JP2000017378A - 水中溶接性に優れる鋼矢板 - Google Patents

水中溶接性に優れる鋼矢板

Info

Publication number
JP2000017378A
JP2000017378A JP10188888A JP18888898A JP2000017378A JP 2000017378 A JP2000017378 A JP 2000017378A JP 10188888 A JP10188888 A JP 10188888A JP 18888898 A JP18888898 A JP 18888898A JP 2000017378 A JP2000017378 A JP 2000017378A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
less
steel sheet
steel
haz
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP10188888A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3546290B2 (ja
Inventor
Tatsuki Kimura
達己 木村
Fumimaru Kawabata
文丸 川端
Kenichi Amano
虔一 天野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Steel Corp filed Critical Kawasaki Steel Corp
Priority to JP18888898A priority Critical patent/JP3546290B2/ja
Publication of JP2000017378A publication Critical patent/JP2000017378A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3546290B2 publication Critical patent/JP3546290B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 過酷な環境での溶接における、溶接割れやHA
Z 硬化の問題を解消した、水中での溶接性に優れる鋼矢
板について提案する。 【解決手段】 C:0.005 〜0.030 mass%、Si:1.0 ma
ss%以下、Mn:0.6 〜2.0 mass%、Al:0.1 mass%以
下、P:0.015 mass%以下、S:0.015 mass%以下、N
b:0.010 〜0.1 mass%、Ti:0.005 〜0.030 mass%お
よびB:0.0010〜0.0040mass%を含有し、残部がFeおよ
び不可避的不純物の組成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、主に土木工事に
用いられる鋼矢板、とりわけ水中における溶接時の割れ
並びに溶接熱影響部(以下、HAZ と示す)の硬化を抑制
した、靱性に優れた鋼矢板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼矢板は、港湾や河川の擁壁や護岸の土
留めなどの公共性の高い土木工事において主に使用さ
れ、特に腐食環境下で長期間使用されることから、耐食
性を向上させるために、エポキシ樹脂やポリエチレン樹
脂などの高分子材料の貼付や電気防食などの各種処理が
施されている。
【0003】前者の処理では、熱間圧延により鋼矢板を
製造した後、高分子シートの貼付工程が必要となり、生
産性が低く、製造コストが大きく増加することや施工中
にこのシートが剥離し、防食機能が部分的に低下するな
どの問題がある。
【0004】この点、後者の処理は、施工現場において
鋼矢板表面に犠牲アノードを溶接して電気防食を行うこ
とから、安価で簡便な防食方法である。しかし、この電
気防食用の電極板は水中で溶接によって取付けられ、こ
の溶接処理が水素の侵入しやすい環境下における局部的
な急速加熱および急速冷却を伴うために、溶接割れやHA
Z の靱性低下が助長されることが、問題として残る。
