JP3542066B2 - 農用トラクタと農用トラクタのクラッチ制御方法 - Google Patents
農用トラクタと農用トラクタのクラッチ制御方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は農用トラクタ、特に、エンジンと、走行装置と、前記エンジンと走行装置の間に設けられた変速装置と、前記エンジンと前記走行装置の間に配置され、前記エンジンから走行装置への駆動力の伝動を切る状態と、半クラッチ状態と、伝動状態の間で変位可能のクラッチと、前記クラッチを操作するアクチュエータと、農用トラクタの対地速度を測定する速度センサを備える農用トラクタに関する。また、本発明は、エンジンと走行装置と、前記エンジンと走行装置の間に設けられた変速装置と、前記エンジンと走行装置の間に配置され、前記エンジンから走行装置への駆動力の伝動を切る状態と、半クラッチの状態と、伝動状態で変位可能のクラッチと、前記クラッチを制御するアクチュエータを有する農用トラクタのクラッチ制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の作業車として特開平6‐11023号公報に示されるものが存在し、この従来例では、エンジンの回転数と変速シフト位置と車輪の転がり状態との要素に基づいて、予め設定された複数の昇圧カーブのうちの1つを選択し、油圧クラッチ(切替えクラッチ)の入り操作時には選択された昇圧カーブに従って油圧クラッチの圧力を上昇させるよう制御動作が設定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来例のように油圧クラッチの入り操作時に選択された特性に従って昇圧を行うものでは、予め決められた複数種の昇圧特性のうちの1つを選択することになるので、多様な要素に対応して油圧クラッチを円滑に入り操作するためには多数の昇圧特性を設定する必要があり、製作の面で手間が掛かり改善の余地がある。
【0004】
更に、記憶された昇圧カーブに沿って油圧クラッチの圧力を制御するという事は、例えば、作業車が希望する速度に達してもまだ、その昇圧カーブに沿って徐々にクラッチ圧を上げていくということも起こる。このような事が起こると、クラッチ接続、すなわちクラッチ変速、が完了するまでに、必要以上の時間がかかることになるのである。すなわち、作業車の状態に無関係に、クラッチ圧が制御されるため、クラッチ圧の最適化された制御が行われているとは言えない点でも改良の余地がある。
【0005】
また、変速時のショックは油圧クラッチの入り操作時に発生するものであり、油圧クラッチの機械的な個体差、油圧クラッチの圧力を制御する電磁弁等の個体差によって、適正な制御が行われても、油圧クラッチの圧力を予め設定された特性で昇圧できない面もあり、この点にも改善の余地がある。
本発明は上記のような問題に鑑みて発明されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による農用トラクタにおいては、農用トラクタの速度より測定加速度を得て、前記前記測定加速度が、予め設定された加速度特性に合うように、前記アクチュエータをフィードバック制御し、加速度を時間に対して微分した値であるジャーク値が設定時間領域の間、ゼロでない設定ジャーク値に合うように前記アクチュエータをフィードバック制御することを特徴とする。
油圧クラッチの制御の為に多数の昇圧カーブを記憶する必要が無く、農用トラクタの加速度とジャーク値のフィードバックにより油圧クラッチの制御を行う事ができ、より最適化された油圧クラッチの制御を行う事により、ショックなどの発生を防止する事も可能となる。
【0007】
更に、本発明の実施形態において加速度を時間に対して微分した値であるジャーク値を制御する事が、変速時のショックを効率的に規制するために好ましい。
また、本発明の実施形態において、農用トラクタのエンジン回転数と、目標変速段を検出する事により、変速操作が行われた際の希望走行速度である理論走行速度を算出し、この理論走行速度に測定速度が向かうようにクラッチを制御するべきであるが、この制御をジャーク値に基づいた制御を行う事が望ましい。
【0008】
例えば、増速側の変速位置に変速を行い、理論走行速度が測定速度より第であり、変速操作の最初の段階としてクラッチが切られた際に農用トラクタの自重などの影響により減速が始まった際に、農用トラクタの速度が減速から加速の方向(希望速度である理論走行速度の方向)へ変わるように制御を行う必要がある。このために、ジャーク値が正となるように制御することにより、減速から増速への移行が可能となる。
【0009】
反対に、減速側へ変速を行い、理論走行速度が測定速度より小である際に、農用トラクタが増速していた場合、ジャーク値が負となるように制御することにより、増速から減速に移行するように制御されるのである。
このようにジャーク値を正あるいは負であるように制御するにあたり、ジャーク値を場合に応じて正または負の一定の設定値に保持するように制御することが制御の簡略化の点において望ましい。
【0010】
本発明の実施形態において、測定速度が理論走行速度に達した時に即座に、クラッチが半クラッチ状態から完全な伝動状態に移行されるよう制御される事が望ましい。これにより、変速作業の完了までの時間が必要時間以上に長引く事を防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、作業車の一例としての農用トラクタには、ステアリング操作される駆動型の前車輪FWと、駆動型の後車輪RWとを備えた車体の前部位置にエンジン1が配置されている。このエンジン1からの動力を主クラッチハウジングに内装された主クラッチ2を介してミッションケースMCに伝える伝動系が備えられている。更に、車体中央位置にステアリングハンドルSHと運転座席DSとを配置し、ミッションケースMCの後端上部位置に備えた駆動昇降機構としてのリフトシリンダLCで昇降操作される左右一対のリフトアームLAを備えて農用トラクタが構成されている。
