JP3546290B2 - 水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法 - Google Patents

水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、主に土木工事に用いられる鋼矢板、とりわけ水中における溶接時の割れ並びに溶接熱影響部(以下、HAZ と示す)の硬化を抑制した、靱性に優れた鋼矢板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼矢板は、港湾や河川の擁壁や護岸の土留めなどの公共性の高い土木工事において主に使用され、特に腐食環境下で長期間使用されることから、耐食性を向上させるために、エポキシ樹脂やポリエチレン樹脂などの高分子材料の貼付や電気防食などの各種処理が施されている。
【0003】
前者の処理では、熱間圧延により鋼矢板を製造した後、高分子シートの貼付工程が必要となり、生産性が低く、製造コストが大きく増加することや施工中にこのシートが剥離し、防食機能が部分的に低下するなどの問題がある。
【0004】
この点、後者の処理は、施工現場において鋼矢板表面に犠牲アノードを溶接して電気防食を行うことから、安価で簡便な防食方法である。しかし、この電気防食用の電極板は水中で溶接によって取付けられ、この溶接処理が水素の侵入しやすい環境下における局部的な急速加熱および急速冷却を伴うために、溶接割れやHAZ の靱性低下が助長されることが、問題として残る。
【0005】
近年、大規模な地震で被害を受けた港湾施設を調査した結果、水中溶接により陽極鋼板を取り付けた部位を起点に鋼矢板が破壊していることが判明し、このような大地震においても被害を最小限にする、安価でかつ高い信頼性を有する鋼矢板の開発および提供が望まれている。
【0006】
ここに、鋼矢板は、JIS A5528で規定されるSY295 並びにSY390 グレードがあり、化学成分として、P:0.040 mass%以下、S:0.040 mass%以下およびCu:0.25mass%以上の規定と、降伏応力 (Y.S.) 、引張強さ (T.S.) および伸び (El) に関する規定とが、それぞれ記載され、溶接性や靱性に関する規定はない。
【0007】
現状では、C:0.15〜0.20mass%、Si:0.2 〜0.42mass%およびMn:0.84〜1.40mass%を含む中炭素鋼が、一般的に用いられている。しかし、このような中炭素鋼では、水中溶接といった過酷な溶接施工環境下において、溶接割れやHAZ の靱性低下に対して十分な性能を発揮できないことは上述のとおりであり、優れた溶接性や高い靱性を有する鋼矢板が求められていた。
【0008】
かような状況のもと、水中での溶接も考慮した鋼矢板が、特開平8−269622号および特開平10−1721号各公報に提案されている。
すなわち、特開平8−269622号公報には、C:0.05〜0.25mass%、Si:0.05〜0.50mass%、Mn:0.4 〜2.0 mass%、Cu:1.0 mass%以下、Ni:1.0 mass%以下およびNb:0.05mass%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物から構成され、さらにNや炭素当量を規制した溶接特性の優れた鋼矢板の製造方法が開示されている。
【0009】
一方、特開平10−1721号公報には、C:0.05〜0.18mass%を含有し、かつ0.05mass%≦ (2Nb +V+Ti) ≦0.20mass%を満足し、炭素当量が0.40mass%以下である、水中溶接性と靱性に優れる鋼矢板の製造方法が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特開平8−269622号公報においては、溶接性を考慮して炭素当量の規制を制限しているために、現行の鋼矢板よりも溶接部の割れに対する改善が見込まれるが、なお溶接割れ率を0%にできないことや、HAZ の硬さがHV350 以上の高い範囲にあり、HAZ 靱性に課題を有していた。
【0011】
同様に、特開平10−1721号公報においても、溶接部の最高硬さがHV300 を超えており、HAZ 靱性になお課題が残る。また、母材の強度確保の観点から、加速冷却を行う場合がほとんどであり、その冷却の制約条件、つまり500 ℃以上800 ℃以下の温度域を冷却速度30℃/s以下で制御冷却すること、を考慮すると、鋼矢板特有の形状において均一な冷却を達成することは困難であることが明らかであり、材質の均一性も問題となる。
