JP3548461B2 - 耐食性と耐腐食疲労特性に優れた構造用鋼及びその製造方法 - Google Patents

耐食性と耐腐食疲労特性に優れた構造用鋼及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高張力棒鋼・線材・機械構造用鋼、又は造船、建築、橋梁・橋脚、タンク、圧力容器、海洋・港湾構造物、及び化学プラント等の大型鋼構造物に適用される耐食性に優れた構造用鋼及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
腐食は単独で、あるいは、疲労破壊、不安定破壊、脆性破壊の起点となって、鋼構造物の重大損傷を引き起こす。腐食及び腐食を起点とする損傷事例は鋼構造物全体の損傷事例の大きな割合を占めるため、その改善は極めて重要である。
【0003】
鋼構造物の使用環境は幅広いが、特に腐食、腐食疲労が問題となるのは、海水環境はじめとする塩素あるいは塩化物を含む水環境である。これに対して、例えば日本鉄鋼協会第159回西山記念講座(1996)p.123にまとめられているように、従来、マリーナースチールはじめ、Cu、Ni、Cr、Pなどの合金成分を添加・増量し耐海水性を高めた鋼材がこれまで開発されてきた。更に、鋼の耐食性は、鋼中の合金成分によって決まり、鋼の組織への依存性はないというのが、これまでの知見であった。従って鋼に耐食性を付与する為には前述のような合金元素の添加が必要となるが、それによって、構造用鋼としてコスト上昇するとともに、多量の合金元素の含有により、構造用鋼として必要な溶接性や加工性が低下する問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような背景から、本発明の課題は、鋼材組織を制御する事によって、構造用鋼の耐食性、特に塩素あるいは塩化物を含む水環境での耐食性を向上させるものである。即ち、従来の構造用鋼に対しては、上述のような耐食性に有効な合金元素を添加する事なく、コスト上昇を抑え、且つ、溶接性を確保しながら、耐食性を向上する事を課題とするとともに、更に、従来の耐食構造用鋼に対しては、合金元素の節減・溶接性向上、あるいは同成分系で、従来の耐食性を更に大幅に向上させる事も課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を達成する為に、鋼の表層又は表・裏層領域におけるフェライト結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト及び/又はNb・Ti・Taの炭窒化物を析出させ、フェライトを主体、好ましくはフェライトを95%以上有する組織を平均粒径で3μm以下の超微細粒に改質するとともにパーライト分率を10%以下とする事によ、耐食性に優れた構造用鋼(溶接用構造用鋼を含む)及びその製造方法である。
【0006】
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
【0007】
(1) 重量%で、
C:0.04〜0.25%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.3〜2.0%、
S:0.01%以下
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼の表面又は表・裏面からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の表層又は表・裏層領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相を有し、且つ、前記領域はパーライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織で構成される事を特徴とする耐食性に優れた構造用鋼。
【0008】
(2) 重量%で、
C:0.04〜0.25%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.3〜2.0%、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.6%
を含有し、更に、
Nb:0.005〜0.1%、
Ti:0.005〜0.05%、
Ta:0.005〜0.05%
の1種又は2種以上を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼の表面又は表・裏面からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の表層又は表・裏層領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相及び/又はNb・Ti・Taの炭窒化物相を有し、且つ、前記領域はパーライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織で構成される事を特徴とする耐食性に優れた構造用鋼。
【0009】
(3) 前記平均結晶粒径3μm以下のフェライトが95%以上である事を特徴とする上記(1)又は(2)のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼。
【0010】
(4) 更に、重量%で、
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.1〜2.0%、
