JP3552354B2 - 電池及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICカード等の薄型電子デバイスの電源として好適な電池及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ICカードでは蓄積された情報を保持するためにカード本体内に電源が内蔵される。このICカードに内蔵される電源としては、以下のような要件を満たすことが必要である。
【0003】
まず、ICカードでは、寸法についてJIS等の規格が設けられており、総厚で800μm以下と非常に薄く成型されることが要求されている。したがって、これに内蔵される電池も、可能な限り薄く成型されることが求められる。
【0004】
さらに、ICカードは、その用途上、ある程度の応力に耐え得るように、構造的に柔軟性に優れることが要求されている。それゆえに、やはり内蔵される電池も柔軟性を有することが必要である。
【0005】
ICカードに内蔵される電源としては、一対の板状の電池外装材の間に、負極、セパレータ、正極及び電解質物質を挟み込んだ平板型の電池が使用される。
【0006】
この平板型の電池では、電池外装材としてステンレス等の金属板が考えられているが、ICカードに用いる場合には、上述の如く柔軟性を有することが要件となる。このため、非常に薄い厚さとなされた金属板の両面に、柔軟性が高いポリオレフィン等の高分子フィルムを被覆することで補強した多層フィルムを、電池外装材として使用することが試みられている。
【0007】
この外装材を用いると、電池に柔軟性が付与されると同時に、電池の封止が加熱融着によって行えるようになるので、製造工程が簡便化し、生産性においても非常に有利になる。また、特に、水分との接触を嫌う、リチウム金属等を電極に用いる電池系では、防湿性の高い高分子フィルムを選択すれば耐候性の向上を図ることも可能になる(Applications of Electroactive polymers,Eds.by B.Scrosati,Chapman and Hall,1993)。なお、このような多層フィルムとしては、アルミニウム板にポリアミドフィルムあるいはポリエチレンフィルムを貼り合わせたものが汎用品として市販されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記多層フィルムを電池外装材として用いる場合、絶縁材である高分子フィルムによって被覆されていることから、そのままでは電極からの電流を外部に取り出すことができない。すなわち、何らかのリード手段を用いることで電極と導通した外部端子を設けることが必要である。
【0009】
そのような外部端子の取り出し方法については、図6に示すように、負極61及び正極62にリード線63A,63Cを取り付け、このリード線63A,63Cを、電池外装材64A,64Cの熱融着部を横断させて外部端子として取り出す方法が提案されている。
【0010】
しかしながら、このようにしてリード線を外部に取り出すと、このリード線を取り出す部分において電池外装材同士の接着強度が弱くなる。このため、電池に外部応力が加わった場合に、この部分から電池の密閉性が損なわれるといった問題がある。
【0011】
そこで、本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、柔軟性,防湿性に優れるとともに、外部応力が加わった場合でも密閉性が高度に保持される電池を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明の電池は、負極、電解質物質、セパレータ、電解質物質及び正極が積層された電極部材と、融着性樹脂層が導電性板の両面を被覆した多層フィルムよりなる電池外装材とを備え、電池外装材の内側と外側のそれぞれに、リード部が加圧及び加熱により熱融着されることで導電性板と接続され、内側及び外側のリード部が熱融着された一対の電池外装材の間に、負極、セパレータ及び正極を挟み込み、電極部材を重ね合わせるとともに、電池外装材の外縁部が互いに加圧及び加熱によって熱融着されてなり、内側のリード部に正極又は負極の電極が接続され、正極又は負極の外側リード部が外部端子としてなされていることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
本発明の電池の具体的な形態を図1に示す。
【0015】