【0005】近年、大規模な地震で被害を受けた港湾施
設を調査した結果、水中溶接により陽極鋼板を取り付け
た部位を起点に鋼矢板が破壊していることが判明し、こ
のような大地震においても被害を最小限にする、安価で
かつ高い信頼性を有する鋼矢板の開発および提供が望ま
れている。
【0006】ここに、鋼矢板は、JIS A5528で規定され
るSY295 並びにSY390 グレードがあり、化学成分とし
て、P:0.040 mass%以下、S:0.040 mass%以下およ
びCu:0.25mass%以上の規定と、降伏応力 (Y.S.) 、引
張強さ (T.S.) および伸び (El) に関する規定とが、そ
れぞれ記載され、溶接性や靱性に関する規定はない。
【0007】現状では、C:0.15〜0.20mass%、Si:0.
2 〜0.42mass%およびMn:0.84〜1.40mass%を含む中炭
素鋼が、一般的に用いられている。しかし、このような
中炭素鋼では、水中溶接といった過酷な溶接施工環境下
において、溶接割れやHAZ の靱性低下に対して十分な性
能を発揮できないことは上述のとおりであり、優れた溶
接性や高い靱性を有する鋼矢板が求められていた。
【0008】かような状況のもと、水中での溶接も考慮
した鋼矢板が、特開平8−269622号および特開平10−17
21号各公報に提案されている。すなわち、特開平8−26
9622号公報には、C:0.05〜0.25mass%、Si:0.05〜0.
50mass%、Mn:0.4 〜2.0 mass%、Cu:1.0 mass%以
下、Ni:1.0 mass%以下およびNb:0.05mass%以下を含
み、残部がFeおよび不可避的不純物から構成され、さら
にNや炭素当量を規制した溶接特性の優れた鋼矢板の製
造方法が開示されている。
【0009】一方、特開平10−1721号公報には、C:0.
05〜0.18mass%を含有し、かつ0.05mass%≦ (2Nb +V
+Ti) ≦0.20mass%を満足し、炭素当量が0.40mass%以
下である、水中溶接性と靱性に優れる鋼矢板の製造方法
が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】特開平8−269622号公
報においては、溶接性を考慮して炭素当量の規制を制限
しているために、現行の鋼矢板よりも溶接部の割れに対
する改善が見込まれるが、なお溶接割れ率を0%にでき
ないことや、HAZ の硬さがHV350 以上の高い範囲にあ
り、HAZ 靱性に課題を有していた。
【0011】同様に、特開平10−1721号公報において
も、溶接部の最高硬さがHV300 を超えており、HAZ 靱性
になお課題が残る。また、母材の強度確保の観点から、
加速冷却を行う場合がほとんどであり、その冷却の制約
条件、つまり500 ℃以上800 ℃以下の温度域を冷却速度
30℃/s以下で制御冷却すること、を考慮すると、鋼矢板
特有の形状において均一な冷却を達成することは困難で
あることが明らかであり、材質の均一性も問題となる。
【0012】なお、鋼矢板は、その爪部の噛み合わせが
重要になるため、開口部の幅や噛み出し量を所定の範囲
に抑える観点から、成形性を重視して、圧延仕上温度を
800℃以上、通常は950 ℃以上としている。そのため、
組織が粗くなり、母材の靱性といえども−20℃程度であ
り、溶接割れやHAZ 硬化性の問題と共に、母材の靱性が
低いことも問題である。
【0013】そこで、この発明は、とりわけ過酷な環境
での溶接における、溶接割れやHAZ硬化の問題を解消し
た、水中での溶接性に優れる鋼矢板について提案するこ
とを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】まず、発明者らは、水中
で溶接した際のHAZ の最高硬さおよび溶接割れの有無、
並びに母材の強度特性について、様々な角度から鋭意検
討を行った結果、この発明を導くに到った。
【0015】すなわち、この発明の要旨構成は、次のと
おりである。 (1) C:0.005 〜0.030 mass%、Si:1.0 mass%以下、
Mn:0.6 〜2.0 mass%、Al:0.1 mass%以下、P:0.01
5 mass%以下、S:0.015 mass%以下、Nb:0.010 〜0.
