JP3735386B2 - 量子効果装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、量子効果を利用した量子効果装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
(第1の従来技術)
従来より、集積回路の知識を用いて、インバータ回路や、OR回路や、AND回路などの論理回路が実現されている。このような論理回路のうち、インバータ回路は論理回路の最も基本的な要素であり、(0、1)のバイナリー演算では、入力0(1)を1(0)に反転させるという機能を持つ。
【0003】
図17は、従来のインバータ回路を示す図であり、これは大きく分けてnpn型のバイポーラトランジスタTrと、このバイポーラトランジスタTrのコレクタに接続された負荷抵抗Rとで構成されている。また、バイポーラトランジスタTrのエミッタ,コレクタはそれぞれ電源電位V1 ,V2 に接されている。
【0004】
このインバータ回路によれば、バイポーラトランジスタTrのベースにローレベルの入力電圧Vinが印加されると、バイポーラトランジスタTrがオフ状態となり、負荷抵抗Rに電流が流れないので、出力電圧Vout はハイレベルとなる。
一方、ベースにハイレベルの入力電圧Vinが印加されると、バイポーラトランジスタTrがオン状態となり、負荷抵抗Rに電流が流れ、電圧降下が生じるので、出力電圧Vout はローレベルとなる。
【0005】
しかしながら、この種のインバータ回路には以下のような問題があった。すなわち、論理振幅を電圧で取り出すため、誤動作防止のために論理振幅に余裕を持たせると、消費電力が大きくなるという問題が生じる。
【0006】
また、インバータ回路のように、1個のトランジスタで構成できる簡単な論理回路でも、最低3つの電極(ベース電極,コレクタ電極,エミッタ電極)が必要となり、更に、電極間を金属の配線で接続しなければならない。
【0007】
このため、トランジスタを用いて、複雑な論理演算を実現しようとすると、配線パターンが複雑化し、設計が困難になるとともに、配線を引き回すことによる容量性の遅延や、配線間の誘導性クロストークなどの問題が生じる。
【0008】
このような問題は、回路規模が大きくなればなるほど顕存化し、ULSIにおいては本質的なボトルネックになってくる。
【0009】
そこで、近年、バイポーラトランジスタのような3端子トランジスタを用いずに、論理回路を構築することが試みられている(Craig S.Lent et.al.,Quantum cellular automata Nanotechnology,vol.4, pp.49-57)。
【0010】
図18は、従来のトランジスタを使用しないインバータ回路であり、セル接続型インバータ回路と呼ばれているものである。このセル接続型インバータ回路では、トランジスタの代わりに、6個の5量子ドットセルC1〜C6で構成されている。
【0011】
5量子ドットセルとは、図19に示すように、五つの量子ドットD1〜D5からなるセルであって、その中に2個の電子(図中の黒丸)が注入された構造となっている。
【0012】
この5量子ドットセルは、図19に示すように、二つの識別可能で安定な基底状態ψ1 ,ψ2 を有する。これは二つの電子がクーロン相互作用により互いに反発し合い、よりエネルギーの低い状態に変化しようとする結果である。
【0013】
このセル接続型インバータ回路によれば、図18(a)に示すように、入力セルとしての5量子ドットセルC1に入力“1”が与えられ、この5量子ドットセルC1が状態ψ1 になると、5量子ドットセルC2は、5量子ドットセルC1に対して電気的に安定な状態である基底状態ψ1 に落ち着く。同様に、5量子ドットセルC3も基底状態ψ1 となる。
【0014】
また、5量子ドットセルC4は、5量子ドットセルC3に対して電気的に安定な状態である基底状態ψ2 に落ち着く。5量子ドットセルC4が基底状態ψ2 になると、5量子ドットセルC5は、5量子ドットセルC4に対して電気的に安定な状態である基底状態ψ2 になり、同様に、出力セルとしての5量子ドットセルC6の状態も基底状態ψ2 となる。
【0015】
したがって、入力セルである5量子ドットセルC1と、出力セルである5量子ドットセルC6とは互いに異なった基底状態となるので、5量子ドットセルC6の状態を検出することにより、入力“1”とは異なる出力“0“が得られる。
【0016】
しかしながら、この種のセル接続型インバータ回路には以下のような問題があった。
【0017】
すなわち、図18(a)の状態の接続型インバータ回路において、入力を“1”から“0”に変えると、図18(b)に示すように、5量子ドットセルC1から5量子ドットセルC3までは、図18(a)の場合と同様に、入力に対応して状態が所定通りに変化するが、5量子ドットセルC3の状態に対して、5量子ドットセルC4は、図18(a)の場合とは異なり、状態が変化しない場合があるため、入力と出力とが同じになり、インバータとして機能しなくなるという問題があった。
【0018】
(第2の従来技術)
ところで、複数の5量子ドットセルを縦方向または横方向に並べると、信号の伝播が可能となる。例えば、入力側の第1の5量子ドットセルにその状態が基底状態ψ1 になるようなバイアスを与えると、第1の5量子ドットセルに隣接する第2の5量子ドットセルは、クーロン相互作用により第1の5量子ドットセルと同じ基底状態ψ1 になろうとする。以下、同様にして、第2の5量子ドットセル以降の5量子ドットセルも基底状態ψ1 になろうとし、したがって、基底状態ψ1 が信号として伝搬することになる。また、第1の5量子ドットセルの状態を基底状態ψ2 にした場合には、基底状態ψ1 の場合と同様なメカニズムにより、今度は基底状態ψ2 が信号として伝播することになる。
【0019】
しかし、5量子ドットセルを単に縦方向または横方向に並べるだけでは、直線方向にしか信号(状態)を伝播することができない。実際に集積回路を構成しようとする場合には、任意の場所にある記憶装置や論理演算部に信号を運ばなければならないため、信号の伝播する方向を曲げたり、または信号を分岐したりする必要が生じる。
【0020】
信号の方向転換や、信号の分岐を行なうには、例えば、図48、図49に示すように、複数の5量子ドットセルを配置すれば良い。これらはLent等のよって提案されたものである。
【0021】
図48は、いわゆる折れ曲がり配線と呼ばれるものを示しており、図48の折れ曲がり配線の場合、信号Sは、最初、右方向(3時の方向)に伝搬し、5量子ドットセルC3のところで伝搬方向が変わり、下方向(6時の方向)に伝搬することになる。
【0022】
しかしながら、この種の折れ曲り配線には以下のような問題がある。
【0023】
すなわち、図48の折れ曲がり配線の場合、5量子ドットセルC2,C4の状態が不安定であるため、5量子ドットセルC2,C4の状態は必ずしも基底状態となる分けではない。したがって、信号Sの情報を確実に保持したまま信号Sの伝搬方向を転換することはできない。
【0024】
5量子ドットセルC2,C4の状態が不安定になるのは、5量子ドットセルC2の一方の電子と5量子ドットセルC4の一方の電子とが近接するため、上記二つの電子間にクーロン相互作用が働き、これにより、これら電子の状態が変化することがあるからである。
【0025】
(第3の従来技術)
図49は、いわゆるマルチ・ファン・アウト分岐配線と呼ばれるものを示しており、図48のマルチ・ファン・アウト分岐配線の場合には、5量子ドットセルC3,C5のところで信号Sが分岐し、伝搬方向が右方向(3時の方向)で、互いに伝搬方向が平行な分岐信号S1 ,S2 が得られる。
【0026】
しかしながら、この種の分岐配線には以下のような問題がある。
【0027】
すなわち、図49の分岐配線配線の場合、5量子ドットセルC4,C7の状態が不安定であり、また、5量子ドットセルC6,C9の状態も不安定となるので、信号Sの情報を確実に保持したまま信号Sを分岐することはできない。
【0028】
(第4の従来技術)
図20は、J.Spector らによって提案され、高速化、微細化が可能な半導体論理装置の模式図である(Appl. Phys. Lett.,vol. 56,no.24, 1990. p.2433 )。これは量子効果領域の電子、つまり、バリスティック電子e- を利用した半導体論理装置であって、エミッター端子81、ゲート端子82に与える電圧によって、バリスティック電子e- を制御し、レシーバ83でバリスティック電子e- を受信するというものである。
【0029】
しかしながら、このような構成の半導体論理装置によってインバータ以外の論理装置を実現する場合には、バリスティック電子e- を制御するゲート端子81を増加する必要があり、この結果、ゲート端子81の間でクロストークが生じ、安定した動作が期待できないという問題があった。
【0030】
(第5の従来技術)
現在の集積回路の知識を用いてメモリーや論理回路を構成しようとすると、必ず3端子素子、つまり、トランジスターを用いることになる。トランジスタを用いると、3つの電極から金属配線を引き出し、デバイス間を接続するためにその金属配線を引き回すことが必要になる。
【0031】
この引き回しは、回路規模が大きくなるほど多くなり、これにより、金属配線面積の増加、配線抵抗の増大、配線による容量性遅延、配線間の誘導性クロストークなどの諸問題が顕在化してくる。これらの問題はULSIにおける本質的なボトルネックとなっている。
【0032】
そこで、これらの問題を抜本的に解決するために、複数の5量子ドットセルで構成された量子セルラーオートマトンという量子効果装置がC.S.Lent等により提案されている(Appl.Phys.Lett.62(1993)p.714)。
【0033】
5量子ドットセルとは、図42に示すように、電子を0次元的に閉じ込められるくらい微小で丸状の5つの量子箱(図中の丸1017,1018)から構成されるものであって、そのうちの4つは5量子ドットセルの四隅に配置し、残りの1つは5量子ドットセルの中心に配置している。そして、そのうちの2つの量子箱(図中の丸1017)には電子が2個入っている。
【0034】
各量子箱間の距離は電子がトンネル効果で行き来できるくらい近接した位置関係にあり、一方、各5量子ドットセル間の距離は、電子がトンネル効果で行き来出来ない程度離れている。
【0035】
1つの5量子ドットセルの中の2つの電子は、クーロン反発力でなるべく遠くにいこうとするため、対角線上の位置に来たときが一番エネルギーの低い安定状態となる。したがって、このセルは最もエネルギーの低い2つの安定状態(状態0、状態1)を持つことになる。
【0036】
これら双安定状態を(0,1)と定義すれば、この5量子ドットセルを1単位(1ビット)としたメモリを構成できる。また、図43に示すように、この5量子ドットセルを横に並べ、そして、左側の5量子ドットセルから状態0を入力すれば、電子の配置に従ってクーロン反発力により、右側の5量子ドットセルに状態0が伝播していく。
【0037】
すなわち、この5量子ドットセルを並べれば、信号伝播のための配線として用いることができる。また、セルの配置の仕方によって論理回路も構成できることが分かっている。
【0038】
しかしながら、この種の5量子ドットセルには以下のような問題があった。
【0039】
従来の5量子ドットは丸い量子箱から構成されているため、斜めの方向に隣接する量子箱間の方が、横方向に隣接する量子箱にくらべ距離が短いため、トンネル確率は高くなるものの、電子は隣合う量子箱間を全てトンネル効果で移動することが可能である。
【0040】
すなわち、バイアスを与えれば5量子ドットセルの状態が確定するが、バイアスを取り去ると、状態は時間と共にぼけてしまい、不揮発性メモリのような用途には使えなくなる。
【0041】
また、もし光でメモリーの書き込みを行なう場合、光(バイアス)が与えられるなくなると、状態は不確定になってしまうため、結局配線を全セルにつなぐことになり、当初の配線を使わないで済むというメリットがなくなってしまう。
【0042】
一方、論理回路として用いる場合、上述したように電子はトンネル効果により横方向にも移動するため、これによりしきい値エネルギーが低くなりすぎて、誤動作が生じるという問題がある。
【0043】
(第6の従来技術)
更に、従来の量子効果装置には以下のような問題があった。
【0044】
QIC(Quantum Interconnections with Cellar automata )動作の量子効果装置は基底状態での動作を想定しており、この動作の温度限界は基底状態と第1励起状態とのエネルギー差により決定される。
【0045】
このエネルギー差は5量子ドットセル等の量子セル間のクーロン相互作用により決まるため、隣接する量子セルから受ける影響が強いほど、基底状態と第1励起状態とのエネルギー準位差が明確になる。このため、量子セル間の距離を短くするほど、より高温まで動作できるようになる。
【0046】
しかしながら、従来の平面的な量子セル配列パターンの場合、量子セル間の距離が短くなると、それにともなってクーロン相互作用も強くなるため、これにより、量子セルの双安定状態が乱され、量子効果装置として機能が失われるという問題があった。
【0047】
(第7の従来技術)
図44は、従来の量子効果装置(量子効果情報制御システム)の概念図である。
【0048】
これはアドレスA,B,C間で情報のやり取りを2次元電子ガス(2DEG)内のバリスティック電子を介して行なうシステムを示しており、アドレスA,B,Cは具体的には端末やプロセッサである。
【0049】
図中、三角印はバリスティック電子の経路が平面交差している領域を示し、菱形印はバリスティック電子の経路が分岐している領域を示し、そして、長方形印はバリスティック電子同士が衝突する領域を示している。
【0050】
この量子効果情報制御システムは2DEG内のバリスティック電子を利用しているため、従来の金属配線を利用した情報制御システムとは異なり、配線遅延の問題は全くない。
【0051】
しかしながら、実用化を考えた場合、その設計の自由度は十分でないという問題があった。
【0052】
(第8の従来技術)
ところで、集積回路の集積密度上昇を求めてULSIの微細加工技術が現在発展しており、量子効果の発現する領域になりつつある。このような領域では、電子の波動性が顕著になり、情報の伝達に電子電流を利用した従来の論理装置は、動作が不安定になったり、誤動作が生じるという問題がある。また、微細化による素子密度の増加により、消費電力や発熱の問題が顕著になる。更に、素子間を配線で連結するため、配線面積で素子密度の向上が困難になるという問題があった。
【0053】
(第9の従来技術)
このパラグラフの項目は、第9の従来技術となっているが、以下に説明する問題は、公知(周知)の従来技術の問題ではなく、本発明者等が独自に考えている現代の量子効果装置に内在する問題である。
【0054】
5量子ドットセル等の量子セルは非常に小さく、そのサイズは例えば0.12μm程度である。この場合、量子ドットの直径は50nm程度と非常に小さく、また、隣接する量子ドット間の距離は20nm程度と非常に短い。
【0055】
このため、従来の電子装置の場合のような通常の金属電極による信号の供給は不可能である。何故なら、金属電極から入力用量子セルに信号を供給しようとすると、信号ではなく金属電極内の大量の電子によって、入力用量子セル内の少数(通常2個)の電子の状態が変化してしまうからである。換言すれば、金属電極と入力用量子セルとの間にショットキー接合が形成され、入力用量子セル内のバンド構造が大きく変化するため、量子セルの双安定状態が壊れてしまう。
【0056】
(第10の従来技術)
このパラグラフの項目は、第10の従来技術となっているが、以下に説明する問題は、公知(周知)の従来技術の問題ではなく、本発明者等が独自に考えている現代の量子効果装置に内在する問題である。
【0057】
すなわちに、出力用量子セルの状態(出力)を通常の金属電極により検出しようとすると、金属電極内の大量の電子によって、出力用量子セルの出力が変化してしまう。したがって、通常の金属電極では、出力用量子セルの出力を正確に検出することは困難である。
【0058】