この電池は、負極1、電解質物質2、セパレータ3、電解質物質4及び正極5がこの順に積層されてなる電極構造体を、一対の板状の電池外装材7A,7Cによって挟み込み、この電池外装材7A,7Cの外縁部を熱融着することでなっている。
【0016】
上記一対の電池外装材7A,7Cは、ミクロン単位と非常に薄い厚さとなされた導電性を有する板体(導電性板)8A,8Cの両面に、熱融着性樹脂9A,9Cが被覆された多層フィルム構造となっており、その外縁部が互いに熱融着されることで電池が封止されている。
【0017】
そして、上記一対の電池外装材7A,7Cの内側と外側には、それぞれリード部10A,10C,11A,11Cが熱融着されることで導電性板8A,8Cと接続され、このうち電池外装材7A,7Cの内側に熱融着されたリード部10A,10Cは負極1あるいは正極5と接触している。
【0018】
したがって、この電池では、負極1と、負極側の内側リード部10A、導電性板8A及び外側リード部11Aが導通し、また正極5と、正極側の内側リード部10C、導電性板8C及び外側リード部11Cが導通する。すなわち、負極側の外側リード部11A、正極側の外側リード部11Cがそれぞれ負極の外部端子、正極の外部端子として機能し、この端子より電流の出し入れがなされることになる。
【0019】
このように、内側リード部10A,10Cと外側リード部11A,11Cが電池外装材7A,7Cに熱融着されることで外部端子が形成される電池では、リード部が電池外装材の熱融着部を横断させて取り出される電池に比べて、電池外装材同士の接着状態が均一になる。したがって、電池に外部応力が加わった場合でも、電池外装材の熱融着部で剥離が生じることがなく、電池の密閉性が高度の保持される。このため、作動安定性が得られ、長期保存が可能であり、信頼性が確保できる。
【0020】
このような電池の組み立ては、図2(a),(b)及び図3(a)〜(c)に示す工程で行われる。
【0021】
まず、図2(a),(b)に示すように、電池外装材7A,7Cに、内側リード部10A,10C及び外側リード部11A,11Cを、適度な圧力をかけながら加熱ヒータによって熱融着しておく。この熱融着によって、内側リード部10A,10Cと外側リード部11A,11Cは導電性板8A,8Cに接触して固定され、内側リード部10A,10Cと外側リード部11A,11Cが導電性板8A,8Cを介して導通した状態になる。
【0022】
なお、ここで内側リード部10A,10C、外側リード部11A,11Cの融着位置は、必ずしも一致させる必要はなく、内側リード部10A,10Cは負極あるいは正極と接触するような位置に、また外側リード部11A,11Cはその用途に応じて適当な位置に融着して良い。
【0023】
そして、このようにリード部10A,10C,11A,11Cが熱融着された一対の電池外装材の間に、図3(a)に示すように、負極1,セパレータ3,正極5を挟み込み、さらに図3(b)に示すように、電解質物質4を添加し、これら電池部材を重ね合わせる。この状態で、図3(c)に示すように、電池外装材7A,7Cの外縁部に適度な圧力をかけながら熱融着し、電池は組み立てられる。
【0024】
このような電池の各構成要素の材料としては以下のものが用いられる。
【0025】
まず、上記電池外装材7A,7Cは、導電性板8A,8Cの両面に熱融着性樹脂9A,9Cが被覆されて構成されるが、導電性板8A,8Cとしては、軽量かつ柔軟性を有する金属が用いられ、例えばアルミニウム箔がコストの面から有利である。また、熱融着性樹脂9A,9Cとしては、厚さの非常に薄い導電性板に強度を付与でき、また通常の熱融着の手法によってリード部を熱融着し得るものが選択される。そのような樹脂としては、これまでに公知とされている熱融着樹脂のうち、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が好ましい。なお、この列挙した樹脂のうちではポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂は、ガス透過性が低く、耐薬品性にも優れ、電池外装材として好適である。一方、機械的強度の点ではナイロン樹脂が特に優れている。
【0026】
電池外装材7A,7Cに熱融着するリード部10A,10C,11A,11Cについては、導通性を有するものであれば、材料,形状は特に限定されない。なお、比抵抗率を考慮すると銅,アルミニウム,ニッケル,鉄,ステンレス等の金属箔が好ましく、その形状は、融着性樹脂によって接着し易いことからメッシュ状であるのが良い。
【0027】
