JP3552148B2 - 光電子放出装置とそれを用いた粒子状物質の荷電方法及び空間の清浄化方法 - Google Patents

光電子放出装置とそれを用いた粒子状物質の荷電方法及び空間の清浄化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光電子放出装置に係り、特に、光電子放出材に紫外線を照射して光電子を放出させる光電子放出装置とその装置を用いた粒子状物質の荷電方法及び、該荷電した粒子状物質を、空間中で、捕集・除去する清浄化方法、濃度や粒径の測定方法、分離・分級方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光電子放出材に、紫外線を照射することにより発生する光電子や、該光電子による微粒子の荷電及びその利用については、本発明者の多数の提案であり、次の通りである。
1)本発明者らが気体清浄化関係において提案したものの内、本発明と特に関連性を有するものは、
特公平3−5859号、特公平6−34941号、特公平6−74909号、特公平6−74910号、特公平7−121369号、特公平8−211号、特公平8−10616号、特公平8−22393号各公報
2)測定関係において提案したものは、
特公平6−25731号、特開平2−47536号各公報
3)分離・分級関係において提案したものは、
特開平3−42057号公報
4)荷電条件や光電子放出材関係において提案したものは、
特願平2−303557号、特公平6−74908号公報、特公平7−93098号公報、特許番号第2598730号明細書等がある。
【0003】
次に、従来の光電子放出材を用いる装置の改善点について、空気清浄器を例に説明する。
従来の光電子放出は、紫外線源(紫外線ランプ)と光電子放出材を個別に設置して用いていた。すなわち、紫外線源と光電子放出材が離れて設置されていたので、利用分野、装置によっては改善の余地があった。
図13は、空気清浄器を示している。空気清浄器は、紫外線ランプ1、紫外線透過窓2、光電子放出材3、電場設定のための電極4、荷電微粒子捕集材5により構成されている。微粒子を含有する空気6が空気清浄器に入ると空気6中の微粒子は、紫外線照射を受けた光電子放出材3から放出される光電子7により荷電され、荷電微粒子捕集材5にて捕集され、出口8では清浄空気となる。
【0004】
ところで、上記の様に、光電子放出材を紫外線ランプに対して遠方(装置の反対面)に設置した場合、光電子放出材表面への紫外線照射量が大幅に低下し、エネルギ利用の点で改善の余地が生じた。また、装置設計における自由度が欠ける問題点が生じた。
また、処理空気の条件によっては、空気中の不純物(例えば炭化水素)が光電子放出材に付着し、長時間運転により、性能低下をもたらし、改善の余地があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の改善点に鑑み、紫外線エネルギーが有効利用でき、長時間安定な運転ができる光電子放出装置と、粒子状物質の荷電を効果的に行うことができる粒子状物質の荷電方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、光電子放出材と、該光電子放出材に紫外線を照射する紫外線源とを有する光電子放出装置において、該紫外線源に光電子放出材と光触媒とを付加して一体化することとしたものである。
前記光電子放出装置は、紫外線源が、殺菌ランプであり、電場設定用の導電性物質を有するのが良い。
また、本発明では前記光電子放出装置を用いて放出させた光電子により、空間中の粒子状物質を荷電させることを特徴とする粒子状物質の荷電方法としたものであり、前記粒子状物質の荷電は、電場下で行うのが良い。
さらに、本発明では、前記粒子状物質の荷電方法により、荷電した空間中の粒子状物質を、捕集・除去する空間の清浄化方法、捕集して濃度・粒径を測定する空間中の粒子状物質の測定方法、及び、分離・分級する空間中の粒子状物質の分離・分級方法としたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、次の3つの知見に基づいてなされたものである。
(1)光電子放出材は、長時間の使用によりその環境の影響を受け、性能が低下する。これは、光電子放出材の使用環境における有機性ガス(H.C)が表面に付着することにより、引き起こされる原因による。
(2)有機性ガスは、紫外線照射された光触媒により、分解・除去される。
(3)光電子放出材を加熱下で用いると、その表面に汚染物が付着しにくい(付着量が抑制される)。
次に、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の光電子放出装置の基本構成図である。図1において、本発明の光電子放出装置10は、紫外線源、例えば紫外線ランプ1、該ランプの表面上に付加した光触媒9、紫外線ランプ1からの紫外線照射により光電子7を放出する物質(光電子放出材)3よりなる。
【0008】
光電子放出材3は、光触媒9の表面に付加されており、紫外線ランプ1からの紫外線照射により光電子7を放出する。
ここで、光触媒9は光電子放出材3と一体化して付加されており、光電子放出材3に付着し、性能低下をもたらす汚染物質(H.C)は該光触媒9の作用を受けて分解・除去される。この結果、光電子放出材は長時間安定性能を維持する。即ち、本発明の光電子放出装置10は、セルフクリーニングタイプの光電子放出装置である。
該光電子7の放出は、後述のように電場下での紫外線照射で効果的となる。そのため、図2に示すように、光触媒9の下の紫外線ランプ表面に、紫外線透過性の電場設定用の導電性物質11を付加することができる。該導電性物質11の付加により、電場の設定が確実になる。
【0009】
次に、本発明の紫外線源への光電子放出材と光触媒の一体化付加について説明する。該一体化には、次の4つの方法がある。
