JP3544271B2 - 音場制御方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はリアトレイにスピーカを設置してトランクルームをスピーカボックスとして利用するカーオーディオシステムの音場制御方法に係わり、特に、トランクルームに発生する最も大きな定在波を除去し、他のモードの重ね合わせによりトランクルーム全体の音圧分布を平坦にし、これにより、オーディオ音再生用スピーカに及ぼしていた悪影響を取り除き、車室内に出力される音の音質を改善する音場制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スピーカはその背面容積を大きくとると音質が向上する。このためカーオーディオでは、図8に示すようにリアトレイRTRにスピーカSPL,SPRを設置してトランクルームTRRをスピーカボックスとして利用する場合が多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、トランクルームTRRの壁面では音が反射するため、トランクルーム内に定在波が発生しスピーカの伝達特性が乱れる。すなわち、定在波によりトランクルーム内で共振が起こり、共振周波数でピークが発生し、このピークによりスピーカの伝達特性にピーク/ディップ部分が生じて車室内における再生音に悪影響を与える。ホームオーディオのスピーカではスピーカボックス内部の壁面にグラスウール等の吸音材を貼り付けて音の反射を少なくし上記影響を防いでいるが、カーオーディオ装置ではトランクルームが汚れる等の理由で吸音材を貼付る対策をしていない。
以上から、本発明の目的は、トランクルームに定在波打消用の小型の制御用スピーカを配置してトランクルーム内での定在波をなくし、スピーカの本来の伝達特性に近づけて音質良好な音を車室内に出力できるようにすることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題は本発明によれば、リアトレイにオーディオ音再生用スピーカを設置してトランクルームをスピーカボックスとして利用するカーオーディオシステムにおいて、前記オーディオ音再生用スピーカより音を出力した時、トランクルームに発生するもっとも大きな定在波のモードを求めると共に、求めたモードの空間音圧分布が顕著となる周波数帯域を求め、該モードの空間分布係数が正となるトランクルームの領域に第1の制御用スピーカとマイクロホンを配置し、負となるトランクルームの領域に第2の制御用スピーカとマイクロホンを配置し、オーディオ信号を、前記周波数帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタに入力し、前記周波数帯域において前記各マイクロホンの出力信号と該バンドパスフィルタの出力信号とが同一となるように適応信号処理を行なって適応フィルタの係数を決定し、前記バンドパスフィルタの出力信号を該適応フィルタに入力し、該適応フィルタの出力信号を前記各制御用スピーカに入力すると共に、前記オーディオ信号を前記オーディオ音再生用スピーカに入力することにより達成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
(A) 原理
(a) 基本原理
内部にM個の音源(スピーカ)を有する両端が閉じた一次元音場の波動方程式の解は次式で与えられる。尚、一次元音場とは、音圧が所定の軸方向位置xのみに応じて変化する音場である。一次元音場の例としては、細長い断面円形のパイプで、その直径が信号周波数波長の1/8以下のパイプが挙げられる。
【0006】
【数1】
ただし、ωn=nπc0/L
ω:放射された信号の角周波数
p(x,ω):音圧、
ξn:第nモードのダンピングレシオ(damping ratio)
qm:スピーカmへの入力信号
xm:スピーカmの位置
N:モード数
L:一次元音場の長さである。
【0007】
上式は一次元音場の各位置での音圧p(x,ω)が、cos(nπx/L)で表されるその音場固有のモードの和で与えられることを示している。cos(nπx/L)はモードの空間分布を示す係数(空間分布係数という)である。(1)式において、
【数2】
は、第nモードの周波数局在性を示す係数で、例えば図1に示すようになる。図1からわかるように、重ね合わされ各モードの比率は周波数によって変化する。よって、第1モードが他のモードより大きい周波数において、各モードの次式で示す係数(n=1、2、・・・)は図2に示すようになる。
【0008】
【数3】
図2における点線(=0)より上はプラス、点線より下ではマイナスで、マイナスの部分ではプラスの部分と位相が反転している。
【0009】
【数4】
