JP4314962B2 - 疲労特性に優れた複合組織鋼板およびその製造方法 - Google Patents

疲労特性に優れた複合組織鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、疲労特性に優れた複合組織鋼板に関し、特に頻繁に繰り返し荷重が作用する自動車等の構造部材に適する複合組織鋼板に関する。
近年、環境問題等を背景として、高強度鋼板適用による自動車車体の軽量化が要望されている。疲労限が、静的強度の増加とともに、単調に増加するとした場合、構造部品、足廻り部品、補強部品等では、部材剛性が確保できる範囲で、軽量化できると考えられてきた。しかしながら、スポット溶接継ぎ手疲労、特に十字疲労や足廻り部品の隅肉アーク溶接疲労は、高強度化による改善効果がないと報告されている。また、疲労限については、例えば平滑材の疲労限は、静的強度の増加と共に単調に増加し続けるわけではなく、上限の閾値が存在し、それを超えると急激に低下することが知られる。従って、部材の切欠き、応力集中部の応力集中係数を軽減するとともに、鋼板そのものの疲労特性を、大幅に改善することが、高強度鋼板適用の鍵となる。
鋼板の疲労特性を向上させる方法として、結晶粒径の微細化、第二相の活用等が試みられてきた。特許文献1では、熱延仕上圧延およびその後の冷却条件を最適化して、表層部フェライトの細粒化および硬質第二相組織の粗大化抑制(0.5〜2μm)を図り、疲労特性が改善できるとしている。これは、表層フェライト細粒化および硬質第二相の粗大化抑制により、応力集中が緩和されるとともに、き裂伝播が抑制されるためと説明されている。これは、熱延高張力鋼板に限定された技術である。
また、特許文献2には、フェライト中に硬質第二相を含有させ、フェライト相、硬質第二相の粒径、硬度を規定するとともに、さらに疲労き裂の伝播を阻止するために、硬質第二相の平均自由行程を20μm以下に抑制することにより、疲労強度を向上させる方法が提案されている。ここでは、フェライト中に、硬質第二相が分散した組織形態を呈し、硬質第二相の面積率より硬質第二相間の距離(硬質第二相の平均自由行程)の抑制が重要としている。これは硬質第二相の平均自由行程が大きい場合、フェライト中に発生したき裂が、硬質第二相に遭遇する前に、十分な長さに成長してしまい、硬質第二相でき裂を阻止、停留させることができないためとしている。
しかしながら、上記の従来技術には次の問題点がある。例えば、特許文献1に記載の技術の場合、結晶粒径の微細化、硬質第二相の微細化はいずれも疲労き裂、特に長いき裂の伝播特性を低下させることが知られており、必ずしも疲労特性改善に万全の処方箋とはいえず、逆効果にもなりうる。特に、そこに示されている0.5〜2μmの微細な硬質第二相の場合、硬質第二相によるき裂伝播阻止効果は、極めて小さいと推定される。また、特許文献2に記載の技術の場合、フェライト中に発生した疲労すべり帯やき裂の伝播を硬質第二相粒界で阻止し、停留させることによって、疲労強度を向上させるとしているが、孤立分散した状態の硬質第二相の場合、き裂は硬質第二相に遭遇後、硬質第二相を迂回して、フェライト中を伝播していくため、大幅な疲労特性の改善は期待できない。
特開平4−235219号公報 特開平7−11383号公報
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、頻繁に繰り返し荷重が作用する自動車等の構造部材に適する、疲労特性に優れた複合組織鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、従来技術では不十分であった疲労特性を大幅に改善して上記課題を解決するために、硬質第二相を活用し、かつその硬質第二相の組織形態に着眼し、硬質第二相組織形態が疲労特性に及ぼす影響について検討を重ねた。検討の過程で、図2に模式的に示されるような従来提案されているフェライト中に硬質第二相が分散した組織形態とは全く逆の、すなわち、図1に示すように、硬質第二相中にフェライト相が孤立分散した組織形態とすることで、疲労特性が極めて優れた複合組織鋼板を得ることができることを知見した。さらに、本発明者らは、フェライト粒径に対して硬質第二相厚さを一定の厚さ以上とすることで、より疲労特性が向上することを初めて見出した。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(3)を提供する。
(1)mass%で、C:0.01〜0.2%、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Al:0.01〜0.1%、N:0.01%以下で、残部が鉄および不可避的不純物からなり、硬質第二相の中に、フェライト相が孤立分散した組織形態を有し、かつ鋼板の平均フェライト粒径dと硬質第二相厚さtが次式の関係式を満足することを特徴とする疲労特性に優れた複合組織鋼板。
t(μm)>0.038×d(μm)+0.35
(2) 上記(1)の複合組織鋼板において、さらにCr:1%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、Ni:1%以下、B:0.01%以下、Ti:0.3%以下、Nb:0.3%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする、疲労特性に優れた複合組織鋼板。
(3) 上記(1)または(2)に記載の成分組成を有する鋼を熱間圧延し、巻き取った後、600℃以上Ac3+70℃以下の温度で箱型焼鈍を施し、その後(α+γ)域の温度で連続焼鈍する工程を有することを特徴とする、疲労特性に優れた複合組織鋼板の製造方法。
本発明によれば、硬質第二相中にフェライト相が孤立分散した組織形態を有する複合組織鋼板とすることにより、疲労特性を向上させることができ、さらに平均フェライト粒径と硬質第二相厚さが所定の関係式を満足した場合に、その効果をさらに向上させることができる。
以下、発明の詳細について説明する。
まず、成分組成について説明する。
本発明に係る複合組織鋼板は、mass%で、C:0.01〜0.2%、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Al:0.01〜0.1%、N:0.01%以下で、残部が実質的に鉄からなる。さらにCr:1%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、Ni:1%以下、B:0.01%以下、Ti:0.3%以下、Nb:0.3%以下のうち1種以上を含有してもよい。
C:0.01〜0.2%
Cは、一定量の硬質第二相を生成させ、硬質第二相の強度を確保するのに必要な元素であり、そのためにその含有量を0.01%以上とする。一方、その含有量が0.2%を超えると、加工性、溶接性の劣化が著しく、本発明が対象とする自動車用鋼板等に適さない。したがって、C含有量を0.01〜0.2%の範囲とする。硬質第二相の連続性を強固にし、かつ必要な厚さを確保し、さらに硬質第二相の硬度を高めることにより、疲労特性をさらに改善することが可能であることから、その含有量は0.03%以上が望ましく、0.05%以上がより望ましい。
Si:2.0%以下
Siは、強度確保および低温変態相を安定して得るために有効な元素であるが、その含有量が2.0%を超えると、赤スケールによる表面性状劣化、めっき密着性低下、化成処理不良等の問題が顕著となり、実用鋼板として適さない。したがって、Si含有量を2.0%以下とする。
Mn:3.0%以下
Mnは、一般に鋼中のSをMnSとして析出させてスラブの熱間割れを防止するのに有効である。本発明では、硬質第二相を形成させるために、焼入れ性を向上させるMnを一定量添加することが望ましい。しかし、Mn含有量が3.0%を超えると、スラブコストの著しい上昇を招くだけでなく、加工性の劣化を招く。したがって、Mn量を3.0%以下とする。焼入れ性向上効果を発揮させるためには、Mn含有量を0.3%以上、さらには0.8%以上とすることが望ましい。
P:0.08%以下
Pは、強度確保および低温変態相を安定して得るために有効な元素であるが、その含有量が0.08%を超えると、耐二次加工脆性を劣化させる等の弊害を生じる。また、亜鉛めっき鋼板とした場合に合金化処理性の低下を引き起こす。したがって、P含有量を0.08%以下とする。
S:0.03%以下
Sは、熱間加工性を低下させ、スラブの熱間割れ感受性を高め、その含有量が0.03%を超えると、微細なMnSの析出により加工性を劣化させる。したがって、S含有量を0.03%以下とする。
Al:0.01〜0.1%
Alは、鋼の脱酸に寄与するとともに、鋼中の不用な固溶Nを窒化物として固定する役割がある。この効果は、Al含有量が0.01%未満では十分ではなく、0.1%を超えても含有量に見合う効果が得られない。したがって、Al含有量を0.01〜0.1%の範囲内とする。
N:0.01%以下
Nは、時効性の観点から固溶状態で残存させることは望ましくなく、その含有量は少ない方がよい。N含有量が0.01%を超えると、過剰な窒化物の存在により延性、靱性が劣化する。したがって、N含有量を0.01%以下とする。
Cr,Mo,V:それぞれ1%以下
Cr,Mo,Vは、フェライト生成元素であり、フェライト相+低温変態相の複合組織を得るために有効であるから、必要に応じて添加することができる。しかし、含有量がそれぞれ1%を超えると、コストに見合う効果が得られないので、Cr、Mo、Vを添加する場合は、その含有量をそれぞれ1%以下とする。
Ni:1%以下
Niは、溶接性を阻害せずに、焼入れ性および靱性を向上させる効果があるから、必要に応じて添加することができる。しかし、その含有量が1%を超えても、コストに見合う効果が得られない。このため、Niを添加する場合には、その含有量を1%以下とする。
B:0.01%以下
Bは、焼入れ性向上に有効な元素であり、低温変態相を安定して生成するために必要に応じて添加することができる。ただし、Bを0.01%を超えて添加してもコストに見合う効果が得られないので、Bを添加する場合には、その含有量を0.01%以下とする。
Ti,Nb:それぞれ0.3%以下
Ti,Nbは、窒化物を形成し、Nを固定化する働きがある。Alに代わり、Ti、NbによりNを固定化することにより、結晶粒の微細化が図られ、疲労特性の向上が期待できるので、必要に応じてこれらを添加してもよい。ただし、これらの含有量がそれぞれ0.3%を超えても、コストに見合う効果が得られないので、これらを添加する場合には、その含有量を0.3%以下とする。
本発明の鋼板は、上記成分の他、残部は実質的に鉄であればよく、不可避的不純物や、発明の作用・効果を損なわない範囲内の他の微量元素は許容される。
次に、組織について説明する。
本発明は、硬質第二相の中に、フェライト相が孤立分散した組織形態とすることにより、複合組織鋼板の疲労特性の大幅な向上を図ったものである。複合組織鋼板は、優れた強度−延性バランスを示すため、自動車用鋼板等に広く適用されている。さらに、上述したように、硬質第二相を活用した疲労特性改善の試みもなされてきた。しかしながら、従来技術では、必ずしも十分な疲労特性の改善が達成されていないのが現状である。
本発明者らは、特に硬質第二相の組織形態に着目し、硬質第二相組織形態、体積率、フェライト粒径の異なる系統的な材料を準備し、電子顕微鏡下で疲労き裂の伝播挙動の観察を詳細に行った。その結果、疲労き裂発生および伝播挙動に、硬質第二相の組織形態が、極めて重要な役割を果たしていることを見出した。すなわち、従来技術にみられるフェライト相中に硬質第二相が孤立分散した材料(以下、従来鋼)では、フェライト相中で発生した疲労き裂は進展後、硬質第二相に遭遇すると、一旦停留する挙動が見られるものの、容易に、硬質第二相を迂回して、軟質のフェライト中を伝播していく様子が観察され、疲労強度の大きな改善は見られなかった。一方、硬質第二相中にフェライトが孤立分散した材料(以下、発明鋼)では、従来鋼と比較して、フェライト中での疲労き裂発生までの寿命が長くなり、疲労強度が著しく改善すること、伝播したき裂が硬質第二相に遭遇すると、硬質第二相界面で停留し、低応力ではこれ以上き裂は進展せず、疲労限が大幅に上昇することを知見し、本発明に至った。
さらに、硬質第二相中にフェライト相が孤立分散する組織形態であっても、硬質相の厚さが小さい場合、上述した硬質相によるき裂進展阻止効果が小さくなることを知見した。詳細な検討を進めた結果、平均フェライト粒径dに対して、疲労特性が特に向上する硬質第二相厚さtが存在し、より好ましい疲労特性を達成するためには、平均フェライト粒径dに対して、硬質第二相厚さtが所定以上となればよいことを初めて知見した。すなわち、t(μm)>0.038×d(μm)+0.35の関係式を満足することが好ましい。これはフェライト粒径が大きいほど、硬質第二相に遭遇する際の疲労き裂が長くなり、長いき裂の進展を阻止するためには、より厚く強固な硬質相が必要であることを意味している。この関係式を満足しない場合、疲労き裂が、硬質相界面で一定サイクル間停留後、硬質相を突破して進展していきやすくなる。
疲労特性をさらに改善する観点から、平均フェライト粒径dと平均硬質第二相厚さtが次式の関係式を満足することがさらに好ましい。
t(μm)>0.057×d(μm)+0.35
平均硬質第二相厚さtを厚くすることで、き裂の進展を阻止するが、平均硬質第二相厚みtが平均フェライト粒径d以上になる場合は、硬質第二相の体積率が高くなるため、成形性の劣化を招く。よって、平均硬質第二相厚さtは平均フェライト粒径d未満が好ましい。
本発明鋼のミクロ組織の一例を、従来鋼と併せて図3に示す。本発明鋼は、従来鋼とは全く逆の組織形態、すなわち、マルテンサイトを主体とする硬質第二相中に、フェライト相が孤立分散する組織形態を呈する材料である。ただし、本発明鋼において、不可避的に、局部的に、硬質相の不連続部分が存在することがあり得る。ここに、硬質第二相の厚さとは、光学顕微鏡レベルで観察される硬質第二相のうちの粒状の形状を呈するものを除いた、鱗片状あるいは薄片状の形態を呈するものの短軸側の厚みをいい、これら個々の硬質第二相の短軸側厚みの平均値である。これは、断面観察組織写真を画像処理装置を使って処理することにより求めることができる。
以下に、本発明の「硬質第二相の中にフェライト相が孤立分散した組織形態」について詳細に説明する。硬質第二相の中にフェライト相が孤立分散した組織形態とは、断面観察視野内のフェライト粒の粒界を硬質第二相がネットワーク状に覆っている形態の組織であるが、必ずしも1つのフェライト粒の粒界の全てを硬質第二相で覆っている必要はなく、二次元断面の粒界の60%以上、望ましくは80%以上を覆っている形態であればよい。また、本発明の組織形態を有する鋼板を得るには、一定量の第2相分率が必要なのは言うまでもなく、第2相分率が10%以上、望ましくは13%以上である。逆に第2相分率が50%を超える場合は、成形性が劣化する。
組織の観察および特定は、通常の組織観察と同様に以下のような手法で行えばよい。まず、鋼板の定常部(エッジ近傍や鋼板長手方向のトップ、ボトム近傍の非定常部以外の部位)の任意の位置から組織観察用のサンプルを切り出し、圧延方向に平行な断面の組織を観察する。板厚表層部を除く任意の断面を400倍程度(望ましくはさらに高倍)の倍率で観察し、組織を特定する。定常部の組織であれば、通常、1観察視野の組織で、その鋼板の組織を代表しているとしてもよいが、組織のバラツキが懸念される場合には複数、例えば5〜10視野を観察し、その平均を鋼板の組織とすればよい。
硬質第二相とは、マルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイト等の低温変態生成相であり、これらの1種または2種以上を含むものである。硬質第二相がベイナイト相の場合にも、本発明の組織形態とすることにより所望の効果が得られるが、硬質第二相が硬質であるほど疲労特性の向上が著しいとの知見を得たことから、疲労き裂の伝播過程を考慮すると、前述のように硬質なマルテンサイトを主体とした組織とすることが望ましい。マルテンサイトに加え、さらにベイナイトおよび残留オーステナイトのうち1種以上を含む組織としてもよい。
残留オーステナイトを含む場合には、硬質第二相が疲労き裂と遭遇した際に高い応力場に曝され、歪誘起変態により残留オーステナイト相がマルテンサイト相に変態するため、マルテンサイトと同様の役割を果たす。また、残留オーステナイトを含む場合には、含まない場合に比べ成形性、特に延性が向上する。そのため、疲労特性向上を重視する場合には、硬質第二相をマルテンサイトのみとし、疲労特性−成形性バランスを重視する場合には、硬質第二相をマルテンサイトと残留オーステナイトを含む組織とすることが望ましい。
硬質第二相をマルテンサイト単相とするか、残留γを含む複相とするかは、(α+γ)温度域での均熱焼鈍後の冷却サイクルに依存し、作り分けが可能である。要は、(α+γ)温度域での均熱過程で、ネットワーク状のγ相中にフェライト相が孤立分散した状態の組織を作り込んでおくことがポイントである。
なお、本発明鋼は、母材のみならず、加工後の疲労特性や打抜き材の疲労特性等にも顕著な改善効果がある。
次に、以上の複合組織鋼板を得ることが可能な製造方法について説明する。
この方法は、上記成分組成を有する鋼を熱間圧延し、巻き取った後、600℃以上Ac+70℃以下の温度で箱型焼鈍を施し、その後(α+γ)域の温度で連続焼鈍するものである。
第1段階の焼鈍:600℃以上Ac+70℃以下の箱型焼鈍
本発明で規定した組織形態を有する材料を得るためには、熱延板の第1段階の焼鈍およびその焼鈍条件が極めて重要なポイントとなる。本発明者らは、種々の熱延板に対して様々な条件で熱延板焼鈍を施し、最終的な硬質第二相の組織形態を詳細に調査した。その結果、第1段階の焼鈍として、600℃以上Ac+70℃以下の焼鈍を施すことにより、最終的に本発明が狙いとする硬質第二相の組織形態が得られることを見出した。この第1段階の焼鈍は、650℃以上Ac以下の温度で行うことが好ましく、650℃以上Ac以下の温度で行うことがより好ましい。
このような第1段階の焼鈍によって本発明が狙いとする硬質第二相の組織形態が得られるメカニズムは必ずしも明確になっていないが、この第1段階の焼鈍により、図4に示すようなフェライト+バンド状のパーライト組織に作り込んでおくことで、最終的な二相域焼鈍の際に、最も効率的にネットワーク状のγ相と孤立分散したフェライトの組織形態が得られることを知見した。
第2段階の焼鈍:(α+γ)域の温度での連続焼鈍
本発明に必要不可欠な低温変態相を得るためには、第2段階として行われる連続焼鈍の焼鈍温度の制御は非常に重要である。α単相域で焼鈍する場合は、低温変態相が得られず、またγ域まで加熱する場合は、この焼鈍工程によって、フェライト+バンド状のパーライトに制御した組織に初期化されてしまうため、本発明が提案するネットワーク状の硬質第二相と孤立分散したフェライト相を有する組織が得られない。よって、第2段階として行われる連続焼鈍の焼鈍温度は(α+γ)域とする。
本発明においては、熱延条件や巻取温度は特に限定されるものではなく、通常の条件でよい。また、スラブを熱間圧延するにあたり、加熱炉で加熱後に圧延してもよいし、加熱することなく直接圧延してもよい。また、連続焼鈍に際しては、箱型焼鈍した鋼板を連続焼鈍してもよいし、通常の範囲内の40〜85%にて冷間圧延を施してから連続焼鈍してもよい。さらに本発明によって得られる鋼板は、組織制御によって性能向上を図っているため、亜鉛系めっき鋼板としても発明の効果が損なわれることはなく、加えて、合金化処理や、めっき後に有機被膜処理を施してもよい。