(1)紫外線源上へ光電子放出材と光触媒を同一面上に交互に付加する方法。
(2)紫外線源上へ先ず光触媒を付加し、その上に光電子放出材を付加する方法。
(3)紫外線源上へ先ず光電子放出材を付加し、その上に光触媒を付加する方法。
(4)紫外線源上へ光電子放出材と光触媒とを混合及び/又は多層化(重ね合わせ)付加する方法。
ここで、導電性物質は、光電子放出材が電場設定できるように、少なくとも光電子放出材の下に付加を行えば良い。
【0010】
次に、本発明の夫々の構成について説明する。
光電子放出材は、後述の紫外線源の上に光触媒と一体化をなして配備でき、紫外線の照射により光電子を放出するものであれば何れでも良く、光電的な仕事関数が小さなもの程好ましい。効果や経済性の面から、Ba,Sr,Ca,Y,Gd,La,Ce,Nd,Th,Pr,Be,Zr,Fe,Ni,Zn,Cu,Ag,Pt,Cd,Pb,Al,C,Mg,Au,In,Bi,Nb,Si,Ti,Ta,U,B,Eu,Sn,P,Wのいずれか又はこれらの化合物又は合金が好ましく、これらは単独で又は二種以上を複合して用いられる。複合材としては、アマルガムの如く物理的な複合材も用いうる。
化合物としては酸化物、ほう化物、炭化物があり、酸化物にはBaO,SrO,CaO,Y,Gd,Nd,ThO,ZrO,Fe,ZnO,CuO,AgO,La,PtO,PbO,Al,MgO,In,BiO,NbO,BeOなどがあり、またほう化物にはYB,GdB,LaB,NdB,CeB,EuB,PrB,ZrBなどがあり、さらに炭化物としてはUC,ZrC,TaC,TiC,NbC,WCなどがあり窒化物としてTiNがある。
【0011】
また、合金としては黄銅、青銅、リン青銅、AgとMgとの合金(Mgが2〜20wt%)、CuとBeとの合金(Beが1〜10wt%)及びBaとAlとの合金を用いることができ、上記AgとMgとの合金、CuとBeとの合金及びBaとAlとの合金が好ましい。
紫外線源上への付加の方法は、紫外線源からの紫外線照射により、光電子が放出されるものであれば、何れでも良い。
該付加は、薄膜状、網状、粒子、島状、帯状、くし状の適宜の形状を、適用装置の種類、形状、規模、後述の紫外線源の種類、形状、要求性能などにより、適宜に選して用いることができる。
光電子放出材の付加の方法は、上記のように、紫外線源、光触媒、導電性物質のいずれかの表面に周知の方法でコーティング、あるいは付着させて作ることができる。例えば、イオンプレーティング法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、メッキによる方法、塗布による方法、スタンプ印刷による方法、スクリーン印刷による方法を適宜用いることができる。
【0012】
付加の厚さは、下記の紫外線源から放出される紫外線の照射により光電子が放出される厚さであれば良く、5Å〜5,000Å、通常20Å〜500Åが一般的である。
薄膜状の付加は、本発明者がすでに提案したように、1種類又は2種類以上の材料を1層又は多層重ねて用いることができる。すなわち、薄膜を適宜複数(複合)で使用し、2重構造あるいはそれ以上の多重構造とすることができる(特開平4−152296号公報)。
紫外線照射により光電子を放出する物質(光電子放出材)の種類や付加法、形状、付加の厚さは、装置の種類、規模、形状、紫外線源の種類、導電性物質の種類、光触媒の種類、後述電場の強さ、かけ方、効果、経済性等で適宜予備試験を行い決めることが出来る。
また、光電子放出材への紫外線の照射は電場において行うと、光電子放出材からの光電子発生が効果的に起こる。
【0013】
電場の形成方法としては、荷電部の形状、構造、適用分野或いは期待する効果(精度)等によって適宜選択することが出来る。電場の強さは、光電子放出材の種類等で適宜決めることが出来、このことについては本発明者の別の発明がある。電場の強さは、一般に0.1V/cm〜2kV/cmである。
電極材料とその構造は通常の荷電装置において使用されているもので良く、例えば電極材料としてタングステン、Cu−Zn、SUSの板状、線状、網状、あるいは棒状の電極材が用いられる。
このような電場の形成は、後述の光触媒の光触媒作用を加速するので好ましい(特開平8−10576号公報)。
また、H.CやNHのようなガス状汚染物質を同時に除去したい用途、装置では、該電極材と後述の光触媒を一体化することで効果的な除去ができるので好ましい(特開平8−231290号公報)。
【0014】
次に、紫外線照射により光触媒作用を発揮する物質について説明する。
光触媒は、紫外線照射により光電子を放出する物質と一体化をなして配備でき、光照射により有機物を分解できるものであればいずれでもよい。
通常、半導体材料が効果的であり、容易に入手出来、加工性も良いことから好ましい。効果や経済性の面から、Se,Ge,Si,Ti,Zn,Cu,Al,Sn,Ga,In,P,As,Sb,C,Cd,S,Te,Ni,Fe,Co,Ag,Mo,Sr,W,Cr,Ba,Pbのいずれか、又はこれらの化合物、又は合金、又は酸化物が好ましく、これらは単独で、また2種類以上を複合して用いる。
例えば、元素としてはSi,Ge,Se、化合物としてはAlP,AlAs,GaP,AlSb,GaAs,InP,GaSb,InAs,InSb,CdS,CdSe,ZnS,MoS,WTe,CrTe,MoTe,CuS,WS、酸化物としてはTiO,Bi,CuO,CuO,ZnO,MoO,InO,AgO,PbO,SrTiO,BaTiO,Co,Fe,NiOなどがある。
【0015】
光触媒の付加は、蒸着法、スパッタリング法、焼結法、ゾル−ゲル法、塗布による方法、焼付け塗装による方法など、周知の付加方法を適宜用い、薄膜状、線状、網状、帯状、くし状、粒状、島状の適宜の形状を適用装置の種類、形状、規模、紫外線源の種類、形状、要求性能などにより適宜に選択して用いることができる。