Cr:0.03〜3.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
V:0.01〜0.4%、
B:0.0002〜0.002%、
P:0.15%以下
の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼。
【0011】
(5) 更に、重量%で、
Ca:0.0001〜0.02%、
Mg:0.0001〜0.02%、
REM:0.001%〜0.2%
の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼。
【0012】
(6) 重量%で、
C:0.04〜0.25%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.3〜2.0%、
S:0.01%以下
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼をAc3点以上に加熱しCを固溶させた後、熱間加工の前又は途中において、鋼の表面又は表・裏面からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の表層又は表・裏層領域を3℃/秒以上の冷却速度でフェライト分率が50%以上となる温度まで急冷した後、該表層又は表・裏層領域を復熱させる過程において、(Ac1点−150)℃以上の温度で熱間加工を開始又は再開して、(Ac1点−50)℃〜(Ac3点)℃の温度範囲で熱間加工を終了し、引き続いて前記表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱する前に冷却して、該表層又は表・裏層領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相を有し、且つ、前記領域はパーライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織で構成される事を特徴とする耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
【0013】
(7) 重量%で、
C:0.04〜0.25%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.3〜2.0%、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.6%
を含有し、更に、
Nb:0.005〜0.1%、
Ti:0.005〜0.05%、
Ta:0.005〜0.05%
の1種又は2種以上を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼をAc3点以上に加熱しC及びNb・Ti・Taの1種又は2種以上を固溶させた後、熱間加工の前又は途中において、鋼の表面又は表・裏面からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の表層又は表・裏層領域を3℃/秒以上の冷却速度でフェライト分率が50%以上となる温度まで急冷した後に、該表層又は表・裏層領域を復熱させる過程において、(Ac1点−150)℃以上の温度で熱間加工を開始又は再開して、(Ac1点−50)℃〜Ac3点の温度範囲で熱間加工を終了し、引き続いて前記表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱する前に冷却して、該表層又は表・裏層領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相及び/又はNb・Ti・Taの炭窒化物相を有し、且つ、前記領域はパーライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織で構成される事を特徴とする耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
【0014】
(8) 前記平均結晶粒径が3μm以下のフェライトが95%以上とした事を特徴とする上記(6)又は(7)のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
【0015】
(9) 熱間加工の終了後、引き続いて前記表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱させる前に、冷却速度が5℃/秒以上で加速冷却又は直接焼き入れする事を特徴とする上記(7)又は(8)のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
【0016】
(10) 加速冷却又は直接焼き入れ終了後に引き続いて、焼戻しする事を特徴とする上記(9)に記載の耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
【0017】
(11) 更に、重量%で、
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.1〜2.0%、
Cr:0.03〜3.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
V:0.01〜0.4%、
B:0.0002〜0.002%、
