JP3551545B2 - スタータ用一方向クラッチ - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、スタータに用いられる一方向クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば実開昭59−26107号公報に開示されたスタータ用一方向クラッチがある。この一方向クラッチは、ローラを収容する楔状空間の角度を適当な値に設定し、更に駆動体から突出する係止部を配設して、楔状空間に噛込むローラを当接させて噛込量を一定値とすることにより、伝達トルクを一定にして衝撃トルクを吸収している。しかし、この一方向クラッチは、噛込量を一定にするために係止部を所定の位置に設定する必要があるが、クラッチアウタに形成された楔状空間の内周面とクラッチインナの外周面とに接するローラの当接面が、楔状空間のわずかな傾斜により大幅に左右に振れてしまうため、係止部を正確に位置設定することができない。その結果、伝達トルクの最大値を正確に決定できず、衝撃トルクの吸収が不十分となってしまう。
【0003】
このため本出願人は、クラッチアウタの内周面とクラッチインナの外周面の何方か一方にローラを収容する楔状空間を形成し、他方にローラを係止する係止凹部を形成した一方向クラッチを提案した(提出日:平成6年9月7日)。この一方向クラッチでは、過大な衝撃トルク(所定のスタータ駆動トルク以上)が入力した時にローラが係止凹部から離脱できるように、係止凹部の深さが設定されている。従って、ローラが係止凹部から離脱してクラッチアウタとクラッチインナとが相対回転することにより、所定値以上のトルクは伝達されない構成となっている。これにより、ローラが係止凹部から離脱する時(クラッチアウタとクラッチインナとが相対回転を開始する時)の衝撃トルクの所定値を係止凹部の深さで正確に決定することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、先願に記載した一方向クラッチでは、係止凹部の深さが浅い場合にはローラに不安定な条件となり、最悪の場合、係止凹部からローラが飛び出してトルク伝達ができなくなる可能性を有していた。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、確実なトルク伝達を行なうことのできるスタータ用一方向クラッチを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成を採用した。
請求項1では、相対回転可能に設けられて、径方向に所定の間隔を隔てて対面する外筒部と内筒部を有し、前記外筒部の内周面には、断面円形の転動体を収容する楔状のカム室が形成されて、前記内筒部の外周面には、トルク伝達時に前記転動体を係止する係止凹部と、前記外筒部から前記転動体への押圧力方向の延長線上に、前記係止凹部の壁面を形成する凸部とが設けられたスタータ用一方向クラッチであり、
前記係止凹部の深さをh、前記転動体の半径をR、前記係止凹部に係止された前記転動体を介して前記外筒部と前記内筒部との間でトルク伝達が行なわれる時に、前記転動体の中心と前記内筒部の中心とを結ぶ直線をA、および前記転動体の中心と前記内筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして前記直線Aと前記直線Bとの成す角度をθとすると、
h≧R(1−cosθ)…………(1)
上記(1)の条件を満足し、
前記凸部は、前記外筒部から前記転動体を介して過大な衝撃が加わった時に、自身が撓むことにより、前記転動体が前記凸部を乗り越えて前記係止凹部から飛び出ることを許容することを特徴とする。
【0006】
請求項2では、相対回転可能に設けられて、径方向に所定の間隔を隔てて対面する内筒部と外筒部を有し、前記内筒部の外周面には、断面円形の転動体を収容する楔状のカム室が形成されて、前記外筒部の内周面には、トルク伝達時に前記転動体を係止する係止凹部と、前記内筒部から前記転動体への押圧力方向の延長線上に、前記係止凹部の壁面を形成する凸部とが設けられたスタータ用一方向クラッチであり、
前記係止凹部の深さをh、前記転動体の半径をR、前記係止凹部に係止された前記転動体を介して前記外筒部と前記内筒部との間でトルク伝達が行なわれる時に、前記転動体の中心と前記外筒部の中心とを結ぶ直線をA、および前記転動体の中心と前記外筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして前記直線Aと前記直線Bとの成す角度をθとすると、
h≧R(1−cosθ)…………(2)
上記(2)の条件を満足し、
前記凸部は、前記内筒部から前記転動体を介して過大な衝撃が加わった時に、自身が撓むことにより、前記転動体が前記凸部を乗り越えて前記係止凹部から飛び出ることを許容することを特徴とする。
【0007】
【作用および発明の効果】
(請求項1)
転動体を介して外筒部と内筒部との間でトルク伝達が行われる時、転動体は係止凹部に係止された状態でカム室の内周面に当接している。ここで、仮に外筒部から内筒部へトルク伝達される場合を考えると、転動体には外筒部から押圧力が加わり、その押圧力を内筒部の係止凹部で受けることになる。この時、係止凹部は、外筒部から転動体に加わる押圧力に対して転動体にモーメントが加わらない様に転動体を係止する必要がある。