付加の厚さは、下方の紫外線源から放出される紫外線照射により光触媒表面が光触媒作用を発揮する厚さであれば良く、100Å〜2,000Åが通常の厚さであり、適正な厚さは紫外線源からの照射紫外線の照射強度などにより適宜予備試験を行い決めることができる。
【0016】
また、光触媒作用の向上のために、上記光触媒にPt,Ag,Pd,RuO,Coの様な物質を加えて使用することも出来る。該物質の添加は、光触媒による有機物の分解作用が加速されるので好ましい。これらは、一種類又は複数組合せて用いることができる。通常、添加量は、光触媒に対して、0.01〜10重量%であり、適宜添加物質の種類や要求性能などにより、予備試験を行い適正濃度を選択することができる。
添加の方法は、含浸法、光還元法、スパッタ蒸着法、混練法など周知手段を適宜用いることができる。
次に、導電性物質について述べる。
導電性物質は、電場設定を確実にするための陰極用として使用され、これにより光電子放出材は均一に負極に設定される。
【0017】
該導電性物質は、導電性及び紫外線透過性を有し、上記の紫外線照射により光電子を放出する物質、光触媒作用を発揮する物質とともに紫外線源上の適宜の位置に(例、紫外線ランプの上で、光触媒の下、紫外線ランプの上で、光電子放出材の下)、薄膜状に付加でき、光電子放出材への紫外線の照射を電場において行うと、光電子を放出する物質からの光電子発生が効果的に起こるものであれば何れでも良い。通常、透明導電性薄膜が好ましく酸化インジウム(In)系、あるいは酸化スズ(SnO)系の薄膜が好ましい。例としては、SnをドープしたIn膜(ITO)、SbをドープしたSnO膜がある。これらの物質は、1種類又は2種類以上を組合わせて使用できる。
該導電性物質の付加を行い電場設定を行うと、上記の光電子放出作用の確実性の向上に、光触媒が光触媒作用を加速される(光触媒作用の向上)ので好ましい。これは、電場の設定により光触媒の正孔と電子の再結合が抑制され、結果として光触媒作用が向上すると考えられる。上記導電性物質付加による光電子放出作用と光触媒作用の向上は、本発明の大きな特徴である。
【0018】
次に、紫外線の照射源について述べる。
該照射源は、上記光電子放出材、光触媒、導電性物質が付加でき、照射紫外線により、光電子放出材から光電子が放出され、光触媒は光触媒作用を発揮するものであれば良い。
一般に、水銀灯、水素放電管、キセノン放電管、ライマン放電管などを適宜使用出来る。
光源の例としては、殺菌ランプ、ブラックライト、蛍光ケミカルランプ、UV−B紫外線ランプ、キセノンランプがある。この内、殺菌ランプ(主波長:254nm)が好ましい。殺菌ランプは、光触媒への有効照射光量を強くでき、光触媒作用が強くなり、光電子放出にも効果的で、また、オゾンレスであり、殺菌(滅菌)作用を有するためである。
該光源の形状は、棒状、螺線状、箱状等適宜の形状のものを用いることができる。
【0019】
紫外線源へ光電子放出材を付加すると、紫外線源からの発熱により、汚染物質が付着しにくくなり、本発明の特徴である。即ち、発熱部があると、発熱部から低温部へ気流が起こるので、発熱部には汚染物質の付着が抑制される。本発明では、その上に、付着した汚染物質を光触媒により、分解するものである。
本発明の光電子放出装置の設置方法は、適用装置の空間中や壁面や流路中などの適宜の位置に、適用装置、装置形状、規模、紫外線源の種類、形状、要求性能などにより適宜、1台あるいは複数台設置して用いることができる。
本発明の特徴は、光電子放出材へ付着し、性能劣化をもたらすガス状汚染物質(汚染物)、特に有機性ガスを、光電子放出材と一体化して付加した光触媒により分解するものである。ガス状汚染物質の分解の反応メカニズムの詳細は不明だが次のように考えられる。
【0020】
光電子放出材の表面に付着したガス状汚染物質は、該表面に吸着後、拡散して光電子放出材と一体化をなして配備して付加した光触媒の有する光触媒作用を受け分解処理される。すなわち、本発明の光電子放出装置は、セルフクリーニング機能(表面の清浄化)を有する光電子放出材である。
本発明の光電子放出装置の機能は、付着性の有機性ガスを分解・除去するので、本発明の利用先、装置種類によっては価値の大きい(意義の大きい)作用となり、本発明の特徴である。
例えば、気体清浄化関係において、気体中の有機性ガスが問題となる場合は効果的である。
例を挙げると、半導体や液晶産業などの先端産業の分野における気体の清浄化がある。
【0021】
例えば、ウエハやガラスなどの基板に付着し、歩留りを低下させる有機性ガスは、気体中の多成分の有機性ガスの内の一部の該基板に付着しやすい構造を有する有機性ガスのみである。光触媒は吸着作用を有するので、この基板に付着しやすい構造を有する有機性ガスが光触媒の表面に吸着し、光触媒作用により分解される。
この作用について、次に詳しく説明する。
有機性ガスによる基板の汚染は、後述の接触角で表現される。接触角を増加させる有機性ガスは、基板(ウエハ、ガラス材など)種類や基板上の薄膜の種類、性状によって異なるが、本発明者らの研究によると次のように考えられる。
すなわち、通常のクリーンルームにおける基板表面の接触角を増加させる有機性ガス(H.C)で共通して言えることは、高分子量のH.Cが主であり、その構造として−CO、−COO結合(親水性を有する)を持つことである。このH.Cは親水部(−CO、−COO結合部)を有する疎水性物質(H.Cの基本構造の−C−C−の部分)と考えることができる。
【0022】
具体例で説明すると、通常のクリーンルームにおけるガラス基板などの基板表面の接触角を増加させる有機性ガスは、C16〜C20の高分子量H.C、例えばフタル酸エステル、高級脂肪酸フェノール誘導体であり、これらの成分に共通することは化学的構造として、−CO、−COO結合(親水性を有する)を持つことである。