P:0.15%以下
の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする上記(6)〜(10)のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
【0018】
(12) 更に、重量%で、
Ca:0.0001〜0.02%、
Mg:0.0001〜0.02%、
REM:0.001%〜0.2%
の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする上記(6)〜(11)のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明者が種々の鋼の塩素を含む水環境、湿潤環境、乾湿繰り返し環境での耐食性を詳細に検討した結果、鋼組織において、フェライトを非常に微細化し、且つ、セメンタイト及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上の炭窒化物相をそれらの結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下に析出させる事で鋼の耐食性が大きく向上する事を見出した。
【0021】
又、フェライト結晶粒界及び/又は結晶亜粒界にセメンタイト及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上の炭窒化物相を0.5μm以下に析出させる為には、C及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上を含有する鋼をAc3 点以上に加熱してC及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上を固溶させた状態で、制御圧延等の熱間加工の前又は途中でフェライト分率が50%以上となる温度まで急冷して、C及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上を過飽和に固溶せしめたる後に、該鋼を復熱させる過程において熱間加工を開始又は再開してAc3点以下で熱間加工を終了し、引き続いてAc3点以上に復熱させないで冷却する事が平均粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織を効果的に確保する上で不可欠であるとの技術を発明するに至ったものである。
【0022】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0023】
Cは本発明では過飽和固溶状態から0.5μm以下にフェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に析出させたセメンタイトによって超微細粒フェライトをピンニングする必須元素であり安価に強度を向上するのに最も有効な元素であるが、0.25%を越えると低温靭性を阻害するとともに本発明法による鋼の表層部又は表・裏層部においてもパーライト分率が10%を越え、0.04%未満ではピンニングに必要なセメンタイト量が不足する為に、0.04〜0.25%に限定する。尚、溶接用構造用鋼の場合には0.2%を越えると溶接性(溶接部靭性)が劣化する為に0.04〜0.2%にするのが好ましい。
【0024】
Siは強度向上元素として有効であり安価な溶鋼の脱酸元素としても有用であるが、1.0%を越えると溶接性が劣化し、0.01%未満では脱酸効果が不十分でTiやAl等の高価な脱酸元素を多用する必要がある為に、0.01〜1.0%に限定する。
【0025】
Mnは強度を向上する有用な元素であり、その必要下限から0.3%以上として、2.0%超の添加は母材靭性・溶接性を阻害するとともにAr3変態点を低下させる結果、二相域圧延等の熱間圧延を困難にする為に0.3〜2.0%に限定した。
【0026】
Sは耐食性、靭性の観点から0.01%以下に限定した。MnSが塩素あるいは塩化物を含む水環境で溶解し、選択的な腐食起点となる事はよく知られており、その観点から、Sは出来るだけ低いほど好ましい。
【0027】
Nbは加工熱処理(TMCP)鋼においてTiとともに最も有用な元素であり、NbC又はNb(C,N)(Carbo−nitride)として鋼の再加熱時のγ粒成長の抑制・制御圧延時の未再結晶域温度域の拡大・圧延時の変形帯における析出強化・大入熱溶接時の溶接熱影響部(HAZ)におけるHAZ軟化の防止の効果が一般的に知られている。更に、本発明者の仔細な検討から超微細析出させたセメンタイトの熱的な安定性及びフェライト粒の成長抑制効果が著しく増加する事を知見した。従って、0.005%未満では過飽和固溶状態から0.5μm以下にフェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に析出させるNbC又はNb(C,N)量が不足するとともに0.5μm以下に析出させたセメンタイトの熱的な安定性も不足して、0.1%以上では溶接性を損なう為に0.005〜0.1%に限定する。
【0028】
