JP3541425B2 - 量子メモリおよびその動作方法 - Google Patents

量子メモリおよびその動作方法 Download PDF

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    • G06N10/00Quantum computing, i.e. information processing based on quantum-mechanical phenomena

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、量子メモリおよびその動作方法に関し、特に、量子箱(量子ドットとも呼ばれる)を用いた量子メモリおよびその動作方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ダイナミックRAMやスタティックRAMなどの半導体メモリの集積度は益々増大しているが、これらの半導体メモリは、トランジスタやキャパシタなどによりメモリセルを構成し、これらのメモリセル間を配線で接続し、メモリセルに対する書き込みや読み出しも同じく配線を介して行う点で本質的に同一である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来の半導体メモリにおいては、より一層の集積度の向上を図るべく引き続き研究努力が払われているが、メモリセルの基本構造が変わらず、メモリセル間を接続する配線なども不可欠であるため、集積度に限界が来ることは明白である。
【0004】
したがって、この発明の目的は、従来の半導体メモリとは全く異なる動作原理に基づく、超高集積度の量子メモリおよびその動作方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明による量子メモリは、
順次積層された第1の量子箱(QDj-1 )、第2の量子箱(QDj-2 )および第3の量子箱(QDj-3 )によりメモリセルが構成され、
第1の量子箱(QDj-1 )および第2の量子箱(QDj-2 )の間の結合の強さと第2の量子箱(QDj-2 )および第3の量子箱(QDj-3 )の間の結合の強さとが互いに異なり、
第1の量子箱(QD j-1 )、第2の量子箱(QD j-2 )および第3の量子箱(QD j-3 )の電子の基底状態のエネルギー準位をそれぞれE 0 (j-1) 、E 0 (j-2) およびE 0 (j-3) とし、第1の量子箱(QD j-1 )、第2の量子箱(QD j-2 )および第3の量子箱(QD j-3 )の電子の第1励起状態のエネルギー準位をそれぞれE 1 (j-1) 、E 1 (j-2) およびE 1 (j-3) とし、第1の量子箱(QD j-1 )、第2の量子箱(QD j-2 )および第3の量子箱(QD j-3 )の正孔の基底状態のエネルギー準位をそれぞれH 0 (j-1) 、H 0 (j-2) およびH 0 (j-3) とし、第1の量子箱(QD j-1 )、第2の量子箱(QD j-2 )および第3の量子箱(QD j-3 )の電子の第1励起状態のエネルギー準位をそれぞれH 1 (j-1) 、H 1 (j-2) およびH 1 (j-3) としたとき、
0 (j-1) <E 0 (j-2) (1)
0 (j-3) <E 0 (j-2) (2)
[E 1 (j-1) −E 0 (j-1) ]>[E 1 (j-2) −E 0 (j-2) (3)
[E 1 (j-3) −E 0 (j-3) ]>[E 1 (j-2) −E 0 (j-2) (4)
[E 0 (j-1) −H 0 (j-1) ]≠[E 0 (j-2) −H 0 (j-2) (5)
[E 0 (j-3) −H 0 (j-3) ]≠[E 0 (j-2) −H 0 (j-2) (6)
が成立することを特徴とするものである。
【0006】
この発明の一実施形態においては、第1の量子箱(QDj-1 )および第2の量子箱(QDj-2 )の間の結合の強さよりも第2の量子箱(QDj-2 )および第3の量子箱(QDj-3 )の間の結合の強さの方が大きい。
【0007】
ここで、量子箱間の結合の強さは、量子箱間の障壁に対する電子または正孔のトンネリングしやすさを示し、トンネリングしやすいほど結合の強さは大きくなる。
【0010】
この発明による量子メモリの動作方法は、
順次積層された第1の量子箱(QD j-1 )、第2の量子箱(QD j-2 )および第3の量子箱(QD j-3 )によりメモリセルが構成され、
第1の量子箱(QD j-1 )および第2の量子箱(QD j-2 )の間の結合の強さと第2の量子箱(QD j-2 )および第3の量子箱(QD j-3 )の間の結合の強さとが互いに異なる量子メモリの動作方法であって、
き込み時には、書き込みを行うべきメモリセルに第1の光を照射しながら、書き込みを行うべきメモリセルに第1の量子箱(QDj-1 )、第2の量子箱(QDj-2 )および第3の量子箱(QDj-3 )の積層方向の第1の外部電場を印加し、
読み出し時には、読み出しを行うべきメモリセルに第2の光を照射しながら、読み出しを行うべきメモリセルに第1の外部電場と逆方向の第2の外部電場を印加するようにしたことを特徴とするものである。
こで、第1の光としては、外部電場が印加されていないときの第2の量子箱(QDj-2 )における電子−正孔対生成エネルギーよりもその光子エネルギーが少し小さい単色光が好適に用いられる。また、第1の外部電場の強さは、シュタルク・シフトにより第2の量子箱(QDj-2 )における電子−正孔対生成エネルギーが実効的に減少して第1の光が共鳴吸収され、第2の量子箱(QDj-2 )内に電子−正孔対が生成されるような強さに選ばれる。
【0011】
2の光としては、第2の量子箱(QDj-2 )の電子の基底状態のエネルギー準位E0 (j-2) と第1励起状態のエネルギー準位E1 (j-2) との差[E1 (j-2) −E0 (j-2) ]に等しい光子エネルギーを有する単色光が好適に用いられる。また、第2の外部電場の強さは、エネルギーバンドの傾斜により第3の量子箱(QDj-3 )の電子の基底状態のエネルギー準位E0 (j-3) と第2の量子箱(QDj-2 )の電子の基底状態のエネルギー準位E0 (j-2) とが一致するような強さに選ばれる。
【0012】
この発明による量子メモリの動作方法においては、好適には、所定電圧が印加された針状電極を書き込みを行うべきメモリセルまたは読み出しを行うべきメモリセルに接近させることにより第1の外部電場または第2の外部電場を印加する。
【0013】
また、この発明による量子メモリの動作方法においては、特定のメモリセルの初期化(または消去)を行う場合には、初期化を行うべきメモリセルに第2の外部電場よりも大きい第3の外部電場を印加するかまたは第2の外部電場を読み出し時よりも長時間印加して初期化を行うべきメモリセル内で電子−正孔再結合を起こさせることにより初期化を行う。
【0014】
さらに、全てのメモリセルの初期化を一括して行う場合には、量子メモリの温度を高くするかまたは量子メモリに第3の光を照射して全てのメモリセル内で電子−正孔再結合を起こさせる。
【0015】
この発明による量子メモリにおいては、第1の量子箱、第2の量子箱および第3の量子箱は化合物半導体ヘテロ接合により形成される。この化合物半導体ヘテロ接合は、典型的には、タイプIのヘテロ接合超格子であり、具体的には、例えばAlGaAs/GaAsヘテロ接合またはAlGaAs/InGaAsヘテロ接合である。この化合物半導体ヘテロ接合はタイプIIのヘテロ接合超格子であってもよく、具体的には、例えばAlSb/InAsヘテロ接合、GaSb/InAsヘテロ接合またはAlSb/GaSbヘテロ接合であってもよい。
【0016】
【作用】
上述のように構成されたこの発明による量子メモリによれば、従来の半導体メモリのメモリセルとは全く異なり、順次積層された第1の量子箱、第2の量子箱および第3の量子箱により一つのメモリセルが構成され、メモリセルに対する書き込みや読み出しは、光照射や針状電極による外部電場の印加などを併用することにより行うことができる。この場合、メモリセル間を接続する配線は不要であり、書き込みや読み出しも配線なしで行うことができる。このため、配線に起因するメモリセルの集積度の限界がなく、集積度の限界は、もっぱらメモリセル1個当たりの実効的な占有面積から来るものだけである。そして、この場合、メモリセル1個当たりの実効的な占有面積は、例えば50nm×50nm=25×10-16 2 程度と従来の半導体メモリにおけるメモリセル1個当たりの実効的な占有面積に比べて極めて小さくすることができるので、超高集積度を達成することができる。