1 mass%、Ti:0.005 〜0.030 mass%およびB:0.0010
〜0.0040mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純
物からなることを特徴とする水中溶接性に優れる鋼矢
板。
【0016】(2) C:0.005 〜0.030 mass%、Si:1.0
mass%以下、Mn:0.6 〜2.0 mass%、Al:0.1 mass%以
下、P:0.015 mass%以下、S:0.015 mass%以下、N
b:0.010 〜0.1 mass%、Ti:0.005 〜0.030 mass%お
よびB:0.0010〜0.0040mass%を含み、さらにCu:1.0
mass%以下、Ni:1.0 mass%、Cr:1.0 mass%以下、M
o:0.3 mass%以下、V:0.10mass%以下、Ca:0.0010
〜0.0100mass%、REM : 0.002 〜0.030 mass%の1種ま
たは2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
からなることを特徴とする水中溶接性に優れる鋼矢板。
【0017】
【発明の実施の形態】まず、この発明を導くに到った実
験結果について、詳しく説明する。すなわち、Si:0.3
mass%、Mn:1.5 mass%、Al:0.03 mass %、P:0.01
0mass%、S:0.005 mass%、Nb:0.04 mass %、Ti:
0.015 mass%およびB:0.0010 mass %の基本組成に、
C量を0.018 〜0.35mass%の範囲で種々に変化させて含
有する種々の鋼を用いて、母材の強度特性、水中溶接時
の割れの有無およびHAZ の硬さについて調査した。すな
わち、各種鋼を用いて、鋼矢板の圧延を模擬して、1270
℃に加熱してから圧延仕上温度850 ℃で板厚20mmまで圧
延後に放冷することによって、鋼板を作製し、供試材と
した。
【0018】かくして得られた各供試材について、電
流:160 〜230 A,電圧:34〜50V,溶接速度:7.5 〜
8.3 cm/min,平均入熱:58 kJ/cmおよび溶接長さ:150
mmの条件で軟鋼用被覆アーク溶接棒(4.0 mmφ)を用い
て、溶接を施した際の溶接割れ発生率を調査した。その
調査結果を、図1に示すが、C含有量が低くなると溶接
割れ発生率が低下し、とくにC含有量が0.03mass%以下
の領域では、溶接割れの発生率を0%にすることが可能
である。
【0019】なお、溶接割れ発生率は、溶接長に対して
20分割に切断し、その断面を研磨させた後、割れの有無
を調べ、20断面あたりの割れ発生個数から、溶接割れ発
生率を求めた。
【0020】また、上記の供試材に上記と同様の溶接を
施した際のHAZ の最高硬さについて調査した結果を、図
2に示す。C含有量が低下するにつれてHAZ の最高硬さ
も低下する傾向が示され、C含有量が0.030 mass%未満
の領域ではHV280 以下となり、HAZ の硬化を非常に小さ
く抑制できることが判明した。
【0021】一方、上記の供試材における母材の強度変
化は、図3に示すように、C含有量の低下とともにパー
ライト分率が減少するために低下し、鋼矢板としての十
分な強度が得られていないことも判明した。
【0022】以上の実験結果から、フェライト+パーラ
イト組織が主体の現状の組織形態を踏襲した鋼矢板で
は、母材の強度確保と水中での溶接性とを両立させるの
は困難であることが明らかになり、次に、組織制御によ
る高強度化の可能性について検討した。
【0023】図4に、C:0.015 mass%、Si:0.3 mass
%およびMn:1.5 mass%を基本組成として、Nbを単独添
加した鋼、Bを単独添加した鋼、そしてNbおよびBを複
合添加した鋼から、上記した実験と同様に製造した鋼板
の、0.2 %Y.S.について測定した結果を示す。同図か
ら、基本組成鋼およびこの組成にNbやBを単独添加した
鋼では、フェライト主体組織が形成され、0.2 %Y.S.の
向上効果は小さかった。一方、NbおよびBを複合添加し
た鋼では、フェライト変態が抑制され、ベイナイト主体
組織を形成した結果、0.2 %Y.S.は大幅に向上し、鋼矢
