JP3543458B2 - 1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニル系単量体、特に塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル単量体等を重合させるためのラジカル重合開始剤として有用な新規1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体などのビニル系重合体を製造する場合、品質を維持しつつ高い生産性のもとでこれら重合体を製造するため、重合プロセスにおいては短時間の反応で製造する要求が高まっており、このため例えば塩化ビニル系単量体を重合させる際には、短時間の反応を目的としてより重合反応速度が高い重合開始剤が使用されている。
【0003】
このような重合開始剤としては、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキサイド、クミルペルオキシネオデカノエート、イソブチリルペルオキサイド等がある。
【0004】
しかしながら、上記tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキサイド等は、重合中期迄は活性が維持されて重合反応速度は高く維持されるが、重合後期の重合器内圧が降圧し始める以後においては反応速度低下が著しく、重合時間が長くなり重合時間短縮の十分な効果を得ることができない。また、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート等は、重合全般を通して重合反応速度が相対的に高く維持されるが、重合体成形品の着色性に劣り、クミルペルオキシネオデカノエートは、重合中期迄は活性が維持されて重合反応速度は高く維持されるが、重合後期の重合器内圧が降圧し始める以後においては反応速度低下が著しく、重合時間が長くなって重合時間短縮の十分な効果を得ることができず、かつ分子構造としてフェニル基を有しているため製品が医療分野へ不向きで、かつ重合体の成形時において臭気が発生するという問題があった。
【0005】
そこで、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体等のビニル系重合体を製造する際に、品質、特に重合体成形品の着色性、臭気等の衛生性に優れ、重合全般を通して重合反応速度が高く維持され、短時間反応を可能にする重合開始剤の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ビニル系重合体を製造する際に、品質に優れ、短時間の反応でビニル系重合体を製造することができる重合開始剤として好適に用いることができる1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、1,1,2,2−テトラメチルプロピルアルコールを過酸化水素水で処理することにより得られる式(1)のアルキルヒドロペルオキシドに下記式(3)の酸クロリドを反応させることにより、下記式(1)の1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物が得られると共に、この式(1)の化合物がビニル系単量体を重合する際の重合開始剤として有用であり、この式(1)の化合物を重合開始剤として用いることにより、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体等のビニル系重合体を製造する際に、品質を維持しつつ、短時間反応で高い生産性のもとで重合することができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
【化2】
(式中R1,R2及びR3は互いに同一又は異種の炭素数1〜9の直鎖状アルキル基を示す。)
【0009】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明は、下記一般式(1)で示される新規1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物を提供するものである。
【0010】
【化3】
【0011】
ここで、R1,R2及びR3は互いに同一又は異種の炭素数1〜9の直鎖状アルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、及びn−ノニル基等が挙げられるが、R1,R2及びR3の炭素数の総和は3〜11であることが、得られる化合物の粘性を低く保つことができることから、重合器内への供給の際、ポンプで重合器内に圧入することが容易となる等の取扱い性の点で好ましい。更には、R1,R2,R3の炭素数の総和が3〜8であることがより好ましい。
【0012】
上記1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物としては、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエート、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノエート等が挙げられ、これらは重合開始剤として好適に用いられる。
【0013】
上記1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物は、以下に示す方法により製造される。即ち、まず公知の方法(例えば、Journal of the American Chemical Society/89:7/March 29,1967)で合成される1,1,2,2−テトラメチルプロピルアルコールを過酸化水素水溶液と濃硫酸で処理して、下記構造式(2)で示されるアルキルヒドロペルオキシドを得る。この反応は発熱反応であり、室温で行うことが好ましい。
【0014】
【化4】
【0015】
次に、上記式(2)のアルキルヒドロペルオキシドを、下記一般式(3)で示される酸クロリド(例えば、ピバリン酸クロリド、ネオヘキサン酸クロリド、ネオヘプタン酸クロリド、ネオデカン酸クロリド及びネオトリデカン酸クロリド等)と水酸化カリウム水溶液等の塩基触媒の存在下、反応温度を20℃以下に保ちながらベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサンなどの有機溶媒中で反応させ、次いで中性になるまで水洗し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水することにより、上記一般式(1)で示される1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物を得ることができる。
