JP3303125B2 - 空間清浄化材及びそれを用いた空間清浄化方法 - Google Patents

空間清浄化材及びそれを用いた空間清浄化方法

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JP3303125B2 JP13256396A JP13256396A JP3303125B2 JP 3303125 B2 JP3303125 B2 JP 3303125B2 JP 13256396 A JP13256396 A JP 13256396A JP 13256396 A JP13256396 A JP 13256396A JP 3303125 B2 JP3303125 B2 JP 3303125B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、空間の清浄化に係り、
特に、紫外線照射により空間中の有害ガスと微粒子を除
去することができる空間清浄化材とそれを用いた空間の
清浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光電子放出材に、紫外線照射することに
り発生する光電子による空間の清浄化については、本
発明者らの多数の提案や研究論文がある。 例えば、(1)空間清浄化に関するものでは、特公平3
−5859号、特公平6−3494号、特公平6−74
909号、特公平6−74710号、特公平8−211
号各公報参照、 (2)光電子放出材に関するものでは、特公平6−74
908号、特公平7−93098号、特開平3−108
698号各公報参照、 (3)研究論文では、(a)Proceedings
of the 8th.World Clean Ai
r Congress.1989.Vol.3.Hag
ue,p735〜740(1989)、(b)公害、V
ol.24.No5.p63〜71(1989)、
(c)エアロゾル研究、第7巻、第3号、p245〜2
47(1992)、(d)エアロゾル研究、第8巻、第
3号、p239〜248(1993)、同第8巻、第4
号、p315〜324(1993)、などがある。
【0003】従来の光電子放出材は、一種類のバルク状
(塊まり状)の材料か、又はバルク状の材料に光電子放
出性物質を薄膜状に付加した材料、例えば、紫外線透過
性物質であるガラス板に光電子放出性物質を薄膜状に付
加した材料を用いていた。他の例として、板状Cu−Z
nに、光電子放出性物質を薄膜状に付加した材料があ
る。この様な、光電子放出材の場合、利用分野、装置、
要求性能によっては改善の余地があった。従来の空間の
清浄化を、半導体工場における空間清浄を例に、図12
を用いて説明する。図12は、クラス1,000のクリ
ーンルームの半導体工場における空気清浄装置を示して
いる。空気清浄装置は、クラス1,000のクリーンル
ームの微粒子(粒子状物質)除去のために、ユースポイ
ントに設置されている。すなわち、クリーンルーム中に
は、汚染物質として、微粒子やガス状物が存在する
が、該装置により微粒子を除去し、清浄空気として、該
清浄空気を半導体製造装置及びその周辺へ供給し、清浄
な環境を保っている。
【0004】空気清浄装置は、主に、紫外線ランプ1、
紫外線照射用窓ガラス、板状Cu−ZnにAuを薄膜
状に付加した光電子放出材3、電場設定のための電極
4、荷電微粒子捕集材5、により構成されている。クリ
ーンルーム中の微粒子を含有する空気6が空気清浄装置
に入ると、空気6中の微粒子は、紫外線照射を受けた光
電子放出材3から放出される光電子7により荷電され、
荷電微粒子となり、後流の荷電微粒子捕集材5にて捕集
され、出口では清浄空気8となる。ところで、上記の様
に、光電子放出材3を長時間にわたり用いた場合、該光
電子放出材3は、クリーンルーム空気中の汚染物質に汚
染され、性能劣化をもたらす(例えば、炭化水素のよう
な吸着され易い物質が表面に吸着してしまう)。特に、
半導体工場では、クリーンルーム空気中のガス状汚染物
質としての炭化水素(H.C)濃度は外気濃度よりも高
く汚染をもたらす。
【0005】すなわち、最近、クリーンルーム構成材の
高分子樹脂類からの脱ガスやクリーンルームにおける作
業で使用する各種溶剤からのH.Cが、H.C発生源と
して問題になっている。H.Cの起因として、通常のク
リーンルームでは外気から導入されたH.C(クリーン
ルームでのフィルターはH.C除去ができないので、外
気のH.Cはクリーンルームに導入されてしまう)に、
上述のようにクリーンルーム内で発生するH.Cが加わ
るので、外気に比べてクリーンルーム中のH.Cは高濃
度となる。さらには、省エネの点でクリーンルーム空気
の循環使用を多くして用いているので、クリーンルーム
中のH.C濃度は濃縮され、クリーンルームによって
は、かなりの高濃度になっている。また、最近省エネク
リーンルームの観点で局所清浄化の要求が高まってお
り、この場合、空間容積に対して、高分子樹脂の使用比
率が高くなるので、H.C濃度が高まる((a)空気清
浄、第32巻、第3号、p43〜52(1994)、
(b)ウルトラクリーンテクノロジー、第7巻、第4
号、p15〜20(1995)、(c)クリーンテクノ
ロジー、12.p45〜50(1995)、(d)日本
機械工業連合会、平成6年度、省エネ化と低コスト化志
向、最適クリーンルーム構造に関する調査研究、p41
〜49(1995)参照)。
【0006】また、近年の先端産業の発展において、半
導体製品の高精密化、高品質化に伴ない、従来問題とな
らなかったガス状汚染物質、特にH.Cがウエハへのガ
ス状汚染物質として問題となってきた。すなわち、H.
