JP2002155317A - 深絞り性および耐2次加工脆性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

深絞り性および耐2次加工脆性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

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JP2002155317A
JP2002155317A JP2000348971A JP2000348971A JP2002155317A JP 2002155317 A JP2002155317 A JP 2002155317A JP 2000348971 A JP2000348971 A JP 2000348971A JP 2000348971 A JP2000348971 A JP 2000348971A JP 2002155317 A JP2002155317 A JP 2002155317A
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JP2000348971A
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Takashi Iwama
隆史 岩間
Saiji Matsuoka
才二 松岡
Tetsuo Shimizu
哲雄 清水
Kazuaki Kyono
一章 京野
Takashi Sakata
坂田  敬
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JFE Steel Corp
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Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 深絞り性、耐2次加工脆性およびめっき特性
に優れ、しかも引張り強さが 400 MPa程度以上の高強度
溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。 【解決手段】 C:0.0005〜0.008 mass%、Si:0.1 〜
1.5 mass%、Mn:0.5 〜3.0 mass%、P:0.02〜0.2 ma
ss%、S:0.02mass%以下、Al:0.005 〜0.20mass%、
N:0.01mass%以下、B:0.0005〜0.008 mass%、Mo:
0.05〜2.0mass %およびNb:0.001 〜0.2 mass%でか
つ、0.3 ×(C/12)≦Nb/93≦3.0 ×(C/12)を満
足する範囲で含有する組成になる鋼スラブを、 950〜13
00℃で加熱−均熱後、 650〜1000℃で熱間圧延を終了し
たのち、 400〜850 ℃で巻取り、ついで黒皮スケールが
付着したまま 600〜900 ℃の温度域にて10分以上の焼鈍
を施し、酸洗し、50〜95%の圧下率で冷間圧延したの
ち、連続溶融亜鉛めっき設備にて700〜950 ℃で再結晶
焼鈍してから溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車の車体用
鋼板等のように、曲げ加工やプレス成形加工、絞り加工
などが施される用途に用いて好適な高強度溶融亜鉛めっ
き鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、環境問題による自動車の排気ガス
規制などから、燃費向上のために車体の軽量化に対する
要請が高まっている。また、自動車の安全性向上も重要
な課題となっている。そこで、かような問題の対応策の
一つとして、引張り強さが 400 MPa程度以上で、しかも
優れたプレス成形性を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板
が要求されている。
【0003】しかしながら、一般に冷延鋼板は、高強度
化に伴って深絞り性すなわちランクフォード値(r値)
や、引張り強さ(TS)と延性(El)のバランスが劣化
し、まためっき特性などの表面特性も劣化する傾向にあ
る。従って、自動車用鋼板として供するためには、高強
度化と共に、深絞り性およびめっき特性を向上させるこ
とが重要になる。
【0004】これまで、高強度化に伴って劣化する傾向
にあった深絞り性を改善するため、各種の方法が提案さ
れている。例えば、特開昭63−100158号公報には、Cを
低減した極低炭素鋼をベースとして、加工性と時効性を
改善するために炭窒化物形成成分であるTi, Nbなどを添
加し、さらに加工性に悪影響を及ぼさない元素であるS
i, Mn, Pの添加によって主に高強度化を図り、これに
よって、成形性を向上させた高強度冷延鋼板が提案され
ている。
【0005】Siは、r値やElなどを劣化させることなく
高強度化を図る上では有効な成分ではあるものの、多量
のSiを含有させると表面特性の劣化が避け難く、めっき
特性が著しく劣化するという問題がある。また、Pは、
特に極低炭素鋼においては、耐2次加工脆性を劣化させ
るという問題があった。さらに、Mnは、その含有量によ
っては、めっき特性を劣化させたり材質を劣化させる等
の不都合が発生するという問題があった。
【0006】また、特開平5−339641号公報には、極低