【0012】
このトラクタには、車体後端位置に対してロータリ耕耘装置Rが、トップリンクTLと、左右一対のロアーリンクLLとでなる3点リンク機構を介して連結されている。ロアーリンクLLと左右のリフトアームLAとをリフトロッドLRを介して吊り下げ状態に支持することでリフトアームLAの駆動によって、前記ロータリ耕耘装置Rが昇降自在に構成されている。
【0013】
又、前記運転座席DSの側部位置にはロータリ耕耘装置Rの対車体高さを設定するポジションレバー(図示せず)と、前記ミッションケースMCに内蔵されたギヤ式の変速装置を変速操作する主変速レバー33、更に、前後進レバー16、及び、副変速レバー43を配置してある。また、ステップ部の右側にブレーキペダルBPを、左側に主クラッチペダルCPを配置してある。ブレーキペダルBPの変位を感知するブレーキスイッチ65(図5)が設けられている。
【0014】
図2は農用トラクタの伝動系を示しており、エンジン1からの動力が主クラッチ2、第1主変速装置A、多板式の走行変速用の油圧クラッチ3、第1副変速装置C、第2主変速装置B、第2副変速装置D及び後輪デフ機構4aを介して後輪4に伝達される。また、後輪デフ機構4aの直前から分岐した動力が、伝動軸5及び前輪デフ機構6aを介して前輪6に伝達される。エンジン1からの動力が、PTO変速装置7を介してPTO軸8に伝達される。
【0015】
第1主変速装置Aは、2組のシフト部材9,10を備えたシンクロメッシュ型式のギヤ変速型式で4段に変速可能に構成されている。第2主変速装置Bも1組のシフト部材30を備えたシンクロメッシュ型式のギヤ変速型式で2段に変速可能に構成されている。第1及び第2主変速装置A,Bにより8段に変速可能である。第1主変速装置Aのシフト部材9,10は、第1及び第2油圧シリンダ11,12によってスライド操作され、第2主変速装置Bのシフト部材30は、第3油圧シリンダ13によってスライド操作される。
【0016】
第2副変速装置Dは1組のシフト部材31を備えたギヤ変速型式で2段に変速可能に構成されており、シフト部材31を副変速レバー43により直接にスライド操作する。従って、第1及び第2主変速装置と第2副変速装置Dの組み合わせで最大で16の変速位置における変速が可能である。図2に示されるとおり、この副変速レバー43の基部には、変速段センサとして機能するスイッチ43Aが設けられており、副変速レバー43の変速位置が検知できるようになっている。変速段センサとして機能するスイッチ43Aの出力は制御手段である制御装置42(図4)に送られる。
【0017】
図2において、図番61は、エンジン回転数を測定し、制御装置42(図4)と連絡する回転数センサとして機能するタコメータである。更に、前輪6に対しては、作業車の実際の対地速度を計測する速度センサ63が設けられている。
上に説明した通り、本実施形態における農用トラクタでは、基本的に16の変速位置で変速が可能である。しかし、作業地の状態が変化した際などで、トラクタに掛かる負荷が変化した際に、現在の変速段から少しだけ異なる伝動比の変速位置に変速し、トラクタに掛かる負荷が元の状態に戻ると、再び元の変速位置に戻したい要望がある。この要望に答えるために、本実施形態のトラクタでは、現在の変速位置よりも少しだけ異なる伝動比を実現するための第1副変速装置Cが設けられている。
【0018】
次にこの第1副変速装置Cについて説明する。
図2及び図3に示すように、第1副変速装置Cはシフト部材47を備えたシンクロメッシュ型式の前後進切換部C1と、シフト部材48を備えたシンクロメッシュ型式で2段に変速可能な変速部C2とで構成されている。
【0019】
前後進切換部C1は、油圧クラッチ3からの伝動軸44に、後進ギヤ45及び前進円筒軸46が相対回転自在に外嵌されて構成されており、伝動軸44に備えられたシフト部材47を、図3で右方にスライド操作して後進ギヤ45に咬合させると、伝動軸44の動力が後進ギヤ45から中間ギヤ55を介して、変速部C2を通らずに逆転状態で、第2主変速装置Bへの伝動軸49に伝達される。
【0020】
逆に、シフト部材47を図3で左方にスライド操作して前進円筒軸46に咬合させると、伝動軸44の動力が正転状態で前進円筒軸46に伝達されるのであり、シフト部材47は前後進レバー16により直接にスライド操作する。この前後進レバー16には、図2で示されるとおり、基部に変速段センサとして機能するスイッチ16Aが備えられ、このスイッチ16Aの出力が制御装置42に送られる。
【0021】
図2及び図3に示すように変速部C2は、前進円筒軸46に高速ギヤ50が相対回転自在に外嵌され、伝動軸44に低速ギヤ51が相対回転自在に外嵌されて構成されている。前進円筒軸46に備えられたシフト部材48を、図3で右方にスライド操作して高速ギヤ50に咬合させると、前進円筒軸46の動力が正転の高速状態で伝動軸49に伝達される。逆に、シフト部材48を図3で左方にスライド操作して低速ギヤ51に咬合させると、前進円筒軸46の動力が正転の低速状態で伝動軸49に伝達されるのであり、シフト部材48は第4油圧シリンダ14によってスライド操作される。
【0022】
この場合、変速部C2における高速ギヤ50と低速ギヤ51との間の伝動比の差が、後述する第1及び第2主変速装置A,B(変速レバー33)の各変速位置の間での伝動比の差よりも小に設定されている。
【0023】
次に、変速部C2の第4油圧シリンダ14について説明する。
