JP3542049B2 - 重荷重用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関し、詳しくは、湿潤路面での操縦性およびブレーキ性能(以下「ウエット性能」と称する)および耐摩耗性を損なうことなく低燃費化を実現した重荷重用空気入タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤの低燃費化を追求する技術として、従来はトレッドゴムに配合するカーボンブラックのストラクチャーを高連鎖にしつつ、カーボンブラックの粒子径を低級化することで、トレッドゴムの内部ロスエネルギーを低下させる(以下「低ロス化」と略記する)と同時に、補強性を確保して耐摩耗性の悪化をできるだけ抑えるような手法を採ることが一般的とされてきた。
【0003】
また、ジエン系ポリマーの中では、シス構造の含有率が高いブタジエンゴム(以下「BR」と略記する)が低ロス化と耐摩耗性の両立に最も適しており、よって、かかる両立を図るためには上記ブタジエンゴムを用いるのが好ましいということが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低ロス化と耐摩耗性の両立を図るために上記の従来手法を採用して、高ストラクチャーカーボンブラックとブタジエンゴムをトレッドゴムに配合することは、タイヤの湿潤路面での摩擦力を低下させることになり、その結果ウエット性能を著しく損なうことになる。
【0005】
そこで本発明の目的は、ウエット性能および耐摩耗性を損なうことなく低燃費化を実現し得る重荷重用空気入タイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、天然ゴム(以下「NR」と略記する)とBRとを所定の比率で配合したゴム成分に対し、特定の高ストラクチャーカーボンブラックを所定量配合すると同時に、SiO を所定量配合することにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の重荷重用空気入りタイヤは、天然ゴム90〜50重量部とブタジエンゴム10〜50重量部とからなるゴム成分100重量部に対して、80m /g以上の窒素吸着比表面積(N SA)および130ml/100g以上のジブチルフタレート吸油量(DBP)を有するカーボンブラック40〜60重量部と、SiO 2〜10重量部とを配合してなるゴム組成物をトレッドゴムとして使用したことを特徴とするものである。
【0008】
この重荷重用空気入りタイヤは、平均接地圧が4kg/cm 以上の重荷重域で使用されるものである。
【0009】
ここで、上記窒素吸着比表面積(N SA)は、ASTM D3037−84B法に従い測定した値であり、また上記ジブチルフタレート吸油量(DBP)は、JIS K6221−1982 A法に従い測定した値である。
【0010】
本発明の重荷重用空気入りタイヤのトレッドゴムには、この他通常使用されている配合剤、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填剤等を通常使用される分量で適宜配合することができるのは勿論のことである。
【0011】
【作用】
トレッドゴムに配合されるカーボンブラックの高ストラクチャー化は、ポリマーとの混練時の剪断力を大きくするためにカーボンブラック自体の分散度が改良され、結果としてトレッドゴムの内部ロスエネルギーの小さい配合物が得られるとともに、長連鎖構造により補強性も増し、耐摩耗性も向上する。しかし、湿潤路面におけるタイヤの摩擦係数はトレッドゴムの内部ロスエネルギーが高い程向上するので、低ロス化とウエット性能とは原理的には背反することになる。
【0012】
一方、BRは、配合ゴム系のガラス転移点Tgを下げることで低ロス化して摩擦係数を下げ、これにより耐摩耗性を高める効果を有しているので、高ストラクチャーのカーボンブラックと同様に、原理的にBRの配合はウエット性能とは両立しない。
【0013】
そこで本発明においては、高ストラクチャーカーボンブラックおよびBRの所定量の配合に加え、比較的大きな歪み領域で内部ロスエネルギーを発生させるSiO を配合することにより、低歪み領域での内部ロスエネルギーが支配的とされる低転転り抵抗性を損なうことなく湿潤路面でのタイヤの摩擦抵抗を向上させることができるのではとの考えの下に、これを所定量配合したところ、実際に良好な耐摩耗性、低転がり抵抗性を維持したままウエット性能を著しく向上させることができた。
【0014】