表1に示す鋼番No.1〜No.10の鋼を溶製後、連続鋳造によりスラブを製造した。表1に示すように、本発明鋼No.1〜7は、いずれも規定した成分範囲内にあるのに対し、比較鋼No.8〜10は、規定した成分範囲外である。すなわちNo.8〜10は、それぞれC量、Mn量、Si量が本発明で規定する上限値を上回る。
これらのスラブを1200℃に加熱後、通常操業の仕上温度(Ar点以上)で熱間圧延を行い、巻取温度550〜600℃で巻き取った後、表2に示す条件で箱型焼鈍し、熱延鋼板を製造した。こうして得られた熱延鋼板を酸洗後、一部を除いて表2に示す冷圧率および焼鈍温度で連続焼鈍し、鋼板を製造した。
これらの鋼板について、最終ミクロ組織とフェライト組織形態、フェライト粒径、ネットワーク状硬質相厚さ、引張強度(TS)および疲労限(σw)を調査した。疲労限は引張圧縮疲労試験により測定した。これらの試験結果を、組織形態、フェライト粒径、硬質第二相厚さ(ネットワーク状硬質相厚さ)、平均フェライト粒径dと硬質第二相厚さtの関係式の右辺の値とともに、表2に示す。但し、鋼板No.24〜26は、C量、Mn量、Si量がそれぞれ成分範囲外の従来鋼であり、成形性、溶接性、表面性状、コスト面等で課題がある。
表2中のフェライト組織形態の箇所は、本発明が目指す、硬質第二相中にフェライト相が孤立分散した形態を“分散型”、その逆の形態を“通常型”と表記した。硬質第二相中にフェライト相が孤立分散した組織形態となる場合が、本発明鋼であり、通常型が従来鋼である。表2および図5に示すように、本発明鋼は、フェライト相中に硬質第二相が分散して存在する従来鋼より、疲労限が大幅に向上しており、硬質第二相厚さtがt(μm)>0.038×平均フェライト粒径d(μm)+0.35を満足する場合は、さらに疲労限が向上することが確認された。また、本発明鋼6と7、本発明鋼19と20をそれぞれ比較すると明らかなように、前記不等式の条件を満足している場合に、同一強度レベルでも、σwは高くなることが確認された。
本発明に係る複合組織鋼板は、頻繁に繰り返し荷重が作用する自動車構造部材等に広く活用することができる。
本発明鋼のミクロ組織を示す模式図。 従来鋼のミクロ組織を示す模式図。 本発明鋼および従来鋼のミクロ組織を示す顕微鏡写真。 フェライト+パーライトのバンド状組織写真。 引張強度と疲労限の関係を示す図。

Claims (3)

  1. mass%で、C:0.01〜0.2%、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Al:0.01〜0.1%、N:0.01%以下で、残部が鉄および不可避的不純物からなり、硬質第二相の中に、フェライト相が孤立分散した組織形態を有し、かつ鋼板の平均フェライト粒径dと硬質第二相厚さtが次式の関係式を満足することを特徴とする疲労特性に優れた複合組織鋼板。
    t(μm)>0.038×d(μm)+0.35
  2. さらにCr:1%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、Ni:1%以下、B:0.01%以下、Ti:0.3%以下、Nb:0.3%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の疲労特性に優れた複合組織鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載の成分組成を有する鋼を熱間圧延し、巻き取った後、600℃以上Ac+70℃以下の温度で箱型焼鈍を施し、その後(α+γ)域の温度で連続焼鈍する工程を有することを特徴とする、疲労特性に優れた複合組織鋼板の製造方法。
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