JP3596398B2 - 焼付硬化性と耐常温時効性に優れた冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主として自動車用外板などに用いられる冷延鋼板(冷延鋼板に亜鉛めっきなどの表面処理を施した表面処理鋼板を含む)の製造方法に関し、特に加工性に優れ、焼付硬化性を有する、冷延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
BH鋼板は、自動車などの製造工程において行われる塗装焼付処理(170℃×20分程度の加熱工程)を利用し、固溶C、N原子によるひずみ時効現象によって部品強度が上昇する鋼板である。このBH鋼板には低炭素系鋼種、極低炭素系鋼種があるが、低炭素系は伸びおよびr値が極低炭素系と比較すると劣る。そのため自動車外板などの深絞り部品の成形には一般的に極低炭素系BH鋼板が用いられている。
【0003】
BH鋼板の要求特性としては、BH量(:焼付硬化性を表し、引張試験において2%ひずみ時の変形応力と、そこで直ちに除荷重し170℃、20分の熱処理を行った後再引張りを行った時の降伏応力の差である)が高く、常温時効量(:鋼板を製造後、ユーザーで使用までの時効による材質劣化を表し、評価は一般的に鋼板を製造後一定時間恒温保持し、YPElの発生およびYP上昇を観察することにより行う)が少ないことが必要であり、これらの特性はFe格子中の固溶C、N濃度に依存するので、固溶C、N濃度の制御が重要となる。
【0004】
一般的に固溶C、N量の制御は炭化物生成元素および窒化物生成元素の添加により行われている。炭窒化物生成元素を添加する技術として、例えば特公昭60−17004号公報にはNb添加が、特公昭61−45689号公報、特開平3−257124号公報、特開平5−230598号公報、特開平5−263184号公報にはNb−Ti添加が、特公昭60−47328号公報にはNb−Ti−B添加が、特公昭61−11296号公報にはNb−B添加がそれぞれ開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭60−17004号公報に記載のNb添加鋼は固溶C量をNbで調整し、Alで固溶N量を調整しているため、AlNの析出はAlの拡散速度に律速され、従来レベルの0.0015%を超えるNが含まれる場合、Alを添加しても実際には固溶Nが数ppm残留してしまう。
【0006】
特公昭61−45689号公報、特開平3−257124号公報、特開平5−230598号公報、特開平5−263184号公報記載のNb−Ti添加鋼では、Nの固定をより促進するためにTiを添加している。しかし、BH鋼板にTiを添加する場合、過剰に添加してC原子をTiCとして析出させてしまうとBH性そのものが失われるので、N原子のみをTiNとして析出させるために、Tiの添加量はNとの化学量論的関係から、例えばN濃度が0.0020%の時、Ti濃度は0.0069%程度としていた。しかしながらこのようなTi、N濃度領域ではオーステナイト中のTiNの析出開始温度が900℃近辺と低温になるため、熱間圧延工程で析出するTiN析出物サイズが極めて細かくなり、この析出物が強度を上昇させ、成形性を劣化させる問題がある。
【0007】
特公昭61−11296号公報記載のNb−B添加鋼もNb−Ti添加鋼と同様にBNとして固溶Nの低減を狙っているが、Bが粒界に偏析することによりr値を低下させるという問題がある。
【0008】
さらに、一般的にBH量と常温時効量は比例するため、高いBH量を得ようとすると常温時効により材質が劣化する。一方、常温時効での特性安定性を求めるとBH量が不足した。
【0009】
上記のように従来技術により得られるBH鋼板は諸々の問題点を有している上に、特性面でBH性と耐常温時効性との両立が困難であった。
【0010】