はスピーカから空間に出た音の第nモードの成分であり、これに同じ第nモードの(3)式で示す係数が掛けられ、他のモードと足し合わされることにより空間の音圧が表現されることが (1)式からわかる。
【0010】
モードのいずれかがある周波数帯域で他のモードよりも顕著に大きくなったときに、それが定在波となって現われ、この定在波によりトランクルーム内で共振が起こり、共振周波数でピークが発生し、このピークによりスピーカの伝達特性にピーク/ディップ部分が生じて車室内の音響特性に悪影響を与える。それゆえ、本発明は、この顕著なモードを打ち消して他のモードの重ね合わせにより均一な音場を得るようにし、これによりスピーカの伝達特性に及ぼしている悪影響を取り去る。
【0011】
ここで、音源(スピーカ)の数M=2個で両音源に同じ信号q(ω)を入力した場合を考察する。このとき、(1)式は
【数5】
と変形できる。
この式から、 cos(nπx1/L)=−cos(nπx2/L) を満足する位置に音源を配置することによって第nモードが0になることがわかる。この時、第nモードと同様に cosの符号が反転するモードは打ち消され、逆に、 cosの値の符号が同じモードは大きくなる。
【0012】
両音源にフィルタW1,W2を介して信号q(ω)を入力すると、
【数6】
となる。フィルタW1,W2を調整して
cos(nπx1/L)W1(ω)=−cos(nπx2/L)W2(ω)
とすることにより、特に音源位置には左右されないでモードを打ち消すことができる。
【0013】
さて、スピーカのエンクロージャ内部におけるモード制御では、スピーカから音が出た後、エンクロージャ内部全体の音圧が一様に代わり、位置による音圧差がなくなるようにするのが最も望ましい。つまり、0次のモードだけが残り、他のモードがなくなるのが最も望ましいことになる。これは次の連立方程式を解くことが必要である。
【0014】
【数7】
しかし、式が無限個あり、変数W1,W2が2個しかないため、完全な解は存在しない。完全解を得るためには、無限個のフィルタ付き音源が必要である。ここで、各モードの周波数局在性に着目する。前述のように、各モードは(2)式によって周波数局在性を持つので、ある1つのモードが非常に大きくなっている周波数帯域Fにターゲットを絞れば2個の音源でも十分な制御が可能となる。すなわち、2個の音源でも前記モードの前記周波数帯域Fにおける成分を除去してトランクルーム内の全体の音圧を略均一にできる。
【0015】
この場合、図3に示すように打ち消しターゲットとなるモードの空間分布係数cos(nπx/L)の符号が異なる位置x1,x2に音圧制御用スピーカSPC1,SPC2を配置し、これらスピーカに同符号の信号q(ω)を加えると、そのモードでは音が打ち消し合う。すなわち、モードのプラス側とマイナス側で同時に同一の所望の音圧になるように音圧制御用スピーカSPC1,SPC2を駆動すれば、空間分布係数cos(nπx/L)の符号が反転するモードでは打ち消し合い、結局符号の反転しないモード(例えば図2のn=0のモード)が残り、該モードを励起した状態で所望の音圧が得られる。例えば、空間分布係数cos(nπx/L)の符号が異なる任意の位置x3,x4にマイクロホンMC1,MC2を設け、該マイクロホンMC1,MC2で音源SPC1,SPC2からの音を検出すると、理想的には空間分布係数cos(nπx/L)の符号が反転するモードの音は互いに打ち消し合い、符号の反転しないモードでの音のみが得られることになる。
【0016】
以上より、各制御用スピーカSPC1,SPC2に同じ信号q(ω)を入力した時、各マイクMC1,MC2で検出される音圧がq(ω)となるようにW1(ω),W2(ω)を制御すればよい。すなわち、次式
【数8】
を満たすフィルタの最小二乗解を求めればよい。
【0017】
このフィルタW11,W2を介して各制御用スピーカSPC1,SPC2に信号q(ω)を入力すれば、上述のように符号の反転するモードは打ち消され、特に、大きなモードは優先的に打ち消され、符号の同じモードが大きくなる。ある1つのモードが非常に大きくなっている周波数帯域では他のモードがほぼ同じくらいの大きさなので、それぞれが互いに均一化しあって音場全体の音圧分布が平坦に近づく。
【0018】
なお、実際のトランクルームではフィルタの入っていないオーディオ音再生用スピーカSPが存在するから、その位置をx5とすれば、次式
【数9】
を満足するフィルタW1,W2の最小二乗解を求めることになる。このフィルタを求めるには適応フィルタ等を用いればよい。
【0019】
(b) モード分析
ところで、以上の制御を適用するには、予めオーディオ音再生用スピーカに悪影響を与えているモードとその局在する周波数帯域を調べておく必要がある。
