JP3546700B2 - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents

内燃機関のバルブタイミング制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の機関出力軸とカム軸との相対回転位相を可変として、バルブタイミングを可変とする内燃機関のバルブタイミング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブや排気バルブの開閉時期、すなわちバルブタイミングを可変として、機関出力やエミッション、燃費等の内燃機関の性能向上を図るバルブタイミング制御装置が開発され、実用化されている。こうしたバルブタイミング制御装置の一例として特開平8−109840号公報には、機関出力軸とカム軸との間に可変動弁機構を設け、この可変動弁機構内に形成された油圧室に対する油圧制御に基づき上記機関出力軸に対するカム軸の相対回転位相を変更することでバルブタイミングを可変とするバルブタイミング制御装置が記載されている。こうしたバルブタイミング制御装置では、開度調節によって供給する油圧を調整できる油圧制御弁によって可変動弁機構に供給する油圧制御を行っている。そしてこの油圧制御に基づき、上記2軸の相対回転位相を進角、遅角、あるいは保持させている。
【0003】
このような油圧制御弁を使用する場合、製造時のばらつきや使用条件あるいは経時変化等による油圧制御弁間の個体差によって、油圧制御弁の開度を制御する制御信号と実際のバルブタイミングとの間にも各バルブタイミング制御装置毎にばらつきが生じる。そこで、バルブタイミングを保持せしめる際の油圧制御弁の制御信号を学習し、この学習された制御信号に基づき油圧制御弁の開度制御を行うことによって、上記の各個体差間のばらつきに対応している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、こうしたバルブタイミング制御装置では、油圧制御弁の開度を小さく絞ったときに異物を噛み込むなどして同弁の開度調節が一時的に不能となってしまうことがある。そして、こうした油圧制御弁の異常あるいはノイズの混入等による制御信号の電気的異常によって、上記の学習値に異常な値が入力されることがある。その結果、異常が解消して正常な状態に戻ったときには上記の学習値が異常な値となり、油圧制御弁の開度制御を適切に行うことができず、バルブタイミングの目標値と実際の値との偏差、すなわちバルブタイミングの制御偏差が大きくなり、ひいては十分なエンジン性能を発揮できなくなるという事態が生じる。
【0005】
また異常解消後も、上記の学習値が更新される間隔や同学習値のフィードバック補正にともなう遅延により、一度異常な値となった学習値が正規の値となるまでに相当な時間を要することがあり、その間、エンジン性能を十分に発揮できない状態が持続するという不具合が生じることもある。
【0006】
そこで上記公報に記載のバルブタイミング制御装置では、バルブタイミング保持時の制御信号の学習値に上限値と下限値とを予め設定しておき、上記保持時の制御信号の値がこれらの上限値または下限値を越えた場合には異常が発生したものと判断して学習を一時的に中断することで上記の異常への対応を図っている。ただし、こうした学習制御を行う場合、学習値の追従性に関する以下のような不都合も避けがたいものとなっている。
【0007】
すなわち、先述した油圧制御弁の噛み込みや電気的異常によって一時的な異常が発生すると、バルブタイミングの保持に要する制御信号の値は大きく変化するため、上記従来の装置では、この制御信号の値が前記上限値または下限値を越えると前記学習値の学習を一時的に中断する。ただし、この上限値または下限値を越えるまでの間、学習は継続されるため、前記学習値には本来の値と異なった値(異常値)が入力されることは、こうした装置にあっても避けがたいものとなる。
【0008】
その後、異常が解消されても学習値はやはり異常値となっているため、学習値が正規の値に戻るには相当の時間を要することは同じである。
なお、上限値と下限値との間隔を狭めて学習値の変動する範囲を小さくすることで、異常発生後に学習値が本来あるべき値に収束するまでの期間を短縮することは可能であるが、このように上限値と下限値との間隔を狭めてしまうと先述の個体差や運転環境の変化・経時変化等を十分に吸収することができなくなってしまう。
【0009】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、油圧制御系の異常による不具合を好適に回避しつつ、いかなる場合も正確且つ速やかなバルブタイミング制御を行うことのできるバルブタイミング制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、内燃機関のバルブタイミング制御装置において、液圧制御に基づき内燃機関の機関出力軸とカム軸との相対回転位相を可変とする可変動弁機構と、該可変動弁機構に供給される液圧を制御する液圧制御手段と、前記機関出力軸とカム軸との相対回転位相を保持せしめる際の前記液圧制御手段の制御量を学習する学習手段と、前記制御量の学習値を機関個体差を吸収し得る所定の範囲内でガードする第1のガード手段と、前記制御量の学習値を該学習値の傾向を徐変した値を中心に可変とされる所定の範囲内でガードする第2のガード手段と、を備えることをその要旨とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記第2のガード手段のガード範囲は前記第1のガード手段のガード範囲に比べて十分に狭いことをその要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、第1のガード手段によって内燃機関の個体差や運転環境の変化、経時変化にともなう同制御量の学習値の変動を吸収しつつ、同制御量の学習値が異常な値となることで生じる可変動弁機構の異常動作が防止されるようになる。また、この第1のガード手段の作動によって、バルブタイミング制御装置の異常が検出されるようにもなる。