炭素鋼にNbを添加し、さらに高強度化を図るためにSi,
Mn, Pを適量添加した鋼を、フェライト域にて潤滑熱延
を行うことによってr値を向上させた、高強度冷延鋼板
および溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されてい
る。この技術によれば、引張り強さが 400 MPa程度以上
で、しかも高いr値を有する深絞り用高強度鋼板の製造
が可能とはなるものの、熱間圧延時に潤滑圧延を施さな
ければならないため、圧延時のスリップや噛み込み不良
等の問題が発生するおそれがある。また、上述したSi添
加に伴うめっき特性の劣化に関しては、なんら言及され
ておらず、めっき特性に関する記述さえもない。
【0007】一方、合金化溶融亜鉛めっき用の鋼板を高
強度化する手段としては、特開平5−255807号公報に開
示されているように、Siを0.03wt%以下に制限し、強化
成分として主にP, Mnを用いる方法が一般的であった。
しかしながら、多量のPの添加は、溶融亜鉛めっき鋼板
の合金化を遅延させるとともに、耐2次加工脆性が劣化
するという問題があった。また、Mnも、めっき特性への
影響は少ないとはいえ、Siが 0.1wt%以下に制限された
状態では、Mn量が1wt%以上になるとめっき特性が劣化
し始め、多量に含有させると変態点が低下して熱延板が
硬化したり、焼鈍時に再結晶しない等の材質劣化につな
がる不都合が発生するという問題があった。
【0008】耐2次加工脆性の劣化に関しては、その改
善手段としてBを添加する方法が一般的に知られてお
り、さらに特開平10−17994 号公報には、SおよびNの
積極的な添加により、合金化溶融亜鉛めっき鋼鈑の耐2
次加工脆性を改善する技術が開示されている。しかしな
がら、SおよびN成分はいずれも、スラブ加熱〜熱間圧
延〜巻取り工程において化合物を形成する傾向が見られ
る。例えば、S成分はTiS およびMnSなどの化合物を、
また、N成分はTiN,AlN およびBNなどの化合物をそれぞ
れ形成する傾向がある。
【0009】このように、鋼中のP、MnおよびB量の調
整だけで、深絞り性、耐2次加工脆性およびめっき特性
を維持しつつ高強度化を図るには自ずと限界があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の問
題を有利に解決するもので、引張り強さが 400 MPa程度
以上で、優れた深絞り性および耐2次加工脆性を有し、
まためっき特性にも優れた、高強度溶融亜鉛めっき鋼板
の有利な製造方法を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、強化成分と
してSi, Mn, Pを活用すると共に、炭化物形成元素とし
てNbを添加しかつ耐2次加工脆性向上元素としてMoを添
加した鋼を用い、かような鋼種において、深絞り性とめ
っき特性とを両立させるためには、熱延板焼鈍を黒皮ス
ケールを付着させたままで行うことが極めて有効である
ことの知見を得た。本発明は、上記の知見に立脚するも
のである。
【0012】すなわち、本発明の要旨構成は次のとおり
である。 1.C:0.0005〜0.008 mass%、Si:0.1 〜1.5 mass
%、Mn:0.5 〜3.0 mass%、P:0.02〜0.2 mass%、
S:0.02mass%以下、Al:0.005 〜0.20mass%、N:0.
01mass%以下、B:0.0005〜0.008 mass%、Mo:0.05〜
2.0mass %、およびNb:0.001 〜0.2 mass%でかつ、0.
3 ×(C/12)≦Nb/93≦3.0 ×(C/12)を満足する
範囲で含有し、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物
の組成になる鋼スラブを、 950〜1300℃で加熱−均熱
後、 650〜1000℃で熱間圧延を終了したのち、 400〜85
0 ℃で巻取り、ついで黒皮スケールが付着したまま 600
〜900 ℃の温度域にて10分以上の焼鈍を施し、その後、
酸洗し、50〜95%の圧下率で冷間圧延したのち、連続溶
融亜鉛めっき設備にて 700〜950 ℃で再結晶焼鈍してか
ら溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする、深絞り性お
よび耐2次加工脆性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板
の製造方法。
【0013】2.上記1において、鋼スラブが、さらに
Sb:0.001 〜0.03mass%を含有する組成になることを特
徴とする、深絞り性および耐2次加工脆性に優れた高強
度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0014】3.上記1または2において、鋼スラブ
が、さらにTi:0.002 〜0.05mass%を、Ti/48≦1.5 ×
(N/14+S/32)を満足する範囲において含有する組
成になることを特徴とする、深絞り性および耐2次加工
脆性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0015】4.上記1、2または3において、鋼スラ
ブが、さらにCu:0.02〜2.0 mass%およびNi:0.02〜2.