板として十分な強度を得ることができた。
【0024】次に、C:0.010 mass%、Si:0.3 mass
%、Mn:1.55mass%、Nb:0.050 mass%およびB:0.00
20mass%に、種々の含有量のPを含有する鋼から、上記
した実験と同様に製造した鋼板について、水中溶接を想
定した熱サイクルを実施してHAZ を再現し、その再現HA
Z の靱性を調べた。図5に、再現HAZ 靱性に及ぼすPの
影響を示すように、Pが0.015 mass%を超えるような領
域では、粒界破壊を生ずるために、再現HAZ 靱性を大き
く低下させた。しかしながら、Pを0.015 mass%未満に
することにより粒界脆化が抑制され、良好なHAZ 靱性を
示した。なお、このような現象は、B無添加材では認め
られないことから、極低C−Nb−B鋼においてPによる
粒界脆化が特に顕著に生じるため、Pの取り扱いが重要
なポイントになる。
【0025】すなわち、この発明は、極低炭素鋼にNbお
よびBを複合添加してベイナイト組織として、高強度の
下に、水中での溶接割れを回避するとともに、HAZ の硬
化をHV280 以下にまで低減すること、さらにPを制限し
てHAZ の粒界脆化をも防止することによって、溶接部特
性を飛躍的に向上させたところに特徴がある。
【0026】以下に、この発明における各化学成分の限
定理由について述べる。 C:0.005 〜0.030 mass% Cは、前述のとおり、水中での溶接割れをまねき、また
HAZ の硬化能の増大による靱性低下をもたらす元素であ
り、0.030 mass%以下とする必要がある。一方、0.005
mass%未満にするには、製鋼プロセスにおいて脱炭のた
めの処理時間の増大や使用原料の高級化が避けられず、
経済性が損なわれるため、Cは0.005 〜0.030 mass%の
範囲とした。
【0027】Si:1.0 mass%以下 Siは、鋼中に固溶して強度を上昇するのに有効な元素で
ある。本来、溶接構造用鋼では、HAZ の靱性が損なわれ
るために、0.6 mass%程度を上限に制限されてきたが、
この発明ではC量を極端に少なくすることから、HAZ の
靱性に有害な島状マルテンサイト(M−A)の生成量が
少なくなる結果、Siについて特に厳しい制限を行う必要
はなく、1.0 mass%を上限として添加できる。下限につ
いては特に規定しないが、強度を確保するためには0.02
mass%以上とすることが好ましい。
【0028】Mn:0.6 〜2.0 mass% Mnは、極低炭素のベイナイト組織を安定的に得るのに重
要な元素であるが、2.0 mass%を超えると強度が必要以
上に高くなりすぎ、靱性を低下させる。一方、0.6 mass
%未満では安定的にベイナイト組織が得られず、必要母
材強度を満たさないことから、Mnは0.6 〜2.0 mass%の
範囲とした。
【0029】Al:0.1 mass%以下 Alは、脱酸剤として添加するが、0.1 mass%を超えると
鋼の清浄性を阻害することから、0.1 mass%以下に制限
した。なお、Ti脱酸を行うことによって、Alレスとする
ことも可能である。
【0030】P:0.015 mass%以下 Pは、極低C−Nb−B鋼において、HAZ 靱性を支配する
重要な元素であり、Pが0.015 mass%を超える領域では
粒界脆化を助長し、HAZ 靱性を低下させる。そのため、
Pは0.015 mass%以下にする必要がある。
【0031】S:0.015 mass%以下 Sは、MnS を形成し、母材の靱性を低下させるため、0.
015 mass%以下に制限する。
【0032】Nb:0.010 〜0.1 mass% この発明では、微量のNbおよびBの複合添加によってベ
イナイト組織を形成し、母材の強度を上昇させる重要な
元素である。また、Nbはオーステナイトの未再結晶域を
拡大させて組織を微細化するのに有効な元素でもある。
これらの効果は、0.010 mass%未満では得られず、逆に
0.1 mass%を超えての添加は母材並びにHAZ の靱性を低
下させるため、0.010 〜0.1 mass%の範囲とする。
【0033】Ti:0.005 〜0.030 mass% Tiは、鋼中のNをTiN として固定し、後述するBをフリ