更に、第2のガード手段によって制御量の学習値を該学習値に基づき算出された許容範囲内に保持することで、内燃機関の運転状態の変化にともなう同学習値の変動を吸収しつつ、一時的な異常によって同学習値が大きく変動することが防止されるようになる。こうして、正確且つ速やかなバルブタイミング制御が可能となる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記第2のガード手段がそのガード範囲の中心とするのは、前記学習値の平均値であることをその要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、第2のガード手段がガード範囲の中心値を学習値の平均値とすることで、学習値の恒久的あるいは長期的な変動に対応させつつ、一時的な異常によって学習値が大きく変動することを防止することができるようになる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記第2のガード手段は、そのガード範囲を当該機関の温度状態に応じて可変とすることをその要旨とする。
【0016】
内燃機関の温度が上昇すると可変動弁機構に供給される作動液の温度も上昇し、該作動液の粘度が低下することから、可変動弁機構に供給される液圧の変動が大きくなり、それにともない前記制御量の学習値の変動も大きくなる。その点、上記構成によれば、こうした内燃機関の温度状態にともない変化する制御量の学習値の変動に応じて適切な同学習値の許容範囲が設定されるようになる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記第2のガード手段は、当該機関の温度状態が所定の低温状態のとき、そのガード範囲の中心とする値の変更を禁止することをその要旨とする。
【0018】
低温状態時には作動液の粘度が高く、可変動弁機構に対して供給される液圧の変動が大きくなり上記学習値の変動も大きくなる。上記構成によれば、ガード範囲の中心値の変更を禁止することで、こうした不安定な状態時に同ガード範囲の中心値が不用意に変更されて不適切な値となることを防止することができるようになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明にかかるバルブタイミング制御装置が設けられた内燃機関の概略構成を示している。
【0020】
内燃機関1のシリンダブロック3内に往復動可能に設けられたピストン30は、コネクティングロッド31を介して機関出力軸であるクランクシャフト5に接続されている。そしてこのピストン30の往復運動に基づきクランクシャフト5が回転される。このクランクシャフト5の先端部にはクランクプーリ10及びクランク角検出用のクランク角ロータ11とが設けられている。さらにこのロータ11の付近には、電磁ピックアップからなるクランク角センサ12が設けられている。このクランク角ロータ11の外周には等間隔毎に歯が設けられている。クランク角センサ12は、その傍らを上記歯が通過する毎にパルス状の電気信号を電子制御装置27に対して出力する。なお、クランク角ロータ11外周の歯は1本分だけ欠け歯となっており、電子制御装置27はこの欠け歯部からクランクシャフト5の回転位相を把握している。また電子制御装置27は、このクランク角センサ12の出力に基づき内燃機関1の回転数を算出する。
【0021】
さらにクランクシャフト5の先端部には、同軸5の回転に基づき動作するオイルポンプ16が設けられている。このオイルポンプ16は、オイルパン4内に貯留されたオイルを吸引し、このオイルを内燃機関1の潤滑部等に潤滑油として供給する。また、オイルポンプ16から供給されるオイルの一部はバルブタイミング制御装置の作動油としても使用される。なお、このバルブタイミング制御装置は油圧制御に基づきクランクシャフト5と吸気カムシャフト6との相対回転位相を可変とする装置であり、その詳細については後に説明する。
【0022】
オイルポンプ16より加圧吐出されたオイルの一部は、シリンダブロック3やシリンダヘッド2等に形成された供給油路21を介して油圧制御弁19に供給される。この油圧制御弁19は、シリンダヘッド2や吸気カムシャフト6内に形成された遅角油路23及び進角油路22を介して同吸気カムシャフト6の先端部に回動可能に装着された可変動弁機構20に接続されている。
【0023】
前記クランクプーリ10は、タイミングベルト15を介して吸気カムプーリ13及び排気カムプーリ14に駆動連結されている。クランクプーリ10と吸気カムプーリ13あるいは排気カムプーリ14とのギア比は1:2となっており、クランクプーリ10が2回転する間に吸気カムプーリ13及び排気カムプーリ14は1回転される。吸気カムプーリ13は、吸気カムシャフト6の先端部に可変動弁機構20を介して相対回動可能に装着されている。また、排気カムプーリ14は排気カムシャフト7の先端部に一体回転可能に装着されている。すなわち、排気カムシャフト7がクランクシャフト5と同期して回転されるに対して、吸気カムシャフト6とクランクシャフト5との相対回転位相は可変動弁機構20によって可変とされる。
【0024】
また、吸気カムシャフト6には同吸気カムシャフト6の回転位相を検出するためのカム角ロータ17が設けられており、その付近には電磁ピックアップからなるカム角センサ18が設けられている。カム角ロータ17の外周には1つの歯が形成されており、カム角センサ18は前記クランク角センサ12と同様に、この歯がその傍らを通過する毎にパルス状の電気信号を前記電子制御装置27に対して出力する。
【0025】
電子制御装置27は、このカム角センサ18の出力信号に基づき吸気カムシャフト6の回転位相を算出する。そして、上記クランク角センサ12の出力信号から把握されるクランクシャフト5の回転位相との対比によって、クランクシャフト5と吸気カムシャフト6との相対回転位相、すなわち可変動弁機構20の作動角を把握する。なお本実施の形態では、可変動弁機構20の作動角はバルブタイミングが進角するほど大きな値をとる構成となっている。
【0026】
