JP5464169B2 - 加工性に優れた引張強度628MPa以下の高張力厚鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、非調質厚鋼板に係わり、特に、橋梁、建築、造船、建設機械、産業機械、海洋構造物、ペンストック等に用いて好適な、引張強度628MPa以下の加工性に優れた高張力厚鋼板に関する。
建築、橋梁、貯蔵タンク、圧力容器などに用いられる鋼板には、高い強度と靭性に加え、成形後の変形回復(スプリングバック)の少ない、優れた加工性も要求される。近年、これらの鋼板に対しては、さらなる高強度化が求められ、550MPa級以上の高張力鋼板も多く用いられるようになってきている。一方、それら鋼板の高強度化に伴い、加工性は低下する傾向にあるため、加工性の改善に対する要望は強い。
従来の調質高張力鋼板やTMCP鋼板などの溶接構造用鋼板は、高い強度を有するものの、比較的強度の低い鋼板に比べ加工性に劣っていた。
一般的に、加工性の改善の方法としては、塑性変形能を高めるという意味で、引張強さに対する上降伏点の比を表す降伏比(以下「YR」と記載する。)の低減が考えられる。引張強さ(以下「TS」と記載する。)が570MPa級以上の鋼板の低YR化を図る方法としては、(γ+α)2相域からの焼入を含む複数の段階の熱処理によって、フェライトと硬質の第2相からなる混合組織を生成させる方法が一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
また、圧延後から水冷開始までに鋼板を空冷する時間を設け、初析フェライトを生成させることによって低YR化を図る方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、Ar3点以上から400〜650℃までの冷却において、1〜15℃/secの比較的ゆるやかな冷却速度に制御する方法も知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。
あるいは、圧延後の加速冷却をAr3点直下で停止し、誘導加熱方式により再加熱することにより低YR化を図る方法も知られている(例えば、特許文献5、特許文献6参照。)。
そして、例えば曲げ加工のような加工の場合、鋼板の表層に近づくほど大きな歪が加わるので、表層部をできるだけ軟質化させることで鋼板の加工性を向上させることも考えられる。
表層部をできるだけ軟質化させる方法としては、冷却を一旦中断し、表層部に生成したベイナイト相を、Ac1変態点以上に復熱させることにより、部分的に軟質のフェライト相に変態させた後、再び冷却する方法が知られている(例えば、特許文献7参照。)。
以上述べたものとは全く異なるが、溶接性に優れ、材質のばらつきの少ない高張力鋼材の製造方法も知られている(例えば、特許文献8参照。)。C含有量を0.001〜0.025質量%の範囲に制限したうえで添加合金成分を適正に調整した鋼素材を、Ac3点〜1350℃の温度に加熱後、最終仕上げ温度800℃以上で熱間圧延を終了し、次いで10℃/s以下で冷却することで、材質のばらつきの少ない高張力鋼材を製造する技術である。この鋼板は板厚方向における硬さの差が最大でもビッカ−ス硬さ(Hv)で13以下と非常に小さいため、加工性に優れるものと推定される。
特公昭59−52207号公報 特開昭59−211528号公報 特開平1−176027号公報 特開平5−214440号公報 特開2003―213332号公報 特開2003―213333号公報 特開平3−188216号公報 特許第3465494号公報
しかし、上記の従来技術には以下のような問題がある。
特許文献1に記載の方法は、大幅な低YR化が可能である一方、複数の段階の熱処理が必要となるため、製造コストが増大する。
特許文献2に記載の方法では、生産性が低下し、製造コストが増大する。
特許文献3、特許文献4に記載の方法も、生産性が低下し、製造コストが増大する。また、特許文献4に記載の実施例によれば、製造される対象となる鋼板の強度は高々500MPa級にとどまる。
特許文献5、特許文献6に記載の方法は、加速冷却を行なうための設備が必要となる。
特許文献7に記載の方法では、一旦冷却された表面部分をAc1変態点以上の比較的高温に復熱するまで冷却を中断し、また、ベイナイト相をフェライト相に変態させるのに、比較的長時間を要することから、冷却初期段階において板厚中心部の冷却速度が低下してしまい、高い冷却速度で冷却する場合のような高強度化の効果を得ることができない。また、鋼板内部の熱を利用した表層部の復熱の場合、内部は高温のままの状態にあるわけだから、表層部に比べ大幅に強度低下してしまうことは避けられない。