TiもまたTMCP鋼においてNbとともに最も有用な元素であり、TiC又はTi(C,N)として鋼材の再加熱時のγ粒成長の抑制・制御圧延時の未再結晶域温度域の拡大・圧延時の析出強化・大入熱溶接時のHAZ靭性向上の効果が一般的に知られている。更に、本発明者の仔細な検討からNbと同様に超微細析出させたセメンタイトの熱的な安定性及びフェライト粒の成長抑制効果が改善する事を見出した。従って、0.005%未満では過飽和固溶状態から0.5μm以下にフェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に析出させるTiC又はTiCN量が不足するとともに0.5μm以下に析出させたセメンタイトの熱的な安定性も不足して、0.05%以上では溶接性を損なう為に、0.005〜0.05%に限定する。
【0029】
TaはTaC又はTa(C,N)として鋼の再加熱時のγ粒成長の抑制・大入熱時のHAZ靭性向上の効果が知られているが、高価な為にそれ程一般的に使われてはいない。然し、本発明者の仔細な検討からNb・Tiと同様に超微細析出させたセメンタイトの熱的な安定性及びフェライト粒の成長抑制効果が改善する事を見出した。従って、0.005%未満では過飽和固溶状態から0.5μm以下にフェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に析出させるTaC又はTaCN量が不足するとともに0.5μm以下に析出させたセメンタイトの熱的な安定性も不足して、0.05%以上では溶接性を損なう為に、0.005〜0.05%に限定する。
【0030】
AlはSi同様に脱酸上必要な元素であり、本発明の技術思想からTi・Ta又はNbを微量添加する時にはその酸化を防止するのにSi単独の脱酸では不十分な為に0.005%以上添加が必要である。更に本発明者はAlの添加が本発明鋼の耐食性に対しても有効である事を知見した。ただし0.6%以上の過度の添加はHAZ靭性を損なう為に、0.005〜0.6%に限定した。
【0031】
以上が本発明が対象とする鋼の基本成分であるが、更に、母材強度の向上や低温靭性・溶接性の改善を目的とした低炭素等量化の為に、要求される品質特性又は鋼材の大きさ・鋼板厚に応じて、強度・低温靭性・溶接性を向上する観点からCu、Ni、Cr、Mo、V、Bを
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.1〜2.0%、
Cr:0.03〜3.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
V:0.01〜0.4%、
B:0.0002〜0.002%
の範囲で、1種又は2種以上添加しても本発明の効果は何ら損なわれる事はない。また、Cu、Ni、Crは従来から、海水など塩素あるいは塩化物を含む水環境で鋼の耐食性を向上させる元素として知られているが、本発明において、これら元素を鋼中に含有させる事により、さらなる耐食性向上が得られる。
【0032】
更に、P添加も耐食性に有効であり、本発明においても、単独で、又は上記のCu、Ni、Cr、Mo、V、Bの元素と併せて、添加が可能であるが、ただし0.15%を越える添加は、靭性、溶接性を著しく低下させる事から、Pの含有量は0.15%以下と限定した。
【0033】
更に、前述のように塩素あるいは塩化物を含む水環境ではMnSは腐食の起点として有害であり、これを低減する為に、鋼中硫化物の形態・分散制御の観点からCa、Mg、REMを、
Ca:0.0001〜0.02%、
Mg:0.0001〜0.02%、
REM:0.001%〜0.2%
の範囲で、1種又は2種以上添加する事は、本発明の効果と重畳して有効である。
【0034】
次に、本発明の技術思想である結晶組織を規定する理由について述べる。
【0035】
本発明者の仔細な調査により、ベーナイトを含むフェライト・パーライト鋼では、フェライト粒径を5μm以下にしても耐食性は必ずしも改善しなく、それは、フェライト粒径が5μm以下でも、パーライトコロニーを含む場合は、塩素あるいは塩化物を含む水環境での腐食孔発生頻度が高く、且つ、腐食量が多い事が判明した。更に、微細なセメンタイトを含んでパーライト分率を10%以下とすると耐食性はフェライト粒径の細粒化と共に改善して、3μm以下で耐腐食疲労特性も特段に良好になる事も知見した。
【0036】
図1は、組織がフェライト主体の鋼板の塩水散布暴露試験における板厚減少量(腐食量)を示したものである。このフェライト粒径が3μm以下である場合には、フェライト分率が90%以上になると急激に板厚減少量が小さくなり腐食特性が向上することがわかる。一方、フェライト粒径が10μm以上組織ではフェライト分率が90%以上になっても板厚減少量は余り小さくならないことが分かる。
【0037】
一方、単に微細なセメンタイト又は炭窒化物相から構成される組織だけでは、フェライト若しくはベーナイトを主体とする組織の平均粒径を3μm以下に安定して達成できず、フェライト結晶粒の成長抑制が必要不可欠である事も見い出した。即ち、フェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイトを析出させる事によって初めてフェライトをピンニングしてその成長を効果的に抑制できる。また、0.5μm以下のNb・Ti・Taの炭窒化物をフェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に析出させるとセメンタイトと同様のピンニング効果が認められるとともに、更にフェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に超微細に析出させたセメンタイト自体の熱的な安定性が増す事も分かった。
