JP3551105B2 - コイル内の材質変動の少ない冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車用外板などに用いられる加工性に優れ、かつ塗装焼付硬化性(以下BH性と示す)を有する、亜鉛めっき鋼板などの表面処理鋼板を含む冷延鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
BH型冷延鋼板(以下BH鋼板と示す)は、自動車等の製造工程において行なわれる塗装焼付処理(170℃×20分程度の加熱工程)を利用し、固溶C、Nによる歪み時効現象によって部品強度が向上する鋼板である。BH鋼板には、低炭素系鋼種、極低炭素系鋼種があるが、低炭素系は伸びおよびr値が極低炭素系と比較すると劣る。このため、自動車外板等の深絞り部品の成形には一般的に極低炭素系BH鋼板が用いられている。
【0003】
BH鋼板の要求特性としては、BH量が高く、常温時効量が少ないことが挙げられ、これらを満たすためには固溶C、N量を適当に調節することが必要である。極低炭素系BH鋼板では、固溶C、N量を調節してBH量の向上や常温時効量の抑制を図る技術として、Nb添加(特公昭60−17004号公報)、Nb−Ti添加(特公昭61−45689号公報、特開平3−257124号公報、特開平5−230598号公報、特開平5−263184号公報)、Nb−Ti−B添加(特公昭60−47328号公報)、Nb−B添加(特公昭61−11296号公報)等の、炭窒化物生成元素を添加するものが提案されている。
【0004】
なお、ここでいうBH量とは、引張試験により2%歪み時に測定した変形応力と、そこで直ちに除荷重して170℃×20分の熱処理を行なった後に、同様の引張試験を行なって測定された変形応力との差をいう。また、常温時効量とは、鋼板製造後ユーザーが使用するまでの時効による材質劣化をいい、一般的には、鋼板製造後に一定時間恒温保持して降伏伸び(YPEl)の発生およびYP上昇を観察することにより評価される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように炭窒化物生成元素を添加することによって固溶C,Nを調節する技術には、以下のような問題があった。
【0006】
例えば、特公昭60−17004号公報に開示されたNb添加鋼では、固溶C量をNbで調整し、Alで固溶N量を調整している。このうち固溶Nはフェライト中の拡散係数が大きく常温時効に対する寄与が固溶Cよりも大きいので、できるだけ低減することが必要であるが、AlNの析出挙動はAlの拡散速度に律速されることから、従来レベルの0.0015%を超えるNが含まれる鋼では、Alを添加しても固溶Nが数ppm残留し、常温時効を十分に抑制することができない。また、AlNは熱延後の冷却中に析出するが、その速度は遅く、析出は主として熱延板がコイルに巻き取られて徐々に室温まで冷却される過程で起こる。このとき、コイルの外周部と内部では温度が不均一なためAlNの析出挙動にばらつきが生じ、コイル内で材質が変動する原因となっている。
【0007】
また、特公昭61−45689号公報等に開示されたNb−Ti添加鋼では、Nの固定をより促進するためにNbの他にTiを添加している。BH鋼板にTiを添加する場合、Tiを過剰に添加してC原子をTiCとして析出させるとBH性そのものが失われるので、それを回避するためにN原子のみをTiNとして析出させる必要があり、そのためにTiとNとの化学量論的関係からTiの添加量を決定している。例えば、N濃度を0.0020%とすると、Ti添加量を0.0069%程度としている。ところが、このようなTi、N含有量およびその程度の含有量領域ではオーステナイト中でのTiNの析出開始温度が900℃近辺と低温になるため、熱間圧延工程で析出するTiNのサイズが極めて細かくなり、この析出物が強度を上昇させ、鋼板の成形性を劣化させるという問題がある。
【0008】
さらに、特公昭61−11296号公報に開示されたNb−B添加鋼や、特公昭60−47328号公報に開示されたNb−Ti−B添加鋼では、BによりNをBNとして固定することで固溶Nの低減を図っているが、これらの技術にはBが粒界に偏析してr値を低下させるという問題がある。
【0009】
以上のように、従来のBH鋼板に関する技術には、(1)NやCを部分的に析出させるため、析出挙動が不安定であり、コイル内に析出物サイズの変動等に起因した材質のばらつきがあること、(2)TiN等の微細析出物に起因して材料特性が劣化すること、(3)固溶C,N量の制御が不適切であるとBH量が不足したり、あるいは逆に耐時効性が不足すること、等の問題がある。
【0010】