また、吸気カムシャフト6及び排気カムシャフト7には、それぞれ複数の吸気カム8及び排気カム9が一体回転可能に設けられている。これら吸気カム8及び排気カム9は、その押圧に基づき吸気バルブ28及び排気バルブ29を開閉駆動する。すなわちこの内燃機関1では、クランクシャフト5の回転位相に対して排気バルブ29のバルブタイミングは固定され、吸気バルブ28のバルブタイミングは可変とされる構成となっている。
【0027】
なお、前記シリンダブロック3には、その内部に形成された通路(図示しない)内を循環する冷却水の温度を検出するための水温センサ24が設けられている。この水温センサ24の出力は、前記電子制御装置27に出力される。
【0028】
次に上記バルブタイミング制御装置について詳細に説明する。
なおこのバルブタイミング制御装置は、大きくは油圧制御に基づき作動される可変動弁機構20と、この可変動弁機構20に対して作動油を供給する油圧制御系とから構成されている。
【0029】
図2は可変動弁機構20の側部断面構造及び油圧制御系の概略構成を、図3は同可変動弁機構20の正面断面構造を示している。
図2に示すように、内部ロータ40は吸気カムシャフト6の先端にセンタボルト46によって固定されることで上記吸気カムシャフト6と一体回転可能とされる。この内部ロータ40の外周には、図3に示すように複数の(同図3では4枚の)ベーン41が放射状に形成されている。
【0030】
また、この内部ロータ40の外周を覆うようにハウジング42が、さらにその前面を覆うようにカバー45が設けられている。これらハウジング42及びカバー45は、複数の取り付けボルト54により吸気カムプーリ13と固定されることで該吸気カムプーリ13と一体回転可能とされる。なおハウジング42の内周には、図3に示すように前記内部ロータ40のベーン41と同数の突部44が形成されており、隣り合った突部44の間に形成された凹部43内にベーン41が収容されている。
【0031】
前記ベーン41の先端は凹部43の内周と摺接し、前記突状部44の先端は前記内部ロータ40の外周と摺接している。その結果、内部ロータ40及び吸気カムシャフト6と、吸気カムプーリ13及びハウジング42及び前面カバー45とは、互いに同一の軸心を中心として相対回動可能となる。
【0032】
また前記凹部43には、ベーン41によって区画されることで2つの空間47,48が形成されている。以後、これら2つの空間47,48の内、ベーン41に対して吸気カムシャフト6の回転方向側の空間47を遅角側油圧室、その反対側の空間48を進角側油圧室という。なお可変動弁機構20は、これら各油圧室47,48内に供給される作動油の圧力制御(油圧制御)に基づき作動される。
【0033】
次に上記油圧室47,48内に供給される作動油の圧力を制御する油圧制御系の構成について図2に基づき説明する。
オイルポンプ16はクランクシャフト5の回転に基づき動作され、オイルパン4内の作動油を吸引し、供給油路21を介して油圧制御弁19に作動油を供給する。
【0034】
この油圧制御弁19はデューティ制御に基づき開度制御される4ポート弁であり、上記供給油路21に加え、作動油をオイルパン4に還流する2本の排出油路32と、上記可変動弁機構20の遅角側油圧室47に接続された遅角油路23と、進角側油圧室48に接続された進角油路22とが接続されている。油圧制御弁19は往復摺動可能に配設されたスプール35と、該スプール35を付勢するコイルスプリング34と、電圧を印加されることにより上記スプール35を吸引する電磁ソレノイド33とを備えている。
【0035】
電磁ソレノイド33に印加される電圧は、電子制御装置27によってデューティ制御されている。電磁ソレノイド33の発生する吸引力は印加される電圧のデューティ比に応じて変化する。この電磁ソレノイド33が発生する吸引力とコイルスプリング34の付勢力との釣り合いによって、上記スプール35の位置が決められる。
【0036】
スプール35が移動することによって、遅角油路23及び進角油路22と供給油路21及び排出油路23との連通量が変化し、遅角油路23及び進角油路22に対して供給、あるいはこれら油路23,22より排出される作動油の量が変化する。なお本実施の形態の油圧制御弁19は、電磁ソレノイドに印加される電圧のデューティ比が大きなほど進角油路22に対する油圧供給量が増加し、デューティ比が小さなほど遅角油路23に対する油圧供給量が増加する構成となっている。こうして上記遅角側油圧室47及び進角側油圧室48内の油圧を調節して可変動弁機構20を作動させる。
【0037】
つづいて、この可変動弁機構20の作動制御について説明する。
電子制御装置27は、上記クランク角センサ12等の各種センサの検出結果により把握される内燃機関1の運転状態に基づき、可変動弁機構20の作動角の目標値(以下「目標作動角」という)evttを算出する。そして、電子制御装置27は、前記クランク角センサ12とカム角センサ18との出力信号から把握される可変動弁機構20の実際の作動角evtと上記目標作動角evttとの比較に基づきデューティ比指令値t_dvtを算出する。そして電子制御装置27は、この算出したデューティ比指令値t_dvtに応じたデューティ比の駆動信号を油圧制御弁19の電磁ソレノイド33に印加する。こうして油圧制御弁19の開度を調節することで、可変動弁機構20の各油圧室47,48内の油圧を適宜調整し、同機構20を作動させる。
【0038】
図4に、本実施の形態のバルブタイミング制御装置における上記デューティ指令値t_dvtと可変動弁機構20の作動速度vとの関係を示す。同図4において可変動弁機構20は、作動速度vが正の値(+)であれば進角側に、負の値(−)であれば遅角側に作動するものとする。
【0039】
例えば同図4中の実線L1に示すように、可変動弁機構20の作動速度vは、デューティ比指令値t_dvtがある値”a%”よりも大きなときに正(進角側に作動)となり、小さなときに負(遅角側に作動)となる。そして、デューティ比指令値t_dvtが”a%”に維持されるときに作動速度vが”0”となる。
【0040】
上記目標作動角evttが実際の作動角evtよりも大きな場合、制御装置27は、デューティ比指令値t_dvtを値”a%”よりも大きく設定して可変動弁機構20を進角側に作動させる。これによりクランクシャフト5に対する吸気カムシャフト6の相対回転位相も進角され、バルブタイミングが早められる。