【0016】
【化5】
(式中R1,R2及びR3は前記と同様の意味を示す。)
【0017】
本発明で得られる式(1)のペルオキシエステル化合物は、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体、スチレン系重合体、アクリロニトリル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ブタジエン系重合体、クロロプレン系重合体等のビニル系重合体の製造において重合開始剤として用いられる。
【0018】
本発明において、ビニル系重合体を得るために用いられるビニル系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン、クロロプレンなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。これらの中では、特に塩化ビニル単量体、塩化ビニリデン単量体、酢酸ビニル単量体又はこれらを主体とする単量体混合物を用いて塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体を製造する場合に有効である。
【0019】
この重合開始剤として添加されるペルオキシエステル化合物の添加量は、仕込み単量体100重量部に対し0.001〜0.5重量部であり、好ましくは0.01〜0.3重量部である。
【0020】
また、ビニル系重合体の重合方法については、特に制限はないが、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の方法が用いられる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物は、ビニル系単量体を重合する際に重合開始剤として用いると、重合全般にわたり重合反応速度を高く維持することが可能となり、特に、重合後期の重合器内圧が降下し始める以後の重合反応速度を相対的に高く維持することができて短時間反応が可能となり、更に、着色性、衛生性などに優れた高品質のビニル系重合体成形品を得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0023】
[実施例1] 1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレートの製造
撹拌装置、温度計および滴下ロートを備えた300mlの4ッ口フラスコに73.7gの50%過酸化水素水溶液を仕込み、撹拌を開始し、水冷により温度を20℃以下に保ちながら98%の濃硫酸51.7gを滴下して混酸を調製した。次に、氷浴を用いて温度を0〜5℃として、あらかじめ、“Journal of the American Chemical Society/89:7/March 29,1967”に記載された方法で合成した1,1,2,2−テトラメチルプロピルアルコール42.9gのジクロロメタン溶液(40ml)を撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下終了後、撹拌を2時間続け、次いで純水で有機層が中性になるまで水洗を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を留去し、47.4gの1,1,2,2−テトラメチルプロピルヒドロペルオキシド(上記構造式(2))を得た。
【0024】
次に、撹拌装置、温度計および滴下ロートを備えた100mlの4ッ口フラスコに得られた16.8gの1,1,2,2−テトラメチルプロピルヒドロペルオキシドを仕込み、47.7gの30%水酸化カリウム水溶液を加えて撹拌、混合した。温度を0〜5℃に保ちながら11.1gのピバリン酸クロリドを撹拌しながら滴下し、さらに撹拌を2時間続けた。反応液を中性になるまで水洗し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。得られた化合物を、ヨードメトリー法により分析した結果、収量23.8g,収率91.7%(ヒドロペルオキシドに対するモル収率)であった。
【0025】
また、得られた化合物を分析した結果、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレートであると判明された。以下に、その分析結果を示す。
【0026】
更に、得られた化合物のベンゼン溶液0.1モル/lにおける10時間半減期温度は45.7℃、活性酸素量は7.40%であった。
【0027】
【化6】
1H−NMR(アセトン−d6)
H δ(ppm)
a 1.01(s,9H)
d 1.26(s,6H)
g 1.23(s,9H)
13C−NMR(アセトン−d6)
C δ(ppm)
a 26.07
b 38.30
c 86.64
d 20.80
e 175.10
f 39.32
g 27.45
IR(neat)
ν/cm-1
1768(C=O伸縮)
1095(C−O伸縮)
850(O−O伸縮)
【0028】
[実施例2] 1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエートの製造
ピバリン酸クロリドの代わりにネオヘプタン酸クロリドを用いた以外は、実施例1に準じた手順に従い、収量21.3g、収率72.5%で化合物を得た。
【0029】
得られた化合物を分析した結果、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエートであると判明され、ベンゼン溶液0.1モル/lにおける10時間半減期温度は40.6℃、活性酸素量は6.55%であった。以下に、分析結果を示す。
【0030】
【化7】
1H−NMR(アセトン−d6)
H δ(ppm)
a 1.03(s,9H)
d 1.20(s,6H)
g 1.24(s,6H)
h 1.32〜1.35(m,2H)
i 1.50〜1.57(m,2H)
j 0.87(t,3H,J=7Hz)
13C−NMR(アセトン−d6)
C δ(ppm)
a 26.07
b 38.31
c 86.66
d 20.81
e 174.80
f 43.10
g 25.50
h 43.82
i 18.90
j 14.76
IR(neat)
ν/cm-1
1765(C=O伸縮)
1093(C−O伸縮)
851(O−O伸縮)
【0031】
