する不可視インクによって印刷されている場合の読み取りの例あり、図10を用いて説明する。肉眼では認識できない不可視インクによって印刷されたバーコード10は、照射に用いられた励起光100の波長よりも長い波長の光を発光する。本実施例では、照明ランプ44を用いてバーコード10に励起光100を照射したときに、不可視インクから発光する波長の光を透過し、その他の波長の光の透過を阻止する光フィルタ101を、バーコード10と撮像素子21との間に配置した。これにより、コントラストが向上して、不可視インクからの像を明確に撮像することができた。なお、図10には、光フィルタ101を撮像レンズ22と撮像素子21との間に配置した場合を示したが、バーコード10と撮像レンズ22の間に配置してももよい。
【0045】
一般に、バーコード10などが記録されている記録用紙9には、不可視インクによって印刷されたバーコード10のみではなく、肉眼で見ることができる印刷インクによってバーコード以外のものも印刷されていることが多い。そのため、不可視インクによって印刷されたバーコード10を認識して情報を解読するためには、不可視インクからの光のみを選択的に認識する必要がある。本実施例では光フィルタ101が用いられているので、不可視インクからの光のみを選択的に撮像素子21に導き、その他の印刷インクから反射された光は阻止されるので、バーコード10の鮮明な画像を得ることができた。なお、励起光100のみによって照明が行なわれ、励起光100以外の照明光がない場合は、発光するのは不可視インクによって印刷された部分のみであるから、光フィルタ101を使用する必要はない。なお、本実施例では励起光100として紫外線を使用し、良好な結果が得られた。
【0046】
実施例10
本実施例は、上記実施例4において、映像メモリ12を、映像信号の3色に合わせて赤用映像メモリ12R、緑用映像メモリ12Gおよび青用映像メモリ12Bに分割した例であり、図11を用いて説明する。
【0047】
不可視印刷されたバーコードは、紫外光を照射されると波長の長い光を発光するので、赤の信号が大きくなる。上記のように、第2の被写体62の一つである記録用紙9には、不可視インクで印刷されたバーコード10のみではなく、肉眼で見ることができる印刷インクによって、バーコード以外のものも印刷されていることが多い。したがって、バーコード10を認識して情報を解読するには、不可視インクからの光のみを選択的に認識する必要がある。
【0048】
上記赤用映像メモリ12Rに記憶されている信号にも、バーコードの信号のみでなく、記録用紙9に普通インクで印刷された被写体の信号も含まれている。しかし、不可視インクからの信号を受けない緑用映像メモリ12Gまたは青用映像メモリ12Bの信号の振幅を加減して、赤用映像メモリ12Rの信号から減算することにより、不可視インクが発光したバーコード10の鮮明な画像を得ることができ、当該バーコードの持つ情報を的確に読みとることができた。
【0049】
実施例11
図12に示したように、記録用紙9の中のバーコード10を撮像する場合、励起光100を照射する前の撮像素子21の映像信号Bを、メモリ(図示せず)に記憶しておき、つぎに、励起光100を照射して不可視インクが発光したときの映像信号Aとの差A−Bから、バーコード10の画像信号を求めた。励起光100の照射によって不可視インクが発光したときの映像信号Aには、バーコードからの信号のみではなく、普通インクによって記録用紙9に印刷された被写体からの信号も入っている。しかし、励起光100が照射されないときの撮像素子21からの映像信号Bには、不可視インクからの信号がなく、普通インクによって記録用紙9に印刷された被写体の信号のみである。したがって、映像信号Aから映像信号Bを減算すれば、不可視インクの発光によるバーコード10の鮮明な画像を得ることができ、当該バーコードの持つ情報を的確に読みとることが可能となった。
【0050】
【発明の効果】
上記説明から明らかなように、本発明によれば、人物など第1の被写体の画像に加えて、バーコードなどのデジタルコードおよび文字などの第2の被写体を近接撮像し、その内容を、容易かつ高い精度で認識および送信することが可能になった。しかも、第1および第2のレンズ部が一体化されて多焦点の撮像レンズが構成されているので、第1および第2の被写体を撮像する際に、レンズを交換する必要はなく、これにより、撮像を極めて容易かつ迅速に行うことができ、装置自体も、さらに軽量かつコンパクトになって携帯にも有利になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を説明するための系統図。
【図2】本発明における第1および第2のレンズ部の作用を説明するための図。
【図3】本発明の第2の実施例を説明するための系統図。
【図4】本発明の第3の実施例を説明するための系統図。
【図5】本発明の第4の実施例を説明するための系統図。
【図6】本発明の第5の実施例を説明するための系統図。
【図7】本発明の第6の実施例を説明するための上面図。
【図8】本発明の第7の実施例を説明するための模式図。
【図9】本発明の第8の実施例を説明するための図。
【図10】本発明の第9の実施例を説明するための模式図。
【図11】本発明の第10の実施例を説明するための系統図。
【図12】本発明の第11の実施例を説明するための模式図。
【図13】本発明の撮像レンズの構成を説明するための断面図。