【0008】
そこで、係止凹部の深さhを内筒部側のトルク作用点より高くなるように設定すれば良い。即ち、転動体の中心と内筒部の中心とを結ぶ直線をA、および転動体の中心と内筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして、直線Aと直線Bとの成す角度をθとした場合に、転動体の半径RからRcosθを差し引いた値以上の深さhを確保すれば良い。これにより、外筒部から転動体に加わる押圧力方向に係止凹部の壁面、つまり凸部が存在することになるため、転動体は係止凹部に係止されてモーメントが加わらなくなるため、外筒部と内筒部との間で確実にトルク伝達を行うことができる。
また、外筒部から転動体を介して凸部に過大な衝撃が加わった時は、凸部が撓むことにより、転動体が凸部を乗り越えて係止凹部から飛び出ることができる。
【0009】
なお、転動体を介して内筒部から外筒部へトルク伝達される場合は、上記のように係止凹部の深さhを設定することにより、係止凹部に転動体を係止させた状態で外筒部側へ転動体を押圧することができる。このため、外筒部から内筒部へトルク伝達される場合と同様に、転動体にモーメントが加わることはなく、確実にトルク伝達を行うことができる。
【0010】
(請求項2)
この請求項2では、内筒部の外周面にカム室が形成されて、外筒部の内周面に係止凹部が形成されている。つまり、カム室と係止凹部との位置関係が請求項1の場合と反対である。但し、トルク伝達時に転動体を係止凹部に係止させて転動体にモーメントが加わらない様にするための係止凹部の深さhは、請求項1の場合と同様に決定することができる。具体的には、転動体の中心と外筒部の中心とを結ぶ直線をA、および転動体の中心と外筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして、直線Aと直線Bとの成す角度をθとした場合に、転動体の半径RからRcosθを差し引いた値以上の深さhを確保すれば良い。これにより、転動体が係止凹部に係止された状態で確実にトルク伝達を行うことができる。
また、内筒部から転動体を介して凸部に過大な衝撃が加わった時は、凸部が撓むことにより、転動体が凸部を乗り越えて係止凹部から飛び出ることができる。
【0011】
【実施例】
次に、本発明のスタータの実施例を図面に基づいて説明する。
図1はトルク伝達時のクラッチ部の拡大断面図、図2はスタータ全体の半断面図である。
本実施例のスタータ1は、通電を受けてアーマチュアシャフト2に回転力を発生するスタータモータ3、このスタータモータ3の前方側(図2の左方側)でアーマチュアシャフト2と同一軸上に配されたドライブシャフト4、スタータモータ3の回転力をドライブシャフト4に伝達する回転力伝達手段(後述する)、ドライブシャフト4の外周に軸受5を介して嵌合されたピニオン6、スタータモータ3への通電およびピニオン6の押出力を発生するマグネットスイッチ7等より構成されている。
【0012】
(スタータモータ3の説明)
スタータモータ3は、アーマチュアシャフト2を有するアーマチュア8、このアーマチュア8の外周に配置される固定磁極9、および固定磁極9を内周面に固定する円筒状のヨーク10等より構成されて、図示しないスタータスイッチがON操作されてマグネットスイッチ7に内蔵された接点(図示しない)が閉じることにより、アーマチュア8が通電されて回転する。
【0013】
(ドライブシャフト4の説明)
ドライブシャフト4は、その先端部が軸受11を介してフロントハウジング12の先端部に回転自在に支持されて、後端部が軸受13を介してセンタケース14の小径円筒部14a(後述のクラッチインナ)に回転自在に支持されている。このドライブシャフト4は、その後端が径方向の外側へフランジ状に突設して、遊星歯車減速機構(後述する)のプラネットキャリア4a(本発明のフランジ部)として一体に設けられている。また、ドライブシャフト4の後端中央部には、軸方向に沿った中空筒状の凹部が形成されており、この凹部内に軸受15を配置してアーマチュアシャフト2の先端を回転自在に支持している。なお、センタケース14は、フロントハウジング12とスタータモータ3のヨーク10との間に挟持されて、回転力伝達手段の外周を覆っている。
【0014】
(ピニオン6の説明)
ピニオン6は、ドライブシャフト4の外周にヘリカルスプライン嵌合するスプラインチューブ16と一体に設けられている。このピニオン6は、スプラインチューブ16がレバー17を介してドライブシャフト4上をヘリカルスプラインに沿って前方へ押し出されることにより、エンジンのリングギヤGと噛み合うことができる。レバー17は、一端がスプラインチューブ16の外周に係合されて、他端がマグネットスイッチ7の先端側に突出するロッド18に係合され、中間部でフロントハウジング12に揺動自在に支持されている。
【0015】
(マグネットスイッチ7の説明)
マグネットスイッチ7は、前述のスタータスイッチがON操作されて内蔵するコイル(図示しない)が通電されると、コイルに発生する磁力によってスイッチ内部に収容されたプランジャ(図示しない)を吸引する。その結果、スタータモータ3の接点を閉じるとともに、ロッド18を通じてレバー17を揺動操作してピニオン6押出力を発生する。