また、鋼板を製造するにあたっては、製鋼工程でのC、N制御が非効率かつ不安定であったため、固溶C、Nを最適に制御することができなかった。すなわち、従来の製鋼法では、脱珪、脱燐を脱炭、脱窒工程で同時に行うもしくは溶銑予備処理工程として脱燐工程などを備えてC、N制御を行っていたが、燐、珪素の低減が不十分であり、そのため所望のC、N濃度に調整するために非常に長い処理時間を要するばかりか、安定制御が不可能でチャージ間のばらつきが大きかった。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、BH量を安定して確保しつつ常温時効を抑制した、焼付硬化性と耐常温時効性のバランスに優れ、成形性低下などの窒化物起因の問題点がない、冷延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために、固溶C、Nのひずみ時効挙動について詳細に検討を重ねた結果、鋼中C、N濃度を限られた範囲に制御することで、BH性と耐常温時効性を両立し、さらに自動車外板などのプレス素材として最適な特性が得られることを見出した。
【0013】
つまりC濃度を調整することにより、BH量を最適化し、C+Nを制御することにより耐常温時効性を優れたものとした。さらにC/Nを1以上にすることによりBH性と常温時効性のバランスを向上させた。また、さらにN濃度を従来にない極めて低いレベルで制御するとコイル内での材質変動の抑制に対して極めて良好な領域があることをも見出し、本発明に至った。
【0014】
製造方法においては、製鋼工程において脱燐工程、脱珪工程、脱炭工程、脱窒工程および真空脱ガス工程を各々独立して行い、溶鋼を成分制御し、さらに薄鋼板製造工程での浸炭、浸窒を抑制することにより、鋼中の総炭素、窒素濃度を従来にない極めて低いレベルにしかも安定的に制御することを見出した。
【0015】
本発明はかかる知見に基づきなされたもので、以下のような構成を有する。
[1] 溶鋼を、重量%で、C:0.0010〜0.0035%、Si:0.05%以下、Mn:0.17〜0.80%、P:0.01〜0.08%、S: 0.003〜0.02%、SolAl:0.03〜0.1%、Nb:0.003〜0.02%かつ93/12[C%]以下、N:0.0010%以下を含み、さらにC+N≦0.0035%かつC/N≧1となるように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分に制御後、連続鋳造によりスラブとし、熱間圧延、冷間圧延を施し、次いで平均昇温速度: 20 ℃ /sec 以上で昇温し、次いで温度: 800 〜 870 ℃で保持し、次いで平均冷却速度: 5 〜 20 ℃ /sec で 600 ℃以下まで冷却し、さらに 100 ℃以下まで冷却後、圧延率: 1.0 〜 2.0 %の調質圧延を施すことを特徴とする焼付硬化性と耐常温時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。
【0016】
[2]上記[1]において、さらに、成分として、重量%で、Ti:0.001〜0.02%かつ48/32[S%]+48/14[N%]以下を含有することを特徴とする焼付硬化性と耐常温時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。
【0017】
[3]上記[1]または[2]において、さらに、成分として、重量%で、B:0.0001〜0.001%含有することを特徴とする焼付硬化性と耐常温時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細をその限定理由とともに説明する。
まず成分の限定理由を説明する。
【0020】
Cは固溶CまたはNbC析出物として鋼板中に存在する。それらのうち、固溶Cは、本発明に係るBH鋼板においてBH量を安定して確保するために最も重要な要件である。従って、Cの制御が極めて重要であり、Cが0.0010%未満では大部分がNbCとして析出し、BH量が不足する。一方、Cが0.0035%を超えるとBH量が大きすぎ、成形前における常温時効による材質劣化が大きくなる。以上より、Cは0.0010%〜0.0035%とする。