【符号の説明】
1、3…情報端末装置、5…第2の被写体、9…記録用紙、10…バーコード、11…CCU、12…映像メモリ、13…液晶表示装置、14…駆動回路、15…CPU、16…制御プログラム、17…切替回路、18…メモリ、19…電源、20…スイッチ、21…撮像素子、22…撮像レンズ、31…無線送受信機構、32…アンテナ、33…スピーカー、34…ダイアルボタン、35…マイクロホン、41…スピーカー、42…発光機構、43…照明制御機構、44…照明ランプ、51…机、61…第1のレンズ部、62…第2のレンズ部、63…シールド、64…被写体からの光、81…第1の被写体、82…第2の被写体、91…第1の像、92…第2の像、100…励起光、101…光フィルター。
【発明の属する技術分野】
本発明は携帯情報端末(PDA)、携帯電話(PHSを含む)、テレビジョンやビデオなどの家電機器のリモコン装置、パソコンカメラ、および監視カメラなどの画像入力機能を持つ情報端末装置に関し、詳しくは、所望の静止画像や動画像とともに、デジタルコードまたは文字の近接静止画像を高い精度で読みとり、そのまま表示するか、あるいは読み取り結果を認識し、その認識したデジタルコードまたは文字の情報に基づいて各種処理を行うことができる情報端末装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
CCDなどの画像入力機能を持った情報端末装置においては、たとえば、使用者自身の映像や風景の映像など所望の映像とともに、デジタルコードの1種であるバーコードなどの近接画像を読みとることがきわめて有用であることが多い。このようなバーコードは、たとえばメールアドレス、ホームページアドレス、電話番号、FAX番号、会社名、所属、役職名など多くの情報を表すことができるので、これらのバーコードを上記所望の画像と組み合わせて使用することによって、きわめて有用なコミュニケーションが実現できる。
【0003】
上記バーコードの読みとりは、従来は専用の読みとり用スキャナーを用いて行われていた。また、パソコンなどの画像入力機器を用いてバーコードを読みとった例もあるが、この場合は、たとえば使用者や風景の像など、近距離(たとえばほぼ0.3m)から遠方の所望の距離にある被写体(このような被写体を本明細では第1の被写体と記す)の撮像に用いる画像入力用のレンズ(以下、第1のレンズと記す)を用いて、バーコードの読みとりも行っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記読みとり用スキャナーを用いる方法は、実用上きわめて複雑であり、また、使用者や風景など第1の被写体の撮像を行う上記第1のレンズを用いてバーコードの読みとりを行うと、解像度が不十分であるため、特に2次元バーコードなどの複雑な情報を読みとって認識することは困難であった。
【0005】
このような問題に対処するため、本発明者は、所望の距離にある第1の被写体と当該第1の被写体より近距離に配置された第2の被写体(上記第1の被写体より近距離にある被写体を本明細書では第2の被写体と記す)を、上記第1のレンズおよび上記第2の被写体を撮像するための接写用の第2のレンズを用いて、それぞれ結像させる携帯型情報端末装置を提案した(特願2000−245266)。この携帯型情報端末装置によって、上記従来の技術は著しく改善され、使用者自身や風景など、近距離から遠距離にある第1の被写体の撮像のみではなく、バーコードなど第1の被写体より近距離にある第2の被写体の撮像も、容易かつ高い精度で行なうことが可能になった。
【0006】
本発明は、上記携帯型情報端末装置の使用をさらに容易にするために行なわれたものであって、上記第1および第2の被写体を極めて容易かつ高い精度で撮像することができる情報端末装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の情報端末装置は、撮像レンズと、当該撮像レンズによって形成された映像を取り込む撮像素子と、当該撮像素子によって取り込まれた映像を格納する映像メモリを有し、上記撮像レンズは、所望の距離にある第1の被写体を撮像するに適した第1の焦点距離をもつ第1のレンズ部と、上記第1の被写体より近距離に配置された第2の被写体を撮像するに適した第2の焦点距離をもつ第2のレンズ部が、同一の面に一体化されて形成された多焦点レンズであることを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明の情報端末装置においては、近距離(たとえば0.3m)から無限遠の所望距離にある第1の被写体と、それより近い距離に配置された第2の被写体を、それぞれ第1および第2のレンズ部によって撮像して撮像素子に取り込み、さらに映像メモリに格納する。第1の被写体の撮像に用いる第1の焦点距離を持った第1のレンズ部とは異なる第2の焦点距離を持つ第2レンズ部によって、第2の被写体の撮像を行なっているので、従来よりはるかに高い解像度が得られる。しかも、第1および第2のレンズ部が、同一の面に配置されて、撮像レンズが一体化して構成されている。そのため、二つの撮像レンズを用いて、第1および第2の被写体をそれぞれ撮影した場合とは異なり、二つの撮像レンズが取り付けられた円盤を回転させたり、両撮像レンズをスライドさせたりして、レンズを切り替えあるいは交換する操作は不要である。第1および第2のレンズ部の切り替えは、撮像素子の画面を分割することによって容易かつ迅速に行なうことができ、実用上極めて有利である。また、撮像対象を第1の被写体と第2の被写体間で切り替えることによって撮像素子の同じ画面を用いても実効的にレンズの切り替えは可能である。第1および第2のレンズ部が配置される上記面としては、上記撮像レンズの光軸に直交する面であることが最も好ましい。