これらの汚染有機性ガスの起因は、高分子製品の可塑剤、離型剤、酸化防止剤などであり、高分子製品の存在する個所が発生源である(「空気清浄」第33巻、第1号、p16〜21、1995)。
光触媒によるこれらの有機性ガスの処理メカニズムの詳細は不明であるが、次のように推定できる。すなわち、これらの有機性ガスは−CO、−COO結合の部分がウエハやガラス表面のOH基と水素結合し、その上部は疎水面となり、結果としてウエハやガラス表面は疎水性になり、接触角が大きくなり、その表面に成膜すると膜の付着力は弱い。
【0023】
有機性ガスが存在する雰囲気に光触媒を設置すると、その活性部である−CO、−COO結合部が、光触媒に吸着し、次いで光触媒作用により分解作用を受けて別の安定な形態に変換される。その結果として、有機性ガスは安定な形態となり、ウエハやガラス基板上には付着しないか、又は付着しても疎水性を示さない。
上記において、接触角は、ウエハやガラスなど基板表面の汚染の程度を表わすものであり、汚染が激しいと、接触角が大きい、接触角が大きい基材や基板は、その表面に成膜しても、膜の付着強度が弱く(なじみが悪い)、歩留まりの低下をまねく。
ここで、接触角とは水によるぬれの接触角のことであり、基板表面の汚染の程度を示すものである。すなわち、基板表面に疎水性(油性)の物質を付着すると、その表面は水をはじき返してぬれにくくなる。すると基板表面と水滴との接触角は大きくなる。従って接触角が大きいと汚染度が高く、逆に接触角が小さいと汚染度が低い。
また、民生の分野の空気清浄において、体臭やVOCが問題となる気体の清浄化においても実用上有効である。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
半導体工場のクリーンルームにおける空気清浄を、図3により前記図1に示した本発明の光電子放出装置10を用いた空気清浄装置Aの基本構成図を用いて説明する。
図3において、12はクラス1,000のクリーンルームであり、ガス状汚染物質としてのH.C13、及び粒子状物質(微粒子)14を含むクリーンルーム空気6は、空気清浄装置Aに導入される。空気清浄装置Aは、図1に示した紫外線ランプ1、該ランプの表面上に付加した光触媒(紫外線照射により光触媒作用を発揮する物質)9、光電子放出材(光触媒TiOの上にAuを粒子状に付加)3より成る本発明の光電子放出装置10が設置されており、該光電子放出装置10から光電子を効率良く放出する。前記空気6は、光電子放出装置10、電場設定のための電極15、荷電微粒子捕集材16により構成される空気清浄装置Aに導入されることにより処理され、H.C及び微粒子が除去された清浄空気8となり、ウエハの製造装置(ウエハの加工、成膜プロセス)17へ供給される。
【0025】
電極15は、光電子放出装置10からの光電子の放出を電場で行うために設置している。すなわち、該装置10における光電子放出材3と電極15の間に電場を形成している。微粒子の荷電は、電場において光電子放出材3に紫外線照射することにより効率良く発生する光電子7(図1)により実施される。
ここでの電場の電圧は、50V/cmである。
前記の電極15は、光触媒18と一体化したものである。即ち、該光触媒18により、クリーンルーム空気6中H.Cは、光電子放出装置10における光触媒9による分解・除去に加えて分解・除去される。これらによりH.Cは、効率良く分解・除去される。
次に、本例を詳細に説明する。クリーンルーム12に入る前の外気19は、先ず粗フィルター20と空気調和器21で処理される。次いで、空気はクリーンルーム12に入る際にHEPAフィルター22によって除塵されるが、H.Cが共存するクラス1,000の濃度の空気23となる。
【0026】
すなわち、外気19に共存する自動車起因のH.Cや、プラスチック類など高分子樹脂起因のH.Cは、粗フィルター20、空気調和器21、及びHEPAフィルター22では除去されないため、クリーンルーム12内に導入されてしまう。更に、クリーンルーム12内では、クリーンルーム12の構成材やウエハから製品への製造装置17などの高分子樹脂類からH.C、例えばフタル酸エステル、高級脂肪酸13が発生する。
また、クリーンルーム12では、省エネ・省コストのため、クリーンルーム12内の空気が循環系24により循環使用されている。
このため、外気19中のH.C濃度1.1ppm(非メタンH.C)に対し、クリーンルーム12中のH.C濃度1.2〜1.5ppm(非メタンH.C)となっている。前記クリーンルーム12内の構成材やウエハの製造装置17などから発生したH.Cは、ウエハに付着性が高い構造のH.Cが多いので、外気19中のH.Cに比較してウエハ汚染への関与が大きい。
【0027】
本例の光電子放出装置10は、図1にその構成図を示したものである。すなわち、紫外線ランプ1は殺菌ランプ、光触媒9はTiO、光電子放出材3は粒状Auである。
空気清浄装置Aに導入された空気6中の微粒子は、紫外線ランプ1からの照射を受けた本発明の光電子放出装置10におけるAu3から放出される光電子7により、荷電微粒子となり、後方の荷電微粒子捕集材16により捕集・除去される。一方、空気6中のガス状汚染物質としてのH.Cは紫外線ランプ1からの照射を受けた本発明の光電子放出装置10におけるTiO9により分解される。
また、H.Cは電極15と一体化されている光触媒18によっても分解・除去作用を受け、高効率な分解・除去が実施される。
【0028】
すなわち、該H.Cの内、ウエハなどの製品、半製品、原料に付着し歩留まりの低下をもたらす原因となる種類のH.Cは付着性が高いので、TiO9、18にも容易に付着し、TiOの光触媒作用を受けて分解される。付着性の高いH.Cは、この様にして分解・除去されるので、空気は清浄化されると同時に、光電子放出材3としてのAu及びその周辺は不純物が付着しないで絶えずクリーニングされている。
25は、粗フィルターである。