【0021】
Siは固溶強化元素として添加される。強度を調整するため適宜添加してよい。しかし0.05%を超えると鋼板表面性状が劣化するため、Siは0.05%以下とする。
【0022】
Mnは強度調整の目的および固溶Cとの相互作用によりBH量を安定に調整する目的で添加される。Mnが0.17%未満ではBH量が不十分となる。一方、Mnが0.80%を超えると強度が高くなりすぎ、成形性が劣化する。従って、Mnは0.17%〜0.80%とする。BH性の観点から望ましくは0.36%以上とする必要がある
Pはr値向上の目的および固溶強化元素として添加される。Pが0.01%未満ではr値が低下する。一方、Pが0.08%を超えると鋼板表面性状が劣化する。従ってPは0.01%〜0.08%とする。
【0023】
Sは不純物元素であり、鋼板の成形性を劣化させるので低減する必要がある。Sが0.02%を超えると延性劣化への影響が顕著である。一方、Sが0.003%未満に低減しても材質向上効果が得られないばかりか製造コストが極めて上昇する。従ってSは0.003%〜0.02%とする。
【0024】
AlはNを無害化するために非常に重要な元素である。Alは、Nを熱延後および焼鈍中にAlNとして析出させる働きがある。Alが0.03%未満ではNをすべて析出させることができず、そのため残留した固溶Nがひずみ時効により成形前に常温時効による材質劣化をもたらし、極めて有害である。一方、Alが0.1%を超えるとAlN析出効果は飽和し、鋼板の表面性状が劣化する。従ってAlは0.03%〜0.1%とする。
【0025】
Nbは固溶Cを最適にかつ安定的に制御する目的で添加される。Nbが0.003%未満ではこの効果が不十分である。一方、Nbが0.02%または93/12Cを超えて添加するとCの大部分がNbCとして析出し、固溶Cが少なくなるためBH量が不十分となる。従って、Nbは0.003%〜0.02%かつ93/12C以下とする必要がある。
【0026】
Nはこの発明の最も重要な要件のひとつである。NはCと比較して拡散が早いため、常温時効に対して有害であると考えられる。そのため一般にAl、Ti、Bなどの窒化物生成元素を添加して固溶Nを低減する。しかし窒化物としても今度は窒化物そのものが材質劣化、コイル内の材質ばらつきをもたらす。このような材質劣化はNが0.0015%を超えると顕著となる。従ってNは0.0015%以下とする必要がある。Nが0.0012%以下でさらにコイル内の材質変動が少なくなるので、Nは望ましくは0.0012%以下、さらに望ましくは0.0010%以下とする。
【0027】
C+Nの制御は本発明の重要な要件のひとつで常温時効に係る。C+Nが0.0035%を超えると上記の成分範囲内においてもC、Nが材質劣化をもたらす。C、N原子が固溶C、Nとして鋼中に過剰に存在すると耐常温時効性を劣化させることは勿論であるが、たとえTi、Nb、Al、Bなどの炭窒化物生成元素を添加して析出物としても、これら析出物が焼鈍時の結晶粒成長を阻害し、そのため降伏応力が増加し、調質圧延でのひずみ導入が不十分となる。このことがBH鋼板の耐常温時効特性に著しい劣化をもたらすため、C+Nは0.0035%以下としなければならない。望ましくは0.0030%以下にすることによりさらに耐常温時効性が向上する。
【0028】
C/NはBH性と耐常温時効性の両立には制御が不可欠なパラメータである。C/Nが1未満ではBH量が低いまたは常温時効による材質劣化が著しくなる。よって、C/Nは1以上とする。
【0029】
Tiはさらなるr値の向上のために必要に応じて添加される。添加する場合は0.001%〜0.02%でかつ48/32[%S]+48/14[%N]以下の範囲で行う。Tiが0.001%未満ではその効果がなく、0.02%を超えると合金化溶融亜鉛めっきを行った場合に表面性状を劣化させるので好ましくない。さらに48/32[%S]+48/14[%N]を超えるとTiCを析出し固溶C量が減少するためBH量が低下する。