ーBとして残留させることにより、粒界からのフェライ
ト変態を抑制させる重要な元素である。また、製鋼プロ
セスにおいて、脱酸元素として使用することもある。こ
れら効果は、0.005 mass%未満では認められず、逆に0.
030 mass%を超えての添加は母材靱性を低下させるた
め、0.005 〜0.030 mass%の範囲とした。
【0034】B:0.0010〜0.040 mass% Bは、オーステナイト粒界上に偏析し、粒界からのフェ
ライト変態を抑制させる重要な元素であり、一方で前述
したNbとの微量複合添加において、著しい変態強化作用
をも持つ。さらに、NbおよびBの複合添加によって、γ
単相領域が拡大し、成形可能温度領域も拡大するため、
母材の靱性向上にも寄与する。これらの効果は、0.0010
mass%未満では発現せず、逆に0.0040mass%を超えて添
加しても、その効果が飽和することから、0.0010〜0.00
40mass%の範囲とする。好適な範囲としては、0.0015〜
0.0030mass%の範囲である。
【0035】上記成分の他に、電気防食効果が期待でき
ない大気暴露域や飛沫域における耐食性および強度の向
上、また連続鋳造時の割れ防止、そしてHAZ 靱性の向上
などを所期して、Cu, Ni, Cr, Mo, V, REM およびCaを
選択的に1種または2種以上添加することができる。
【0036】ここで、各元素の添加目的を要約すると、
電気防食効果が期待できない大気暴露域や飛沫域の耐食
性向上を所期する場合はCu, CrおよびMoが好適であり、
同様に、強度向上を所期する場合はCu, Cr, Moおよび
V、連鋳時の割れ防止を所期する場合はNi、そしてHAZ
靱性向上を所期する場合は REMおよびCaが、それぞれ好
適である。なお、これらの元素の添加によって、この発
明の課題である水中における溶接性などは全く損なわれ
ることはない。
【0037】以下に、各添加元素の限定理由について述
べる。 Cu:1.0 mass%以下 Cuは、耐食性向上に有効な元素であると共に、ベイナイ
ト変態開始温度を低温化し、強度上昇にも有効に作用す
る。しかしながら、1.0 mass%を超えると、圧延中の割
れの発生や表面傷を助長するため、添加の上限を1.0 ma
ss%とする。なお、下限は特に設ける必要がないが、か
ような効果を得るためには0.05mass%以上の添加が必要
である。
【0038】Ni:1.0 mass%以下 Niは、特にCuを添加した場合の圧延中の割れの予防に有
用な元素であり、Cu添加量に対して1/2 以上の量のNiを
添加することが望ましいが、Niは非常に高価な元素であ
り、多量に添加すると経済性を失するから、その上限を
1.0 mass%とした。
【0039】Cr:1.0 mass%以下 Crは、Cuと同様に、耐食性および強度を向上させる作用
があるが、1.0 mass%を超えての添加はHAZ の靱性を低
下させるため、1.0 mass%以下とした。なお、下限は特
に設けないが、かような効果を得るためには0.05mass%
以上の添加が必要である。
【0040】Mo:0.3 mass%以下 Moも、CuやCrと同様に耐食性と強度を向上させる元素で
あるが、0.3 mass%を超えての添加はHAZ 靱性を低下さ
せる上、非常に高価な元素であるので経済性も失するた
め、0.3 mass%を上限とした。なお、下限は特に設けな
いが、かような効果を得るためには0.01 mass %以上の
添加が必要である。
【0041】V:0.10mass%以下 Vは、析出強化によって強度を向上させるのに有効な元
素であるが、0.10mass%を超えて添加しても飽和するこ
とから、上限を0.10mass%とした。なお、下限は特に設
けないが、かような効果を得るためには0.005 mass%以
上の添加が必要である。
【0042】Ca:0.0010〜0.0100mass% Caは、HAZ の組織を微細化し、靱性の向上に有効な元素
であるが、0.0010mass%未満ではその効果に乏しく、逆
に0.0100mass%を超えて添加すると、鋼の清浄性を阻害
することから、0.0010〜0.0100mass%の範囲とした。
【0043】REM : 0.002 〜0.030 mass% REM は、Caと同様にHAZ の組織を微細化し、靱性の向上
