JP3544451B2 - 触媒コンバータ用メタル担体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車エンジン等の排気ガスを浄化するために使用される触媒コンバータ用メタル担体およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
昨今、自動車排気ガス浄化用の触媒コンバータとして、メタル担体が使用されてきている。従来から触媒コンバータにはセラミックス担体が主に使用されているが、耐熱性、低圧損および車体への搭載性の点から、メタル担体の使用量が増大している。
【0003】
図1に示すように従来のメタル担体1は、耐熱性ステンレス鋼箔からなるメタルハニカム体2を金属製の外筒3内に組込んで製造されている。メタルハニカム体2は、主として図2に示すように、厚さ50μm程度の帯状の平箔5と、該平箔5と同一の平箔を波付け加工して得た帯状の波箔6とを重ね、巻取軸8の回りに矢印Bの方向に巻回し、渦巻状にして製造される。帯状の波箔6には各波の稜線7が幅方向に形成されており、渦巻状に巻回された円柱状のメタルハニカム体2は、円柱の軸方向に多数の通気孔4を有している。そして、この通気孔に触媒を担持させて触媒コンバータとしている。
【0004】
触媒コンバータには、エンジンからの高温の排ガスによる激しい熱サイクルに耐え、かつエンジンからの激しい振動にも耐えるための優れた耐久性が要求される。そのため従来のメタル担体1は、メタルハニカム体2の平箔5と波箔6の接触部、およびメタルハニカム体2の外周と外筒3の内周とが接合されている。 接合手段としては、ロウ付け、抵抗溶接、拡散接合が行われているが、ロウ材や溶接治具等を用いることなく、高真空下あるいは非酸化性雰囲気下で高温加熱することにより接合できる拡散接合が有利である。
【0005】
一般に拡散接合に際しては、接合すべき材料同士をたがいに密着させ、加熱中も終始面圧が加わるように加圧装置あるいはウエイトが使用される。ところが、上記のような渦巻状に巻回されたメタルハニカム体2においては、外部から面圧を付与することができないので、巻回時、図2に示すように平箔5に対し矢印Aの方向にバックテンションをかけ、あるいは外筒3に挿入後、縮径することによって面圧を付与していた。
【0006】
しかし、巻回時のバックテンションではメタルハニカム体2の外周部に面圧がかかり難く、外筒3の縮径では中心部に面圧がかかり難い。そして両者を併用しても、メタルハニカム体2の中心部と外周部の中間部では面圧がかかり難かった。中間部に必要な面圧を付与するために、バックテンションを高めると、中心部の通気孔4が座屈し、縮径加工率を上げると、外周部の通気孔4が座屈するという問題があった。
【0007】
この問題に対して本発明者らは、平箔5および波箔6の表面粗さを小さくすることで、メタルハニカム体2の中間部が座屈しない範囲のバックテンションおよび外筒縮径により、中心部から外周部まで良好に拡散接合されることを見出だし、平箔5および波箔6の表面粗さを、平均粗さ(Ra)で0.001μm以上0.2μm以下とすることを特開平8−38912号公報により提案している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に提案している技術において、平箔5および波箔6の表面粗さは、平均粗さRaで0.001μm以上0.2μm以下と限定しているが、表面粗さの測定方向については言及していない。また平箔5と波箔6の接触幅を30μm以上としており、上記公報の実施例によると、平箔と波箔の接触幅が20μmの場合Raが0.1μmでも接合不良が生じている。
【0009】
本発明者らの知見では、帯状の平箔5および波箔6の長さ方向(L方向)に測定した表面粗さが上記範囲であっても、直角方向(C方向)に測定した表面粗さが大きい場合は、拡散接合部の耐久性が不十分である。
さらに、拡散接合の際の加熱については、従来1250℃以上の高温加熱が行われていたが、より低温で拡散接合することが望まれていた。
【0010】
本発明は、自動車エンジン等の排気ガスを浄化するために使用される触媒コンバータ用メタル担体およびその製造法、さらにはメタルハニカム体用箔であって、渦巻状に巻回されたメタルハニカム体2が中央部から外周部にかけ全体にわたり座屈などの変形がなく、良好に拡散接合された耐久性の優れたメタル担体を提供することを目的とする。また拡散接合のための加熱温度を従来よりも低温で行うことを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の第1発明メタル担体は、耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、波付け加工した帯状の波箔で各波の稜線が幅方向であるものとが、重ねて渦巻状に巻回された多数の通気孔を有するメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記平箔および波箔の圧延方向に対して直交する方向を通気孔方向とすると共に、前記平箔および波箔の表面粗さが、前記通気孔方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下であり、かつ前記平箔と前記波箔の接触部が拡散接合により接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体である。