Cはウエハ基板に付着すると基板とレジストとの親和性
(なじみ)に影響を与える。そして、親和性が悪くなる
と、レジストと膜厚に悪影響を与えたり、基板とレジス
トとの密着性に影響を与える。すなわち、H.Cの付着
により歩留まりの低下をもたらす((a)「空気清浄」
第33巻、第1号、p16〜21、(1995)、
(b)第13回空気清浄とコンタミネーションコントロ
ール研究大会、p219〜223(1995))。
【0007】このような汚染の程度は、基材や基板表面
の接触角で表わすことができ、汚染が激しいと、接触角
が大きい。接触角が大きい基材や基板は、その表面に成
膜しても、膜の付着強度が弱く(なじみが悪い)、歩留
まりの低下をまねく。ここで、接触角とは水によるぬれ
の接触角のことであり、基板表面の汚染の程度を示すも
のである。すなわち、基板表面に疎水性(油性)の物質
を付着すると、その表面は水をはじき返してぬれにくく
なる。すると基板表面と水滴との接触角は大きくなる。
従って接触角が大きいと汚染度が高く、逆に接触角が小
さいと汚染度が低い。すなわち、ウエハを取扱う製造工
程では、微粒子除去に加えて、ガス状汚染物質も同時に
除去する必要がでてきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の事実
に鑑み、光電子放出材の長時間の安定性、共存するガス
状汚染物質の除去とを同時に達成できる空間清浄化材と
それを用いた空間の清浄化方法を提供することを課題と
する。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明では、母材上に、少なくとも紫外線照射によ
り光電子を放出する物質と、紫外線照射により光触媒作
用を発揮する物質とを、前記光電子放出物質を薄膜状に
付加し、その上に光触媒物質を帯状、くし状、粒子状又
は島状に付加するか、又は、前記光触媒物質を薄膜状に
付加し、その上に光電子放出物質を帯状、くし状、粒子
状又は島状に付加して、同一面上に配備させて構成した
ことを特徴とする空間清浄化材としたものである。前記
空間清浄化材において、母材は、ガラス、金属又は合金
から選はれ、光電子を放出する物質としてはAuを、光
触媒作用を発揮する物質としてはTiO2を用いるのが
い。また、本発明では、有害ガス及び微粒子を含む空
間を清浄化する方法において、前記の空間清浄化材に、
電場下で紫外線を照射し、空間中の有害ガス及び微粒子
を分解及び荷電して除去することとしたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、次の4つの知見に基づ
いてなされたものである。 (1)光電子放出材は、長時間の使用によりその環境の
影響を受け、性能が低下する。これは、光電子放出材の
使用環境における有機物(H.C)が表面に付着するこ
とにより、引き起こされる原因による。 (2)有機物は、紫外線照射された光触媒により分解、
除去される。 (3)少なくとも、1部が有機物(高分子樹脂)で構成
されるクリーンルーム環境では、該有機物から極微量の
有機性ガス(H.C)が発生し、クリーンルーム空間中
の収容物(ウエハやガラス基板などの原料、半製品)を
汚染する。 すなわち、クリーンルーム空間では、少なくともその一
部に有機物(例、プラスチック容器、パッキン材、シー
ル材、接着材、壁面の材料等)を使用しており、該有機
物から極微量の有機性ガスが発生する。
【0011】例えば、シール材からはシロキサン、収納
容器の材料であるプラスチック材からはフタル酸エステ
ルなどが発生し、これらの有機性ガスは、発生濃度は極
く低濃度であるが、クリーンルームは閉鎖系であり、閉
じ込められ、さらに、最近クリーンルームは省エネの点
で空気の循環使用の比率が高いので、該濃度は徐々に高
くなり、クリーンルーム内の収容物の上に付着し悪い影
響を与えてしまう。このように、クリーンルーム中の
H.Cは外気からの導入H.Cにクリーンルーム内部か
らの発生ガスが加わるので、多成分、かつ高濃度となっ
ており、最近ではクリーンルームはH.Cに関しては、
ダーティルームと言われており、効果的なH.C処理法
が必要になっている。 (4)本発明の対象分野である先端産業では、従来粒子
除去のみで十分であったものが、製品の高品質化、高精
密化により、今後、ガス状汚染物質、特にH.Cの影響
を受けるようになる。
【0012】次に、本発明を詳細に説明する。先ず、本
発明の空間清浄化材について、紫外線照射により、光電
子を放出する物質と、光触媒作用を発揮する物質とを同
一面上に配備する方法について述べる。同一面上に配備
する方法としては、次の方法がある。 (1)後記の母材上へ光電子を放出する物質を薄膜状に
付加し、その上に光触媒作用を発揮する物質を帯状、く
し状、粒子状又は島状に付加する方法。 (2)後記の母材上へ光触媒作用を発揮する物質を薄膜
状に付加し、その上に光電子を放出する物質を帯状、く
し状、粒子状又は島状に付加する方法 のように、本
発明の空間清浄化材は、紫外線照射により、光電子を放
出する物質と光触媒作用を発揮する物質とが同一面上に
配備されて構成されているものであり、これにより、光
電子の放出及びガス状汚染物質の分解を同時に行うもの
である。
【0013】次に、本発明の構成について説明するが、
先ず紫外線照射により光電子を放出する物質について説
明する。紫外線照射により光電子を放出する物質(光電
子放出性物質)は、後記する光触媒と同一面上に配備で
き、紫外線の照射により光電子を放出するものであれば
何れでも良く、光電的な仕事関数が小さなもの程好まし
い。効果や経済性の面から、Ba,Sr,Ca,Y,G
d,La,Ce,Nd,Th,Pr,Be,Zr,F
e,Ni,Zn,Cu,Ag,Pt,Cd,Pb,A
l,C,Mg,Au,In,Bi,Nb,Si,Ta,
Ti,U,B,Eu,Sn,P,Wのいずれか又はこれ
らの化合物又は合金が好ましく、これらは単独で又は二
種以上を複合して用いられる。複合材としては、アマル
ガムの如く物理的な複合材も用いうる。
【0014】化合物としては酸化物、ほう化物、炭化物
があり、酸化物にはBaO,SrO,CaO,Y
2 5 ,Gd2 3 ,Nd2 3 ,ThO2 ,Zr
2 ,Fe2 3 ,ZnO,CuO,Ag2 O,La2
3 ,PtO,PbO,Al2 3 ,MgO,In2
3 ,BiO,NbO,BeOなどがあり、またほう化物
にはYB6 ,CdB6 ,LaB5 ,NdB6 ,Ce
6 ,EuB6 ,PrB6 ,ZrB2などがあり、さら
に炭化物としてはUC,ZrC,TaC,TiC,Nb
C,WCなどがあり窒化物としてTiNがある。また、
合金としては黄銅、青銅、リン青銅、AgとMgとの合
金(Mgが2〜20wt%)、CuとBeとの合金(B
eが1〜10wt%)及びBaとAlとの合金を用いる
ことができ、上記AgとMgとの合金、CuとBeとの
合金及びBaとAlとの合金が好ましい。
【0015】これらの物質は、バルク状(固体状、板
状)で、また適宜の母材(支持体)へ付加して使用でき
る(特開平3−108698号公報)。例えば、紫外線
透過性物質の表面又は該表面近傍に付加する(特公平7
−93098号公報)。付加の方法は、紫外線照射によ
り光電子が放出されれば何れでも良い。例えば、ガラス
板上へコーティングして使用する方法、他の例として板
状物質表面近傍へ埋込んで使用する方法や板状物質上に
付加し更にその上に別の材料をコーティングして使用す
る方法、紫外線透過性物質と光電子を放出する物質を混
合して用いる方法等がある。又、付加は、薄膜状に付加
する方法、網状、線状、粒状、島状、帯状に付加する方
法等適宜用いることが出来る。光電子放出性物質の付加
の方法は、適宜の材料の表面に周知の方法でコーティン
グ、あるいは付着させて作ることができる。例えば、イ
オンプレーティング法、スパッタリング法、蒸着法、C
VD法、メッキによる方法、塗布による方法、スタンプ
印刷による方法、スクリーン印刷による方法を適宜用い
ることができる。
【0016】薄膜の厚さは、紫外線照射により光電子が
放出される厚さであれば良く、5Å〜5,000Å、通
常20Å〜500Åが一般的である。母材の使用形状
は、板状、プリーツ状、円筒状、棒状、線状、網状等、
があり表面の形状を適宜凹凸状とし使用することが出来
る。又、凸部の先端を先鋭状あるいは球面状とすること
も出来る(特公平6−74908号公報)。母材への薄
膜の付加は、本発明者がすでに提案したように、1種類
又は2種類以上の材料を1層又は多層重ねて用いること
ができる。すなわち、薄膜を適宜複数(複合)で使用
し、2重構造あるいはそれ以上の多重構造とすることが
できる。これらの最適な形状や紫外線照射により光電子
を放出する物質の種類や付加法、薄膜厚は、装置、種
類、規模、形状、光電子放出性物質の種類、母材の種
類、光触媒の種類後述電場の強さ、かけ方、効果、経済
性等で適宜予備試験を行い決めることが出来る。
【0017】光電子を放出する物質を付加する母材は、
前記した紫外線透過性物質(例、ガラス)、セラミッ
ク、粘土、周知の金属材、後記の光触媒例えばTi
、ZnOがある。また、Ti、Znなどの金属は酸
化することにより、光触媒とすることができるので、該
材料も好適に使用できる。これらの母材は、用途、装置
の形状や規模、構造、要求性能などにより、適宜予備試
験を行い、選択して使用できる。また、光電子放出材へ
の紫外線の照射は電場において行うと、光電子放出材か
らの光電子発生が効果的に起こる。電場の形成方法とし
ては、荷電部の形状、構造、適用分野或いは期待する効
果(精度)等によって適宜選択することが出来る。電場
の強さは、光電子放出物質の種類等で適宜決めること
が出来、このことについては本発明者の別の発明があ
る。電場の強さは、一般に0.1V/cm〜2kV/c
mである。電極材料とその構造は通常の荷電装置におい
て使用されているもので良く、例えば電極材料としてタ
ングステン線あるいは棒が用いられる。このような電場
の形成は、後記の光触媒作用も加速されるので好まし
い。
【0018】次に、紫外線照射により光触媒作用を発揮
する物質について説明する。光触媒は、紫外線照射によ
り光電子を放出する物質と同一面上に配備でき、光照射
により有機物を分解できるものであればいずれでもよ
い。通常、半導体材料が効果的であり、容易に入手出
来、加工性も良いことから好ましい。効果や経済性の面
から、Se,Ge,Si,Ti,Zn,Cu,Al,S
n,Ga,In,P,As,Sb,C,Cd,S,T
e,Ni,Fe,Co,Ag,Mo,Sr,W,Cr,
Ba,Pbのいずれか、又はこれらの化合物、又は合
金、又は酸化物が好ましく、これらは単独で、また2種
類以上を複合して用いる。例えば、元素としてはSi,
Ge,Se、化合物としてはAlP,AlAs,Ga
P,AlSb,GaAs,InP,GaSb,InA
s,InSb,CdS,CdSe,ZnS,MoS2
WTe2 ,Cr2 Te3 ,MoTe,Cu2 S,W
2 、酸化物としてはTiO2 ,Bi2 3 ,CuO,
Cu2 O,ZnO,MoO3 ,InO3 ,Ag2 O,P
bO,SrTiO3 ,BaTiO3 ,Co34 ,Fe
2 3 ,NiOなどがある。
【0019】光触媒の付加は、蒸着法、スパッタリング
法、焼結法、ゾル−ゲル法、塗布による方法、焼付け塗
装による方法など、周知の付加方法を適宜用いることが
できる。また、光触媒作用の向上のために、上記光触媒
にPt,Ag,Pd,RuO2,Co3 4 の様な物質
を加えて使用することも出来る。該物質の添加は、光触
媒による有機物の分解作用が加速されるので好ましい。
これらは、一種類又は複数組合せて用いることができ
る。通常、添加量は、光触媒に対して、0.01〜10
重量%であり、適宜添加物質の種類や要求性能などによ
り、予備試験行い適正濃度を選択することができる。添
加の方法は、含浸法、光還元法、スパッタ蒸着法、混練
法など周知手段を適宜用いることができる。
【0020】次に、紫外線の照射について述べれば、紫
外線の光源は、前記光電子放出性物質と光触媒作用を発
揮し得る物質からなる空間清浄化材が紫外線照射により
光電子と、光触媒作用を発揮するものであれば何れでも
良い。通常、水銀灯、水素放電管、キセノン放電管、ラ
イマン放電管などを適宜使用出来る。光源の例として
は、殺菌ランプ、ブラックライト、蛍光ケミカルラン
プ、UV−B紫外線ランプ、キセノンランプがある。上
記光電子放出性物質と光触媒の同一面上への付加は、夫
々の材料を上記の適宜の付加手段により、薄膜状、線
状、網状、帯状、くし状、粒子状、島状の適宜の形状を
組合せることができる。このための付加の方法は、適用
装置の形状、規模、構造、紫外線の照射方法、要求性能
などにより適宜に選択することができる。本発明の空間
清浄化材の設置方法は、適用装置の壁面や流路中などの
適宜の位置に、適用装置、装置形状、規模、母材の種
類、要求性能などにより適宜選択することが出来る。
【0021】本発明の特徴は、光電子放出性物質へ付着
し、性能劣化をもたらすガス状汚染物質、特に有機性ガ
スを、光電子放出性物質と一体化して付加した光触媒に
より分解するものである。ガス状汚染物質の分解の反応
メカニズムの詳細は不明だが次のように考えられる。光
電子放出性物質の表面に付着したガス状汚染物質は、該
表面に吸着後、拡散して光電子放出性物質と同一面上に
配備して付加した光触媒の有する光触媒作用を受け分解
処理される。このように、本発明はセルフクリーニング
機能を有する光電子放出材で、本発明では、空間清浄化
材と呼んでいる。すなわち、この機能により、付着性の
有機性ガスを分離し、光電子放出性物質のクリーニング
作用(表面の清浄化)に加え、気体の清浄化をも行うも
のである。例えば、ウエハやガラスなどの基板に付着
し、歩留りを低下させる有機性ガスは、気体中の多成分
の有機性ガスの内の一部の該基板に付着しやすい構造を
有する有機性ガスのみである。光触媒は吸着作用を有す
るので、この基板に付着しやすい構造を有する有機性ガ
スが光触媒の表面に吸着し、光触媒作用により分解され
る。
【0022】この作用について、次に詳しく説明する。
有機性ガスによる汚染は、前記した接触角で表現され
る。接触角を増加させる有機性ガスは、基板(ウエハ、
ガラス材など)の種類や基板上の薄膜の種類、性状によ
って異なるが、本発明者らの研究によると次のように考
えられる。すなわち、通常クリーンルームにおける基板
表面の接触角を増加させる有機性ガス(H.C)で共通
して言えることは、高分子量のH.Cが主であり、その
構造として−CO、−COO結合(親水性を有する)を
持つことである。このH.Cは親水部(−CO、−CO
O結合部)を有する疎水性物質(H.Cの基本構造の−
C−C−の部分)と考えることができる。具体例で説明
すると、通常のクリーンルームにおけるガラス基板など
の基板表面の接触角を増加させる有機性ガスは、C16
20の高分子量H.C、例えばフタル酸エステル、高級
脂肪酸フェノール誘導体であり、これらの成分に共通す
ることは化学的構造として、−CO、−COO結合(親
水性を有する)を持つことである。
【0023】これらの汚染有機性ガスの起因は、高分子
製品の可塑剤、離型剤、酸化防止剤などであり、高分子
製品の存在する個所が発生源である(「空気清浄」第3
3巻、第1号、p16〜21、1995)。光触媒によ
るこれらの有機性ガスの処理メカニズムの詳細は不明で
あるが、次のように推定できる。すなわち、これらの有
機性ガスは−CO、−COO結合の部分がウエハやガラ
ス表面のOH基と水素結合し、その上部は疎水面とな
り、結果としてウエハやガラス表面は疎水性になり、接
触角が大きくなり、その表面に成膜すると膜の付着力は
弱い。有機性ガスが存在する雰囲気に光触媒を設置する
と、その活性部である−CO、−COO結合部が、光触
媒に吸着し、次いで光触媒作用により分解作用を受けて
別の安定な形態に変換される。その結果として、有機性
ガスは安定な形態となり、ウエハやガラス基板上には付
着しないか、又は付着しても疎水性を示さない。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。 実施例1 半導体工場のクリーンルームにおける空気清浄を、図1
に示した本発明の空間清浄化材9を用いた空気清浄部B
の基本構成図を用いて説明する。図1において、10は
クラス1,000のクリーンルームであり、ガス状汚染
物質としてのH.C11、及び粒子状物質(微粒子)1
2を含むクリーンルーム空気6は、紫外線ランプ1、紫
外線照射用窓ガラス2、板状Cu−Znに薄膜状Au
(紫外線照射により光電子を放出する物質)及びTiO
2 (紫外線照射により光触媒作用を発揮する物質)を付
加した空間清浄化材9、電場設定のための電極4、荷電
微粒子捕集材5により構成される空気清浄装置Bに導入
されることにより処理され、H.C及び微粒子が除去さ
れた清浄空気8となり、ウエハの製造装置(ウエハの加
工、成膜プロセス)13へ供給される。
【0025】電極4は、空間清浄化材9からの光電子の
放出を電場で行うために設置している。すなわち、空間
清浄化材9と電極4の間に電場を形成している。微粒子
の荷電は、電場において空間清浄化材9に紫外線照射す
ることにより効率良く発生する光電子7により実施され
る。ここでの電場の電圧は、50V/cmである。次
に、本例を詳細に説明する。クリーンルーム10に入る
前の外気14は、先ず粗フィルター15と空気調和器1
6で処理される。次いで、空気はクリーンルーム10に
入る際にHEPAフィルター17によって除塵される
が、H.Cが共存するクラス1,000の濃度の空気1
8となる。すなわち、外気14に共存する自動車起因の
H.Cや、プラスチック類など高分子樹脂起因のH.C
は、粗フィルター15、空気調和器16、及びHEPA
フィルター17では除去されないため、クリーンルーム
10内に導入されてしまう。更に、クリーンルーム10
内では、クリーンルーム10の構成材やウエハの製造装
置13の高分子樹脂類からH.C、例えばフタル酸エス
テル、高級脂肪酸11が発生する。また、クリーンルー
ム10では、省エネ・省コストのため、クリーンルーム
10内の空気が循環系19により循環使用されている。
【0026】このため、外気14中のH.C濃度1.1
ppm(非メタンH.C)に対し、クリーンルーム10
中のH.C濃度1.2〜1.5ppm(非メタンH.
C)となっている。前記クリーンルーム10内の構成材
やウエハの製造装置13から発生したH.Cは、外気1
4中H.Cに比較してウエハ汚染への関与が大きい。本
例の空間清浄化材9は、図2にその構成図を示してい
る。図2の空間清浄化材9において、aは断面図、bは
平面図である。すなわち、空間清浄化材9は、母材31
としてのSUS上に光触媒材としてTiO2 32を付加
し、その上に光電子放出性物質としてAu33をくし状
に蒸着により付加している。空気清浄部Bに導入された
空気6中の微粒子は、紫外線ランプ1からの照射を受け
た本発明の空間清浄化材9におけるAuから放出される
光電子7により、荷電微粒子となり、後方の荷電微粒子
捕集材5により捕集・除去される。一方、空気6中のガ
ス状汚染物質としてのH.Cは紫外線ランプ1からの照
射を受けた本発明の空間清浄化材9におけるTiO2
より分解される。
【0027】すなわち、該H.Cの内、ウエハなどの製
品、半製品、原料に付着し歩留まりの低下をもたらす原
因となる種類のH.Cは付着性が高いので、TiO2
も容易に付着し、TiO2 の光触媒作用を受けて分解さ
れる。付着性の高いH.Cは、この様にして分離される
ので、空気は清浄化されると同時に、光電子放出性物質
としてのAu及びその周辺は、不純物が付着しないで、
絶えずクリーニングされている。このようにして、空気
6中のガス状汚染物質と微粒子が捕集・除去され、清浄
化空気8が得られる。ここでの空間清浄化材9の製造法
を次に示す。母材としてのSUS表面に、先ず光触媒材
としてのTiO2 をゾル−ゲル法により付加し、次いで
350℃で加熱処理を行い、次にその表面をくし型のス
クリーンでおおい、光電子放出性物質としてのAuを蒸
着法によりくし状に付加した。
【0028】実施例2 実施例1の図1の空気清浄部Bにおいて、空気清浄化材
9の別のタイプのものを図3に示す。図3中aは断面
図、bは平面図であり、母材31としてのSUS上に、
光電子放出性物質としてのAu33を薄膜状に付加し、
その上に光触媒材としてTiO2 をくし状に付加してい
る。ここでの空間清浄化材9の製造法を次に示す。母材
としてのSUS表面に、先ずAuを蒸着法により付加
し、次にくし型のスクリーンを用いてその形に、TiO
2 の微粒子粉末のスラリーの塗布を行い、100℃で乾
燥した。
【0029】実施例3 実施例1の半導体工場のクラス1,000のクリーンル
ームに設置された小型のウエハ保管庫(ウエハ収納スト
ッカA)における空気清浄を図4に示した本発明の空間
清浄化材9を用いたウエハ保管庫の基本構成図を用いて
説明する。ウエハ保管庫Aの空気清浄は、ウエハ保管庫
Aの片側に設置された紫外線ランプ1、紫外線の反射面
20、空間清浄化材9、電場設置のための電極4及び荷
電微粒子の捕集材21にて実施される。すなわち、ウエ
ハ保管庫A中の微粒子(微粒子状物質)12は、紫外線