に有効な元素であるが、0.002 mass%未満ではその効果
に乏しく、逆に0.030 mass%を超えて添加すると鋼の清
浄性を阻害することから、0.002 〜0.030 mass%の範囲
とした。
【0044】なお、OおよびNについては特に規定を加
えないが、O:0.040 mass%以下、N:0.070 mass%以
下に制限することが望ましい。特にNについては、Tiに
よって完全にTiN にすることが必要であり、NはTi添加
量の1/3.4 以下を目安とする。
【0045】この発明の鋼矢板は、以上の成分組成に規
制することによって、所期した特性を獲得できるから、
製造工程は鋼矢板の一般に従うものでよく、特に限定す
る必要はないが、次に示す製造方法が推奨される。
【0046】すなわち、上述した成分組成範囲に調整し
た鋳片または鋼片を、1000〜1300℃に再加熱後、700 ℃
以上で圧延を終了させることによって、水中での溶接性
および靱性に加えて成形性にも優れる鋼矢板を製造する
ことができる。
【0047】ここで、再加熱温度を1000℃以上とするの
は、一旦組織を均一なオーステナイトとすることと、圧
延の負荷を軽減させるためである。一方、1300℃を超え
る再加熱は、鋼材の酸化が著しくなり、スケールロスも
増加するため、1000〜1300℃の範囲とすることが好まし
い。
【0048】次いで、再加熱後に熱間で圧延を行って鋼
矢板を製造するが、その圧延仕上温度は700 ℃以上とす
る。なぜなら、爪部の形状は鋼矢板にとって重要な項目
であり、圧延仕上温度が700 ℃未満となると、この発明
に従う鋼では一部がベイナイト変態を開始し、成形性を
低下させるため、爪部の寸法精度が低下する。そのた
め、圧延終了温度は700 ℃以上とした。
【0049】ここに、鋼矢板における爪部の成形性と圧
延仕上温度との関係について、0.18mass%Cを含有する
従来鋼と、C:0.02mass%、Mn:1.5 mass%、Nb:0.04
0 mass%およびB:0.0015mass%を含有する鋼と、を対
象に調査した。図6は、圧延仕上温度と爪部成形不良率
との関係を示すグラフである。なお、爪部成形不良率と
は、当該鋼から製造した鋼矢板において、開口幅や噛み
だし量が所定の範囲以上になった鋼矢板の発生率を表し
ている。また、圧延仕上温度を変化させるために、加熱
温度を種々変化させて、実験を行った。
【0050】図6から判るように、従来鋼においては、
圧延仕上温度が830 ℃よりも低い温度となると、爪部に
おいて成形不良が発生し始めている。この成形不良は、
オーステナイトからフェライトへの変態が一部でも始ま
ると、急激に悪化する傾向が認められている。
【0051】これに対して、C:0.02mass%、Mn:1.5
mass%、Nb:0.040 mass%およびB:0.0015mass%を含
有する、この発明に従う鋼では、成形不良発生温度は約
700℃であり、より低温での圧延が可能である。これ
は、発明鋼ではオーステナイトからフェライトへの変態
温度が事実上ベイナイト変態開始温度(700 ℃)に対応
していることによる。
【0052】なお、圧延後の冷却は、放冷を基本とする
が、加速冷却を行っても放冷材との組織変化が小さいた
め、ウェブの厚い鋼矢板などで高い靱性を得たい場合に
は、加速冷却を行っても差し支えない。しかしながら、
加速冷却を行う場合には、歪による鋼矢板の変形に特に
注意を払う必要がある。
【0053】
【実施例】表1に示す種々の化学組成に調整した鋼スラ
ブを用いて、表2に示す条件に従って鋼矢板を製造し
た。かくして得られた各鋼矢板について、そのウェブの
厚み方向における引張り試験による母材特性と水中溶接
におけるHAZ の最高硬さおよび割れの有無、並びに再現
HAZ 靱性について調べた。その調査結果を表2に併記す
る。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】この発明に従う鋼矢板(鋼A〜M)は、Y.
S.が295MPa以上およびT.S.が490MPa以上、そして−40℃
以下の破面遷移温度を示し、優れた母材性能を有してい
る。また、水中溶接におけるHAZ の硬化量は、HV280 以