0 mass%のうちから選んだ1種または2種を含有する組
成になることを特徴とする、深絞り性および耐2次加工
脆性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の基礎となった研究
結果についてを述べる。表1に示す成分組成を有する3
種類の鋼A〜Cのシートバーを、1250℃に加熱−均熱
後、仕上温度が 900℃となるように3パス圧延を行って
板厚:3.5 mmの熱延板とした。ついで、この黒皮スケー
ルが付着したままの熱延板を、500 〜1000℃の温度域で
l時間焼鈍したのち、酸洗した。その後、80%の圧下率
で冷間圧延したのち、850 ℃、40sの再結晶焼鈍を施
し、ついで 450〜500 ℃の温度域まで急冷してから、Al
を0.13mass%含有する溶融亜鉛めっき浴に浸漬してめっ
きを施し、ついで 450〜550 ℃の温度で合金化処理(め
っき層中のFe含有率:約10mass%)を施した。
【0017】
【表1】
【0018】図1は、r値に及ぼす鋼組成、特にNb成分
と熱延板焼鈍温度の影響について調べた結果を示したも
のであり、鋼AはNb添加鋼、鋼BはNb非添加鋼である。
なお、r値は、rL (圧延方向)、rD (圧延方向に対
し45°)、rC (圧延方向に対し90°)の3方向の平均
値 r値=(rL +2rD +rC )/4 として求めた。
【0019】図1から、Nb添加鋼の鋼Aでは、熱延板焼
鈍温度を 600〜900 ℃とすることによって、高いr値が
得られているのがわかる。一方、Nb非添加鋼の鋼Bで
は、熱延板焼鈍温度を変化させても、高いr値を得るこ
とはできなかった。
【0020】次に、鋼組成、特にMo成分が焼鈍後の熱延
板の耐2次加工脆性に及ぼす影響について調べた。図2
は、Mo添加鋼である鋼AとMo非添加鋼である鋼Cとを用
い、これらの耐2次加工脆性の良否を表す因子として知
られている脆性遷移温度(Tcr)を測定し、これらの測
定値を熱延板焼鈍温度に対してプロットしたものであ
る。
【0021】尚、熱延板の耐2次加工脆性は、焼鈍後の
熱延板より78mmφの試験片を打ち抜いた後、この試験
片を38mmφの球頭ポンチにて絞り抜き、得られたカッ
プを深さ35mmの位置で切断した後、種々の温度(温度
誤差:±1℃)に10分間以上保持した後、試験台に横向
きに置き、このカップに対して重錘(錘or重り)の重量
5kg、落下高さ80cmの落重試験を行い、割れが発生し
ない最低の温度をTcrとして測定し、この測定値から評
価した。耐2次加工脆性の合否判定は、Tcrが-45 ℃以
下のときを合格、-45 ℃超えのときを不合格とした。
【0022】図2から、Mo添加鋼である鋼Aは、600 〜
900 ℃の熱延板焼鈍温度範囲にわたって耐2次加工脆性
に優れているのがわかる。一方、Mo非添加鋼である鋼C
は、600 ℃の熱延板焼鈍温度を除いて、耐2次加工脆性
が合格レベルにはなかった。
【0023】ここに、r値および耐2次加工性に及ぼす
鋼組成および熱延板焼鈍の影響については、次のように
考えられる。
【0024】すなわち、r値に関して言えば、本発明鋼
のようにPを含有する場合、Ti添加鋼では、600 ℃以上
の熱延板焼鈍時にTiとPの化合物が形成され、その後の
冷延−焼鈍過程において{111}再結晶集合組織の形
成が阻害されるため、r値は低下する。この点、Nb添加
鋼では、Ti添加鋼に比べてP化合物が形成されにくく、
しかも 600℃以上の高温焼鈍によってNbCが粗大化する
ため、冷延−焼鈍後に{111}再結晶集合組織が強く
発達してr値が向上する。なお、焼鈍温度が 900℃を超
えると、熱延板結晶粒が異常粒成長するため、r値が急
激に低下する。
【0025】また、耐2次加工脆性に関して言えば、本
発明鋼のような極低炭素でかつP、BおよびNbを添加し
た鋼の場合、スラブ加熱〜熱間圧延〜巻取り工程におい
て、BNが生成する傾向にあり、さらに引き続き行われ
る熱延板焼鈍工程では、Pの粒界偏析が促進される。そ
の結果、熱延板焼鈍後の鋼鈑においては、粒界脆化要因
であるPの粒界偏析および固溶B量の減少により、耐2
次加工脆性が顕著に低下し、それが起因となり、冷間圧
延の際に鋼鈑が破断し、生産に支障をきたすことがあ