【0041】
一方、目標作動角evttが実際の作動角evtよりも小さな場合、デューティ比指令値t_dvtを値”a%”よりも小さくして可変動弁機構20を遅角側に作動させる。これによりクランクシャフト5に対する吸気カムシャフト6の相対回転位相も近くされ、バルブタイミングが遅らされる。
【0042】
さらに、目標作動角evttと実際の作動角evtとが同じである場合(実際には、その偏差が所定値よりも小さな場合)、上記の値”a%”をデューティ比指令値t_dvtとして可変動弁機構20の作動角を保持させ、バルブタイミングも一定に保持される。
【0043】
このようにして電子制御装置27は、可変動弁機構20の作動角(バルブタイミング)のフィードバック制御を行っている。
ところで、製造時の加工公差や経時変化による各装置ごとの個体差、使用される環境条件の違い等の恒久的な差異あるいは長期的な変化により、デューティ比指令値t_dvtと可変動弁機構20の作動速度vとの図4に示される関係は、バルブタイミング制御装置ごとに偏差が生じる。また、オイルポンプ16の吐出油圧の変動や温度による作動油粘度の変化などの機関1の運転状態にともなう供給油圧の変動などによっても、同様の偏差が生じる。これらの偏差によって、可変動弁機構20の作動角を保持するとき(作動速度v=0)のデューティ比指令値t_dvtの値もバルブタイミング制御装置ごとにばらつきが生じる。
【0044】
そこで本実施の形態の可変動弁機構20では、作動速度vが”0”となるデューティ比指令値t_dvt(図4の実線L1の場合、t_dvt=”a%”)を常時検出し、その変化に応じてその値を学習することで上記のようなばらつきを吸収しつつ、的確なバルブタイミング制御を可能としている。
【0045】
次に、こうしたバルブタイミング保持時(作動速度v=0)のデューティ比指令値t_dvtの学習制御について説明する。なお以下では、上記保持時のデューティ比指令値t_dvtの学習値を保持デューティ比学習値gdvthということとする。なお、バルブタイミングのフィードバック制御においてバルブタイミングを保持するときに、電子制御装置27はこの保持デューティ比学習値gdvthをデューティ比指令値t_dvtとして出力する。
【0046】
図5は、学習制御ルーチンの処理手順を示すフローチャートである。なお本ルーチンの処理は、可変動弁機構20の作動角フィードバック制御の一環として、電子制御装置27によって所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0047】
本ルーチンの処理が開始されると、電子制御装置27はステップS100の処理として、学習条件が成立しているか否かを判定する。なお本実施の形態のバルブタイミング制御装置では、前記目標作動角evttと実際の作動角evtとの偏差が所定値よりも小さく(バルブタイミング保持状態にある)、これら両作動角が安定している(変動が少ない)ときに学習条件が成立するものとしている。すなわち可変動弁機構20の保持状態が安定していることを学習成立条件としている。ここで学習条件が成立していない場合(NO)、電子制御装置27は通常の作動角フィードバック制御を行う。
【0048】
学習条件が成立した場合(YES)、電子制御装置27はステップS102において、学習条件成立時のデューティ比指令値t_dvtの値を保持デューティ比の仮学習値dvtsmsとして記憶する。この仮学習値dvtsmsは保持デューティ比学習値gdvthの算出に用いられる。
【0049】
その後、電子制御装置27の処理はステップS105に移行し、設定ガード判定ルーチンの処理を実行する。
図6に、この設定ガード判定ルーチンの処理手順を示す。
【0050】
本ルーチンでは、保持デューティ比学習値gdvthを予め設定された上限ガード設定値MAXから下限ガード設定値MINまでの範囲内に保持すべく、ガードするための処理を行う。なお、この上限ガード設定値MAXから下限ガード設定値MINまでのガード範囲(以下、「設定ガード範囲」という)は、製造時の加工公差や経時変化や内燃機関1の運転環境の変化等の長期的あるいは恒久的な保持デューティ比学習値gdvthの偏差あるいは差異を十分に吸収できるように設定されている。そのため、この設定ガード範囲は十分に広く設定しておく必要がある。なお、本実施の形態では上限ガード設定値MAXはデューティ比80%に、下限ガード設定値MINはデューティ比30%に設定されている(図4参照)。
【0051】
さて、本ルーチンの処理に移行すると電子制御装置27は、まずステップS200において、前記保持デューティ比の仮学習値dvtsmsが上限ガード設定値MAX未満であるか否かを判定する。
【0052】
ここで仮学習値dvtsmsが上限ガード設定値MAX以上の場合(NO)、電子制御装置27はステップS205の処理に移行する。このステップS205において電子制御装置27は、仮学習値dvtsmsを上限ガード設定値MAXとする。すなわちここでは、仮学習値dvtsmsを上限ガード設定値MAXより大きくならないようにガードしている。そして電子制御装置27はステップS210において、バルブタイミングを保持するために要するデューティ比指令値t_dvtが設定ガード範囲を超えていることを示すフラグxgdvthをオンとする。その後、本ルーチンの処理を一旦終了し、前記学習制御ルーチン(図5)のステップS110の処理に移行する。
【0053】
なお本実施の形態にかかるバルブタイミング制御装置では、例えば図4に破線L2として併せ示すように、可変動弁機構20の作動速度が”0”となるデューティ比指令値t_dvtが上記上限ガード設定値MAX(80%)以上となり、上記フラグxgdvthがオンとなる状態が所定時間以上継続した場合、電子制御装置27は何らかの異常が発生したものと判断する。すなわちこの場合、デューティ比指令値t_dvtを最大値(100%)としても可変動弁機構20の進角側油圧室48に十分な作動油が供給されなくなり、適切なバルブタイミング制御ができなくなる。このような場合電子制御装置27は、図示しない別ルーチンの処理としてバルブタイミングを固定してバルブタイミング制御を中止するなどのフェール処理を実行する。