【0038】
他方、鋼の表層又は表・裏層領域のそれぞれで超細粒組織の割合が鋼の径又は厚さの5%未満では、長時間側の耐食性にばらつきがみられ顕著に改善しない為に5%以上に限定した。超細粒組織の占める割合が大きいほど耐食性が向上して好ましくその上限は規定しないが、過度の増加は製造コストの上昇につながる。
【0039】
上述の理由から、本発明の結晶組織は、鋼の表層又は表・裏層領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相、及び/又はNb・Ti・Taの炭窒化物相を有し、且つパーライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織で構成される事を要件とするものである。
【0040】
次に、本発明で鋼の表面又は表・裏面からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の表層又は表・裏層領域における超微細粒組織を実現する製造方法を規定する理由について述べる。
【0041】
本発明の鋼の再加熱時における加熱温度は、C及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上を固溶させるためにAc3点以上に限定する。
【0042】
更に、Nb・Ti・Taの1種又は2種以上を充分に固溶させるためには、加熱温度を1000℃以上にする事が好ましく、また、加熱時におけるγ粒の粗大化を防止する為には、加熱温度を1200℃以下とする事が好ましい。
【0043】
本発明の鋼の表層又は表・裏層領域において、フェライト結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下の超微細なセメンタイト及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上の炭窒化物を析出させるには、C及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上を鋼中に固溶させた状態で、該表層又は表・裏層領域を3℃/秒以上の冷却速度で冷却する事によって該成分を鋼中に過飽和に固溶せしめ、その後、この冷却によっても温度低下の少ない鋼の中心部の顕熱を利用して復熱させる過程によりなされるものである。
【0044】
本発明の鋼の表層又は表・裏層領域において、フェライトを主体とする組織の平均粒径を3μm以下とするには、鋼又は鋼の素材をAc3点以上に加熱した後、熱間加工の前又は途中で該表層又は表・裏層領域を3℃/秒以上の冷却速度でフェライト分率が50%以上となる温度まで急冷し、その後、この冷却によっても温度低下の少ない鋼の中心部の顕熱を利用して前記表層又は表・裏層領域を復熱させる過程で、(Ac1点−150℃)以上の温度から熱間加工を開始又は再開して、(Ac1点−50℃)〜Ac3点の範囲で熱間加工を終了する事によってフェライトの回復・再結晶を惹起せしめて結晶組織を超微細粒化し、更に該表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱する事なく冷却するとともに、フェライト結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に析出する0.5μm以下の超微細なセメンタイト及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上の炭窒化物によるピンニングを効果的に活用し、その超微細粒組織の成長を防止する事によってなされるものである。
【0045】
また、本発明の熱間加工の前又は途中において前記表層又は表・裏層領域をAr3点以下に冷却し、その後、鋼内部の顕熱による復熱過程において、熱間加工を実施すると、鋼の中心部では未再結晶温度域での加工となって、鋼の低温靭性は著しく向上するので好ましい。
【0046】
本発明の熱間加工としては、圧延・押し出し・引き抜き等の一般的な熱間加工を対象とする。また、鋼の素材の寸法が大きく、加熱温度が1170℃以上の高い温度になる場合や製品の低温靭性の要求が厳しい場合には、Nb・Ti・Taの添加及び加熱後の制御圧延の実施により、鋼の表層又は表・裏層部を冷却する前に予め初期γ粒径を細かくする事が好ましい。更に、鋼の加熱後に熱間加工を行わずに冷却する場合には、低温加熱及びNb・Ti・Taの添加を行う事により鋼の初期γ粒を細かくするか、若しくは予め初期γ粒の細かな熱間加工半製品を使用するのが好ましい。
【0047】
熱間圧延により、鋼の表層又は表・裏層領域を超微細粒化した後に、鋼又は鋼板の中心部の顕熱によってAc3点以上に復熱すると該表層又は表・裏層領域を超微細粒化した効果が損なわれるばかりでなく、フェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に微細析出させたセメンタイトがγに再固溶してピンニング効果が失われてしまう。従って、本発明では、熱間圧延後に、前記表層又は表・裏層領域がAc3点以上に復熱する事のないように、鋼の径又は鋼板厚が18mm未満の場合には空冷を行い、それ以上の径又は鋼板厚の場合には、2℃/秒以上の冷却速度で加速冷却する事が好ましい。
【0048】
鋼を更に高強度化する為には、要求強度レベルに応じて添加成分の調整、及び/又は熱間加工の終了後にAc3点以上に復熱させる事なく、5℃/秒以上の冷却速度で加速冷却又は直接焼き入れを実施すればよい。