一方、近年の冷延鋼板においては、歩留まりや使いやすさを向上する観点から、コイル内の材質変動を低減することが求められており、前記のようにコイル内の材質変動が避け難いBH鋼板においても、コイル内の材質変動を低減することへの要求は高まっている。
【0011】
材質が均一な鋼板の製造方法としては、例えば、特公平7−34923号公報に、幅方向における材質のばらつきをエッジマスクにより低減する技術が開示されている。しかし、この方法ではコイル長手方向における材質を均一にすることは考慮されておらず、上記したようなBH鋼板におけるコイル内の材質変動を低減することはできない。これに対して、特開平7−316663号公報には、巻取り温度を700〜770℃まで高くしてコイル内の材質を均一化する技術が開示されている。しかし、このように巻取り温度を高くすると、鋼板の表面性状が劣化する。
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであって、BH量を安定して確保しつつ、常温時効を抑制し、さらに、コイル内の材質変動、成形性低下等の窒化物に起因する問題のない冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために固溶C,Nの歪み時効挙動について詳細に検討を重ねた結果、BH鋼板にとって、Nによる時効を排除し、実質的にCのみによりBH効果を得ることが最適であるという結論を得た。また、Fe中での窒化物の析出挙動についても詳細に検討した結果、N含有量を極めて低いレベルに制御すると、BH鋼板としての時効特性やコイル内での材質変動の抑制に対して極めて効果的な領域があることを見出した。
【0014】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(4)を提供する。
(1) 重量%で、
C :0.0010〜0.0025%、
Si:0.05%(0.0080%以下を除く)、
Mn:0.36〜0.8%、
P :0.01〜0.08%、
S :0.003〜0.02%、
sol.Al:0.03〜0.1%、
Nb:0.003〜0.02%
N :0.0012%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつNb≦93/12Cを満たすことを特徴とするコイル内の材質変動の少ない冷延鋼板。
【0015】
(2) さらに、重量%で、Ti:0.001〜0.02%を含有し、かつTi≦48/32S+48/14Nを満たすことを特徴とする前記(1)に記載のコイル内の材質変動の少ない冷延鋼板。
【0016】
(3) さらに、重量%で、B:0.0001〜0.0010%を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載のコイル内の材質変動の少ない冷延鋼板。
【0017】
(4) 前記(1)から(3)のいずれかに記載の冷延鋼板を製造するにあたり、スラブを熱間圧延した後に冷間圧延し、次いで平均20℃/sec以上で800〜870℃の温度まで昇温し、その温度で保持することなく、または所定時間保持した後に、600℃まで3〜20℃/secの速度で冷却することを特徴とするコイル内の材質変動の少ない冷延鋼板の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明の成分組成について説明する。
本発明における冷延鋼板は、重量%で、C:0.0010〜0.0025%、Si:0.05%以下(0.0080%以下を除く)、Mn:0.36〜0.8%、P:0.01〜0.08%、S:0.003〜0.02%、sol.Al:0.03〜0.1%、Nb:0.003〜0.02%、N:0.0012%以下を含有し、かつNb≦93/12Cを満たすものである。また、必要に応じて上記に加えて、Ti:0.001〜0.02%を含有し、かつTi≦48/32S+48/14Nを満たすものである。さらに必要に応じて上記に加えて、B:0.0001〜0.0010%を含有する。その限定理由は、以下の通りである。
【0019】
C:0.0010〜0.0025%
Cは、固溶CまたはNbC析出物として鋼板中に存在し、本発明における冷延鋼板では、この固溶Cが実質的にBH効果の全てを担っている。したがって、BH量の制御にはC含有量の制御が極めて重要である。しかし、Cが0.0010%未満では大部分がNbCとして析出してBH量が不足し、一方、C含有量が0.0025%を超えるとBH量が過大となるとともに常温時効を十分に抑制することができない。このため、C含有量は0.0010〜0.0025%とする。
【0020】
Si:0.05%以下
Siは、固溶強化元素として機能し、本発明では強度を適当に調整するため適宜添加される。しかし、Si含有量が0.05%を超えると鋼板の表面性状が劣化するので、Si含有量は0.05%以下とする。
【0021】
Mn:0.36〜0.8%