【0009】
上記第1のレンズ部としては平面形状が円形若しくは多角形のレンズ、第2のレンズ部としては平面形状が環状(ドーナツ形)のレンズをそれぞれ用い、この環状の第2のレンズ部が、上記第1のレンズ部の外縁部に接し、この第1のレンズ部と同心すなわち第1および第2のレンズ部の光軸が一致する同心円型構造とすると、極めて好ましい結果が得られる。第1および第2のレンズ部の配置を逆にして、第2のレンズ部の平面形状を円形若しくは多角形として内側に配置し、第1のレンズ部を環状として外側に配置してもよいことはいうまでもない。
【0010】
このような多焦点の撮像レンズは、図13(A)に示したように、ガラス製の長焦点レンズ65および短焦点レンズ66を用意し、図13(B)に示したように、上記長焦点レンズ65の中央部65aと短焦点レンズ66の周辺部66bを組み合わせればよい。これにより、図13(C)に示したように、上記長焦点レンズ65の円形の中央部65aを第1のレンズ部61とし、短焦点レンズ66の環状の周辺部66bを第2のレンズ部62とする撮像レンズが得られる。なお、上記のように、両レンズの関係を逆にして、上記長焦点レンズ65の環状の周辺部を第2のレンズ部とし、短焦点レンズ66の円形の中央部を第1のレンズ部とする、多焦点の撮像レンズを構成してもよい。
【0011】
なお、本発明において使用される撮像レンズは、焦点距離が互いに異なる第1および第2のレンズ部を有していればよいのであるから、上記のように焦点距離が互いに異なる二つのガラス製のレンズをそれぞれ別途作製して、両者を合体させるばかりではなく、例えばアクリル樹脂などのプラスチックを成形加工して、一体化された第1および第2のレンズ部を同時に作製してもよい。前者の場合は、第1および第2のレンズ部の間の境界は、明確な線状になるが、後者の場合は、第1および第2のレンズ部の境界部は連続的になって、明確な境界線は形成されないが、実用上の支障はない。
【0012】
また、内側のレンズ部の平面形状は、円形のみではなく、楕円形若しくは多角形であってもよい。これらの多角形の角部が丸みを有していてもよいことは、いうまでもない。本明細書では、これらの円形、楕円形および多角形を総称して、円形若しくは多角形と記した。同様に外側の環状のレンズの平面形状に関しても、円環状だけではなく、外縁形状および内縁形状が円形以外にも、楕円形若しくは多角形であってもよい。これらの多角形の角部が丸みを有していてもよいことは、いうまでもない。さらに、例えば、外縁形状が多角形で、内縁形状が円形のように、外縁形状と内縁形状が互いに異なっていてもよい。本明細書では、これらの形状を総称して、環状と記した。上記のように、これら内側のレンズ部と外側の環状のレンズ部の光軸は、互いに一致して配置される。
【0013】
また、第1および第2のレンズ部の平面形状を半円形、半楕円形若しくは多角形とし、両レンズ部の直線部分が互いに接するように配置しても、好ましい結果が得られる。この場合も、上記のように、ガラス製の二つのレンズ部をそれぞれ別途作製した後に一体化してもよく、プラスチックを成形加工して、一体化された両レンズ部を同時に形成してもよい。上記のように、プラスチックを成形加工した場合は、第1および第2のレンズ部の境界部は連続的になって明確な直線にならないが、実用上支障はない。さらに、各レンズ部の平面形状も、上記のように半円形のみではなく、半楕円形や多角形としてもよいことはいうまでもなく、本明細書では、これらを総称して半円形若しくは多角形と記した。
【0014】
上記撮像素子の結像部にそれぞれ形成された、上記第1および第2の被写体にそれぞれ対応する第1および第2の映像は、上記映像メモリに格納されて、それぞれ第1および第2の映像信号とされる。これらの第1および第2の映像は、それぞれ例えば使用者などの動画像およびバーコードなどの静止画像として上記映像メモリに格納することができる。
【0015】
上記第2の被写体は、例えば1次元若しくは2次元のバーコード等のデジタルコードまたは文字であり、この場合は、このデジタルコードまたは文字を解読する手段および上記デジタルコードまたは文字を解読した後、解読完了を報知または表示する手段を有し、さらに、解読された上記デジタルコードまたは文字の情報にもとづいて、所望の通信を行なう手段を具備することができる。
【0016】
上記撮像レンズと撮像素子の間には、上記第1のレンズ部と第2のレンズ部を切り替えるための光学シャッターを配置することができ、このような光学シャッターとしては、液晶を用いたシャッターが実用上すぐれている。また、上記第2の被写体を撮像する際に、上記撮像素子の走査タイミングと同期して、フラッシュ光を発光させる機構を有することができる。第2の被写体は極めて近接していることが多いが、撮像する際に上記撮像素子の走査タイミングと同期してフラッシュ光を発光させるようにすれば、使用者などの影の発生は効果的に防止されて鮮明な映像を得ることができ、第2の被写体の撮像に有用である。なお、上記フラッシュ光としては、通常の写真撮影用フラッシュから得られるフラッシュ光のみではなく、赤外線を発するフラッシュおよび紫外線を発するフラッシュから、それぞれ得られるフラッシュ光を用いることができ、本明細書では、これらを総称してフラッシュ光と記す。