【0049】
本発明では、熱間圧延後の加速冷却又は直接焼き入れに引き続いて、更に通常の熱処理設備を用いて鋼の焼戻しを行ってもよい。尚、TMCP設備を用いた加速冷却やDQ設備を用いた直接焼き入れの場合には、加速冷却又は直接焼き入れ時の水冷を途中停止するオートテンパーで代替しても構わない。
【0050】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。
【0051】
まず、表1に示す化学成分の鋼を溶製・鋳造して得た鋼片を用いた。表1において、鋼A〜鋼E、鋼G〜鋼Jが本発明の成分及びその含有量を満足する本発明例であり、鋼FはC、Sが本発明の範囲から外れる比較例である。
【0052】
【表1】
Figure 0003548461
【0053】
次に、表1に示す成分の鋼片を表2に示すような製造条件によって鋼板を製造した。表3に製造して得られた鋼板におけるα粒径(フェライト及びベーナイトの粒径)、析出セメンタイト相の粒径β、耐食性、腐食疲労特性を示す。
【0054】
【表2】
Figure 0003548461
【0055】
【表3】
Figure 0003548461
【0056】
表3において、A−1、A−3、B−1、B−3、C−1、C−3、D−1、D−3、E−1、G−1、H−1、I−1、J−1が本発明例である。一方、A−2は鋼板の熱間圧延途中で表・裏層領域を冷却する際に、表2に示す様に、その冷却速度が遅く鋼板内部の温度が高かった為に、圧延終了後に表層領域がAc3点以上に復熱してしまい、α粒径が3μm以上で、しかも、パ−ライトが10%以上となった比較例である。
【0057】
B−2は、熱間圧延途中での冷却の際は、十分な冷却速度であったが、その冷却時間が短くα分率50%以上となる表・裏層領域の厚さが鋼板の5%未満と小さかった比較例である。
【0058】
C−2及びD−2は、それぞれ熱間圧延途中での冷却を実施しなかったため、表・裏層領域に細粒層の形成がなかった鋼板の比較例であり、E−2は熱間圧延途中での冷却が不十分で、圧延終了温度が高かった鋼板の比較例である。最後にF−1は本発明例のC−1と概ね同じ製造条件であるが、その主要な成分であるC、Sが本発明の範囲から外れた比較例である。
【0059】
また、表3に、表2の製造条件で得られたそれぞれの鋼板の耐食性評価及び腐食疲労特性の結果を示す。
【0060】
この耐食性評価法は、塩水散布暴露試験、及び海水浸漬試験を行った。塩水散布暴露試験は鋼板表層から採取した150mm長×50mm幅×5mm厚さの試験片を屋外暴露し、5%NaCl水溶液を一日一回噴霧器にて試験面に散布して、試験面の腐食の発生に伴う板厚減、重量減を測定するものである。暴露期間は3ヶ月と6ヶ月、それぞれの期間、各鋼種、3試験片ずつ供試した。また、海水浸漬試験は海水相当の3.5%NaClの50℃の水溶液に150mm長×50mm幅×5mm厚さの試験片を浸漬し、腐食の発生に伴う板厚減、重量減を測定するものである。浸漬期間は1ヶ月と3ヶ月、それぞれの期間、各鋼種、3試験片ずつ供試した。表3の結果はいずれの試験も3試験片の平均値である。
【0061】
また、腐食疲労特性評価法は、全厚平板の引張試験片(平滑、応力集中係数Kt=1.1、板厚部分はポリマーでシールして鋼板表面からの疲労き裂発生を評価)を用いて、25℃のASTM規定の人工海水中で片振り引張で0.1Hzで繰り返し応力を付加した。種々の応力範囲で試験を行い、応力破断線図(S−Nf曲線)を測定した。それより、腐食疲労強度の指標として、Nf=5×105での疲労強度をとり、引張強度で規格化した。
【0062】
表3に示される評価結果から、鋼A〜鋼Eのいずれの鋼板においても、本発明例であるA−1〜E−1、A−3〜D−3、G−1〜J−1は、表・裏層領域の組織が本発明の要件を満足しており、その結果、比較例と比べて暴露試験、浸漬試験とも明らかに耐食性に優れると共に腐食疲労特性も優れている。例えば、本発明例のA−1、A−3においては、表・裏層領域のα粒、析出セメンタイト相の粒径βともに比較例のA−2と比べて半分程度のサイズであり、それに伴い腐食減量も半分程度に改善され、腐食疲労強度も絶対値で約1.65倍以上であり、引張強度で規格化しても、約1.55倍以上と大幅に改善されている。比較例のA−2はAc3点以上に復熱した事によって微細化したα粒がγに逆変態すると共に超微細析出したセメンタイトもγに再固溶する結果、表・裏層領域のα粒・セメンタイトも粗大化するとともにパーライト分率が10%以上となったものである。それに対応して、鋼板表面に発生した腐食は、A−1、A−3よりA−2の方が多く、しかも、腐食疲労特性も劣っている。
【0063】
また、Nb・Ti・Taを添加したB−1、B−3、C−1、C−3ではフェライト結晶粒界及び結晶亜粒界にセメンタイト又は炭窒化物が極めて微細に析出してフェライト及び一部ベーナイトの成長を効果的に抑制する結果、その平均粒径も本発明例であるA−1、A−3に比べても極めて安定しており、その結果、腐食量が少なく、腐食減量及び腐食疲労強度の点でも一段と優れる。一方、比較例のB−2は仕上げ圧延前の圧延途中での冷却条件が不十分で細粒層の厚さが5%未満と本発明に不足する為に、α粒径・析出セメンタイト相粒径βが本発明を満足せず耐食性及び腐食疲労強度は本発明例よりも大きく劣っている。熱間圧延の途中で冷却を実施しなかった比較例である鋼板C−2は当然の事ながら本発明例のB−1、B−3よりもその特性が劣っている。同様の傾向は、D−1、D−3とD−2又はE−1、E−3とE−2の間にも認められた。