Mnは、強度調整の目的および固溶Cとの相互作用によりBH量を安定的に調整する目的で添加される。しかし、Mn含有量が0.36%未満ではBH量が不十分となり、0.8%を超えると強度が高くなりすぎ成形性が劣化する。このため、Mn含有量は、0.36〜0.8%とする。
【0022】
P:0.01〜0.08%
Pは、r値向上および固溶強化を目的として添加される。しかし、P含有量が0.001%未満ではr値が低下し、0.08%を超えると鋼板の表面性状が劣化する。このため、P含有量は0.01〜0.08%とする。
【0023】
S:0.003〜0.02%
Sは不純物元素であり、鋼板の成形性を劣化させるので、製鋼工程で低減する必要がある。S含有量は、0.02%を超えると鋼板の延性が著しく劣化するため、0.02%以下にする必要があるが、0.003%未満に低減しても材質向上効果に乏しいばかりか製造コストが極めて高くなる。このため、S含有量は0.003〜0.02%とする。
【0024】
sol.Al:0.03〜0.1%、
sol.Alは、熱延後および焼鈍中にNをAlNとして析出させる機能があり、Nを固定して無害化するために添加される。sol.Al含有量が0.03%未満では、鋼中のNを有効に析出させることができず、残留した固溶Nが歪み時効により成形前に常温時効による材質劣化をもたらし、極めて有害である。一方、sol.Al含有量が0.1%を超えるとAlNの析出による効果が飽和する上に、鋼板の表面性状が劣化する。このため、sol.Al含有量は0.03〜0.1%とする。
【0025】
Nb:0.003〜0.02%、かつNb≦93/12C
Nbは、固溶C濃度を最適かつ安定的に制御する目的で添加される。Nb含有量が0.003%未満ではこの効果が不十分であり、一方、Nb含有量が0.02%または93/12Cを超えるとCの大部分がNbCとして析出し、固溶Cが少なくなるためBH量が不十分となる。このため、Nb含有量は0.003〜0.02%とし、かつNb≦93/12Cを満足させる。
【0026】
N:0.0012%以下
Nは、本発明において極めて重要な成分元素である。NはCと比較して拡散が早いため常温時効に対して有害であると考えられており、そのため一般にAl、Ti、Bなどの窒化物形成元素を添加して固溶Nを低減している。しかし、窒化物形成元素を添加して窒化物を形成すると、その窒化物自体が材質劣化やコイル内の材質ばらつきをもたらしてしまう。コイル内の材質ばらつきをより小さくするためにはN含有量を0.0012%以下とすることが望ましく、さらに望ましくは0.0010%以下である。
【0027】
Ti:0.001〜0.02%、かつTi≦48/32S+48/14N
Tiは、N含有量が0.0015%を超える場合に添加されるとTiNの微細析出物が生成して伸びなどの材料特性を劣化させるが、本発明鋼板におけるN含有量の範囲では、材質の劣化を生じさせず、むしろ適量添加によりr値を向上させる。したがって、Tiはさらなるr値向上のため必要に応じて添加される。しかし、Ti含有量が0.001%未満ではr値向上の効果が得られず、Ti含有量が0.02%または48/32S+48/14Nを超えるとBH量が低下する。このため、Tiを添加する場合には、その含有量を0.001〜0.02%とし、かつTi≦48/32S+48/14Nを満足させる。
【0028】
B:0.0001〜0.0010%
Bは、粒界に偏析して2次加工脆性を抑制する元素であり、加工度が高く、使用温度が低い場合に必要に応じて添加する。B含有量が0.0001%未満では2次加工脆性を抑制する効果が得られず、0.0010%を超えるとr値が極めて劣化する。このため、Bを添加する場合には、その含有量を0.0001〜0.0010%とする。
【0029】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明においては、上記鋼板を製造するにあたり、鋼スラブを熱間圧延した後に冷間圧延し、次いで平均20℃/sec以上で800〜870℃の温度まで昇温し、その温度で保持することなく、または所定時間保持した後に、600℃まで3〜20℃/secの速度で冷却する。600℃以下の冷却速度については特に規定する必要はない。
【0030】
本発明では、製鋼工程で鋼中のN量を極めて低く調整し、さらに、薄鋼板製造工程での吸窒を抑制し、鋼中の総窒素含有量を極めて低いレベルに安定して制御する必要がある。例えば、製鋼工程において、RH脱ガスで溶鋼のN含有量を低減させ、その溶鋼を連続鋳造に供してスラブとする。この際、溶鋼中のN含有量が0.0012%を超えると、板製造工程での浸窒により、N含有量を本発明の範囲である0.0015%以下にすることが困難となるので、溶鋼中のN含有量は0.0012%以下とすることが望ましい。
【0031】