【0012】
第2発明メタル担体は、耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、波付け加工した帯状の波箔で各波の稜線が幅方向であるものとが、重ねて渦巻状に巻回された多数の通気孔を有するメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記平箔および波箔の圧延方向に対して直交する方向を通気孔方向とすると共に、前記平箔および波箔の表面形状が、前記通気孔方向の長さ1インチあたりのピーク数PPIで100以上であり、かつ前記平箔と前記波箔の接触部が拡散接合により接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体である。
なお、本発明においては上記の如く、「1インチあたりのピーク数PPI」と記載したが、これは請求項における「2.54cmあたりのピーク数」と同じ意味であり、かつ、「PPI」は「peak per inch」を表わし、以下の説明では単位長さあたりのピーク数を表現するのに、便宜上「1インチあたりのピーク数PPI」或いは単に「PPI」を用いるものとする。
【0013】
第1発明メタル担体および第2発明メタル担体において、前記平箔および波箔の表面粗さが、前記通気孔方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下であり、かつ前記平箔および波箔の表面形状が前記通気孔方向の長さ1インチあたりのピーク数PPIで100以上であることが好ましい。また、前記拡散接合が1100℃〜1250℃の温度でなされていることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成する本発明の第1発明法は、多数の通気孔を有するメタルハニカム体が金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体の製造方法において、耐熱性ステンレス鋼からなる平箔を圧延方向に対して直交する方向を幅方向として帯状に形成し、その表面粗さが幅方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下の帯状の平箔を、波付け加工して各波の稜線が幅方向である帯状の波箔とし、該波箔と前記平箔とを重ねて渦巻状に巻回することにより前記メタルハニカム体とし、前記平箔と前記波箔の接触部を拡散接合により接合することで、該接合部の拡散接合率を高めるとともに、前記平箔および前記波箔の耐熱性合金元素の蒸発を抑止したことを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体の製造方法である。
【0015】
第2発明法は、多数の通気孔を有するメタルハニカム体が金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体の製造方法において、耐熱性ステンレス鋼からなる平箔を圧延方向に対して直交する方向を幅方向として帯状に形成し、その表面形状が幅方向の長さ1インチあたりのピーク数PPIで100以上の帯状の平箔を、波付け加工して各波の稜線が幅方向である帯状の波箔とし、該波箔と平箔とを重ねて渦巻状に巻回することにより前記メタルハニカム体とし、前記平箔と前記波箔の接触部を拡散接合により接合することで、該接合部の拡散接合率を高めるとともに、前記平箔および前記波箔の耐熱性合金元素の蒸発を抑止したことを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体の製造方法である。
【0016】
第1発明法および第2発明法において、前記平箔を、表面粗さが幅方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下のものとし、かつ、表面形状が幅方向の長さ1インチあたりのピーク数PPIで100以上のものとすることが好ましく、さらに、前記拡散接合を1100℃〜1250℃の温度で行うことが好ましい。
【0017】