【0016】
(回転力伝達手段の説明)
回転力伝達手段は、遊星歯車減速機構と一方向クラッチとから構成される。
遊星歯車減速機構は、スタータモータ3の回転速度を減速して、スタータモータ3の出力トルクを増大する減速装置であり、アーマチュアシャフト2の外周に形成されたサンギヤ19、このサンギヤ19に噛み合う3個の遊星ギヤ20、各遊星ギヤ20と噛み合うインターナルギヤ21、および前述のプラネットキャリア4aより構成されている。
【0017】
サンギヤ19は、アーマチュアシャフト2と一体に回転することで、アーマチュアシャフト2の回転を3個の遊星ギヤ20に伝達する。
3個の遊星ギヤ20は、それぞれプラネットキャリア4aに固定されたピン22に軸受23を介して回転自在に支持されており、サンギヤ19およびインターナルギヤ21と噛み合いながらサンギヤ19の外周を公転することで、その公転力がプラネットキャリア4aに伝達されてドライブシャフト4に回転力を伝達する。
インターナルギヤ21は、円筒形状に設けられて、その外周面がセンタケース14の円筒壁14b内周面に摺接して回転可能に組み込まれている。
【0018】
一方向クラッチは、遊星歯車減速機構のインターナルギヤ21を一方向(エンジンの回転を受けて回転する方向)のみに回転可能に支持するもので、クラッチアウタ24(本発明の外筒部)、クラッチインナ25(本発明の内筒部)、ローラ26(本発明の転動体)、およびスプリング27等より構成されている。
クラッチアウタ24は、インターナルギヤ21より先端側でインターナルギヤ21より小径の円筒形状に設けられて、インターナルギヤ21の先端で径方向の内側へ延びる環状壁部28を介してインターナルギヤ21と一体に設けられている。クラッチアウタ24の内周面には、図1に示すように、ローラ26およびスプリング27を収容する楔状のカム室24aが形成されている。このカム室24aは、アウタ内周面の周方向に等間隔で複数設けられている。
【0019】
クラッチインナ25は、センタケース14の小径円筒部14a(回転不能)によって構成されて、クラッチアウタ24の内周側で径方向にクラッチアウタ24と所定の間隔を保って配置されている。クラッチインナ25の外周面には、図1に示すように、トルク伝達時にローラ26を係止する係止凹部25aが形成されている。この係止凹部25aは、インナ外周面の周方向に等間隔で複数(例えば、カム室24aの整数倍)設けられている。
ローラ26は、円柱形に設けられて、スタータモータ3の回転力をドライブシャフト4へ伝達する時にクラッチアウタ24とクラッチインナ25とをロックして、クラッチアウタ24(即ち、インターナルギヤ21)の回転を規制する。
スプリング27は、図1に示すようにローラ26をカム室24aの狭い方へ押圧している。
【0020】
クラッチインナ25に形成された係止凹部25aは、トルク伝達時にローラ26を確実に係止する必要がある。つまり、係止凹部25aの深さが浅いと、係止凹部25aからローラ26が飛び出してトルク伝達できない場合が生じる。
そこで、本発明者は、係止凹部25aの深さと最大伝達トルクとの関係を実験により考察した。なお、実験に際して、クラッチアウタ24およびクラッチインナ25はそれぞれ樹脂製(例えばナイロン:商標名)、ローラ26は鉄製とした。また、図1に示すように、係止凹部25aの深さをh、ローラ26の半径をR、クラッチインナ25の中心O1 とローラ26の中心O2 とを結ぶ直線をAおよびローラ26の中心O2 とクラッチインナ25側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして直線Aと直線Bとの成す角度をθとする。
【0021】
ここで、R(1−cosθ)をh′として、h/h′を横軸にとり、最大伝達トルクを縦軸にとると、図3に示す様な特性が得られることを発見した。即ち、h/h′が1未満の場合は、係止凹部25aの深さが十分でない(浅い)ことから、図4(a)に示すように、ローラ26に矢印C方向のモーメントが加わるため、容易にローラ26がクラッチインナ25の凸部25bを乗り越えて係止凹部25aから飛び出してしまう。一方、h/h′が1以上の場合は、図4(b)に示すように、クラッチアウタ24からローラ26への押圧方向(ローラ26に矢印で示す方向)の延長線上に係止凹部25aの壁面が存在するため、ローラ26にモーメントが加わることはなく、ローラ26が容易に係止凹部25aから飛び出すことはない。
【0022】
但し、h/h′が1以上の場合でも、クラッチアウタ24からローラ26へ過大な押圧力(例えば、スタータ駆動トルク以上の衝撃トルク)が加わると、図4(b)に破線で示すように、クラッチインナ25の凸部25bが撓むことで、ローラ26が凸部25bを乗り越えて係止凹部25aから飛び出すことになる。従って、h/h′が1以上の時の最大伝達トルクは、ローラ26から押圧力を受ける凸部25bの剛性によって決定され、それまではローラ26の挙動が安定して(つまり係止凹部25aに係止されている)、確実にトルク伝達が行われる。
【0023】
次に、本実施例の作動を説明する。