図4に示すように、第4油圧シリンダ14の図の左側の油室に作動油を給排操作する電磁操作弁22が備えられ、第4油圧シリンダ14の図面の右側の油室に、後述する油路17から分岐した油路27が接続されて、作動油が常時供給されている。電磁操作弁22は作動油の入力ポート、作動油の出力ポート及び作動油のドレンポートを備えた3ポート式で、作動油を供給する供給位置及び作動油を排出する排出位置の2位置に操作自在に構成されており、バネで供給位置側に付勢されている。
【0024】
以上の構造により電磁操作弁22を供給位置に操作すると、ピストン14aの受圧面積の違いにより、ピストン14aが図4に示すように図面の右方に移動するのであり、この状態が変速部C2のシフト部材48が高速ギヤ50に咬合する状態である。次に電磁操作弁22を排油位置に操作すると、油路27から供給される作動油によりピストン14aが図面の左方に移動するのであり、この状態が変速部C2のシフト部材48が低速ギヤ51に咬合する状態である。
【0025】
次に、第1主変速装置Aの第1及び第2油圧シリンダ11,12について説明する。
図4に示すように、大径のシリンダ部と小径のシリンダ部とを形成して、大径ピストン23及び小径ピストン24をスライド自在に内装し、大径ピストン23の開孔に小径ピストン24にスライド自在に挿入して、第1及び第2油圧シリンダ11,12が構成されている。
【0026】
小径ピストン24の図面の右側に作動油を給排操作する電磁操作弁25、及び大径ピストン23の図面の左側に作動油を給排操作する電磁操作弁26が備えられている。電磁操作弁25,26は作動油の入力ポート、作動油の出力ポート及び作動油のドレンポートを備えた3ポート式で、第1及び第2油圧シリンダ11,12に作動油を供給する供給位置、及び作動油を排出する排出位置の2位置に操作自在に構成されており、バネで供給位置側に付勢されている。
【0027】
以上の構成により両方の電磁操作弁25,26を供給位置に操作しておくと、図4の第2油圧シリンダ12に示すように、大径ピストン23の受圧面積の方が小径ピストン24の受圧面積よりも大きい点により、大径及び小径ピストン23,24が互いに押し合いながら、大径及び小径ピストン23,24が図面の右方に移動しようとするのであり、大径及び小径のシリンダ部の段部に大径ピストン23が当たり、この位置で大径及び小径ピストン23,24が保持される。この状態が図2に示すシフト部材9,10の中立停止位置である。
【0028】
次に、電磁操作弁26を供給位置に残した状態で電磁操作弁25を排油位置に操作すると、図4の第1油圧シリンダ11に示すように、大径ピストン23を残して小径ピストン24が図面の右方に移動する。この状態が、図2に示すシフト部材9,10が図面の右方にスライド操作されて、伝動ギヤに咬合する状態である。逆に電磁操作弁25を供給位置に残した状態で電磁操作弁26を排油位置に操作すると、大径及び小径ピストン23,24が一体で図面の左方に移動する。この状態が図2に示すシフト部材9,10が図面の左方にスライド操作されて、伝動ギヤに咬合する状態である。
【0029】
次に、第2主変速装置Bの第3油圧シリンダ13について説明する。
図4に示すように第4油圧シリンダ14と同様に、第3油圧シリンダ13の図面の右側の油室に作動油を給排操作する電磁操作弁29が備えられ、第3油圧シリンダ13の図面の左側の油室に、後述する油路17から分岐した油路28が接続されて、作動油が常時供給されている。電磁操作弁29は作動油の入力ポート、作動油の出力ポート及び作動油のドレンポートを備えた3ポート式で、作動油を供給する供給位置及び作動油を排出する排出位置の2位置に操作自在に構成されており、バネで供給位置側に付勢されている。
【0030】
以上の構造により電磁操作弁29を供給位置に操作すると、ピストン13aの受圧面積の違いにより、ピストン13aが図4に示すように図面の左方に移動するのであり、この状態が第2主変速装置Bの低速状態である。次に、電磁操作弁29を排油位置に操作すると、油路28から供給される作動油によりピストン13aが図面の右方に移動するのであり、この状態が第2主変速装置Bの高速状態である。
【0031】
次に、第1,2,3,4油圧シリンダ11,12,13,14、及び油圧クラッチ3に対する油圧回路について説明する。
図4に示すように、ポンプ15から油路17,18が並列的に分岐しており、油路18に電磁比例型式の圧力制御弁21及び操作弁35が直列に接続されており、操作弁35の下手側に油圧クラッチ3が接続されている。即ち圧力制御弁21が油圧クラッチ3を無段階で制御するアクチュエータとして機能するのである。このアクチュエータにより、油圧クラッチ3は、エンジン1から前輪6及び後輪4等の走行装置への駆動力の伝動を切る状態と、半クラッチ状態と、伝動状態の間で変位可能に操作されるのである。
【0032】
操作弁35は油圧クラッチ3に作動油を供給してこれを伝動操作する供給位置35a、及び油圧クラッチ3から作動油を排出してこれを伝動切り操作する排油位置35bの間で操作可能なパイロット操作式であり、バネによって排油位置35b側に付勢されている。油路17における絞り部19の下手側からパイロット油路20が分岐しており、パイロット油路20が操作弁35に接続されている。
【0033】
油路17における絞り部19から上手側に、前述の電磁操作弁22,25,26,29が接続されている。油路17における絞り部19から下手側に、閉側に付勢された開閉弁36,37,38,39,40が接続されている。第1,2,3,4油圧シリンダ11〜14において、変速位置に対応する位置に凹部がピストンロッドに形成されており、変速位置と変速位置の間の中立部が凸状に形成されている。変速位置と変速位置との間において開閉弁36〜39を開操作する連係機構32が備えられている。
【0034】