【0017】
【実施例】
以下、この発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の第1実施例による量子メモリを概念的に示したものである。図1に示すように、この第1実施例による量子メモリにおいては、x方向およびy方向にメモリセルが配列されており、これらのメモリセルによりメモリセルアレーが構成されている。この場合、x方向にメモリセルがM個配列され、y方向にメモリセルがN個配列されており、メモリセルの総数はMN個である。これらのメモリセルに順番に1からMNまで番号を付ける。後述のように、各メモリセルは三段の量子ドットから成る。
図2はこの第1実施例による量子メモリを示す斜視図であり、メモリセルアレーの一部を示したものである。
【0018】
図2において、符号1は障壁層としてのAlGaAs層を示す。この場合、x−y面に平行な第1の面内に量子井戸層としての箱状のInGaAs層2が所定の配列パターンでアレー状に配列され、x−y面に平行な第2の面内に量子井戸層としての箱状のGaAs層3がその下段のInGaAs層2に対応してアレー状に配列され、x−y面に平行な第3の面内に量子井戸層としての箱状のInGaAs層4がその下段のGaAs層3およびInGaAs層2に対応してアレー状に配列されている。これらのInGaAs層2、GaAs層3およびInGaAs層4は、障壁層としてのAlGaAs層1内に埋め込まれている。
【0019】
この場合、量子井戸層としてのInGaAs層2が障壁層としてのAlGaAs層1で囲まれた構造により図2中下段、すなわち第1段目の量子ドットが形成され、量子井戸層としてのGaAs層3が障壁層としてのAlGaAs層1で囲まれた構造により図2中中段、すなわち第2段目の量子ドットが形成され、量子井戸層としてのInGaAs層4が障壁層としてのAlGaAs層1で囲まれた構造により図2中上段、すなわち第3段目の量子ドットが形成されている。そして、z方向に順次積層されたこれらの第1段目の量子ドット、第2段目の量子ドットおよび第3段目の量子ドットにより一つのメモリセルが構成されている。ここでは、j番目のメモリセル(以下「メモリセルj」と書く)を構成する第1段目の量子ドットをQDj-1 、第2段目の量子ドットをQDj-2 、第3段目の量子ドットをQDj-3 と書く。
【0020】
ここで、第1段目の量子ドットQDj-1 および第3段目の量子ドットQDj-3 を構成するAlGaAs/InGaAsヘテロ接合と、第2段目の量子ドットQDj-2 を構成するAlGaAs/GaAsヘテロ接合とは、いずれもいわゆるタイプIのヘテロ接合超格子である。
【0021】
いま、量子ドットQDj-1 の量子井戸層としてのInGaAs層2のz方向の幅をW1 、量子ドットQDj-2 の量子井戸層としてのGaAs層3のz方向の幅をW2 、量子ドットQDj-3 の量子井戸層としてのInGaAs層4のz方向の幅をW3 とし、量子ドットQDj-1 の量子井戸層としてのInGaAs層2の伝導帯におけるポテンシャル井戸の深さをV1 、量子ドットQDj-2 の量子井戸層としてのGaAs層3の伝導帯におけるポテンシャル井戸の深さをV2 、量子ドットQDj-3 の量子井戸層としてのInGaAs層4の伝導帯におけるポテンシャル井戸の深さをV3 とする。また、量子ドットQDj-1 の量子井戸層としてのInGaAs層2および量子ドットQDj-2 の量子井戸層としてのGaAs層3の間にある障壁層としてのAlGaAs層1のz方向の幅をB12、量子ドットQDj-2 の量子井戸層としてのGaAs層3および量子ドットQDj-3 の量子井戸層としてのInGaAs層4の間にある障壁層としてのAlGaAs層1のz方向の幅をB23とする。さらにまた、量子ドットQDj-k (k=1、2、3)の電子の基底状態のエネルギー準位および第1励起状態のエネルギー準位をそれぞれE0 (j-k) およびE1 (j-k) と書き、量子ドットQDj-k (k=1、2、3)の正孔の基底状態のエネルギー準位および第1励起状態のエネルギー準位をそれぞれH0 (j-k) およびH1 (j-k) と書く。
【0022】
さて、この第1実施例による量子メモリにおいては、メモリセルjを構成する量子ドットQDj-1 、QDj-2 およびQDj-3 は下記の式を満たすように設計されている。
Figure 0003541425
【0023】
1 、W2 、W3 、B12、B23などの値の一例を挙げると、W1 〜10nm、W2 〜(10〜15)nm、W3 〜10nm、B12〜12nm、B23〜8nmである。一方、x−y面に平行な面内の量子ドットQDj-k (k=1、2、3)の大きさは例えば〜10nmであり、その間隔は例えば〜50nmである。
【0024】
量子ドットQDj-k の積層方向に沿ってのメモリセルjのエネルギーバンド図を図3に示す。図3中のEc およびEv はそれぞれ伝導帯の底のエネルギーおよび価電子帯の頂上のエネルギーを示す(以下同様)。
【0025】
次に、上述のように構成されたこの第1実施例による量子メモリの動作原理について説明する。ここで、後述のように、書き込み時や読み出し時には、書き込みや読み出しを行うべきメモリセルに単色光、具体的にはレーザー光を照射するが、このレーザー光は、量子ドットのバンド間の電子のエネルギー準位間隔(1eV程度)やサブバンド間の電子のエネルギー準位間隔(0.3eV程度)に対応する光子エネルギーを有する必要があるので、この程度の光子エネルギーを有するレーザー光のスポットサイズは数μm以上になり、必然的に、書き込みや読み出しを行うべきメモリセル以外に多数のメモリセルが含まれる広い領域に照射される。そこで、このレーザー光が照射された多数のメモリセルから特定のメモリセルを選択して書き込みや読み出しを行うために、走査型トンネル顕微鏡の走査針と同様な針状電極を用いてその特定のメモリセルに外部電場を印加する。
【0026】
まず、この第1実施例による量子メモリに書き込みを行う場合には、図4に示すように、書き込みを行うべきメモリセルjを含む領域にレーザー光Lを照射しておく。この状態においては、いずれのメモリセルにも外部電場が印加されていない。このレーザー光Lとしては、後述の針状電極NEにより外部電場が印加されていないときの第2段目の量子ドットQDj-2 における電子−正孔対生成エネルギーをEehとしたとき、これより少し光子エネルギーの小さい(波長の長い)レーザー光を用いる。すなわち、レーザー光Lの光子エネルギーをhν=Einとすると、Ein<Eehである。このとき、レーザー光Lの照射により量子ドットQDj-2 に電子−正孔対は生成されず、光吸収は起こらない(図5)。
【0027】
上述のように書き込みを行うべきメモリセルjを含む領域にレーザー光Lを照射した状態において、図6に示すように、量子メモリに対して正の電圧が印加された針状電極NEを、書き込みを行うべきメモリセルjに接近させ、外部電場を印加する。このときのメモリセルjのエネルギーバンド図は図7に示すようになる。このように外部電場が印加されたときには、シュタルク・シフトにより
ΔE=E0 (j-2) −H0 (j-2) (15)
は減少する。そして、この外部電場の強さがΔE=Einとなる程度であれば、共鳴的にレーザー光Lの吸収が起こり、量子ドットQDj-2 内に電子−正孔対が生成される(図7)。このシュタルク・シフトは、量子ドットQDj-2 の上下の量子ドットQDj-1 、QDj-3 の存在により、量子ドットQDj-2 単独の場合に比べて大きく、好都合である。
【0028】
z方向に印加された上述の外部電場によって、図8に示すように、上述のようにして量子ドットQDj-2 内に生成された電子−正孔対のうち電子は量子ドットQDj-3 内に、正孔は量子ドットQDj-1 内に速やかに移動する。そして、量子ドットQDj-3 内に移動した電子はよりエネルギーの低い基底状態のエネルギー準位E0 (j-3) に、量子ドットQDj-1 内に移動した正孔はよりエネルギーの低い基底状態のエネルギー準位H0 (j-1) にそれぞれ緩和し、空間的に互いに分離される。