スタータスイッチがON操作されると、マグネットスイッチ7によりスタータモータ3の接点が閉じてアーマチュア8が通電されることにより、アーマチュア8に回転力が発生する。これにより、アーマチュアシャフト2とともにサンギヤ19が回転して3個の遊星ギヤ20を回転駆動する。この時、各遊星ギヤ20と噛み合うインターナルギヤ21は、各遊星ギヤ20の回転力を受けて図5のD方向に回転しようとする。
【0024】
このインターナルギヤ21の動作により、クラッチアウタ24のカム室24aに収納されたローラ26がスプリング27に押圧され、カム室24aの狭い方へ移動してクラッチインナ25の外周面に形成された係止凹部25aに係止される。これにより、クラッチアウタ24は、センタケース14に一体形成されたクラッチインナ25(固定されている)にローラ26を介してロックされて回転が規制される。その結果、クラッチアウタ24と一体を成すインターナルギヤ21の回転が規制されるため、3個の遊星ギヤ20がピン22を中心として自転しながらサンギヤ19の外周を公転し、その公転力がプラネットキャリア4aに伝達されて、ドライブシャフト4を回転駆動する。
【0025】
一方、ドライブシャフト4に嵌合するピニオン6は、マグネットスイッチ7の吸引力により、レバー17を介してスプラインチューブ16と一体にドライブシャフト4の軸上を前方へ押し出されてリングギヤGと噛み合うことで、スタータモータ3の回転力をリングギヤGに伝達する。
【0026】
その後、エンジンが回転すると、ドライブシャフト4がエンジンにより高速で回されるため、プラネットキャリア4aに支持された各遊星ギヤ20の自転方向が反転する。これにより、回転規制されていたインターナルギヤ21が各遊星ギヤ20の回転力を受けて図5のE方向に回転する。その結果、それまで係止凹部25aに係止されていたローラ26がスプリング27の付勢力に抗してカム室24aの広い方へ移動し、クラッチインナ25とクラッチアウタ24とのロックを解除することにより、インターナルギヤ21は空転することができる。これにより、エンジンで発生した回転力は、インターナルギヤ21が空転することでアーマチュアシャフト2へ伝達されることはなく、スタータモータ3のオーバランを防止することができる。
【0027】
(本実施例の効果)
本実施例では、クラッチアウタ24からローラ26への押圧力方向の延長線上に壁面(凸部25b)が存在する様に係止凹部25aの深さを設定したことにより、トルク伝達時にローラ26が容易に係止凹部25aから飛び出すことはなく、確実にトルク伝達を行うことができる。また、クラッチインナ25を樹脂製とした場合、クラッチアウタ24からローラ26を介して過大な衝撃トルクが加わった時に、クラッチインナ25の凸部25bが撓んでローラ26が凸部25bを乗り越えて係止凹部25aから飛び出すことができる。これにより、クラッチインナ25へ衝撃トルクが伝達されることはなく、衝撃力を吸収することができる。
【0028】
(変形例)
本実施例では、クラッチアウタ24を遊星歯車減速機構のインターナルギヤ21と一体に設けたが、クラッチインナ25をインターナルギヤ21と一体に設けて、クラッチアウタ24を回転不能としても良い。また、カム室24aと係止凹部25aとの位置関係は上記実施例の場合と反対でも良い。即ち、クラッチアウタ24の内周面に係止凹部25aを形成して、クラッチインナ25の外周面にカム室24aを形成しても良い。
さらに、本実施例では、クラッチアウタ24をインターナルギヤ21と一体に設けたことで、クラッチインナ25をセンタケース14に設けて回転不能としたが、クラッチアウタ24およびクラッチインナ25共に回転可能な構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】トルク伝達時のクラッチ部の拡大断面図である。
【図2】スタータ全体の半断面図である。
【図3】係止凹部の深さと最大伝達トルクとの関係を示すグラフである。
【図4】ローラにモーメントが加わる時のクラッチ部断面図(a)およびトルク伝達が行われる時のクラッチ部断面図(b)である。
【図5】一方向クラッチの半断面図である。
【符号の説明】
1 スタータ
24 クラッチアウタ(外筒部)
24a カム室
25 クラッチインナ(内筒部)
25a 係止凹部
26 ローラ(転動体)
【産業上の利用分野】
本発明は、スタータに用いられる一方向クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば実開昭59−26107号公報に開示されたスタータ用一方向クラッチがある。この一方向クラッチは、ローラを収容する楔状空間の角度を適当な値に設定し、更に駆動体から突出する係止部を配設して、楔状空間に噛込むローラを当接させて噛込量を一定値とすることにより、伝達トルクを一定にして衝撃トルクを吸収している。しかし、この一方向クラッチは、噛込量を一定にするために係止部を所定の位置に設定する必要があるが、クラッチアウタに形成された楔状空間の内周面とクラッチインナの外周面とに接するローラの当接面が、楔状空間のわずかな傾斜により大幅に左右に振れてしまうため、係止部を正確に位置設定することができない。その結果、伝達トルクの最大値を正確に決定できず、衝撃トルクの吸収が不十分となってしまう。
【0003】