【0064】
また、本発明例の要件を満たしているA−1、A−3とB−1〜J−1、B−3〜D−3を比較すると、鋼材成分にCu、Ni、Cr、及びCa、REM、Mgを添加したB−1〜E−1の方が絶対的なレベルで耐食性に優れている。このことは、これら添加元素の耐食性への効果(従来知見)と本発明が重畳できる事を示している。従って、本発明の組織制御の適用により、通常の構造用鋼ばかりでなく、Cu、Ni、Cr、及びCa、REM、Mg等の従来から耐食性向上に効果のある合金元素を添加した耐食構造用鋼の耐食性も大幅に向上できる事が判る。
【0065】
更に、同一鋼種、例えばA−1とA−3、B−1とB−3、C−1とC−3を比較すると、フェライトが95%以上になると耐腐食性、腐食疲労特性が良好になる事がわかる。
【0066】
最後に、本発明例の鋼A−2と概ね製造条件が同じでありながら、C、Sが本発明例より高めに外れている比較例のF−1はα粒層厚及び析出セメンタイト相粒径βも本発明の条件を満足しているが、パーライト分率が高く、且つ、高Sの結果、耐食性が本発明例よりも劣っている。
【0067】
【発明の効果】
本発明は鋼の表層又は表・裏層領域におけるフェライト結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト又はNb・Ti・Taの炭窒化物相を析出させて、当該領域の平均粒径が安定して3μm以下のフェライト又はベーナイトを主体とする組織で構成させる事によって、海水など、塩化物を含む水環境での構造用鋼(溶接用構造用鋼を含む)の耐食性を向上可能ならしめた。これにより機械部品又は鋼構造物の耐食性向上を、鋼材の化学成分面だけでなく、鋼材組織の点からも可能とするものである。更に、Cu、Ni等の高価な元素の多量の添加をしなくても本発明により耐食性の向上が可能となり、産業界が享受可能な経済的利益は多大なものがあると思料される。更に、本発明鋼の優れた機械的性質と相まって、本発明は、腐食を起点とする腐食疲労、SCCに対しても抵抗力の高い鋼材のベースとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】表・裏層領域におけるフェライト分率と板厚減少量(腐食量)の関係を示す図である。

Claims (12)

  1. 重量%で、
    C:0.04〜0.25%、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.3〜2.0%、
    S:0.01%以下
    を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼の表面又は表・裏面からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の表層又は表・裏層領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相を有し、且つ、前記領域はパーライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織で構成される事を特徴とする耐食性に優れた構造用鋼。
  2. 重量%で、
    C:0.04〜0.25%、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.3〜2.0%、
    S:0.01%以下、
    Al:0.005〜0.6%
    を含有し、更に、
    Nb:0.005〜0.1%、
    Ti:0.005〜0.05%、
    Ta:0.005〜0.05%
    の1種又は2種以上を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼の表面又は表・裏面からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の表層又は表・裏層領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相及び/又はNb・Ti・Taの炭窒化物相を有し、且つ、前記領域はパーライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織で構成される事を特徴とする耐食性に優れた構造用鋼。
  3. 前記平均結晶粒径3μm以下のフェライトが95%以上である事を特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼。
  4. 更に、重量%で、
    Cu:0.05〜1.0%、
    Ni:0.1〜2.0%、
    Cr:0.03〜3.0%、
    Mo:0.05〜1.0%、
    V:0.01〜0.4%、
    B:0.0002〜0.002%、
    P:0.15%以下
    の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼。
  5. 更に、重量%で、
    Ca:0.0001〜0.02%、
    Mg:0.0001〜0.02%、
    REM:0.001%〜0.2%
    の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼。