また、出力用量子セルの出力は、2個の電子により形成される分極状態の違いであり、したがって、極めて微小な電荷分布を検出する技術が必要になる。しかしながら、従来の技術ではこのような微小な電荷分布を検出することは困難であった。
【0059】
(第11の従来技術)
近年、半導体微細構造中の電荷の片寄りを利用して、信号の伝達を行なう量子効果信号伝達装置が提案されている(P.Bakshi et al., J.Appl. Phys. 70,5150(1991) やP.D.Tougaw et al., J. Appl. Phys. 74,3558(1993) )。以下、この方法の概要について説明する。
【0060】
この量子効果信号伝達装置は、図52に示すように、複数のクオンタム・ダッシュ(quantum dashes)1131により構成されている。クオンタム・ダッシュ1131は、量子箱の一種で、細長い構造を有する量子箱である。
【0061】
隣接するクオンタム・ダッシュ1131間の距離は、各クオンタム・ダッシュ1131内に閉じ込められた電子が、隣接したクオンタム・ダッシュ1131内に閉じ込められた電子とクーロン力が働く程度に短い。
【0062】
したがって、クオンタム・ダッシュ1131内に閉じ込められた電子は、その密度分布の中心1132がクオンタム・ダッシュ1131の中央からずれたところで、安定な状態となる。すなわち、クオンタム・ダッシュ1131は、分極状態で安定となる。
【0063】
ここで、電子密度分布の中心が左側にある場合を“1”に対応させ、電子密度分布の中心が右側にある場合を“0”に対応させれば、図52は、“1、0、1、0、…”という信号が伝搬していることを示していることになる。
【0064】
また、外部電場等により、一つのクオンタム・ダッシュ1131の分極を“1”から“0”に反転させれば、“0、1、0、1、…”という信号が伝搬することになる。
【0065】
図53は、上記量子効果信号伝達装置を改良した量子効果信号伝達装置の概略構成を示す模式図である。この量子効果信号伝達装置は、二重量子井戸を用いて強い分極を形成することにより、信号伝達を効果的に行なうというものである。
図中、1141a,bは量子井戸を示しており、X方向に関して、これら二つの量子井戸1141a,bは弱いポテンシャル障壁1142を挟んでいる。すなわち、二つの量子井戸1141a,bと一つのポテンシャル障壁1142とにより、二重量子井戸が構成されている。一方、Y方向に関しては、二つの量子井戸1141a,bは、強いポテンシャル障壁1143によって、分離されている。したがって、二重量子井戸を“セル”と呼ぶとすると、セル内では比較的自由に電子が移動するが、セル間では電子は移動しない。また、セル間ではクーロン力以外の力は電子には働かない。
【0066】
今、一番上のセル1を十分に強く分極させると(電子を左側に偏在させると)、クーロン力によりセル2内の電子は、図54に示すセル2の電荷密度分布から分かるように、右側に偏在する。すなわち、セル2はセル1と反対方向に十分に強く分極する。したがって、これらの2つの強い分極状態をそれぞれ2つの信号“1”、“0”に対応させれば、これらのセルを並べることにより、信号伝達を行なうことができるようになる。
【0067】
ここで、信号として伝わるのは分極の状態であり、量子井戸中の電子自体の移動が信号伝達を担う訳ではない。したがって、電気抵抗やそれに伴う発熱を非常に小さく抑えることができ、高速でエネルギー消費の非常に小さい集積回路を構成することが可能となる。なお、上述した2つの量子効果信号伝達装置では、均一なバックグラウンドとしての正電荷を仮定している。
【0068】
図55、図56は量子効果信号伝達装置のより具体的な構成を示す図であり、図55は量子効果信号伝達装置を上から平面図を示しており、図56は図55の量子効果信号伝達装置のB−B´断面図を示している。
【0069】
図56に示すように、クオンタム・ダッシュは、半絶縁性GaAs基板1251と、この半絶縁性GaAs基板1251上に形成され、i型GaAs層1252とn型AlGaAs層1253とからなる変調ドープ層と、この変調ドープ層を囲むポテンシャル障壁層1254とにより構成されている。ポテンシャル障壁層1254のポテンシャル障壁は変調ドープ層のそれよりも高い。
【0070】
各クオンタム・ダッシュのi型GaAs層1252は、その上のn型AlGaAs層1253から電子を引き寄せる。この結果、各クオンタム・ダッシュのn型AlGaAs層1253内にはドナーイオンにより固定された正電荷と、各クオンタム・ダッシュのi型GaAs層1252内には二次元電子ガスとしての自由な電子とが存在することになる。
【0071】
ここで、図55に示すように、一番上のクオンタム・ダッシュ1255に加えられた外部電場等により、水平面内において電子分布の片寄りが生じた場合、クオンタム・ダッシュ1255のうち電子密度の高い領域は負帯電領域1256となり、逆に電子密度の低い領域はドナーイオンの正電荷により正帯電領域1257となる。
【0072】
このとき、図56に示すように、負帯電領域の電子1258は、その上のドナーイオンにより固定された正電荷1259によりキャンセルされるので、負の帯電領域1256の実効的な電子1258の数が小さくなる。したがって、クオンタム・ダッシュ内には期待通りの強い分極状態は形成されない。
【0073】
また、各クオンタム・ダッシュのサイズにばらつきが生じると、各クオンタム・ダッシュ中に閉じ込められるドナーイオンの数にもばらつきが生じることになる。クオンタム・ダッシュ内の分極に寄与する電子の数は少ないので、このようなドナーイオンの数のばらつきが生じると、各クオンタム・ダッシュの分極の程度が大きく異なり、これにより、誤動作が生じるという問題が発生する。
【0074】
(第12の従来技術)
半導体素子の金属パターンの形成方法の一つとして、リフトオフ法がある。リフトオフ法により微細な金属パターンを形成する具体的な方法については、「メゾスコピック構造の作製技術」(蒲生健次、固体物理、Vol.28, No.11, pp128-137(1993))で述べられている。この方法の概略を図59の工程断面図を用いて説明する。
【0075】
まず、図59(a)に示すように、半導体基板1221上に有機レジスト1222をスピンコートした後、100℃前後の温度でプリベークを行なうことにより、有機レジスト1222中の溶媒を外に追い出す。ここで、有機レジスト1222の材料としては、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレイト)があげられる。
【0076】
次に図59(b)に示すように、EB(電子ビーム)描画装置によって、金属パターンを形成する領域の有機レジスト1222に20〜100keV程度のエネルギーの電子ビーム2223を照射することにより、有機レジスト1222を露光する。
【0077】
次に図59(c)に示すように、MEK(メチルエチルケトン)やMIBK
(メチルイソブチルケトン)等の有機溶剤を含んだ現像液に半導体基板1221を浸して、有機レジスト1222の現像を行なうことにより、電子ビーム1223を照射した領域に微細な開口部を持つ有機レジストパターン1224を形成する。この後、ポストベークを行なって有機レジストパターン1224中に残留する現像液を除去するとともに、有機レジストパターン1224と半導体基板1221とのの密着性を向上させる。
【0078】
ここで、リフトオフを確実に行なえるようにするには、有機レジストパターン1224の開口部の形状が逆テーパ状になっていることが望ましい。これを実現するにはレジスト1222として、上層の露光感度が下層のそれより低い2層構造のレジストを用いると良い。
【0079】
次に図59(d)に示すように、開口部を含めた有機レジストパターン1222上の全面に、抵抗加熱や電子ビーム等を利用した蒸着装置を用いて、金属1225を蒸着して、有機レジストパターン1222上に金属層1226aを形成し、また、有機レジストパターン1222の開口部上には、金属層1226aとは分離された金属層1226bを形成する。
【0080】
最後に、図59(e)に示すように、有機溶剤を含むレジスト除去液を用いて有機レジストパターン1222を溶解して除去することにより、有機レジストパターン上1222に形成された金属層1226aを除去する。この結果、有機レジストパターン1222の開口部の形を反映した微細な金属パターン1226bが半導体基板1221上に形成される。
【0081】
しかしながら、この種のリフトオフ法には以下のような問題があった。
【0082】
すなわち、上述したリフトオフ法では、有機レジストを用いているため、スピンコート、プリベーク、現像、ポストベーク等のプロセス途中で、炭素や炭素を含む物質(炭素汚染物質)により、素子表面が汚染されるという問題があった。更に、その後の洗浄プロセスに大きな負担がかかるという問題もあった。
【0083】
また、有機物を扱うプロセスは、有機物の揮発性のために、大気中で行なう必要があるので、全てのプロセスを真空中で行なうという真空一貫プロセスは不可能であった。したがって、大気中に素子表面が晒されるので、素子表面に形成される不要な酸化物(表面酸化物)を抑えることができず、素子構造やプロセス設計に多くの制限が課せられるという問題があった。
【0084】
また、半導体基板に損傷を与えずに、炭素汚染物質や表面酸化物を完全に除去することは難しく、したがって、上記リフトオフ法により微細構造を有する半導体素子を形成しようとすると、炭素汚染物質等の除去の際に微細構造が破壊されてしまうという問題があった。
【0085】
また、有機レジストは加熱による変形が起こり易いため、金属層1226a,b5を形成するときに、半導体基板1221の表面温度が必要以上に上昇しないように注意しなければならなかった。
【0086】
(第13の従来技術)
ところで、従来、量子箱の作成は、フォトリソグラフィ、ウエットエッチング、ドライエッチング等の半導体技術により形成していた。しかし、従来の量子箱の形成方法では、高寸法精度、低結晶欠陥の量子箱を形成できなかった。
【0087】
【発明が解決しようとする課題】
(第1の目的)
上述の第1の従来技術で説明したように、従来のセル接続型インバータ回路にあっては、所定通りに状態が変化しない5量子ドットセルが存在するため、入出力関係がインバータの関係にならない場合があり、動作が不安定であるという問題があった。
【0088】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その第1の目的は、量子セルからなり、動作が安定な量子効果装置を提供することにある。
【0089】
(第2の目的)
上述の第2の従来技術で説明したように、5量子ドットセルを用いた従来の折れ曲がり配線は、信号の情報を確実に保持したまま信号の伝搬方向を転換することができないという問題があった。
【0090】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その第2の目的は、信号の情報を保持したまま、信号の転換を行なえる量子効果装置を提供することにある。
【0091】
(第3の目的)
上述の第3の従来技術で説明したように、従来の5量子ドットセルを用いた分岐配線は、信号の情報を確実に保持したまま信号を分岐することができないという問題があった。
【0092】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その第3の目的は、信号の情報を保持したまま、信号の分岐を行なえる量子効果装置を提供することにある。
【0095】
(第の目的)
上述の第5の従来技術で説明したように、従来の5量子ドットセル(量子セル)を用いたメモリや論理回路等の量子効果装置にあっては、バイアスを与えないと、量子セルの状態が時間とともにぼけるという問題があった。
【0096】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その第の目的は、バイアスを与えなくても、状態を維持できる量子人工分子からなる量子効果装置を提供することにある。
【0105】
(第の目的)
上述の第10の従来技術で説明したように、通常の金属電極により、出力用量子セルの状態(出力)を検出しようとすると、金属電極内の大量の電子によって、出力用量子セルの出力が変化するので、出力を正確に検出することができないという問題(前述したように発明者等が独自に認識している問題で公知の問題ではない)があった。
【0106】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その第の目的は、出力用量子セルの出力を正確に検出できる量子効果装置を提供することにある。
【0113】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、本発明の量子効果装置(請求項1)は、入力用のセルと出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルである量子効果装置であって、前記各セルは、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用により決定される、二つ以上の識別可能な状態を有し、前記複数のセルは、前記入力用のセルの状態と前記出力用のセルの状態とが所定の論理関係になるべく二次元的または三次元的に配列され、且つ前記出力用のセルは、他のセルとともにループ構造を構成するように配置され、該ループ構造は、複数のセルがループ状に配置され、かつ、該ループ状に配置された前記複数のセルの内側にはセルが配置されていない構造であることを特徴とする。
【0114】
なお、ここで、前記ループ構造は、4つのセルが、それぞれ、3時の方向、6時の方向、9時の方向、12時の方向に配置されてなるものであることが好ましい(請求項2)。
【0115】
上記第2の目的を達成するために、本発明の量子効果装置(請求項3)は、入力用のセルと、この入力用のセルに入力される信号の伝搬方向とは異なる方向に信号を出力する出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルである量子効果装置であって、前記各セルは、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用により決定される、二つ以上の識別可能な状態を有し、且つ前記入力用のセルと前記出力用のセルとの間には、第1のループ構造を構成する複数のセルと、第2のループ構造を構成する複数のセルとが設けられ、前記第 1 および第2のループ構造は、それぞれ、複数のセルがループ状に配置され、かつ、該ループ状に配置された前記複数のセルの内側にはセルが配置されていない構造であることを特徴とする。
【0116】
上記第3の目的を達成するために、本発明の量子効果装置(請求項4)は、一つの入力用のセルと、この入力用のセルに入力される信号を分岐する複数の出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルである量子効果装置であって、前記各セルは、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用により決定される、二つ以上の識別可能な状態を有し、且つ前記入力用のセルと前記複数の各出力用のセルとの間には、それぞれ、第1のループ構造を構成する複数のセルと、第2のループ構造を構成する複数のセルとが設けられ、前記第 1 および第2のループ構造は、それぞれ、複数のセルがループ状に配置され、かつ、該ループ状に配置された前記複数のセルの内側にはセルが配置されていない構造であることを特徴とする。
【0119】
上記第4の目的を達成するために、本発明の量子効果装置(請求項5)は、入力用のセルと出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルである量子効果装置であって、前記各セルは、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用により決定される二つ以上の識別可能な状態を有し、前記複数のセルは、入力出力関係が所定の所定の論理関係になるべく3次元的に配列されていることを特徴とする。
【0120】