特許文献8に記載の方法は、鋼板の板厚方向の硬さの分布が平坦化される製造方法であるという点で優れているものの、後述のように、表層部の方が内部よりもむしろ軟らかい方が、さらに加工性に優れるわけであり、これを実現するまでには至っていない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、複数の段階の熱処理や冷却開始温度の規制など、生産性の低下や製造コストの増大を招くことなく、引張強度628MPa以下の強度と優れた加工性をあわせもつ高張力鋼板を提供することを目的とする。
発明者らは、引張強度628MPa以下の直接焼入れ型高張力鋼板における加工性低下の原因と、加工性を向上させる方法についての研究を進めた。そして、制御冷却あるいは直接焼入れ型の高張力鋼板は、表層部(裏面側を含む両表層部)が内部に比べ硬化しており、このように表層部に硬化層が存在することが加工性を低下させる原因となっていることに気付いた。さらに研究を進めた結果、表層部の硬化層を無くすことにより、鋼板の曲げ加工性が向上し、低YR化にもつながることがわかった。また、表層部を内部よりもむしろ軟らかくすると、さらに優れた加工性を得られることも分かった。
しかしながら、特許文献8のように、板厚方向における硬さの差がビッカ−ス硬さ(Hv)で13以下になるような方法によってもなお、表層部の方が内部よりもむしろ軟らかい鋼板は実現できていない。そこで、発明者らは、鋼板の表層部と内部に温度差がつくように再加熱することで、そのようなさらに優れた加工性を有する鋼板を製造することができないか、詳細にその方法を研究した。その結果、鋼板の成分の適正化を図った上、鋼板の表層部をAc1変態点以上、内部をAc1変態点以下に再加熱することで、そのような表層部が内部よりもむしろ軟らかい、加工性に優れた鋼板を得られることを見出した。
本発明は、以上述べたような詳細な研究の結果、得られた知見によって完成されたものであり、その特徴は以下の通りである。
(a)、質量%で、C:0.005〜0.02%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.0〜2.5%、Al:0.01〜0.0%、Nb:0.010〜0.060%、Ti:0.005〜0.025%、B:0.0010〜0.0040%、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、N:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式を満たすことを特徴とする引張強度628MPa以下の加工性に優れた高張力鋼板。
鋼板の表層部の硬さ+15Hv<鋼板の板厚中心部の硬さ ・・・(1)
(b)、(a)に記載の成分に加え、さらに、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、Ca:0.0030%以下、Rem:0.02%以下、Mg:0.005%以下から選んだ少なくとも1種または2種以上を含有することを特徴とする、(a)に記載の引張強度628MPa以下の加工性に優れた高張力鋼板。
本発明によれば、表層部を、内部よりも軟らかくすることで、高い強度と優れた加工性をあわせもつ高張力鋼板が得られる。
本発明の実施の形態について説明するための図である。(a)平面図、(b)側面図、(c)正面図。 本発明の実施の形態について説明するための図である。
まず、本発明の高張力鋼板の化学成分の範囲とその規定理由について、主として高い強度と靭性を持つようにする観点から、まず説明する。以下の説明において%で示す単位は全て質量%である。
C:0.005〜0.02%
Cは、鋼の強度を向上する元素であり、本発明では再加熱後も所望の強度を確保するためには0.005%以上の含有を必要とするが、0.02%を超えると、鋼板の表層部が著しく硬くなり、再加熱による軟質化の作用を妨げるため、Cは、0.005〜0.02%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.01〜0.018%である。
Si:0.05〜0.50%
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、本発明では、脱酸を有効に行うための製鋼上の要請から、0.05%以上の含有を必要とするが、0.50%を超えて含有すると、靭性を低下させる。このため、Siは、0.05〜0.50%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.20〜0.35%である。
Mn:1.0〜2.5%