【0030】
Bは粒界に偏析し、2次加工脆性を抑制する。そのため加工度が高く、使用温度が低い場合については必要に応じて添加する。Bが0.0001%未満ではその効果がなく、0.001%以上ではr値が極めて劣化するので、Bを添加する場合は0.0001〜0.001%とするのが好ましい。
【0031】
次に本発明の焼付硬化性と耐常温時効性に優れた冷延鋼板の製造方法について説明する。
まず、製鋼工程において、脱燐工程、脱珪工程、脱炭工程、脱窒工程により、溶鋼の成分を調整する。この時、従来の如く脱炭工程および脱窒工程で同時に脱珪、脱燐を行うと所望のC、N濃度を得るのに非常に長い処理時間がかかり、本発明で必須である極低C、Nを安定的に達成することが困難となる。そのため、各工程は独立して行う。またBH鋼板ではC濃度のばらつき制御が非常に重要であるので、脱炭工程、脱窒工程前に脱珪工程、脱燐工程をそれぞれ行い、燐、珪素の濃度をBH鋼板で所望の濃度レベルまで低減しておくことがC、Nの安定制御のために望ましい。
【0032】
次いで、連続鋳造によりスラブとした後、鋳造スラブはそのまま、または再加熱後熱間圧延を行う。再加熱を行う際の再加熱温度は、表面性状を向上させるため1250℃以下で行うことが望ましい。熱間圧延は仕上げ温度:Ar3以上920℃未満で仕上げることが望ましい。仕上げ温度がAr3未満の温度では鋼板表層に粗大粒を発生し、r値が劣化する。また、仕上げ温度が920℃以上では冷却中に結晶粒が成長し、r値を劣化させる。
【0033】
次いで、上記より得られた熱間圧延板は冷却速度:20℃/sec以上で700℃以下の温度まで冷却されることが望ましい。これは冷却中のフェライトの粒成長を抑制することが目的で冷却速度が20℃/sec未満ではその効果が少ない。また、冷却温度が700℃以下では実質的に粒成長は起こらないためである。熱間圧延板の巻き取りは温度:640〜700℃で行うことが望ましい。巻き取り温度が640℃未満では熱延コイル冷却中の析出物の生成および成長が十分おこらないため材質劣およびコイル内材質変動の原因となる。また、巻き取り温度が700℃を超えるとスケールが成長し、鋼板表面性状を劣化させる。
【0034】
次いで、酸洗により脱スケールし、その後、冷間圧延を行う。冷間圧延率は65〜83%が望ましい。冷間圧延率が65%未満では平均r値が低く、83%を超えるとΔrが高くなるためである。
【0035】
次いで、上記により得られた冷間圧延板を平均昇温速度:20℃/sec以上で昇温する。平均昇温速度が20℃/sec未満では良好な集合組織が成長せず、r値が低くなる。
【0036】
次いで、昇温加熱を行い、その後800〜870℃に保持する。保持温度が800℃未満ではBH量に対して常温時効量が大きくなる。また、保持温度が870℃超えでは結晶粒径が大きくなりすぎ、プレス成形すると肌荒れ欠陥が発生する上に、固溶Cが多くなりすぎ耐常温時効性が劣化する。
【0037】
次いで、600℃以下まで平均冷却速度:5〜20℃/secで冷却する。600℃まで冷却する間にCをNbCとして一部析出させる。平均冷却速度が5℃/sec未満では固溶Cが少なく、BH量が不足する。また、平均冷却速度が20℃/sec超えでは固溶Cが多くなり、耐常温時効性が劣化する。
【0038】
次いで、100℃以下まで冷却後、圧延率:1.0〜2.0%の調質圧延する。100℃を超える温度で調質圧延を行うと動的ひずみ時効および巻き取り後の時効により耐常温時効性が劣化する。圧延率が1.0%未満では調質圧延の効果が十分でなく、耐常温時効性が劣化する。また、調質圧延率が2.0%を超えると調質圧延の効果が飽和するばかりか、加工硬化により成形性が劣化する。
以上より、本発明の焼付硬化性と耐常温時効性に優れた冷延鋼板が得られる。
【0039】
なお、本発明の効果は冷延鋼板に表面処理を施すかどうかに拘わらず、得られるものであり、本発明の対象は冷延鋼板か表面処理鋼板かどうかは問わない。すなわち、通常行われる冷延鋼板に亜鉛めっき等を施した表面処理鋼板も本発明に含まれる。