得られたスラブは、連続鋳造から直接に熱間圧延を行ってもよいし、連続鋳造後に加熱炉で再加熱してから熱間圧延を行なってもよいが、熱間圧延はAr3点以上の温度で完了することが望ましい。熱間圧延の完了する温度がAr3点を超えるとフェライト粒径が粗大化し、冷延鋼板とした際のr値が低くなる。
【0032】
熱間圧延後、600〜700℃で巻き取り、巻取り後の冷却中にNをAlNとして析出させることが望ましい。巻取り温度が600℃未満ではAlNが十分に析出せず、700℃を超えると鋼板表面のスケールが厚くなり表面欠陥の発生率が高くなる。さらに良好な表面性状が要求される場合は650℃未満とすることが望ましい。
【0033】
以上のようにして得られた熱間圧延板を所望の板厚まで冷間圧延して冷延板とした後、平均20℃/sec以上で800〜870℃まで昇温する。平均昇温速度が20℃/sec未満では良好な集合組織がせず、r値が低くなる。また、この加熱温度が800℃未満ではBH量が不十分となり、870℃超では結晶粒径が大きくなりすぎてプレス成形時に肌荒れ欠陥が発生するとともに、固溶Cが少なくなりすぎて耐常温時効性が劣化する。800〜870℃に昇温した後には、その温度で保持しなくてもよいが、BH量を確保するために所定時間保持することが好ましい。保持時間については特に限定されないが、十分なBH量を確保し、より優れた材質のBH鋼板を得るためには30sec以上保持することが望ましい。
【0034】
その後、600℃以下まで3〜20℃/secで冷却する。それにより600℃までにCをNbCとして一部析出させる。冷却速度が3℃/sec未満では固溶Cが少なくなりすぎてBH量が不足し、20℃/sec超では固溶Cが多くなり、耐常温時効性が劣化する。
【0035】
以上のようにして得られた冷延鋼板に調質圧延を行なう場合には、100℃以下まで冷却した後に、0.7〜1.6%の圧延率で行なうことが望ましい。100℃を超える温度で調質圧延を行なうと、動的歪み時効および巻取り後の時効により耐常温時効性が劣化するので、調質圧延は100℃以下まで冷却した後に行なうこととする。また、調質圧延の圧延率が0.7%未満では調質圧延の効果が十分でなく耐常温時効性が劣化し、1.6%を超えると調質圧延の効果が飽和するだけでなく加工硬化により成形性が劣化する。
【0036】
なお、本発明の冷延鋼板は、以上のようにして製造した冷延鋼板に亜鉛めっき等の表面処理を施した表面処理鋼板を含むものである。
【0037】
【実施例】
次に、実施例について述べる。
[実施例1]
銑鉄を溶銑予備処理工程、脱炭工程、RH脱ガス工程からなる製鋼工程により成分調整した溶鋼を連続鋳造によりスラブとした。次いで、得られたスラブを、連続鋳造から直接、またはさらに再加熱した後に、熱間圧延を開始した。熱間圧延開始温度は1170〜1220℃であった。熱間圧延は板厚2.8mmまで行い、900〜920℃で完了した。その後、平均冷却速度約15℃/secで640℃まで冷却した後、巻き取った。以上のようにして得られた熱延鋼板を酸洗した後、0.7mmまで冷間圧延し、連続焼鈍溶融亜鉛めっきラインを用いて焼鈍を行なった。次いで、25℃/secで昇温して850℃で約60sec保持した後、600℃以下まで冷却した。600℃までの平均冷却速度は9〜15℃/secであった。その後、調質圧延を圧延率1.4%で行なった。この時の板温度は約80℃であった。このようにして製造した冷延鋼板の成分を表1に示す。
【0038】
また、鋼板の特性評価結果を表2に示す。引張試験はJIS5号型引張試験片をコイル長手方向中央の材質安定部分(M部)から圧延方向に対して直角方向で採取したものを用いて実施した。BH量は2%の予歪みを付与した時の応力と、そこで除荷重して170℃で20分間オイルバスで加熱保持後、再加重した際のYPとの変化量を評価した。常温時効特性は、38℃の恒温槽で180日保持後の降伏伸び(YPEl180)で評価した。プレス成形時のストレッチャーストレインマークの発生を防止するためには、YPEl180を0.3%以下とする必要がある。また、コイル内の材質変動を評価するため、コイルトップ部(T部)から試験片を採取し、M部との差をΔTS(=TS(T部)−TS(M部))を測定して、コイル内の材質変動の指標とした。表面性状の評価は、めっきむらなど表面性状の良否を目視で表面等級:A(優)〜D(劣)の4段階で判定した。ここで自動車外板としては表面等級”B”までが許容される。
【0039】
表2に示すように、本発明例である鋼1〜5は、BH量が30MPa以上と良好で、耐常温時効性の指標である38℃×180日時効後の降伏伸び(YPEl180)も0.3%以下と良好であった。また、コイル内の材質変動(ΔTS)も10MPa未満と良好であり、さらに表面性状も良好であった。
【0040】