このようにして、空気6中のガス状汚染物質としてのH.Cが分解・除去(0.1ppm以下)され、また微粒子が捕集・除去(クラス1より清浄)され、清浄化空気8が得られる。
ここでの光触媒9、18の分解・除去は、H.Cについて説明したがH.Cに共存するNHやアミン類等、及び光触媒に付着(吸着)する他のガス状汚染物質も同様に分解・除去される(NHはクリーンルーム空気6中では80ppbが、清浄空気8中では1ppb以下となる)。
【0029】
実施例2
実施例1の半導体工場のクラス1,000のクリーンルームに設置された小型のウエハ保管庫(ウエハ収納ストッカ)における空気清浄を、図4の前記図2に示した本発明の光電子放出装置10を用いたウエハ保管庫の基本構成図を用いて説明する。図4に示したウエハ保管庫Bの空気清浄は、ウエハ保管庫Bの片側に設置された空気清浄装置A、即ち図2に示した紫外線ランプ1、該ランプ1上に付加された紫外線透過性の導電性物質11、光触媒9、光電子放出材3より成る本発明の光電子放出装置10、該光電子放出装置10から光電子を効率良く放出する電場設定のための電極15、荷電微粒子捕集材16により実施される。 即ち、ストッカBには、ストッカBにおけるウエハキャリア26に収納されたウエハ27の搬入、搬出によりクリーンルーム12内のガス状汚染物質としてのH.C13、及び粒子状物質(微粒子)14を含む空気23が侵入する。
【0030】
ここで、ウエハ保管庫B中の微粒子(微粒子状物質)14は、紫外線ランプ(殺菌ランプ)1からの紫外線が照射された光電子放出装置10から放出される光電子7により荷電され、荷電微粒子となり、該荷電微粒子は荷電微粒子の捕集材16に捕集される。
一方、ウエハ保管庫B中のH.C13は、光電子放出装置10の表面に吸着し、紫外線照射を受けたTiOにより分解、無害化処理される。
このようにして、ウエハの存在する被処理空間部(清浄化空間部、C)は高清浄化される。ここで、遮光材28は被処理空間部と空気清浄化部(空気清浄装置)の間に設置され、本例では電極(平板状)4に隣接されている。遮光材28は紫外線ランプ1からの紫外線のウエハキャリア26及びウエハ27への照射を防ぐために設置されている。
【0031】
ここでの光電子放出装置10は、前記図2に示したものである。即ち、紫外線ランプ1は殺菌ランプ、導電性物質11はITO、光触媒はTiO、光電子放出材3は粒状Auである。
ウエハ保管庫Bでは、ウエハ27の保管庫Bへの出し入れ(該保管庫の開閉)毎にクリーンルーム12中の有害物質としての微粒子14(濃度:クラス1,000)や、ウエハ基板に付着すると接触角の増加をもたらす有機性ガス13(非メタンH.C濃度:1.0〜1.5ppm)が侵入するが、上記のごとくして、これらの有害物質(微粒子及び有機性ガス)は捕集・除去され、保管庫Bの清浄化空間部C)では接触角の増加をももたらさない(非メタンH.C濃度として0.2ppm以下)クラス1よりも清浄な超清浄空間が創出される。
【0032】
ここで、ガス状汚染物質としてのNHは、クリーンルーム空気6中の濃度80ppbが、ストッカB中では光触媒で同様に分解・除去され1ppb以下となる。
29−1、29−2、29−3は、保管庫内の空気の流れを示す。すなわち、空気清浄装置Aに移動した空気は、紫外線ランプの照射により加温されるため、上昇気流が生じ保管庫B内を矢印、29−1〜29−3の様に動く。この空気の自然循環による動きにより、保管庫B内の微粒子14やウエハ基板に付着すると接触角の増加をもたらす有機性ガス13は、空気清浄装置A内に順次効果的に移動する。このようにして、保管庫B内は、迅速かつ簡便に清浄化され、ウエハ保管庫は超清浄空気となり、ウエハへの汚染防止が顕著になる。
図4において、図3と同一符号は、同じ意味を示す。
【0033】
実施例3
図5、6は、実施例2のウエハ保管庫Bの別の形態であり、本発明の光電子放出装置10を、H.C除去のための光触媒18と一体化した電場用電極材15及び荷電微粒子捕集材16とで一体化して空気清浄ユニットAとなし、ストッカBの空間中に設置したものである。
該空気清浄ユニットAは、ストッカB内の適宜の位置に、適宜の数量を、空間の大きさ、形状、要求性能等により適宜に配置できる特徴がある。
図5の空気清浄ユニットAにおける本発明の光電子放出装置10は、前記の図2(実施例2)で示したもの、光触媒18と一体化した電極材15は、図3で示したものである。
【0034】
ウエハ保管庫Bでは、ウエハ27の保管庫Bへの出し入れ(該保管庫の開閉)毎にクリーンルーム12中の有害物質としての微粒子14(濃度:クラス1,000)や、ウエハ基板に付着すると接触角の増加をもたらす有機性ガス13(非メタンH.C濃度:1.0〜1.5ppm)が侵入するが、上記のごとくして、これらの有害物質(微粒子及び有機性ガス)は捕集・除去され、保管庫Bの清浄化空間部Cでは接触角の増加をももたらさない(非メタンH.C濃度として0.2ppm以下)クラス1よりも清浄な超清浄空間が創出される。
ここで、ガス状汚染物質としてのNHは、クリーンルーム空気6中の濃度80ppbが、ストッカB中では光触媒で同様に分解・除去され1ppb以下となる。
【0035】
29−1、29−2、29−3は、保管庫内の空気の流れを示す。すなわち、空気清浄装置Aに移動した空気は、紫外線ランプの照射により加温されるため、上昇気流が生じ保管庫B内を矢印、29−1〜29−3の様に動く。この空気の自然循環による動きにより、保管庫B内の微粒子14やウエハ基板に付着すると接触角の増加をもたらす有機性ガス13は、空気清浄装置A内に順次効果的に移動する。このようにして、保管庫B内は、迅速かつ簡便に清浄化され、ウエハ保管庫は超清浄空気となり、ウエハへの汚染防止が顕著になる。
図5、6において、図3、4と同一符号は、同じ意味を示す。
【0036】
実施例4