【0017】
上記撮像素子からの飽和電流を検出する手段と、当該検出する手段からの信号にもとづいて、上記撮像素子の駆動回路を駆動させる手段を具備することができる。これは、光の蓄積時間を長くすることによって、感度を向上させるものであって、撮像素子が出す飽和電子を利用することにより、適切な蓄積時間を検知することができる。また、所望の色フィルタを用いて上記第2の被写体を撮像する手段を具備することも実用上有用であり、これにより、第2の被写体を高いコントラストで撮像することができる。上記第2の被写体を撮像して得られた映像を、所望の色に合わせて信号処理する手段を具備するようにすれば、映像のコントラスト向上に有効である。
【0018】
上記第2の被写体が蛍光を発する場合は、蛍光物質を活性化する励起光を照射しながら撮像し、得られた映像の信号と上記励起光を照射することなしに撮像して得られた映像の信号の差から、上記第2の被写体の映像を求めることができる。このようにすれば、励起光の照射によって発光するインクなどによって形成されたバーコードなどの検出に極めて有用である。上記励起光としては、使用された蛍光物質の発する光より短波長の光(例えば紫外線)が用いられ、上記蛍光物質が赤外領域の光を発する場合は、可視光に近い赤外光を用いることができる。
【0019】
また、液晶表示手段をさらに設けて、上記第2のレンズ部の光軸が上記液晶表示手段の画面の側にあるようにすれば、液晶表示手段が有する照明装置を、被写体の照明に用いることができる。なお、本発明は、携帯電話、PHS(personal handy−phone system)およびPDA(personal digital assistants)などに用いることができる。
【0020】
第2の被写体を撮像する際に、被写体までの距離の設定が不正確であると、良好な結果を得るのが困難である。しかし、所望の通信を行なうためのアンテナを具備し、当該アンテナを格納した際における当該アンテナの外部における長さによって、上記第2のレンズと上記第2の被写体の間の距離を制御し、上記長さと距離が等しいようにすれば、極めて容易かつ迅速に第2の被写体までの距離を正確に設定できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
実施例1
図1および図2を用いて本発明の第1の実施例を説明する。本実施例においては、撮像レンズ22を構成するガラス製の第1および第2のレンズ部61、62の境界は直線であり、半円形の第1のレンズ部61の下縁部に、半円形の第2のレンズ部62の上縁部を接して配置した。第1のレンズ部61の焦点距離は5mmであり、図2(A)に示したように、近傍にある被写体(たとえば距離0.3mにある携帯電話の利用者の顔など)や遠距離の風景など、所望の第1の被写体81を撮像素子21の第1の領域に第1の像91として結像させた。また、第2のレンズ部62の.焦点距離は4.3mmであり、たとえばデジタルコードの1種であるバーコードなど、上記第1の被写体より近距離にある第2の被写体82の像を、撮像素子21の第2の領域に第2の像92として結像させた。
【0022】
すなわち、上記第1のレンズ部61を用いて第1の被写体81を撮像し、駆動回路14によって撮像素子21を動作させて、第1の像91の映像信号を撮像素子21から取り出した。得られた第1の被写体81の映像信号を、カメラ制御ユニット(以下「CCU」と略称)11によって処理した後、動画像または静止画像として映像メモリ12に蓄積した。なお、本実施例において、第1のレンズ部61の主面と撮像素子21との間隔は5mm〜5.1mmとした。また、図2(A)に示したように、撮像レンズ22の第1および第2のレンズ部61、62の周りにはシールド63を配置して、第2のレンズ部62を通過する光が、撮像素子21における第1の像91の結像部に到達するのを防止した。
【0023】
次に、距離約30mmの位置にある2次元バーコードを、第2の被写体82として撮像した。まず、第2のレンズ部62を用いて、第2の被写体82を撮像し、さらに、駆動回路14によって撮像素子21を動作させて、第2の像82の映像信号を取り出し、静止画像として映像メモリ12に蓄積した。なお、上記のように、第1および第2のレンズ部61、62の周りには、光シールド63が配置されているので、第1のレンズ部61を通過した光が、第2の像92の結像部に到達するのも、同様に防止された。
【0024】
静止画像として映像メモリ12に蓄積された、上記第2の被写体82の映像信号を、制御プログラム16を用いて中央演算処理装置(以下「CPU」と略称)15で演算処理した。なお、上記各回路に必要な電力は電源19によって供給した。
【0025】
本実施例により、0.3mから無限遠方までにおける第1の被写体81と、当該第1の被写体81より近距離にある第2の被写体82(バーコード)を撮像して、映像メモリ12にそれぞれ動画像および静止画像として記憶させることができた。
【0026】