Mnは、鋼の強度を向上する元素であり、本発明では、所望の強度を得るため、1.0%以上の含有を必要とする。一方、2.5%を超える含有は、溶接部の靭性を低下させる。このことから、Mnは、1.5〜2.5%の範囲に規定した。
Al:0.01〜0.08%
Alは、脱酸剤として作用し、このためには0.01%以上の含有を必要とするが、0.08%を超えて含有すると、靭性を低下させるとともに、溶接した場合に、溶接金属部の靭性を低下させる。このため、Alは、0.01〜0.08%の範囲に規定した。なお、好ましくは、0.02〜0.04%である。
Nb:0.010〜0.060%
Nbは、本発明に必須の成分であり、Bとの複合添加により変態点を下げ、鋼の強度を向上する元素であり、この効果を得るには、0.010%以上の含有を必要とする。また、再加熱時にNbCとして析出して、鋼板内部の軟質化を抑制する効果もある。一方、0.060%を超える含有は、再加熱後の靭性に悪影響を与える。このため、Nbは、0.010〜0.060%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.02〜0.045%である。
Ti:0.005〜0.025%
Tiは、TiNを形成して鋼中のNを固定することによってBの効果を有効に発揮させる作用を持つ元素である。また、スラブ加熱時ならびに溶接熱影響部でのオーステナイト粒成長を抑制して組織を微細化する効果もある。これらの効果を十分に発揮させるには、0.005%以上の添加が必要であるが、0.025%を超えて含有すると、靭性を低下させるので、0.005〜0.025%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.008〜0.020%である。
B:0.0010〜0.0040%
Bは、微量の添加によって旧オーステナイト粒界エネルギーを低下させてフェライトの核生成を抑制するのに有効に機能する。この効果を得るには、0.0010%以上の添加が必要であるが、0.0040%を超えると、靭性を低下させるので、0.0010〜0.0040%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.0005〜0.0025%である。
P:0.050%以下、S:0.0050%以下、N:0.010%以下
Pは、含有量が0.050%を超えると溶接部の靭性を低下させるので、0.050%以下に抑制するものとする。同じく、Sも、0.0050%を超えると母材および溶接部の靭性を低下させるので、0.0050%以下に抑制するものとする。
Nは、0.010%を超えると靭性を低下させるので、0.010%以下に抑制する。
以上が本発明の基本成分である。本発明では、基本成分に加えてさらに、下記成分を選択して含有することができる。それらは、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、Ca:0.0030%以下、Rem:0.02%以下、Mg:0.005%以下の中から選んだ少なくとも1種または2種以上であり、これらの元素は、いずれも鋼の強度を向上するのに寄与するか、HAZ(溶接熱影響部)靭性を向上するのに寄与する元素であり、必要に応じ、単独あるいは複合して含有することができる。各選択成分の範囲とその規定理由について、以下に説明する。
Cu:1.0%以下
Cuは、固溶強化により鋼の強度を向上する元素である。本発明では、0.05%以上含有してもよいが、1.0%を超えて含有すると、靭性が低下する。このため、Cuは、0.05〜1.0%の範囲で含有してもよい。
Ni:2.0%以下
Niは、靭性を保ちつつ強度を向上する元素である。本発明では、0.05%以上含有してもよいが、2.0%を超えて含有しても効果が飽和するため、コスト的に不利となる。このため、Niは、0.05〜2.0%の範囲で含有してもよい。
Cr:0.5%以下
Crは、鋼の強度を向上する元素である。本発明では、0.05%以上含有してもよいが、0.5%を超えて含有するとHAZ(溶接熱影響部)靭性が低下する。このため、Crは、0.05〜0.5%の範囲で含有してもよい。
V:0.1%以下
Vは、V(CN)として析出強化により、鋼の強度を向上する元素であり、0.003%以上含有してもよいが、0.1%を超えて含有すると、靭性を低下させる。このため、Vは、0.003〜0.1%の範囲で含有してもよい。
Ca:0.0030%以下
Caは、0.0003%以上の含有で、介在物の形態制御により、S、Oとのバランスを適切に選択することで、HAZ(溶接熱影響部)靭性を向上させる。一方、0.0030%を超えて含有してもその効果が飽和する。このため、Caは、0.0003〜0.0030%の範囲で含有してもよい。
Rem:0.02%以下