第1副変速装置Cの前後進切換部C1におけるシフト部材47のスライド操作用のシフト軸にも、前述と同様な凹部及び凸状の中立部が形成され、前進側と後進側との間で開閉弁40を開操作する連係機構32が備えられている。
【0035】
操縦者が人為的に操作するもので、1速位置〜8速位置の操作位置を備えた変速レバー33が備えられて、変速レバー33の操作位置を検出する変速段センサとして機能するポテンショメータ34の信号が制御装置42に入力される。変速レバー33の操作に基づいて制御装置42が電磁操作弁25,26,29を操作する。変速レバー33の握り部にボタン型式の操作スイッチ52が備えられており、操作スイッチ52の操作に基づいて制御装置42が電磁操作弁22を操作する。
油路17における絞り部19の下手側にパイロット油路20のパイロット圧を検出する圧力センサー41が備えられており、圧力センサー41の信号が制御装置42に入力されている。
【0036】
次に、変速レバー33による第1及び第2主変速装置A,Bの変速操作について説明する。
図4に示す状態は変速レバー33を1速位置に操作している状態であり、第1油圧シリンダ11が第1主変速装置Aの1速位置、第2油圧シリンダ12が中立停止位置、第3油圧シリンダ13が第2主変速装置Bの低速位置、前後進レバー16が前進側に位置した前進1速状態である。これによって、パイロット油路20のパイロット圧により、操作弁35が供給位置35aに操作されて、油圧クラッチ3が伝動操作されている。
【0037】
この前進1速状態において変速レバー33を例えば2速位置に操作すると、第1油圧シリンダ11の電磁操作弁25が排油位置から供給位置に操作され、第1油圧シリンダ11の電磁操作弁26が供給位置から排出位置に操作される。これにより、第1油圧シリンダ11の大径及び小径ピストン23,24が、図4に示す1速位置から図面の左方に移動し始めて、シフト部材9がスライド操作され始める。
【0038】
この第1油圧シリンダ11の大径及び小径ピストン23,24の移動の間に、連係機構32によって開閉弁36が開操作される(第2油圧シリンダ12が中立停止位置にあるので、開閉弁37は既に開操作されている)。これによって、パイロット油路20のパイロット圧が低下し、バネの付勢力により操作弁35が供給位置35aから排油位置35bに操作されて、油圧クラッチ3が伝動切り操作される。
【0039】
次に第1油圧シリンダ11によるシフト部材9のスライド操作が終了して第1主変速装置Aが2速位置に変速操作されると、連係機構32によって開閉弁36が閉操作されて、パイロット油路20のパイロット圧が再び上昇し、操作弁35が排油位置35bから供給位置35aに操作される。前述のようにパイロット油路20において、パイロット圧が低下し再び上昇したことが圧力センサー41によって検出されると、制御装置42により圧力制御弁21が操作されて、油圧クラッチ3に供給される作動油の圧力が、下で説明される制御方法で制御される。
【0040】
以上の変速操作と同様に、変速レバー33を2速位置と3速位置とに亘り操作すれば、第1及び第2油圧シリンダ11,12によって第1主変速装置Aが変速操作され、変速レバー33を3速位置と4速位置とに亘り操作すれば、第2油圧シリンダ12によって第1主変速装置Aが変速操作される。
【0041】
変速レバー33を4速位置と5速位置とに亘り操作すれば、第1,2,3油圧シリンダ11,12,13によって第1及び第2主変速装置A,Bが変速操作され、変速レバー33を5速位置と6速位置とに亘り操作すれば、第1油圧シリンダ11によって第1主変速装置Aが変速操作されるのであり、変速レバー33を6速位置と7速位置とに亘り操作すれば、第1及び第2油圧シリンダ11,12によって第1主変速装置Aが変速操作され、変速レバー33を7速位置と8速位置とに亘り操作すれば、第2油圧シリンダ12によって第1主変速装置Aが変速操作される。
【0042】
前後進レバー16を前進側と後進側とに亘り操作すれば、連係機構32により開閉弁40が開閉操作され、前述と同様に操作弁35により油圧クラッチ3が自動的に切り操作され、更に、下で説明される方法で伝動操作される。
【0043】
次に、操作スイッチ52による第1副変速装置Cの変速部C2の変速操作について説明する。
第1副変速装置Cの変速部C2において通常の状態では、電磁操作弁22はバネの付勢力により供給位置に操作されて、第4油圧シリンダ14のピストン14aが図4の図面の右方に移動しており、変速部C2のシフト部材48は高速ギヤ50に咬合している。
【0044】
この状態において、図4に示す変速レバー33の操作スイッチ52を一度押し操作すると、制御装置42により電磁操作弁22が供給位置から排油位置に操作される。これにより、油路27から供給される作動油により第4油圧シリンダ14のピストン14aが図面の左方に移動し始め、これに伴い連係機構32によって開閉弁38が開操作され、操作弁35が排油位置35bに操作されて油圧クラッチ3が伝動切り操作される。
【0045】
次に、第4油圧シリンダ14によりシフト部材48が低速ギヤ51に咬合すると、連係機構32によって開閉弁38が閉操作される。次に、下で詳しく説明される通り、制御装置42が圧力制御弁21を操作し、油圧クラッチ3を伝動状態に変位させる。この時、表示ランプ53が点灯する。
【0046】
この場合、変速部C2における高速ギヤ50と低速ギヤ51との間の伝動比の差が、第1及び第2主変速装置A,B(変速レバー33)の各変速位置の間での伝動比の差よりも小に設定されている。これにより、例えば変速レバー33を2速位置に操作している状態において、前述のように操作スイッチ52を押し操作して、変速部C2のシフト部材48を低速ギヤ51に咬合させると、2速位置と1速位置との中間の伝動比での伝動状態となる。
【0047】