【0029】
この後、針状電極NEをメモリセルjから遠ざけて外部電場の印加をなくす。このとき、メモリセルj内の電子および正孔は互いに空間的に分離されていることから、これらの電子および正孔は再結合することなく、安定に保持される(図9)。この図9に示すように、量子ドットQDj-3 内に電子が入り、量子ドットQDj-1 内に正孔が入った状態をもって1ビットの記憶とする。
【0030】
一方、レーザー光Lが照射された多数のメモリセルのうちメモリセルj以外のメモリセルでは、針状電極NEにより印加される外部電場の強さが小さく、十分な大きさのシュタルク・シフトが得られないので、光吸収は起きず、したがってこれらのメモリセルにおいては電子−正孔対は生成されない。すなわち、メモリセルj内にのみ電子−正孔対が生成され、それによって1ビットの情報が記憶されることになる。
【0031】
次に、この第1実施例による量子メモリの読み出しを行う場合について説明する。ここでは、メモリセルjの量子ドットQDj-3 の電子の基底状態のエネルギー準位E0 (j-3) に電子が入っており、量子ドットQDj-1 の正孔の基底状態のエネルギー準位H0 (j-1) に正孔が入っているとする(図10)。
【0032】
この読み出し時には、図4に示すと同様に、読み出しを行うべきメモリセルjを含む領域にレーザー光Lを照射しておく。この場合、このレーザー光Lとしては、その光子エネルギーhνが、量子ドットQDj-2 の電子の基底状態のエネルギー準位E0 (j-2) と第1励起状態のエネルギー準位E1 (j-2) との差
out =E1 (j-2) −E0 (j-2) (16)
に等しいものを用いる。このような光子エネルギーhνがEout に等しいレーザー光Lがメモリセルjに照射されたとき、メモリセルj内に電子が存在してもそれは量子ドットQDj-3 内に存在するので、光吸収は起こらない。そこで、図6に示すと同様に、書き込み時とは逆に量子メモリに対して負の電圧が印加された針状電極NEを読み出しを行うべきメモリセルjに接近させ、外部電場を印加する。このときのメモリセルjのエネルギーバンド図を図11に示す。
【0033】
この外部電場の強さが、E0 (j-3) とE0 (j-2) とがほぼ一致するような強さであると、電子は共鳴的に第2段目の量子ドットQDj-2 に移る確率を有し、このとき初めてhν=Eout のレーザー光Lが吸収される。この場合、量子ドットQDj-1 および量子ドットQDj-2 の間にある障壁層としてのAlGaAs層1の幅B12と量子ドットQDj-2 および量子ドットQDj-3 の間にある障壁層としてのAlGaAs層1の幅B23とが互いに異なり、
12>B23 (17)
であることから、量子ドットQDj-3 から量子ドットQDj-2 に移動した電子は量子ドットQDj-1 まで移動することはない。また、量子ドットQDj-1 内の正孔は移動せず、その量子ドットQDj-1 内にとどまっている。この量子ドットQDj-1 内の正孔が移動しないのは、幅B23の障壁層としてのAlGaAs層1を電子がトンネルするために必要な時間に比べて、幅B12の障壁層としてのAlGaAs層1を正孔がトンネルするために必要な時間の方が圧倒的に大きいためであるが、それは、B12とB23との違いとともに、正孔の有効質量の方が電子の有効質量よりも大きいことにもよっている。
【0034】
メモリセルj内に電子および正孔が存在しなければ、レーザー光Lを照射しても光吸収は起きないので、光吸収の有無によりメモリセルのビット情報の読み出しを行うことができることになる。
書き込み時と同様に、レーザー光Lが照射された多数のメモリセルのうちメモリセルj以外のメモリセルでは、針状電極NEにより印加される外部電場の強さが小さく、そのメモリセル内に電子が存在するとしてもそれは第2段目の量子ドットに移動することができないので、光吸収はなく、メモリセルjだけの情報を読み出すことができることがわかる。
【0035】
次に、この第1実施例による量子メモリの初期化(または消去)を行う方法について説明する。まず、特定のメモリセルの初期化を行う方法としては、二つの方法がある。一つの方法は、初期化を行うべきメモリセルjに、読み出し時に印加する電圧よりも大きい負の電圧が印加された針状電極NEを接近させて外部電場を印加することによりそのメモリセルj内で電子−正孔再結合を起こさせる方法であり、もう一つの方法は、例えば読み出し時と同様な外部電場をより長時間印加することによりそのメモリセルj内で電子−正孔再結合を起こさせる方法である。なお、場合によっては、針状電極NEにより交流電場を印加することにより特定のメモリセルの初期化を行うことも可能である。
【0036】
また、全てのメモリセルの初期化を一括して行う方法としては、量子メモリの温度を高くし、フォノンの吸収により電子−正孔再結合を促進する方法がある。このときの量子メモリの温度Tの目安は、図12に示すように、量子ドットQDj-1 の正孔の基底状態のエネルギー準位H0 (j-1) にある正孔を量子ドットQDj-2 の正孔の基底状態のエネルギー準位H0 (j-2) に、量子ドットQDj-3 の電子の基底状態のエネルギー準位E0 (j-3) にある電子を量子ドットQDj-2 の電子の基底状態のエネルギー準位E0 (j-2) にそれぞれ熱的に励起することができるような温度であり、具体的には、ボルツマン定数をkB とすると、
[H0 (j-2) −H0 (j-1) ]〜[E0 (j-2) −E0 (j-3) ]〜kB T (18)
となる程度の温度である。
【0037】
全てのメモリセルの初期化を一括して行うもう一つの方法は、(18)式で与えられる光子エネルギーを有する単色光を量子メモリ全体に照射し、全てのメモリセルの第3段目の量子ドット内の電子および第1段目の量子ドット内の正孔を第2段目の量子ドット内に励起して、電子−正孔再結合を起こさせる方法である。
【0038】
次に、上述のように構成されたこの第1実施例による量子メモリの製造方法について説明する。
【0039】
まず、図13に示すように、図示省略した化合物半導体基板(例えば、GaAs基板)上に、例えば有機金属化学気相成長(MOCVD)法や分子線エピタキシー(MBE)法により、十分に厚いAlGaAs層1a、厚さW1 のInGaAs層2、厚さB12のAlGaAs層1b、厚さW2 のGaAs層3、厚さB23のAlGaAs層1c、厚さW3 のInGaAs層4および所定の厚さのAlGaAs層1dを順次エピタキシャル成長させる。ここで、現在のMOCVD法やMBE法によれば、W1 、W2 、W3 、B12、B23が (9)式および(11)式を満たすように制御してエピタキシャル成長を行うことは容易である。また、InGaAs層2およびInGaAs層4のIn組成比やAlGaAs層1a、1b、1c、1dのAl組成比を制御することにより、量子ドットQDj-1 の量子井戸層となるInGaAs層2の伝導帯におけるポテンシャル井戸の深さV1 、量子ドットQDj-2 の量子井戸層となるGaAs層3の伝導帯におけるポテンシャル井戸の深さV2 、量子ドットQDj-3 の量子井戸層となるInGaAs層4の伝導帯におけるポテンシャル井戸の深さV3 が(10)式を満たすように制御してエピタキシャル成長を行うことができる。
【0040】
次に、図14に示すように、AlGaAs層1d上に電子ビームリソグラフィー法などによりメモリセルに対応した形状のレジストパターン5を形成する。
【0041】
次に、このレジストパターン5をマスクとして、例えば反応性イオンエッチング(RIE)法により、AlGaAs層1d、InGaAs層4、AlGaAs層1c、GaAs層3およびAlGaAs層1bおよびInGaAs層2を基板表面に対して垂直な方向に順次エッチングする。このエッチングは、InGaAs層2が互いに分離するようにオーバーエッチング気味に行う。これによって、図15に示すように、InGaAs層2、AlGaAs層1b、GaAs層3、AlGaAs層1c、InGaAs層4およびAlGaAs層1dが四角柱状にパターニングされる。
【0042】
次に、レジストパターン5を除去した後、図16に示すように、例えばMOCVD法により、基板表面に対して垂直な側壁上に成長が起きない条件でAlGaAs層1eをエピタキシャル成長させて、四角柱状のInGaAs層2、AlGaAs層1b、GaAs層3、AlGaAs層1c、InGaAs層4およびAlGaAs層1dの間の部分を埋める。ここで、AlGaAs層1a、1b、1c、1d、1eの全体が図2に示すAlGaAs層1に対応する。