上記第5の目的を達成するために、本発明の量子効果装置(請求項6)は、入力用のセルと出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルからなる量子配線であって、前記各セルが、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用を利用して情報伝達を行なう量子配線と、この量子配線にバリスティック電子を衝突させて前記量子配線の状態を変化させることにより、前記量子配線を流れる情報を制御する情報伝達制御手段と、前記量子配線と前記バリスティック電子との衝突により生じる前記量子配線の状態変化を検出する検出手段とを備えてることを特徴とする。
【0126】
【作用】
本発明者等の研究によれば、量子効果装置を構成する一のセルがそれに隣接する他の二つのセルと物理的相互作用を起こすようになっていれば、上記一のセルの出力が安定することが分かった。
【0127】
また、本発明者等の研究によれば、量子効果装置を構成する出力用のセルが他のセルとともにループを構成している場合には、動作が安定し、所望の入出力関係が得られることが分かった。このメカニズムの詳細は未だ不明であるが、上記の如きのループが存在すると、従来無かった準安定状態が出現するのが一つの理由だと考えられる。すなわち、準安定状態が現れることにより、状態が不確定なセルが無くなるので、動作が安定すると考えられる。
【0128】
したがって、上記の如きの知見に基づいた本発明(請求項1〜2)によれば、動作の安定化が図れた量子効果装置を実現できるようになる。
【0129】
本発明者等の研究によれば、入力用のセルと、この入力用のセルに入力される信号の伝搬方向とは異なる方向に信号を出力する出力用のセルとを含む複数のセルからなる量子効果装置において、入力用のセルと出力用のセルとの間に、第1のループ構造を構成する複数のセルと、第2のループ構造を構成する複数のセルとを設けると、状態が不安定なセルがなくなり、信号の情報を保持したまま信号の伝搬方向を変えることができることが分かった。
【0130】
したがって、上記の如きの知見に基づいた本発明(請求3)によれば、信号の情報を保持したまま信号の伝搬方向を変えることができる量子効果装置を実現できるようになる。
【0131】
また、本発明者等の研究によれば、一つの入力用のセルと、この入力用のセルに入力される信号を分岐する複数の出力用のセルとを含む複数のセルからなる量子効果装置において、入力用のセルと複数の各出力用のセルとの間に、それぞれ、第1のループ構造を構成する複数のセルと、第2のループ構造を構成する複数のセルを設けると、状態が不安定なセルがなくなり、信号の情報を保持したまま信号を分岐できることが分かった。
【0132】
したがって、上記の如きの知見に基づいた本発明(請求項4)によれば、信号の情報を保持したまま信号を分岐できる量子効果装置を実現できるようになる。
【0137】
本発明者等の研究によれば、3次元的に量子人工分子を配列すると、量子人工分子の基底状態と第1励起状態とのエネルギー準位差が大きくなり、高温の動作が可能となることが分かった。また、量子人工分子間の距離は小さくなっていないので、量子人工分子の識別可能な状態が乱されることもない。
【0138】
したがって、このような知見に基づいた本発明(請求項)によれば、高温の動作が可能な量子効果装置が得られるようになる。
【0139】
本発明(請求項)によれば、量子配線にバリスティック電子を衝突させることにより、量子配線を流れる情報を制御できる。すなわち、バリスティック電子の利用により、従来不可能であった量子配線における情報伝達の制御を行なえるようになる。したがって、設計の自由度が高くなり、実用度の高い量子配線が得られるようになる。
【0148】
【実施例】
先ず、請求項に係る発明と実施例との対応を以下に記す。
【0149】
請求項1 →第1〜第3の実施例
請求項2 →第1〜第3の実施例
請求項3 →第23の実施例
請求項4 →第24の実施例
請求項 →第12〜第16の実施例
請求項 →第17の実施例
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
【0150】
(第1の実施例:請求項1,2)
図1は、本発明の第1の実施例に係るセル接続型インバータ装置の概略構成を示す模式図である。
【0151】
図中、C1〜C4は同一構造の量子ドットセル(例えば、図18の5量子ドットセル)を示しており、これら量子ドットセルC1〜C4はループ状に配置され、量子ドットセルC1は入力セル、量子ドットセルC4は出力セルとして用いられている。量子ドットセルC1〜C4は、電子(図中の黒丸)の配置によって、基底状態ψ1 (二つの電子が左斜めに配列する状態),ψ0 (二つの電子が右斜めに配列する状態)の双安定状態を取り得る。
【0152】
このように構成されたセル接続型インバータ装置において、図1(a)に示すように、量子ドットセルC1に入力“0”が与えられ、量子ドットセルC1が基底状態ψ0 になると、量子ドットセルC2内の二つの電子がたとえ右斜めに配列しようとしても、クーロン反発力により、即座に左斜め方向に再配列されるので、量子ドットセルC2は基底状態ψ1 となる。
【0153】
このとき、量子ドットセルC4は、量子ドットセルC1の基底状態ψ0 に対して、基底状態ψ0 ,ψ1 の両方を取り得る。ところが、量子ドットセルC2の基底状態ψ1 に対して、量子ドットセルC3内の二つの電子は、クーロン反発力により、即座に右斜めに配列されるので、量子ドットセルC3は基底状態ψ0 となる。
【0154】
したがって、量子ドットセルC3の基底状態ψ0 に対して、量子ドットセルC4内の二つの電子は、クーロン反発力により、即座に左斜めに配列されので、量子ドットセルC4は基底状態ψ1 を取らざるを得ない。
【0155】
かくして、量子ドットセルC1に基底状態ψ0 となる入力“0”が与えられると、量子ドットセルC2,C3,C4の順で状態が確定し、量子ドットセルC4は基底状態ψ1 となる。入力セルである量子ドットセルC1と、出力セルである量子ドットセルC4とは互いに異なった基底状態となるので、量子ドットセルC4の状態を検出することにより、入力“1”とは異なる出力“0“が得られる。一方、図1(a)の状態において、量子ドットセルC1に入力“1”を与えると、量子ドットセルC1は基底状態ψ1 となる。
【0156】
量子ドットセルC1が基底状態ψ1 となると、量子ドットセルC4内の二つの電子がたとえ左斜めに配列しようとしても、クーロン反発力により、即座に右斜め方向に再配列されるので、量子ドットセルC4は基底状態ψ0 となる。
【0157】
量子ドットセルC4が基底状態ψ0 となると、量子ドットセルC3内の二つの電子がたとえ右斜めに配列しようとしても、クーロン反発力により、即座に左斜め方向に再配列されるので、量子ドットセルC3は基底状態ψ1 となる。
【0158】
量子ドットセルC3が基底状態ψ1 となると、量子ドットセル23内の二つの電子がたとえ左斜めに配列しようとしても、クーロン反発力により、即座に右斜め方向に再配列されるので、量子ドットセルC2は基底状態ψ0 となる。
【0159】
この結果、図1(a)の状態において、量子ドットセルC1に入力“1”を与えた直後では、量子ドットセルC2は、量子ドットセルC1の基底状態ψ1 に対して、基底状態ψ0 ,ψ1 の両方を取り得るが、量子ドットセルC4,C3の順で状態が確定するので、量子ドットセルC2は、基底状態ψ0 を取らざるを得ない。
【0160】
したがって、量子ドットセルC1に基底状態ψ1 となる入力“1”が与えられると、量子ドットセルC4,C3,C2の順で状態が確定し、量子ドットセルC4は基底状態ψ0 となるので、入出力関係はインバータのそれと同じになる。
【0161】
同様に、図1(b)の状態において、量子ドットセルC1に入力“0”を与えると、量子ドットセルC2,C3,C4の順で状態が確定し、量子ドットセルC4は基底状態ψ1 となるので、入出力関係はインバータのそれと同じになる。
【0162】
以上述べたように本実施例によれば、従来とは異なり、状態が不安定となる量子ドットセルが存在しないので、確実に、入力が“0”であれば出力が“1”,入力が“1”であれば出力が“0”となるセル接続型インバータ装置を実現できる。
【0163】
また、本実施例のセル接続型インバータ装置は、素子間に電極や配線を設け、電流により信号を伝達するのではなく、隣接する量子ドットセル間の物理的相互作用(クーロン相互作用)によって状態(信号)を伝播するため、電極,配線,信号電流が不要になる。このため、電極間や配線間に誘導性クロストークが生じるという問題や、電極や配線に存在する寄生容量により生じる容量性遅延などの問題が無くなる。また、電極や配線の作成の手間が省け、更に、入出力部分を除いて基本的には電流は流れないため、消費電力を極めて少なくできる。
【0164】
なお、本実施例では、量子ドットセルの具体例として、5量子ドットセルを挙げたが、図2に示すような4量子ドットセルを用いても良い。
【0165】
この場合、2つの基底状態ψ1 ,ψ0 における電荷の分布は、5量子ドットセルのそれと同様であるが、電子の遷移の仕方が異なる。すなわち、5量子ドットセルの場合は、中心の量子ドットを介して電子が四隅に遷移するのに対し、4量子ドットセルの場合は、直接、四隅の量子ドットに遷移することになる。
【0166】
このような4量子,5量子ドットセルは、例えば、n型AlGaAs/i型GaAsのような変調ドーピング構造を有するエピタキシャルウェハを用い、これに数10nm径の量子ドットをエッチングにより形成した後、アンドープのAlGaAs等の高バンドギャップ材料を上記エピタキシャルウェハ上に成長させるか、あるいはSiO2 膜等の絶縁膜で覆ってやることで実現できる。
【0167】
また、本実施例では、クーロン力を物理的相互作用とする量子ドットセルの場合について説明したが、磁気的相互作用など他の物理的相互作用をする量子ドットセルを用いても良い。
【0168】
(第2の実施例:請求項1,2)
図3は、本発明の第2の実施例に係るセル接続型OR装置の概略構成を示す模式図である。
【0169】
このセル接続型OR装置は、先の実施例のセル接続型インバータ装置に、量子ドットセルC5〜C8を付加した構成になっている。すなわち、量子ドットセルC2の右上に量子ドットセルC5、量子ドットセルC3の右上に量子ドットセルC6、量子ドットセルC3の右下に量子ドットセルC7、量子ドットセルC6の右に量子ドットセルC8を更に配置した構成になっている。
【0170】
ここで、量子ドットセルC4,C7は入力セルとして用いられ、量子ドットセルC8は出力セルとして用いられている。量子ドットセルC6は、量子ドットセルC2,C3,C5とともに第1のループを構成している。また、量子ドットセルC1〜C4で第2のループを構成している。
【0171】
このような構成であれば、図3(a)に示すように、入力が“0”,“0”の場合には、量子ドットセルC1,C3は基底状態ψ1 となる。このとき、量子ドットセルC3の基底状態ψ1 に対して、量子ドットセルC6は、基底状態ψ0 ,ψ1 の両方を取り得る。ところが、量子ドットセルC2は基底状態ψ0 、量子ドットセルC5は基底状態ψ1 と確定する結果、量子ドットセルC3は、量子ドットセルC5の基底状態ψ0 に対応して、電気的に安定な基底状態ψ0 を取ることなる。したがって、入力が“0”,“0”の場合には、量子ドットセルC8の出力は“0”となる。
【0172】
また、図3(b)に示すように、入力が“0”,“1”の場合には、量子ドットセルC1,C3は、それぞれ、基底状態ψ1 ,準基底状態ψS となる。
【0173】
ここで、準基底状態ψS とは、基底状態ψ1 ,ψ0 に比べては不安定な状態であるが、実用上は十分に安定な状態のものである。このような準基底状態ψS は従来のセル接続型OR論理装置には無かったもので、この準基底状態ψS の存在によって、従来は不可能であった安定動作が可能となっている。準基底状態ψS が現れる理由は明らかでは無いが、本願発明者等の研究によれば、出力セルが第1のループを構成していることが必要であることが分かっている。
【0174】
量子ドットセルC3の準基底状態ψS に対して、量子ドットセルC6は、基底状態ψ1 を取り、量子ドットセルC2は基底状態ψ0 を取り、そして、量子ドットセルC5は準基底状態ψS と確定する結果、量子ドットセルC6は、基底状態ψ1 を維持することになる。したがって、入力が“0”,“1”の場合には、量子ドットセルC8の出力は“1”となる。
【0175】
ここで、量子ドットセルC5が準安定状態ψS に確定する理由は以下のように考えられる。
【0176】
量子ドットセルC6の右側に、出力端としての量子ドットセルC8が存在するため、量子ドットセルC5を動かすよりも、量子ドットセルC6を動かす方が高いエネルギーを必要とする。したがって、量子ドットセルC6が準安定状態になるよりも、量子ドットセルC5が準安定状態になる方が、回路全体としてのエネルギー状態が低くなり、回路はエネルギー的に安定になる。また、量子ドットセルC8の代わりに、2個の量子ドットセルを用いても良い。
【0177】
同様に、図3(c)に示すように、“1”,“0”の場合には出力は“1”、図3(d)に示すように、“1”,“1”の場合には量子ドットセルC8の出力は“1”となる。
【0178】
すなわち、図3(c)に示すように、入力が“1”,“0”の場合には、量子ドットセルC4は基底状態ψ1 を取るので、量子ドットセルC1、量子ドットセルC2、量子ドットセルC3、量子ドットセルC6の順で、量子ドットセルC1,C2,C3,C6の状態が確定する。そして、量子ドットセルC6は基底状態ψ1 となるので、量子ドットセルC8の出力は“1”となる。
【0179】
また、図3(d)に示すように、入力が“1”,“1”の場合には、量子ドットセルC4は基底状態ψ1 を取るので、量子ドットセルC1、量子ドットセルC2、量子ドットセルC3、量子ドットセルC6の順で、量子ドットセルC1,C2,C3,C6の状態が確定する。そして、量子ドットセルC6は基底状態ψ1 となるので、量子ドットセルC8の出力は“1”となる。
【0180】
以上述べたように本実施例によれば、確実に、OR論理の入出力関係が得られる。
【0181】
(第3の実施例:請求項1,2)
図4は、本発明の第3の実施例に係るセル接続型AND装置の概略構成を示す模式図である。
【0182】
このセル接続型AND装置は、先の実施例のセル接続型インバータ装置に、量子ドットセルC5〜C8を付加した構成になっている。すなわち、量子ドットセルC3の左上に量子ドットセルC5、量子ドットセルC1の左上に量子ドットセルC6、量子ドットセルC1の左下に量子ドットセルC7、量子ドットセルC2の下に量子ドットセルC8を配置した構成になっている。
【0183】
ここで、量子ドットセルC1〜C4で第1のループが構成され、量子ドットセルC1,C3,C5,C6で第2のループが構成されている。
【0184】
このような構成であれば、出力セルとしての量子ドットセルC2が量子ドットセルC1,C3,C4とともにループを構成しているので、入力が“1”,“0”の場合には、図4(c)に示すように、量子ドットセルC1,C4が準基底状態ψS を取るようになり、確実に、AND論理の入出力関係が得られる。このループ構造によってこのセルの識別可能な状態を固定することができる。
【0185】
第2の実施例のように説明すると以下の通りである。
【0186】
まず、図4(a)に示すように、入力が“0”,“0”の場合には、量子ドットセルC6は基底状態ψ0 を取るので、量子ドットセルC5、量子ドットセルC3、量子ドットセルC1、量子ドットセルC2の順で、量子ドットセルC5,C3,C1,C2の状態が確定する。そして、量子ドットセルC2は基底状態ψ0 となるので、量子ドットセルC8の出力は“0”となる。
【0187】
また、図4(b)に示すように、入力が“0”,“1”の場合には、量子ドットセルC6は基底状態ψ0 を取るので、量子ドットセルC5、量子ドットセルC3、量子ドットセルC1、量子ドットセルC2の順で、量子ドットセルC5,C3,C1,C2の状態が確定する。そして、量子ドットセルC2は基底状態ψ0 となるので、量子ドットセルC8の出力は“0”となる。
【0188】