[実施例3] 1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノエートの製造
ピバリン酸クロリドの代わりにネオデカン酸クロリドを用いた以外は、実施例1に準じた手順に従い、収量23.2g、収率67.5%で化合物を得た。
【0032】
得られた化合物を分析した結果、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノエートであると判明された。また、ベンゼン溶液0.1モル/lにおける10時間半減期温度は39.0℃、活性酸素量は5.59%であった。以下に、分析結果を示す。
【0033】
【化8】
1H−NMR(アセトン−d6)
H δ(ppm)
a 1.02(s,9H)
d 1.17(s,6H)
g〜m 0.68〜1.55(m,19H)
13C−NMR測定は、ネオデカン酸が数種の混合物であるため、同定が不可能であった。
【0034】
IR(neat)
ν/cm-1
1770(C=O伸縮)
1095(C−O伸縮)
850(O−O伸縮)
【0035】
なお、活性酸素濃度及び10時間半減期温度の測定は下記の方法で行った。
重合開始剤の活性酸素濃度測定方法(ヨードメトリー法)
「有機過酸化物その化学と工業的利用」、有機過酸化物研究グループ編(化学工業社、1952)に記載の方法に準じて行った。具体的な方法を以下に示す。
【0036】
内容積約300mlの共栓付き三角フラスコにベンゼン30mlを入れ、フラスコ内に二酸化炭素(流量約2.5リットル/分)を約30秒間導入した後、試料(1.5〜1.8meq)を正しく計り入れる。次にヨウ化ナトリウム飽和水溶液2mlを加え、次いで塩化第2鉄酢酸水溶液(0.0002%FeCl3・6H2O)70mlを加え、内容物をよく混合したのち、暗所に15分間放置する。純水約80mlを加え、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液で無色になるまで滴定する。別に同一条件でブランクテストを行う。
【0037】
重合開始剤の10時間半減期温度測定方法
ベンゼンを溶媒として、0.1モル/lの過酸化物濃度の溶液を調整し、窒素置換を行ったガラス管中に密封して、一定の所定温度にセットした恒温槽に浸し、この重合開始剤を熱分解させ、活性酸素濃度を前述の方法で測定し、未分解の重合開始剤濃度経時変化を得ることにより、この温度での分解速度定数を得る。
【0038】
重合開始剤熱分解式
[I]=[I]0・exp(−K・t)−(イ)
[I]:重合開始剤濃度
[I]0:初期重合開始剤濃度
K:所定温度における分解速度定数
t:時間
4種類の温度に関し上記操作によりKを得て、縦軸に1n(K)、横軸に1/(R・T)を取り、アレニウスプロットすることにより、傾きよりこの重合開始剤の活性化エネルギー(Ea)、y切片より頻度因子(A)を得る。
【0039】
分解速度定数式
K=A・exp(−Ea/(R・T))−(ロ)
変形して、
1n(K)=1n(A)−Ea/(R・T)
A:重合開始剤の頻度因子
Ea:重合開始剤の活性化エネルギー
R:気体定数
T:温度
10時間で重合開始剤が1/2濃度となる温度、即ち10時間半減期温度は、(イ)式で[I]=1/2[I]0、t=10とし、A,Eaが既知となったので、(ロ)を代入し、T(10時間半減期温度)を得る。
【0040】
[参考例1]
内容積2リットル、内温度調節コイル付きステンレス製重合器を用い、重合器内に脱イオン水1250gと水溶性部分ケン化ポリビニルアルコール0.36g,水溶性セルロースエーテル0.24gを溶解した脱イオン水50gを仕込み、重合器内圧が50mmHg abs.になるまで脱気した後、塩化ビニル単量体(VCM)405gを仕込み、撹拌しながらコイルに加熱水を通水して内温を57℃に到達するまで昇温した。この時点で、先に得られたイソパラフィン溶液で25%濃度の1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)を1.62g(0.100重量%対VCM)注射器で注入し、重合を開始させると同時にコイルに冷却水を通水して内温を57℃(重合温度)に保持しながら重合を続けた。
【0041】
重合器の内圧が4.5kgf/cm2に低下した時点でビスフェノールA20%濃度メタノール溶液0.225gを注射器で注入し重合を停止して、排ガス(未反応単量体)の回収を行い、塩化ビニル重合体スラリーを取り出し、脱水乾燥して、366g(収率90.4%)の塩化ビニル重合体を得た。
【0042】
[参考例2]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)0.100重量%対VCMの代わりに、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノネート(TMND)0.070重量%対VCM添加し、重合温度を54℃とし、重合器の内圧が4.2kgf/cm2に低下した時点で重合を停止した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0043】
[参考例3]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)0.100重量%対VCMの代わりに、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエート(TMHP)0.090重量%をVCMと酢酸ビニルモノマーの総重量405g(重量比率9/1)に対し添加し、重合温度を57℃とし、重合器の内圧が4.2kgf/cm2に低下した時点で重合を停止した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を得た。
【0044】
[比較参考例1]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)の代わりに、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート(BND)0.113重量%対VCM(参考例1におけるTMPVと等モル)を添加した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0045】