以上のようにして、図2に示す量子メモリが完成される。
【0043】
以上のように、この第1実施例による量子メモリによれば、各メモリセルの大きさが10nm×10nm程度であり、メモリセル間の間隔も50nm程度であるので、メモリセル1個当たりの実効的な占有面積、言い換えれば1ビット当たり必要な面積は50nm×50nm=25×10-16 2 程度である。したがって、例えばメモリセルアレーのサイズが6mm×6mmであるとすれば、この量子メモリは、16ギガ・ビットもの情報を記憶することができる。また、この量子メモリにおいては、1ビット当たり単一の電子−正孔対しか使用しないので、極めて低消費電力である。
【0044】
次に、この発明の第2実施例による量子メモリについて説明する。
この第2実施例による量子メモリの全体構成は図1に示すと同様である。
図17はこの第2実施例による量子メモリを示す斜視図であり、メモリセルアレーの一部を示したものである。
【0045】
図17において、符号11は障壁層としてのAlGaAs層を示す。この場合には、x−y面に平行な第1の面内に量子井戸層としての箱状のGaAs層12が所定の配列パターンでアレー状に配列され、x−y面に平行な第2の面内に量子井戸層としての箱状のGaAs層13がその下段のGaAs層12に対応してアレー状に配列され、x−y面に平行な第3の面内に量子井戸層としての箱状のGaAs層14がその下段のGaAs層13およびGaAs層12に対応してアレー状に配列されている。これらのGaAs層12、GaAs層13およびGaAs層14は、障壁層としてのAlGaAs層11に埋め込まれている。
【0046】
この場合、量子井戸層としてのGaAs層12が障壁層としてのAlGaAs層11で囲まれた構造により図17中下段、すなわち第1段目の量子ドットが形成され、量子井戸層としてのGaAs層13が障壁層としてのAlGaAs層11で囲まれた構造により図17中中段、すなわち第2段目の量子ドットが形成され、量子井戸層としてのGaAs層14が障壁層としてのAlGaAs層11で囲まれた構造により図17中上段、すなわち第3段目の量子ドットが形成されている。そして、z方向に順次積層されたこれらの第1段目の量子ドット、第2段目の量子ドットおよび第3段目の量子ドットにより一つのメモリセルが構成されている。ここでは、第1実施例と同様に、メモリセルjを構成する第1段目の量子ドットをQDj-1 、第2段目の量子ドットをQDj-2 、第3段目の量子ドットをQDj-3 と書く。
【0047】
すなわち、第1実施例による量子メモリにおいては、メモリセルjの第1段目の量子ドットQDj-1 および第3段目の量子ドットQDj-3 はAlGaAs/InGaAsヘテロ接合により構成され、第2段目の量子ドットQDj-2 はAlGaAs/GaAsヘテロ接合により構成されているのに対して、この第2実施例による量子メモリにおいては、メモリセルjの第1段目の量子ドットQDj-1 、第2段目の量子ドットQDj-2 および第3段目の量子ドットQDj-3 ともただ一種類のAlGaAs/GaAsヘテロ接合により構成されている。
【0048】
いま、第1実施例と同様に、量子ドットQDj-1 の量子井戸層としてのGaAs層12のz方向の幅をW1 、量子ドットQDj-2 の量子井戸層としてのGaAs層13のz方向の幅をW2 、量子ドットQDj-3 の量子井戸層としてのGaAs層14のz方向の幅をW3 とし、量子ドットQDj-1 の量子井戸層としてのGaAs層12の伝導帯におけるポテンシャル井戸の深さをV1 、量子ドットQDj-2 の量子井戸層としてのGaAs層13の伝導帯におけるポテンシャル井戸の深さをV2 、量子ドットQDj-3 の量子井戸層としてのGaAs層14の伝導帯におけるポテンシャル井戸の深さをV3 とする。また、量子ドットQDj-1 の量子井戸層としてのGaAs層12および量子ドットQDj-2 の量子井戸層としてのGaAs層13の間にある障壁層としてのAlGaAs層11のz方向の幅をB12、量子ドットQDj-2 の量子井戸層としてのGaAs層13および量子ドットQDj-3 の量子井戸層としてのGaAs層14の間にある障壁層としてのAlGaAs層11のz方向の幅をB23とする。さらに、量子ドットQDj-k (k=1、2、3)の電子の基底状態のエネルギー準位および第1励起状態のエネルギー準位をそれぞれE0 (j-k) およびE1 (j-k) と書き、量子ドットQDj-k (k=1、2、3)の正孔の基底状態のエネルギー準位および第1励起状態のエネルギー準位をそれぞれH0 (j-k) およびH1 (j-k) と書く。
【0049】
さて、この第2実施例による量子メモリにおいては、メモリセルjを構成する量子ドットQDj-1 、QDj-2 およびQDj-3 は下記の式を満たすように設計されている。
12>B23 (19)
0 (j-1) 〜E0 (j-3) <E0 (j-2) (20)
ここで、(20)式の条件は、
2 <W1 〜W3 (21)
とすることによって実現することが可能である。
【0050】
これらの条件は、第1実施例による量子メモリの条件((9)〜(14)式)に比べて単純になっている。特に、V2 <V1 〜V3 ((10)式)の条件が不要であることから、
1 =V2 =V3 (22)
でもよく、上述のように量子ドットQDj-k の量子井戸層の材料をいずれもGaAs層とすることができるのである。
【0051】
1 、W2 、W3 、B12、B23などの値の一例を挙げると、W1 〜10nm、W2 〜5nm、W3 〜10nm、B12 〜(10〜15)nm、B23〜5nmである。一方、x−y面に平行な面内の量子ドットQDj-k (k=1、2、3)の大きさは例えば〜10nmであり、その間隔は例えば〜50nmである。
【0052】
量子ドットQDj-k の積層方向に沿ってのメモリセルjのエネルギーバンド図を図18に示す。
次に、上述のように構成されたこの第2実施例による量子メモリの動作原理について説明する。
【0053】
まず、この第2実施例による量子メモリに書き込みを行う場合には、図4に示すと同様に、書き込みを行うべきメモリセルjを含む領域にレーザー光Lを照射しておく。この状態においては、いずれのメモリセルにも外部電場が印加されていない。レーザー光Lとしては、針状電極NEにより外部電場が印加されていないときの第2段目の量子ドットQDj-2 における電子−正孔対生成エネルギーをEehとしたとき、これより少し光子エネルギーの小さい(波長の長い)レーザー光を用いる。すなわち、レーザー光Lの光子エネルギーをhν=Einとすると、Ein<Eehである。このとき、レーザー光Lの照射により量子ドットQDj-2 内に電子−正孔対は生成されず、光吸収は起こらない(図19)。
【0054】
上述のように書き込みを行うべきメモリセルjを含む領域にレーザー光Lを照射した状態において、図6に示すと同様に、量子メモリに対して正の電圧が印加された針状電極NEを、書き込みを行うべきメモリセルjに接近させ、外部電場を印加する。このときのメモリセルjのエネルギーバンド図を図20に示す。このように外部電場が印加されたときには、シュタルク・シフトにより
ΔE=E0 (j-2) −H0 (j-2) (23)
は減少する。そして、この外部電場の強さがΔE=Einとなる程度であれば、共鳴的にレーザー光Lの吸収が起こり、量子ドットQDj-2 内に電子−正孔対が生成される(図20)。このシュタルク・シフトは、量子ドットQDj-2 の上下の量子ドットQDj-1 、QDj-3 の存在により、量子ドットQDj-2 単独の場合に比べて大きく、好都合である。
【0055】
z方向に印加された上述の外部電場によって、図21に示すように、上述のようにして量子ドットQDj-2 内に生成された電子−正孔対のうち電子は量子ドットQDj-3 内に、正孔は量子ドットQDj-1 内に速やかに移動する。そして、量子ドットQDj-3 内に移動した電子はよりエネルギーの低い基底状態のエネルギー準位E0 (j-3) に、量子ドットQDj-1 内に移動した正孔はよりエネルギーの低い基底状態のエネルギー準位H0 (j-1) にそれぞれ緩和し、空間的に互いに分離される。