このため本出願人は、クラッチアウタの内周面とクラッチインナの外周面の何方か一方にローラを収容する楔状空間を形成し、他方にローラを係止する係止凹部を形成した一方向クラッチを提案した(提出日:平成6年9月7日)。この一方向クラッチでは、過大な衝撃トルク(所定のスタータ駆動トルク以上)が入力した時にローラが係止凹部から離脱できるように、係止凹部の深さが設定されている。従って、ローラが係止凹部から離脱してクラッチアウタとクラッチインナとが相対回転することにより、所定値以上のトルクは伝達されない構成となっている。これにより、ローラが係止凹部から離脱する時(クラッチアウタとクラッチインナとが相対回転を開始する時)の衝撃トルクの所定値を係止凹部の深さで正確に決定することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、先願に記載した一方向クラッチでは、係止凹部の深さが浅い場合にはローラに不安定な条件となり、最悪の場合、係止凹部からローラが飛び出してトルク伝達ができなくなる可能性を有していた。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、確実なトルク伝達を行なうことのできるスタータ用一方向クラッチを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成を採用した。
請求項1では、相対回転可能に設けられて、径方向に所定の間隔を隔てて対面する外筒部と内筒部を有し、前記外筒部の内周面には、断面円形の転動体を収容する楔状のカム室が形成されて、前記内筒部の外周面には、トルク伝達時に前記転動体を係止する係止凹部と、前記外筒部から前記転動体への押圧力方向の延長線上に、前記係止凹部の壁面を形成する凸部とが設けられたスタータ用一方向クラッチであり、
前記係止凹部の深さをh、前記転動体の半径をR、前記係止凹部に係止された前記転動体を介して前記外筒部と前記内筒部との間でトルク伝達が行なわれる時に、前記転動体の中心と前記内筒部の中心とを結ぶ直線をA、および前記転動体の中心と前記内筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして前記直線Aと前記直線Bとの成す角度をθとすると、
h≧R(1−cosθ)…………(1)
上記(1)の条件を満足し、
前記凸部は、前記外筒部から前記転動体を介して過大な衝撃が加わった時に、自身が撓むことにより、前記転動体が前記凸部を乗り越えて前記係止凹部から飛び出ることを許容することを特徴とする。
【0006】
請求項2では、相対回転可能に設けられて、径方向に所定の間隔を隔てて対面する内筒部と外筒部を有し、前記内筒部の外周面には、断面円形の転動体を収容する楔状のカム室が形成されて、前記外筒部の内周面には、トルク伝達時に前記転動体を係止する係止凹部と、前記内筒部から前記転動体への押圧力方向の延長線上に、前記係止凹部の壁面を形成する凸部とが設けられたスタータ用一方向クラッチであり、
前記係止凹部の深さをh、前記転動体の半径をR、前記係止凹部に係止された前記転動体を介して前記外筒部と前記内筒部との間でトルク伝達が行なわれる時に、前記転動体の中心と前記外筒部の中心とを結ぶ直線をA、および前記転動体の中心と前記外筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして前記直線Aと前記直線Bとの成す角度をθとすると、
h≧R(1−cosθ)…………(2)
上記(2)の条件を満足し、
前記凸部は、前記内筒部から前記転動体を介して過大な衝撃が加わった時に、自身が撓むことにより、前記転動体が前記凸部を乗り越えて前記係止凹部から飛び出ることを許容することを特徴とする。
【0007】
【作用および発明の効果】
(請求項1)
転動体を介して外筒部と内筒部との間でトルク伝達が行われる時、転動体は係止凹部に係止された状態でカム室の内周面に当接している。ここで、仮に外筒部から内筒部へトルク伝達される場合を考えると、転動体には外筒部から押圧力が加わり、その押圧力を内筒部の係止凹部で受けることになる。この時、係止凹部は、外筒部から転動体に加わる押圧力に対して転動体にモーメントが加わらない様に転動体を係止する必要がある。
【0008】
そこで、係止凹部の深さhを内筒部側のトルク作用点より高くなるように設定すれば良い。即ち、転動体の中心と内筒部の中心とを結ぶ直線をA、および転動体の中心と内筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして、直線Aと直線Bとの成す角度をθとした場合に、転動体の半径RからRcosθを差し引いた値以上の深さhを確保すれば良い。これにより、外筒部から転動体に加わる押圧力方向に係止凹部の壁面、つまり凸部が存在することになるため、転動体は係止凹部に係止されてモーメントが加わらなくなるため、外筒部と内筒部との間で確実にトルク伝達を行うことができる。
また、外筒部から転動体を介して凸部に過大な衝撃が加わった時は、凸部が撓むことにより、転動体が凸部を乗り越えて係止凹部から飛び出ることができる。
【0009】
なお、転動体を介して内筒部から外筒部へトルク伝達される場合は、上記のように係止凹部の深さhを設定することにより、係止凹部に転動体を係止させた状態で外筒部側へ転動体を押圧することができる。このため、外筒部から内筒部へトルク伝達される場合と同様に、転動体にモーメントが加わることはなく、確実にトルク伝達を行うことができる。