【0054】
一方、上記ステップS200において、仮学習値dvtsmsが上限ガード値MAX未満の場合(YES)、電子制御装置27はステップS215の処理に移行する。このステップS215において電子制御装置27は、仮学習値dvtsmsが下限ガード設定値MINより大きいか否かを判定する。
【0055】
ここで仮学習値dvtsmsが下限ガード設定値MIN以下の場合(NO)、電子制御装置27はステップS220において、仮学習値dvtsmsを下限ガード設定値MINとする。すなわちここでは仮学習値dvtsmsを下限ガード設定値MIN未満とならないようにガードしている。そしてこの場合も、電子制御装置27は上記ステップS210の処理に移行し、フラグxgdvthをオンとする。その後、本ルーチンの処理を一旦終了し、前記学習制御ルーチン(図5)のステップS110の処理に移行する。
【0056】
なお、バルブタイミング保持に要するデューティ比指令値t_dvtが下限ガード設定値MIN(30%)以下となる場合にも、上記同様の理由でバルブタイミング制御が困難となる。したがって本実施の形態では、こうしたときにもフラグxgdvthをオンとし、状況に応じてフェール処理を実行するようにしている。
【0057】
一方、仮学習値dvtsmsが下限ガード設定値MINより大きい場合(YES)、すなわち仮学習値dvtsmsが前記上下限ガード範囲内にあると判定された場合、電子制御装置27はステップS225において、フラグxgdvthをオフとした後、本ルーチンの処理を終了して、前記学習制御処理ルーチン(図5)のステップS110の処理に移行する。
【0058】
こうして設定ガード判定ルーチンの処理を終了して、ステップS110の処理に移行すると電子制御装置27は、可変ガード範囲算出ルーチンの処理を実行する。
【0059】
図7に、この可変ガード範囲算出ルーチンの処理手順を示す。
本ルーチンの処理に移行すると、電子制御装置27はステップS300において、前記水温センサ24の出力から検出される冷却水温度ethwに基づきガード量t_gdを算出する。冷却水温度ethwが高いほどガード量t_gdには大きな値が設定される。このガード量t_gdは、保持デューティ比学習値gdvthをガードする範囲を求めるために使用され、その値が大きくなるほどガード範囲が広く設定される。
【0060】
冷却水温度ethw、すなわち機関温度が高くなると、作動油の粘度が低くなり、内燃機関1の潤滑系に用いられる油(潤滑油)の変動が伝達され易くなる。前述したように可変動弁機構20に供給される作動油は潤滑油の一部を流用している。そのため、該作動油の油圧変動が大きくなり、それにともない保持デューティ比学習値gdvthの変動も大きくなる。そこで高温時にはガード量t_gdの値を大きく設定してガード範囲を広く設定することで、上記のような油圧変動に起因する上記保持デューティ比学習値gdvthの変動を吸収可能としている。
【0061】
なお、このガード量t_gdを用いて算出されるガード範囲は、前記上限ガード設定値MAX及び下限ガード設定値MINによってガードした設定ガード範囲とは別のガード範囲である。また、このガード範囲は冷却水温度ethwに応じて、さらには以下に説明するように保持デューティ比学習値gdvthに応じて変更されることから、このガード範囲を以下では「可変ガード範囲」ということとする。なお、この可変ガード範囲は、保持デューティ比学習値gdvthの傾向を徐変した値を中心として設定される。
【0062】
こうしてガード量t_gdを算出した後、電子制御装置27はステップS305において、前記水温センサ24によって検出される冷却水温度ethwが80℃以上であるか否かを判断する。
【0063】
ここで冷却水温度ethwが80℃以上である場合(YES)、電子制御装置27はステップS310において、可変ガード範囲の中心値となる徐変学習値gdvthsmを算出する。この徐変学習値gdvthsmは、以下の式に基づき算出される。
gdvthsmi=gdvthsmi−1
+k(dvtsms−gdvthsmi−1)
ここで、定数kは0から1の間の所定値(例えば1/4,1/8等)である。また、gdvthsmi−1は前回更新された徐変学習値gdvthsms、gdvthsmsiは今回更新される徐変学習値gdvthsmsである。こうして徐変学習値gdvthsmは、保持デューティ比の仮学習値dvtsmsの傾向を徐変した値として設定される。この仮学習値dvtsmsは、バルブタイミング保持時のデューティ比指令値t_dvtが設定・可変の両ガード範囲内にあるときに、そのまま保持デューティ比学習値gdvthとして用いられる値であることから、大きくは上記保持デューティ比学習値gdvthの傾向を徐変した値といえる。なお可変ガード範囲は、この徐変学習値gdvthsmから±t_gdの範囲としている。
【0064】
この徐変学習値gdvthsmは、仮学習値dvtsms、すなわちバルブタイミング保持に要するデューティ比指令値t_dvtの一時的な変動に対してはあまり変化しない。しかしながら仮学習値dvtsmsが長期に渡って前と異なる値となったときには、徐々にその値へと収束する。
【0065】
このように可変ガード範囲の中心値(徐変学習値gdvthsm)を設定することで、油圧制御弁19の噛みこみや電気的ノイズの混入等による一時的な変動に対しては可変ガード範囲が変化しないようにすることができる。またそれと同時に、経時変化等の長期的な変化に対しては、その変化に対応して可変ガード範囲を動かすことができる。
【0066】
こうして可変ガード範囲を設定した後、電子制御装置27は本ルーチンの処理を終了し、本ルーチンの処理を一旦終了し、前記学習制御ルーチン(図5)のステップS115の処理に移行する。
【0067】
一方、前記ステップS305において、冷却水温度ethwが80℃未満であると判断された場合(NO)には、徐変学習値gdvthsmの更新を行わず、そのまま本ルーチンの処理を一旦終了し、前記学習制御ルーチン(図5)のステップS115の処理に移行する。すなわちこの場合、前回までに算出された徐変学習値gdvthsmから可変ガード範囲を算出することとなる。
【0068】
なおここで、機関温度(冷却水温度ethw)に応じて徐変学習値gdthsmの更新の有無を制御しているのは、次の理由による。
すなわち、内燃機関1の低温状態下(ethw<80℃)では作動油の粘度が高いため、可変動弁機構20に対する油圧供給が円滑に行われないことがある。そのため、バルブタイミング保持に要するデューティ比指令値t_dvtの値(仮学習値dvtsms)が大きく変動する。こうした状況下で徐変学習値gdthsmを更新すると、可変ガード範囲が本来あるべき位置から移動してしまい、保持デューティ比学習値gdvthが異常値となってしまうことがある。そこで本実施の形態では、内燃機関1が高温(ethw≧80℃)となり油圧供給が安定化するまでの間、徐変学習値gdvthsmの更新を中断して可変ガード範囲を固定することで、保持デューティ比学習値gdvthが異常な値となることを防止している。
【0069】
なお本実施の形態において、上記徐変学習値gdvthsmは、電子制御装置27内の図示しないメモリに記憶保持される。このメモリはバッテリバックアップされるなどした不揮発性メモリである。
【0070】
こうして可変ガード範囲を算出した後、電子制御装置27の処理は、前述したように学習制御ルーチン(図5)のステップS115に移行する。このステップS115において電子制御装置27は、前記保持デューティの仮学習値dvtsmsが上記徐変学習値gdvthsmとガード量t_gdとの和、すなわち可変ガード範囲の上限値以上であるか否かを判断する。
【0071】
ここで仮学習値dvtsmsが可変ガード範囲の上限値以上である場合(YES)、電子制御装置27の処理はステップS120に移行し、仮学習値dvtsmsの値をこの上限値(gdvthsm+t_gd)にガードする。なお、このとき仮学習値dctsmsの値は、上限ガード設定値MAXを上限とされる。その後電子制御装置27の処理は、ステップS135の処理に移行する。
【0072】
一方、仮学習値dvtsmsが可変ガード範囲の上限未満であると判断された場合(NO)、電子制御装置の処理はステップS125に移行する。このステップS125において電子制御装置27は、保持デューティの仮学習値dvtsmsが上記徐変学習値gdvthsmからガード量t_gdを引いた値、すなわち可変ガード範囲の下限値以下であるか否かを判断する。
【0073】
ここで仮学習値dvtsmsが可変ガード範囲の下限値以下である場合(YES)、電子制御装置27の処理はステップS130に移行し、仮学習値dvtsmsの値をこの下限値(gdvthsm−t_gd)にガードする。なお、このとき仮学習値dvtsmsの値は、前記下限ガード設定値MINを下限とする。その後電子制御装置27の処理は、ステップS135の処理に移行する。
【0074】
一方、仮学習値dvtsmsが可変ガード範囲の下限値よりも大きい場合(NO)、すなわち仮学習値dvtsmsが可変ガード範囲内にある場合、電子制御装置27はステップS135の処理に移行する。
【0075】
このステップS135において電子制御装置27は、保持デューティ比学習値gdvthを仮学習値dvtsmsに更新し、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0076】
すなわち本ルーチンでは、バルブタイミング保持時のデューティ比指令値t_dvtを一旦、仮学習値dvtsmsとして記憶し、設定ガード範囲及び可変ガード範囲の2重のガード範囲によってガードした後に保持デューティ比学習値gdvthを更新している。そして、この保持デューティ比学習値gdvthも、電子制御装置27内の図示しない不揮発性メモリに記憶保持される。
【0077】
次に、本実施の形態のバルブタイミング制御装置において、油圧制御弁19の噛み込みなどによってバルブタイミング保持に要するデューティ比指令値t_dvtが一時的に変化したときの制御態様について説明する。
【0078】
図8に、仮学習値dvtsmsに異常値が混入したときのデューティ比指令値t_dvt及び保持デューティ比学習値gdvthの推移を、図9にそのときのバルブタイミングの推移をす。なお、図8及び図9に示される期間中、バルブタイミングを一定に保持すべく制御が継続して行われているものとする。さらに、これらの図8及び図9には、単に設定ガード範囲によるガードだけを行うバルブタイミング制御装置におけるデューティ比指令値t_dvt及び保持デューティ比学習値gdvthまたはバルブタイミング推移も併せ示している。そしてこれら図8及び図9において、本実施の形態のバルブタイミング制御装置(設定ガード範囲と可変ガード範囲とによるガードを実施)の制御態様は実線で、設定ガード範囲によるガードだけを実施する装置の制御態様は点線で表している。
【0079】
以下では、これら2つの装置の制御態様を対比しながら説明する。
図8に示すように、時刻t1において、仮学習値dvtsms、すなわちバルブタイミングを保持するため必要とされるデューティ比指令値t_dvtに異常値が入り、一時的に高い値となったとする。このとき保持デューティ比学習値gdvthも仮学習値dvtsmsに応じて増加する。
【0080】
本実施の形態のバルブタイミング制御装置(実線)では可変ガード範囲によりガードされるため、保持デューティ比学習値gdvthは設定ガード範囲の上限値(gdvtsms+t_gd)に保持される。また同時にバルブタイミングを保持すべく出力されているデューティ比指令値t_dvtも同じように増加し、上限値に保持される。
【0081】
可変ガード範囲によるガードを行わない装置(点線)の場合にも、保持デューティ比学習値gdvth及びデューティ比指令値t_dvtが増加する。ただしこれらの値は、設定ガード範囲の上限ガード設定値MAXとなるまでガードされないため、本実施の形態の装置の場合よりも、高い値で保持されるようになる。ちなみに本実施の形態の装置において、保持時のデューティ比指令値t_dvtが上限ガード設定値MAXを越えるような場合には、保持デューティ比学習値gdvthを上限ガード設定値MAXにガードするとともに、フラグxgdvthをオンとし、このフラグがオンの状態が所定時間持続した場合にはフェール処理を行うことは、上述の通りである。