【0056】
この後、針状電極NEをメモリセルjから遠ざけて外部電場の印加をなくす。このとき、メモリセルj内の電子および正孔は互いに空間的に分離されていることから、これらの電子および正孔は再結合することなく、安定に保持される(図22)。この場合、第1実施例と同様に、この図22に示すように、量子ドットQDj-3 内に電子が入り、量子ドットQDj-1 内に正孔が入った状態をもって1ビットの記憶とする。
【0057】
一方、レーザー光Lが照射された多数のメモリセルのうちメモリセルj以外のメモリセルでは、針状電極NEにより印加される外部電場の強さが小さく、十分な大きさのシュタルク・シフトが得られないので、光吸収は起きず、したがってこれらのメモリセルにおいては電子−正孔対は生成されない。すなわち、メモリセルj内にのみ電子−正孔対が生成され、それによって1ビットの情報が記憶される。
【0058】
次に、この第2実施例による量子メモリの読み出しを行う場合について説明する。
いま、メモリセルjの第2段目の量子ドットQDj-2 および第3段目の量子ドットQDj-3 がそれぞれ単独に存在していたとするときの電子の基底状態およびそのエネルギーをそれぞれ|ψ0 (j-k) 〉およびε0 (j-k) (k=2、3)と書くと、
ε0 (j-2) >ε0 (j-3) (24)
である。
【0059】
この第2実施例による量子メモリにおいては、二つの量子ドットQDj-2 および量子ドットQDj-3 は互いに結合しており、それらの間の障壁の幅B23は小さいが、エネルギーε0 (j-2) およびε0 (j-3) が違うので、状態|ψ0 (j-2) 〉および|ψ0 (j-3) 〉はあまり混じり合わない。したがって、この結合量子ドット系の電子の基底状態|Ψ0 (j) 〉および第1励起状態|Ψ1 (j) 〉は、
|Ψ0 (j) 〉〜|ψ0 (j-3) 〉 (25)
|Ψ1 (j) 〉〜|ψ0 (j-2) 〉 (26)
である。これらの基底状態|Ψ0 (j) 〉および第1励起状態|Ψ1 (j) 〉の波動関数を図18と同様な図23に対応して示すと、それぞれ図24および図25のようになる。図24および図25に示すように、これらの状態|Ψ0 (j) 〉および|ψ0 (j-3) 〉は空間的に互いに分離されているので、もし光が入射してもそれを吸収する確率は非常に小さい。
【0060】
さて、この結合量子ドット系に外部電場を印加すると、メモリセルjのエネルギーバンド図は図26に示すようになる。この外部電場の印加によって量子状態は変化し、それぞれ単独で存在しているとしたときの量子ドットQDj-2 および量子ドットQDj-3 のエネルギー準位が互いに近づくと、共鳴的に両状態が混じり合う。このときのこの結合量子ドット系の量子状態は、
|Ψ0 (j) 〉〜[|ψ0 (j-2) 〉+|ψ0 (j-3) 〉] (27)
|Ψ1 (j) 〉〜[|ψ0 (j-2) 〉−|ψ0 (j-3) 〉] (28)
のようになり、結合状態|Ψ0 (j) 〉と反結合状態|Ψ1 (j) 〉とに分裂する。このときのエネルギーの分裂幅を2ΔEと書く。これらの結合状態|Ψ0 (j) 〉および反結合状態|Ψ1 (j) 〉の波動関数を図26に対応して示すと、それぞれ図27および図28に示すようになる。図27および図28からわかるように、これらの二状態は空間的に互いに大きく重なっており、光入射に対してその吸収確率は大きい。
【0061】
したがって、例えば、走査型トンネル顕微鏡で用いられる走査針と同様な針状電極によって特定のメモリセルのみに外部電場を印加することにより、その印加されたメモリセル内に電子が存在するときにのみエネルギー2ΔEの光吸収が起こり、それ以外のときには光吸収が起こり得ないことになる。
【0062】
以上の原理を利用して、メモリセルに記憶された1ビットの情報を読み出す方法について説明する。まず、図4に示すと同様にして、読み出しを行うべきメモリセルjを含む領域に、2ΔE=hνの光子エネルギーを有するレーザー光Lを照射しておく。上述のように、このメモリセルjに外部電場が印加されていないとき(図29)には、光吸収は起こり得ない。次に、図6に示すと同様に、量子メモリに対して負の電圧が印加された針状電極NEを、読み出しを行うべきメモリセルjに接近させる。このとき、メモリセルjのエネルギーバンド図は図30に示すようになる。ここで、もしそのメモリセルjの量子ドットQDj-3 内に電子が存在するときには、共鳴的にレーザー光Lの吸収が起こる。一方、そのメモリセルjに電子が存在しないならば光吸収は起こらない。したがって、この光吸収の有無によりメモリセルjの情報を読み出すことができる。
【0063】
メモリセルjの量子ドットQDj-3 内に電子が存在する場合、同時にその量子ドットQDj-1 内に正孔が存在している。量子ドットQDj-1 および量子ドットQDj-2 の間の障壁層の幅B12と量子ドットQDj-2 および量子ドットQDj-3 の間の障壁層の幅B23とが互いに異なり、
12>B23 (29)
であるので、量子ドットQDj-1 内の正孔は量子ドットQDj-2 の状態と共鳴もしないし、トンネル障壁の幅B12が大きいので、量子ドットQDj-1 および量子ドットQDj-2 間の結合の強さも小さい。このため、量子ドットQDj-1 内の正孔は量子ドットQDj-2 に移動せず、量子ドットQDj-1 内にとどまっている。また、同様の理由で、量子ドットQDj-3 内の電子は量子ドットQDj-1 に移動することもない。幅B23の障壁を介する電子状態の結合に比べて幅B12の障壁を介する正孔状態の結合の方が圧倒的に強いのは、B12とB23との違いとともに、正孔の有効質量が電子のそれよりも大きいことにもよっている。
【0064】
書き込み時と同様に、レーザー光Lが照射された多数のメモリセルのうちメモリセルj以外のメモリセルでは、針状電極Eにより印加される外部電場の強さが小さく、そのメモリセル内に電子が存在するとしてもそれは第2段目の量子ドットに移動することができないので、光吸収はなく、したがってメモリセルjだけの情報を読み出すことができる。
【0065】
次に、この第2実施例による量子メモリの初期化(または消去)を行う方法について説明する。まず、特定のメモリセルの初期化を行う方法としては、二つの方法がある。一つの方法は、初期化を行うべきメモリセルjに、読み出し時に印加する電圧よりも大きい負の電圧が印加された針状電極NEを接近させて外部電場を印加することによりそのメモリセル内で電子−正孔再結合を起こさせる方法であり、もう一つの方法は、例えば読み出し時と同様な外部電場をより長時間印加することにより電子−正孔再結合を起こさせる方法である。
【0066】
また、全てのメモリセルの初期化を一括して行う方法としては、量子メモリの温度を高くし、フォノンの吸収により電子−正孔再結合を促進する方法がある。このときの量子メモリの温度Tの目安は、図31に示すように、量子ドットQDj-1 の正孔の基底状態のエネルギー準位H0 (j-1) にある正孔を量子ドットQDj-2 の正孔の基底状態のエネルギー準位H0 (j-2) に、量子ドットQDj-3 の電子の基底状態のエネルギー準位E0 (j-3) にある電子を量子ドットQDj-2 の電子の基底状態のエネルギー準位E0 (j-2) にそれぞれ熱的に励起することができるような温度であり、具体的には、
[H0 (j-2) −H0 (j-1) ]〜[E0 (j-2) −E0 (j-3) ]〜kB T (30)
となる程度の温度である。
【0067】
全てのメモリセルの初期化を一括して行うもう一つの方法は、(30)式で与えられる光子エネルギーを有する単色光を量子メモリ全体に照射し、全てのメモリセルの第3段目の量子ドット内の電子および第1段目の量子ドット内の正孔を第2段目の量子ドット内に励起して、電子−正孔再結合を起こさせる方法である。
【0068】
次に、上述のように構成されたこの第2実施例による量子メモリの製造方法について説明する。
【0069】
まず、図32に示すように、図示省略した化合物半導体基板(例えば、GaAs基板)上に、例えばMOCVD法やMBE法により、十分に厚いAlGaAs層11a、厚さW1 のGaAs層12、厚さB12のAlGaAs層11b、厚さW2 のGaAs層13、厚さB23のAlGaAs層11c、厚さW3 のGaAs層14および所定の厚さのAlGaAs層11dを順次エピタキシャル成長させる。