[比較参考例2]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)の代わりに、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート(BNH)0.094重量%対VCM(参考例1におけるTMPVと等モル)を添加した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0046】
[比較参考例3]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)の代わりに、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(EHP)0.160重量%対VCM(参考例1におけるTMPVと等モル)を添加した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0047】
[比較参考例4]
参考例2における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノエート(TMND)の代わりに、クミルペルオキシネオデカノエート(CND)0.075重量%対VCM(参考例2におけるTMNDと等モル)を添加し,重合器の内圧が6.6kgf/cm2に低下した時点で重合を停止した以外は、参考例2に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0048】
[比較参考例5]
参考例3における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエート(TMHP)の代わりに、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート(BND)0.090重量%対VCMと酢酸ビニルモノマーとの総重量(参考例3におけるTMHPと等モル)を添加した以外は、参考例3に準じた手順に従い、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を得た。
【0049】
[比較参考例6]
参考例3における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエート(TMHP)の代わりに、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(EHP)0.139重量%対VCMと酢酸ビニルモノマーとの総重量(参考例3におけるTMHPと等モル)を添加した以外は、参考例3に準じた手順に従い、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を得た。
【0050】
次に、参考例1〜3、比較参考例1〜6において得られた各塩化ビニル重合体について、下記に示す方法で初期着色性の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0051】
初期着色性測定法
塩化ビニル重合体100重量部にラウリル酸スズ1重量部、カドミウム系安定剤0.5重量部およびジオクチルフタレート50重量部を配合し、2本ロールミルを用いて160℃で5分間混練した後、厚さ0.8mmのシートを成形した。次に、このシートを裁断して重ねて、4×4×1.5cmの型枠に入れて160℃、65〜70kgf/cm2で加熱、加圧成形して測定試料を作成した。この測定試料について、光電色彩計(日本電色工業株式会社製)を用いて、JISZ8730(1980)に記載のハンターの色差式における明度指数Lを求め、a値およびb値を測定した。
【0052】
ただし、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体である実施例3、比較参考例5及び比較参考例6に関しては上記においてジオクチルフタレート30重量部、ロールミル混練温度120℃、4×4×0.5cmの型枠とした以外は同一条件で初期着色性測定を行った。
【0053】
【表1】
【0054】
表1において、「重合開始」を重合開始剤を投入した時点とし、「降下迄の時間」を重合開始から重合器内圧が下がり始める迄の時間とし、「降下速度」を降圧開始した時点から重合を停止した時点での重合器内圧に達する間の圧力降下速度とする。
【0055】
ただし、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合である参考例3、比較参考例5及び比較参考例6において、「降圧迄の時間」がゼロになっているのは、塩化ビニル単独重合と異なり、重合開始の最初から重合器内圧が徐々に低下したことを意味し、「降下速度」は、重合開始の最初から重合を停止した時点での重合器内圧に達する間の圧力降下速度とする。
【0056】
表1における開始剤記号とその名称、10時間半減期温度の関係は、以下のとおりである。
【0057】
表1の結果より、本発明の1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物(TMPV,TMHP,TMND)を重合開始剤として用いて重合した場合、短時間反応が達成でき、かつ重合体成形品の着色性も優れたものとすることが可能であることが認められた。
【0058】
また、本発明による1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物(TMPV,TMHP,TMND)は、反応速度が急激に低下する降圧以後の重合期間で降圧速度が速い、即ち重合反応速度が速く、従来のtert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、クミルペルオキシネオデカノエートなどの開始剤と比較してかなり速く、トータルとしての重合時間を短縮するのに非常に効果的であることが知見された。
【0059】
更に、本発明による1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル(TMPV,TMHP,TMND)を使用して得られた重合体の初期着色性は、従来、比較的短時間反応が可能であるが、これらにおいて問題のあったジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネートやジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネートよりも格段に優れ、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、クミルペルオキシネオデカノエート等と同等の優れた色相の重合体成形品がが得られることが認められた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニル系単量体、特に塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル単量体等を重合させるためのラジカル重合開始剤として有用な新規1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体などのビニル系重合体を製造する場合、品質を維持しつつ高い生産性のもとでこれら重合体を製造するため、重合プロセスにおいては短時間の反応で製造する要求が高まっており、このため例えば塩化ビニル系単量体を重合させる際には、短時間の反応を目的としてより重合反応速度が高い重合開始剤が使用されている。