【0082】
時刻t2において、一時的な異常値の混入が収拾して、仮学習値dvtsmsが本来あるべき値に戻ったとする。このとき、保持デューティ比学習値gdvth及びデューティ比指令値t_dvtは、本来あるべき値よりも高い値となっている。そのため、バルブタイミングは進角側に移動する。
【0083】
そこで電子制御装置27はバルブタイミングを本来のタイミングに収束すべくフィードバック制御を行う。このとき、保持デューティ比学習値gdvthに記憶されている値と本来あるべき値との間には偏差が生じているため、直ちに本来のタイミングとすることができず、図9に示すようなハンチングが発生する。設定ガード範囲によるガードだけを行う装置(点線)の場合、この偏差量が大きいため、同図9に点線で示すようにハンチングの振幅も大きなものとなる。よって、本来のタイミングに収束するまでには、かなり長い時間が必要とされる。その点、本実施の形態のバルブタイミング制御装置(実線)では、可変ガード範囲によるガードの結果、その偏差量は小さく抑えられているため、ハンチングは比較的短時間で収束する。いずれの装置にしても、ハンチングが収拾するまでの間、保持デューティ比学習値gdvthの学習は行えないため、その間、同学習値gdvthは、図8に示すように、ガードされた値に保持される。
【0084】
その後、ハンチングが収拾すると、再び学習値gdvthの学習が行われるようになる。本実施の形態の装置(実線)の場合、本来の値との偏差量が小さいため、同学習値gdvthは速やかに本来の値に収束する。
【0085】
一方、設定ガードだけを行う装置(点線)の場合、このときはまだハンチングが続いており、学習値gdvthの学習は再開されておらず、その値は設定ガード範囲の上限値MAXに保持されたままである。
【0086】
このように、本実施の形態のバルブタイミング制御装置では、上述したような一時的な異常が生じた場合にも、異常が解消された後には保持デューティ比学習値gdvthは速やかに本来の値に戻るため、適切なバルブタイミング制御も速やかに再開することができる。
【0087】
続いて、可変ガード範囲と冷却水温度ethwとの関係を説明する。
図10(a)に冷却水温度ethwの推移を、図10(b)にそれに対応する保持デューティ比学習値gdvth及び可変ガード範囲の推移を示す。
【0088】
本実施の形態のバルブタイミング制御装置では、冷却水温度ethwが80℃となるまで可変ガード範囲の中心値となる徐変学習値gdvthsmの更新が行われない。そのためこの期間、可変ガード範囲の中心値は、例え保持デューティ比学習値gdvthが大きく変動したとしても一定のままである。先述したように、内燃機関1の低温状態下では作動油の粘度が高く、可変動弁機構20に供給される作動油の量や圧力も変動しがちであるため、その作動は不安定となる。こうした状態下では可変ガード範囲の中心値を固定しておくことで、保持デューティ指令値gdvthが異常な値となることを防止している。
【0089】
ただし、内燃機関1の低温状態下にあってもガード量t_gdの値は冷却水温度ethwに応じて変更されるため、可変ガード範囲の幅は水温ethwの上昇に応じて広くなる。先述したように、高温となるほど作動油の粘度が低下して油圧変動が伝達され易くなり、保持デューティ比学習値gdvthの変動も大きくなる。そこで可変ガード範囲の幅を広くして、こうした油圧変動に起因する保持デューティ比学習値gdvthの変動を吸収できるようにしている。
【0090】
冷却水温度ethwが80℃よりも高くなると、徐変学習値gdvthsmの学習が開始される。そのため、保持デューティ比学習値gdvthの長期的な変化に追従して徐変学習値gdvthsmも徐々に更新されるようになる。
【0091】
このように本実施の形態のバルブタイミング制御装置は、内燃機関1の温度状態による作動油の粘度やその圧力変動の変化に応じて、適切なガード範囲を設定することができる。
【0092】
以上の本実施の形態によれば、以下のような効果を得ることができるようになる。
(1)保持デューティ比学習値gdvthに対して可変ガード範囲を設定することで、同学習値gdvthの急激な変動を抑制して、油圧制御弁19の噛み込み等の一時的な異常に起因する可変動弁機構20の異常作動を防止することが可能となり、ひいては正確且つ速やかなバルブタイミング制御ができるようになる。
【0093】
(2)保持デューティ比学習値gdvthの長期的な変化に連動して可変ガード範囲の中心値(徐変学習値gdvthsm)も変化するため、上記の一時的な異常の影響を好適に回避しつつ、内燃機関1毎の個体差や運転環境の変化・経時変化などの恒久的な偏差あるいは長期的な変化にも対応することができるようになる。
【0094】
(3)上記可変ガード範囲の幅を内燃機関1の温度状態に応じて変更することで、温度変化にともなう油圧変動を吸収しつつ、適切なガード範囲を設定することができるようになる。
【0095】
(4)油圧供給が不安定な内燃機関1の低温状態下に上記可変ガード範囲の中心値(徐変学習値gdvthsm)を一定に保持することで、保持デューティ学習値gdvthの不用意な変動を抑制して、可変動弁機構20の作動を安定化することができるようにもなる。
【0096】
(5)保持デューティ比学習値gdvthに所定の上限ガード設定値MAX及び下限ガード設定値MINを設定することで、バルブタイミング制御そのものが不可能となるような重大な異常の検出も行うことができるようになる。
【0097】
なお、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・本実施の形態では、学習処理ルーチン(図5)のステップS135において、仮学習値dvtsmsの値をそのまま保持デューティ比学習値gdvthとしていたが、仮学習値dvtsmsと前回の保持デューティ比学習値gdvthとの差の一部を前回の学習値gdvthに加算し、その値を新しい保持デューティ比学習値gdvthとする、すなわち仮学習値dvtsmsの徐変値を保持デューティ比学習値gdvthとするよう変更してもよい。こうした変更によって、保持デューティ比学習値gdvthの変動をさらに抑制することができるようになる。