【0070】
次に、図33に示すように、AlGaAs層11d上に電子ビームリソグラフィー法などによりメモリセルに対応した形状のレジストパターン15を形成する。
【0071】
次に、このレジストパターン15をマスクとして、例えばRIE法により、AlGaAs層11d、GaAs層14、AlGaAs層11c、GaAs層13、AlGaAs層11bおよびGaAs層12を基板表面に対して垂直な方向に順次エッチングする。このエッチングは、GaAs層12が互いに分離するようにオーバーエッチング気味に行う。このようにして、図34に示すように、GaAs層12、AlGaAs層11b、GaAs層13、AlGaAs層11c、GaAs層14およびAlGaAs層11dが四角柱状にパターニングされる。
【0072】
次に、レジストパターン15を除去した後、図35に示すように、MOCVD法やMBE法により、基板表面に対して垂直な側壁上に成長が起きない条件でAlGaAs層11eをエピタキシャル成長させて、四角柱状のGaAs層12、AlGaAs層11b、GaAs層13、AlGaAs層11c、GaAs層14およびAlGaAs層11dの間の部分を埋める。ここで、AlGaAs層11a、11b、11c、11d、11eの全体が図17に示すAlGaAs層11に対応する。
以上のようにして、図17に示す量子メモリが完成される。
【0073】
以上のように、この第2実施例による量子メモリによれば、各メモリセルの大きさが10nm×10nm程度であり、メモリセル間の間隔も50nm程度であるので、1ビット当たり必要な面積は50nm×50nm=25×10-16 2 程度である。したがって、例えばメモリセルアレーのサイズが6mm×6mmであるとすれば、この量子メモリは、16ギガ・ビットもの情報を記憶することができる。また、この量子メモリにおいては、1ビット当たり単一の電子−正孔対しか使用しないので、極めて低消費電力である。
【0074】
また、この第2実施例によれば、第1実施例と同様な上記利点に加えて、AlGaAs/GaAsヘテロ接合のみで量子メモリを構成することができるので、構造が単純であり、製造も簡単であるという利点もある。
【0075】
ところで、上述の第1実施例および第2実施例においては、書き込み時や読み出し時に、書き込みや読み出しを行うべきメモリセルを含む領域に所定の光子エネルギーを有するレーザー光Lを照射しながら、針状電極NEによりそのメモリセルに外部電場を印加している。そして、この外部電場の印加によって、メモリセルの量子ドットの内部量子状態が変化し、レーザー光Lを共鳴的に吸収することができるようになり、書き込みや読み出しを行うことができる。図36に示す光吸収強度曲線において、この共鳴吸収が起こる光エネルギーを、外部電場を印加したときの量子メモリの表面電位φの関数でE(φ)と書く。また、この光吸収強度曲線についての半値幅をΔWとする。
【0076】
通常の走査型トンネル顕微鏡の走査針と同様な針状電極NEにより外部電場を印加したときの空間電位分布は図37に示すようになっている。この場合、金属などの材料により形成されている針状電極NEの外部は真空であり、その誘電率は小さい。この結果、針状電極NEにより量子メモリに印加される外部電場はかなり広がっている。このときの量子メモリの表面の電位分布φ(x)は図38に示すようになめらかな変化をしている。したがって、針状電極NE直下のメモリセルjでのみ共鳴吸収を起こさせ、隣接するメモリセルでは吸収を起こさせないようにするためには、メモリセル間の間隔を十分に大きくしなければならない。すなわち、メモリセルjの位置座標をxj 、隣接するメモリセルj−1のそれをxj-1 とすると、
E(φ(xj-1 ))<E(φ(xj ))−ΔW (31)
または
E(φ(xj ))+ΔW<E(φ(xj-1 )) (32)
が成立しないと、メモリセルjと隣接するメモリセルj−1とを区別することができない。
【0077】
上述のようにメモリセル間の間隔を十分に大きくしなければならないことは、量子メモリの集積度の向上を図る上で好ましくない。この問題は、針状電極NEにより印加される外部電場を空間的に局所化することができれば解決することができる。そこで、次に、外部電場の空間的な局所化が可能な針状電極NEについて説明する。
【0078】
図39はその針状電極NEを示す。図39に示すように、この針状電極NEにおいては、円柱状の導電体から成る中心電極21の周囲が絶縁体22で覆われ、この絶縁体22の周囲に金属などの導電体から成る外部電極23が設けられている。ここで、中心電極21の直径は例えば〜10nmである。中心電極21の材料としてはInAsやWなどが用いられ、絶縁体22の材料としてはSiO2 などが用いられ、外部電極23の材料としてはAlなどが用いられる。
【0079】
この図39に示す針状電極NEの外部電極23を接地して電位0とすれば、中心電極21に所定の電圧を印加したときのこの針状電極NEの先端部の周囲の電位分布は図40に示すようになり、この針状電極NEにより印加される外部電場は空間的に局所化される。したがって、この針状電極NEを用いて量子メモリのメモリセルに外部電場を印加するときに量子メモリの表面に印加される電場も局所化される(図41)。このため、隣接するメモリセル間の間隔を小さくすることができ、その分だけメモリセルの高集積密度化を図ることができる。
【0080】
図39および図40に示す針状電極NEは、例えば次のような方法により製造することができる。
まず、図42に示すように、InAs基板31上に、形成すべき中心電極21と同一の直径、具体的には例えば〜10nmの直径を有する円形のレジストパターン32を形成する。
【0081】
次に、図43に示すように、このレジストパターン32をマスクとしてInAs基板31を例えばRIE法により基板表面に対して垂直方向に所定深さエッチングし、InAsから成る円柱状の中心電極21を形成する。ここで、InAsは表面空乏化が起きないので、〜10nm程度の直径にパターニングしても導電性は失われない。
【0082】
次に、図44に示すように、例えばCVD法などにより例えばSiO2 膜33を全面に形成した後、引き続いて例えばAl膜34を真空蒸着法などにより全面に形成する。
【0083】
次に、図45に示すように、例えば有機レジスト35を厚く塗布して表面を平坦化した後、少なくとも中心電極21の先端部が露出する深さまで、例えばRIE法により基板表面に対して垂直方向にエッチバックする。このエッチバック後の状態を図46に示す。
【0084】
この後、不要な有機レジスト35を除去し、図47に示すように、目的とする針状電極NEを完成させる。
【0085】
すでに述べたように、この針状電極NEの使用時には、外部電極としてのAl膜34を接地し、InAs基板31に所定の電圧を印加する。
図39に示す針状電極NEは、次のような方法によっても製造することができる。
【0086】
すなわち、InAs基板31の代わりに例えばSi基板を用い、このSi基板上にその表面に対して垂直方向に例えばWを円柱の棒状に選択成長させ、これを中心電極とする。このWの選択成長は、具体的には、真空排気された所定の成長室内にSi基板を入れた後、成長室内に例えばWF6 ガスを導入し、Si基板表面にビーム径を十分に細く絞った電子ビームを照射することによりWF6 の分解を起こさせ、ビーム照射部のSi基板表面にWを堆積させることにより行う。その後、図44〜図46に示すと同様に工程を進め、目的とする針状電極NEを完成させる。
【0087】
針状電極NEにより印加される外部電場を空間的に局所化するためには、上述の図39および図40に示すような針状電極NEを使用することのほかに、量子メモリの、針状電極NEにより外部電場が印加される側の面とは逆側の面に導電性材料から成るバックゲートを設けることも有効である。すなわち、例えば第1実施例による量子メモリに対してその裏面に図48に示すようにバックゲートBGを設ける。このようなバックゲートBGを設けると、針状電極NEによって印加された外部電場はバックゲートBG内の電荷によってスクリーニングされ、量子メモリ内ではこの外部電場は狭い領域に閉じ込められる。この結果、量子メモリの表面に針状電極NEを接近させたときにこの針状電極NEによって印加される外部電場は図49に示すように局所化される。
【0088】