Remは、Rem(O、S)を形成して、HAZ(溶接熱影響部)靭性を向上させる。このような効果は、0.0003%以上の含有で認められるが、0.02%を超えて含有しても、その効果が飽和する。このためRemは、0.0003〜0.02%の範囲で含有してもよい。なお、Remとは希土類元素のことを意味し、代表的なものは、La、Ce、Hfなどである。
Mg:0.005%以下
Mgは、結晶粒の微細化により強度を向上する元素であるが、含有量が0.005%を超えるとその効果は飽和するので、Mgは、0.005%以下の範囲で含有してもよい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
さて、次に、優れた加工性をもつようにする観点から、本発明の鋼板は、下記(1)式を満たす必要がある。
表層部の硬さ+15Hv<板厚中心部の硬さ ・・・(1)
鋼板の硬さが(1)式を満たす場合に、優れた曲げ加工性が得られるからである。(1)式において、「表層部の硬さ」及び「板厚中心部の硬さ」はビッカ−ス硬さとして測定されたものであり、(1)式は、鋼板の表層部よりも板厚中心部(鋼板の厚さ方向中央部)の方が硬く、その差がビッカ−ス硬さで15よりも大きいことを示すものである。
上記の鋼板を得るための製造プロセスについて、以下に説明する。
まず、上記した組成の溶鋼を、転炉等で溶製し、連続鋳造等で鋼素材とする。
ついで、鋼素材を、1000〜1300℃の温度範囲に加熱し、鋼素材を完全にオーステナイト化する。加熱温度が1000℃未満では、熱間圧延を低温で行うことになり、圧延機への負荷が増大して圧延能率が低下する。一方、加熱温度が1300℃を超えると、結晶粒が粗大化するうえ、酸化ロスが顕著となり、歩留が低下する。
加熱後、950℃以下での累積圧下率30%以上、圧延終了温度750℃以上で熱間圧延を行なう。
本発明にいう950℃以下の圧延は、未再結晶温度域での圧延に相当する。オーステナイト未再結晶域で累積圧下率30%以上の熱間圧延を行うことにより、オーステナイト結晶粒界の面積を増大させ、圧延による歪エネルギーも多く蓄積させることができる。これにより、オーステナイト粒界およびオーステナイト粒内からのベイナイト変態を促進させる。より高温の再結晶域での圧延によるオーステナイト粒の微細化と、上記したオーステナイト未再結晶域での圧延の相乗効果により、生成するベイナイトは、大角粒界で区切られた、パケットサイズの小さいベイナイトとなる。これにより、厚鋼板として良好な靭性が得られる。
熱間圧延は、750℃以上の圧延終了温度で終了するようにする。本発明では、950℃以下の圧延を規定しているため、圧延終了温度は必然的に950℃以下になるが、圧延終了温度が低いほど靭性は向上する。しかし、圧延終了温度を750℃未満にしてもその効果は飽和し、圧延能率を低下させるだけなので、本発明では、圧延終了温度を750℃以上とした。好ましい圧延終了温度は800〜900℃である。
熱間圧延終了後、鋼板を冷却するが、冷却は空冷とする。冷却は550℃以下まで行う。550℃以下に冷却する前に次に述べる再加熱を行うと、変態が終了していないため、所望の鋼板の強度が得られない場合がある。また、本発明による、表層部を内部よりもむしろ軟らかくする作用が十分でなくなる場合もある。
さて、本発明のように鋼板の表層部の方が内部よりもむしろ軟らかくなるようにするためには、従って、上記のような冷却を行なった後に、鋼板表層部を、Ac1変態点以上、板厚中心部をAc1変態点以下に加熱することが必要になる。鋼板表層部がAc1変態点を下回る温度までしか再加熱されない場合には、表層部は軟質化せず、目的とする表層部が内部より軟らかい硬さの分布にならない。Ac1変態点以上の温度への再加熱の冶金的目的は、変態によって生成した硬質のベイナイト組織をAc1変態点以上、Ac3変態点未満の二相域温度に加熱することにより、一部をオーステナイトに変態させ、その後のゆるやかな冷却により、比較的軟質なフェライトを生成させることである。また、オーステナイトに変態しない硬質の部分においても、焼戻しにより軟らかくすることである。これらの作用により、表層部を内部より軟らかくすることができる。一方、鋼板全体として所望の強度を確保するため、鋼板内部の強度まで低下させないようにすることが必要である。このためには、鋼板の成分設計と再加熱時の温度管理が重要であり、成分設計については前述した通りである。再加熱時の温度管理としては、鋼板内部がAc1変態点を超えないようにすることが必要であり、板厚中心部をAc1変態点以下になるように再加熱するものとする。板厚中心部分がAc1変態点を超えて加熱されると、鋼板全体としての強度が大幅に低下する恐れがあるからである。なお、鋼板の温度は、表面の温度を放射温度計等によって測定するよりほかに方法がないため、本発明に規定する鋼板の温度は全て、特にことわらない限り、鋼板の表面の温度を以って代表するものとする。