下と極めて小さくなり、溶接割れも全く発生しなかっ
た。一方、Pが0.018 mass%である鋼矢板(鋼N)で
は、HAZ 靱性が大きく低下した。この破面を観察した結
果、粒界破壊を生じていることを確認した。
【0057】従来の鋼矢板(鋼O,P,Q)では、母材
の強度特性は規格を十分満足しているが、水中溶接のHA
Z はHV300 以上の高い硬さを示し、溶接割れも認めら
れ、HAZ 靱性は低かった。また鋼Oを760 ℃で仕上圧延
したものは爪部の形状も不良であった。
【0058】
【発明の効果】この発明により、水中溶接においてHAZ
硬化の少なく、耐割れ性に優れた高い信頼性を有する鋼
矢板を工業規模で安価に提供可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶接割れ発生率とHAZ の最高硬さに及ぼす炭素
の影響を示すグラフである。
【図2】HAZ の最高硬さに及ぼす炭素の影響を示すグラ
フである。
【図3】フェライト−パーライト鋼における強度と炭素
量の関係を示すグラフである。
【図4】C:0.015 mass%、Si:0.3 mass%、Mn:1.5
mass%を基本組成として、Nbを単独添加させた鋼、Bを
単独添加させた鋼およびNbとBを複合添加させた鋼の母
材の0.2 %Y.S.を示すグラフである。
【図5】再現HAZ 靱性に及ぼすPの影響を示すグラフで
ある。
【図6】圧延仕上温度と爪部成形不良率との関係を示す
グラフである。
フロントページの続き (72)発明者 天野 虔一 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.005 〜0.030 mass%、Si:1.0 ma
    ss%以下、Mn:0.6〜2.0 mass%、Al:0.1 mass%以
    下、P:0.015 mass%以下、S:0.015 mass%以下、N
    b:0.010 〜0.1 mass%、Ti:0.005 〜0.030 mass%お
    よびB:0.0010〜0.0040mass%を含有し、残部がFeおよ
    び不可避的不純物からなることを特徴とする水中溶接性
    に優れる鋼矢板。
  2. 【請求項2】 C:0.005 〜0.030 mass%、Si:1.0 ma
    ss%以下、Mn:0.6〜2.0 mass%、Al:0.1 mass%以
    下、P:0.015 mass%以下、S:0.015 mass%以下、N
    b:0.010 〜0.1 mass%、Ti:0.005 〜0.030 mass%お
    よびB:0.0010〜0.0040mass%を含み、さらにCu:1.0
    mass%以下、Ni:1.0 mass%、Cr:1.0 mass%以下、M
    o:0.3 mass%以下、V:0.10mass%以下、Ca:0.0010
    〜0.0100mass%、REM : 0.002 〜0.030 mass%の1種ま
    たは2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
    からなることを特徴とする水中溶接性に優れる鋼矢板。
JP18888898A 1998-07-03 1998-07-03 水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法 Expired - Fee Related JP3546290B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18888898A JP3546290B2 (ja) 1998-07-03 1998-07-03 水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18888898A JP3546290B2 (ja) 1998-07-03 1998-07-03 水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000017378A true JP2000017378A (ja) 2000-01-18
JP3546290B2 JP3546290B2 (ja) 2004-07-21