このスクリーニングについてもう少し詳しく説明すると次の通りである。一般に、真空を含め、誘電体中では、クーロン力の逆二乗則は変わらないが、自由に動ける電荷があると、外部電場が印加されたときにその電荷が外部電場を打ち消すように移動することによって、スクリーニングが起こる。すなわち、導体(ここではバックゲート)の外部にある電荷によって、導体内に誘導電荷が生じ、クーロン・ポテンシャルの距離に対する減衰率が大きくなるのである。図50に示すように、最も単純な導体平板と単一電荷(q)とから成る系の場合、導体表面付近の外部電場は、(r2 +a2 -3/2〜r-3(r→∞)で変化し、導体のない場合の(r2 +a2 -1〜r-2(r→∞)に比べて、減衰の次数は1次高いことがわかる。この減衰がバックゲートによって引き起こされ、この電位変化に引きずられて誘電体部分の電場も局所化するのである。
【0089】
次に、上述のバックゲートを有する量子メモリの具体例について説明する。ここでは、第1実施例による量子メモリにバックゲートを設ける場合について説明するが、第2実施例による量子メモリにバックゲートを設ける場合についても同様である。
【0090】
図51に示す第1の例においては、量子メモリを製造する際の基板としてn型GaAs基板41を用い、このn型GaAs基板41上に図2に示すと同様な三段の量子ドットアレーを形成する。このn型GaAs基板41の裏面にはこのn型GaAs基板41とオーミック接触するように電極42を形成する。そして、この電極42を接地し、n型GaAs基板41を接地する。この場合、n型GaAs基板41がバックゲートとなり、AlGaAs層1がこのバックゲートと量子ドットアレーとを分離する層となる。
【0091】
図52に示す第2の例においては、量子メモリを製造する際の基板として半絶縁性GaAs基板43を用い、この半絶縁性GaAs基板43上にn型GaAs層44をエピタキシャル成長させた後、このn型GaAs層44上に図2に示すと同様な三段の量子ドットアレーを形成する。この後、量子ドットアレーの一部をエッチング除去してその部分にn型GaAs層44を露出させ、この露出したn型GaAs層44上に電極42を形成する。そして、この電極42を接地し、n型GaAs層44を接地する。この場合、n型GaAs層43がバックゲートとなる。
【0092】
図53に示す第3の例においては、量子メモリを製造する際の基板として半絶縁性GaAs基板43を用い、この半絶縁性GaAs基板43上にn型AlGaAs層45およびi型GaAs層46を順次エピタキシャル成長させた後、i型GaAs層46上に図2に示すと同様な三段の量子ドットアレーを形成する。この後、量子ドットアレーの一部をエッチング除去してその部分にi型GaAs層46を露出させ、この露出したi型GaAs層46上に電極42を形成する。そして、この電極42を接地する。この場合、n型AlGaAs層45とi型GaAs層46とのヘテロ接合の界面におけるi型GaAs層46中にn型AlGaAs層45から電子が供給され、二次元電子ガス(2DEG)が形成される。それによって、このi型GaAs層46と電極42とがオーミック接触する。この場合、この2DEGが存在するi型GaAs層46がバックゲートとなる。
【0093】
以上、この発明の実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0094】
例えば、上述の第1実施例および第2実施例においては、量子ドットがAlGaAs/GaAsヘテロ接合またはAlGaAs/InGaAsヘテロ接合により形成されているが、タイプIIのヘテロ接合超格子であるAlSb/InAsヘテロ接合、GaSb/InAsヘテロ接合またはAlSb/GaSbヘテロ接合によって量子ドットを形成してもよい。参考のため、AlSb/InAsヘテロ接合およびGaSb/InAsヘテロ接合のエネルギーバンド図をそれぞれ図54および図55に示す。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明による量子メモリによれば、従来の半導体メモリと全く異なり、順次積層された第1の量子箱、第2の量子箱および第3の量子箱によりメモリセルが構成され、書き込みや読み出しはレーザー光などの光照射と針状電極などによる外部電場の印加とを併用して行うことができる。この量子メモリによれば、従来の半導体メモリで必要であった配線が不要となるばかりでなく、メモリセルの大きさも極めて小さくすることができるので、超高集積度を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例による量子メモリを概念的に示す略線図である。
【図2】この発明の第1実施例による量子メモリを示す斜視図である。
【図3】この発明の第1実施例による量子メモリのエネルギーバンド図である。
【図4】この発明の第1実施例による量子メモリに書き込みを行う方法を説明するための斜視図である。
【図5】この発明の第1実施例による量子メモリに書き込みを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図6】この発明の第1実施例による量子メモリに書き込みを行う方法を説明するための斜視図である。
【図7】この発明の第1実施例による量子メモリに書き込みを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図8】この発明の第1実施例による量子メモリに書き込みを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図9】この発明の第1実施例による量子メモリに書き込みを行った後のエネルギーバンド図である。
【図10】この発明の第1実施例による量子メモリの読み出しを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図11】この発明の第1実施例による量子メモリの読み出しを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図12】この発明の第1実施例による量子メモリの初期化を行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図13】この発明の第1実施例による量子メモリの製造方法を説明するための斜視図である。
【図14】この発明の第1実施例による量子メモリの製造方法を説明するための斜視図である。
【図15】この発明の第1実施例による量子メモリの製造方法を説明するための斜視図である。
【図16】この発明の第1実施例による量子メモリの製造方法を説明するための斜視図である。
【図17】この発明の第2実施例による量子メモリを示す斜視図である。
【図18】この発明の第2実施例による量子メモリのエネルギーバンド図である。
【図19】この発明の第2実施例による量子メモリに書き込みを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図20】この発明の第2実施例による量子メモリに書き込みを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図21】この発明の第2実施例による量子メモリに書き込みを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図22】この発明の第2実施例による量子メモリに書き込みを行った後のエネルギーバンド図である。
【図23】この発明の第2実施例による量子メモリのエネルギーバンド図である。
【図24】この発明の第2実施例による量子メモリのメモリセルを構成する結合量子ドット系における基底状態の波動関数を図23に対応させて示す略線図である。
【図25】この発明の第2実施例による量子メモリのメモリセルを構成する結合量子ドット系における第1励起状態の波動関数を図23に対応させて示す略線図である。
【図26】この発明の第2実施例による量子メモリの読み出しを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図27】この発明の第2実施例による量子メモリのメモリセルを構成する結合量子ドット系における結合状態の波動関数を図26に対応させて示す略線図である。
【図28】この発明の第2実施例による量子メモリのメモリセルを構成する結合量子ドット系における反結合状態の波動関数を図26に対応させて示す略線図である。