次に前述の状態において、変速レバー33の操作スイッチ52をもう一度押し操作すると、制御装置42により電磁操作弁22が排油位置から供給位置に操作されて、変速部C2のシフト部材48が低速ギヤ51から高速ギヤ50に咬合するのである。この際にも、開閉弁38及び操作弁35により油圧クラッチ3が自動的に伝動切りされ、下で詳しく説明される通り、制御装置42により圧力制御弁21が操作され、油圧クラッチ3が伝動状態に操作される。
【0048】
ここでは、変速レバー33による変速操作と、操作スイッチ52による現状変速位置よりも少し異なる伝達比を有する変速位置への操作について説明したが、副変速レバー42による操作による伝動系の作動はこれに似たものであるので、ここでは説明しない。
上記の変速装置の構造により、異なる変速位置の間で、変速が行われるのである。変速位置が変わる際に、油圧クラッチ3は、上で説明された通り自動的に伝動切り状態に変位されるのであるが、伝動状態に移行する途中で半クラッチ状態で操作される事が必要である。半クラッチ状態での油圧クラッチ3のクラッチ圧を制御する事により、最適化された変速操作が可能となるのである。
【0049】
以下、制御装置42がどのようにアクチュエータとして機能する圧力制御弁21を制御する事により、クラッチ3が制御されるかについて詳しく説明する。
制御手段として機能する制御装置42は、図5で示されるとおり、各種のセンサよりの出力情報を入力する。変速レバー33、副変速レバー43、前後進レバー16の変位位置を検出する変速段センサとして機能するポテンショメータ34や、スイッチ43A及び16Aよりの出力や、エンジン回転センサとして機能するタコメータ61、速度センサ63、ブレーキペダルBPが操作されたかどうかを検出するブレーキスイッチ65、更にパイロット圧を測定する圧力センサ41の夫々よりの出力が制御装置42に入力される。これらの情報の少なくとも一部に基づき、制御装置42は圧力制御弁21を介して油圧クラッチ3を操作するのである。
【0050】
次に図6から図11を用いて、制御装置42の制御アルゴリズムを説明する。図6から図11の各々の図(A)の縦軸は、作業車の速度を示し、横軸は時間を表している。従って、この図において、曲線の傾きは、加速度aを表す。これらの図面において、エンジン回転数センサ61の出力であるエンジン回転数(rpm)と、変速段センサ34よりの出力に基づき、理論走行速度が計算される。この理論走行速度が点線で表されている。また、速度センサ63の出力に基づく作業車の実際の対地速度が実線で表されている。
【0051】
図6から図11の各々の図(B)の縦軸は圧力を表し、油圧クラッチ3に対してかけられる制御油圧が、実線で示されている。横軸は、時間を表し、各々の図において、図(A)の時間軸と、図(B)の時間軸は対応している。
図6から図8は、t0からt1まで、ある変速位置で作業車が走行し、その後、高速方向の変速位置へ変速操作した制御に対応し、図9から図11は、現在の変速位置より、t1の時点で、低速の変速段へ変速操作した場合に対応する。
【0052】
図6では、t=t1において、オペレータが変速レバー33を高速側の変速位置に操作した状態が示されている。この時点で、上で説明された通り、油圧クラッチ3への油圧は、操作弁35により自動的にゼロになる。図6では、クラッチ3が切り状態になった際に、図6(A)の実線で示されるとおり、作業車が増速していない(加速度aがゼロか負である)状態における制御が示されている。この時、制御装置42圧力センサ41よりの出力値が低くなる事により、クラッチ3が切り状態になったことを感知し、t1からt2までの設定時間の間、何も行わない。t=t2の時点で、変速に関係する各ギヤの変位が完了し、操作弁35が、圧力制御弁21の油圧のクラッチ3への伝達を許可する。この時点で、制御装置42は、t2からt3の間だけ、油圧クラッチ3を半クラッチ状態にするために設定油圧P2をクラッチ3へ送るよう圧力制御弁21を制御する。
【0053】
t=t3において、制御装置42は、速度センサ63よりの出力を連続的に入力し、時間単位あたりの測定された速度の変化を算出する事ことにより、作業車の加速度を算出する。更に、この加速度の時間的変化を算出する事により、一般的にジャーク値a' と呼ばれる加速度を時間で微分した値を得る。ここでaに付随したアポストロフィー(' )は、時間に対する微分を表す。制御装置42は、このジャーク値a' と一定の第1 設定値であるβとを比較し、これらが等しくなるように、油圧クラッチ3に対してフィードバック制御が行われる。このように、ジャーク値が一定となるような加速度特性を得るためのフィードバック制御を第1 制御モードと呼ぶ。
【0054】
このβは正の値であるので、このような制御が行われると、実線で描かれている作業車の測定加速度aは負から正に移行する。すなわち、理論走行速度が、測定速度を上回っている際に、測定速度が減速し、理論走行速度とは反対方向に変化している場合、測定速度を理論走行速度の方向へ移行させるためにジャーク値を正にするように制御するのである。そして、測定加速度が第2設定値であるαとなると、この時点(t=t4)で、測定加速度が第2設定値のαとなるように油圧クラッチ3に対してフィードバック制御される。このように加速度を一定にするような加速度特性を得るためのフィードバック制御を第2 制御モードと呼ぶ。
【0055】
この制御が、t=t5の時点で、測定速度が理論走行速度と一致するまで続けられるのである。ジャーク値が第1設定値であるβとなるように制御される時間(t3からt4)を、第1 時間領域と呼び、測定加速度a' が第2設定値のαとなるよう制御される時間(t4からt5)を第2 時間領域と呼ぶ。
【0056】
測定速度が理論走行速度と一致すると、即座に、制御装置42は、油圧クラッチ3への制御油圧を、油圧クラッチ3を完全に伝動状態にするための設定油圧P1に上げる。