(1) 式の両辺にcos(n′πx/L)(n′は整数)を掛け、xに関して積分し、n′をnと置き直すと、
【数10】
となる。これによって、空間音圧分布中の第nモード成分だけを取り出すことができる。
【0020】
さらに、(10)式の左辺を離散化すると、
【数11】
となる。つまり、x0〜xKの(K+1)個のトランクルーム内の位置に複数のマイクロホンを設置し、その出力を位置に関して離散フーリエ変換することにより、モード分析ができる。これによって、オーディオ音再生スピーカSPに悪影響を与えているモードがどれであるかを調べることができ、音圧制御用スピーカSPC1,SPC2の位置や制御点位置(マイクMC1,MC2の位置)を決めることができる。
【0021】
又、(11)式から次式が得られ、対象とするモードの局在する周波数帯域が判明する。
【数12】
よって、この帯域のみを通過させるバンドパスフィルタを設計し、該バンドパスフィルタにオーディオ信号を入力し、バンドパスフィルタの出力信号を制御用スピーカSPC1,SPC2の前段に設けたフィルタW1,W2に入力して対象となる周波数帯域のみ制御する。
【0022】
以上、簡単のために一次元音場で説明したが、三次元音場では(1)式が次式
【数13】
となるだけで、本質的な違いはない。
【0023】
以上、要約すると、
▲1▼トランクルーム内のモード分析を行なって制御するモードを決め、ついで、該モードが顕著な周波数帯域を求め、該周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを設計する。
▲2▼しかる後、対象モードの空間分布係数cos(nπx/L)のプラス側トランクルーム領域に音圧制御用スピーカSPC1とマイクロホンMC1を配置し、マイナス側トランクルーム領域に音圧制御用スピーカSPC2とマイクロホンMC2を配置する。
▲3▼かかる状態で、適応信号処理により各マイクロホンMC1,MC2より得られる信号と適応フィルタへの入力信号に時間遅延を加えたものとの差が小さくなるように適応フィルタ(フィルタW1,W2)の係数を調整する。
▲4▼そして、適応フィルタにバンドパスフィルタの出力信号を入力し、適応フィルタの出力信号を各音圧制御用スピーカSPC1、SPC2に入力する。以後、▲3▼▲4▼の処理を繰り返せば、各マイクロホンMC1,MC2より得られる信号が適応フィルタへの入力信号に時間遅延を加えたものと同一波形に近づく。
【0024】
(B) 実施例
(a) 構成
図4は本発明の音場制御システムの構成図である。
図中、TRRはトランクルーム、CRMは車室、SPはオーディオ音再生用スピーカであり、音場のモード分析を行なうためにも使用する。SPC1,SPC2はモード分析により得られたモード(音場に悪影響を与えているモード)の空間分布係数のプラス側とマイナス側にあたる位置にそれぞれ配置された第1、第2の音圧制御用スピーカ、MC1〜MCNはトランクルームのx軸方向適所に設けられたN個のマイクロホンである。尚、マイクロホンMC1,MCN−1は空間分布係数のプラス側とマイナス側にあたる位置にそれぞれ配置されている。
【0025】
11は信号処理部であり、▲1▼トランクルーム内のモード分析処理及び▲2▼トランクルームの音場に悪影響を与えているモードが顕著になる周波数帯域を求める処理等を行なう。12は音場に悪影響を与えているモードが顕著になる周波数帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタ、13は信号数=1、スピーカ数=2、観測点数(マイクロホン数)=2の場合の適応信号処理装置である。14は後述するように音響系の逆特性を精度良く近似するための第1の遅延部であり、適応フィルタのタップ長の半分程度の長さの遅延時間Δ2を有するもの、15は第2の遅延部であり、適応信号処理系における遅延時間にオーディオ信号スルー系の遅延時間を合わせるものである。16は第1の遅延部14の出力信号と第1のマイクロホンMC1の出力信号の差をエラー信号e1として出力する演算部、17は第1の遅延部14の出力信号と第2のマイクロホンMCN−1の出力信号の差をエラー信号e2として出力する演算部である。
【0026】
適応信号処理装置13において、13a−1,13a−2はFIR型デジタルフィルタで構成された第1、第2の適応フィルタ(W1,W2)、13bは信号処理フィルタ(フィルタードX信号作成用フィルタ)であり、各音圧制御用スピーカSPC1,SPC2から第1、第2のマイクロホンMC1,MCN−1までの伝搬特性C11,C21,C12,C22をバンドパスフィルタ出力信号に畳み込むもの、13c−1〜13c−2はFiltered−X LMSアルゴリズムに基づいて適応信号処理を行なって適応フィルタ13a−1,13a−2の係数を決定する第1、第2の適応信号処理部である。
【0027】
(b) 動作
モード分析用のスピーカ(オーディオ音再生スピーカ)SPに信号q(ω)を入力して該スピーカから出力される音を各マイクロホンMC1〜MCNで検出し、検出信号を信号処理部11に入力する。信号処理部は(11)式に基づいて各モードの成分を求め、最も音場に悪影響を与えているモードを決定する。ついで、(12)式により、該モードが顕著になる周波数帯域Fを求め、該周波数帯域が通過帯域となるようにバンドパスフィルタ12を設計する。しかる後、対象モードの空間分布係数のプラス側の領域に第1の音圧制御用スピーカSPC1とマイクロホンMC1を配置し、マイナス側の領域に第2の音圧制御用スピーカSPC2とマイクロホンMCN−1を配置する。ついで、第1、第2の音圧制御用スピーカSPC1,SPC2から第1、第2のマイクロホンMC1,MCN−1までの伝搬要素C11,C21,C12,C22を測定し、適応信号処理装置13の信号処理フィルタ13bに設定する。
【0028】
かかる状態で、オーディオ信号を端子Taより第2の遅延部15を介してオーディオ音再生用スピーカSPに入力すると共に、バンドパスフィルタ12を介して所定周波数帯域Fのオーディオ信号成分を適応信号処理装置13に入力する。適応信号処理装置13は、演算部16,17から出力されるエラー信号e1,e2のパワーが最小となるように(各マイクロホン出力信号とバンドパスフィルタ出力が同一になるように)適応信号処理を行ない、第1、第2の適応フィルタ13a−1,13a−2の係数W1,W2を決定する。
【0029】
第1、第2の適応フィルタ13a−1,13a−2はバンドパスフィルタ12の出力信号に上記係数W1,W2に基づいたフィルタリング処理を施し、適応フィルタ出力を第1、第2の音圧制御用スピーカSPC1、SPC2に入力する。以後、上記処理を繰り返せば、各マイクロホンMC1,MCN−1より得られる信号がバンドパスフィルタ12の出力波形と同一波形に近づいてゆき、x方向位置によらず均一な周波数特性が得られるようになる。すなわち、音場に悪影響を与えている周波数帯域Fにおいて、空間全体にわたってその悪影響を取り除くことができる。
なお、適応フィルタ係数W1,W2が収束した後は、該係数W1,W2をFIRフィルに設定し、このFIRフィルタを適応信号処理装置13に代えて使用することができる。
【0030】
(c) 第1の遅延部の機能
図5(a)に示す簡単なシステム(音源SPKが1つ、マイクMICが1つ、フィルタFILが1つの場合)で、第1の遅延部14のディレイの無い場合を考える。適応フィルタWの伝達特性が
W(z)=1/C(z) (14)
となれば、
W(z)・C(z)=(1/C(z))・C(z)=1 (15)
となって目的は達せらる。
【0031】
しかし、ここで、W(z)=1/C(z)の特性が可能かどうかが大きな問題となる。例えば、室内特性C(z)として図5(b)に示すモデルを考える。このモデルにおいて次式、
y(k)=u(k)−cu(k−1) (16)
が成立する。この式の両辺をz変換すると、
Y(z)=U(z)−cz−1U(z)=(1−cz−1)U(z) (17)
となる。これにより、室内伝達特性は、
C(z)=Y(z)/U(z)=1−cz−1 (18)
となる。
【0032】
よって、C(z)の逆特性は、
W(z)=1/C(z)=1/(1−cz−1) (19)
となる。この伝達特性をもったシステムの入出力関係は、
U(z)=W(z)・X(z)=X(z)/(1−cz−1) (20)
となる。この式を変形すると、
U(z)=X(z)+cz−1U(z) (21)
となり、逆z変換を施すと、
u(k)=x(k)+cu(k−1) (22)
となる。(22)式をブロック図に示すと図5(c)のようになる。
ここで、(19)式の右辺は、
W(z)=1+cz−1+c2z−2+c3z−3・・・ (23)
となる。このインパルス応答は図6(a)に示すようになって、当然の事ながら図5(c)のインパルス応答に一致する。ここで、|c|<1の場合と|c|≧1の場合で条件が異なってくる。
【0033】
|c|<1ならば、図6(a)のように、インパルス応答は時間が経つにつれ収束に向かうので、このフィルタは安定である。しかし、|c|≧1ならば、図6(b)のように、インパルス応答は時間が経つにつれ発散してしまい、不安定なフィルタになる。このような|c|≧1の場合は、(19)式を
W(z)=1/(1−cz−1)=1/(−cz−1+1) (24)
と書き換えて、分子を分母で割る除算を実行すると、W(z)は次式
W(z)=−c−1z1−c−2z2−c−3z3−・・・ (25)
となる。このインパルス応答は図6(c)に示すようになる。