すなわち、本発明においては、トレッドゴムのゴム成分100重量部としては、NRが90〜50重量部で、BRが10〜50重量部である。BRが10重量部未満では耐摩耗性と低ロス化の両立を図ることは殆ど不可能である。一方、BRが50重量部を超えると高温での抗破壊性が著しく低下し、特に、重荷重領域では外観上、使用に耐え得ない。
【0015】
また、トレッドゴムに配合するカーボンブラックを、窒素吸着比表面積(N SA)が80m /g以上の、グレードとしてはHAF級以上のカーボンブラックとしたのは、これよりも低いと耐カット性および耐摩耗性において重荷重用タイヤとしての使用に耐え得ないからである。一方、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が130ml/100g未満のカーボンブラックを使用しても、低ロス化の効果があまり大きくないだけでなく、カーボンブラックとしての補強性が小さいために耐摩耗性が十分得られなくなる。
【0016】
かかるカーボンブラックの配合量は、耐摩耗性と低発熱性との両立という観点から、ゴム成分100重量部に対して40〜60重量部の範囲内であることを要する。
【0017】
SiO の配合量については、2重量部より少ないとウエット性能に効果発揮し難く、一方10重量部をよりも多いと耐摩耗性に著しく劣ることになる。
【0018】
なお、本発明の空気入りタイヤの平均接地圧が4kg/cm 未満であると、タイヤの摩擦力が小さ過ぎるために十分な効果が得られず、よって本発明のタイヤは平均接地圧が4kg/cm 以上の重荷重用であることを要する。
【0019】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
下記の表1に示す配合処方(重量部)にて各種ゴム組成物を調製した。また、得られた各種ゴム組成物をトレッドゴムとして使用して、平均接地圧が8kg/cmで使用されるサイズTBR11R22.5のタイヤを試作した。得られたタイヤについて、下記の各試験を実施した。
【0020】
(1)耐摩耗性
上記試作タイヤを実車に装着し、約8万km走行後、トレッドゴムのパターンの残溝深さから耐摩耗性を評価した。本実施例では下記の表1の比較例1の値を100として指数表示した。数値が大きいほど結果が良好である。
【0021】
(2)低転がり抵抗性
80km/時の走行時のタイヤ接地面に発生する進行方向に対する抵抗を測定し、比較例1の値を100として指数表示した。数値が大きいほど結果が良好である。
【0022】
(3)ウエット性能
湿潤路面上を横滑り限界速度Vで旋回したときの横方向加速度Gを式G=V/(G・R)(式中、Gは重力加速度:9.8m/sec、Rは旋回半径を表す)により算出し、比較例1の値を100として指数表示した。数値が大きいほど結果が良好である。
【0023】
(4)耐カット性
供試タイヤの単位トレッド面積当たりの外傷(異物によるカットおよび大入力時の引き裂き傷)の数を外観より調べ、比較例1の値を100として指数表示した。数値が大きいほど結果が良好である。
得られた結果を下記の表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003542049
【0025】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の重荷重用空気入りタイヤにおいては、NRとBRとを所定の比率で配合したゴム成分に対し、特定のカーボンブラックを所定量配合すると同時に、SiO を所定量配合したことにより、ウエット性能および耐摩耗性を損なうことなく大幅な低燃費化を実現することができた。
加えて、抗破壊性も向上するため、従来の低燃費タイヤにおいて懸念されていた比較的悪路での使用にも耐え、タイヤ寿命の向上、ひいては省資源化にも貢献することができる。

Claims (2)

  1. 天然ゴム90〜50重量部とブタジエンゴム10〜50重量部とからなるゴム成分100重量部に対して、80m /g以上の窒素吸着比表面積(N SA)および130ml/100g以上のジブチルフタレート吸油量(DBP)を有するカーボンブラック40〜60重量部と、SiO 2〜10重量部とを配合してなるゴム組成物をトレッドゴムとして使用したことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
  2. 平均接地圧が4kg/cm 以上の重荷重域で使用される請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
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