図7では、変速時において、クラッチ3が切り状態に操作された後に、t3において半クラッチ状態に制御された際に、加速度aが正であり、既に測定速度が理論走行速度を上回っている状態にあった際の制御が示されている。このように測定速度が急激に上昇している場合には、t=t3よりの制御装置42による制御は、ジャーク値a' がこの状態における第1 設定値である−β(β>0)となるように制御する(第1 制御モード)。すなわち、理論走行速度が、測定速度より小さい際に、測定速度が増加し、理論走行速度とは反対方向に変化している場合、測定速度を理論走行速度の方向へ移行させるためにジャーク値を負にするように制御するのである。この場合、作業車の実際の速度が、エンジン回転と目標のクラッチの組み合わせに基づく理論走行速度を上回っているため、油圧クラッチ3のクラッチ圧が上がると、エンジンブレーキがかかるため、作業車を減速させることができるのである。
【0057】
これにより希望する理論走行速度をオーバーシュートしてしまった作業車の速度カーブを理論走行速度の方向へ下げるように制御される。しかも、クラッチ圧を一挙にP1まで上げた時に発生するショックを回避する事が可能となる。更に、t=t4において、測定加速度aが第2 設定値である−αと等しくなると、測定加速度が−αとなるように制御が開始される(第2 制御モード)。
【0058】
t=t5において、測定速度が理論走行速度と等しくなると、即座に、制御装置42は、油圧クラッチ3への制御油圧を、油圧クラッチ3を完全に伝動状態にするための設定油圧P1に上げる。
図8では、変速操作がなされて、油圧クラッチ3が自動的に切り状態になった後に、t3において半クラッチ状態に制御された際に、測定速度が加速状態にあり、測定速度が理論速度を上回っていない場合の制御が示されている。
【0059】
油圧クラッチ3への制御油圧を実質的にP2より低い設定値であるP3にし、実質的に油圧クラッチ3を軽い半クラッチ状態に保つ事で、t=t5において作業車の速度が自然に理論走行速度に到達することを許す。測定速度が理論走行速度と一致すると、即座に、制御装置42は、油圧クラッチ3への制御油圧を設定油圧P1に上げる。
【0060】
この場合において、作業車の加速度が小さく、設定時間内に測定速度が理論速度まで達しないと、制御装置42は、油圧クラッチ3への制御油圧を設定油圧P1に上げる。この他、設定時間内に測定速度が理論走行速度まで達しない場合には、加速度aを設定加速度αになるよう制御するよう構成しても良い。
【0061】
図9では、t1の時点で、低速側の変速段へ変速操作され、t3の時点において、作業車が減速していない(加速度がゼロか正の)状態における異なるパラメータの変化を示している。
t=t3において油圧クラッチ3の半クラッチ状態が開始されると、ジャーク値a' が第1設定値である−βとなるように油圧クラッチ3がフィードバック制御される(第1制御モード)。そして、加速度aがt4において、−αとなった時点(t4)で、作業車の実際の加速度を第2設定値である−αにする第2制御モードが開始される。この第2制御モードが測定速度が、t5において理論走行速度と一致するまで続行される。測定速度が理論走行速度と一致すると、即座に、制御装置42は、油圧クラッチ3への制御油圧を設定油圧P1に上げる。
【0062】
図10では、変速操作が行われた後、t=t3の時点において、加速度が負であり、測定速度が既に理論走行速度を下回っている際の制御が示されている。このような場合には、t=t3よりの制御装置42による制御は、ジャーク値a' がこの状態における第1 設定値であるβとなるように制御する(第1 制御モード)。これにより希望する理論走行速度をオーバーシュートしてしまった作業車の速度カーブを理論走行速度の方向へ上げるように制御される。しかも、クラッチ圧を一挙にP1まで上げた時に発生するショックを回避する事が可能となる。更に、t=t4において、測定加速度aが第2 設定値であるαと等しくなると、測定加速度aがαとなるように制御が開始される(第2 制御モード)。
【0063】
t=t5において、測定速度が理論走行速度と等しくなると、即座に、制御装置42は、油圧クラッチ3への制御油圧を設定油圧P1に上げる。
図11では、変速操作がなされて、油圧クラッチ3がt3において半クラッチ状態になった際に、測定速度が減速状態にあり、理論走行速度を下回っていない場合の制御方法が示されている。
この場合、油圧クラッチ3への制御油圧をP2より低い設定値であるP3にし、実質的に油圧クラッチ3を軽い半クラッチ状態に保つ事で、t=t5において作業車の速度が自然に理論走行速度に到達することを許す。測定速度が理論走行速度と一致すると、即座に、制御装置42は、油圧クラッチ3への制御油圧を、油圧クラッチ3への制御油圧を設定油圧P1に上げる。
【0064】
この場合、作業車の速度が自然に理論走行速度に設定時間以内に到達しなければ、油圧クラッチ3への制御油圧を設定油圧P1に上げるようにすることにより、変速時間の延長を回避する事が可能となる。この他、設定時間内に測定速度が理論走行速度まで達しない場合には、加速度aを設定加速度αになるよう制御するよう構成しても良い。
【0065】
上記の説明において、例えば、測定速度に基づき算出された加速度aが設定値αに等しくなるようにフィードバック制御する場合、加速度aと目標値であるαとをまったく等しくなるようにする制御を行う事は可能であるが、目標値のαにδの幅を有する不感帯域を設け、α±δの間に加速度aがあるように制御を行うように構成することが好ましい。
【0066】