また、図4(c)に示すように、入力が“1”,“0”の場合には、量子ドットセルC6は基底状態ψ1 、量子ドットセルC7は基底状態ψ0 を取るので、量子ドットセルC1は準安定状態ψS となる。この結果、量子ドットセルC2は基底状態ψ0 となるので、量子ドットセルC8の出力は“0”となる。
【0189】
また、図4(d)に示すように、入力が“1”,“1”の場合には、量子ドットセルC6は基底状態ψ1 を取るので、量子ドットセルC1、量子ドットセルC3、量子ドットセルC4、量子ドットセルC2の順で、量子ドットセルC1,C3,C4,C2の状態が確定する。そして、量子ドットセルC2は基底状態ψ1 となるので、量子ドットセルC8の出力は“1”となる。
【0190】
なお、セル接続型OR装置のセル配置とセル接続型AND装置のセル配置とは、鏡映・回転に対して対称な関係になっている。
【0191】
上記第1〜第3の実施例の量子効果装置を集積化して、所望の論理回路を形成するには、例えば、基板上に量子ドットセルをマトリクス状に形成し、そして、必要でない量子ドットセルにイオンビーム等のエネルギービームを照射し、必要でない量子ドットセルを高抵抗化すれば良い。このように量子ドットセルがマトリクス状に形成された基板を利用することにより、容易に所望の論理回路を形成できるようになる。
【0192】
(第4の実施例)
図5は、本発明の第4の実施例に係るバリスティック電子を用いた散乱衝突型インバータ装置の概略構成を示す模式図である。ここでは、実現する系として、GaAs等の化合物半導体のヘテロ界面に生じる2DEG(2次元電子ガス)を想定している。
【0193】
図中、1は主エミッタ部を示しており、この主エミッタ部1は、システムクロックENに従って、第1の所定エネルギーとなるべく加速されたバリスティック電子を、エネルギーフィルタ3に向かって発進するようになっている。
【0194】
主エミッタ部1としては、例えば、図9に示すように、井戸層W1と障壁層Bと井戸層W2とで構成されたものを用いる。井戸層W1内の少なくとも1個以上の電子はトンネル効果によって障壁層Bに移り、引き続き、トンネル効果によって井戸層W2に移り、バリスティック電子e- として発進される。バリスティック電子e- の井戸層W1から井戸層W2への通過は、障壁層Bに与える電圧によって制御でき、このバリスティック電子e- の通過はシステム・クロック信号ENに従って所定のタイミングで行なわれる。また、井戸層W2に与える電圧によってバリスティック電子e- の加速電圧を制御できる。
【0195】
エネルギーフィルタ3は、第1の所定エネルギーを有するバリスティック電子が選択的にレシーバ4(受信手段)に受信されるように、バリスティック電子の経路を偏向するようになっている。具体的には、電極に電圧を印加する構成のもの、磁場領域を設ける構成のもの、または2次元電子ガス内の電子密度を変える電子密度プリズム等を用いた構成のものが挙げられる。
【0196】
レシーバ4は、例えば、図8に示すように、2DEG10上に受信部としてのオーミック電極13を囲むような制御電極11,12を設け、制御端子14,15を介して制御電極11,12に与える電圧によって、制御電極11,12の下部の2DEG10を空乏化した構造のものとする。このような構造であれば、制御電極11,12の間を抜けないと、オーミック電極13にバリスティック電子e- が到達しないので、レシーバとしての使用が可能となる。
【0197】
また、図5中、2は入力エミッタ部を示しており、この入力エミッタ部2は、システムクロックENに従って、第1の所定エネルギーとは異なる第2の所定エネルギーとなるべく加速された電子群を、主エミッタ部1から発信されたバリスティック電子に向かって、発進するようになっている。
【0198】
より詳細には、バリスティック電子がレシーバ4で受信されるようにするときは、入力エミッタ部2から電子群は発進されず、また、バリスティック電子がレシーバ4で受信されないようにするときは、入力エミッタ部2から電子群が発振され、2DEGの温度を上げることにより主エミッタ部1から発振されたバリスティック電子が散乱されるようになっている。
【0199】
これが実現されるように、主エミッタ部1,入力エミッタ部2およびレシーバ4の配置と、入力エミッタ部2から発進される電子速度が設定される。なお、入力エミッタ部2は、主エミッタ部1と同様な構成のもの、例えば、図9に示したもので良い。
【0200】
このように構成された散乱型インバータ装置の動作は以下の通りである。
【0201】
システムクロックENによって、主エミッタ部1から第1のバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2からは電子群を発進させない場合(入力がないとき)には、第1のバリスティック電子と2DEGとの間で散乱衝突は起こらないので、バリスティック電子は所定の第1のエネルギーを保ったままエネルギーフィルタ3に向かって進行する。したがって、電子群が発進されないときは、第1のバリスティック電子はレシーバ4で受信される。
【0202】
また、システムクロックENによって、主エミッタ部1から第1のバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2から電子群を発進させる場合には、第1のバリスティック電子と電子群によって温度が上がった2DEGとは時刻t1 で散乱衝突を起こすので、バリスティック電子は所定の第1のエネルギーを保てなくなる。したがって、入力エミッタ部2から電子群が発進されるとき(入力があるとき)は、第1のバリスティック電子はレシーバ4で受信されない。
【0203】
以上の結果をまとめると、表1に示すように、まず、電子群が無い場合、つまり、入力エミッタ部2から電子群が発進されない場合には、受信は有り、つまり、レシーバ4はバリスティック電子を受信する。
【0204】
【表1】
Figure 0003735386
一方、電子群が有る場合、つまり、入力エミッタ部2から電子群が発進される場合には、受信は無し、つまり、レシーバ4はバリスティック電子を受信しない。
【0205】
したがって、表1に示すように、電子群の有無をそれぞれ1,0、受信の有無をそれぞれ1,0に対応させれば、インバータの関係が得られる。
【0206】
以上述べたように本実施例によれば、量子効果領域の電子、つまり、バリスティック電子を用い、バリスティック電子と2DEGとの間の衝突散乱を利用することで、安定に動作するインバータ装置が得られる。また、情報の伝達を少数のバリスティック電子によって行っているので、従来のバイポーラトランジスタ等のトランジスタを用いたインバータ論理装置に比べて、高集積化,低消費電力化,高速動作化の点で格段に優れている。
【0207】
(第5の実施例)
図6は、本発明の第5の実施例に係るバリスティック電子を用いた散乱衝突型NOR装置の概略構成を示す模式図である。なお、図5のインバータ装置と対応する部分には図5と同一符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
【0208】
本実施例の散乱衝突型NOR装置は、先の実施例の散乱衝突型インバータ装置にもう一つ入力エミッタ部2aを付加した構成になっている。この入力エミッタ部2aから発進される電子群のエネルギーもバリスティック電子のそれと異なっている。
【0209】
本実施例では、入力エミッタ部2、入力エミッタ部2aから発振される電子群をそれぞれ第1、第2の電子群という。
【0210】
このように構成された散乱衝突型NOR装置の動作は以下の通りである。
【0211】
システムクロックENによって、主エミッタ部1からバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2,2aから第1,第2の電子群を発進させない場合には、バリスティック電子と2DEGとの間で散乱衝突は起こらないので、バリスティック電子は所定の第1のエネルギーを保ったままエネルギーフィルタ3に向かって進行する。したがって、第1,第2の電子群が発進されないときは、バリスティック電子はレシーバ4で受信される。
【0212】
また、システムクロックENによって、主エミッタ部1からバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2から第1の電子群を発進させ、入力エミッタ部2aから第2の電子群を発進させない場合には、バリスティック電子と第1の電子群によって温度が上がった2DEGとは時刻t1 で散乱衝突を起こすので、バリスティック電子は所定の第1のエネルギーを保てなくなる。したがって、バリスティック電子はレシーバ4で受信されない。
【0213】
また、システムクロックENによって、主エミッタ部1からバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2aから第2の電子群を発進させ、入力エミッタ部2から第1の電子群を発進させない場合には、バリスティック電子と第2の電子群によって温度が上がった2DEGとは時刻t2 で散乱衝突を起こすので、バリスティック電子は所定の第1のエネルギーを保てなくなる。したがって、バリスティック電子はレシーバ4で受信されない。
【0214】
また、システムクロックENによって、主エミッタ部1からバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2,2aから第1,第2の電子群を発進させる場合には、バリスティック電子と第1の電子群によって温度が上がった2DEGとは時刻t1 で散乱衝突を起こすので、バリスティック電子は所定の第1のエネルギーを保てなくなる。したがって、バリスティック電子はレシーバ4で受信されない。
【0215】
したがって、先の実施例のように、第1の電子群の有無をそれぞれ1,0、第2の電子群の有無を1,0、受信の有無を1,0に対応させれば、表2に示すように、NOR論理の関係が得られる。
【0216】
【表2】
Figure 0003735386
以上述べたように本実施例によれば、量子効果領域の電子、つまり、バリスティック電子を用い、バリスティック電子と温度が上がった2DEGとの間の衝突散乱を利用しているので、ゲート端子が無い構造にすることができ、この結果、従来のように、ゲート端子間のクロストークによって動作が不安定になるという問題はない。
【0217】
(第6の実施例)
図7は、本発明の第6の実施例に係るバリスティック電子を用いた散乱衝突型NAND装置の概略構成を示す模式図である。
【0218】
本実施例の散乱衝突型NAND装置は、先の実施例の散乱衝突型インバータ装置にもう一つ主エミッタ部1a,入力エミッタ部2a,エネルギーフィルタ3a,レシーバ4aを付加した構成になっている。
【0219】
本実施例では、主エミッタ部2aから発振されるバリスティック電子を第2のバリスティック電子という。
【0220】
このように構成された散乱衝突型NAND装置の動作は以下の通りである。
【0221】
システムクロックENによって、主エミッタ部1,1aから第1,第2のバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2,2aから第1,第2の電子群を発進させない場合には、第1のバリスティック電子と第1の電子群により温度が上がった2DEGとの間、並びに第2のバリスティック電子と第2の電子群により温度が上がった2DEGとの間で散乱衝突は起こらないので、第1,第2のバリスティック電子は所定のエネルギーを保ったままそれぞれエネルギーフィルタ3,3aに向かって進行する。したがって、第1,第2の電子群が発進されないときは、第1,第2のバリスティック電子はそれぞれレシーバ4,4aで受信される。
【0222】
また、システムクロックENによって、主エミッタ部1,1aから第1,第2のバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2から第1の電子群を発進させ、入力エミッタ部2aから第2の電子群を発進させない場合には、第1のバリスティック電子と第1の電子群によって温度が上がった2DEGとは時刻t1 で散乱衝突を起こすので、第1のバリスティック電子は所定の第1のエネルギーを保てなくなる。したがって、第1のバリスティック電子はレシーバ4で受信されず、第2のバリスティック電子だけがレシーバ4aで受信される。
【0223】
また、システムクロックENによって、主エミッタ部1,1aから第1,第2のバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2aから第2の電子群を発進させ、入力エミッタ部2から第1の電子群を発進させない場合には、第2のバリスティック電子と第2の電子群によって温度が上がった2DEGとは時刻t3 で散乱衝突を起こすので、第2のバリスティック電子は所定の第1のエネルギーを保てなくなる。したがって、第2のバリスティック電子はレシーバ4aで受信されず、第1のバリスティック電子だけがレシーバ4で受信される。
【0224】
また、システムクロックENによって、主エミッタ部1,1aから第1,第2のバリスティック電子を発進させ、入力エミッタ部2,2aから第1,第2の電子群を発進させる場合には、第1のバリスティック電子と第1の電子群によって温度が上がった2DEGとは時刻t1 で散乱衝突を起こし、第2のバリスティック電子と第2の電子群によって温度が上がった2DEGとは時刻t3 で散乱衝突を起こすので、第1,第2のバリスティック電子は所定のエネルギーを保てなくなる。したがって、第1,第2のバリスティック電子はレシーバ4,4aで受信されない。
【0225】
したがって、先の実施例のように、第1の電子群の有無をそれぞれ1,0、第2の電子群の有無を1,0、受信の有無を1,0(少なくとも一方のレシーバで受信されれば受信有りとする)に対応させれば、表3に示すように、NAND論理の関係が得られる。
【0226】
【表3】
Figure 0003735386
以上述べたように本実施例によれば、ゲート端子が無い構造にすることができるので、従来のように、ゲート端子間のクロストークによって動作が不安定になるという問題はない。
【0227】
本実施例では、実現する系として2DEGを想定したが、他の系、例えば、真空マイクロ・エレクトロニクス分野における真空空間とマイクロ・エミッターの系を利用することができる。
【0228】
図10(a)は、バリスティック電子e- の進行方向に垂直な面におけるエミッタ部のバンド図で、図10(b)はバリスティック電子e- の進行方向に垂直な面におけるバリスティック電子e- の衝突散乱領域におけるバンド図である。
【0229】
図10(a),(b)に示すように、2DEG系で、エミッター部とバリスティック電子e- とが相互作用する領域の電子密度を変化させ、衝突散乱領域におけるクーロン・ポテンシャルのスクリーニング効果を抑制し、バリスティック電子と電子とのクーロン相互作用を強めることにより、より安定した動作を行なわせることができる。
【0230】
図10(c)は、バリスティック電子e- の進行方向に平行な面における衝突散乱領域のバンド図である。上記の場合、図10(c)に示すように、エミッター部から衝突散乱領域に向かって伝導帯の端Ec が傾斜しているため、宇宙線等によって突発的な雑音電子が発生すると、雑音電子群がエミッター部の方向に走行し、エミッター部からのバリスティック電子の発進がクーロン反発力によって自動的に停止するため、誤動作を防止できる。
【0231】
(第7の実施例)
図11は、本発明の第7の実施例に係る電子波方向性結合スイッチの概念図である。
【0232】
この電子波方向性結合スイッチは、大きく分けて、量子障壁層23,量子井戸層25および量子障壁層27で構成され、共鳴トンネル構造(二重障壁構造)を有する第1の導波路Aと、量子障壁層24,量子井戸層26および量子障壁層28で構成され、共鳴トンネル構造(二重障壁構造)を有する第2の導波路Bと、これら二つの導波路を結合するための量子障壁層29とからなる。
【0233】
量子障壁層29の伝導帯レベルは量子井戸層25,26のそれよりも高くなっている。また、上記共鳴トンネル構造は入力側21,22と出力側30,31との間の電位差に対応する電圧でピーク電流が流れるように設計されている。なお、図中、21,22は入力導波路、30,31は出力導波路、矢印は電子(電子波)を示している。また、各導波路の両側にはスイッチング制御のためのゲート電極(不図示)が設けられている。