第1および第2のレンズ部61、62の周りにそれぞれ設けた上記シールド63を除いた例を、図2(B)示した。この場合は第1のレンズ部61を通る光91aは撮像素子21の全面に入射される。同様に、第2のレンズ部62を通る光92aも、撮像素子21の全面に入射する。そのため、第1の被写体81を撮像している場合は、第2のレンズ部62を通過した光が、結像していない光として撮像素子21に入射するのでコントラストが低下する。しかし、CCU11によってコントラストを補正することにより、ほぼ正常な画像を得ることができた。同様に、第2の被写体82を撮像する場合は、第1のレンズ部61を通過した光が、結像していない光として撮像素子21に入射し、コントラストを低下させるが、CCU11によってコントラストを補正して、ほぼ正常な画像にすることができた。
【0027】
実施例2
本実施例は、図3に示したように、図1に示した情報端末装置に液晶表示装置13、液晶等を用いた光学シャッタによるレンズ選択用切り替え用回路17、スイッチ20およびメモリ18を付加した例である。撮像用レンズ22としては、環状の第2のレンズ部62が、円形である第1のレンズ部61の外縁部に接して当該第1のレンズ部61と同心に配置され、両レンズ部61、62が一体化された多焦点の撮像レンズ22を用い、撮像素子21などは上記実施例1と同じものを使用した。
【0028】
上記実施例1の場合と同様に、撮像レンズ22の第1および第2のレンズ部61、62を用いて第1の被写体および第2の被写体(2次元バーコード)を撮像する際、スイッチ20を押し込んで切替回路17を動作させ、それぞれ動画像および静画像として映像メモリ12に蓄積し、処理プログラム16によってCPU15で演算し、2次元バーコードの内容を静画像として液晶表示装置13に表示した。
【0029】
さらに、処理プログラム16とCPU15によって解析された2次元バーコードに関する情報をメモリ18に記憶し、記憶された情報にもとづいてCPU15を動作させて情報の授受を行なった。その結果、2次元バーコードを撮像するだけで、当該2次元バーコードが示す電話番号を認識したり、または当該バーコードが示すインターネットホームページのアドレスを認識して、液晶表示装置13に表示することができた。
【0030】
実施例3
図4を用いて本発明の第3の実施例を説明する。図4から明らかなように、本実施例の情報端末装置3は、図3に示した構成の情報端末装置に無線送受信機構31を付加した構造を有しており、撮像レンズ22としては上記実施例2と同じものを使用した。上記実施例2と同様に、処理プログラム16とCPU15によって解析され2次元バーコードの情報は、メモリ18に記憶され、記憶された情報をもとにして携帯電話やPHS中の無線送受信機構31を動作させて、情報の授受を行なった。その結果、2次元バーコードを撮像するだけで、当該2次元バーコードが示す電話番号へ発信したり、または当該バーコードが示すインターネットのホームページをダウンロードして、ホームページの内容を液晶表示装置13に表示するなど、バーコードの内容にもとづいて多くのことを実行することができた。
【0031】
実施例4
図5を用いて本発明の第4の実施例を説明する。図5から明らかなように、本実施例の情報端末装置3は、図4に示した上記実施例3に、さらにスピーカー41および発光機構42を付加したものであり、撮像レンズ22としては、上記実施例2、3において使用したものと同じものを使用した。
【0032】
本実施例は、上記実施例3において、2次元バーコードを解析した後、処理の完了を利用者に通知する機能として、音声または確認音を発生するスピーカー41、または光信号を発する発光機構42を有している。さらに液晶表示装置13に解析結果を表示する機構を有しているので、情報の授受が正当であることを利用者が確認することができる。これにより、使用者の誤動作を効果的に防止することができた。
【0033】
実施例5
図6から明らかなように、本実施例は、図4に示した上記実施例3に、さらに照明制御機構43および照明ランプ44が付加されており、撮像レンズ22としては上記実施例2〜4において用いたものと同じものを使用した。バーコードなど、極めて近距離(たとえば30mm前後)に配置された第2の被写体の撮像を行なう場合、照明制御機構43から供給される電力によって照明ランプ44を点灯する。したがって、本実施例によれば、携帯型情報端末装置3自体によって、天井照明や室内の自然光などによる照明が遮られても、鮮明な画像を得ることができ、処理プログラム16およびCPU15による2次元バーコードの情報の解析を、容易に行なうことができた。特に、照明が不足してCCU11からの画像信号のレベルが低い場合は、画像信号レベルから照明制御機構43へ信号を送って、照明ランプ44への電力供給を増加させ、上記画像信号のレベルを高くすることが可能になった。
【0034】
また、処理プログラム16とCPU15によって、解析された2次元バーコードの情報をメモリ18に記憶し、その情報をもとにして無線電話機構31を動作させて、情報の授受を行なうことが可能となった。そのため、2次元バーコードを撮像するだけで、当該2次元バーコードが示す電話番号へ電話をしたり、当該バーコードが示すインターネットのホームページを読み出して、ホームページの内容を液晶表示装置13に表示することができた。
【0035】
実施例6