る。さらに、BNは、冷間圧延後の再結晶焼鈍時および
めっき合金化後においても残存するため、合金化溶融亜
鉛めっき鋼鈑においても耐2次加工脆性の低下が生じ
る。
【0026】この点、Mo添加鋼では、耐2次加工脆性を
改善する効果があることが明らかとなった。その理由は
現時点では明らかではないが、PやBの粒界偏析量には
影響を与えないことから、Moには、粒界偏析したPが粒
界を脆化させる作用を軽減する働きがあるものと考えら
れる。
【0027】また、めっき特性に関しては、図では特に
示さなかったが、Si含有量が 0.7mass%と高い場合であ
っても、黒皮スケールが付着したままの状態で熱延板焼
鈍を施すことによって製造した本発明鋼は、熱延板焼鈍
温度が高いほど不めっき率は低減し、 600℃以上の高温
焼鈍では、実用上問題のないめっき特性が得られること
が確認された。尚、黒皮スケールが付着したままの状態
で熱延板焼鈍を施すことによってめっき性が改善される
理由は、必ずしも明確に解明されたわけではないが、黒
皮スケールままでの熱延板焼鈍により熱延板の表層部に
酸化物が形成され、この酸化物によってSiの表面濃化が
抑制されるためではないかと考えられる。
【0028】次に、本発明において、鋼素材の成分組成
範囲を前記の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.0005〜0.008 mass% C量は、少ないほど深絞り性が向上するので有利である
が、0.008 mass%以下ではさほど悪影響を及ぼさない。
一方、0.0005mass%よりも少なくしても深絞り性のそれ
以上の向上は見られず、製鋼コストの上昇を招くだけな
ので、C量は0.0005〜0.008 mass%の範囲に限定した。
【0029】Si:0.1 〜1.5 mass% Siは、深絞り性をあまり劣化させずに高強度化する作用
がある元素であり、所望の強度に応じて必重量添加され
る。しかしながら、Si含有量が 0.1mass%未満ではその
添加効果に乏しく、一方、 1.5mass%を超えると、深絞
り性が劣化するだけでなく、めっき特性も劣化するの
で、Si量は 0.1〜1.5 mass%の範囲に限定した。
【0030】Mn:0.5 〜3.0 mass% Mnは、鋼を強化する作用がある元素であり、所望の強度
に応じて必要量添加されるが、Mn含有量が 0.5mass%未
満では強度改善効果に乏しく、一方、 3.0mass%を超え
ると深絞り性の劣化を招くので、Mn量は 0.5〜3.0 mass
%の範囲に限定した。
【0031】P:0.02〜0.2 mass% Pは、深絞り性をあまり劣化させずに高強度化する作用
がある元素であり、所望の強度に応じて必要量添加され
る。しかしながら、P含有量が0.02mass%未満ではその
添加効果に乏しく、一方、 0.2mass%を超えると深絞り
性の劣化を招くので、P量は0.02〜0.2 mass%の範囲に
限定した。
【0032】S:0.02mass%以下 S量は、少ないほど深絞り性が向上するので極力低減す
ることが望ましいが、含有量が0.02mass%以下ではさほ
ど悪影響を及ぼさないので、S量は0.02mass%以下に限
定した。
【0033】Al:0.005 〜0.20mass% Alは、脱酸により、炭窒化物形成元素の歩留りを向上さ
せる有用元素であるが、Al含有量が 0.005mass%に満た
ないとその添加効果に乏しく、一方、0.20mass%を超え
て添加してもより一層の脱酸効果は得られないので、Al
量は 0.005〜0.20mass%の範囲に限定した。
【0034】N:0.01mass%以下 N量は、少ないほど深絞り性が向上するので極力低減す
ることが望ましいが、N含有量が0.01mass%以下ではさ
ほど悪影響を及ぼさないので、N量は0.01mass%以下に
限定した。
【0035】B:0.0005〜0.008 mass% Bは、粒界に偏析することによって、耐2次加工脆性を
改善する効果のある元素である。しかしながら、B含有
量が0.0005mass%未満ではその添加効果に乏しく、一
方、 0.008mass%を超えるとその効果は飽和に達し、む
しろ深絞り性の劣化につながるので、B量は0.0005〜0.