図7は、病室12における空気清浄を示す説明図である。図7において、ガス状汚染物質としての体臭(例、NH、高級脂肪酸、アルデヒド類)、VOC等13、及び粒子状物質(塵あい、各種菌類、微生物含有粒子等)14は、図8に詳細が示される本発明の光電子放出装置10、電極材15−1、15−2及びファン30により成る空気清浄装置(空気清浄器)Aにより処理され、病人31の寝ている被処理空間部Cに清浄空気29−1、29−2が供給される。
即ち、病室12内は、外部から侵入するガス状汚染物質(例、H.C)や粒子状物質(例、微粒子)に加えて、病人31から発生するガス状汚染物質として体臭13、粒子状物質(例、黄色ぶどう球菌)14により汚染されている。
特に、病室12における病人31は、菌類(例、黄色ぶどう球菌)の発生があり、病室12内は菌類が蓄積され高濃度となるので、病人31への見舞いの人や看護婦への感染の危険性がある。
【0037】
これらのガス状汚染物質13や粒子状物質14は、図8にその基本的構成が示された空気清浄装置Aにて捕集・除去される。そして、菌類は、殺菌処理(増殖防止)される。
図8を説明する。
空気清浄装置Aは、図2で示した本発明の光電子放出装置10(殺菌ランプ1の上に導電性物質としてITO、光触媒としてTiO、光電子放出材としてAuを図2のごとく付加)、網状の電極材15−1、15−2、ガス状汚染物質13及び粒子状物質14を含む処理空気29−3、29−4を該空気清浄装置A内に強制通気(導入)するためのファン30より構成される。
ここで、電極15−1、15−2は光電子放出材(図2中3)との間の電場の形成と、荷電粒子状物質の捕集材の2つの機能を有する。該電極15−1、15−2は、光触媒と電極を一体化したものであり、光電子放出装置10における殺菌ランプ(図2中1)からの紫外線照射を受け光触媒作用を発揮するものである。
【0038】
ここでは、電場下(光電子放出材(負)と捕集材としての電極(正)15−1、15−2間に200V/cm)で、光電子放出装置10における光電子放出材3に紫外線ランプ1からの紫外線を照射することにより光電子を発生させ、該光電子により処理空気29−3、29−4中の粒子状物質14を荷電させ、該荷電粒子物質は捕集材15−1、15−2にて捕集・除去される。
一方、ガス状汚染物質13は、光電子放出装置10における紫外線ランプ1上に付加された光触媒9、及び電極15−1、15−2と一体化された光触媒に付着し、分解・除去される。これにより、清浄装置A出口の空気29−1、29−2は、ガス状汚染物質13と粒子状物質14が除去された清浄空気となる。
【0039】
ここで、該捕集材15−1、15−2に捕集された各種菌類、微生物類は、(該捕集材は光触媒作用を有するので)捕集材(光触媒)により光触媒作用による殺菌作用を受け、かつ紫外線ランプ(殺菌ランプ:主波長254nm)からの紫外線(殺菌線)の照射を受け殺菌(滅菌)される。このようにして、安全な除菌空気が容易に得られることが本発明の特徴の1つである。
前記のガス状汚染物質13と粒子状物質14の濃度は、昼間は人の出入りによるガス状汚染物質13や粒子状物質14の侵入や病人の立ち上がり(動き)などによる発生により高くなるので、ファン30を作動させてこれらの物質の迅速なる捕集・除去を行う。
即ち、ファン30の作動により、処理空気29−3、29−4が吸引され、ここで、前記のごとくして、処理空気29−3、29−4中のガス状汚染物質13、粒子状物質14が捕集・除去され、清浄空気29−1が得られる。これより、濃度が高いガス状汚染物質13や粒子状物質14は、一定濃度以下に維持される。
【0040】
そして、夜間はファン30をストップし、本発明の光電子放出装置10における紫外線ランプ1の照射により生ずる自然に発生する上昇気流による空気清浄を行う。即ち、処理空気29−3が、空気清浄装置Aの下方より導入され、前記のごとくして、処理空気29−3中のガス状汚染物質13と粒子状物質14が捕集・除去され、清浄空気29−2が得られる。これにより、オゾンレスで無騒音の空気清浄が行われる。即ち、夜間は病室の扉は閉じられ、人の活動は無いので、紫外線ランプ1による上昇気流のみの受動的な空気処理が、無騒音で実施されるので睡眠の妨げにならず、実用上好適である。
32は、ベッド、33はふとんである。
ここでのファン30は、シロッコファンである。
【0041】
実施例5
図9は、実施例4の室内の空気清浄装置(空気清浄器)Aの別の形態である。空気清浄装置Aは、本発明の光電子放出装置10、該装置から光電子を効率良く発生させるための電場用の網状電極(ガス状汚染物質を分解・除去するために、光触媒を付加した材料)15、荷電微粒子の捕集材としての電極16、ガス状汚染物質13及び粒子状物質14を含む処理空気29−3(29−4)を該空気清浄装置A内に強制通気(導入)するためのファン30より構成される。
前記のガス状汚染物質13と粒子状物質14の濃度は、昼間は人の出入りによるガス状汚染物質13や粒子状物質14の侵入や病人の立ち上がり(動き)などによる発生により高くなるので、ファン30を作動させてこれらの物質の迅速なる捕集・除去を行う。
即ち、ファン30の作動により、処理空気29−3(29−4)が吸引され、ここで、前記のごとくして、処理空気29−3(29−4)中のガス状汚染物質13、粒子状物質14が捕集・除去され、清浄空気29−1(29−2)が得られる。これにより、濃度が高いガス状汚染物質13や粒子状物質14は、一定濃度以下に維持される。
【0042】
そして、夜間はファン30をストップし、本発明の光電子放出装置10における紫外線ランプ(殺菌ランプ)1の照射により生ずる自然に発生する上昇気流による空気清浄を行う。即ち、処理空気29−3(29−4)が、空気清浄装置Aの下方より導入され、前記のごとくして、処理空気中のガス状汚染物質13と粒子状物質14が捕集・除去され、清浄空気29−1(29−2)が得られる。これにより、オゾンレスで無騒音の空気清浄が行われる。即ち、夜間は病室の扉は閉じられ、人の活動は無いので、紫外線ランプによる上昇気流のみの受動的な空気処理が、無騒音で実施されるので睡眠の妨げにならず、実用上好適である。