【0234】
このように構成された電子波方向結合スイッチによれば、入力導波路21,22に入力された電子波は量子障壁層23,24をトンネルし、量子井戸層25,26に注入される。この注入された電子波はただちに量子障壁層27,28をトンネルし、出力導波路30,31に出力される。
【0235】
共鳴トンネル効果は、室温でもピーク電流とバレイ電流との比(ピーク電流/ベレイ電流)が十分にとれるため、従来の電子波方向性結合スイッチ(例えば、 C.C.Eugster and J.A.del.Alamo:Phys.Rev.Lett.,67(1991)3586)のように、動作温度の上限が低い(例えば10K)という問題はない。
【0236】
本実施例による電子波方向結合スイッチでは、量子障壁層23,27,24,28の厚さやその高さを適度に調整することによって、量子井戸層25,26の離散化された共鳴エネルギー準位を調整し、入力側と出力側に応じたバイアス電圧でピーク電流が流れるようにすることができる。
【0237】
例えば、電子波の進行方向に対する、量子障壁層23,27,24,28、および量子井戸層25,26の厚さが5nの導波路A,Bを形成すると、バイアス電圧0.15Vでピーク電流が生じ、電子波が流れるようになる。
【0238】
したがって、量子障壁層、量子井戸層の厚さや高さを調整することによって、任意のバイアス電圧でピーク電流を生じさせ、電子波を流すことができる。
【0239】
また、量子井戸層を金属で構成し、量子障壁層を絶縁物で構成することによっても、共鳴トンネル構造は実現できるので、物質系に対する制限が大幅に緩和される。
【0240】
すなわち、本発明によれば、量子井戸層、量子障壁層の材料として、GaAs系、Si系等の半導体、Ti、Al等の金属、酸化アルミニウム、酸化珪素等の絶縁物の中から種々選択して使用できる。
【0241】
図11において、量子井戸層25,26にそれぞれ電極を形成し、電極に電圧を印加することによって、量子井戸層25,26の量子井戸準位を調整することにより、素子のスイッチングを行なえるようになる。
【0242】
量子井戸層25の量子井戸準位と量子井戸層26の量子井戸準位とを一致させることにより、入力導波路22から入力された電子波は量子井戸層26に注入され、この電子波が量子障壁層29をトンネルし量子井戸層25に注入され、この注入された電子波は量子障壁層27をトンネルし出力導波路30に出力される。同時に入力導波路22から量子井戸層26に注入された電子波は、量子障壁層28をトンネルし、出力導波路31に出力されるる。
【0243】
一方、量子井戸層25の量子井戸準位と量子井戸層26の量子井戸準位とを一致させない場合には、量子井戸層26から量子井戸層25に電子波はトンネルしないので、出力導波路30には電子波は出力されない。
【0244】
図12,図13は、本実施例に係る電子波方向性結合スイッチの具体的な構成を示す斜視図であり、図12は平面型の電子波方向性結合スイッチ、図13は積層型の電子波方向性結合スイッチを示している。なお、図11の電子波方向性結合スイッチと対応する部分には図11と同一符号を付してある。
【0245】
量子障壁層23,24,27,28は例えばAlGaAsで形成し、量子井戸層25,26は例えばGaAsで形成する。なお、量子障壁層29は、量子障壁層23,24,27,28と同じ混晶比のAlGaAsでも良いし、或いは混晶比の違うAlGaAsでも良い。
【0246】
また、図中、32,34はSiO2 などの絶縁物で形成されたゲート絶縁膜を示し、33,35はAlなどの導電物で形成されたゲート電極を示している。
【0247】
ゲート電圧を印加したときに、量子井戸層25,26が対称となるように設計しておけば、ゲート電圧の非印加時には電子波(電子)は結合部29を通り抜け、一方、ゲート電圧の印加時には量子井戸層25,26の実質的なポテンシャルが変化し、非対称な量子井戸層25,26が形成されるため、電子波(電子)は結合部29を通り抜けることができない。したがって、ゲート電圧の印加の有無によって、電子波(電子)のスイッチングを実行できる。
【0248】
なお、積層型の電子波方向性結合スイッチ(図13)の場合、量子井戸層25をフロントゲート、量子井戸層26をバックゲートとすることができる。また、積層型の電子波方向性結合スイッチの場合、エピタキシャル成長によって容易に形成できるという利点がある。また、本実施例ではGaAs/AlGaAs系の場合について説明したが、一般には、バンドギャップが異なる二つ以上の物質で構成することができる。
【0249】
(第8の実施例)
図14は、本発明の第8の実施例に係る電子波方向性結合スイッチの概念図である。また、図15,図16は、本実施例に係る電子波方向性結合スイッチの具体的な構成を示す斜視図であり、図15は平面型の電子波方向性結合スイッチ、図16は積層型の電子波方向性結合スイッチを示している。
【0250】
本実施例の電子波方向性結合スイッチが先の実施例のそれと異なる点は、量子井戸層25,26中にそれぞれ量子障壁層45,46を設け、各導波路内に3重障壁層構造を構築したことにある。なお、図中、47,49はゲート絶縁膜、48,50はゲート電極を示している。
【0251】
このように構成された電子波方向性結合スイッチでも先の実施例と同様な効果が得られるのは勿論のこと、本実施例の場合、一つの導波路内に二つの量子井戸が存在するので、この量子準位をその外側に設けたゲート電極により微妙に調整することが可能となる。すなわち、四つのゲート電極33,35,48,50により入力電子波(電子)の量を制御することが可能となる。
【0252】
また、セルは量子ドットセル以外に、例えば、二つの方向磁石によって、一つのセルを構成し、磁気による物理的相互作用を及ぼすような磁気結合セルであっても良い。
【0253】
(第9の実施例)
図22は、本発明の第9の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す平面図である。
【0254】
図中、101,102は正方形の量子箱を示しており、量子箱101は電子が1個入っている状態のもので、量子箱102は電子が入っていない状態のものである。また、103は電子に対する障壁層を表し、量子箱101,102とともに量子人工分子としての5量子ドットセル(基本セル)を構成している。
【0255】
本実施例の基本セルが従来のそれと異なる点は、量子箱の形状が正方形になっており、基本セル内の中心の1個の量子箱と基本セルの四隅の4個の量子箱とはそれぞれの量子箱の角で接触し、更に、横および縦に並んだ量子箱間の距離が、横および縦に並んだ量子箱間で電子のトンネル効果により移動が起きない程度の大きさになっていることにある。換言すれば、量子箱間の距離が、電子のド・ブロイ波長よりも十分に大きくなっている。
【0256】
このように構成された基本セルによれば、電子は必ず中心の量子箱を経由して双安定状態間を遷移するため、一旦、“0”状態または“1”状態が確定すると、別の状態に遷移するには、電子は中心の量子箱を経由せねばならない。
【0257】
バイアスがない状態のとき、電子が中心の量子箱を経由しようとすると、他の電子とのクーロン反発力が大きく働き、他の量子箱へのに電子の移動が禁止される。この結果、バイアスを取り去っても(1,0)の状態が維持され、また、しきい値エネルギーが一定に維持される。
【0258】
したがって、本実施例の基本セルを用いれば、従来困難であった不揮発性のメモリや、論理回路を形成できるようになる。また、入力セルにバイアスが印加された場合には、隣接するセル間のエネルギー状態が安定になるように、隣接するセル中の電子は移動する。
【0259】
論理回路の場合には、図1、図3、図4に示すように、基本セルを配置すれば、それぞれ、インバータ回路、OR回路、AND回路を構成できる。
【0260】
図23は、図22の量子効果装置の断面図である。このような構造はMBEやMOCVDなどのエピタキシャル成長技術を用いた通常の選択成長技術を駆使して、半導体基板上に半導体層を順次積層することにより作成できる。例えば、以下のようにして作成する。
【0261】
まず、半絶縁体GaAs基板104上に電子に対する障壁層となる高バンドギャップ材料であるAlx Ga1-x As層105A,105Bを順次積層する。
【0262】
次に量子箱となる領域106のAlx Ga1-x As層105Bをエッチングした後、そこに量子箱となるGaAsを埋め込む。
【0263】
次に障壁層となるAlx Ga1-x As層105Cを形成した後、ドナー107を基本セル当たり2個プレーナードープし、その上にAlx Ga1-x As層105Dを形成する。
【0264】
この後、必要な場合には、Alx Ga1-x As層105D上に酸化膜等の保護膜を形成する。なお、Alのモル比xは任意の値を用いて良い。
【0265】
この場合、変調ドープによってドナー1−7から量子箱となるGaAs106中に選択的に電子が供給され、双安定状態を示すセルが形成される。
【0266】
(第10の実施例)
図24は、本発明の第10の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す平面図である。
【0267】
1つの基本セル内で、同一平面上に4つの四角い量子箱108,109が辺々相直角平行、且つそれぞれ電子がトンネル移動できないくらい離れて(電子のド・ブロイ波長よりも十分離れて)配置されている。
【0268】
4つの四角い量子箱108,109が形成された平面の垂直方向には、1つの量子箱110が4つの量子箱108,109と電子のトンネルが生じる程度に近接して配置されている。ここで、量子箱108は電子が1個入っている状態のもので、量子箱109は電子が入っていない状態のものである。なお、111は電子に対する障壁層を示している。
【0269】
このように構成された基本セルによれば、4つの量子箱108,109の間で電子がトンネル移動できないため、電子は必ず上層の5番目の(中心の)量子箱110を経由して移動することになる。すなわち、本実施例の量子箱110は第9の実施例の量子箱102と同じように作用し、第9の実施例と同様な効果が得られる基本セルが構成されている。
【0270】
また、本実施例の場合、最初に同一面上に均一に複数(4以上)の量子箱を形成し、その後で繋ぎたいところだけ4つの量子箱の上に5つ目の量子箱を形成すれば作成できるので、プロセスが簡易化されるばかりでなく、プロセス上のマージンも大きくとることが可能である。更に、エピタキシャル成長を用いれば、同一平面上の4つの量子ドットと5つ目の量子箱との間の距離は原子層レベルで制御できるため、極めて設計の自由度が高くなる。
【0271】
図25は、図24の量子効果装置の断面図である。このような構造は第9の実施例と同様に、MBEやMOCVDなどのエピタキシャル成長技術を用いた通常の選択成長技術を駆使して、半導体基板上に半導体層を順次積層することにより作成可能である。例えば、以下のようにして作成する。
【0272】
まず、半絶縁体GaAs基板112上に電子に対する障壁層となる高バンドギャップ材料であるAlx Ga1-x As層113A,113Bを順次形成した後、4つの量子箱となる領域114をエッチングし、そこに量子箱となるGaAsを埋め込む。
【0273】
次に障壁層としてのAlx Ga1-x As層113C,113Dを順次形成した後、5つ目の量子箱となる領域15のAlx Ga1-x As層113Dをエッチングし、そこを量子箱となるGaAsで埋め込む。
【0274】
次に障壁層としてのAlx Ga1-x As層113Eを形成した後、ドナー116を単位セル当たり2個プレーナードープし、その上にAlx Ga1-x As層113Fを形成する。その上の保護膜等は必要に応じて適宜形成する。なお、Alのモル比xは任意の値を用いて良い。この場合、変調ドープによって、ドナー116から量子箱114中に電子が選択的に供給され、双安定状態を示す基本セルが形成される。
【0275】
なお、第9および第10の実施例において、量子箱/障壁層の材料の組み合わせとして、GaAs/AlGaAsを用いたが、その代わりに、InGaAs/InP、InGaAs/AlInAs、GaSb/AlSb、GaAs/GaPを用いても良いし、更に、Si/SiO2 を用いても良いし、あるいは電子と正孔を空間的に分離して再結合を防止するためにInAs/GaSb、(InAs)(GaAs)/(GaSb)(GaAs)のようなタイプのヘテロ接合の組み合わせを用いても良い。
【0276】
(第11の実施例)
図26は、本発明の第11の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す平面図であり、図26(a)は5量子ドットセル、図26(b)は4量子ドットセルを示している。図中、206は円形の量子箱を示しており、量子箱206はそのバンドギャップよりも大きい基板207内に形成されている。
【0277】
本実施例の特徴は、電子を放出する不純物原子を各セル2つ、図中の領域201と領域202、あるいは領域203と領域204に注入することにある。この結果、電子はお互いのクーロン相互作用によってイオンから分離し、低温動作の場合でも、バンドギャップの小さい量子箱に確実に局在するようになる。
【0278】
一方、従来の単なる変調ドープにより作成された量子ドットセルを低温動作させると、変調ドープされた原子がイオンと電子に分かれず安定な状態に入ってしまう恐れがあり、量子箱に電子が局在しなくなる可能性がある。
【0279】
このような不純物原子の注入は基板207に対して行なっても良いし、あるいは基板207上に半導体層を形成し、この半導体層の上記注入領域に対応した部分にアトミックマニュピュレーションなどを用いて注入しても良い。
【0280】
(第12の実施例:請求項
図27は、本発明の第12の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図である。
【0281】
図中、C2,C3は4量子ドットセル(量子人工分子)を示している。本実施例の特徴は、これら4量子ドットセルC2,C3上に絶縁層205を介して従来なかった別の4量子ドットセルC1を設け、3次元構造にしたことにある。
【0282】
図31は、本実施例の4量子ドットセルについての基底状態と第1励起状態とのエネルギー準位差(エネルギー固有値差)の外力として働くセルの電子分布の値(分極関数の値)の依存性を示す図である。また、図32は従来の4量子ドットセル(4量子ドットセルC1がないもの)のそれである。
【0283】
図31、図32によれば、本実施例におけるエネルギー固有値差は従来のそれの2倍以上であることが分かる。すなわち、量子セル間の距離を短くしなくても、基底状態と第1励起状態とのエネルギー準位差が十分に大きくなる。このようにエネルギー準位差が従来よりも十分に大きくなれば、高温の動作が可能となる。
【0284】
ここで、上述したように、量子セル間の距離を短縮する必要がないので、量子セルの双安定状態が乱され、量子効果デバイスとして機能の失われるという問題は生じない。
【0285】
エネルギー準位差が大きくなる理由の詳細は不明であるが、別の4量子ドットセルC1を設けることにより、量子セル間の電子分布の間にフィードバックがかかり合う結果、量子セル内の双安定状態がより安定するからだと推測される。
【0286】
また、本実施例の量子ドットセルC1〜C3からなる3次元構造のセルを基本セルとし、図1、図3、図4に示すように、基本セルを配置すれば、それぞれ、インバータ回路、OR回路、AND回路を構成できる。
【0287】
(第13の実施例:請求項
図28は、本発明の第13の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図である。
【0288】
本実施例は第12の実施例の変形例であり、4量子ドットセルC2,C3の下部に絶縁層を介して更に別の4量子ドットセルC4を設けたことが相違点である。
【0289】
(第14の実施例:請求項
図29は、本発明の第14の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図である。
【0290】