008 mass%の範囲に限定した。
【0036】Mo:0.05〜2.0mass % Moは本発明において重要な元素であり、めっき性を劣化
させずに高強度化できる効果を有するとともに、耐2次
加工脆性の改善効果を有する。しかしながら、Mo含有量
が0.05mass%未満だとその添加効果に乏しく、一方、2.
0mass %を超えるとその効果は飽和に達し、むしろ深絞
り性の劣化につながるので、Mo量は0.05〜2.0mass %の
範囲に限定した。
【0037】Nb:0.001 〜0.2 mass%かつ 0.3×(C/
12)≦Nb/93≦3.0 ×(C/12) Nbは、本発明において重要な元素であり、鋼中の固溶C
をNbCとして析出固定して低減し、再結晶焼鈍時に{1
11}再結晶集合組織を発達させて深絞り性を向上させ
る効果がある。しかしながら、Nb含有量が 0.001mass%
に満たないとその添加効果に乏しく、一方、 0.2mass%
を超えると逆に深絞り性を劣化させる。また、Nb量が
0.3×(C/12)より少ないと、鋼中に多量の固溶Cが
残留するため再結晶焼鈍時に{111}再結晶集合組織
が発達せずr値が劣化する。一方、Nb量が 3.0×(C/
12)より多いと、固溶Nbが多量に残留し、熱延板焼鈍時
にNbがPとの化合物を形成してr値を劣化させる。従っ
て、Nb量は 0.001〜0.2 mass%でかつ、0.3 ×(C/1
2)≦Nb/93≦3.0 ×(C/12)を満足する範囲に限定
した。
【0038】以上、必須成分について説明したが、本発
明では、その他にも必要に応じて、以下の元素を適宜含
有させることができる。
【0039】Sb:0.001 〜0.03mass% Sbは、表面に濃化することにより、熱延板焼鈍時の浸窒
を効果的に防止するだけでなく、めっき性の改善にも有
効に寄与する元素である。しかしながら、Sb含有量が0.
001 mass%未満ではその添加効果に乏しく、一方、0.03
mass%を超えて添加してもその効果は飽和に達し、逆に
深絞り性の劣化につながるので、Sbは 0.001〜0.03mass
%の範囲に限定した。
【0040】Ti:0.002 〜0.05mass%かつTi/48≦1.5
×(N/14+S/32) Tiは、鋼中の固溶N, SをTiN, TiSとして析出固定し
て低減し、深絞り性を向上させる有用元素である。しか
しながら、Ti含有量が 0.002mass%未満ではその添加効
果に乏しく、一方、0.05mass%を超えたり、Ti/48>1.