制御装置42は、ブレーキペダルBPの踏み込み操作で作業者が意思をもって減速操作を行った際には、走行系に対する変速系を自動的に減速する処理を行うようにも制御動作が設定されている。つまり、図12のフローチャートに示すように、ブレーキスイッチ65からの信号でブレーキ操作が行われたことが判別された場合には、エンジン1の回転速度と、変速装置の変速段と、作業車の測定速度とを回転数センサ61、変速段センサ34、速度センサ63の夫々から入力して、エンジン1の回転速度と変速装置の変速段とに基づいて求めた理論走行速度と、実際の速度との比較によって実際の速度が設定値以上低減されていることが判別された場合には、図示されない変速モータを制御して変速段の減速操作を行うものとなっている(ステップ#1〜#5)。
【0067】
このように変速系が形成されたことにより、走行速度の変速を行う場合には変速レバー33を所望の変速段に操作するだけで、クラッチペダル17を踏み操作することなく自動的な変速を行い得るものとなっている。油圧クラッチ3の入り操作時においては理論走行速度と実際の速度に基づき最適な昇圧特性で油圧クラッチ3の入り操作を行うのでショックの発生を抑制して円滑な変速を可能にするものとなっている。特に、この変速時に車体に作用する加速度が大きなものであっても、この加速度を一定のジャーク値a' で補正する事になるので、ショックの発生を起こさずに、所望の変速段への移行が可能となるのである。
【0068】
[ 別実施形態]
上記実施形態では、パイロット圧を測定する油圧センサ41の出力が低下する事により変速操作が行われたことを制御装置42が感知していた。制御装置42は、この代わりに、変速レバー33の操作により、変速操作が行われた事を判断するようにしても良い。
更に、上記実施形態では、油圧クラッチ3を操作弁35等により、変速操作が行われた際に自動的に、クラッチ切り状態に変位される構成であった。これに代わり、変速操作が行われた際に、クラッチ切り状態にすることも制御装置42が行うよう構成しても良い。
【0069】
圧力制御弁21を電磁比例形式のものを利用する代わりに、電磁ソレノイドを備え、PWM制御が行われるタイプを利用しても良い。
また、上記の実施形態においては、例えば図7で示されるとおり、作業車の測定速度がt3の時点において理論走行速度を上回った場合、ジャーク値a' が−βとなるよう制御する。しかし、この代わりに測定速度がt3の時点において理論走行速度を上回らなくとも、加速度aが、第2設定値αより大きい値の、第3設定値であるγを超えている場合、測定速度が理論走行速度に到達しても、油圧クラッチ3に対する制御油圧をP1に上げずに、測定速度が理論走行速度を上回ることを許し、その後、ジャーク値a' が−βとなるように制御する第1制御モードで制御を行うように構成しても良い。その後、第2制御モードを、測定速度を理論走行速度になるまで行う。この場合、作業車の加速度aが、第3設定値γ以下の場合、図8を参照して説明された制御が行われる。
【0070】
これに類似した制御は、図10と11を参照して説明された制御に関しても応用できる事は当業者にとって自明の事である。
上記の実施形態で説明された、本発明による油圧クラッチ3の制御圧は、変速段センサ34、エンジン回転数センサ61、速度センサ63よりの出力を入力値とする関数となっている。上記の実施形態のように、加速度とジャーク値を基にしたフィードバック制御を行っても良いが、理論走行速度と、測定速度の速度差に基づいたフィードバック制御を行っても良い。例えば、以下のような制御を行っても良い。変速操作が、高速側の変速位置への変速であった場合には、前記速度差が大きいほど急速に油圧クラッチ3への制御油圧への昇圧を行う。変速操作が、低速側の変速位置への変速であった場合には、変速差が大きいほど緩やかに油圧クラッチへの制御油圧の昇圧を行う。
【0071】
本発明は、作業車の変速操作、特に油圧クラッチ3への制御油圧の特性に関する発明であり、上記実施形態及び別実施形態で開示される作業車の伝動系に限定されるものではない。特に、上記の第1副変速装置C及び第2副変速装置Dなどを有さない作業車にも本発明を応用する事は、本発明の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による作業車の側面図
【図2】図1の作業車のエンジンから前輪および後輪に駆動力が伝達される経路を説明する説明図
【図3】副変速装置の断面図
【図4】図1の作業車の油圧系に関する説明図
【図5】制御装置へ信号を入力する異なるセンサと、制御装置よりの出力を示す説明図
【図6】作業車が減速の状態にある際に、高速側に変速した際の油圧クラッチのフィードバック制御に関する制御を示す図
【図7】作業車が急激な加速の状態にある際に、高速側に変速した際の油圧クラッチのフィードバック制御に関する制御を示す図
【図8】作業車が急激でない増速の状態にある際に、高速側に変速した際の油圧クラッチのフィードバック制御に関する制御を示す図
【図9】作業車が増速の状態にある際に、低速側に変速した際の油圧クラッチのフィードバック制御に関する制御を示す図
【図10】作業車が急激な減速の状態にある際に、低速側に変速した際の油圧クラッチのフィードバック制御に関する制御を示す図
【図11】作業車が急激でない減速の状態にある際に、低速側に変速した際の油圧クラッチのフィードバック制御に関する制御を示す図
【図12】意図的に制動操作を行った際に、自動的に変速段のシフトダウンを行う制御ルーチンを示すフローチャート
【符号の説明】
A 第1主変速装置
B 第2主変速装置
C 第1副変速装置
D 第2副変速装置
1 エンジン
3 油圧クラッチ
16 前後進レバー
21 圧力制御弁
33 主変速レバー
34 ポテンショメータ
35 操作弁
41 圧力センサー
42 制御装置
43 副変速レバー
63 速度センサ
Claims (16)