本実施例は、第1の実施例で示したループ構造を3次元的に配置したものであって、4つの4量子ドットセルC1〜C4のうち、2つの量子ドットセルを別の平面上に構成することにより、隣り合う量子セルの結合を強くしたものである。
【0291】
(第15の実施例:請求項
図30は、本発明の第15の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図である。
【0292】
本実施例の特徴は、4量子ドットセルC1の真上に絶縁層205を介して別の4量子ドットセルC2を設け、3次元構造にしたことにある。本実施例の効果は上記第12〜第14の実施例のそれよりも大きい。すなわち、基底状態から3つ高い励起状態でのQIC動作が可能となり、室温(301K)でも使用できるようになる。
【0293】
(第16の実施例:請求項
図45は、本発明の第16の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図である。
【0294】
本実施例はインバータ回路の3次元構造を応用したものである。これはこれまで一つの平面上に構成されていた種々のセルの配置を絶縁層もしくはセルに使用している半導体よりもバンドギャップの大きな半導体層を介して別の平面上に全く同じ配置にすることにより、基底状態でのQIC動作がより安定になり、室温(301K)でも動作できるようになったものの一例である。
【0295】
上記第12〜第16の実施例のように、3次元的に量子セルを配置すれば、横スケールの縮小が図れる他、アウトプットを上下に形成でき、多機能の回路を構成できるようになる。すなわち、量子セルを従来のように同一平面上に2次元的に配置すると、アウトプットは上記平面の一方に限定され、設計の自由度は低いものとなる。
【0296】
(第17の実施例:請求項
図33は、本発明の第17の実施例に係る量子効果装置(量子配線)の概略構成を示す模式図である。
【0297】
図中、301はGaAs/AlGaAsやSi/SiGeなどの半導体ヘテロ界面に形成される2DEG(中央の十字部分を除く)を示しており、この2DEG301は、粒子性が顕在化した高速弾道電子であるバリスティック電子(弾道電子)が走行する伝達空間として用いられる。バリスティック電子の軌跡は図中実線で示してある。
【0298】
2DEG301の中央部には、9個の量子人工分子303が十字型に形成されている。隣接した量子人工分子303は互いに近接して並んでいる。量子人工分子303は5個の量子人工原子(5量子ドットセル)302からなり、2個の電子がトンネル効果で2つの安定状態配置(黒丸は電子が存在する量子箱、白丸は電子が存在しない量子箱を示している)が生ずるように設計されている。十字型部分の量子人工分子間の情報伝達は、電子の移動ではなくクーロン相互作用による状態遷移を利用している。
【0299】
また、図中、E1 〜E5 はバリスティック電子を出射し、且つその出射方向を可変できる電子エミッタ(情報伝達制御手段)を示し、また、R1 〜R4 はバリスティック電子を受信する電子レシーバ(検出手段)を示している。
【0300】
このように構成された量子効果装置によれば、電子エミッタから出射したバリスティック電子が量子人工分子に衝突し、この量子人工分子の状態が変化する。この状態変化した量子人工原子はその隣の量子人工分子の状態を変化させる。すなわち、連鎖的に量子人工分子の状態が変化する。
【0301】
そして、出力としての量子人工分子列端部の量子人工分子の状態は、バリスティック電子と量子人工原子とのクーロン相互作用による軌道変化で読みとられる。
【0302】
具体的に説明すると、例えば、まず、電子エミッタE4 から出射したバリスティック電子が図中の下方の入力端としての量子人工原子302に衝突すると、その状態変化は上方向に連鎖的に発生する。
【0303】
量子人工分子列端部の出力端として量子人工分子である図中上方の量子人工原子302の状態変化は、電子エミッタE1 から出射したバリスティック電子と量子人工原子302とのクーロン相互作用によるバリスティック電子の軌道変化により読み取られる。
【0304】
例えば、上記出力側の量子人工原子302の状態が変化していない場合にはバリスティック電子は電子レシーバR1 に入射し、一方、状態が変化している場合には電子レシーバR2 に入射するという違いより、軌道変化を読み取ることができる。
【0305】
次にバリスティック電子と量子人工分子との衝突過程について説明する。衝突過程としては、図34に示すような電離、励起シフト、トンネルシフト、トラップによるものがある。
【0306】
ここで、電離とは、バリスティック電子と量子人工分子内の電子とのクーロン相互作用により、量子人工分子内の電子が十分なエネルギーを獲得し、量子人工分子の束縛を受けなくなることである。
【0307】
励起シフトとは、バリスティック電子と量子人工分子内の電子とのクーロン相互作用により、電離の場合よりも低いが、量子人工分子内の電子が量子人工原子からの束縛を受けない程度のエネルギーを獲得した後、基底状態に戻り隣の量子人工原子に移動することである。
【0308】
トンネルシフトとは、トンネル効果により隣接する量子人工原子間で電子の移動が起こることである。
【0309】
トラップとは、バリスティック電子が量子人工原子にトラップされ、バリスティック電子が消滅することである。
【0310】
本実施例によれば、入力信号、出力信号として、バリスティック電子を用いることができるようになる。
【0311】
(第18の実施例)
図35は、本発明の第18の実施例に係る量子箱の形成方法を示す工程断面図である。
【0312】
まず、図35(a)に示すように、主面が(001)面のGaAs基板401上に厚さ1.5μmのAl0.7 Ga0.3 As膜402(第1の半導体膜)を分子線エピタキシ(MBE)法を用いて成長形成する。
【0313】
この後、固体S(硫黄)ソース源のシャターを開いて、厚さ1原子のS層403(表面終端層)をAl0.7 Ga0.3 As膜402上に成長形成する。この場合、c(4x4)超構造から(2x1)超構造に変化したところで、シャターを閉じる。
【0314】
このようにして作成されたS層403によりAl0.7 Ga0.3 As膜402の表面をSで終端できる。すなわち、Al0.7 Ga0.3 As膜402の表面のAsはSに置き換わっている。
【0315】
次に図35(b)に示すように、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、10-3PaのH2 雰囲気中で、Pt探針404に−3V、50msのパルスを印加する。
【0316】
この結果、1パルスについて、Al0.7 Ga0.3 As膜402の表面の1原子Sが反応して、このSはH2 Sの形で脱離する。一方、Pt探針404の表面ではH2 が解離吸着してH原子が生成される。このH原子はパルスの印加によってPt探針404から放出され、Al0.7 Ga0.3 As膜402の表面のS原子に衝突する。
【0317】
この後、隣のS原子の位置にチップPt探針404を移動させ、同様にSをH2 Sの形で脱離させる。このS脱離工程を繰り返して所望の大きさの窓を形成する。
【0318】
次にMBE法を用いて550℃でGaをGaAs基板403上に蒸着させる。このとき、GaはS原子終端表面では付着せず、GaはSがない領域の窓に吸着して核を作る。その結果、蒸着を続けると、図35(c)に示すように、窓上だけにGa液滴405(半導体液滴)が生じる。
【0319】
次にAsソースのシャッタを開けてAsを供給すると、図35(d)に示すように、Ga液滴405にAsが吸収されて、円柱状のGaAs結晶406(半導体結晶)が成長形成される。そして、Asソースのシャッタを開けたまま基板温度を650℃に上げて、表面の露出したSを蒸発させる。
【0320】
最後に、図35(e)に示すように、Al0.7 Ga0.3 As膜407(第2の半導体膜)を成長形成して、GaAs量子箱の基本構造が完成する。
【0321】
本実施例の方法にあっては、S原子終端表面に形成した窓の大きさはGaの臨界核より大きいことが必要である。これはGaが臨界核よりも小さいと、Gaの成長は進まず、Ga液滴405が成長形成されないからである。臨界核とは図36に示すように、自由エネルギーが最大になる核の大きさである。
【0322】
臨界核の大きさは2σTv/L(Tv−T)で与えられる。ここで、σは表面エネルギー、Tvは沸点、Lは蒸発の潜熱、Tは基板温度である。
【0323】
上記式により臨界核の大きさを求めると、0.3nm程度となる。しかし、実験によれば、表面Sのわずかの拡散などの影響を考慮すると、最小窓の大きさは1nm程度必要であることが分かった。また、GaAs量子箱の大きさとそれらの距離は、Gaの蒸着量とS原子終端表面の窓の間隔とにより、0.1nmのオーダで制御できる。
【0324】
GaAs量子箱の大きさは0次元電子状態を実現するために10〜30nm程度が好ましく、また、GaAs量子箱の隙間は電子のトンネリングが容易に生じるように1〜3nm程度が好ましい。
【0325】
なお、上記実施例では表面不活性化のためにSを用いたが、その代わりに、Seを用いても良い。また、量子箱となる化合物半導体結晶の伝導帯および価電子帯は、その周辺のバリア層の半導体のそれらより電子に対するエネルギー準位が低いことが望ましい。例えば、InP量子箱に対してはAl0.48In0.52Asをバリア層として用いると良い。
【0326】
以上詳説したように本実施例によれば、従来のフォトリソグラフィ、ウエットエッチング、ドライエッチングを用いた量子箱の作成方法に代わって、結晶成長による量子箱の作成が可能となり、この結果、高寸法精度、低結晶欠陥の量子箱が得られるようになる。したがって、0次元電子状態の特性が顕著で、微小電位の印加でもトンネリング特性が容易に得られるようになる。
【0327】
(第19の実施例)
図38は、本発明の第19の実施例に係る回転方式論理装置(情報伝達経路)の概略構成を示す模式図である。
【0328】
図中、B1,B2は回転ユニット(B1は入力用回転ユニット、B2は出力用回転ユニット)を示しており、具体的には、図37(a)に示すような“+”形状タイプ、図37(b)に示すような“T”形状タイプのものがある。
【0329】
図37において、501は支持基板を示しており、この支持基板501には縦軸部材502が支持されている。この縦軸部材502には、一端が正、他端が負に帯電した双極子としての回転部材503が設けられ、この回転部材503は縦軸部材502に対して垂直面を描く回転が可能になっている。
【0330】
このような回転ユニット、例えば、図37に示すように、シリコン等からなる支持基板501上に作製したAu等の金属ドット504に選択化学吸着した高分子を用いる。あるいはマイクロマシーン技術を用いて形成する。また、配向性を有する物質である液晶を用いても形成できる。
【0331】
本実施例の回転方式論理装置は、二つの回転ユニットB1,B2により構成されている。また、図38中、Aは入力としての外部電荷を示しており、Qは回転ユニットB2の右端の極性(出力)を検出する検出手段を示している。また、二つの回転ユニットB1,B2は互いに接触していない。
【0332】
また、外部電荷子Aの電荷値は、回転部材502のそれより大きくしてあり、これにより、他の回転ユニットの回転部材とのクーロン相互作用による誤動作や不安定動作を防止している。
【0333】
このように構成された回転方式論理装置の動作は以下の通りである。
【0334】
例えば、回転ユニットB1の近辺に配置した外部電荷Aの極性が正の場合であれば、クーロン相互作用によって安定状態になるまで、回転ユニットB1の回転部材は回転し、つまり、外部電荷A側に回転ユニットB1の回転部材の負端部が固定するまで回転する。
【0335】
一方、回転ユニットB2の回転部材は回転ユニットB1の回転部材の回転に伴って回転し、そして、回転ユニットB1の回転部材の固定に伴って、回転ユニットB1の正端部側に回転ユニットB2の負端部が固定する。すなわち、検出手段Q側には回転ユニットB2の回転部材の正端部が固定する。
【0336】
したがって、出力電荷Aの極性と検出手段が検出する極性とは同じになり、回転ユニットB1と回転ユニットB2とにより構成された本実施例の回転方式論理装置は、情報伝達する情報伝達経路(従来の配線に相当)として機能する。
【0337】
また、本実施の場合、クーロン相互作用による回転部材の配向(回転部材の分極方向)の連鎖的な伝達により情報を伝達しているので、情報伝達のために配線に電流を流す必要がなくなり、消費電力や発熱の問題を改善できる。
【0338】
なお、本実施例の回転方式論理装置の入出力関係(出力電荷Aの極性と検出手段が検出する極性との関係)を表4に示す。
【0339】
【表4】
Figure 0003735386
(第20の実施例)
図65は、本発明の第20の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す断面図である。
【0340】
この量子効果装置は、半導体基板上にSi−Ge系半導体層を積層してなる変調ドープ構造を有している。この量子効果装置の製造方法は、例えば、以下の通りである。
【0341】
まず、Si基板621上に電子に対する障壁層となるSix Ge1-x 層622a,622bを順次積層する。
【0342】
次に量子箱となる領域623のSix Ge1-x 層622bをエッチングした後、そこに量子箱となるSiを埋め込む。
【0343】
次に障壁層となるSix Ge1-x 層622cを形成した後、このSix Ge1-x 層622cにドナー624を単位セル当り2個プレーナドープ(planar dope) し、その上にSix Ge1-x 層622dを形成する。
【0344】
このような構造の量子箱は、MBEやCVDなどのエピタキシャル成長技術を用いて作製できるが、特にガスソースMBEを用いれば、急峻なSiGe系ヘテロ界面を形成できるので、良質な量子箱を作製することが可能となる。
【0345】
ここで、Six Ge1-x 層622aと下地のSi基板621との間の格子不整合を緩和するために、Six Ge1-x 層622aは厚く形成する。また、Six Ge1-x 層622aはエピタキシャル成長法により形成されたSiバッファ層上に形成される場合もあるが、この場合も、同様な理由により、Six Ge1-x 層622aは厚く形成することが好ましい。
【0346】
このように厚いSix Ge1-x 層622aを形成することにより、無歪みのSix Ge1-x 層622a,622b,622cが得られる。このため、これら無歪みのSix Ge1-x 層622a,622b,622c中に量子箱として形成されるSiは引っ張り歪みを受ける。この結果、Siの伝導帯(conduction band) がSix Ge1-x よりもエネルギー的に低くなる。したがって、電子はSi量子箱中に有効に閉じ込められる。
【0347】
このとき、Si−Six Ge1-x 系はいわゆるタイプII超格子となり、伝導帯の底と価電子帯(valence band)の頂上とが分離される.これにより、電子とホール(hole)の再結合が起こり難くなるので、量子効果装置は安定な動作を長い間行なえるようになる。
【0348】
なお、Six Ge1-x 層のSiの組成比xの値としては種々の値を用いても良いが、特に、Si量子箱に接する部分のSix Ge1-x のx値を、Si基板に接する部分のSix Ge1-x 層のx値よりも小さく取ることが望ましい。このようにすることにより、Si量子箱に接するSix Ge1-x 層に適度な圧縮歪が加えられる。この結果、Six Ge1-x 層の伝導帯が高エネルギー側にシフトし、伝導帯のバンド不連続が大きくなる。したがって、電子のより強い閉じ込めが可能となる。
【0349】
(第21の実施例)
図40は、本発明の第21の実施例に係る回転方式論理装置(ANDゲート)の概略構成を示す模式図である。また、表6は、本実施例の回転方式論理装置の入出力関係を示す真理表である。
【0350】
【表5】
Figure 0003735386
図中、Bは入力としての外部電荷Aとは別の入力としての外部電荷を示し、また、Cは負の固定電荷(バイアス電荷)を示し、そして、B3は回転ユニットB1,B2とは別の回転ユニットを示している。本実施例の場合、回転ユニットB1,B2が入力用回転ユニットとして用いられ、回転ユニットB3が出力用回転ユニットとして用いられている。