5 ×(N/14+S/32)になると、熱延板焼鈍時にTiと
Pの化合物を形成されるため、冷延−焼鈍時に{11
1}再結晶集合組織の発達が抑制されてr値の低下を招
く。従って、Ti量は0.002 〜0.05mass%でかつTi/48≦
1.5 ×(N/14+S/32)を満足する範囲に限定した。
【0041】Cu:0.02〜2.0 mass%、 Ni :0.02〜2.0
mass% CuおよびNiはいずれも、めっき性を劣化させずに高強度
化できる効果を有する元素である。しかしながら、Cuお
よびNiの含有量が0.02mass%未満では添加の効果がな
く、一方、 2.0mass%を超えて添加すると深絞り性が劣
化するので、いずれも0.02〜2.0mass %の範囲に限定し
た。
【0042】次に、本発明の各製造工程について説明す
る。 熱間圧延工程 本発明では、上記組成になる鋼スラブを 950〜1300℃で
加熱−均熱後、 650〜1000℃で熱間圧延を終了したの
ち、 400〜850 ℃で巻取る必要がある。鋼スラブを加熱
−均熱処理する場合、処理温度は低い方が固溶C、Nを
炭窒化物として析出固定させる上で有利であり、スラブ
の加熱−均熱温度が1300℃を超えると、固溶C、Nを炭
窒化物として析出固定させることが困難になるととも
に、熱間圧延時に析出する炭窒化物が非常に微細にな
り、この微細な炭窒化物は、その後に行われる熱延板焼
鈍工程や冷間圧延及び焼鈍工程でも十分には粗大化する
ことができず、この結果、再結晶焼鈍時に{111}再
結晶集合組織の発達を抑制し、r値の低下を招くからで
ある。従って、スラブの加熱−均熱温度(SRT)は13
00℃以下に限定した。尚、より一層加工性を向上させる
ためには、1250℃以下とすることが望ましい。また、加
熱−均熱温度を 950℃よりも低くしても、それ以上の加
工性の改善効果は見られず、むしろ熱間圧延時における
圧延負荷の増大に伴う圧延トラブルの発生が懸念される
ので、加熱−均熱温度の下限は 950℃とした。
【0043】また、熱間圧延時の仕上温度(FDT)
は、Ar3変態点以上のγ域(オーステナイト域)または
Ar3変態点以下のα域(フェライト域)でもよいが、仕
上温度があまりに高いと、熱延板の結晶粒が粗大とな
り、深絞り性が劣化する。一方、仕上温度が低すぎる
と、熱間圧延時の圧延負荷の増大につながるので、仕上
温度は 650〜1000℃の範囲に限定した。なお、熱延板の
結晶粒を微細粒化させる目的のためには、仕上温度は80
0 〜1000℃とするのが好ましい。より好適にはAr3変態
点〜1000℃の範囲である。また、熱間圧延によって熱延
板の結晶粒を微細化するためには、熱間圧延時における
トータル圧下率は70%以上とすることが好ましい。
【0044】さらに、熱間圧延後のコイル巻取り温度
(CT)は、高温ほど前述した炭窒化物の粗大化に有利
なだけでなく、黒皮スケールが厚くなるので、黒皮スケ
ールままで熱延板焼鈍を行った時に、熱延板表層部に多
量の酸化物が形成され、Siの表面濃化を防止できるの
で、めっき性の改善に有利である。ここに、巻取り温度
が400 ℃未満ではその効果がなく、一方、 850℃を超え
ると結晶粒が粗大化しすぎ、逆にr値が低下するので、
コイル巻取り温度は 400〜850 ℃の範囲に限定した。
尚、コイル巻取り温度は、より好ましくは600 〜850 ℃
である。また、本発明鋼のスラブは、連続鋳造されたも
のを一旦、Ar3変態点以下まで冷却したものを再加熱し
ても良いし、また、Ar3変態点まで冷却せずにそのまま
加熱あるいは保熱されたものを使用しても良いのはいう
までもない。
【0045】熱延板焼鈍工程 この工程は、高いr値を得ると共に、Si含有鋼のめっき
特性を改善する上で極めて重要であり、黒皮スケールを
付着させたまま 600〜900 ℃の温度域にて10分以上焼鈍
する必要がある。すなわち、熱延板酸洗後に焼鈍して
も、熱延板表層部にSiの濃化を抑制する酸化物が形成さ
れないので、めっき特性は改善されないが、この発明で
は、黒皮スケールを付着させたまま焼鈍することによっ
て、熱延板の表層部に酸化物が形成され、この酸化物に
よってSiの表面濃化が抑制される結果、めっき特性が改
善されるのである。また、焼鈍温度が 600℃未満では、
NbCの粗大化が進まないため、r値が向上しない。一
方、900 ℃を超える温度域で焼鈍すると、熱延板が異常
粒成長するため、r値が劣化する。従って、熱延板焼鈍