さらに、耐久性の優れたメタル担体に使用するメタルハニカム体を構成する本発明の箔は、帯状の平箔と波箔とを重ねて渦巻状に巻回された多数の通気孔を有するメタルハニカム体を構成する箔であって、その表面粗さが、圧延方向に対して直交する方向である通気孔方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下であること、及び/又は、その表面形状が、圧延方向に対して直交する方向である通気孔方向の長さ1インチあたりのピーク数PPIで100以上であること、を特徴とするメタルハニカム体用箔である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のメタル担体1は、図1に示すように、メタルハニカム体2が金属製の外筒3内に組込まれている。メタルハニカム体2は、図2に示すように、耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔5と、該平箔5と同一の平箔を波付け加工して得た帯状の波箔6とを重ねて巻回し、渦巻状にして製造される。帯状の波箔6には各波の稜線7が幅方向に形成されており、渦巻状に巻回された円柱状のメタルハニカム体2は、円柱の軸方向に多数の通気孔4を有している。
【0019】
メタルハニカム体2用の材料としては、耐熱性合金元素としてAl等を含有するフェライト系ステンレス鋼、例えば20%Cr−5%Al鋼が採用される。また外筒3用の材料としては、メタルハニカム体2ほどの耐熱性は要求されないので、Al等の耐熱性合金元素を含有しないステンレス鋼を採用してもよい。
【0020】
第1発明メタル担体は、平箔5および波箔6の表面粗さが、通気孔4の方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下であり、かつ平箔5と波箔6の接触部が拡散接合により接合されている。そして、該接合部が高い拡散接合率を有するとともに、平箔5および波箔6はAl等の耐熱性合金元素の蒸発が抑止されている。平均粗さの測定方向は、巻回される前の平箔5および波箔6においては、図2に示すように幅方向つまり矢印Cの方向である。
【0021】
渦巻状に巻回されたメタルハニカム体2は、外筒3に挿入された後、拡散接合処理される。この拡散接合処理により、平箔5と波箔6の接触部が拡散接合されるとともに、メタルハニカム体2の外周面と外筒3の内周面とが、ロウ付けあるいは拡散接合により接合される。拡散接合処理は、真空中あるいは非酸化性雰囲気で加熱することにより行われる。
【0022】
帯状の平箔5は厚さが50μm程度であり、冷間圧延により製造される。その表面には通常、圧延方向に筋が見られる。メタルハニカム体2においては、図3の拡大図に示すように、平箔5および波箔6の通気孔4の方向が、圧延方向に対して直交する方向、つまり矢印Cの方向となる。すなわち、通気孔4の方向の平均粗さRacは圧延方向に見られる筋に対して直交する方向に測定した平均粗さである。
【0023】
メタルハニカム体2の平箔5と波箔6の接合部を、通気孔4に直交する方向から、すなわち図3の白矢印の方向から見たときのミクロ的な概念図を示すと、図4(a)のように、接合前には平箔5および波箔6の粗さ曲線で囲まれる空間がある。この空間に起因して、接合後に図4(b)のようにボイド9が生じる。
【0024】
このボイド9を減少させ、あるいは小さくすることで接合強度を増すことができる。すなわち図4(b)において、接合線10の長さLに対する接合部分の合計長さΣai の割合(これを拡散接合率という)を高くすることで接合強度を増すことができる。
ここで、拡散接合率=Σai /Lは、接合部について通気孔4の方向の切断面を顕微鏡観察して求めることができる。
【0025】
第1発明メタル担体は、C方向の平均粗さRacを0.001μm以上0.3μm以下とすることで、図4(a)の粗さ曲線で囲まれる空間の高さを低くし、平箔5と波箔6の接触部における拡散接合性を向上させ、接合後のボイド9を減少させて拡散接合率を高めたものである。したがって、触媒コンバータとして使用したときの耐久性が優れている。
【0026】
Racを各種変化させて試作したメタルハニカム体の平箔5と波箔6の接合部について、上記切断面を顕微鏡観察した。拡散接合は、真空度10−4Torr、1250℃90分保持の条件で行った。その結果、図5に示すようにRacを0.3μm以下とすることで拡散接合率を0.3以上にすることができる。そして、拡散接合率が0.3以上であれば、自動車エンジン等に搭載したときの耐久性に問題がないことを確認している。またRacを0.001μm未満とすることは、工業的には製造負荷が著しく増大する。したがって、上記のように限定した。
【0027】
なお図5の●印は帯状の平箔5および波箔6の長さ方向(L方向)の平均粗さであり、約0.2μm以下で拡散接合率との相関は認められない。図5においてRac=0.03μm、0.30μm、0.41μmの箔の表面の拡大図と粗さ曲線を図6、図7、図8に示す。