【0012】
なお、鋼矢板は、その爪部の噛み合わせが重要になるため、開口部の幅や噛み出し量を所定の範囲に抑える観点から、成形性を重視して、圧延仕上温度を800 ℃以上、通常は950 ℃以上としている。そのため、組織が粗くなり、母材の靱性といえども−20℃程度であり、溶接割れやHAZ 硬化性の問題と共に、母材の靱性が低いことも問題である。
【0013】
そこで、この発明は、とりわけ過酷な環境での溶接における、溶接割れやHAZ硬化の問題を解消した、水中での溶接性に優れる鋼矢板の製造方法について提案することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
まず、発明者らは、水中で溶接した際のHAZ の最高硬さおよび溶接割れの有無、並びに母材の強度特性について、様々な角度から鋭意検討を行った結果、この発明を導くに到った。
【0015】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1) C:0.005 〜0.030 mass%、Si:1.0 mass%以下、Mn:0.6 〜2.0 mass%、Al:0.1 mass%以下、P:0.015 mass%以下、S:0.015 mass%以下、Nb:0.015 〜0.1 mass%、Ti:0.005 〜0.030 mass%およびB:0.0015〜0.0040mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、 1000 1300 ℃に再加熱後に、爪部成形を含む熱間圧延を施し、該熱間圧延を 700 ℃以上 950 ℃未満にて終了することを特徴とする水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法。
【0016】
(2) C:0.005 〜0.030 mass%、Si:1.0 mass%以下、Mn:0.6 〜2.0 mass%、Al:0.1 mass%以下、P:0.015 mass%以下、S:0.015 mass%以下、Nb:0.015 〜0.1 mass%、Ti:0.005 〜0.030 mass%およびB:0.0015〜0.0040mass%を含み、さらにCu:1.0 mass%以下、Ni:1.0 mass%、Cr:1.0 mass%以下、Mo:0.3 mass%以下、V:0.10mass%以下、Ca:0.0010〜0.0100mass%、REM : 0.002 〜0.030 mass%の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、 1000 1300 ℃に再加熱後に、爪部成形を含む熱間圧延を施し、該熱間圧延を 700 ℃以上 950 ℃未満にて終了することを特徴とする水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、この発明を導くに到った実験結果について、詳しく説明する。
すなわち、Si:0.3 mass%、Mn:1.5 mass%、Al:0.03 mass %、P:0.010 mass%、S:0.005 mass%、Nb:0.04 mass %、Ti:0.015 mass%およびB:0.0010 mass %の基本組成に、C量を0.018 〜0.35mass%の範囲で種々に変化させて含有する種々の鋼を用いて、母材の強度特性、水中溶接時の割れの有無およびHAZ の硬さについて調査した。すなわち、各種鋼を用いて、鋼矢板の圧延を模擬して、1270℃に加熱してから圧延仕上温度850 ℃で板厚20mmまで圧延後に放冷することによって、鋼板を作製し、供試材とした。
【0018】
かくして得られた各供試材について、電流:160 〜230 A,電圧:34〜50V,溶接速度:7.5 〜8.3 cm/min,平均入熱:58 kJ/cmおよび溶接長さ:150 mmの条件で軟鋼用被覆アーク溶接棒(4.0 mmφ)を用いて、溶接を施した際の溶接割れ発生率を調査した。その調査結果を、図1に示すが、C含有量が低くなると溶接割れ発生率が低下し、とくにC含有量が0.03mass%以下の領域では、溶接割れの発生率を0%にすることが可能である。
【0019】