条件は 600〜900 ℃の範囲に限定した。また、焼鈍時間
は、10分未満だとNbCの粗大化が十分に進まないので、
この発明では、10分以上に限定した。なお、焼鈍雰囲気
は任意でよく、例えば通常の窒素雰囲気または水素雰囲
気にすることができる。
【0046】冷間圧延工程 この工程は、高いr値を得るために必要であり、そのた
めには冷延圧下率を50%以上とする必要がある。すなわ
ち前記圧下率が50%に満たないと、優れた深絞り性が得
られないからである。しかしながら、圧下率があまりに
大きいと逆にr値が低下するので、圧下率の上限は95%
とした。
【0047】焼鈍・溶融亜鉛めっき工程 冷間圧延工程を経た冷延鋼板は、再結晶焼鈍を施す必要
がある。この再結晶焼鈍は、通常、連続溶融亜鉛めっき
ラインで行い、焼鈍温度は 700〜950 ℃とする必要があ
る。すなわち、焼鈍温度が 700℃未満では再結晶が完了
しないため、優れた深絞り性が得られず、一方、 950℃
よりも高いとγ域焼鈍になって深絞り性が劣化するから
である。ついで、焼鈍後、 380〜530 ℃の温度域に急冷
するのが好ましい。急冷停止温度が 380℃未満では不め
っきが発生するおそれがあり、一方、 530℃超ではめっ
き表面にむらが発生しやすくなるからである。
【0048】上記熱処理に引き続いて、溶融亜鉛めっき
浴に浸漬して、めっきする。この時、めっき浴のAl濃度
は0.12〜0.145 mass%程度とするのが好ましい。浴中の
Al含有量が0.12mass%未満では合金化が進み過ぎてめっ
き密着性(耐パウダリング性)が劣化する傾向があり、
一方、 0.145mass%超では不めっきが発生しやすくなる
からである。なお、めっきに引き続いて加熱による合金
化を施す場合には、めっき層中のFe含有率が9〜12mass
%となるように実施するのが好ましい。
【0049】亜鉛めっき後の鋼板(具体的には鋼帯)に
は、形状矯正、表面粗度等の調整のために、10%以下の
調質圧延を加えてもよい。また、本発明方法では、亜鉛
めっき後に特殊な処理を施して、化成処理性、溶接性、
プレス成形性および耐食性等の一層の改善を図ることも
できる。尚、上述したところは、この発明の実施形態の
一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更
を加えることができる。
【0050】
【実施例】表2に示す成分組成になる鋼スラブを、表3
に示す熱延条件にて板厚:3.5 mmの熱延鋼帯にしたの
ち、黒皮スケールが付着したまま、または酸洗後に、バ
ッチ焼鈍を施した。バッチ焼鈍は、表3中のNo.3につい
てのみ水素雰囲気中で行い、それ以外は窒素雰囲気中で
行った。ついで、酸洗後、冷間圧延にて板厚:0.7 mmの
冷延鋼帯としたのち、連続溶融亜鉛めっきラインにおい
て、再結晶焼鈍と合金化溶融亜鉛めっき処理を施した。
なお、めっき浴温は 460〜480 ℃、浸漬時の板温はめっ
き浴温以上、(めっき浴温+10℃)以下とし、また合金
化処理は 480〜540 ℃の温度範囲で15〜28秒間加熱保持
することによって行った。その後、鋼帯に 0.7%の調質
圧延を施した。
【0051】かくして得られた溶融亜鉛めっき鋼板の材
料特性である降伏応力(YS)、引張り強さ(TS)、
延性(EI)、ランクフォード値(r値)、並びに熱延
板および溶融めっき板のTcrと、めっき特性について調
べた結果を、表3に併記する。なお、引張特性はJIS
5号引張試験片を使用して測定した。また、r値は、15
%引張り予ひずみを与えたのち、3点法にて測定し、L
方向(圧延方向)、D方向(圧延方向に対し45°方向)
およびC方向(圧延方向に対し90°方向)の平均値をr
=(rL 十2rD +rC )/4として求めた。熱延板の
耐2次加工脆性の評価については、前述したのと同様の
方法にて実施および合否判定を行った。加えて、合金化
溶融亜鉛めっき鋼板の耐2次加工脆性の評価について
も、熱延板と同様の方法にて実施および合否判定を行っ
た。但し、試験片は、50mmφの大きさに打ち抜き、2
4.4mmφの球頭ポンチにて絞り抜いた後、得られたカ
ップを深さ21mmの位置で切断して試験に供した。さら
に、めっき特性は、不めっきの発生状況を目視にて判定
した。表3中の「○」は、めっき特性が実用上問題のな
い合格レベルにあることを示しており、また、「×」
は、めっき特性が合格レベルにないことを示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】表3に示す評価結果から、本発明に従って