【0028】
箔の表面粗さは、JIS B 0601−1994 で規定される算術平均粗さ(Ra)について、JIS B 0651−1976 で規定される触針式粗さ測定器により、JIS に準拠して測定したが、特に箔の変形の影響を排除して精確な測定を行うために、供試材料と定盤の密着に留意した。触針は、先端の曲率半径が1μmのものを使用し、カットオフ値0.8mm、触針の走査速度0.3mm/秒、標点距離4mmで測定した。
【0029】
第1発明のメタル担体は、上記のように拡散接合性が優れているため、拡散接合処理時の加熱において、加熱温度を低下させ、あるいは加熱時間を短縮させることができるので、Al等の耐熱性合金元素の蒸発が抑止される。したがって触媒コンバータとしての使用時の耐久性が優れている。
【0030】
第2発明メタル担体は、平箔5および波箔6の表面形状が、通気孔4の方向の長さ1インチあたりのピーク数PPIで100以上であり、かつ平箔5と波箔6の接触部が拡散接合により接合されている。そして、該接合部が高い拡散接合率を有するとともに、平箔5および波箔6はAl等の耐熱性合金元素の蒸発が抑止されている。PPIの測定方向は、巻回される前の平箔5および波箔6においては、図2に示すように幅方向つまり矢印Cの方向である。
【0031】
渦巻状に巻回されたメタルハニカム体2は、第1発明と同様、外筒3に挿入された後、拡散接合処理され、平箔5と波箔6の接触部が拡散接合されるとともに、メタルハニカム体2の外周面と外筒3の内周面とが接合される。
なお、PPIのような単位長さあたりのピーク数については、表面粗さとしてJIS に規定されていないので、本発明では表面形状という。測定は触針式粗さ測定器により行うことができ、上記Racと同様の条件で測定した。
【0032】
第2発明メタル担体は、C方向のPPIを100以上とすることで、図4(a)の粗さ曲線で囲まれる空間のピッチを狭くし、平箔5と波箔6の接触部における拡散接合性を向上させ、接合後のボイド9を減少させて拡散接合率を高めたものである。したがって第1発明と同様、触媒コンバータとして使用したときの耐久性が優れている。
【0033】
PPIを各種変化させて試作したメタルハニカム体の平箔5と波箔6の接合部について、上記切断面を顕微鏡観察した。拡散接合は、真空度10−4Torr、1250℃90分保持の条件で行った。その結果、図9に示すようにPPIを100以上とすることで拡散接合率を0.3以上にすることができる。なおPPIの上限は特に定めないが、工業的に製造負荷を著しく増大させることなく可能な範囲はおよそ2000以下の範囲である。
第2発明メタル担体も、上記のように拡散接合性が優れているため、第1発明メタル担体と同様、拡散接合処理時の加熱においてAl等の耐熱性合金元素の蒸発が抑止され、したがって耐久性が優れている。
上記第1発明メタル担体および第2発明メタル担体において、好ましくは、平箔5および波箔6の表面粗さが、通気孔4の方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下であり、かつ平箔5および波箔6の表面形状が、通気孔4の方向の長さ1インチあたりのピーク数PPIで100以上である。このような条件では拡散接合性がより向上し、拡散接合率がより高まるとともに、耐熱性合金元素の蒸発がより抑止され、耐久性の優れたメタル担体となる。
【0034】
また、拡散接合時の加熱を1100℃〜1250℃の温度で行うことができる。従来から行われている1250℃では拡散接合6がより良好に行え、1100℃以上の従来より低い温度でも、従来なみあるいはそれ以上の良好な拡散接合が行え、耐久性の優れたメタル担体となる。
【0035】
つぎに本発明法は、図1に示すように、多数の通気孔4を有するメタルハニカム体2が金属製の外筒3内に組み込まれてなるメタル担体の製造法である。図2に示すように、耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔5および波箔6を重ねて渦巻状に巻回することによりメタルハニカム体2とし、平箔5と波箔6の接触部を拡散接合により接合するにあたり、平箔5および波箔6の幅方向の表面粗さあるいは表面形状を限定することで、両箔の接合部の拡散接合率を高めるとともに、耐熱性合金元素の蒸発を抑止し、触媒コンバータとして使用するときの耐久性を向上させたものである。
【0036】
メタルハニカム体2用の材料および外筒3用の材料には、上記本発明メタル担体の説明において述べた通りのものを採用できる。また拡散接合処理も、上記のとおり、真空中あるいは非酸化性雰囲気での加熱処理であり、巻回したメタルハニカム体2を外筒3内に挿入した後に行うことで、平箔5と波箔6の接触部を拡散接合するとともに、メタルハニカム体2の外周面と外筒3の内周面とがロウ付けあるいは拡散接合により接合される。