ランプ1からの紫外線が照射された空間清浄化材9から
放出される光電子7により荷電され、荷電微粒子とな
り、該荷電微粒子は荷電微粒子の捕集材21に捕集され
る(空気清浄化部B)、ウエハの存在する被処理空間部
(清浄化空間部、C)は高清浄化される。ここで、遮光
材22は被処理空間部と空気清浄化部の間に設置され、
本例では電極(平板状)4に隣接されている。遮光材2
2は、紫外線ランプ1からの紫外線のウエハキャリア2
3及びウエハ24への照射を防ぐために設置されてい
る。
【0030】ここでの空間清浄化材9は、前記図3に示
すように、母材31としてのガラス板上に、光電子放出
性物質としてAu33を薄膜状に付加し、その上に、光
触媒材としてTiO2 32をくし状に付加したものであ
る。図3の断面図aにおける矢印は、紫外線の照射方向
を示している。ウエハ保管庫A中のH.C11は、空間
清浄化材9表面に吸着し、紫外線照射を受けたTiO2
により分解、無害化処理される。ウエハ保管庫Aでは、
ウエハ24の保管庫Aへの出し入れ(該保管庫の開閉)
毎にクリーンルーム10中の有害物質としての微粒子1
2(濃度:クラス1,000)や、ウエハ基板に付着す
ると接触角の増加をもたらす有機性ガス11(非メタン
H.C濃度:1.0〜1.5ppm)が侵入するが、上
記のごとくして、これらの有害物質(微粒子及び有機性
ガス)は捕集・除去され、保管庫Aの清浄化空間部C)
では接触角の増加をもたらさない(非メタンH.C濃度
として0.2ppm以下)クラス1よりも清浄な超清浄
空間が創出される。
【0031】25-1,25-2,25-3は、保管庫内の空
気の流れを示す。すなわち、有害物質処理部(B)に移
動した空気は、紫外線ランプの照射により加温されるた
め、上昇気流が生じ保管庫A内を矢印、25-1,2
-2,25-3の様に動く。この空気の自然循環による動
きにより、保管庫A内の微粒子12やウエハ基板に付着
すると接触角の増加をもたらす有機性ガス11は、空気
清浄化部(B)に順次効果的に移動する。このようにし
て、保管庫A内は、迅速かつ簡便に清浄化され、ウエハ
保管庫は超清浄空気となり、ウエハへの汚染防止が顕著
になる。
【0032】上記において、空間清浄化材への紫外線の
照射は、曲面状の反射面20を用い、紫外線ランプ1か
ら紫外線を板状の空間清浄化材9に効率よく照射してい
る。電極4は、空間清浄化材9からの光電子放出を電場
で行うために設置している。すなわち、空間清浄化材9
と電極4の間に電場を形成している。微粒子の荷電は、
電場において空間清浄化材9に紫外線照射することによ
り発生する光電子7により効率よく実施される。ここで
の電場の電圧は、50V/cmである。ここでの空間清
浄化材9の製造法を次に示す。母材としての石英ガラス
表面に、先ずAuを蒸着法により付加し、次にくし型の
スクリーンを用いてその形に、TiO2 の微粒子粉末の
スラリーの塗布を行い、100℃で乾燥した。
【0033】実施例4 実施例3の図4のウエハ保管庫Aにおいて、空間清浄化
材9を図2のタイプのものを用いた。図2中、母材31
としてのガラス板上に、光触媒材としてTiO2 32を
薄膜状に被覆し、その上に光電子放出性物質としてAu
33をくし状に被覆したものである。ここでの空間清浄
化材9の製造法を次に示す。母材としての石英ガラス表
面に、先ずTiO2 をゾル−ゲル法により付加し、次い
で350℃で加熱処理を行い、その表面をくし型のスク
リーンでおおい、Auを蒸着法によりくし状に付加し
た。
【0034】実施例5 実施例1の半導体工場のクラス1,000のクリーンル
ームに設置された中型のウエハ保管庫(ウエハ収納スト
ッカ)における空気清浄を図5に示した本発明の空間清
浄化材を用いたウエハ保管庫Aの基本構成図を用いて説
明する。ウエハ保管庫Aの空気清浄は、紫外線源として
の紫外線ランプを空間清浄化材及び電極で囲み一体化し
たユニット(微粒子とガスの同時除去装置、空気清浄化
部B)を、ウエハ保管庫A内に設置することにより実施
される。該ユニットは、図6に基本構成図を示したよう
に紫外線ランプ1、該ランプを囲む形状(円筒になった
網状)の電場設定用電極4、該電極を囲む形状の空間清
浄化材9及び荷電微粒子の捕集材21より構成される。
【0035】すなわち、ウエハ保管庫A中の微粒子(微
粒子状物質)12は、紫外線ランプ1からの紫外線が照
射された空間清浄化材9から放出される光電子7により
荷電され、荷電微粒子となり、該荷電微粒子は荷電微粒
子の捕集材21に捕集され(清浄化部B)、ウエハの存
在する被処理空間部(清浄化空間部、C)は高清浄化さ
れる。また、ウエハ保管庫A中のH.C11は、空間清
浄化材9表面に吸着し、紫外線照射を受けたTiO2
より分解、無害化処理される。ここでの空間清浄化材9
は、図7(a:断面図、b:平面図)に示すように、母
材31としてのSUS板(円筒状)に、光電子放出性物
質としてAu33を薄膜状に付加し、その上に、光触媒
材としてTiO2 32を粒状に付加したものである。図
7の断面図aの矢印は、紫外線の照射方向を示してい
る。
【0036】ウエハ保管庫Aでは、ウエハ24の保管庫
Aへの出し入れ(該保管庫の開閉)毎にクリーンルーム
10中の有害物質としての微粒子12(濃度:クラス
1,000)や、ウエハ基板に付着すると接触角の増加
をもたらす有機性ガス11(非メタンH.C濃度:1.