【0003】
このような重合開始剤としては、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキサイド、クミルペルオキシネオデカノエート、イソブチリルペルオキサイド等がある。
【0004】
しかしながら、上記tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキサイド等は、重合中期迄は活性が維持されて重合反応速度は高く維持されるが、重合後期の重合器内圧が降圧し始める以後においては反応速度低下が著しく、重合時間が長くなり重合時間短縮の十分な効果を得ることができない。また、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート等は、重合全般を通して重合反応速度が相対的に高く維持されるが、重合体成形品の着色性に劣り、クミルペルオキシネオデカノエートは、重合中期迄は活性が維持されて重合反応速度は高く維持されるが、重合後期の重合器内圧が降圧し始める以後においては反応速度低下が著しく、重合時間が長くなって重合時間短縮の十分な効果を得ることができず、かつ分子構造としてフェニル基を有しているため製品が医療分野へ不向きで、かつ重合体の成形時において臭気が発生するという問題があった。
【0005】
そこで、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体等のビニル系重合体を製造する際に、品質、特に重合体成形品の着色性、臭気等の衛生性に優れ、重合全般を通して重合反応速度が高く維持され、短時間反応を可能にする重合開始剤の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ビニル系重合体を製造する際に、品質に優れ、短時間の反応でビニル系重合体を製造することができる重合開始剤として好適に用いることができる1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、1,1,2,2−テトラメチルプロピルアルコールを過酸化水素水で処理することにより得られる式(1)のアルキルヒドロペルオキシドに下記式(3)の酸クロリドを反応させることにより、下記式(1)の1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物が得られると共に、この式(1)の化合物がビニル系単量体を重合する際の重合開始剤として有用であり、この式(1)の化合物を重合開始剤として用いることにより、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体等のビニル系重合体を製造する際に、品質を維持しつつ、短時間反応で高い生産性のもとで重合することができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
【化2】
(式中R1,R2及びR3は互いに同一又は異種の炭素数1〜9の直鎖状アルキル基を示す。)
【0009】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明は、下記一般式(1)で示される新規1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物を提供するものである。
【0010】
【化3】
【0011】
ここで、R1,R2及びR3は互いに同一又は異種の炭素数1〜9の直鎖状アルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、及びn−ノニル基等が挙げられるが、R1,R2及びR3の炭素数の総和は3〜11であることが、得られる化合物の粘性を低く保つことができることから、重合器内への供給の際、ポンプで重合器内に圧入することが容易となる等の取扱い性の点で好ましい。更には、R1,R2,R3の炭素数の総和が3〜8であることがより好ましい。
【0012】
上記1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物としては、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエート、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノエート等が挙げられ、これらは重合開始剤として好適に用いられる。
【0013】
上記1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物は、以下に示す方法により製造される。即ち、まず公知の方法(例えば、Journal of the American Chemical Society/89:7/March 29,1967)で合成される1,1,2,2−テトラメチルプロピルアルコールを過酸化水素水溶液と濃硫酸で処理して、下記構造式(2)で示されるアルキルヒドロペルオキシドを得る。この反応は発熱反応であり、室温で行うことが好ましい。
【0014】
【化4】
【0015】
次に、上記式(2)のアルキルヒドロペルオキシドを、下記一般式(3)で示される酸クロリド(例えば、ピバリン酸クロリド、ネオヘキサン酸クロリド、ネオヘプタン酸クロリド、ネオデカン酸クロリド及びネオトリデカン酸クロリド等)と水酸化カリウム水溶液等の塩基触媒の存在下、反応温度を20℃以下に保ちながらベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサンなどの有機溶媒中で反応させ、次いで中性になるまで水洗し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水することにより、上記一般式(1)で示される1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物を得ることができる。
【0016】
【化5】
(式中R1,R2及びR3は前記と同様の意味を示す。)
【0017】
本発明で得られる式(1)のペルオキシエステル化合物は、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体、スチレン系重合体、アクリロニトリル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ブタジエン系重合体、クロロプレン系重合体等のビニル系重合体の製造において重合開始剤として用いられる。
【0018】
本発明において、ビニル系重合体を得るために用いられるビニル系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン、クロロプレンなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。これらの中では、特に塩化ビニル単量体、塩化ビニリデン単量体、酢酸ビニル単量体又はこれらを主体とする単量体混合物を用いて塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体を製造する場合に有効である。
【0019】
この重合開始剤として添加されるペルオキシエステル化合物の添加量は、仕込み単量体100重量部に対し0.001〜0.5重量部であり、好ましくは0.01〜0.3重量部である。
【0020】
また、ビニル系重合体の重合方法については、特に制限はないが、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の方法が用いられる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物は、ビニル系単量体を重合する際に重合開始剤として用いると、重合全般にわたり重合反応速度を高く維持することが可能となり、特に、重合後期の重合器内圧が降下し始める以後の重合反応速度を相対的に高く維持することができて短時間反応が可能となり、更に、着色性、衛生性などに優れた高品質のビニル系重合体成形品を得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0023】
[実施例1] 1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレートの製造
撹拌装置、温度計および滴下ロートを備えた300mlの4ッ口フラスコに73.7gの50%過酸化水素水溶液を仕込み、撹拌を開始し、水冷により温度を20℃以下に保ちながら98%の濃硫酸51.7gを滴下して混酸を調製した。次に、氷浴を用いて温度を0〜5℃として、あらかじめ、“Journal of the American Chemical Society/89:7/March 29,1967”に記載された方法で合成した1,1,2,2−テトラメチルプロピルアルコール42.9gのジクロロメタン溶液(40ml)を撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下終了後、撹拌を2時間続け、次いで純水で有機層が中性になるまで水洗を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を留去し、47.4gの1,1,2,2−テトラメチルプロピルヒドロペルオキシド(上記構造式(2))を得た。
【0024】
次に、撹拌装置、温度計および滴下ロートを備えた100mlの4ッ口フラスコに得られた16.8gの1,1,2,2−テトラメチルプロピルヒドロペルオキシドを仕込み、47.7gの30%水酸化カリウム水溶液を加えて撹拌、混合した。温度を0〜5℃に保ちながら11.1gのピバリン酸クロリドを撹拌しながら滴下し、さらに撹拌を2時間続けた。反応液を中性になるまで水洗し、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。得られた化合物を、ヨードメトリー法により分析した結果、収量23.8g,収率91.7%(ヒドロペルオキシドに対するモル収率)であった。
【0025】
また、得られた化合物を分析した結果、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレートであると判明された。以下に、その分析結果を示す。
【0026】
更に、得られた化合物のベンゼン溶液0.1モル/lにおける10時間半減期温度は45.7℃、活性酸素量は7.40%であった。
【0027】
【化6】
1H−NMR(アセトン−d6)
H δ(ppm)
a 1.01(s,9H)
d 1.26(s,6H)
g 1.23(s,9H)
13C−NMR(アセトン−d6)
C δ(ppm)
a 26.07
b 38.30
c 86.64
d 20.80
e 175.10
f 39.32
g 27.45
IR(neat)
ν/cm-1
1768(C=O伸縮)
1095(C−O伸縮)
850(O−O伸縮)
【0028】
[実施例2] 1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエートの製造
ピバリン酸クロリドの代わりにネオヘプタン酸クロリドを用いた以外は、実施例1に準じた手順に従い、収量21.3g、収率72.5%で化合物を得た。
【0029】
得られた化合物を分析した結果、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエートであると判明され、ベンゼン溶液0.1モル/lにおける10時間半減期温度は40.6℃、活性酸素量は6.55%であった。以下に、分析結果を示す。
【0030】
【化7】
1H−NMR(アセトン−d6)
H δ(ppm)
a 1.03(s,9H)
d 1.20(s,6H)
g 1.24(s,6H)
h 1.32〜1.35(m,2H)
i 1.50〜1.57(m,2H)
j 0.87(t,3H,J=7Hz)
13C−NMR(アセトン−d6)
C δ(ppm)
a 26.07
b 38.31
c 86.66
d 20.81
e 174.80
f 43.10
g 25.50
h 43.82
i 18.90
j 14.76
IR(neat)
ν/cm-1
1765(C=O伸縮)
1093(C−O伸縮)
851(O−O伸縮)
【0031】