なお、溶接割れ発生率は、溶接長に対して20分割に切断し、その断面を研磨させた後、割れの有無を調べ、20断面あたりの割れ発生個数から、溶接割れ発生率を求めた。
【0020】
また、上記の供試材に上記と同様の溶接を施した際のHAZ の最高硬さについて調査した結果を、図2に示す。C含有量が低下するにつれてHAZ の最高硬さも低下する傾向が示され、C含有量が0.030 mass%未満の領域ではHV280 以下となり、HAZ の硬化を非常に小さく抑制できることが判明した。
【0021】
一方、上記の供試材における母材の強度変化は、図3に示すように、C含有量の低下とともにパーライト分率が減少するために低下し、鋼矢板としての十分な強度が得られていないことも判明した。
【0022】
以上の実験結果から、フェライト+パーライト組織が主体の現状の組織形態を踏襲した鋼矢板では、母材の強度確保と水中での溶接性とを両立させるのは困難であることが明らかになり、次に、組織制御による高強度化の可能性について検討した。
【0023】
図4に、C:0.015 mass%、Si:0.3 mass%およびMn:1.5 mass%を基本組成として、Nbを単独添加した鋼、Bを単独添加した鋼、そしてNbおよびBを複合添加した鋼から、上記した実験と同様に製造した鋼板の、0.2 %Y.S.について測定した結果を示す。同図から、基本組成鋼およびこの組成にNbやBを単独添加した鋼では、フェライト主体組織が形成され、0.2 %Y.S.の向上効果は小さかった。一方、NbおよびBを複合添加した鋼では、フェライト変態が抑制され、ベイナイト主体組織を形成した結果、0.2 %Y.S.は大幅に向上し、鋼矢板として十分な強度を得ることができた。
【0024】
次に、C:0.010 mass%、Si:0.3 mass%、Mn:1.55mass%、Nb:0.050 mass%およびB:0.0020mass%に、種々の含有量のPを含有する鋼から、上記した実験と同様に製造した鋼板について、水中溶接を想定した熱サイクルを実施してHAZ を再現し、その再現HAZ の靱性を調べた。図5に、再現HAZ 靱性に及ぼすPの影響を示すように、Pが0.015 mass%を超えるような領域では、粒界破壊を生ずるために、再現HAZ 靱性を大きく低下させた。しかしながら、Pを0.015 mass%未満にすることにより粒界脆化が抑制され、良好なHAZ 靱性を示した。なお、このような現象は、B無添加材では認められないことから、極低C−Nb−B鋼においてPによる粒界脆化が特に顕著に生じるため、Pの取り扱いが重要なポイントになる。
【0025】
すなわち、この発明は、極低炭素鋼にNbおよびBを複合添加してベイナイト組織として、高強度の下に、水中での溶接割れを回避するとともに、HAZ の硬化をHV280 以下にまで低減すること、さらにPを制限してHAZ の粒界脆化をも防止することによって、溶接部特性を飛躍的に向上させたところに特徴がある。
【0026】
以下に、この発明における各化学成分の限定理由について述べる。
C:0.005 〜0.030 mass%
Cは、前述のとおり、水中での溶接割れをまねき、またHAZ の硬化能の増大による靱性低下をもたらす元素であり、0.030 mass%以下とする必要がある。一方、0.005 mass%未満にするには、製鋼プロセスにおいて脱炭のための処理時間の増大や使用原料の高級化が避けられず、経済性が損なわれるため、Cは0.005 〜0.030 mass%の範囲とした。
【0027】
Si:1.0 mass%以下
Siは、鋼中に固溶して強度を上昇するのに有効な元素である。本来、溶接構造用鋼では、HAZ の靱性が損なわれるために、0.6 mass%程度を上限に制限されてきたが、この発明ではC量を極端に少なくすることから、HAZ の靱性に有害な島状マルテンサイト(M−A)の生成量が少なくなる結果、Siについて特に厳しい制限を行う必要はなく、1.0 mass%を上限として添加できる。下限については特に規定しないが、強度を確保するためには0.02mass%以上とすることが好ましい。
【0028】
Mn:0.6 〜2.0 mass%
Mnは、極低炭素のベイナイト組織を安定的に得るのに重要な元素であるが、2.0 mass%を超えると強度が必要以上に高くなりすぎ、靱性を低下させる。一方、0.6 mass%未満では安定的にベイナイト組織が得られず、必要母材強度を満たさないことから、Mnは0.6 〜2.0 mass%の範囲とした。
【0029】
Al:0.1 mass%以下