鋼板の板厚方向に上記の温度分布を与えるには、鋼板を加熱炉にて加熱する際、加熱時間を十分長くとらずに表層部が内部よりも高い温度の状態で加熱炉から抽出する方法や、図1に示すように誘導加熱装置10により鋼板1の表層部を集中的に発熱させる方法、あるいは、図2に示すように、被圧延材である鋼板1の幅方向に列設したバーナのバーナ炎2により、鋼板1の表面を加熱する方法等を用いることができる。誘導加熱装置を用いる場合、その配置は、厚板圧延ラインにおける搬送経路上、すなわち、オンラインでも、あるいはオフラインでも構わないが、エネルギーコストの観点からは、圧延、冷却直後に加熱が可能なオンラインとすることが好ましい。また、誘導加熱装置やバーナにより加熱する場合、板厚中心部がAc1変態点を超えて加熱されないようにするための、板厚に応じた加熱時間の関係を、モデル式や数表にて予め決めておき、再加熱対象の被圧延材がくるごとに、その関係から決まる加熱時間だけ、手動または自動で再加熱するようにするのが好ましい。
表1に示す各組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法で鋼素材(スラブ)とした(鋼記号A〜X)。これらスラブ(鋼素材:250mm厚)を用いて、表2に示す圧延条件にて板厚40mmに熱間圧延して、空冷した後、同じく表2に示す条件で誘導加熱装置による再加熱を行い、No.1〜37の供試鋼を得た。板厚表面の温度は、放射温度計で、板厚中心部の温度は、誘導加熱の入力電力量から求められる表層部の発熱量と、表面温度の測定値から、シミュレーションにより、求めた。
Figure 0005464169
Figure 0005464169
これらの厚鋼板について、全厚のJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を行い、降伏点(YS)、引張強さ(TS)を測定した。また、板厚の1/4の厚さの部分(1/4t部)がちょうど板厚中心になるようにJIS4号衝撃試験片を採取し、シャルピー試験を行って、破面遷移温度(vTrs)を求めた。さらに、板厚方向の硬さの分布を測定し、表層部の硬さと内部(板厚中心部)の硬さを測定し、その差(ΔHv)を求めた。硬さは、板厚方向の断面を、ダイヤを当てる面にして測定した、ビッカース硬さにより評価し、表層部の硬さは、表面から板厚方向に2mmの位置の測定値である。その結果を表3に示す。ここで、鋼板の材質としての所望の値は、YS>450MPa、TS>570MPa、YR<0.85、vTrs<-20℃、ΔHv>15とした。
Figure 0005464169
化学成分、製造条件が本発明の範囲内であるNo.1〜13の鋼板は、機械的性質、硬さの分布ともに上記の目標とする範囲内に入った。しかし、化学成分あるいは製造条件が本発明の範囲から外れるNo.14〜37の鋼板は、強度(YS、TS)、靭性(vTrs)のどれかが上記の目標とする範囲から外れていた。
1 鋼板(被圧延材)
2 バーナ炎
10 誘導加熱装置
30 テーブルローラ

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.005〜0.02%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.0〜2.5%、Al:0.01〜0.0%、Nb:0.010〜0.060%、Ti:0.005〜0.025%、B:0.0010〜0.0040%、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、N:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式を満たすことを特徴とする加工性に優れた引張強度628MPa以下の高張力鋼板。
    鋼板の表層部の硬さ+15Hv<鋼板の板厚中心部の硬さ ・・・(1)
  2. 請求項1に記載の成分に加え、さらに、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、Ca:0.0030%以下、Rem:0.02%以下、Mg:0.005%以下から選んだ少なくとも1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の加工性に優れた引張強度628MPa以下の高張力鋼板。
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