ここで、該捕集材16に捕集された各種菌類、微生物類は、紫外線ランプ(殺菌ランプ:主波長254nm)1からの紫外線(殺菌線)の照射を受け殺菌(滅菌)される。このようにして、安全な除菌空気が容易に得られることが本発明の特徴の1つである。
【0043】
実施例6
図4に示した構成のウエハ保管庫に、半導体工場の下記試料空気を入れ、本発明の光電子放出装置10を用いた空気清浄装置Aにより空気清浄を行い、保管庫内の微粒子濃度、保管庫に収納したウエハ表面上の接触角、該ウエハ表面にCr膜を成膜し、該膜のウエハとのなじみ(付着力)を測定した。また、保管庫内のウエハに吸着した炭化水素の同定、及び保管庫中の非メタン炭化水素、NHの濃度を調べた。また、比較として、光触媒材がない場合の光電子放出装置(Auのみ付加の場合、ブランク)も同様に調べた。
1)保管庫の大きさ ; 80リットル
2)光電子放出装置 ;
(1)紫外線源 : 殺菌ランプ
(2)導電性物質 : ITO(殺菌ランプ表面に被覆)
(3)光触媒 : TiOをITO上に1000Åを被覆
(4)光電子放出材 : 粒状Auを光触媒表面に付加
3)光電子放出用の電極 ; SUS板、100V/cm
4)荷電微粒子の捕集材 ; SUS板、800V/cm
【0044】
5)測定 ;
(1)保管庫内の微粒子濃度の測定 : パーティクルカウンター〔光散乱、リオン(株)製、KC−21〕
(2)接触角の測定 : 水滴接触角法〔(株)協和界面科学製、CA−DT
(3)成膜したCrの付着力 : スクラッチ試験(RHESCA製CSR02型)
(4)保管庫中非メタン炭化水素の測定 :ガスクロマトグラフ(GC)
(5)ウエハ上に吸着した炭化水素の同定 : GC/MS法
(6)保管庫中NHの測定 : 化学発光法
6)ウエハ上の成膜 ; Cr300nm厚さ、スパッタリング法
7)試料ガス ; 微粒子濃度:クラス100(1ft中の0.1μm以上の微粒子の個数)
非メタン炭化水素濃度:1.3ppm
NH濃度: 150ppb
8)保管庫内のウエハ ; 5インチウエハを1cm×8cmに切断し、下記前処理後、保管庫に設置。
9)ウエハの前処理 ; 洗剤とアルコールで洗浄後、O発生下で紫外線照射(UV/O洗浄)。
【0045】
結果
1)保管庫内の微粒子濃度
図10は、経過時間による保管庫内のクリーン度(クラス:1ft中の0.1μm以上の微粒子の総個数)である。図10は、保管庫の扉を10回/日開閉を行い試料空気を導入し、その都度光電子放出装置を作動させ、30分後のクリーン度を調べたものである。図10において、クリーン度は光触媒が有る場合−〇−、無い場合−●−で示す。図中矢印は検出限界(クラス1)以下を示す。このように、光触媒を付加した場合は、長時間性能が安定していた。300時間後、420時間及び500時間後の光電子放出材をESCA分析したところ、光触媒付加無しのものは表面での炭素量の増加が観測され、空気中の有機物の吸着が認められた。これに対して本発明の光触媒付加有りのものは有機物は検出限界以下であった。
【0046】
2)保管庫に収納したウエハ表面の接触角とCr膜の付着力
図11は、経過時間による接触角(角度)と付着力(mN)の変化を示すグラフである。図11において、接触角は光触媒が有る場合−〇−、無い場合−●−で示し、また付着力は光触媒が有る場合−△−、無い場合−▲−で示す。
このように、光触媒を付加した場合は、時間の経過によっても変化がなかった。
また、光触媒なしのとき、50時間後にウエハを取り出し、加熱によりウエハ上に付着した炭化水素を脱離させ、GC/MS法で測定したところ、フタル酸エステルを検出した。光触媒を設置した場合は検出しなかった。
また、保管庫内の非メタン炭化水素の濃度は、光触媒付加有りの場合、2時間、35時間、100時間、200時間の経過後、いずれも0.1ppm以下であった。光触媒無しの場合、2時間、35時間、100時間、200時間の経過後、いずれも1.1ppmであった。
【0047】
また、保管庫内のNHの濃度は、光触媒付加有りの場合、2時間、35時間、100時間、200時間の経過後、いずれも1ppb以下であった。光触媒無しの場合、同時間において、120〜140ppbであった。
前記において、微粒子除去とガス状汚染物質除去について、導電性物質を付加しない場合も同様に調べたところ、同様の結果を得た。
図12に、非メタン炭化水素濃度について、経過時間と濃度を示す。図12中、−〇−は導電性物質が有りの場合、−△−は、導電性物質が無しの場合を示す。
図12中、矢印は検出限界(0.1ppm)以下を示す。
光触媒は、前述有機性ガスに共存する他のガス状汚染物質の内、ウエハやガラス基板に吸着性の高いガスも同時に処理される。
例えば、クリーンルームにおいて酸やアルカリ性物質が高濃度で存在する場合、例えば酸やアルカリ性物質を用いる洗浄工程における発生NOxやNHがクリーンルームに流出している場合、該ガス状の汚染物質の濃度によっては、上述の接触角増加に関与する。この場合は、該ガス状の汚染物質も光触媒による作用により同時に処理される。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような効果を奏することができた。
1)光電子放出装置として、紫外線源上に光触媒と光電子放出材とを一体化し、付加することにより、
(1)光電子放出材に付着し、性能低下をもたらす汚染物質(有機性ガス)は、共存する光触媒の作用により分解・除去される。それにより、セルフクリーニングされる光電子放出装置となった。
(2)光電子放出の効果が向上し、かつ安定したので、微粒子の荷電が効果的(荷電が高性能かつ、長時間安定)になり、実用性が向上した。
(3)光電子放出材への紫外線照射が、ごく近傍の紫外線源から行われるので、放出紫外線が有効利用され(放射状に放出される紫外線源を全て有効利用できる)、光電子放出効果(性能)が向上した。