本実施例は携帯電話におけるバーコードの撮像に関する例であり、図7を用いて説明する。本実施例における情報端末装置3は、図7に示したように、携帯電話若しくはPHSである。机51などの上に置かれた接写すべき第2の被写体(たとえば2次元バーコード)5を撮像する際には、上記のように第2のレンズ部62を用いて、撮像素子21に被写体5の像を結像させる。この際、被写体5と撮像システムのレンズとの間隔は重要であり、精度よく合わせる必要がある。
【0036】
図7に示したように、情報端末装置3の有するアンテナ32の先端方向に机51が位置するようにした後、アンテナ32がスタンバイの状態になるまで情報端末装置3を下方に移動させる。このようにすると、アンテナ32が短縮されて格納されている状態になる。したがって、このときの接写用のアタッチメントレンズ25と被写体5との間隔が最適になるように、アンテナ32のスタンバイ時の長さを決めておけば、アンテナ32がスタンバイの状態になるまで情報端末装置3を移動させることによって、情報端末装置3とバーコード5の間の距離を容易に最適とすることができる。
【0037】
本実施例では、アンテナ32の格納時の長さ15mm、撮像レンズの第1のレンズ部(図示せず)の焦点距離を5mmとし、第2のレンズ部62の焦点距離を3.8mmとした場合、約15mmの位置にある第2の被写体5であるバーコードを良好に撮像することができ、2次元バーコードの解析精度が向上した。
【0038】
また、接写時には情報端末装置3が通常と上下が反転するが、液晶表示装置13への画像表示も、水平方向および垂直方向の走査方向を逆にすることにより、接写撮像中の画像および解析結果の表示を読みやすくすることができた。なお、第1のレンズ部で撮像すると、約30cmから50cmのところにいる人物に焦点が合うようになった。なお、本実施例において、撮像レンズとしては上記実施例2〜5において用いたものと同じものを用い、第1のレンズ部による第1の被写体の撮像については、説明を省略した。また、図7において、符号33はスピーカー、34はダイヤルボタン、35はマイクロフォンを、それぞれ表す。本実施例においても、撮像レンズが環状の第2のレンズ部と円形の第1のレンズ部が一体化された多焦点レンズが使用されているため、装置は極めてコンパクトになり、取り扱い操作も容易になった。
【0039】
実施例7
本実施例を図8を用いて説明する。記録用紙9の上にはバーコード10が印刷されており、これを情報端末装置3で読み取って、認識終了時にブザーまたは光で知らせる。この時、情報端末装置3には円形の第1のレンズ部(図示せず)と環状の第2のレンズ部62が一体化された撮像レンズと液晶表示装置13が設けられている。当該液晶表示装置13には照明手段(図示せず)が付属しているので、上記第2のレンズ部62を経由してバーコード情報が読み取られる。バーコード10には電話番号、E−mailアドレス、URLアドレス等の各種情報が格納されており、携帯型情報端末装置3はこの情報を読み取って内容を認識し、たとえば特開平8−69436や特開平10−254802などに記載されているように、所定のアドレスと通信を行い、音声通信やホームページ表示などの操作を行う。なお、本実施例において、撮像レンズとしては上記実施例2〜6において用いたものと同じものを用いた。
【0040】
実施例8
上記実施例2〜7において使用した撮像レンズの作用について説明する。この撮像レンズは、図9(A)に示したように、円形の第1のレンズ部61を中心に配置し、当該第1のレンズ部61の外側に環状(ドーナツ型)の第2のレンズ部62を、両者の光軸が一致するように配置して一体化して形成された、同心円型の多焦点レンズである。第1の被写体は一般に明るいので、第1の被写体を撮像する際はレンズのアイリスが絞られ、そのため、中心部に配置された第1のレンズ部61によって主な撮像が行なわれて、焦点の正しく合った第1の画像が得られる。
【0041】
第2の被写体を撮像する際は、周辺部に置かれた環状の第2のレンズ部62によってコントラストが十分高い画像信号が得られるが、中央部である第1のレンズ部61が関与する画像は大きくぼけてしまい、第2のレンズ部62による画像のコントラストを低下させる。しかし、第2の被写体は、例えばバーコードのように、明暗のはっきりした2値の信号であるため、コントラストの低下は信号処理によって容易に改善することができ、実用上問題がない。
【0042】
また、上記実施例1において用いた第1および第2のレンズ部の境界が直線である撮像レンズを用いた場合と同様に、撮像レンズと撮像素子の間に光シャッターを配置すると、明暗のコントラストがさらに高い画像が形成された。すなわち、第1の被写体81を撮像する際は、図9(B)に示したように、第2のレンズ部62の光シャッターを閉じて第1のレンズ部61のみによって撮像を行なう。また、第2の被写体82を撮像する際は、図9(C)に示したように、第1のレンズ部61の光シャッターを閉じて、第2のレンズ部62のみによって撮像を行なう。この場合、第2のレンズ部62は環状であるが、被写体からの光64は撮像素子21の焦点面では一点に集光して、コントラストの高い像が得られた。
【0043】
なお、本実施例では、第1のレンズ部61を円形として中心部に配置し、第2のレンズ部を環状としてその外側に配置したが、両者を逆にして、第2のレンズ部を円形として内側に配置し、第1のレンズ部を環状としてその外側に配置してもよいことはいうまでもない。また、上記光シャッターとしては、液晶シャッターが実用上好ましい。この液晶シャッターは、前方および後方透明板の互いに対向する片面に、それぞれ前方および後方透明電極を配置し、両者の間に液晶物質層を配置して密封したものであり、上記液晶物質層に電圧が印加されているときは光を遮断し、電圧が印加されていないときは光が透過される。したがって、第1のレンズ部および第2のレンズ部61、62を通る光を、それぞれ独立して通過および遮断することができる。