負極1、正極5、セパレータ3及び電解質物質4については、従来公知の電池系で用いられているものがいずれも採用できる。特に、リチウム金属を負極の活物質として用いるリチウム電池系に本発明を適用すると、電池外装材に用いる熱融着性樹脂の選択によって電池に防湿性が付与できるので、耐候性の改善にも効果がある。
【0028】
但し、電解質物質4としては、電池組立に際して取り扱い性が良く、また漏液の心配もないことから、固体あるいはゲル状の電解質を用いるのが望ましい。例えば、リチウム電池では、非水電解液の組成にポリアクリロニトリルをゲル化材として加えたゲル電解質を用いることができる。
【0029】
また、電極活物質の導電性が低い場合には、電極に集電体を具備させても良い。この場合、集電体は、外装材側に配し、この集電体が内側リードと接触するような構成とする。なお、この集電体としては、金属メッシュが適当である。
【0030】
【実施例】
本発明の実施例について実験結果に基づいて説明する。
【0031】
実施例1
まず、電池外装材を以下のようにして作製した。
【0032】
厚さ40μmのアルミニウム箔の両面に、厚さ30μmのポリエチレンフィルムを熱融着することによって全厚100μmの3層膜フィルムを作製し、4×4cmのサイズに裁断した。
【0033】
そして、このようにして作製された電池外装材の両面に、場所を一致させて内側リード部及び外側リード部をヒートパルス法により圧力を加えながら熱融着させた。この内側リード部及び外側リード部は、寸法0.5×0.5cm,厚さ30μmのステンレス製メッシュ(SUS304)であり、電池外装材の中心から一辺方向に1cm離れた位置に、2辺と平行となるように熱融着した。なお、この熱融着に際しては、内側リード部と外側リード部の導通の様子をテスターで調べ、導通が不十分な場合には熱融着操作を繰り返した。
【0034】
次に、正極を以下のようにして作製した。
【0035】
粉状二酸化マンガン90重量部、粉状ポリフッ化ビニリデン3重量部及び粉状黒鉛7重量部を、ジメチルホルミアミド(DMF)を溶媒として分散させることで正極合剤スラリーを調製した。次いで、この正極合剤スラリーを、集電体となるアルミニウムメッシュに塗布し、100℃の温度で24時間減圧乾燥した。続いて、この集電体上に形成された正極合剤層を、適当な圧力でロールプレスすることによって厚さ130μmに圧縮し、2×2cmの寸法に切り出すことで正極を作製した。そして、この正極の集電体側を、電池外装材の内側リード部にスポット溶接した。
【0036】
次に、負極を、Li金属を2×2cmの寸法に切り出し、130μmに圧縮することで作製した。そして、この負極を、正極を溶接したのとは別の電池外装材の内側リード部に圧着させた。
【0037】
一方、電解質物質としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及び過塩素酸リチウムから構成されるゲル状電解質(PAN:EC:PC:過塩素酸リチウム(モル比)=13:55:27:5)を用いた。なお、このゲル状電解質は、次のようにして形成した。
【0038】
所定量のECとPCが混合攪はんされたビーカー中に、所定量の過塩素酸リチウムを添加した後、これを100℃まで加熱した。そして、十分加熱した時点で、所定量のPANを少量ずつ添加し、添加終了後、10分間加熱攪はんした。その結果、PANが完全に溶解し粘ちょうな溶液が得られる。この時点で加熱を終了し、得られた溶液を、直ちに正極上に適当量流延することでゲル状電解質を形成した。また、負極上にも同様にしてゲル状電解質を形成した。
【0039】
以上のようにしてゲル状電解質が形成された正極と負極を、セパレータとなる厚さ50μmのポリプロピレン不織布を介して重ねた後、電池外装材の外縁部を加熱融着させることで電池を封止し、薄型電池を作製した。
【0040】
比較例1
電池外装材に内側リード部,外側リード部を熱融着せず、図6に示すように、電池外装材の熱融着部を横断してリード部を外部に取り出したこと以外は実施例1と同様にして薄型電池を作製した。
【0041】
以上のようにして作製された電池について、気密性を検証するために、折曲げ試験を行い、その後、放電試験を行った。
【0042】
なお、折曲げ試験は、図4に示すように電池12の中央部を幅0.5cm×渡り8cmの一対の角材13で挟むことによって固定し、常温常湿下、電池両端をそれぞれ平面に対して垂直方向に1.0cm上下させる操作を300回繰り返すことにより行った。
【0043】
また、放電試験は、折曲げ試験を行った電池を、常温常湿下、24時間放置した後、500μAの定電流で閉回路電圧が1.8Vに達するまで放電することで行った。放電容量はこの放電過程での電圧変化から見積もった。放電時間と電池電圧の関係を図5に示す。