【0049】
(4)光電子放出効果が向上し、かつ安定したので装置が小型化(コンパクト化)し、処理容量が増加した。また、装置設計の自由度が大となった。
(5)紫外線源への光電子放出材の付加は、紫外線源からの発熱による作用により、汚染物質の光電子放出材への付着が起こりにくいので、本発明の光電子放出装置は、理屈にかなった装置となった。
(6)光触媒により、通常の空気中や気体中に存在する極低濃度レベルの有機性ガス(H.C)や塩基性ガス(NH)は無害化された(分解・除去された)。これにより、本光電子放出装置の利用分野によっては、ガスと粒子の同時除去技術となり、実用上効果的となった。
【0050】
例えば、▲1▼ 半導体や液晶などの先端産業における清浄化空間の分野では、
(a)これにより、基材又は基板表面の接触角の増加を防止する気体あるいは雰囲気が得られた。
(b)(a)で得られた気体(あるいは雰囲気)を半導体ウエハや液晶ガラスに暴露しておくと、該基材や基板表面の汚染が防止される。
(c)ガス状有害成分を、効果的に処理できるので今後のクリーン化技術の方向として期待される局所空間(ミニエンバイロメント)の清浄化に好適に使用できた。
(d)(a)より、本発明の光電子放出装置により清浄化された局所空間では、製品が低コストで製造できるので、適用装置が広がり、実用性が向上した。
▲2▼ 民生の分野では、
(a)臭気性ガス(体臭、トイレ臭、タバコ臭)、VOC等が処理されるので、アメニティや、健康被害上有効な雰囲気が得られた。
【0051】
2)前記1)において、導電性物質の付加を行うことにより、
(1)光電子放出材からの光電子放出における電場形成が確実となった(信頼性の高い電場形成となり、本光電子放出装置の信頼性が向上した)。
(2)光触媒による光触媒作用が加速され、効果的となった。
(3)前記1)の(1)〜(6)の効果がより確実に、効果的になった(信頼性が向上し、実用上より有効となった)。
(4)光電子による粒子状物質の処理(除去)と、光触媒によるガス状汚染物質除去が効果的に出来るので、ガスと粒子を同時除去(制御)した超清浄空間を効率良く創出できた。
(5)ガスと粒子の効果的な同時除去により、適用分野が広がり、実用性が向上した。
3)前記1)における紫外線として、殺菌ランプを用いることにより、
(1)光触媒と光電子放出材の作用が効果的となった。
(2)殺菌作用を有するので、微生物や菌類が問題となる分野(装置種類)によっては、実用性が向上した。
【0052】
4)上記のような効果を有することにより、夫々の利用分野で特に次の効果が生じた。
(1)清浄気体あるいは清浄空間を得る分野では、
(a)性能が向上し、長時間安定した。
(b)装置が小型化し、処理容量が増加した。
(2)測定を行う分野では、
(a)測定精度が向上し、長時間安定した。
(b)特に<0.1μmの様な超微粒子の測定精度向上に効果的となった。
(3)分離・分級、表面改質、荷電量の制御を行う分野では、
(a)性能が向上し、長時間安定した。
(b)装置が小型化し、処理容量が増加した。
(c)特に、<0.1μmの様な超微粒子の性能向上に効果的となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電子放出装置の基本構成図。
【図2】本発明の別の光電子放出装置の基本構成図。
【図3】本発明の光電子放出装置を用いた空気清浄装置を備えたクリーンルームの概略図。
【図4】本発明の光電子放出装置を用いたウエハ保管庫を設置したクリーンルームの概略図。
【図5】本発明の光電子放出装置を備えた空気清浄装置の断面図。
【図6】図5の空気清浄装置を備えたウエハ保管庫の概略図。
【図7】本発明の光電子放出装置を有する空気清浄装置を備えた病室の概略図。
【図8】図7の空気清浄装置の拡大断面図。
【図9】図7の空気清浄装置の別の拡大断面図。
【図10】経過時間(h)によるクリーン度(クラス)の変化を示すグラフ。
【図11】経過時間(h)による接触角(角度)の変化を示すグラフ。
【図12】経過時間(min)による非メタン炭化水素濃度(ppm)の変化を示すグラフ。
【図13】公知の空気清浄器の断面図。
【符号の説明】
1:紫外線ランプ、3:光電子放出材、6:クリーンルーム空気、7:光電子、8:清浄空気、9:光触媒、10:光電子放出装置、11:導電性物質、12:クリーンルーム、13:ガス状汚染物質、14:粒子状物質、15:電極、16:荷電微粒子捕集材、17:ウエハ製造装置、18:光触媒、19:外気、20:粗フィルター、21:空気調和器、22、HEPAフィルター、24:循環空気、26:ウエハキャリア、27:ウエハ、28:遮光材、29:気流の流れ、30:ファン、A:空気清浄装置、B:ウエハ保管庫、C:清浄化空間部

Claims (6)

  1. 光電子放出材と、該光電子放出材に紫外線を照射する紫外線源とを有する光電子放出装置において、該紫外線源に光電子放出材と光触媒とを付加して一体化したことを特徴とする光電子放出装置。
  2. 前記紫外線源が、殺菌ランプであることを特徴とする請求項1に記載の光電子放出装置。
  3. 前記光電子放出装置は、電場設定用の導電性物質を有することを特徴とする請求項1又は2記載の光電子放出装置。
  4. 請求項1、2又は3記載の光電子放出装置を用いて放出させた光電子により、空間中の粒子状物質を荷電させることを特徴とする粒子状物質の荷電方法。
  5. 前記粒子状物質の荷電は、電場下で行うことを特徴とする請求項4記載の粒子状物質の荷電方法。
  6. 請求項4又は5記載の粒子状物質の荷電方法により、荷電した空間中の粒子状物質を、捕集・除去することを特徴とする空間の清浄化方法。
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