Alは、脱酸剤として添加するが、0.1 mass%を超えると鋼の清浄性を阻害することから、0.1 mass%以下に制限した。なお、Ti脱酸を行うことによって、Alレスとすることも可能である。
【0030】
P:0.015 mass%以下
Pは、極低C−Nb−B鋼において、HAZ 靱性を支配する重要な元素であり、Pが0.015 mass%を超える領域では粒界脆化を助長し、HAZ 靱性を低下させる。そのため、Pは0.015 mass%以下にする必要がある。
【0031】
S:0.015 mass%以下
Sは、MnS を形成し、母材の靱性を低下させるため、0.015 mass%以下に制限する。
【0032】
Nb:0.015 〜0.1 mass%
この発明では、微量のNbおよびBの複合添加によってベイナイト組織を形成し、母材の強度を上昇させる重要な元素である。また、Nbはオーステナイトの未再結晶域を拡大させて組織を微細化するのに有効な元素でもある。これらの効果は、0.015 mass%未満では得られず、逆に0.1 mass%を超えての添加は母材並びにHAZ の靱性を低下させるため、0.015 〜0.1 mass%の範囲とする。
【0033】
Ti:0.005 〜0.030 mass%
Tiは、鋼中のNをTiN として固定し、後述するBをフリーBとして残留させることにより、粒界からのフェライト変態を抑制させる重要な元素である。また、製鋼プロセスにおいて、脱酸元素として使用することもある。これら効果は、0.005 mass%未満では認められず、逆に0.030 mass%を超えての添加は母材靱性を低下させるため、0.005 〜0.030 mass%の範囲とした。
【0034】
B:0.0015〜0.040 mass%
Bは、オーステナイト粒界上に偏析し、粒界からのフェライト変態を抑制させる重要な元素であり、一方で前述したNbとの微量複合添加において、著しい変態強化作用をも持つ。さらに、NbおよびBの複合添加によって、γ単相領域が拡大し、成形可能温度領域も拡大するため、母材の靱性向上にも寄与する。これらの効果は、0.0015mass%未満では発現せず、逆に0.0040mass%を超えて添加しても、その効果が飽和することから、0.0015〜0.0040mass%の範囲とする。好適な範囲としては、0.0030mass %以下の範囲である。
【0035】
上記成分の他に、電気防食効果が期待できない大気暴露域や飛沫域における耐食性および強度の向上、また連続鋳造時の割れ防止、そしてHAZ 靱性の向上などを所期して、Cu, Ni, Cr, Mo, V, REM およびCaを選択的に1種または2種以上添加することができる。
【0036】
ここで、各元素の添加目的を要約すると、電気防食効果が期待できない大気暴露域や飛沫域の耐食性向上を所期する場合はCu, CrおよびMoが好適であり、同様に、強度向上を所期する場合はCu, Cr, MoおよびV、連鋳時の割れ防止を所期する場合はNi、そしてHAZ 靱性向上を所期する場合は REMおよびCaが、それぞれ好適である。なお、これらの元素の添加によって、この発明の課題である水中における溶接性などは全く損なわれることはない。
【0037】
以下に、各添加元素の限定理由について述べる。
Cu:1.0 mass%以下
Cuは、耐食性向上に有効な元素であると共に、ベイナイト変態開始温度を低温化し、強度上昇にも有効に作用する。しかしながら、1.0 mass%を超えると、圧延中の割れの発生や表面傷を助長するため、添加の上限を1.0 mass%とする。なお、下限は特に設ける必要がないが、かような効果を得るためには0.05mass%以上の添加が必要である。
【0038】
Ni:1.0 mass%以下
Niは、特にCuを添加した場合の圧延中の割れの予防に有用な元素であり、Cu添加量に対して1/2 以上の量のNiを添加することが望ましいが、Niは非常に高価な元素であり、多量に添加すると経済性を失するから、その上限を1.0 mass%とした。
【0039】
Cr:1.0 mass%以下
Crは、Cuと同様に、耐食性および強度を向上させる作用があるが、1.0 mass%を超えての添加はHAZ の靱性を低下させるため、1.0 mass%以下とした。なお、下限は特に設けないが、かような効果を得るためには0.05mass%以上の添加が必要である。
【0040】
Mo:0.3 mass%以下