【図29】この発明の第2実施例による量子メモリの読み出しを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図30】この発明の第2実施例による量子メモリの読み出しを行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図31】この発明の第2実施例による量子メモリの初期化を行う方法を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図32】この発明の第2実施例による量子メモリの製造方法を説明するための斜視図である。
【図33】この発明の第2実施例による量子メモリの製造方法を説明するための斜視図である。
【図34】この発明の第2実施例による量子メモリの製造方法を説明するための斜視図である。
【図35】この発明の第2実施例による量子メモリの製造方法を説明するための斜視図である。
【図36】量子メモリにレーザー光を照射しながら針状電極により外部電場を印加するときの光吸収強度曲線を示す略線図である。
【図37】量子メモリの表面に針状電極を接近させて外部電場を印加したときの電位分布を示す略線図である。
【図38】量子メモリの表面電位の空間的分布を示す略線図である。
【図39】針状電極の好適な構造例を示す斜視図である。
【図40】針状電極の好適な構造例を示す断面図である。
【図41】図39および図40に示す針状電極を用いて外部電場を印加したときの量子メモリの表面電位の空間的分布を示す略線図である。
【図42】図39および図40に示す針状電極の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図43】図39および図40に示す針状電極の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図44】図39および図40に示す針状電極の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図45】図39および図40に示す針状電極の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図46】図39および図40に示す針状電極の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図47】図42〜図46に示す針状電極の製造方法により製造された針状電極を示す斜視図である。
【図48】針状電極により印加される外部電場の局所化のためのバックゲートを有する量子メモリの一例を示す斜視図である。
【図49】図48に示す量子メモリの表面に針状電極を接近させて外部電場を印加したときの電位分布を示す略線図である。
【図50】図49に示される電位分布が得られる理由を説明するための略線図である。
【図51】針状電極により印加される外部電場の局所化のためのバックゲートを有する量子メモリの第1の例を示す斜視図である。
【図52】針状電極により印加される外部電場の局所化のためのバックゲートを有する量子メモリの第2の例を示す斜視図である。
【図53】針状電極により印加される外部電場の局所化のためのバックゲートを有する量子メモリの第3の例を示す斜視図である。
【図54】AlSb/InAsヘテロ接合のエネルギーバンド図である。
【図55】GaSb/InAsヘテロ接合のエネルギーバンド図である。
【符号の説明】
1、11 AlGaAs層
2、4 InGaAs層
3、12、13、14 GaAs層
QDj-1 、QDj-2 、QDj-3 量子ドット
L レーザー光
NE 針状電極
BG バックゲート

Claims (11)

  1. 順次積層された第1の量子箱、第2の量子箱および第3の量子箱によりメモリセルが構成され、
    上記第1の量子箱および上記第2の量子箱の間の結合の強さと上記第2の量子箱および上記第3の量子箱の間の結合の強さとが互いに異なり、
    上記第1の量子箱、上記第2の量子箱および上記第3の量子箱の電子の基底状態のエネルギー準位をそれぞれE 0 (j-1) 、E 0 (j-2) およびE 0 (j-3) とし、上記第1の量子箱、上記第2の量子箱および上記第3の量子箱の電子の第1励起状態のエネルギー準位をそれぞれE 1 (j-1) 、E 1 (j-2) およびE 1 (j-3) とし、上記第1の量子箱、上記第2の量子箱および上記第3の量子箱の正孔の基底状態のエネルギー準位をそれぞれH 0 (j-1) 、H 0 (j-2) およびH 0 (j-3) とし、上記第1の量子箱、上記第2の量子箱および上記第3の量子箱の正孔の第1励起状態のエネルギー準位をそれぞれH 1 (j-1) 、H 1 (j-2) およびH 1 (j-3) としたとき、
    0 (j-1) <E 0 (j-2)
    0 (j-3) <E 0 (j-2)
    [E 1 (j-1) −E 0 (j-1) ]>[E 1 (j-2) −E 0 (j-2)
    [E 1 (j-3) −E 0 (j-3) ]>[E 1 (j-2) −E 0 (j-2)
    [E 0 (j-1) −H 0 (j-1) ]≠[E 0 (j-2) −H 0 (j-2)
    [E 0 (j-3) −H 0 (j-3) ]≠[E 0 (j-2) −H 0 (j-2)
    が成立することを特徴とする量子メモリ。
  2. 上記第1の量子箱および上記第2の量子箱の間の結合の強さよりも上記第2の量子箱および上記第3の量子箱の間の結合の強さの方が大きいことを特徴とする請求項1記載の量子メモリ。
  3. 上記第1の量子箱、上記第2の量子箱および上記第3の量子箱が化合物半導体ヘテロ接合により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の量子メモリ。
  4. 上記化合物半導体ヘテロ接合がタイプIのヘテロ接合超格子であることを特徴とする請求項3記載の量子メモリ。
  5. 上記化合物半導体ヘテロ接合がAlGaAs/GaAsヘテロ接合またはAlGaAs/InGaAsヘテロ接合であることを特徴とする請求項3記載の量子メモリ。
  6. 上記化合物半導体ヘテロ接合がタイプIIのヘテロ接合超格子であることを特徴とする請求項3記載の量子メモリ。
  7. 上記化合物半導体ヘテロ接合がAlSb/InAsヘテロ接合、GaSb/InAsヘテロ接合またはAlSb/GaSbヘテロ接合であることを特徴とする請求項3記載の量子メモリ。
  8. 順次積層された第1の量子箱、第2の量子箱および第3の量子箱によりメモリセルが構成され、
    上記第1の量子箱および上記第2の量子箱の間の結合の強さと上記第2の量子箱および上記第3の量子箱の間の結合の強さとが互いに異なる量子メモリの動作方法であって、
    書き込み時には、書き込みを行うべきメモリセルに第1の光を照射しながら、上記書き込みを行うべきメモリセルに上記第1の量子箱、上記第2の量子箱および上記第3の量子箱の積層方向の第1の外部電場を印加し、
    読み出し時には、読み出しを行うべきメモリセルに第2の光を照射しながら、上記読み出しを行うべきメモリセルに上記第1の外部電場と逆方向の第2の外部電場を印加するようにしたことを特徴とする量子メモリの動作方法。
  9. 所定電圧が印加された針状電極を上記書き込みを行うべきメモリセルまたは上記読み出しを行うべきメモリセルに接近させることにより上記第1の外部電場または上記第2の外部電場を印加するようにしたことを特徴とする請求項8記載の量子メモリの動作方法。
  10. 初期化を行うべきメモリセルに上記第2の外部電場よりも大きい第3の外部電場を印加するかまたは上記第2の外部電場を上記読み出し時よりも長時間印加して上記初期化を行うべきメモリセル内で電子−正孔再結合を起こさせることにより初期化を行うようにしたことを特徴とする請求項8記載の量子メモリの動作方法。
  11. 上記量子メモリの温度を高くするかまたは上記量子メモリに第3の光を照射して全てのメモリセル内で電子−正孔再結合を起こさせることにより上記全てのメモリセルの初期化を一括して行うようにしたことを特徴とする請求項8記載の量子メモリの動作方法。
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