【0040】
【実施例】
(実施例1)
銑鉄を脱珪工程、脱燐工程を順に行った後、脱炭工程、RH脱ガス工程により本発明範囲内に成分調整し、連続鋳造によりスラブとした。次いで、直接または再加熱により熱間圧延を板厚2.8mmまで行った。熱間圧延時の熱延開始温度は1170〜1220℃、熱間圧延完了温度は、900〜920℃であった。その後、平均冷却速度25℃/secで640℃まで冷却した後、巻き取った。次いで得られた熱間圧延板を酸洗後板厚0.7mmまで冷間圧延を行った。次いで、連続焼鈍を行った。連続焼鈍は、平均昇温速度:約25℃/secで昇温し、850℃で約60sec保持し、保持温度から600℃まで平均冷却速度:9〜15℃/secで冷却を行った。引き続き、溶融亜鉛めっきラインを用いて、合金化溶融亜鉛めっきを行った。めっき付着量は片面45g/m2、合金化処理は誘導加熱方式合金化炉を用い、500〜550℃の温度でめっき中のFe濃度を約10%に調整し行った。調質圧延は圧延率1.4%で行った。調質圧延時の板温度は約80℃であった。こうして得られた供試材の成分を表1に示す。また得られた供試材の特性評価結果を表2に示す。
【0041】
【表 1 】:
【0042】
【表2】
【0043】
r値はめっきを塩酸で剥離後圧延方向に対して0,45,90°方向の平均で測定した。
引張試験はJIS5号型引張試験片をコイル長手方向中央の材質安定部分(M部)から圧延方向に対して直角方向で採取したものを用いて実施した。
【0044】
BH量は2%の予ひずみを行ったときの変形応力と、そこで除荷重して170℃で20分間オイルバスで加熱保持後、再荷重した際の降伏応力の変化量を評価した。
【0045】
常温時効特性は38℃の恒温槽で180日保持後の降伏伸び(YPEl)で評価した。ここで、YPElはプレス成形時のストレッチャーストレインマークの発生を防止するため0.3%以下とする必要がある。
【0046】
またコイル内の材質変動を評価するためコイルトップ部(T部)から引張試験片を採取し、M部との差をΔTS(=TS(T部)−TS(M部))を測定して、コイル内の材質変動の指標とした。
表面性状の評価方法として、めっきの色むらなど表面性状の良否を目視で判定した。
【0047】
表2より、本発明鋼3 、 5 、 6はBH量が30MPa以上と良好で、かつ耐時効性の指標である38℃×180日時効後の降伏伸び(YPEl180)は0.3%以下と良好である。さらに、コイル内での強度のばらつきを示す、コイル内の材質変動(ΔTS)は10MPa以下と良好である。また、表面性状も良好であった。
【0048】
これに対し、本発明範囲から外れる比較鋼はBH量、38℃×180日時効後の降伏伸び(YPEl180)、コイル内の材質変動(ΔTS)、表面性状のいずれかの特性が少なくとも一つ以上優れなかった。
例えば、比較鋼7〜9はNが本発明範囲を外れるためコイル内の材質変動(ΔTS)が大きい。特に比較鋼8,9はコイル内の材質変動が大きい上にかつYPEl180が0.4%以上と耐時効性も劣る。
【0049】
比較鋼10はCが低いためBH量が低い。
比較鋼11,12はC+Nが高いためYPEl180が高く、耐常温時効性が劣る。比較鋼13はC/Nが1未満であるためBH量が低い。比較鋼14はC/Nが1未満であり、C+Nが0.0035%を超えるので耐常温時効性が劣る上にコイル内の材質変動が大きい。
【0050】
比較鋼15はMn濃度が低いためBH量が低い。比較鋼16はMnが高すぎるため強度が高く、延性が劣る上にYPEl180が高く、耐時効性も劣り、さらに表面性状もよくない。
【0051】
比較鋼17はP濃度が高すぎるため強度が高く、延性が劣り、さらに表面性状もよくない。
【0052】
比較鋼18はAl濃度が低いため固溶Nの抑制が不十分となりYPEl180が高く、耐時効性が劣る。またコイル内の材質変動も大きい。