【0037】
第1発明法は、平箔5の表面粗さを、幅方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下とし、波箔6は、このような表面粗さの平箔5を波付け加工して各波の稜線が幅方向である帯状のものとする。
上記表面粗さの平箔5を得るには、冷間圧延において、ロール長さ方向の平均粗さの小さいワークロールを使用する。ワークロールは圧延により摩耗して表面粗さが小さくなるので、長さ方向の平均粗さを必ずしも0.3μm以下とする必要はなく、少なくとも最終パス圧延前の状態で0.3μm以下であればよい。そのため、仕上げ圧延のパス回数や圧下率などに応じてワークロールの管理を行うことで、上記のような平箔5を得ることができる。
【0038】
Racの測定に際しては、上記第1発明メタル担体において述べたとおりとする。Racをこのように限定することで、上記のとおり、図5のように拡散接合率を高めるとともに、平箔5および波箔6の耐熱性合金元素の蒸発を抑止することができ、メタル担体の耐久性が向上する。
【0039】
第2発明法は、平箔5の表面形状を幅方向の長さ1インチあたりのピーク数PPIで100以上とし、波箔6は、このような表面形状の平箔5を波付け加工して各波の稜線が幅方向である帯状のものとする。
上記表面形状の平箔5を得るには、冷間圧延において、ロール長さ方向のPPIの小さいワークロールを使用する。第1発明法におけると同様、ワークロールは圧延により摩耗するので、長さ方向のPPIを必ずしも100以上とする必要はなく、少なくとも最終パス圧延前の状態で100以上あればよい。そのため、仕上げ圧延のパス回数や圧下率などに応じてワークロールの管理を行うことで、上記のような平箔5を得ることができる。
【0040】
PPIの測定に際しては、上記第2発明メタル担体において述べたとおりとする。PPIをこのように限定することで、上記のとおり、図9のように拡散接合率を高めるとともに、平箔5および波箔6の耐熱性合金元素の蒸発を抑止することができ、メタル担体の耐久性が向上する。
【0041】
また第1発明法および第2発明法において、平箔5として、表面粗さが幅方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下であり、かつ表面形状が幅方向の長さ1インチあたりのピーク数PPIで100以上のものとし、該平箔5と該平箔5を波付け加工した波箔6とを重ねて渦巻状に巻回することが好ましい。このような条件では、拡散接合率が確実に向上し、耐久性の優れたメタル担体となる。
【0042】
さらに、前記拡散接合を1100℃〜1250℃の温度で行うことがより好ましい。従来から行われている1250℃では、拡散接合率がより向上する。そして1100℃以上のより低い温度でも、従来なみあるいはそれ以上の拡散接合率となり、さらに一層耐久性の優れたメタル担体が得られる。
【0043】
【実施例】
下記材料を使用して外径100mm、長さ100mmのメタル担体を製造し、耐久試験を行った。
平箔:20Cr−5Alフェライト系ステンレス鋼箔、厚さ50μm、幅100mm
波箔:同上平箔を波付け加工したもの、波高さ1.25mm、ピッチ2.54mm外筒:18Cr−8Ni耐熱ステンレス鋼管、肉厚1.5mm、長さ100mm、外径102mm
【0044】
(1)メタル担体1(従来例)
平箔および波箔の表面粗さ:Rac=0.35μm、表面形状:PPI=80
平箔に10kgf のバックテンションを加えながら波箔とともに巻回し、外径100mmのメタルハニカム体を作製した。外筒の内面全面にろう材を塗布した後、このメタルハニカム体を挿入した。その後、1250℃、10−4Torrの高温高真空下で90分加熱して製造した。
【0045】
(2)メタル担体2(本発明例)
平箔および波箔の表面粗さ:Rac=0.10μm、表面形状:PPI=80
平箔に10kgf のバックテンションを加えながら波箔とともに巻回し、外径100mmのメタルハニカム体を作製した。外筒の内面全面にろう材を塗布した後、このメタルハニカム体を挿入した。その後、1250℃、10−4Torrの高温高真空下で90分加熱して製造した。
【0046】
(3)メタル担体3(本発明例)
平箔および波箔の表面粗さ:Rac=0.35μm、表面形状:PPI=500
平箔に10kgf のバックテンションを加えながら波箔とともに巻回し、外径100mmのメタルハニカム体を作製した。外筒の内面全面にろう材を塗布した後、このメタルハニカム体を挿入した。その後、1250℃、10−4Torrの高温高真空下で90分加熱して製造した。
【0047】
(4)メタル担体4(本発明例)
平箔および波箔の表面粗さ:Rac=0.10μm、表面形状:PPI=500