【0044】
実施例9
本実施例は、第2の被写体であるバーコードが、励起光の照射によって特定の色の蛍光を発光する不可視インクによって印刷されている場合の読み取りの例あり、図10を用いて説明する。肉眼では認識できない不可視インクによって印刷されたバーコード10は、照射に用いられた励起光100の波長よりも長い波長の光を発光する。本実施例では、照明ランプ44を用いてバーコード10に励起光100を照射したときに、不可視インクから発光する波長の光を透過し、その他の波長の光の透過を阻止する光フィルタ101を、バーコード10と撮像素子21との間に配置した。これにより、コントラストが向上して、不可視インクからの像を明確に撮像することができた。なお、図10には、光フィルタ101を撮像レンズ22と撮像素子21との間に配置した場合を示したが、バーコード10と撮像レンズ22の間に配置してももよい。
【0045】
一般に、バーコード10などが記録されている記録用紙9には、不可視インクによって印刷されたバーコード10のみではなく、肉眼で見ることができる印刷インクによってバーコード以外のものも印刷されていることが多い。そのため、不可視インクによって印刷されたバーコード10を認識して情報を解読するためには、不可視インクからの光のみを選択的に認識する必要がある。本実施例では光フィルタ101が用いられているので、不可視インクからの光のみを選択的に撮像素子21に導き、その他の印刷インクから反射された光は阻止されるので、バーコード10の鮮明な画像を得ることができた。なお、励起光100のみによって照明が行なわれ、励起光100以外の照明光がない場合は、発光するのは不可視インクによって印刷された部分のみであるから、光フィルタ101を使用する必要はない。なお、本実施例では励起光100として紫外線を使用し、良好な結果が得られた。
【0046】
実施例10
本実施例は、上記実施例4において、映像メモリ12を、映像信号の3色に合わせて赤用映像メモリ12R、緑用映像メモリ12Gおよび青用映像メモリ12Bに分割した例であり、図11を用いて説明する。
【0047】
不可視印刷されたバーコードは、紫外光を照射されると波長の長い光を発光するので、赤の信号が大きくなる。上記のように、第2の被写体62の一つである記録用紙9には、不可視インクで印刷されたバーコード10のみではなく、肉眼で見ることができる印刷インクによって、バーコード以外のものも印刷されていることが多い。したがって、バーコード10を認識して情報を解読するには、不可視インクからの光のみを選択的に認識する必要がある。
【0048】
上記赤用映像メモリ12Rに記憶されている信号にも、バーコードの信号のみでなく、記録用紙9に普通インクで印刷された被写体の信号も含まれている。しかし、不可視インクからの信号を受けない緑用映像メモリ12Gまたは青用映像メモリ12Bの信号の振幅を加減して、赤用映像メモリ12Rの信号から減算することにより、不可視インクが発光したバーコード10の鮮明な画像を得ることができ、当該バーコードの持つ情報を的確に読みとることができた。
【0049】
実施例11
図12に示したように、記録用紙9の中のバーコード10を撮像する場合、励起光100を照射する前の撮像素子21の映像信号Bを、メモリ(図示せず)に記憶しておき、つぎに、励起光100を照射して不可視インクが発光したときの映像信号Aとの差A−Bから、バーコード10の画像信号を求めた。励起光100の照射によって不可視インクが発光したときの映像信号Aには、バーコードからの信号のみではなく、普通インクによって記録用紙9に印刷された被写体からの信号も入っている。しかし、励起光100が照射されないときの撮像素子21からの映像信号Bには、不可視インクからの信号がなく、普通インクによって記録用紙9に印刷された被写体の信号のみである。したがって、映像信号Aから映像信号Bを減算すれば、不可視インクの発光によるバーコード10の鮮明な画像を得ることができ、当該バーコードの持つ情報を的確に読みとることが可能となった。
【0050】
【発明の効果】
上記説明から明らかなように、本発明によれば、人物など第1の被写体の画像に加えて、バーコードなどのデジタルコードおよび文字などの第2の被写体を近接撮像し、その内容を、容易かつ高い精度で認識および送信することが可能になった。しかも、第1および第2のレンズ部が一体化されて多焦点の撮像レンズが構成されているので、第1および第2の被写体を撮像する際に、レンズを交換する必要はなく、これにより、撮像を極めて容易かつ迅速に行うことができ、装置自体も、さらに軽量かつコンパクトになって携帯にも有利になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を説明するための系統図。
【図2】本発明における第1および第2のレンズ部の作用を説明するための図。
【図3】本発明の第2の実施例を説明するための系統図。
【図4】本発明の第3の実施例を説明するための系統図。
【図5】本発明の第4の実施例を説明するための系統図。