比較鋼19、20はNbが0.02%または93/12Cを超えているため、BH量が低い。
【0053】
比較鋼21はTi濃度が0.02%を超えるため、BH量が低い。
【0054】
(実施例2)銑鉄を脱珪、脱燐工程、脱炭工程、RH脱ガス工程からなる製鋼工程により成分調整した表1の鋼番号3に示す成分を有する溶鋼を連続鋳造法によりスラブとした。次いで表3に示す条件で熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を行い、溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。得られた供試材の特性評価結果を表4に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
各評価方法は表2と同様の方法で行った。
【0058】
表4より、本発明鋼板C 、 F 、 I 、 L 、 Oは、BH量が30MPa以上と良好で、かつ耐常温時効性の指標である38℃×180日時効後の降伏伸び(YPEl180)も 0.3%以下と良好である。さらにコイル内での強度のばらつきを示す、コイル内の材質変動(ΔTS)は10MPa未満と良好である。また、表面性状も良好であった。
【0059】
これに対し、本発明範囲から外れる比較鋼板はBH量、38℃×180日時効後の降伏伸び(YPEl180)、コイル内の材質変動(ΔTS)、表面性状のいずれかの特性が少なくとも一つ以上優れなかった。
【0060】
比較鋼板Rは焼鈍温度が高すぎるため、耐常温時効性が劣る。
【0061】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によればBH量が安定して確保できるため焼付硬化性に優れ、かつ耐常温時効性にも優れた冷延鋼板を得ることができる。さらに本発明の製造方法によれば成形性低下などの問題がなく安定して製造することができるので、自動車用外板等に使用される材料として最適である。
【0062】
また、自動車用外板として海外で使用する場合、製造から成形までの時間が長くまた気温が日本国内より高い場合が多いので、ますます耐常温時効性が求められる。このような場合でも、本発明によれば、世の中のニーズに合致する優れたBH鋼板を提供することが可能となる。
Claims (3)
- 溶鋼を、重量%で、C:0.0010〜0.0035%、Si:0.05%以下、Mn:0.17〜0.80%、P:0.01〜0.08%、S: 0.003〜0.02%、SolAl:0.03〜0.1%、Nb:0.003〜0.02%かつ93/12[C%]以下、N:0.0010%以下を含み、さらにC+N≦0.0035%かつC/N≧1となるように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分に制御後、連続鋳造によりスラブとし、熱間圧延、冷間圧延を施し、次いで平均昇温速度: 20 ℃ /sec 以上で昇温し、次いで温度: 800 〜 870 ℃で保持し、次いで平均冷却速度: 5 〜 20 ℃ /sec で 600 ℃以下まで冷却し、さらに 100 ℃以下まで冷却後、圧延率: 1.0 〜 2.0 %の調質圧延を施すことを特徴とする焼付硬化性と耐常温時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。
- さらに、成分として、重量%で、Ti:0.001〜0.02%かつ48/32[S%]+48/14[N%]以下を含有することを特徴とする請求項1記載の焼付硬化性と耐常温時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。
- さらに、成分として重量%で、B:0.0001〜0.001%含有することを特徴とする請求項1または2記載の焼付硬化性と耐常温時効性に優れた冷延鋼板の製造方法。
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