- エンジンと、走行装置と、前記エンジンと走行装置の間に設けられた変速装置と、前記エンジンと前記走行装置の間に配置され、前記エンジンから走行装置への駆動力の伝動を切る状態と、半クラッチ状態と、伝動状態の間で変位可能のクラッチと、前記クラッチを操作するアクチュエータと、農用トラクタの測定速度を得るための速度センサを備える農用トラクタにおいて、
前記速度センサの出力に基づいて測定加速度を得て、前記測定加速度が、予め設定された加速度特性に合うように、前記アクチュエータをフィードバック制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、更に前記測定加速度の時間に対する微分であるジャーク値が、第1時間領域の間、ゼロでない設定ジャーク値である前記加速度特性に合うように前記アクチュエータをフィードバック制御することを特徴とする農用トラクタ。 - 前記農用トラクタは、更に、農用トラクタのエンジンの回転数を測定する回転数センサと、目標変速段を測定する変速段センサを備え、前記制御手段は、前記回転数センサと前記変速段センサよりの出力に基づき、希望する走行速度である理論走行速度を算出し、前記設定された加速度特性は、前記理論走行速度が、前記測定速度より大であり、前記測定速度が減少している際には、前記ジャーク値が正である時間領域を有し、前記理論走行速度が、前記測定速度より小であり、前記測定速度が増大している際には、前記ジャーク値が負である時間領域を有する請求項1に記載の農用トラクタ。
- 前記加速度特性は、前記第1時間領域において、前記設定ジャーク値が一定の第1設定値である請求項1又は2に記載の農用トラクタ。
- 前記加速度特性は、前記加速度が一定の第2設定値である第2時間領域を含む請求項3に記載の農用トラクタ。
- 前記第2時間領域は、前記第1時間領域の後に続く請求項4に記載の農用トラクタ。
- 前記測定加速度が前記第2設定値に等しくなった際に、前記第1時間領域が終了し、前記第2時間領域が開始される請求項5に記載の農用トラクタ。
- 前記制御手段は、前記第2時間領域において、前記測定速度が理論走行速度に達すると、前記アクチュエータは、前記クラッチを半クラッチ状態から伝動状態に即座に移行する制御を行う請求項4から6のいずれかに記載の農用トラクタ。
- 前記クラッチは油圧クラッチであり、前記アクチュエータは、前記油圧クラッチに供給される油圧を制御する請求項1に記載の農用トラクタ。
- エンジンと走行装置と、前記エンジンと走行装置の間に設けられた変速装置と、前記エンジンと走行装置の間に配置され、前記エンジンから走行装置への駆動力の伝動を切る状態と、半クラッチの状態と、伝動状態で変位可能のクラッチと、前記クラッチを制御するアクチュエータを有する農用トラクタのクラッチ制御方法は、前記農用トラクタの測定速度を得る行程と、前記測定速度に基づき、測定加速度を得る行程と、前記測定加速度と、予め設定された加速度特性とを比較する行程と、前記比較に基づき、前記測定加速度と前記加速度特性を一致させるために、前記アクチュエータをフィードバック制御する行程を有し、
前記方法は、更に、前記測定加速度の時間に対する微分であるジャーク値を算出する行程と、前記ジャーク値が第1時間領域の間、ゼロでない設定ジャーク値である前記加速度特性に合うように前記アクチュエータをフィードバック制御する行程を含むことを特徴とする農用トラクタのクラッチ制御方法。 - 前記方法は、更に、農用トラクタのエンジンの回転数を測定する行程と、目標変速段を測定する行程と、前記制御手段が前記回転数と前記目標変速段に基づき、希望する走行速度である理論走行速度を算出する行程と、を有し、前記設定された加速度特性は、前記理論走行速度が、前記測定速度より大であり、前記測定速度が減少している際には、前記ジャーク値が正である時間領域を有し、前記理論走行速度が、前記測定速度より小であり、前記測定速度が増大している際には、前記ジャーク値が負である時間領域を有する請求項9に記載の農用トラクタ。
- 前記加速度特性は、前記第1時間領域において、前記設定ジャーク値が一定の第1設定値である請求項9または10に記載の農用トラクタのクラッチ制御方法。
- 前記加速度特性は、前記加速度が一定の第2設定値である第2時間領域を含む請求項9から11のいずれかに記載の農用トラクタのクラッチ制御方法。
- 前記加速度特性の前記第2時間領域は、前記第1時間領域の後に続く請求項12に記載の農用トラクタのクラッチ制御方法。
- 前記測定加速度が前記第2設定値に等しくなった際に、前記第1時間領域が終了し、前記第2時間領域が開始される請求項13に記載の農用トラクタのクラッチ制御方法。
- 前記方法は、更に、前記測定速度が理論走行速度に達すると、前記アクチュエータにより、前記クラッチが半クラッチ状態から伝動状態に即座に移行される行程を含む請求項10から14のいずれかに記載の農用トラクタのクラッチ制御方法。
- エンジンと、走行装置と、前記エンジンと走行装置の間に設けられた変速装置と、前記エンジンと前記走行装置の間に配置され、前記エンジンから走行装置への駆動力の伝動を切る状態と、半クラッチ状態と、伝動状態の間で変位可能のクラッチと、前記クラッチを操作するアクチュエータと、農用トラクタの測定速度を得るための速度センサを備える農用トラクタにおいて、
前記速度センサの出力に基づいて測定加速度を得て、
前記測定加速度が設定加速度値となるまで、前記測定加速度の時間に対する微分であるジャーク値に基づき前記アクチュエータをフィードバック制御する第1制御モードを実行し、
その後、前記測定加速度が前記設定加速度値となるように、前記アクチュエータをフィードバック制御する第2制御モードを実行する制御手段を有することを特徴とする農用トラクタ。
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