【0044】
図5から明らかなように、リード部を電池外装材に熱融着させた実施例1の電池に比べて、リード線を電池外装材の熱融着部から取り出した比較例1の電池は、早期に電圧が低下し始め、十分な放電容量が得られない。これは比較例1の電池では、折曲げ試験によって密閉性が低くなり、これが性能劣化を招いたからである。
【0045】
また、さらに、試験後に両電池を解体し、内部を観察したところ、比較例1の電池内部では水酸化リチウムに帰属される白色粉体が大量に観察された。これに対して、実施例1の電池では、リチウム金属が光沢のある状態に維持されていた。
【0046】
以上の結果から、電池外装材にリード部を熱融着させることで電池の外部端子を形成することは、外部応力に耐える密閉性の高い電池を得るのに有効であることがわかった。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の電池では、導電性板の両面に融着性樹脂層が被覆されてなる電池外装材内に、電極及び電解質物質が収容されてなり、上記電池外装材の内側と外側のそれぞれに、リード部材が熱融着されることで外部端子が形成されているので、柔軟性,防湿性が得られるとともに、電池に外部応力が加わった場合でも密閉性が高度に保持される。したがって、外部応力が加わる可能性のあるICカードの電源として非常に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した電池の1構成例を示す断面図である。
【図2】リード部の熱融着工程を示すものであり、(a)はリード部の位置合わせ工程を示す模式図、(b)はリード部の熱融着工程を示す模式図である。
【図3】電池の組立工程を示すものであり、(a)は電池外装材,負極,セパレータ,正極の位置関係を示す模式図、(b)はこれら部材の重ね合わせ工程を示す模式図、(c)は電池の封止工程を示す模式図である。
【図4】電池の折曲げ試験を説明するものであり、(a)は角材に挟み込まれた電池の断面図、(b)はその斜視図である。
【図5】折曲げ試験後の電池の放電時間と電池電圧を関係を示す特性図である。
【図6】従来の電池における端子構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 負極
2,4 電解質物質
3 セパレータ
5 正極
7A,7C 電池外装材
8A,8C 導電性板
9A,9C 熱融性樹脂層
10A,10C 内側リード部
11A,11C 外側リード部

Claims (5)

  1. 負極、電解質物質、セパレータ、電解質物質及び正極が積層された電極部材と、
    融着性樹脂層が導電性板の両面を被覆した多層フィルムよりなる電池外装材とを備え、
    上記電池外装材の内側と外側のそれぞれに、リード部が加圧及び加熱により熱融着されることで導電性板と接続され、
    上記内側及び外側のリード部が熱融着された一対の電池外装材の間に、負極、セパレータ及び正極を挟み込み、
    上記電極部材を重ね合わせるとともに、上記電池外装材の外縁部が互いに加圧及び加熱によって熱融着されてなり、
    上記内側のリード部に正極又は負極の電極が接続され、上記正極又は負極の外側リード部が外部端子としてなされていることを特徴とする電池。
  2. リード部が金属網であることを特徴とする請求項1記載の電池。
  3. 電極が集電体を備え、この集電体に電池外装材の内側のリード部が接続されていることを特徴とする請求項1記載の電池。
  4. 電極の集電体が金属網であることを特徴とする請求項3記載の電池。
  5. 負極、電解質物質、セパレータ、電解質物質及び正極が積層された電極部材からなる電池の製造方法において、
    融着性樹脂層が導電性板の両面を被覆した多層フィルムよりなる電池外装材の内側と外側のそれぞれに、リード部が加圧及び加熱により熱融着されることで導電性板と接続し、
    次いで、上記内側及び外側のリード部が熱融着された一対の電池外装材の間に正極、セパレータ及び負極を挟み込み、
    その後、上記電極部材を重ね合わせるとともに、上記一対の電池外装材の外縁部に加圧及び加熱しながら熱融着して、上記内側のリード部に正極又は負極の電極を接続し、上記正極又は負極の外側リード部を外部端子としてなることを特徴とする電池の製造方法。
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