Moも、CuやCrと同様に耐食性と強度を向上させる元素であるが、0.3 mass%を超えての添加はHAZ 靱性を低下させる上、非常に高価な元素であるので経済性も失するため、0.3 mass%を上限とした。なお、下限は特に設けないが、かような効果を得るためには0.01 mass %以上の添加が必要である。
【0041】
V:0.10mass%以下
Vは、析出強化によって強度を向上させるのに有効な元素であるが、0.10mass%を超えて添加しても飽和することから、上限を0.10mass%とした。なお、下限は特に設けないが、かような効果を得るためには0.005 mass%以上の添加が必要である。
【0042】
Ca:0.0010〜0.0100mass%
Caは、HAZ の組織を微細化し、靱性の向上に有効な元素であるが、0.0010mass%未満ではその効果に乏しく、逆に0.0100mass%を超えて添加すると、鋼の清浄性を阻害することから、0.0010〜0.0100mass%の範囲とした。
【0043】
REM : 0.002 〜0.030 mass%
REM は、Caと同様にHAZ の組織を微細化し、靱性の向上に有効な元素であるが、0.002 mass%未満ではその効果に乏しく、逆に0.030 mass%を超えて添加すると鋼の清浄性を阻害することから、0.002 〜0.030 mass%の範囲とした。
【0044】
なお、OおよびNについては特に規定を加えないが、O:0.040 mass%以下、N:0.070 mass%以下に制限することが望ましい。特にNについては、Tiによって完全にTiN にすることが必要であり、NはTi添加量の1/3.4 以下を目安とする。
【0045】
この発明の鋼矢板は、以上の成分組成に規制することによって、所期した特性を獲得できるが、成形性の点から、次に示す製造方法を採用する。
【0046】
すなわち、上述した成分組成範囲に調整した鋳片または鋼片を、1000〜1300℃に再加熱後、700 ℃以上950 ℃未満で圧延を終了させることによって、水中での溶接性および靱性に加えて成形性にも優れる鋼矢板を製造することができる。
【0047】
ここで、再加熱温度を1000℃以上とするのは、一旦組織を均一なオーステナイトとすることと、圧延の負荷を軽減させるためである。一方、1300℃を超える再加熱は、鋼材の酸化が著しくなり、スケールロスも増加するため、1000〜1300℃の範囲とすることが好ましい。
【0048】
次いで、再加熱後に熱間で圧延を行って鋼矢板を製造するが、その圧延仕上温度は700 ℃以上とする。なぜなら、爪部の形状は鋼矢板にとって重要な項目であり、圧延仕上温度が700 ℃未満となると、この発明に従う鋼では一部がベイナイト変態を開始し、成形性を低下させるため、爪部の寸法精度が低下する。そのため、圧延終了温度は700 ℃以上とした。
【0049】
ここに、鋼矢板における爪部の成形性と圧延仕上温度との関係について、0.18mass%Cを含有する従来鋼と、C:0.02mass%、Mn:1.5 mass%、Nb:0.040 mass%およびB:0.0015mass%を含有する鋼と、を対象に調査した。図6は、圧延仕上温度と爪部成形不良率との関係を示すグラフである。なお、爪部成形不良率とは、当該鋼から製造した鋼矢板において、開口幅や噛みだし量が所定の範囲以上になった鋼矢板の発生率を表している。また、圧延仕上温度を変化させるために、加熱温度を種々変化させて、実験を行った。
【0050】
図6から判るように、従来鋼においては、圧延仕上温度が830 ℃よりも低い温度となると、爪部において成形不良が発生し始めている。この成形不良は、オーステナイトからフェライトへの変態が一部でも始まると、急激に悪化する傾向が認められている。
【0051】
これに対して、C:0.02mass%、Mn:1.5 mass%、Nb:0.040 mass%およびB:0.0015mass%を含有する、この発明に従う鋼では、成形不良発生温度は約700℃であり、より低温での圧延が可能である。これは、発明鋼ではオーステナイトからフェライトへの変態温度が事実上ベイナイト変態開始温度(700 ℃)に対応していることによる。
一方、上限については、上述したように、圧延仕上温度が 950 ℃以上になると母材の靱性が低下するため、 950 ℃未満で圧延を終了させる。
【0052】
なお、圧延後の冷却は、放冷を基本とするが、加速冷却を行っても放冷材との組織変化が小さいため、ウェブの厚い鋼矢板などで高い靱性を得たい場合には、加速冷却を行っても差し支えない。しかしながら、加速冷却を行う場合には、歪による鋼矢板の変形に特に注意を払う必要がある。