【0351】
回転ユニットB1,B2の回転部材はその近辺にそれぞれ配置された外部電荷A,Bの極性に従ってクーロン相互作用により安定状態になるまで回転する。回転ユニットB3の回転部材は回転ユニットB1,B2の回転部材と固定負電荷Cによるクーロン相互作用により安定状態になるまで回転する。検出手段Qは入力端子A,Bの極性が伴に正のときだけ負を検出する。したがって、+を1、−を0に対応することにより、ANDゲートを構成できる。
【0352】
(第22の実施例)
図41は、本発明の第22の実施例に係る回転方式論理装置(ORゲート)の概略構成を示す模式図である。また、表7は、本実施例の回転方式論理装置の入出力関係を示す真理表である。
【0353】
【表6】
Figure 0003735386
本実施例の回転方式論理装置が第21の実施例のそれと異なる構成上の点は、負の固定電荷Cの代わりに正の固定電荷C´を用いたことにある。このような構成であれば、検出手段Qは外部電荷A,Bの極性が伴に負のときだけ負を検出する。したがって、+を1、−を0に対応することにより、ORゲートを構成できる。
【0354】
なお、上記回転方式論理装置の実施例では基本的な機能(伝達、インバータ、アンドゲート、オアゲート)のものしか説明しなかったが、これらを適宜組み合わせることにより、MOSFET等の通常の半導体素子を用いた論理回路と同様な論理を行なう回転方式論理装置を得ることができる。この場合ももちろん消費電力、発熱の点で従来よりも優れたものとなる。
【0355】
上記回転方式論理装置の実施例は、電荷極性に従うクローン相互作用で説明しているが、これらは磁極性に従う磁気相互作用でも同様の効果を得ることができる。
【0356】
(第23の実施例:請求項3)
図46は、本発明の第23の実施例に係るセル接続型信号方向転換装置の概略構成を示す模式図である。
【0357】
入力用の量子ドットセルである量子ドットセルC1と、出力用の量子ドットセルである量子ドットセルC3との間には、二つのループ構造が連続して形成されている。
【0358】
すなわち、量子ドットセルC1,C2,C4,C5の四つの量子ドットセルにより第1のループ構造が形成され、そして、量子ドットセルC2,C3,C5,C6の四つの量子ドットセルにより第2のループ構造が形成されている。換言すれば、量子ドットセルC1,C2,C4,C5はループ状に配置され、同様に、量子ドットセルC2,C3,C5,C6もループ状に配置されている。
【0359】
このように構成されたセル接続型信号方向転換装置によれば、図48の折れ線配線の場合とは異なり、状態が不安定になる量子ドットセルが存在しなくなるので、最初、右方向(3時の方向)に伝搬していた信号Sは、量子ドットセルC1,C4,C5,C2,C3を介して、情報を保持したまま下方向(6時の方向)に伝搬方向を変える。
【0360】
かくして本実施例によれば、二つの連続したループ構造を用いることにより、信号Sの情報を変えずにその伝搬方向を変えることができるようになる。
【0361】
なお、量子ドットセルC4,C6の基底状態は量子ドットセルC1のそれと異なったものとなるので、量子ドットセルC4,C6を出力用の量子ドットセルとして用いれば、本実施例のセル接続型信号方向転換装置をセル接続型インバータ装置として使用することができる。量子ドットセルとしては、前述した量子ドットセルのどれを用いても良い(以下、実施例についても同じ)。また、量子ドットセルC1が基底状態ψ1 の場合には、図39に示すように、各量子ドットセルの状態が確定する。
【0362】
(第24の実施例:請求項4)
図47は、本発明の第24の実施例に係るセル接続型信号分岐装置の概略構成を示す模式図である。
【0363】
本実施例では、量子ドットセルC1を入力用の量子ドットセルとして用い、そして、量子ドットセルC10,C11,C12を出力用の量子ドットセルとして用いている。
【0364】
入力用の量子ドットセルC1と出力用の量子ドットセルC10との間には、量子ドットセルC3,C4,C5,C6からなる第1のループ構造と、量子ドットセルC6,C7,C8,C9からなる第2のループ構造との二つのループ構造が連続的に設けられている。
【0365】
また、入力用の量子ドットセルC1と出力用の量子ドットセルC12との間には、量子ドットセルC3,C4,C5,C6からなる第1のループ構造と、量子ドットセルC13,C14,C15,C16からなる第3のループ構造との二つのループ構造が連続的に設けられている。
【0366】
また、入力用の量子ドットセルC1と出力用の量子ドットセルC11との間には、量子ドットセルC3,C4,C5,C6からなる第1のループ構造が設けられている。
【0367】
このように構成されたセル接続型信号分岐装置によれば、図49のマルチ・ファン・アウト分岐配線の場合とは異なり、状態が不安定になる量子ドットセルが存在しなくなるので、信号Sは伝搬方向(3時方向)および情報を保持したまま三つに分岐される。そして、各分岐信号S1 ,S2 ,S3 はそれぞれ量子ドットセルC10,C11,C12から出力される。
【0368】
なお、量子ドットセルC7,C13を出力用の量子ドットセルとして用いれば、信号Sをその伝搬方向と反対方向(9時方向)の二つの信号に分岐できる。もちろん、量子ドットセルC7,C10,C11,C12,C13を出力用の量子ドットセルとして用いれば、信号Sを五つの信号に分岐できることになる。
【0369】
また、量子ドットセルC1が基底状態ψ0 の場合には、図21に示すように、各量子ドットセルの状態が確定する。
【0370】
(第25の実施例)
図50は、本発明の第25の実施例に係る量子効果装置の入力部を示す模式図である。
【0371】
図50において、量子ドットセルC1inは入力用の量子ドットセルであり、また、量子ドットセルC2inは量子ドットセルC1inの隣りの量子ドットセルである。これら量子ドットセルC1in,C2inは図示しない他の量子ドットセルとともに所望のデバイスを形成している。量子ドットセルC1inには二つの入力用量子細線701,702が設けられている。入力用量子細線701,702は、量子ドットセルC1in,C2inを含むデバイス系とは電気的に絶縁されている。
【0372】
入力用量子細線701,702は、エネルギーバンドギャップが量子ドットセルC1inの量子ドットのそれと近い半導体または同じ半導体により形成されている。例えば、量子ドットセルC1inの量子ドットがGaAs、量子ドットを囲む物質がAlGaAsの場合には、高濃度に不純物がドープされたGaAsを用いて入力用量子細線701,702を形成する。また、入力用量子細線701,702の先端部のサイズは、量子ドットセルC1inの量子ドットのそれと同程度である。また、入力用量子細線701,702の先端部は、それぞれ、量子ドットセルC1in内の上下の量子ドットに対応した位置に設けられている。
【0373】
入力用量子細線701は、金属細線電極(不図示)を介して、外部電源700の+側に接続されている。上記金属細線電極は量子ドットセルの状態を変えないように離れたところに設けられている。また、上記金属細線電極は入力用量子細線701とオーミックコンタクトが取れる金属(例えばAu)により形成されている。
【0374】
同様に、入力用量子細線702は金属細線電極(不図示)を介して外部電源700の−側に接続されている。上記金属細線電極は入力用量子細線702とオーミックコンタクトが取れる金属(例えばAu)により形成されている。
【0375】
本実施例によれば、量子ドットセルC1inの状態は、入力用量子細線701,702により形成される電場により制御される。図50の場合、入力用量子細線701から入力用量子細線702に向かって電位が低下する電界が形成されるので、量子ドットセルC1inは、左上の量子ドットおよび右下の量子ドットに電子が入るという基底状態を取るようになる。
【0376】
このとき、入力用量子細線701,702内には、金属電極の場合とは異なり、少数の電子しか存在しないので、入力用量子細線701,702内の電子によって量子ドットセルC1in等は影響を受けない。換言すれば、金属電極を用いていないので、入力用量子細線701,702と量子ドットセルC1in等との間にはショットキー接合形成されず、量子ドットセルC1in等の状態は維持される。したがって、本実施例によれば、入力用量子細線701,702により形成される信号を正確に量子ドットセルC1inに入力できるようになる。
【0377】
なお、本実施例では、入力用量子細線701,702により形成される電場は1種類に限定される場合について説明したが、入力用量子細線701,702がそれぞれ外部電源の+側、−側、または入力用量子細線701,702がそれぞれ外部電源外部電源の−側、+側に選択的に接続できるようにすれば、2種類の電場を形成でき、これにより、量子ドットセルC1inに2種類の信号を供給することができるようになる。
【0378】
(第26の実施例)
図51は、本発明の第26の実施例に係る量子効果装置の出力部を示す模式図である。
【0379】
図51において、量子ドットセルC1out は出力用の量子ドットセルであり、また、量子ドットセルC2out は量子ドットセルC1out の隣りの量子ドットセルである。これら量子ドットセルC1out ,C2out は図示しない他の量子ドットセルとともに所望のデバイスを形成している。量子ドットセルC1out には出力検出装置が設けられている。この出力検出装置は、量子ドットセルC1out を含むデバイス系とは電気的に絶縁されている。
【0380】
出力検出装置は、大きく分けて、第1および第2の電流検出部と、第1および第2の量子ドット704,706とにより構成されている。
【0381】
第1の電流検出部は、第1および第2の量子細線703,705、ならびにこれら量子細線703,705の間に設けられた電源711および電流計708により構成されている。第1の量子細線703は電源711の−側に接続され、第2の量子細線705は電源711の+側に接続されている。
【0382】
同様に、第2の電流検出部は、第1および第3の量子細線703,707、ならびにこれら量子細線703,707の間に設けられた電源711および電流計709により構成されている。第3の量子細線707は電源711の+側に接続されている。
【0383】
第1の量子ドット704は第1の量子細線703と第2の量子細線705との間に設けられている。一方、第2の量子ドット706は第1の量子細線703と第3の量子細線707との間に設けられている。
【0384】
第1の量子ドット704と第1の量子細線703との間の距離、第1の量子ドット704と第2の量子細線705との間の距離、第2の量子ドット706と第1の量子細線703との間の距離、第2の量子ドット706と第3の量子細線707との間の距離は、トンネル効果により電子が上記量子ドットと量子細線との間を移動できる程度に短い。
【0385】
量子ドット704,706は、量子ドットセルC1out の量子ドットと同じ第1の材料により形成され、かつ量子ドットセルC1out の量子ドットと同じサイズである。また、量子ドット704,706は、量子ドットセルC1out の量子ドットを囲んでいる材料と同じ第2の材料により囲まれている。
【0386】
すなわち、第1の量子細線703と第2の量子細線705との間には、第1の量子ドット704と第2の材料とにより二重量子障壁が形成され、同様に、第1の量子細線703と第3の量子細線707との間には、第2の量子ドット706と第2の材料により二重量子障壁が形成されている。
【0387】
また、第2の材料は量子ドットセルC1out の回りを囲んでいる第3の材料よりもバンドギャップが小さい。すなわち、点線710を境にして左側の量子ドットセルC1out ,C2out の外側の領域のバンドギャップは、点線710を境にして右側の領域の出力検出装置のそれよりも大きい。したがって、量子ドット704または量子ドット706内の電子が量子ドットセルC1out 内に注入されることによる量子ドットセルC1out の状態の破壊を防止できる。
【0388】
今、量子ドットセルC1out が無いとすれば、第1の電流検出部は、第2の量子細線705から量子ドット704を介して第1の量子細線703に流れ込む電流を検出し、同様に、第2の電流検出部は、第3の量子細線707から量子ドット706を介して第1の量子細線703に流れ込む電流を検出する。
【0389】
ここで、例えば、図51に示すような基底状態を量子ドットセルC1out が取ったならば、第1の量子細線703から第2の量子ドット706に注入されようとする電子は、量子ドットセルC1out の右下の量子ドットセル内の電子からクーロン斥力を受ける。
【0390】
したがって、量子ドットセルC1out が無い場合に比べて、電流計709で検出される電流の値は低くなる。また、量子ドットセルC1out の電子と第3の量子細線707の電子との相互作用は十分に弱いので、量子ドットセルC1out の状態は維持される。換言すれば、金属電極を用いていないので、量子ドットセルC1out の電子と第3の量子細線707との間にはショットキー接合形成されず、量子ドットセルC1out 等の状態は維持される。
【0391】
一方、第1の量子細線703から第1の量子ドット704に注入されようとする電子は、量子ドットセルC1out の右上の量子ドットセル内に電子が存在しないため、クーロン斥力を受けない。
【0392】
したがって、電流計709で検出される電流の値は、量子ドットセルC1out が無い場合とほぼ同じである。また、量子ドットセルC1out の電子と第1の量子細線703の電子との相互作用は十分に弱いので、量子ドットセルC1out の状態は維持される。換言すれば、金属電極を用いていないので、量子ドットセルC1out の電子と第1の量子細線703の間にはショットキー接合形成されず、量子ドットセルC1out 等の状態は維持される。
【0393】
すなわち、図51の場合、電流計708で検出される電流の値は、電流計709で検出される電流の値よりも大きくなる。
【0394】
また、量子ドットセルC1out が他の基底状態を取る場合、つまり、二つの電子がそれぞれ右上の量子ドット内、左下の量子ドット内に存在する場合には、電流計708で検出される電流の値は、電流計709で検出される電流の値よりも小さくなる。
【0395】
したがって、本実施例によれば、二つの電流計708,709の検出電流を比較することにより、量子ドットセルC1out の状態を正確に検出できるようになる。
【0396】
(第27の実施例)
図57は、本発明の第27の実施例に係る量子効果信号伝達装置の概略構成を示す模式図である。また、図58は、図57の量子効果信号伝達装置のA−A´断面図である。
【0397】
本実施例の量子効果信号伝達装置は、信号伝達ユニット812がY方向(信号伝達方向)に一列に配列された構成になっている。信号伝達ユニット812は二つの量子箱812a,812bから構成されている。これら量子箱812a,bの周りには障壁層811が設けられている。また、信号伝達ユニット812列の両横側には、それぞれ、ドナーイオン列816a,816bが設けられている。
量子箱812a,bは、例えば、GaAsにより形成し、また、障壁層811は、例えば、AlGaAsにより形成する。また、この場合、量子箱812a,812bのサイズはフェルミ波長程度の数10nmとする。なお、量子箱のサイズの最適値は材料によって大きく異なる。
【0398】
量子箱812aと量子箱812bとの距離aは、量子箱812a,812b間を電子がトンネルリングできる程度に小さい。また、隣接する信号伝達ユニット間の距離bは、信号伝達ユニット間を電子がトンネルリングできない程度に大きく、かつクーロン相互作用が有効に働く程度に小さい。
【0399】
量子箱812a,bの材料がGaAs、障壁層811の材料がAlGaAsの場合には、距離aを約10nm程度とすれば、電子は比較的自由に量子箱間を移動できる。また、距離bを約50nm程度とすれば、量子箱間では電子のトンネルリングはほとんど生じず、長距離力であるクーロン相互作用のみが電子間に働くことになる。なお、距離a,bは材料によって最適な値が大きく異なる。
【0400】