平箔に10kgf のバックテンションを加えながら波箔とともに巻回し、外径100mmのメタルハニカム体を作製した。外筒の内面全面にろう材を塗布した後、このメタルハニカム体を挿入した。その後、1250℃、10−4Torrの高温高真空下で90分加熱して製造した。
【0048】
(5)メタル担体5(本発明例)
平箔および波箔の表面粗さ:Rac=0.10μm、表面形状:PPI=100
平箔に10kgf のバックテンションを加えながら波箔とともに巻回し、外径100mmのメタルハニカム体を作製した。外筒の内面全面にろう材を塗布した後、このメタルハニカム体を挿入した。その後、1250℃、10−4Torrの高温高真空下で90分加熱して製造した。
【0049】
(6)メタル担体6(本発明例)
平箔および波箔の表面粗さ:Rac=0.10μm、表面形状:PPI=500
平箔に10kgf のバックテンションを加えながら波箔とともに巻回し、外径100mmのメタルハニカム体を作製した。外筒の内面全面にろう材を塗布した後、このメタルハニカム体を挿入した。その後、1150℃、10−4Torrの高温高真空下で60分加熱して製造した。
【0050】
(7)メタル担体7(本発明例)
平箔および波箔の表面粗さ:Rac=0.10μm、表面形状:PPI=500
平箔に10kgf のバックテンションを加えながら波箔とともに、図10においてd1 =80mm、H1 =30mmとなるように、1ターン相当長さにアルミナを塗布しながら巻回し、外径100mmのメタルハニカム体を作製した。外筒の内面にはL1 =60mm、L2 =40mmとなるように、L2 の箇所にろう材を塗布し、L1 の箇所にアルミナを塗布したのち、このメタルハニカム体を挿入した。その後、1150℃、10−4Torrの高温高真空下で60分加熱して製造した。
【0051】
得られたメタル担体7は図10のように、メタルハニカム体2の内部に、直径d1 =80mmで長さ70mm(100−H1 )の1周分だけ、平箔と波箔が接合されてない非接合部14を有し、メタルハニカム体2と外筒3とは、長さL2 =40mmの接合部16で接合され、その上方のL1 =60mmの部位は非接合部15となっている。
【0052】
上記従来例および本発明例のメタル担体1〜6に対して冷押試験を実施したところ、従来例のメタル担体1は、ズレが発生し不合格となったが、本発明例のメタル担体2〜6は問題なく合格であった。冷押試験は、図11に示すようにメタル担体1をダイス11に載せ、上からロードセル13付きのポンチ12を押し込み、ストローク−荷重曲線を記録するものである。
【0053】
また図10のようにスリット入り全体接合とした本発明例のメタル担体7を、ガソリンエンジンの排気系に搭載し、加熱950℃10分、冷却150℃10分を1サイクルとする冷熱耐久試験を実施したところ、900サイクル付与しても損傷せず合格であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明のメタル担体は、渦巻状に巻回されたメタルハニカム体が、中心部から外周部まで全体にわたって変形や座屈を伴わず、高い拡散接合率で良好に接合され、かつAl等の耐熱性合金元素の蒸発が抑止されており、自動車エンジン等に搭載して使用するときの耐久性に優れている。そして、従来よりも低い温度で拡散接合することができる。また本発明法により、このような耐久性に優れたメタル担体を工業的に安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明メタル担体の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明におけるメタルハニカム体の製造例を示す斜視図である。
【図3】本発明におけるメタルハニカム体の部分拡大斜視図である。
【図4】本発明における平箔と波箔の接合部を示す概念図であり、(a)は接合前の状態、(b)は接合後の状態を示す。
【図5】本発明における表面粗さRacの限定理由を説明するためのグラフである。
【図6】本発明例における平箔および波箔の表面形状および粗さを示す説明図である。
【図7】本発明例における平箔および波箔の表面形状および粗さを示す説明図である。
【図8】従来例における平箔および波箔の表面形状および粗さを示す説明図である。
【図9】本発明における表面粗さPPIの限定理由を説明するためのグラフである。
【図10】本発明の実施例におけるメタル担体の例を示す断面図である。
【図11】本発明の実施例における冷押試験の説明図である。
【符号の説明】
1…メタル担体 2…メタルハニカム体
3…外筒 4…通気孔
5…平箔 6…波箔
7…稜線 8…巻取軸
9…ボイド 10…接合線
11…ダイス 12…ポンチ
13…ロードセル 14,15…非接合部
16…接合部
Claims (11)