【0098】
・また、本実施の形態では、可変ガード範囲の中心値として保持デューティ比学習値gdvthの傾向の徐変値を用いたが、この中心値として、同学習値gdvthに対して緩やかに追従可能な他の値(例えば保持デューティ比学習値gdvthの平均値など)を用いる構成としてもよい。
【0099】
・本実施の形態における設定ガード範囲の上限ガード設定値MAX=80%や徐変学習値gdvthsmの更新実行停止のしきい値である冷却水温度ethw=80℃等の各設定値は任意であり、バルブタイミング装置の特性に応じて変更してもよい。
【0100】
・本実施の形態では、冷却水温度ethw(機関1の温度状態)からオイルポンプ16の発生する油圧の変動量を把握し、それに基づき可変ガード範囲の幅(ガード量t_gd)を算出する構成としたが、冷却水温度ethw以外にも上記油圧の変動量を把握可能な他のパラメータ、例えば機関1の始動後の経過時間等を用いて可変ガード範囲の幅を設定する構成としてもよい。
【0101】
・なお油圧制御弁19の制御法は、本実施の形態のようなデューティ制御に限らず、単なる電圧制御等、他の制御法で行ってもよい。
・また、可変動弁機構20は排気側に設ける構成としてもよい。
【0102】
・また、本実施の形態では、いわゆるベーン式可変動弁機構20を備えるバルブタイミング制御装置について説明したが、他の作動原理に基づく可変動弁機構(例えばヘリカルギア式可変動弁機構など)を備えるバルブタイミング制御装置にあっても、油圧制御に基づき同様のバルブタイミング制御を行う装置であれば、同様の制御態様を適用することができる。
【0103】
【発明の効果】
請求項1または2に記載の発明によれば、内燃機関の運転状態の変化にともなう同学習値の変動を吸収しつつ、一時的な異常によって同学習値が大きく変動することが防止されるようになり、ひいては、いかなる場合にも正確且つ速やかなバルブタイミング制御が実行できるようになる。
【0104】
また、請求項3に記載の発明によれば、学習値の恒久的あるいは長期的な変動に対応させつつ、一時的な異常によって学習値が大きく変動することを防止することができるようになる。
【0105】
また、請求項4に記載の発明によれば、内燃機関の温度状態にともない変化する制御量の学習値の変動に応じて適切な同学習値の許容範囲が設定されるようになる。
【0106】
また、請求項5に記載の発明によれば、不安定な状態時にガード範囲の中心値が不用意に変更されて不適切な値となることを防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるバルブタイミング制御装置が設けられた内燃機関の概要を示す略図。
【図2】可変動弁機構の側部断面構造及びその油圧制御系を示す略図。
【図3】同可変動弁機構の正面断面構造を示す断面図。
【図4】可変動弁機構のデューティ比指令値と作動速度との関係を示すグラフ。
【図5】学習制御ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図6】設定ガード判定ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図7】可変ガード範囲算出ルーチンの処理手順を示すフォローチャート。
【図8】異常信号混入時のデューティ比指令値及びデューティ比学習値の推移を示すタイムチャート。
【図9】異常信号混入時のバルブタイミングの推移を示すタイムチャート。
【図10】冷却水温と可変ガード範囲の推移を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1…内燃機関、5…クランクシャフト、6…吸気カムシャフト、7…排気カムシャフト、10…クランクプーリ、11…クランク角ロータ、12…クランク角センサ、13…吸気カムプーリ、14…排気カムプーリ、16…オイルポンプ、17…カム角ロータ、18…カム角センサ、19…油圧制御弁、20…可変動弁機構、21…供給油路、22…進角油路、23…遅角油路、24…水温センサ、27…電子制御装置、32…排出油路、40…内部ロータ、41…ベーン、42…ハウジング、47…遅角側油圧室、48…進角側油圧室。

Claims (5)

  1. 液圧制御に基づき内燃機関の機関出力軸とカム軸との相対回転位相を可変とする可変動弁機構と、
    該可変動弁機構に供給される液圧を制御する液圧制御手段と、
    前記機関出力軸とカム軸との相対回転位相を保持せしめる際の前記液圧制御手段の制御量を学習する学習手段と、
    前記制御量の学習値を機関個体差を吸収し得る所定の範囲内でガードする第1のガード手段と、
    前記制御量の学習値を該学習値の傾向を徐変した値を中心に可変とされる所定の範囲内でガードする第2のガード手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  2. 前記第2のガード手段のガード範囲は前記第1のガード手段のガード範囲に比べて十分に狭い
    ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  3. 前記第2のガード手段がそのガード範囲の中心とするのは、前記学習値の平均値である
    請求項1または2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  4. 前記第2のガード手段は、そのガード範囲を当該機関の温度状態に応じて可変とする
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  5. 前記第2のガード手段は、当該機関の温度状態が所定の低温状態のとき、そのガード範囲の中心とする値の変更を禁止する
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
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