【0010】
(請求項2)
この請求項2では、内筒部の外周面にカム室が形成されて、外筒部の内周面に係止凹部が形成されている。つまり、カム室と係止凹部との位置関係が請求項1の場合と反対である。但し、トルク伝達時に転動体を係止凹部に係止させて転動体にモーメントが加わらない様にするための係止凹部の深さhは、請求項1の場合と同様に決定することができる。具体的には、転動体の中心と外筒部の中心とを結ぶ直線をA、および転動体の中心と外筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして、直線Aと直線Bとの成す角度をθとした場合に、転動体の半径RからRcosθを差し引いた値以上の深さhを確保すれば良い。これにより、転動体が係止凹部に係止された状態で確実にトルク伝達を行うことができる。
また、内筒部から転動体を介して凸部に過大な衝撃が加わった時は、凸部が撓むことにより、転動体が凸部を乗り越えて係止凹部から飛び出ることができる。
【0011】
【実施例】
次に、本発明のスタータの実施例を図面に基づいて説明する。
図1はトルク伝達時のクラッチ部の拡大断面図、図2はスタータ全体の半断面図である。
本実施例のスタータ1は、通電を受けてアーマチュアシャフト2に回転力を発生するスタータモータ3、このスタータモータ3の前方側(図2の左方側)でアーマチュアシャフト2と同一軸上に配されたドライブシャフト4、スタータモータ3の回転力をドライブシャフト4に伝達する回転力伝達手段(後述する)、ドライブシャフト4の外周に軸受5を介して嵌合されたピニオン6、スタータモータ3への通電およびピニオン6の押出力を発生するマグネットスイッチ7等より構成されている。
【0012】
(スタータモータ3の説明)
スタータモータ3は、アーマチュアシャフト2を有するアーマチュア8、このアーマチュア8の外周に配置される固定磁極9、および固定磁極9を内周面に固定する円筒状のヨーク10等より構成されて、図示しないスタータスイッチがON操作されてマグネットスイッチ7に内蔵された接点(図示しない)が閉じることにより、アーマチュア8が通電されて回転する。
【0013】
(ドライブシャフト4の説明)
ドライブシャフト4は、その先端部が軸受11を介してフロントハウジング12の先端部に回転自在に支持されて、後端部が軸受13を介してセンタケース14の小径円筒部14a(後述のクラッチインナ)に回転自在に支持されている。このドライブシャフト4は、その後端が径方向の外側へフランジ状に突設して、遊星歯車減速機構(後述する)のプラネットキャリア4a(本発明のフランジ部)として一体に設けられている。また、ドライブシャフト4の後端中央部には、軸方向に沿った中空筒状の凹部が形成されており、この凹部内に軸受15を配置してアーマチュアシャフト2の先端を回転自在に支持している。なお、センタケース14は、フロントハウジング12とスタータモータ3のヨーク10との間に挟持されて、回転力伝達手段の外周を覆っている。
【0014】
(ピニオン6の説明)
ピニオン6は、ドライブシャフト4の外周にヘリカルスプライン嵌合するスプラインチューブ16と一体に設けられている。このピニオン6は、スプラインチューブ16がレバー17を介してドライブシャフト4上をヘリカルスプラインに沿って前方へ押し出されることにより、エンジンのリングギヤGと噛み合うことができる。レバー17は、一端がスプラインチューブ16の外周に係合されて、他端がマグネットスイッチ7の先端側に突出するロッド18に係合され、中間部でフロントハウジング12に揺動自在に支持されている。
【0015】
(マグネットスイッチ7の説明)
マグネットスイッチ7は、前述のスタータスイッチがON操作されて内蔵するコイル(図示しない)が通電されると、コイルに発生する磁力によってスイッチ内部に収容されたプランジャ(図示しない)を吸引する。その結果、スタータモータ3の接点を閉じるとともに、ロッド18を通じてレバー17を揺動操作してピニオン6押出力を発生する。
【0016】
(回転力伝達手段の説明)
回転力伝達手段は、遊星歯車減速機構と一方向クラッチとから構成される。
遊星歯車減速機構は、スタータモータ3の回転速度を減速して、スタータモータ3の出力トルクを増大する減速装置であり、アーマチュアシャフト2の外周に形成されたサンギヤ19、このサンギヤ19に噛み合う3個の遊星ギヤ20、各遊星ギヤ20と噛み合うインターナルギヤ21、および前述のプラネットキャリア4aより構成されている。
【0017】
サンギヤ19は、アーマチュアシャフト2と一体に回転することで、アーマチュアシャフト2の回転を3個の遊星ギヤ20に伝達する。
3個の遊星ギヤ20は、それぞれプラネットキャリア4aに固定されたピン22に軸受23を介して回転自在に支持されており、サンギヤ19およびインターナルギヤ21と噛み合いながらサンギヤ19の外周を公転することで、その公転力がプラネットキャリア4aに伝達されてドライブシャフト4に回転力を伝達する。
インターナルギヤ21は、円筒形状に設けられて、その外周面がセンタケース14の円筒壁14b内周面に摺接して回転可能に組み込まれている。
【0018】
一方向クラッチは、遊星歯車減速機構のインターナルギヤ21を一方向(エンジンの回転を受けて回転する方向)のみに回転可能に支持するもので、クラッチアウタ24(本発明の外筒部)、クラッチインナ25(本発明の内筒部)、ローラ26(本発明の転動体)、およびスプリング27等より構成されている。
クラッチアウタ24は、インターナルギヤ21より先端側でインターナルギヤ21より小径の円筒形状に設けられて、インターナルギヤ21の先端で径方向の内側へ延びる環状壁部28を介してインターナルギヤ21と一体に設けられている。クラッチアウタ24の内周面には、図1に示すように、ローラ26およびスプリング27を収容する楔状のカム室24aが形成されている。このカム室24aは、アウタ内周面の周方向に等間隔で複数設けられている。
【0019】
クラッチインナ25は、センタケース14の小径円筒部14a(回転不能)によって構成されて、クラッチアウタ24の内周側で径方向にクラッチアウタ24と所定の間隔を保って配置されている。クラッチインナ25の外周面には、図1に示すように、トルク伝達時にローラ26を係止する係止凹部25aが形成されている。この係止凹部25aは、インナ外周面の周方向に等間隔で複数(例えば、カム室24aの整数倍)設けられている。
ローラ26は、円柱形に設けられて、スタータモータ3の回転力をドライブシャフト4へ伝達する時にクラッチアウタ24とクラッチインナ25とをロックして、クラッチアウタ24(即ち、インターナルギヤ21)の回転を規制する。
スプリング27は、図1に示すようにローラ26をカム室24aの狭い方へ押圧している。
【0020】
クラッチインナ25に形成された係止凹部25aは、トルク伝達時にローラ26を確実に係止する必要がある。つまり、係止凹部25aの深さが浅いと、係止凹部25aからローラ26が飛び出してトルク伝達できない場合が生じる。
そこで、本発明者は、係止凹部25aの深さと最大伝達トルクとの関係を実験により考察した。なお、実験に際して、クラッチアウタ24およびクラッチインナ25はそれぞれ樹脂製(例えばナイロン:商標名)、ローラ26は鉄製とした。また、図1に示すように、係止凹部25aの深さをh、ローラ26の半径をR、クラッチインナ25の中心O1 とローラ26の中心O2 とを結ぶ直線をAおよびローラ26の中心O2 とクラッチインナ25側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして直線Aと直線Bとの成す角度をθとする。
【0021】
ここで、R(1−cosθ)をh′として、h/h′を横軸にとり、最大伝達トルクを縦軸にとると、図3に示す様な特性が得られることを発見した。即ち、h/h′が1未満の場合は、係止凹部25aの深さが十分でない(浅い)ことから、図4(a)に示すように、ローラ26に矢印C方向のモーメントが加わるため、容易にローラ26がクラッチインナ25の凸部25bを乗り越えて係止凹部25aから飛び出してしまう。一方、h/h′が1以上の場合は、図4(b)に示すように、クラッチアウタ24からローラ26への押圧方向(ローラ26に矢印で示す方向)の延長線上に係止凹部25aの壁面が存在するため、ローラ26にモーメントが加わることはなく、ローラ26が容易に係止凹部25aから飛び出すことはない。
【0022】
但し、h/h′が1以上の場合でも、クラッチアウタ24からローラ26へ過大な押圧力(例えば、スタータ駆動トルク以上の衝撃トルク)が加わると、図4(b)に破線で示すように、クラッチインナ25の凸部25bが撓むことで、ローラ26が凸部25bを乗り越えて係止凹部25aから飛び出すことになる。従って、h/h′が1以上の時の最大伝達トルクは、ローラ26から押圧力を受ける凸部25bの剛性によって決定され、それまではローラ26の挙動が安定して(つまり係止凹部25aに係止されている)、確実にトルク伝達が行われる。
【0023】
次に、本実施例の作動を説明する。
スタータスイッチがON操作されると、マグネットスイッチ7によりスタータモータ3の接点が閉じてアーマチュア8が通電されることにより、アーマチュア8に回転力が発生する。これにより、アーマチュアシャフト2とともにサンギヤ19が回転して3個の遊星ギヤ20を回転駆動する。この時、各遊星ギヤ20と噛み合うインターナルギヤ21は、各遊星ギヤ20の回転力を受けて図5のD方向に回転しようとする。
【0024】
このインターナルギヤ21の動作により、クラッチアウタ24のカム室24aに収納されたローラ26がスプリング27に押圧され、カム室24aの狭い方へ移動してクラッチインナ25の外周面に形成された係止凹部25aに係止される。これにより、クラッチアウタ24は、センタケース14に一体形成されたクラッチインナ25(固定されている)にローラ26を介してロックされて回転が規制される。その結果、クラッチアウタ24と一体を成すインターナルギヤ21の回転が規制されるため、3個の遊星ギヤ20がピン22を中心として自転しながらサンギヤ19の外周を公転し、その公転力がプラネットキャリア4aに伝達されて、ドライブシャフト4を回転駆動する。
【0025】
一方、ドライブシャフト4に嵌合するピニオン6は、マグネットスイッチ7の吸引力により、レバー17を介してスプラインチューブ16と一体にドライブシャフト4の軸上を前方へ押し出されてリングギヤGと噛み合うことで、スタータモータ3の回転力をリングギヤGに伝達する。