[実施例3] 1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノエートの製造
ピバリン酸クロリドの代わりにネオデカン酸クロリドを用いた以外は、実施例1に準じた手順に従い、収量23.2g、収率67.5%で化合物を得た。
【0032】
得られた化合物を分析した結果、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノエートであると判明された。また、ベンゼン溶液0.1モル/lにおける10時間半減期温度は39.0℃、活性酸素量は5.59%であった。以下に、分析結果を示す。
【0033】
【化8】
1H−NMR(アセトン−d6)
H δ(ppm)
a 1.02(s,9H)
d 1.17(s,6H)
g〜m 0.68〜1.55(m,19H)
13C−NMR測定は、ネオデカン酸が数種の混合物であるため、同定が不可能であった。
【0034】
IR(neat)
ν/cm-1
1770(C=O伸縮)
1095(C−O伸縮)
850(O−O伸縮)
【0035】
なお、活性酸素濃度及び10時間半減期温度の測定は下記の方法で行った。
重合開始剤の活性酸素濃度測定方法(ヨードメトリー法)
「有機過酸化物その化学と工業的利用」、有機過酸化物研究グループ編(化学工業社、1952)に記載の方法に準じて行った。具体的な方法を以下に示す。
【0036】
内容積約300mlの共栓付き三角フラスコにベンゼン30mlを入れ、フラスコ内に二酸化炭素(流量約2.5リットル/分)を約30秒間導入した後、試料(1.5〜1.8meq)を正しく計り入れる。次にヨウ化ナトリウム飽和水溶液2mlを加え、次いで塩化第2鉄酢酸水溶液(0.0002%FeCl3・6H2O)70mlを加え、内容物をよく混合したのち、暗所に15分間放置する。純水約80mlを加え、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液で無色になるまで滴定する。別に同一条件でブランクテストを行う。
【0037】
重合開始剤の10時間半減期温度測定方法
ベンゼンを溶媒として、0.1モル/lの過酸化物濃度の溶液を調整し、窒素置換を行ったガラス管中に密封して、一定の所定温度にセットした恒温槽に浸し、この重合開始剤を熱分解させ、活性酸素濃度を前述の方法で測定し、未分解の重合開始剤濃度経時変化を得ることにより、この温度での分解速度定数を得る。
【0038】
重合開始剤熱分解式
[I]=[I]0・exp(−K・t)−(イ)
[I]:重合開始剤濃度
[I]0:初期重合開始剤濃度
K:所定温度における分解速度定数
t:時間
4種類の温度に関し上記操作によりKを得て、縦軸に1n(K)、横軸に1/(R・T)を取り、アレニウスプロットすることにより、傾きよりこの重合開始剤の活性化エネルギー(Ea)、y切片より頻度因子(A)を得る。
【0039】
分解速度定数式
K=A・exp(−Ea/(R・T))−(ロ)
変形して、
1n(K)=1n(A)−Ea/(R・T)
A:重合開始剤の頻度因子
Ea:重合開始剤の活性化エネルギー
R:気体定数
T:温度
10時間で重合開始剤が1/2濃度となる温度、即ち10時間半減期温度は、(イ)式で[I]=1/2[I]0、t=10とし、A,Eaが既知となったので、(ロ)を代入し、T(10時間半減期温度)を得る。
【0040】
[参考例1]
内容積2リットル、内温度調節コイル付きステンレス製重合器を用い、重合器内に脱イオン水1250gと水溶性部分ケン化ポリビニルアルコール0.36g,水溶性セルロースエーテル0.24gを溶解した脱イオン水50gを仕込み、重合器内圧が50mmHg abs.になるまで脱気した後、塩化ビニル単量体(VCM)405gを仕込み、撹拌しながらコイルに加熱水を通水して内温を57℃に到達するまで昇温した。この時点で、先に得られたイソパラフィン溶液で25%濃度の1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)を1.62g(0.100重量%対VCM)注射器で注入し、重合を開始させると同時にコイルに冷却水を通水して内温を57℃(重合温度)に保持しながら重合を続けた。
【0041】
重合器の内圧が4.5kgf/cm2に低下した時点でビスフェノールA20%濃度メタノール溶液0.225gを注射器で注入し重合を停止して、排ガス(未反応単量体)の回収を行い、塩化ビニル重合体スラリーを取り出し、脱水乾燥して、366g(収率90.4%)の塩化ビニル重合体を得た。
【0042】
[参考例2]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)0.100重量%対VCMの代わりに、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノネート(TMND)0.070重量%対VCM添加し、重合温度を54℃とし、重合器の内圧が4.2kgf/cm2に低下した時点で重合を停止した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0043】
[参考例3]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)0.100重量%対VCMの代わりに、1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエート(TMHP)0.090重量%をVCMと酢酸ビニルモノマーの総重量405g(重量比率9/1)に対し添加し、重合温度を57℃とし、重合器の内圧が4.2kgf/cm2に低下した時点で重合を停止した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を得た。
【0044】
[比較参考例1]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)の代わりに、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート(BND)0.113重量%対VCM(参考例1におけるTMPVと等モル)を添加した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0045】
[比較参考例2]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)の代わりに、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート(BNH)0.094重量%対VCM(参考例1におけるTMPVと等モル)を添加した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0046】