【0053】
【実施例】
表1に示す種々の化学組成に調整した鋼スラブを用いて、表2に示す条件に従って鋼矢板を製造した。かくして得られた各鋼矢板について、そのウェブの厚み方向における引張り試験による母材特性と水中溶接におけるHAZ の最高硬さおよび割れの有無、並びに再現HAZ 靱性について調べた。その調査結果を表2に併記する。
【0054】
【表1】
Figure 0003546290
【0055】
【表2】
Figure 0003546290
【0056】
この発明に従う鋼矢板(鋼A〜M)は、Y.S.が295MPa以上およびT.S.が490MPa以上、そして−40℃以下の破面遷移温度を示し、優れた母材性能を有している。また、水中溶接におけるHAZ の硬化量は、HV280 以下と極めて小さくなり、溶接割れも全く発生しなかった。一方、Pが0.018 mass%である鋼矢板(鋼N)では、HAZ 靱性が大きく低下した。この破面を観察した結果、粒界破壊を生じていることを確認した。
【0057】
従来の鋼矢板(鋼O,P,Q)では、母材の強度特性は規格を十分満足しているが、水中溶接のHAZ はHV300 以上の高い硬さを示し、溶接割れも認められ、HAZ 靱性は低かった。また鋼Oを760 ℃で仕上圧延したものは爪部の形状も不良であった。
【0058】
【発明の効果】
この発明により、水中溶接においてHAZ 硬化の少なく、耐割れ性に優れた高い信頼性を有する鋼矢板を工業規模で安価に提供可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶接割れ発生率とHAZ の最高硬さに及ぼす炭素の影響を示すグラフである。
【図2】HAZ の最高硬さに及ぼす炭素の影響を示すグラフである。
【図3】フェライト−パーライト鋼における強度と炭素量の関係を示すグラフである。
【図4】C:0.015 mass%、Si:0.3 mass%、Mn:1.5 mass%を基本組成として、Nbを単独添加させた鋼、Bを単独添加させた鋼およびNbとBを複合添加させた鋼の母材の0.2 %Y.S.を示すグラフである。
【図5】再現HAZ 靱性に及ぼすPの影響を示すグラフである。
【図6】圧延仕上温度と爪部成形不良率との関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. C:0.005 〜0.030 mass%、Si:1.0 mass%以下、Mn:0.6 〜2.0 mass%、Al:0.1 mass%以下、P:0.015 mass%以下、S:0.015 mass%以下、Nb:0.015 〜0.1 mass%、Ti:0.005 〜0.030 mass%およびB:0.0015〜0.0040mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、 1000 1300 ℃に再加熱後に、爪部成形を含む熱間圧延を施し、該熱間圧延を 700 ℃以上 950 ℃未満にて終了することを特徴とする水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法。
  2. C:0.005 〜0.030 mass%、Si:1.0 mass%以下、Mn:0.6 〜2.0 mass%、Al:0.1 mass%以下、P:0.015 mass%以下、S:0.015 mass%以下、Nb:0.015 〜0.1 mass%、Ti:0.005 〜0.030 mass%およびB:0.0015〜0.0040mass%を含み、さらにCu:1.0 mass%以下、Ni:1.0 mass%、Cr:1.0 mass%以下、Mo:0.3 mass%以下、V:0.10mass%以下、Ca:0.0010〜0.0100mass%、REM : 0.002 〜0.030 mass%の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、 1000 1300 ℃に再加熱後に、爪部成形を含む熱間圧延を施し、該熱間圧延を 700 ℃以上 950 ℃未満にて終了することを特徴とする水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法。
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