それに対して、組成が本発明範囲から外れた比較例である鋼6〜17は、上記特性のうちいずれかがBH鋼板としては優れたものではなかった。例えば、鋼6〜8はNが本発明範囲を外れるためコイル内の材質変動(ΔTS)が大きく、鋼7,8ではさらにYPEl180が0.4%以上と、耐時効性も劣っている。鋼9はC含有量が低いためにBH量が低い。、鋼10はC含有量が高すぎるためYPEl180が高く耐時効性にも劣っている。鋼11はMn含有量が低いためBH量が低い。鋼12は、Mn含有量が高すぎるため強度が高く、延性が劣るばかりでなく、YPEl180が高く、耐時効性も劣り、表面性状もよくない。鋼13は、P含有量が高すぎるため強度が高く、延性が劣り、表面性状もよくない。鋼14は、Al含有量が低いため固溶Nの抑制が不十分となり、YPEl180が高く、耐時効性に劣り、コイル内の材質変動も大きい。鋼15はNbが0.02%を超え、鋼16はNbが93/12Cを超えており、また鋼17はTi含有量が0.02%を超えるため、いずれもBH量が低い。
【0041】
表2より、本発明によれば、BH性と耐常温時効性に優れ、コイル内の材質変動が少なく、さらに表面性状が良好な冷延鋼板が得られることが確認された。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
[実施例2]
銑鉄を溶銑予備処理工程、脱炭工程、RH脱ガス工程からなる製鋼工程により成分調整した表1の鋼番号1〜3に示す成分を有する溶鋼を連続鋳造によりスラブとした後、表3に示す条件で熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を行ない、溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。得られた鋼板の特性を実施例1と同様に評価した。その結果を表4に示す。
【0045】
表4に示すように、本発明範囲内の製造方法により作製した記号A〜Oの鋼板は、BH量が30MPa以上と良好で、耐常温時効性の指標である38℃×180日時効後の降伏伸び(YPEl180)も0.3%以下と良好であった。さらに、コイル内の材質変動(ΔTS)は10MPa未満と良好であり、表面性状も良好であった。
【0046】
これに対して、本発明範囲外の製造方法により作製した記号P〜Tの鋼板は、上記特性のいずれかがBH鋼板としては優れたものではなかった。例えば、記号Pはバッチ焼鈍で焼鈍時の加熱速度および冷却速度が遅いためにBH性が優れない。記号Qは焼鈍温度が780℃と低いためBH性が優れない。記号Rは焼鈍温度が高すぎるため、耐常温時効特性が優れない。記号Sは冷却速度が遅いため、BH性が優れない。記号Tは焼鈍後の冷却速度が速すぎるため、耐常温時構成が優れない。
【0047】
表4より、本発明の製造方法によれば、BH性と耐常温時効性に優れ、コイル内の材質変動が少なく、さらに表面性状が良好な冷延鋼板が得られることが確認された。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、N含有量を極めて低いレベルに制御し、実質的にCのみによりBH効果を得ることができるので、BH性と耐常温時効性に優れ、コイル内の材質変動が少なく、成形性に優れ、さらに表面性状が良好な冷延鋼板を得ることができる。
Claims (4)
- 重量%で、
C :0.0010〜0.0025%、
Si:0.05%以下(0.0080%以下を除く)、
Mn:0.36〜0.8%、
P :0.01〜0.08%、
S :0.003〜0.02%、
sol.Al:0.03〜0.1%、
Nb:0.003〜0.02%
N:0.0012%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつNb≦93/12Cを満たすことを特徴とするコイル内の材質変動の少ない冷延鋼板。 - さらに、重量%で、Ti:0.001〜0.02%を含有し、かつTi≦48/32S+48/14Nを満たすことを特徴とする請求項1に記載のコイル内の材質変動の少ない冷延鋼板。
- さらに、重量%で、B:0.0001〜0.0010%を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイル内の材質変動の少ない冷延鋼板。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷延鋼板を製造するにあたり、スラブを熱間圧延した後に冷間圧延し、次いで平均20℃/sec以上で800〜870℃の温度まで昇温し、その温度で保持することなく、または所定時間保持した後に、600℃まで3〜20℃/secの速度で冷却することを特徴とするコイル内の材質変動の少ない冷延鋼板の製造方法。
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