- 耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、波付け加工した帯状の波箔で各波の稜線が幅方向であるものとが、重ねて渦巻状に巻回された多数の通気孔を有するメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記平箔および波箔の圧延方向に対して直交する方向を通気孔方向とすると共に、前記平箔および波箔の表面粗さが、前記通気孔方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下であり、かつ前記平箔と前記波箔の接触部が拡散接合により接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体。
- 耐熱性ステンレス鋼からなる帯状の平箔と、波付け加工した帯状の波箔で各波の稜線が幅方向であるものとが、重ねて渦巻状に巻回された多数の通気孔を有するメタルハニカム体が、金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体において、前記平箔および波箔の圧延方向に対して直交する方向を通気孔方向とすると共に、前記平箔および波箔の表面形状が、前記通気孔方向の長さ2.54cmあたりのピーク数が100以上であり、かつ前記平箔と前記波箔の接触部が拡散接合により接合されていることを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体。
- 前記平箔および波箔の表面形状が、前記通気孔方向の長さ2.54cmあたりのピーク数が100以上であることを特徴とする請求項1記載の触媒コンバータ用メタル担体。
- 前記拡散接合が、1100℃〜1250℃の温度でなされていることを特徴とする請求項1、2または3記載の触媒コンバータ用メタル担体。
- 多数の通気孔を有するメタルハニカム体が金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体の製造方法において、耐熱性ステンレス鋼からなる平箔を圧延方向に対して直交する方向を幅方向として帯状に形成し、その表面粗さが幅方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下の帯状の平箔を、波付け加工して各波の稜線が幅方向である帯状の波箔とし、該波箔と平箔とを重ねて渦巻状に巻回することにより前記メタルハニカム体とし、前記平箔と前記波箔の接触部を拡散接合により接合することで、該接合部の拡散接合率を高めるとともに、前記平箔および前記波箔の耐熱性合金元素の蒸発を抑止したことを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
- 多数の通気孔を有するメタルハニカム体が金属製外筒内に組み込まれてなるメタル担体の製造方法において、耐熱性ステンレス鋼からなる平箔を圧延方向に対して直交する方向を幅方向として帯状に形成し、その表面形状が幅方向の長さ2.54cmあたりのピーク数が100以上の帯状の平箔を、波付け加工して各波の稜線が幅方向である帯状の波箔とし、該波箔と平箔とを重ねて渦巻状に巻回することにより前記メタルハニカム体とし、前記平箔と前記波箔の接触部を拡散接合により接合することで、該接合部の拡散接合率を高めるとともに、前記平箔および前記波箔の耐熱性合金元素の蒸発を抑止したことを特徴とする触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
- 前記平箔を、表面形状が幅方向の長さ2.54cmあたりのピーク数が100以上のものとすることを特徴とする請求項5記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
- 前記拡散接合を1100℃〜1250℃の温度で行うことを特徴とする請求項5、6または7記載の触媒コンバータ用メタル担体の製造方法。
- 帯状の平箔と波箔とを重ねて渦巻状に巻回された多数の通気孔を有するメタルハニカム体を構成する箔であって、その表面粗さが、圧延方向に対して直交する方向である通気孔方向の平均粗さRacで0.001μm以上0.3μm以下であることを特徴とするメタルハニカム体用箔。
- 帯状の平箔と波箔とを重ねて渦巻状に巻回された多数の通気孔を有するメタルハニカム体を構成する箔であって、その表面形状が、圧延方向に対して直交する方向である通気孔方向の長さ2.54cmあたりのピーク数が100以上であることを特徴とするメタルハニカム体用箔。
- その表面形状が、前記通気孔方向の長さ2.54cmあたりのピーク数が100以上であることを特徴とする請求項9記載のメタルハニカム体用箔。
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