[比較参考例3]
参考例1における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシピバレート(TMPV)の代わりに、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(EHP)0.160重量%対VCM(参考例1におけるTMPVと等モル)を添加した以外は、参考例1に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0047】
[比較参考例4]
参考例2における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオデカノエート(TMND)の代わりに、クミルペルオキシネオデカノエート(CND)0.075重量%対VCM(参考例2におけるTMNDと等モル)を添加し,重合器の内圧が6.6kgf/cm2に低下した時点で重合を停止した以外は、参考例2に準じた手順に従い、塩化ビニル重合体を得た。
【0048】
[比較参考例5]
参考例3における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエート(TMHP)の代わりに、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート(BND)0.090重量%対VCMと酢酸ビニルモノマーとの総重量(参考例3におけるTMHPと等モル)を添加した以外は、参考例3に準じた手順に従い、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を得た。
【0049】
[比較参考例6]
参考例3における1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシネオヘプタノエート(TMHP)の代わりに、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(EHP)0.139重量%対VCMと酢酸ビニルモノマーとの総重量(参考例3におけるTMHPと等モル)を添加した以外は、参考例3に準じた手順に従い、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を得た。
【0050】
次に、参考例1〜3、比較参考例1〜6において得られた各塩化ビニル重合体について、下記に示す方法で初期着色性の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0051】
初期着色性測定法
塩化ビニル重合体100重量部にラウリル酸スズ1重量部、カドミウム系安定剤0.5重量部およびジオクチルフタレート50重量部を配合し、2本ロールミルを用いて160℃で5分間混練した後、厚さ0.8mmのシートを成形した。次に、このシートを裁断して重ねて、4×4×1.5cmの型枠に入れて160℃、65〜70kgf/cm2で加熱、加圧成形して測定試料を作成した。この測定試料について、光電色彩計(日本電色工業株式会社製)を用いて、JISZ8730(1980)に記載のハンターの色差式における明度指数Lを求め、a値およびb値を測定した。
【0052】
ただし、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体である実施例3、比較参考例5及び比較参考例6に関しては上記においてジオクチルフタレート30重量部、ロールミル混練温度120℃、4×4×0.5cmの型枠とした以外は同一条件で初期着色性測定を行った。
【0053】
【表1】
【0054】
表1において、「重合開始」を重合開始剤を投入した時点とし、「降下迄の時間」を重合開始から重合器内圧が下がり始める迄の時間とし、「降下速度」を降圧開始した時点から重合を停止した時点での重合器内圧に達する間の圧力降下速度とする。
【0055】
ただし、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合である参考例3、比較参考例5及び比較参考例6において、「降圧迄の時間」がゼロになっているのは、塩化ビニル単独重合と異なり、重合開始の最初から重合器内圧が徐々に低下したことを意味し、「降下速度」は、重合開始の最初から重合を停止した時点での重合器内圧に達する間の圧力降下速度とする。
【0056】
表1における開始剤記号とその名称、10時間半減期温度の関係は、以下のとおりである。
【0057】
表1の結果より、本発明の1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物(TMPV,TMHP,TMND)を重合開始剤として用いて重合した場合、短時間反応が達成でき、かつ重合体成形品の着色性も優れたものとすることが可能であることが認められた。
【0058】
また、本発明による1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル化合物(TMPV,TMHP,TMND)は、反応速度が急激に低下する降圧以後の重合期間で降圧速度が速い、即ち重合反応速度が速く、従来のtert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、クミルペルオキシネオデカノエートなどの開始剤と比較してかなり速く、トータルとしての重合時間を短縮するのに非常に効果的であることが知見された。
【0059】
更に、本発明による1,1,2,2−テトラメチルプロピルペルオキシエステル(TMPV,TMHP,TMND)を使用して得られた重合体の初期着色性は、従来、比較的短時間反応が可能であるが、これらにおいて問題のあったジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネートやジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネートよりも格段に優れ、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、クミルペルオキシネオデカノエート等と同等の優れた色相の重合体成形品がが得られることが認められた。
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