【0026】
その後、エンジンが回転すると、ドライブシャフト4がエンジンにより高速で回されるため、プラネットキャリア4aに支持された各遊星ギヤ20の自転方向が反転する。これにより、回転規制されていたインターナルギヤ21が各遊星ギヤ20の回転力を受けて図5のE方向に回転する。その結果、それまで係止凹部25aに係止されていたローラ26がスプリング27の付勢力に抗してカム室24aの広い方へ移動し、クラッチインナ25とクラッチアウタ24とのロックを解除することにより、インターナルギヤ21は空転することができる。これにより、エンジンで発生した回転力は、インターナルギヤ21が空転することでアーマチュアシャフト2へ伝達されることはなく、スタータモータ3のオーバランを防止することができる。
【0027】
(本実施例の効果)
本実施例では、クラッチアウタ24からローラ26への押圧力方向の延長線上に壁面(凸部25b)が存在する様に係止凹部25aの深さを設定したことにより、トルク伝達時にローラ26が容易に係止凹部25aから飛び出すことはなく、確実にトルク伝達を行うことができる。また、クラッチインナ25を樹脂製とした場合、クラッチアウタ24からローラ26を介して過大な衝撃トルクが加わった時に、クラッチインナ25の凸部25bが撓んでローラ26が凸部25bを乗り越えて係止凹部25aから飛び出すことができる。これにより、クラッチインナ25へ衝撃トルクが伝達されることはなく、衝撃力を吸収することができる。
【0028】
(変形例)
本実施例では、クラッチアウタ24を遊星歯車減速機構のインターナルギヤ21と一体に設けたが、クラッチインナ25をインターナルギヤ21と一体に設けて、クラッチアウタ24を回転不能としても良い。また、カム室24aと係止凹部25aとの位置関係は上記実施例の場合と反対でも良い。即ち、クラッチアウタ24の内周面に係止凹部25aを形成して、クラッチインナ25の外周面にカム室24aを形成しても良い。
さらに、本実施例では、クラッチアウタ24をインターナルギヤ21と一体に設けたことで、クラッチインナ25をセンタケース14に設けて回転不能としたが、クラッチアウタ24およびクラッチインナ25共に回転可能な構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】トルク伝達時のクラッチ部の拡大断面図である。
【図2】スタータ全体の半断面図である。
【図3】係止凹部の深さと最大伝達トルクとの関係を示すグラフである。
【図4】ローラにモーメントが加わる時のクラッチ部断面図(a)およびトルク伝達が行われる時のクラッチ部断面図(b)である。
【図5】一方向クラッチの半断面図である。
【符号の説明】
1 スタータ
24 クラッチアウタ(外筒部)
24a カム室
25 クラッチインナ(内筒部)
25a 係止凹部
26 ローラ(転動体)
Claims (2)
- 相対回転可能に設けられて、径方向に所定の間隔を隔てて対面する外筒部と内筒部を有し、前記外筒部の内周面には、断面円形の転動体を収容する楔状のカム室が形成されて、前記内筒部の外周面には、トルク伝達時に前記転動体を係止する係止凹部と、前記外筒部から前記転動体への押圧力方向の延長線上に、前記係止凹部の壁面を形成する凸部とが設けられたスタータ用一方向クラッチであり、
前記係止凹部の深さをh、前記転動体の半径をR、前記係止凹部に係止された前記転動体を介して前記外筒部と前記内筒部との間でトルク伝達が行なわれる時に、前記転動体の中心と前記内筒部の中心とを結ぶ直線をA、および前記転動体の中心と前記内筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして前記直線Aと前記直線Bとの成す角度をθとすると、
h≧R(1−cosθ)…………(1)
上記(1)の条件を満足し、
前記凸部は、前記外筒部から前記転動体を介して過大な衝撃が加わった時に、自身が撓むことにより、前記転動体が前記凸部を乗り越えて前記係止凹部から飛び出ることを許容することを特徴とするスタータ用一方向クラッチ。 - 相対回転可能に設けられて、径方向に所定の間隔を隔てて対面する内筒部と外筒部を有し、前記内筒部の外周面には、断面円形の転動体を収容する楔状のカム室が形成されて、前記外筒部の内周面には、トルク伝達時に前記転動体を係止する係止凹部と、前記内筒部から前記転動体への押圧力方向の延長線上に、前記係止凹部の壁面を形成する凸部とが設けられたスタータ用一方向クラッチであり、
前記係止凹部の深さをh、前記転動体の半径をR、前記係止凹部に係止された前記転動体を介して前記外筒部と前記内筒部との間でトルク伝達が行なわれる時に、前記転動体の中心と前記外筒部の中心とを結ぶ直線をA、および前記転動体の中心と前記外筒部側のトルク作用点とを結ぶ直線をBとして前記直線Aと前記直線Bとの成す角度をθとすると、
h≧R(1−cosθ)…………(2)
上記(2)の条件を満足し、
前記凸部は、前記内筒部から前記転動体を介して過大な衝撃が加わった時に、自身が撓むことにより、前記転動体が前記凸部を乗り越えて前記係止凹部から飛び出ることを許容することを特徴とするスタータ用一方向クラッチ。
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