  6. 重量%で、
    C:0.04〜0.25%、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.3〜2.0%、
    S:0.01%以下
    を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼をAc3点以上に加熱しCを固溶させた後、熱間加工の前又は途中において、鋼の表面又は表・裏面からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の表層又は表・裏層領域を3℃/秒以上の冷却速度でフェライト分率が50%以上となる温度まで急冷した後、該表層又は表・裏層領域を復熱させる過程において、(Ac1点−150)℃以上の温度で熱間加工を開始又は再開して、(Ac1点−50)℃〜(Ac3点)℃の温度範囲で熱間加工を終了し、引き続いて前記表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱する前に冷却して、該表層又は表・裏層領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相を有し、且つ、前記領域はパーライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織で構成される事を特徴とする耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
  7. 重量%で、
    C:0.04〜0.25%、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.3〜2.0%、
    S:0.01%以下、
    Al:0.005〜0.6%
    を含有し、更に、
    Nb:0.005〜0.1%、
    Ti:0.005〜0.05%、
    Ta:0.005〜0.05%
    の1種又は2種以上を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼をAc3点以上に加熱しC及びNb・Ti・Taの1種又は2種以上を固溶させた後、熱間加工の前又は途中において、鋼の表面又は表・裏面からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の表層又は表・裏層領域を3℃/秒以上の冷却速度でフェライト分率が50%以上となる温度まで急冷した後に、該表層又は表・裏層領域を復熱させる過程において、(Ac1点−150)℃以上の温度で熱間加工を開始又は再開して、(Ac1点−50)℃〜Ac3点の温度範囲で熱間加工を終了し、引き続いて前記表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱する前に冷却して、前記表層又は表・裏層領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相及び/又はNb・Ti・Taの炭窒化物相を有し、且つ、前記領域はパーライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライトを主体とする組織で構成される事を特徴とする耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
  8. 前記平均結晶粒径が3μm以下のフェライトが95%以上とした事を特徴とする請求項6、7のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
  9. 熱間加工の終了後、引き続いて前記表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱させる前に、冷却速度が5℃/秒以上で加速冷却又は直接焼き入れする事を特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
  10. 加速冷却又は直接焼き入れ終了後に引き続いて、焼戻しする事を特徴とする請求項9に記載の耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
  11. 更に、重量%で、
    Cu:0.05〜1.0%、
    Ni:0.1〜2.0%、
    Cr:0.03〜3.0%、
    Mo:0.05〜1.0%、
    V:0.01〜0.4%、
    B:0.0002〜0.002%、
    P:0.15%以下
    の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする請求項6〜請求項10のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
  12. 更に、重量%で、
    Ca:0.0001〜0.02%、
    Mg:0.0001〜0.02%、
    REM:0.001%〜0.2%
    の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする請求項6〜請求項11のいずれかに記載の耐食性に優れた構造用鋼の製造方法。
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