【図6】本発明の第5の実施例を説明するための系統図。
【図7】本発明の第6の実施例を説明するための上面図。
【図8】本発明の第7の実施例を説明するための模式図。
【図9】本発明の第8の実施例を説明するための図。
【図10】本発明の第9の実施例を説明するための模式図。
【図11】本発明の第10の実施例を説明するための系統図。
【図12】本発明の第11の実施例を説明するための模式図。
【図13】本発明の撮像レンズの構成を説明するための断面図。
【符号の説明】
1、3…情報端末装置、5…第2の被写体、9…記録用紙、10…バーコード、11…CCU、12…映像メモリ、13…液晶表示装置、14…駆動回路、15…CPU、16…制御プログラム、17…切替回路、18…メモリ、19…電源、20…スイッチ、21…撮像素子、22…撮像レンズ、31…無線送受信機構、32…アンテナ、33…スピーカー、34…ダイアルボタン、35…マイクロホン、41…スピーカー、42…発光機構、43…照明制御機構、44…照明ランプ、51…机、61…第1のレンズ部、62…第2のレンズ部、63…シールド、64…被写体からの光、81…第1の被写体、82…第2の被写体、91…第1の像、92…第2の像、100…励起光、101…光フィルター。
Claims (9)
- 撮像レンズと、当該撮像レンズによって形成された映像を取り込む撮像素子と、当該撮像素子によって取り込まれた映像を格納する映像メモリと、カメラ制御ユニットとを有し、
上記撮像レンズは、所望の距離にある第1の被写体を撮像するに適した第1の焦点距離をもつ第1のレンズ部と、上記第1の被写体より近距離に配置された第2の被写体を撮像するに適した第2の焦点距離をもつ第2のレンズ部が、同一の面に一体化されて形成された多焦点レンズであり、かつ上記面は、上記撮像レンズの光軸に直交する面であり、
上記第1のレンズ部を通る光は、上記撮像素子の全面に入射され、かつ、上記第2のレンズ部を通る光も、上記撮像素子の全面に入射される構成とされ、
上記カメラ制御ユニットは、上記第1の被写体を撮像する場合に、上記第2のレンズ部を通過した光が、結像していない光として上記撮像素子に入射することにより低下したコントラストを補正し、ほぼ正常な画像とするとともに、上記第2の被写体を撮像する場合に、上記第1のレンズ部を通過した光が、結像していない光として上記撮像素子に入射することにより低下したコントラストを補正し、ほぼ正常な画像にする処理を行い、
上記映像メモリは、映像信号の3色に合わせて赤用映像メモリ、緑用映像メモリおよび青用映像メモリに分割され、上記第2の被写体としての記録用紙に不可視インクで印刷されたバーコードに対して紫外線を照射して波長の長い光を発光させることによりバーコードを読み取る場合には、緑用映像メモリまたは青用映像メモリの信号の振幅を加減して赤用映像メモリの信号から減算する処理が行われることを特徴とする情報端末装置。 - 上記第1のレンズ部の平面形状は円形若しくは多角形であり、上記第2のレンズ部の平面形状は環状であって、当該第2のレンズ部は、上記第1のレンズ部の外縁部に接して、上記第1のレンズ部と同心に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報端末装置。
- 上記第1のレンズ部の平面形状は環状であり、上記第2のレンズ部の平面形状は円形若しくは多角形であって、上記第1のレンズ部は、上記第2のレンズ部の外縁部に接して、当該第2のレンズ部と同心に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報端末装置。
- 上記第1および第2のレンズ部の平面形状はそれぞれ半円形、半楕円形若しくは多角形であり、上記第1および第2のレンズ部の直線部分が互いに接するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の情報端末装置。
- 上記撮像レンズは、ガラス若しくはプラスチックからなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載の情報端末装置。
- 上記第2の被写体はデジタルコードまたは文字であり、当該デジタルコードまたは文字を解読する手段および当該解読する手段によって解読された上記デジタルコードまたは文字の情報にもとづいて、所望の通信を行なう手段をさらに有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載の情報端末装置。
- 上記デジタルコードまたは文字を解読した後、解読完了を報知または表示する手段を有することを特徴とする請求項6に記載の情報端末装置。
- 上記第2の被写体を撮像する際に、上記撮像素子の走査タイミングと同期してフラッシュ光を発光させる手段を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一に記載の情報端末装置。
- 上記撮像素子からの飽和電流を検出する手段と、当該検出する手段からの信号にもとづいて上記撮像素子の駆動回路を駆動させる手段を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一に記載の情報端末装置。特許法第17条の2第1項3号の規定による補正
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