0〜1.5ppm)が侵入するが、上記のごとくして、
これらの有害物質(微粒子、有機性ガス)は捕集・除去
され、保管庫Aの清浄化空間部C)では接触角の増加を
もたらさない(非メタンH.C濃度として0.2ppm
以下)クラス1よりも清浄な超清浄空間が創出される。
25-1,25-2,25-3は、保管庫内の空気の流れを示
す。図8において、実施例1、3と同一符号は同じ意味
を示す。ここでの空間清浄化材9の製造法を次に示す。
母材としての半円筒状のSUS材料に、先ずその内面に
Auを蒸着法により付加し、次いでTiO2 懸だく液を
スプレイによってその表面に粒状に付加し、100℃で
乾燥した。空間清浄化材9は、この半円筒状の材料を組
合せたものである。
【0037】実施例6 実施例5の図5のウエハ保管庫Aにおいて、空間清浄化
材9の別のタイプのものを図8に示す。図8中aは断面
図、bは平面図であり、母材31としてのTi板上に光
触媒材として、TiO2 32を薄膜状に付加し、その上
に光電子放出性物質としてAu33を島状に付加したも
のである。ここでの空間清浄化材9の製造法を次に示
す。母材としての半円筒状Ti材料を、1,000℃の
強制加熱により、薄膜状TiO2 の形成を行い、次いで
Auを蒸着法により島状に付加した。空間清浄化材9
は、この半円筒状の材料を組合せたもの。
【0038】実施例7 図9に示した構成の保管庫に半導体工場の下記試料空気
を入れ、本発明の空間清浄化材に紫外線照射を行い、保
管庫に収納したウエハ上の接触角及び該ウエハにCr膜
を成膜し、該膜のウエハとのなじみ(付着力)を測定し
た。また、保管庫内のウエハに吸着した炭化水素の同
定、及び保管庫中の非メタン炭化水素の濃度並びに保管
庫内の微粒子濃度を調べた。また、比較として、光触媒
材がない場合光電子放出材(Auのみ付加の場合、ブラ
ンク)も同様に調べた。 保管庫の大きさ ; 80リットル 光 源 ; 殺菌灯(主波長:254nm) 空間清浄化材 ; Ti板上にTiO2 を薄膜状に付加し、その上に Auを粒状に付加したもの。 空間清浄化材の製造; Ti板を1,000℃の強制加熱を行い、該表面に 薄膜状TiO2 の形成を行い、次いでAuを蒸着法に より粒状に付加した。
【0039】 接触角の測定 ; 水滴接触角法〔(株)協和界面科学製、CA−DT 型〕 保管庫内の微粒子濃度の測定; パーティクルカウンター〔光散乱、リオン (株)製、KC−21〕 ウエハ上の成膜 ; Cr300nm厚さ、スパッタリング法 成膜したCrの付着力; スクラッチ試験(RHESCA製CSR02型) 保管庫中非メタン炭化水素の測定; ガスクロマトグラフ(GC) ウエハ上に吸着した炭化水素の同定; GC/MS法 試料ガス ; 微粒子濃度:クラス100(1ft3 中の0.1 μm以上の微粒子の個数) 非メタン炭化水素濃度:1.1ppm 保管庫内のウエハ ; 5インチウエハを1cm×8cmに切断し、下記前 処理後、保管庫に設置。 ウエハの前処理 ; 洗剤とアルコールで洗浄後、O3 発生下で紫外線照 射(UV/O3 洗浄)。 なお、図9の符号で図4と同一符号は同じ意味を有す
る。
【0040】結果 図10は、経過時間による接触角(角度)と付着力(m
N)の変化を示すグラフである。図10において、接触
角は光触媒が有る場合−〇−、無い場合−●−で示し、
また付着力は光触媒が有る場合−△−、無い場合−▲−
で示す。このように、光触媒を付加した場合は、時間の
経過によっても変化がなかった。また、光触媒なしのと
き、50時間後にウエハを取り出し、加熱によりウエハ
上に付着した炭化水素を脱離させ、GC/MS法で測定
したところ、フタル酸エステルを検出した。光触媒を設
置した場合は検出しなかった。また、保管庫内の非メタ
ン炭化水素の濃度は、光触媒付加有りの場合、2時間、
35時間、100時間、200時間の経過後、いずれも
0.1ppm以下であった。光触媒無しの場合、2時
間、35時間、100時間、200時間の経過後、いず
れも0.9ppmであった。
【0041】図11は、経過時間による保管庫内のクリ
ーン度(クラス:1ft3 中の0.1μm以上の微粒子
の総個数)である。図11において、クリーン度は光触
媒が有る場合−〇−、無い場合−●−で示す。図中矢印
は検出限界(クラス1)以下を示す。このように、光触
媒を付加した場合は、長時間性能が安定していた。30
0時間後、420時間及び500時間後の空間清浄化材
と光電子放出材をESCA分析したところ、光触媒付加
無しのものは表面での炭素量の増加が観測され、空気中
の有機物の吸着が認められた。これに対して本発明の光
触媒付加有りのものは有機物は検出限界以下であった。
光触媒は、前述有機性ガスに共存する他のガス状汚染物
質の内、ウエハやガラス基板に吸着性の高いガスも同時
に処理される。例えば、クリーンルームにおいて酸やア
ルカリ性物質が高濃度で存在する場合、例えば酸やアル
カリ性物質を用いる洗浄工程における発生NOxやNH
3 がクリーンルームに流出している場合、該ガス状の汚
染物質の濃度によっては、上述の接触角増加に関与す
る。この場合は、該ガス状の汚染物も光触媒による作用
により同時に処理される。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、空間清浄化材の構成を
少なくとも紫外線照射により光電子を放出する物質と光
触媒作用を発揮する物質からなり、同一面上に配備した
構成としたことにより、 (1)光電子放出性物質に付着し、性能低下をもたらす
有機物は、共存する光触媒の作用により、分解処理され
る。それによりセルフクリーニングができる空間清浄化
材となった。 (2)光電子放出の効果が向上し、かつ安定したので、
微粒子の荷電が効果的(荷電が高性能かつ、長時間安
定)になり、実用性が向上した空間清浄化方法となっ
た。 (3)光触媒により、通常の空気中や気体中等の空間中
に存在する極低濃度レベルのH.Cが分子量の小さい
H.C及び/又は二酸化炭素、水に変換された。 (a)これにより、基材又は基板表面の接触角の増加を
防止する気体あるいは雰囲気が得られた。 (b)(a)で得られた気体(あるいは雰囲気)を半導
体ウエハや液晶ガラスに暴露しておくと、該基材や基板
表面の汚染が防止される。
【0043】(4)光電子による粒子状物質の処理(除
去)に、光触媒によるガス状汚染物質の処理が加わるの
で、ガスと粒子を同時除去(制御)した超清浄空間を創
出できた。ガスと粒子の同時除去により、適用分野が広
がり、実用性が向上した。 (5)上記より、本発明では、ガス状有害成分を、効果
的に処理できるので (a)今後のクリーン化技術の方向として期待される局
所空間(ミニエンバイロメント)の清浄化に好適に使用
できた。 (b)(a)より、本発明により清浄化された局所空間
では、製品が低コストで製造できるので、適用分野が広
がり、実用性が向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空間清浄化材を用いた半導体工場のク
リーンルームの概略構成図。
【図2】本発明の空間清浄化材を示す構成図。
【図3】本発明の空間清浄化材を示す他の構成図。
【図4】本発明の空間清浄化材を用いたウエハ保管庫を
設定したクリーンルームの概略構成図。
【図5】他のウエハ保管庫を設定したクリーンルームの
概略構成図。
【図6】空間清浄化材を用いたユニットを示す断面図。
【図7】本発明の空間清浄化材を示すもう一つの構成
図。
【図8】本発明の空間清浄化材を示すもう一つの構成
図。
【図9】実施例7の実験に用いた清浄化装置の概略構成
図。
【図10】経過時間による接触角(角度)と付着力(m
N)の変化を示すグラフ。
【図11】経過時間による保管庫内のクリーン度(クラ
ス)の変化を示すグラフ。
【図12】従来の空気清浄装置を示す概略構成図。
【符号の説明】
1:紫外線ランプ、2:紫外線照射用窓ガラス、3:光
電子放出材、4:電場設定用電極、5:荷電微粒子捕集
材、6:クリーンルーム内空気、7:光電子、8:清浄
空気、9:空間清浄化材、10:クリーンルーム、1
1:ガス状汚染物質(H.C)、12:粒子状物質、1
3:ウエハ製造装置、14:外気、15:粗フィルタ、
16:空気調和器、17:HEPAフィルター、18:
クラス1000の空気、19:空気循環系、20:反射
面、21:荷電微粒子捕集材、22:遮光材、23:ウ
エハキャリア、24:ウエハ、25:空気の流れ、3
1:母材、32:光触媒材、33:光電子放出物質、
A:ウエハ保管庫、B:空気清浄化部、C:清浄化空間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/86 B01J 21/00 - 38/74 B03C 3/38

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母材上に、少なくとも紫外線照射により
    光電子を放出する物質と、紫外線照射により光触媒作用
    を発揮する物質とを、前記光電子放出物質を薄膜状に付
    加し、その上に光触媒物質を帯状、くし状、粒子状又は
    島状に付加するか、又は、前記光触媒物質を薄膜状に付
    加し、その上に光電子放出物質を帯状、くし状、粒子状
    又は島状に付加して、同一面上に配備させて構成したこ
    とを特徴とする空間清浄化材。
  2. 【請求項2】 前記母材が、ガラス、金属又は合金から
    なる請求項1記載の空間清浄化材。
  3. 【請求項3】 前記紫外線照射により光電子を放出する
    物質が、Auであり、光触媒作用を発揮する物質が、T
    iO2であることを特徴とする請求項1又は2記載の空
    間清浄化材。
  4. 【請求項4】 有害ガス及び微粒子を含む空間を清浄化
    する方法において、請求項1、2又は3記載の空間清浄
    化材に、電場下で紫外線を照射し、空間中の有害ガス及
    び微粒子を分解及び荷電して除去することを特徴とする
    空間清浄化方法。
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