Family

ID=16231648

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP18888898A Expired - Fee Related JP3546290B2 (ja) 1998-07-03 1998-07-03 水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3546290B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002332538A (ja) * 2001-05-14 2002-11-22 Kawasaki Steel Corp 防食性に優れた鋼材およびその製造方法
JP2011195961A (ja) * 2011-04-28 2011-10-06 Jfe Steel Corp 加工性に優れた引張強度628MPa以下の高張力鋼板
JP2012201904A (ja) * 2011-03-24 2012-10-22 Sumitomo Metal Ind Ltd 鋼矢板

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002332538A (ja) * 2001-05-14 2002-11-22 Kawasaki Steel Corp 防食性に優れた鋼材およびその製造方法
JP4506029B2 (ja) * 2001-05-14 2010-07-21 Jfeスチール株式会社 防食性に優れた鋼材およびその製造方法
JP2012201904A (ja) * 2011-03-24 2012-10-22 Sumitomo Metal Ind Ltd 鋼矢板
JP2011195961A (ja) * 2011-04-28 2011-10-06 Jfe Steel Corp 加工性に優れた引張強度628MPa以下の高張力鋼板

Also Published As

Publication number Publication date
JP3546290B2 (ja) 2004-07-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4358900B1 (ja) 低温靭性に優れた高強度鋼板及び鋼管並びにそれらの製造方法
JP4445161B2 (ja) 疲労強度に優れた厚鋼板の製造方法
JP5348386B2 (ja) 低降伏比かつ耐脆性亀裂発生特性に優れた厚肉高張力鋼板およびその製造方法
JP4882251B2 (ja) 高強度高靱性鋼板の製造方法
JP2010222680A (ja) 加工性に優れた高強度高靭性鋼の製造方法
JP5477089B2 (ja) 高強度高靭性鋼の製造方法
JP4379085B2 (ja) 高強度高靭性厚鋼板の製造方法
JP4264177B2 (ja) 表層に粗粒フェライト層を有する鋼材の製造方法
JP2000129392A (ja) 耐疲労き裂進展特性に優れた高強度鋼材及びその製造方法
JP3941211B2 (ja) 耐hic性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法
JP2005298877A (ja) 疲労き裂伝播特性に優れた鋼板およびその製造方法
JP2004124113A (ja) 非水冷型薄手低降伏比高張力鋼およびその製造方法
JP2009127072A (ja) 高変形能を備えた厚肉高強度高靭性鋼管素材の製造方法
JP2006241510A (ja) 大入熱溶接部hazの低温靭性に優れた高強度溶接構造用鋼とその製造方法
JP5008879B2 (ja) 強度および低温靭性の優れた高張力鋼板および高張力鋼板の製造方法
JPH06235044A (ja) 溶接熱影響部の疲労強度と靭性に優れた溶接構造用高張力鋼
JP5589335B2 (ja) 高靭性鋼の製造方法
JP2541070B2 (ja) 母材の脆性破壊伝播停止特性に優れた高ニッケル合金クラッド鋼板の製造方法
JP3546290B2 (ja) 水中溶接性に優れる鋼矢板の製造方法
JP4264296B2 (ja) 溶接部靭性、条切り特性に優れた低降伏比570MPa級高張力鋼及びその製造方法
JP4348102B2 (ja) 高温強度に優れた490MPa級高張力鋼ならびにその製造方法
JP2007197778A (ja) 強度依存性の小さい耐疲労亀裂伝播特性に優れた高強度鋼材およびその製造方法。
KR20200047081A (ko) 황화물 응력부식 균열 저항성이 우수한 고강도 강재의 제조방법
JP4715179B2 (ja) 加工性に優れた高張力鋼板の製造方法
JP4419572B2 (ja) 疲労特性に優れた複合組織鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20040114

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040316

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040329

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313114

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080423

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090423

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100423

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100423

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110423

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110423

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120423

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130423

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130423

Year of fee payment: 9

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130423

Year of fee payment: 9

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130423

Year of fee payment: 9

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130423

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140423

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees