JP3543917B2 - ブロック共重合体、ブロック共重合体組成物及びその熱収縮性フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は透明性、剛性、耐衝撃性及び耐自然収縮性に優れたビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体、該ブロック共重合体を含有する組成物、及びそれらを延伸してなる熱収縮性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
リビングアニオン重合により、有機溶媒中でアルキルリチウムを開始剤としてビニル芳香族炭化水素と共役ジエンをブロック共重合させると、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの重量比あるいは添加方法を変えるなどの方法によって共重合体の構造を多様化でき、種々の物性を有するブロック共重合体が得られることが知られている。ブロック共重合体は、一般に優れた耐衝撃性と透明性を有する重合体で、該ブロック共重合体中の共役ジエンの含有量が多いと熱可塑性エラストマーとなるが、逆にビニル芳香族炭化水素の含有量が多くなると熱可塑性プラスチックとしての特性を示す。この優れた特性を生かす種々の製造方法が特公昭36−19286号公報、特公昭48−4106号公報等に公開されている。また、これらの優れた特性に加え多種のビニル芳香族炭化水素重合体との相溶性に優れるため補強用としても用いられ、例えば、特公昭45−19388号公報、特公昭47−43618号公報、特公昭51−27701号公報等にこのことが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらのブロック共重合体およびその重合体組成物は、比較的透明で、耐衝撃性が良好なものの、耐自然収縮性に劣る欠点があった。これを延伸加工して熱収縮性フィルムとして使用する場合には、放置している間にフィルムが大きく収縮(自然収縮)してしまう。そのため、各種ボトルにラベルとして装着できない、印刷がずれる等の問題点を有していた。そこで、耐自然収縮性を改良した熱収縮性フィルム、及びそれに適したブロック共重合体あるいはブロック共重合体の組成物の開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
こうした現状において、本発明者らは、耐自然収縮性を改良した熱収縮性フィルムを得ることについて鋭意検討を進めた結果、ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比、ブロック共重合体の分子量、貯蔵弾性率、ビニル芳香族炭化水素重合体のブロック率及びビニル芳香族炭化水素の繰り返し単位の連鎖の割合を規定したブロック共重合体、あるいはこれに特定のビニル芳香族炭化水素系重合体を混合したブロック共重合体組成物がこの目的に叶い、これを用いて耐自然収縮性を改良した目的の熱収縮性フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなり、かつ下記(1)〜(5)が成立することを特徴とするブロック共重合体[以下、ブロック共重合体(I)と表す]、または(1)〜(5)に加えてさらに(6)が成立することを特徴とするブロック共重合体、および該ブロック共重合体からなる熱収縮性フィルムに関する。
(1)ビニル芳香族炭化水素単位と共役ジエン単位との重量比が60〜90:40〜10であり、(2)ブロック共重合体の数平均分子量が40,000〜500,000であり、(3)温度30℃での貯蔵弾性率(E’30)と温度10℃での貯蔵弾性率(E’10)の比(E’30/E’10)が0.75〜1であり、(4)ブロック共重合体に含有されるビニル芳香族炭化水素重合体のブロック率が70〜100%であり〔但し、ブロック率(%)=(W1 /W0 )×100、ここでW1 :ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素のブロック重合鎖の重量、W0 :ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素単位の全重量を示す。〕、(5)ブロック共重合体に含有されるビニル芳香族炭化水素の繰り返し単位が1〜3の連鎖が上記W0 に対して25%以下である。(6)ブロック共重合体(I)の構造が、下記の一般式で示されることを特徴とするブロック共重合体。
(a) A−(B)m
(b) A−C−(B)m
(c) A−(C−B)m
(d) A−(C−B)m−(B)n
(但し、一般式中Aはビニル芳香族炭化水素の重合鎖、Bはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合鎖、Cは共役ジエンの重合鎖を示す。またmは2以上の整数、nは1以上の整数を示す。)
本発明はさらに、前記ブロック共重合体(I)と下記(II)の重合体を配合してなるブロック共重合体組成物およびその熱収縮性フィルムに関する。
(II)(i)前記(I)のブロック共重合体とは異なるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体、(ii)ビニル芳香族炭化水素重合体、(iii)ビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体及び(iv)ゴム変性スチレン系重合体からなる群より選ばれた少なくとも一種の重合体。
そして、好ましくは前記ブロック共重合体(I)を50〜99.8重量部と前記(II)の重合体を0.2〜50重量部配合(ただし、(I)と(II)の合計量を100重量部とする)してなるブロック共重合体組成物であって、かつ該(II)に前記(iv)が選ばれた場合には(iv)の配合量が20重量部以下であることを特徴とするブロック共重合体組成物およびその熱収縮性フィルムに関する。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用されるブロック共重合体(I)の製造に用いられるビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等があるが、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。
【0007】
本発明で使用されるブロック共重合体(I)の製造に用いられる共役ジエンとしては1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等であるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0008】
前記のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの重量比は60〜90:40〜10であり、好ましくは70〜85:30〜15である。ビニル芳香族炭化水素が60%未満ではブロック共重合体の透明性と剛性が、90%を超えると耐衝撃性がそれぞれ低下してしまい実用に供せない。
【0009】
ブロック共重合体(I)の数平均分子量は40,000〜500,000、好ましくは80,000〜300,000である。40,000未満ではブロック共重合体の十分な剛性と耐衝撃性が得られず、また、500,000を超えると加工性が低下してしまうため好ましくない。
なお、本発明におけるブロック共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCと略す)を用いて常法に従って求めた。
【0010】
本発明を構成するブロック共重合体(I)の、最大の特徴であるブロック共重合体の温度30℃での貯蔵弾性率(E’30)と温度10℃での貯蔵弾性率(E’10)の比(E’30/E’10)は0.75〜1であり、好ましくは0.8〜1である。0.75未満では、自然収縮が大きく、熱収縮性フィルムとしては実用に供せない。また、本ブロック共重合体は温度30℃では架橋反応等が起こらない為、(E’30/E’10)は1以下となる。なお、貯蔵弾性率は動的粘弾性測定装置で測定した値を言う。
【0011】
ブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素のブロック率は70〜100重量%、好ましくは75〜100重量%である。ブロック率が70重量%未満であると、透明性と剛性が低下してしまい好ましくない。
なお、ビニル芳香族炭化水素のブロック率は次式により求めたものである。
ブロック率(%)=(W1 /W0 )×100、ここでW1 :ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素のブロック重合鎖の重量、W0 :ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素単位の全重量を示す。
なお、前記式中のW1 は、ブロック共重合体を公知文献(Y.TANAKA,et.al.,「RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY(ラバー ケミストリー アンド テクノロジー)」,58,p16(1985))に記載の方法でオゾン分解し、得られたビニル芳香族炭化水素重合体成分をGPC測定してクロマトグラムの各ピークに対応する分子量を、標準ポリスチレン及びスチレンオリゴマーを用いて作成した検量線から求め、数平均分子量3,000を越えるものをそのピーク面積より定量して求めた。GPC測定用の検出器として波長を254nmに設定した紫外分光検出器を使用した。
【0012】
ブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素の繰り返し単位が1〜3(s 1〜s 3と表す)の連鎖の割合は、ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素単位の全重量に対して25%以下が良い。s 1〜s 3連鎖割合が25%を越えると自然収縮が大きくなり好ましくない。なお、s 1〜s 3連鎖割合は次式より求めたものである。
s 1〜s 3連鎖割合(%)=(W2 /W0 )×100、ここで、W2 :ブロック共重合体中のs 1〜s 3の重量、W0 :ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素単位の全重量を示す。
なお、前記式中のW2 は、前記の方法で得られたオゾン分解物を排除限界3,000のカラムを用いてGPC測定し、得られたピークを公知文献(Y.TANAKA,「Encyclopedia of Engineering Materials(エンサイクロペデイア オブ エンジニアリング マテリアルズ),(PartA)」,1,p677(1988))に記載の方法によって同定し、それらのピーク面積を定量して求めた。
【0013】
ブロック共重合体(I)の構造は、下記の一般式で示されるものが好ましい。
(a) A−(B)m
(b) A−C−(B)m
(c) A−(C−B)m
(d) A−(C−B)m−(B)n
(但し、一般式中Aはビニル芳香族炭化水素の重合鎖、Bはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合鎖、Cは共役ジエンの重合鎖を示す。またmは2以上の整数、nは1以上の整数を示す。)
【0014】
前記一般式中Aはビニル芳香族炭化水素の重合鎖、したがってビニル芳香族炭化水素のブロック重合鎖を示し、前記のビニル芳香族炭化水素の1種または2種以上を重合することにより導入される。
【0015】
前記一般式中Bはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合鎖を示す。一般式中の複数のBはその分子量あるいは組成分布(ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの分布)が互いに同一であっても異なっていてもよい。また、当該分布に関してはランダム状であってもテーパー状、即ちビニル芳香族炭化水素単位と共役ジエン単位の分布密度に勾配がついた状態、を有していても差し支えない。
Bは前記のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを共重合することにより導入される。このとき一定の重合条件下で主に当該単量体の添加量と添加方法により分子量および組成分布が制御される。
【0016】
前記一般式中Cは共役ジエンの重合鎖、したがって共役ジエンのブロック重合鎖を示し、前記の共役ジエンの1種又は2種以上を重合することにより導入される。一般式中に複数存在する場合、その分子量は互いに同一であっても異なっていても差し支えない。
【0017】
次に、本発明のブロック共重合体(I)の製造について説明する。
ブロック共重合体(I)は、有機溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンのモノマーを重合することにより製造できる。有機溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などが使用できる。
【0018】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が使用できる。
【0019】
本発明に用いられるビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンは、前記したものを使用することができ、それぞれ1種又は2種以上を選んで重合に用いることができる。そして、前記の有機リチウム化合物を開始剤とする所謂リビングアニオン重合では、重合反応に供したビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンはほぼ全量が重合体に転化する。
【0020】
本発明においてブロック共重合体(I)の分子量は、モノマーの全添加量に対する開始剤の添加量により制御できる。
【0021】
本発明において温度30℃での貯蔵弾性率(E’30)と温度10℃での貯蔵弾性率(E’10)の比(E’30/E’10)は、ブロック共重合体(I)中のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比、前記構造式中のA、B、Cの分子量や組成分布、共重合体のブロック率及びs 1〜s 3連鎖割合を制御することにより調整可能である。
【0022】
ブロック共重合体(I)のブロック率及びs 1〜s 3連鎖割合は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを共重合させる際のランダム化剤の添加量により制御できる。ランダム化剤としては主としてテトラヒドロフラン(THF)が用いられるが、その他のエーテル類やアミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等も使用できる。適当なエーテル類としてはTHFの他にジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。アミン類としては第三級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンの他、環状アミン等も使用できる。その他にトリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム又はナトリウム、カリウム又はナトリウムブトキシド等もランダム化剤として用いることができる。
【0023】
ランダム化剤の添加量としては、全仕込モノマー100重量部に対し、0.001〜10重量部が好ましい。添加時期は重合反応の開始前でも良いし、共重合鎖−B−の重合前でも良い。また必要に応じ追加添加することもできる。
【0024】
その他、機械的にビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを重合缶に連続フィードするか、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを重合缶に交互に少量ずつ分添することによってもブロック率及びs 1〜s 3連鎖割合は制御できる。
【0025】
このようにして得られたブロック共重合体(I)は、水、アルコール、二酸化炭素などの重合停止剤を、活性末端を不活性化させるのに充分な量を添加することにより、不活性化される。得られたブロック共重合体溶液より共重合体を回収する方法としては、(A) メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、(B) 加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、(C) 濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、(D) 溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0026】
つぎに本発明で使用される重合体(II)について説明する。
本発明で使用される重合体(II)は、(i)ブロック共重合体(I)とは異なるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体、(ii)ビニル芳香族炭化水素重合体、(iii)ビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体及び(iv)ゴム変性スチレン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の重合体である。
【0027】
(i)のブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの重量比が60〜90:40〜10で重合したものが用いられる。数平均分子量は特に制限はないが、40,000〜500,000が好ましい。このブロック共重合体は、前記のブロック共重合体(I)と同様、有機溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として重合することによって製造でき、その際の有機溶媒、開始剤、ビニル芳香族炭化水素、共役ジエン、ランダム化剤には前記のものが用いられる。
【0028】
この(i)のブロック共重合体の構造は、前記要件が満たされればいかなる形式をとることもできるが、好ましい例として下記一般式
(e)A−B
(f)A−B−A
(g)A−C−B
(h)A−C−B−A
(i)A−B−C−B
(j)A−B−C−B−A
(k)A−C−B−C−B−A
(l)(A−B)m−X
(m)(A−C−B)m−X
(n)(A−C−B−A)m−X
(o)(A−C−B−C−B)m−X
で示される様なランダム部をもった構造のもの、あるいは、
(p)(A−C)n
(q)(A−C)n−A
(r)(A−C)m−X
(s)(A−C−A)m−X
で示される様な完全ブロック構造のものが挙げられる。但し、A、B、C、m、nは前記の通りであり、Aが一般式中に複数ある場合はその分子量が互いに同一でも異なっていても差し支えない。また、Xは開始剤として用いられる前記の多官能有機リチウム化合物の残基、または、多官能カップリング剤の残基を示す。多官能カップリング剤としては、四塩化ケイ素、エポキシ化大豆油等が挙げられる。
【0029】
(ii)のビニル芳香族炭化水素重合体としては、前記ブロック共重合体(I)の製造で説明したビニル芳香族炭化水素の単独重合体または2種以上の共重合体が用いられる。特に一般的なものとしてポリスチレンが挙げられる。
【0030】
(iii)のビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体は、ブロック共重合体(I)と混合した際にも透明性が保たれるものであり、前記ブロック共重合体(I)の製造で説明したビニル芳香族炭化水素と、(メタ)アクリル酸エステルを重合することによって得られる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸(2−エチル)ヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸(2−ヒドロキシ)エチル等が挙げられる。
この(iii)の共重合体は、ビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリル酸エステルの重量比が5〜99:95〜1、好ましくは40〜99:60〜1、さらに好ましくは70〜99:30〜1である単量体の混合物を重合して得られる。
【0031】
(iv)のゴム変性スチレン系重合体は、ビニル芳香族炭化水素もしくはこれと共重合可能なモノマーを各種エラストマーの存在下に重合することによって得られる。ビニル芳香族炭化水素としては、前記ブロック共重合体(I)の製造で説明したものが用いられ、これと共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が用いられる。また、エラストマーとしては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体エラストマー、クロロプレンゴム、天然ゴムなどが用いられる。特に好ましいゴム変性スチレン系重合体としては、ゴム変性耐衝撃性スチレン樹脂(HIPS)が挙げられる。
【0032】
本発明のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体(I)と重合体(II)を配合してなる。そして好ましくはブロック共重合体(I)を50〜99.8重量部と重合体(II)を0.2〜50重量部配合(ただし、(I)と(II)の合計量を100重量部とする)してなるブロック共重合体組成物である。該(i)の重合体は剛性並びに耐衝撃性の改良に用いられ、全配合量中0.2〜50重量部が好ましく、更に好ましくは0.2〜40重量部である。0.2重量部未満では添加効果が認められず、50重量部を超えて配合するとそのブロック共重合体組成物から得られる熱収縮性フィルムの自然収縮性が大きくなり好ましくない。該(ii)乃至(iii)の重合体は剛性の改良に用いられ全配合量中0.2〜50重量部が好ましく、更に好ましくは、0.2〜30重量部である。0.2重量部未満では添加効果が認められず、50重量部を超えると剛性が高くなり過ぎて延伸ができないという問題が生じる。該(iv)の重合体は剛性並びに耐衝撃性の改良に用いられ、全配合量中0.2〜20重量部が好ましく、更に好ましくは0.2〜10重量部である。0.2重量部未満では添加効果が認められず、20重量部を超えると透明性が著しく悪化し実用に供せない。なおフィルムの滑性改良に用いられる場合には0.2〜5重量部の配合で良い。
【0033】
本発明に示したブロック共重合体組成物を各分野で有効に活用するために、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、各種安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐光性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料等が挙げられる。各添加剤はブロック共重合体溶液に添加しても良いし、回収した共重合体とブレンドし、溶融混合しても良い。
【0034】
安定剤としては2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートや2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、トリスノニルフェニルフォスファイト等の燐系酸化防止剤などが挙げられる。ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤としては、例えば、脂肪酸アマイド、エチレンビスステアロアマイド、ソルビタンモノステアレート、脂肪族アルコールの飽和脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの添加剤はブロック共重合体に対して5重量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、ブロック共重合体(I)と重合体(II)を混合することによって得られるが、その混合方法は公知のいかなる方法でも良い。例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー及びVブレンダー等でドライブレンドしても良く、更に押出機で溶融してペレット化しても良い。なかでも溶融混合が好ましい。また、重合体溶液同志を混合した後、溶剤を除去する方法も用いることができる。
【0036】
本発明の熱収縮性フィルムは、前記の該ブロック共重合体組成物を用い公知の方法、たとえばTダイ法、チューブラ法で押し出したシート、フィルムを一軸、二軸あるいは多軸に延伸することによって得ることができる。一軸延伸の例としては、押し出されたシートをテンターで押し出し方向と直交する方向に延伸する方法、押し出されたチューブ状フィルムを円周方向に延伸する方法等が挙げられる。二軸延伸の例としては、押し出されたシートをロールで押し出し方向に延伸した後、テンター等で押し出し方向と直交する方向に延伸する方法、押し出されたチューブ状フィルムを押し出し方向及び円周方向に同時または別々に延伸する方法等が挙げられる。
【0037】
本発明において、延伸温度は60〜120℃が好ましい。60℃未満では延伸時にシートやフィルムが破断してしまい、また、120℃を越える場合は良好な収縮特性が得られないため好ましくない。延伸倍率は、特に制限はないが、1.5〜8倍が好ましい。1.5倍未満では熱収縮性が不足してしまい、また、8倍を越える場合は延伸が難しいため好ましくない。これらのフィルムを熱収縮性ラベルや包装材料として使用する場合、熱収縮率は80℃において20%以上必要である。20%未満では収縮時に高温が必要となるため、被覆される物品に悪影響を与えてしまい好ましくない。フィルムの厚さは10〜300μmが好適である。
【0038】
本発明の熱収縮性フィルムの用途としては、熱収縮性ラベル、熱収縮性キャップシール等が特に好適であるが、その他、包装フィルム等にも適宜利用することができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例によって限定を受けるものではない。
なお、表1〜7に示した構造上の特徴及び物性の測定は下記の方法によって行った。
【0040】
(1)数平均分子量:GPC測定法により以下の条件にて測定した。
(A) 測定機:昭和電工(株)社製「SHODEX SYSTEM−21」
(B) カラム:ポリマー ラボラトリー(POLYMER LABORATORYINC.)社製「PL gel MIXED−B」、3本
(C) 溶媒:テトラヒドロフラン
(D) 定量:標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(2)貯蔵弾性率:セイコー電子(株)社製粘弾性スペクトロメーター「DMS210」を用い、周波数1Hz、温度30℃と10℃で測定した。
(3)曇り度:ASTM D1003に準拠(試験片厚さ2mm)して測定した。曇り度が低い程、良い透明性を示す。
(4)引張弾性率:JIS K6871に準拠して測定した。試験片は1号形を使用し、試験速度Fとした。引張弾性率が高い程、剛性が高いことを示す。
(5)Izod(アイゾッド)衝撃強度:JIS K6871に準拠して測定した。試験片は2号Aを使用した。Izod衝撃強度が高い程、耐衝撃性が高いことを示す。
(6)熱収縮率:延伸フィルムを80℃の温水中に30秒間浸漬し、次式より算出した。
熱収縮率(%)=(L1 −L2 )/L1 ×100、但し、L1 :収縮前の長さ(延伸方向)、L2 :収縮後の長さ(延伸方向)。
(7)自然収縮率:延伸フィルムを30℃で30日間放置し、次式より算出した。
自然収縮率(%)=(L3 −L4 )/L3 ×100、但し、L3 :放置前の長さ(延伸方向)、L4 :放置後の長さ(延伸方向)。
【0041】
実施例、または比較例のブロック共重合体(I)P1〜P12の製法
シクロヘキサン中、n−ブチルリチウムを開始剤、テトラヒドロフランをランダム化剤として、スチレンとブタジエンを重合し表1〜4に示すような構造上の特徴をもつブロック共重合体を製造した。なお、数平均分子量(Mn)はn−ブチルリチウムの添加量で、ブロック率及びs 1〜s 3連鎖割合はテトラヒドロフランの添加量で各々調整した。例えば、ブロック共重合体P1は次の様にして製造した。100リットルの重合缶に65リットルのシクロヘキサンと7.8gのテトラヒドロフラン及び3.5kgのスチレンを仕込み攪拌を行いながら温度30℃にて114ミリリットルのn−ブチルリチウム(10%シクロヘキサン溶液)を添加後、昇温を行い、温度45℃で1時間重合させた。続いてスチレン7.38kgとブタジエン1.87kgを添加し、70℃で1時間重合させた。続いてさらにスチレン7.38kgとブタジエン1.87kgを添加し、70℃で1時間重合させた。その後、重合液に過剰のメタノールを添加し、重合を停止させ、溶媒除去、乾燥させて目的のブロック共重合体P1を得た。
また、ブロック共重合体P4は次の様にして製造した。100リットルの重合缶に65リットルのシクロヘキサンと7.8gのテトラヒドロフラン及び3.08kgのスチレンを仕込み、攪拌を行いながら温度30℃にて118ミリリットルのn−ブチルリチウム(10%シクロヘキサン溶液)を添加後、昇温を行い、温度45℃で1時間重合させた。続いてブタジエン310gを添加し、60℃で1時間重合させた。続いてスチレン7.92kgとブタジエン1.23kgを添加し、70℃で1時間重合させた。続いてブタジエン310gを添加し、70℃で1時間重合させた。続いてさらにスチレン7.92kgとブタジエン1.23kgを添加し、70℃で1時間重合させた。その後、前記と同様に操作して目的のブロック共重合体P4を得た。得られたこれら共重合体の数平均分子量及び貯蔵弾性率の比などと構造上の特徴を表1〜4に示した。
【0042】
実施例1〜5及び比較例1〜7
各ブロック共重合体の射出成形品物性、フィルムの熱収縮率及び自然収縮率を表1〜4に示した。なお、フィルムは、先ず温度210℃で厚さ0.3mmのシートを押し出し成形し、その後、(株)東洋精機製作所製の二軸延伸装置を用い、90℃で5倍に横一軸延伸することによって作成した(厚さ約60μm)。これを前記の(6)熱収縮率〜(7)自然収縮率の試験項目に対する試験用試料とした。表1〜4に示した物性から、本発明のブロック共重合体は、透明性、剛性、耐衝撃性及び耐自然収縮性に優れることがわかる。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
つぎに本発明のブロック共重合体組成物の実施例について説明する。なお、各ブロック共重合体組成物の物性測定は、前記ブロック共重合体の場合と同様に行った。フィルムは、先ず前記と同様の操作でシートを押し出し成形した後、95℃で5倍に横一軸延伸することによって作成した(厚さ約60μm)。
【0048】
実施例6〜11及び比較例8〜17
表5に示した重合体を重合体(II)として、表6及び表7の配合処方に従ってブロック共重合体組成物を製造した。各ブロック共重合体組成物の射出成形品物性、フィルムの熱収縮率及び自然収縮率を表6及び表7に示した。表6及び表7に示した物性から、本発明のブロック共重合体組成物は、透明性、剛性、耐衝撃性及び耐自然収縮性に優れることがわかる。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
【発明の効果】
本発明のブロック共重合体、及び該ブロック共重合体の組成物を延伸してなる熱収縮性フィルムは透明性、剛性、耐衝撃性及び耐自然収縮性に優れるため、ガラスボトル等、破壊時に飛散しやすい物品の被覆や、各種印刷を施したラベル用熱収縮フィルムに適している。その他、射出成形、射出中空成形により各種成形品を得たり、押出成形、インフレーション成形等によりフィルム/シートに成形し、そのまま、もしくは真空圧空成形等の2次加工により種々の用途に使用したりすることも可能である。
Claims (7)
- ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなり、かつ下記(1)〜(5)が成立することを特徴とするブロック共重合体[以下、ブロック共重合体(I)と表す]。
(1)ビニル芳香族炭化水素単位と共役ジエン単位との重量比が60〜90:40〜10であり、(2)ブロック共重合体の数平均分子量が40,000〜500,000であり、(3)温度30℃での貯蔵弾性率(E’30)と温度10℃での貯蔵弾性率(E’10)の比(E’30/E’10)が0.75〜1であり、(4)ブロック共重合体に含有されるビニル芳香族炭化水素重合体のブロック率が70〜100%であり〔但し、ブロック率(%)=(W1 /W0 )×100、ここでW1 :ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素のブロック重合鎖の重量、W0 :ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素単位の全重量を示す。〕、(5)ブロック共重合体に含有されるビニル芳香族炭化水素の繰り返し単位が1〜3の連鎖が上記W0 に対して25%以下である。 - 前記ブロック共重合体(I)の構造が、下記の一般式のひとつで示されることを特徴とする請求項1記載のブロック共重合体。
(a) A−(B)m
(b) A−C−(B)m
(c) A−(C−B)m
(d) A−(C−B)m−(B)n
(但し、一般式中Aはビニル芳香族炭化水素の重合鎖、Bはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合鎖、Cは共役ジエンの重合鎖を示す。またmは2以上の整数、nは1以上の整数を示す。) - 請求項1記載または請求項2記載のブロック共重合体からなる熱収縮性フィルム。
- 請求項1記載のブロック共重合体(I)と下記重合体(II)を配合してなるブロック共重合体組成物。
(II)(i)請求項1記載のブロック共重合体(I)とは異なるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体、(ii)ビニル芳香族炭化水素重合体、(iii)ビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体及び(iv)ゴム変性スチレン系重合体からなる群より選ばれた少なくとも一種の重合体。 - 請求項1記載のブロック共重合体(I)を50〜99.8重量部と前記重合体(II)を0.2〜50重量部配合(ただし、(I)と(II)の合計量を100重量部とする)してなるブロック共重合体組成物であって、かつ該重合体(II)に前記(iv)が選ばれた場合には(iv)の配合量が20重量部以下であることを特徴とするブロック共重合体組成物。
- ブロック共重合体(I)の構造が、請求項2記載のブロック共重合体であることを特徴とする請求項4または請求項5記載のブロック共重合体組成物。
- 請求項4または請求項5あるいは請求項6記載のブロック共重合体組成物からなる熱収縮性フィルム。
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