得られた溶融亜鉛めっき鋼板(発明例)はいずれも、引
張り強さが 400 MPa以上と高く、また比較材(比較例)
に比べて、深絞り性は勿論のこと、耐2次加工脆性およ
びめっき特性も優れているのがわかる。
【0055】
【発明の効果】かくして、本発明に従い、鋼組成を調整
した上で、特に熱延板焼鈍を黒皮スケールを付着させた
まま行うことにより、従来よりも格段に優れた深絞り
性、耐2次加工脆性およびみっき特性を有する高強度溶
融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Nb添加鋼とNb非添加鋼において、r値と熱延
板焼鈍温度の関係を示した図である。
【図2】 Mo添加鋼とMo非添加鋼において、Tcrと熱延
板焼鈍温度の関係を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 哲雄 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 京野 一章 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 坂田 敬 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4K037 EA01 EA02 EA04 EA15 EA16 EA17 EA18 EA19 EA23 EA25 EA27 EA28 EB02 EB03 EB09 FA01 FA02 FA03 FC02 FC03 FC04 FE01 FE02 FE03 FF02 FF03 FG03 GA05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.0005〜0.008 mass%、 Si:0.1 〜1.5 mass%、 Mn:0.5 〜3.0 mass%、 P:0.02〜0.2 mass%、 S:0.02mass%以下、 Al:0.005 〜0.20mass%、 N:0.01mass%以下、 B:0.0005〜0.008 mass%、 Mo:0.05〜2.0mass %、および Nb:0.001 〜0.2 mass%でかつ、 0.3 ×(C/12)≦Nb/93≦3.0 ×(C/12) を満足する範囲で含有し、残部は実質的にFeおよび不可
    避的不純物の組成になる鋼スラブを、 950〜1300℃で加
    熱−均熱後、 650〜1000℃で熱間圧延を終了したのち、
    400〜850 ℃で巻取り、ついで黒皮スケールが付着した
    まま 600〜900 ℃の温度域にて10分以上の焼鈍を施し、
    その後、酸洗し、50〜95%の圧下率で冷間圧延したの
    ち、連続溶融亜鉛めっき設備にて 700〜950 ℃で再結晶
    焼鈍してから溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする、
    深絞り性および耐2次加工脆性に優れた高強度溶融亜鉛
    めっき鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、鋼スラブが、さらに
    Sb:0.001 〜0.03mass%を含有する組成になることを特
    徴とする、深絞り性および耐2次加工脆性に優れた高強
    度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、鋼スラブ
    が、さらにTi:0.002 〜0.05mass%を、Ti/48≦1.5 ×
    (N/14+S/32)を満足する範囲において含有する組
    成になることを特徴とする、深絞り性および耐2次加工
    脆性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1、2または3において、鋼スラ
    ブが、さらにCu:0.02〜2.0 mass%およびNi:0.02〜2.
    0 mass%のうちから選んだ1種または2種を含有する組
    成になることを特徴とする、深絞り性および耐2次加工
    脆性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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