【0034】
以上のようにすることによって、フィルタは安定になるが、非因果性のフィルタになってしまう。非因果性とはフィルタに入力が入る時間以前にその時間にどのような入力が入るかを知っていて、あらかじめ出力するフィルタで、現実には存在しない。しかし、ここで、出力する時間に遅れが許されるのであれば、図7(a)に示すように、インパルス応答に時間遅延を加えて正の時間にシフトしてやることによって、このフィルタのある程度の近似が可能となる。
【0035】
実際の音響系は、以上のようなものが、もっと複雑に合成されており、その逆特性は図7(b)のようになる。この中で値の大きい0時間辺りを、図7(c)のように、自分の用いることのできる有限タップ長のフィルタの中心にシフト(遅延)してやれば、この逆特性を精度よく近似することができる。つまり、図4の第1の遅延部14は、音響系の逆特性を精度よく近似するためのもので用いる適応フィルタのタップ長の半分程度の長さの時間遅延を持ったものとなる。
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は請求の範囲に記載した本発明の主旨に従い種々の変形が可能であり、本発明はこれらを排除するものではない。
【0036】
【発明の効果】
以上本発明によれば、オーディオ音再生用スピーカより音を出力した時、トランクルームに発生するもっとも大きな定在波のモードを求めると共に、求めたモードの空間音圧分布が顕著となる周波数帯域を求め、該モードの空間分布係数が正となるトランクルームの領域に第1の制御用スピーカとマイクロホンを配置し、負となるトランクルームの領域に第2の制御用スピーカとマイクロホンを配置し、オーディオ信号を、前記周波数帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタに入力し、前記周波数帯域において前記各マイクロホンの出力信号と該バンドパスフィルタの出力信号とが同一となるように適応信号処理を行なって適応フィルタの係数を決定し、前記バンドパスフィルタの出力信号を該適応フィルタに入力し、該適応フィルタの出力信号を前記各制御用スピーカに入力すると共に、前記オーディオ信号を前記オーディオ音再生用スピーカに入力するように構成したから、トランクルーム内でのスピーカの伝達特性に悪影響を与えている定在波をなくし、スピーカの本来の伝達特性に近づけて音質良好な音を車室内に出力できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各モードの周波数特性図である。
【図2】ある周波数でのモードの空間分布の様子である。
【図3】本発明の原理説明図である。
【図4】本発明の音場制御システムの構成図である。
【図5】図4における第1の遅延部の機能説明図である。
【図6】第1の遅延部の機能説明用のインパルス応答説明図である。
【図7】第1の遅延部の機能説明用のインパルス応答遅延説明図である。
【図8】カーオーディオシステムにおけるスピーカ配置説明図である。
【符号の説明】
TRR・・トランクルーム
CRM・・車室
SP・・オーディオ音再生用スピーカ
SPC1,SPC2・・音圧制御用の第1、第2のスピーカ
MC1〜MCN−1・・マイクロホン
11・・信号処理部
12・・バンドパスフィルタ
13・・適応信号処理装置
13a−1,13a−2・・適応フィルタ
14,15・・第1、第2の遅延部
16,17・・合成部
Claims (1)
- リアトレイにオーディオ音再生用スピーカを設置してトランクルームをスピーカボックスとして利用するカーオーディオシステムにおいて、
前記オーディオ音再生用スピーカより音を出力した時、トランクルームに発生するもっとも大きな定在波のモードを求めると共に、求めたモードの空間音圧分布が顕著となる周波数帯域を求め、
該モードの空間分布係数が正となるトランクルームの領域に第1の制御用スピーカとマイクロホンを配置し、負となるトランクルームの領域に第2の制御用スピーカとマイクロホンを配置し、
オーディオ信号を、前記周波数帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタに入力し、
前記周波数帯域において前記各マイクロホンの出力信号と該バンドパスフィルタの出力信号とが同一となるように適応信号処理を行なって適応フィルタの係数を決定し、
前記バンドパスフィルタの出力信号を該適応フィルタに入力し、該適応フィルタの出力信号を前記各制御用スピーカに入力すると共に、前記オーディオ信号を前記オーディオ音再生用スピーカに入力する、
ことを特徴とする音場制御方法。
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