以下、本実施例の量子効果信号伝達装置の詳細を製造工程に従って説明する。
まず、半絶縁性GaAs基板814を用意し、この半絶縁性GaAs基板814上にi型AlGaAs障壁811を結晶成長させる。
【0401】
次にi型AlGaAs障壁811の表面を選択的にエッチング除去して、1対の量子箱812a,812bとなる二つの箱状の溝をY方向に所定数だけ形成した後、これら溝をi型GaAsにより埋め込む。この結果、1対の量子箱812a,812bがY方向に所定数だけ形成される。
【0402】
次に量子箱812aの短辺の外側のi型AlGaAs障壁811の表面にドナーイオンとしてのSiイオン813aをY方向に一列に注入する。同様に、量子箱812bの短辺の外側のi型AlGaAs障壁811の表面にSiイオン813bをY方向に一列に注入する。この結果、量子箱812a,812bを挟むように、ライン状のドナーイオン列816a,816bが形成される。
【0403】
ここで、Siイオンをi型AlGaAs障壁811の表面にライン状に整列させるには、FIB装置(集束イオンビーム装置)を用いて、イオンエネルギーおよびイオン注入位置を制御した状態で行なうと良い。
【0404】
何故なら、FIB装置は、シングルイオンを抽出するための偏向電極と微小スリットとを備えているので、所定数のドナーイオンを1個ずつ所定の微細領域に注入することができ、これにより、幅が数10nm以下で、高密度のライン状のドナーイオン列の形成が可能となるからである。
【0405】
また、他の理由としては、このようにして形成された高密度のライン状のドナーイオンは、活性化率が高いために、量子箱中に容易に多くの電子を生じさせることができるからである。しかも、量子箱からドナーイオン列までの距離や、注入イオン数を調整することにより、量子箱中に蓄積する電子の密度を自由に変化させることができるからである。
【0406】
次にSiイオン813a,813bの活性化を行なう。この結果、i型AlAsとi型AlGaAsとの電子親和力の違いから、i型AlGaAs障壁811中のドナーイオンから発生した電子は、i型GaAsからなる量子箱812a,812b中に集まり、信号伝達ユニット812が完成する。
【0407】
本実施例の量子効果信号伝達装置の動作は以下の通りである。まず、外部電場等により、一番上の信号伝達ユニット812の2つの量子箱812a,812bのうち、左側の量子箱812aに電子が偏るように電子分布を変化させる。この状態を“1”とする。
【0408】
ここで、ドナーイオン列816a,816bは、各信号伝達ユニットから比較的遠くに配置されている。このため、ドナーイオン列816a,816bの正電荷は、各信号ユニットに対して均一な弱い外電場としての寄与しか及ぼさない。
この結果、上から二番目の信号伝達ユニット812の電子に働く力は、一番上の信号伝達ユニット812の電子によるクーロン斥力のみである。
【0409】
したがって、上から二番目の信号伝達ユニット812のセルには、右側の量子箱812bに多数の電子が偏るような電子分布、つまり、強い分極が生じる。この状態を“0”とする。
【0410】
以下、同様にして上から三番目以降の信号伝達ユニットが交互に別の状態を取ることにより、“1”,“0”,“1”,“0”…という信号が伝達されることになる。
【0411】
前述したように、図56のクオンタム・ダッシュは、変調ドープ層(i型GaAs層1252/n型AlGaAs層1253)から構成されているが、i型GaAs層1252およびn型AlGaAs層1253を変調ドープ層として用いるには、これらの厚さは薄くなければならない。
【0412】
したがって、i型GaAs層1252およびn型AlGaAs層1253の厚さを大きくして、変調ドープ層内に蓄積できる電子の個数を増加させ、大きな分極を形成するという手法は用いることはできない。
【0413】
一方、本実施例では、二つの量子箱を利用しているので、量子箱内に蓄積できる電子を多くするには、量子箱の面積を大きくすれば良い。量子箱の面積を大きくすることは容易である。
【0414】
更に、本実施例によれば、ドナーイオン列から効果的に多数の電子を量子箱に注入できるので、大きな分極を形成できる。
【0415】
更にまた、ドナーイオン列は量子箱から離れているので、クオンタム・ダッシュの場合のように、正電荷と負電荷とがキャンセルされ、分極が弱まるという問題は生じない。
【0416】
したがって、本実施例によれば、大きな分極を形成できるので、電子の片寄りを利用した信号伝達を安定して行なえるようになる。
【0417】
また、本実施例の場合、図56の変調ドープ層のように積層構造の素子構造がないので、つまり、素子構造が平面的であるので、製造プロセスがかなり簡便になるという利点もある。
【0418】
なお、本実施例では、距離bを大きくすることにより、信号伝達ユニット間の電子の往来を防止したが、信号伝達ユニット間にバンドギャップの大きな物質(例えば誘電体)を設けることによって、電子の往来を防止しても良い。
【0419】
(第28の実施例)
図60は、本発明の第28の実施例に係る微細金属パターンの形成方法を示す工程断面図である。
【0420】
まず、図60(a)に示すように、砒化ガリウム基板611上に無機レジストとしての窒化シリコン膜612を形成する。このとき、プラズマ励起CVD装置を用いて、基板温度250℃、RF出力200W、反応ガス流量比 シラン:アンモニア:窒素=1:2:10の条件で窒化シリコンの堆積を行なうと、堆積時間10分で、厚さが約200nmの窒化シリコン膜612を形成できる。
【0421】
次に図60(b)に示すように、窒化シリコン膜612のうち、微細金属パターンを形成する領域614b(非露光部分)以外の領域614a(露光部分)に、ガリウムイオンの集束イオンビーム(FIB)613を照射することにより、窒化シリコン膜612の露光を行なう。
【0422】
ここで、イオンエネルギー30keV、ドーズ量約5×1016cm-2の条件でガリウムイオンのFIB613の照射を行なえば、ほとんどのガリウムイオンを窒化シリコン膜612の表面に近傍に滞在できる。
【0423】
また、FIB613の場合、ビーム径を容易に小さくでき(100nm以下)、しかも、ビームの位置合わせ精度も良いことから、100nm以下の幅を持つ非露光部分614bの形成が可能である。
【0424】
次に図60(c)に示すように、反応ガスとして六弗化硫黄を用いたドライエッチングにより現像を行なう。すなわち、非露光領域614bの窒化シリコン膜612を選択的にエッチング除去する。換言すれば、露光領域614aのみに窒化シリコン膜612を残置させる。
【0425】
このとき、窒化シリコン膜612の膜厚とエッチング速度とから求められるジャストエッチングの時間よりも長い時間エッチングを行なって、つまり、オーバーエッチングを行なうことにより、窒化シリコン膜612の開口部616における断面形状を逆テーパとする。この結果、微細な開口部616を有する窒化シリコン膜612からなる微細レジストパターンが形成される。開口部616における断面形状が逆テーパとなる理由は、窒化シリコン膜612の表面から深いところほど露光される程度が低いからである。
【0426】
具体的には、例えば、ECR−RIBE(電子サイクロトロン共鳴励起型反応性イオンビームエッチング)装置により、圧力0.5mTorr、マイクロ波出力200W、イオン引き出し電圧200Vの条件で、窒化シリコン膜612のドライエッチングを行なうと、非露光領域614bの窒化シリコン膜612は約15nm/分程度のエッチング速度でエッチングされ、また、露光領域614aの窒化シリコン膜612ははほとんどエッチングされず、膜厚約100nm以上の窒化シリコン612が残る。
【0427】
この図60(c)の工程で、露光領域614aの窒化シリコン膜612が残置する理由は、ガリウムイオンのFIB13によって露光領域614aに注入されたガリウムイオンと、プラズマによって生成された弗素を含むイオン等の活性種615との反応により、エッチング速度の非常に遅い反応生成物が、露光領域614aの窒化シリコン膜612に形成されるからである。なお、上記ドライエッチングの場合における砒化ガリウムのエッチング速度は遅いので、砒化ガリウム基板611はほとんど損傷を受けない。
【0428】
次に図60(d)に示すように、全面に金617を蒸着することにより、薄金層618a(第1の金属層),618b(第2の金属層)を形成する。
【0429】
具体的には、例えば、抵抗加熱方式または電子ビーム方式の真空蒸着装置を用い、そして、基板温度を室温(20〜30℃)から数100℃に上げて、残った窒化シリコン膜612より薄い薄金層618a,bを形成する。この薄い薄金層618a,618bの厚さは例えば約50nmとする。
【0430】
このとき、開口部616の砒化ガリウム基板611上には普通の金薄膜618bが形成される。一方、窒化シリコン膜612上には金617が島状に堆積するので、多孔質の金薄膜618aが形成される。
【0431】
最後に図60(e)に示すように、砒化ガリウム基板611を逆さまにし、その状態で、エッチング種がラジカル619のみのドライエッチングにより、窒化シリコン膜612、金薄膜618aを選択的にエッチングする。上記ドライエッチングでは、反応ガスとして、例えば、六弗化硫黄を用いる。
【0432】
そして、窒化シリコン膜612のエッチングがある程度進むと、砒化ガリウム基板611は逆さまであるので、窒化シリコン膜612は砒化ガリウム基板611から容易に剥がれ落ちる。このとき、金薄膜618aは窒化シリコン膜612と一緒に剥がれ落ちることになる。この結果、微細金属パターン(微細金属層)618bが形成される。
【0433】
このとき、窒化シリコン膜612、金薄膜618aが選択的に除去される理由は、上述したように金薄膜618aは多孔質であるため、ラジカル619は金薄膜618aを容易に貫通して窒化シリコン膜612に到達し、この到達したラジカル619によって窒化シリコン膜612が微細金属パターン618bである金薄膜よりも速くエッチングされるからである。また、ラジカル619のサイドエッチング速度が速いのも理由である。なお、この弗素を含むラジカル619はほとんど砒化ガリウム基板611をエッチングしない。
【0434】
以上述べたように、本実施例によれば、有機レジストを用いないリフトオフ法により、微細金属パターン618bを形成できるので、従来の有機レジストを用いたリフトオフ法の種々の問題を一挙に解決できる。
【0435】
例えば、珪化ガリウム基板611を大気に晒さずに微細金属パターン618bを形成できるので、真空一貫プロセスが可能となる。このように真空一貫プロセスによる微細金属パターンの形成が可能となれば、微細金属パターン618bの形成途中における素子の表面汚染や表面酸化を抑えることができるようになる。これにより、特性劣化を最小に抑えた微細金属パターンを有する半導体素子の作成が可能となり、更には、微細金属パターンを有する半導体素子の高性能化および生産性の向上を図ることもできるようになる。
【0436】
なお、本実施例では、無機レジストとして窒化シリコン膜を用いたが、他の無機レジスト、例えば、酸化シリコン膜を用いても上述したプロセスとほとんど同様の方法により微細金属パターンを形成することができる。
【0437】
また、本実施例では、微細金属パターンの金属材料として金を用いたが、他の金属材料、例えば、銀を用いても良い。この場合、金属蒸着時の基板加熱温度を低く抑えることができる。
【0438】
また、最終的に不要になる薄金属膜のパターン面積が小さい場合には、必ずしも上述したように、無機レジスト上で薄金属膜が多孔質になる必要はない。何故なら、ドライエッチングのサイドエッチングにより無機レジストを十分に除去できるからである。したがって、不要になる薄金属膜のパターン面積が小さい場合には、薄金属膜と無機レジストとに求められる条件は緩和されることになる。
【0439】
また、表面に凹凸の多い無機レジストを形成することにより、その上に多孔質の薄金属膜を形成することも可能である。例えば、無機レジストとして、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等を用いる場合には、ガリウムイオンのFIBによる露光の際に、ビーム径を照射間隔よりやや小さめに設定すると良い。また、ドライエッチングによる現像の際に、イオン種によるエッチングがやや強くなるようにしても良い。
【0440】
(第29の実施例)
図61は、本発明の第29の実施例に係る回転方式装置(情報伝達経路)の概略構成を示す模式図である。
【0441】
図中、K1,K2は回転ユニット(K1は入力用回転ユニット、K2は出力用回転ユニット)を示している。具体的には、図62に示すような“+”形状タイプ、図63に示すような“T”形状タイプがある。なお、これら形状は図37の場合と同様に真横から見た場合に見える形状である。
【0442】
図62、図63において、9011 ,9012 は支持基板を示しており、図62の場合には、二つの支持基体9011 ,9012 が縦軸部材902の両端を支持し、図63の場合には、一つの支持基体9011 が縦軸部材902の一端を支持することになる。
【0443】
縦軸部材902には、正に帯電した第1の横軸部材9031 、負に帯電した第2の横軸部材9032 、正に帯電した第3の横軸部材9033 および負に帯電した第4の横軸部材9034 が互いに90°異なる方向に配置されてなる回転部材904が設けられ、この回転部材904は縦軸部材902に対して垂直面を描く回転が可能となっている。
【0444】
このような回転ユニットは、例えば、図62、図63に示すように、支持基板9011 ,9012 上にAu等の金属ドット904を形成し、金属ドット904に横軸部材としての高分子や原子クラスタ等を選択的に化学吸着させ、この高分子や原子クラスタ等を+または−に帯電させることにより作成できる。また、マイクロマシーン技術を用いてエレクトレットや磁石材料を加工して、回転ユニットを形成しても良い。磁石材料を用いた場合には、横軸部材の先端はNまたはSに磁化されたものとなる。また、支持基板901 ,9012 としては、例えば、シリコン基板を用いる。
【0445】
本実施例の回転方式装置は、二つの回転ユニットK1,K2により構成されている。また、図61中、Aは入力としての外部電荷を示しており、Qは回転ユニットK2の右端の極性(出力)を検出する検出手段を示している。また、二つの回転ユニットK1,K2は互いに接触していない。
【0446】
また、外部電荷Aの電荷値は、回転部材のそれより大きくしてあり、これにより、外部電荷Aと他の回転ユニットの回転部材とのクーロン相互作用による装置の誤動作や不安定動作を防止している。
【0447】
このように構成された回転方式装置の動作は以下の通りである。
【0448】
例えば、回転ユニットK1の近辺に配置した外部電荷Aの極性が負の場合であれば、クーロン相互作用によって安定状態になるまで、回転ユニットK1の回転部材は回転し、つまり、外部電荷A側に回転ユニットKの回転部材の正端部(第1の横軸部材または第3の横軸部材)が固定するまで回転する。
【0449】
一方、回転ユニットK2の回転部材は回転ユニットK1の回転部材の回転に伴って回転し、そして、回転ユニットK1の回転部材の固定に伴って、回転ユニットK1の正端部(第2の横軸部材または第4の横軸部材)側に回転ユニットK2の負端部が固定する。すなわち、検出手段Q側には回転ユニットK2の回転部材の負端部が固定する。
【0450】
したがって、出力電荷Aの極性と検出手段が検出する極性とは同じになり、回転ユニットK1と回転ユニットK2とにより構成された本実施例の回転方式装置は、情報伝達する情報伝達経路(従来の配線に相当)として機能する。
【0451】
また、本実施の場合、クーロン相互作用による回転部材の配向(回転部材の分極方向)の連鎖的な伝達により情報を伝達しているので、配線に起因する集積度の低下の問題を解決でき、また、情報伝達のために配線に電流を流す必要がなくなり、消費電力や発熱の問題を改善できる。
【0452】
なお、本実施例では二つの回転ユニットを用いたが、四つの回転ユニットを用いても良い。要は偶数個の回転ユニットを用いれば良い。
【0453】
(第30の実施例)
図64は、本発明の第30の実施例に係る回転方式装置(インバータ)の概略構成を示す模式図である。
【0454】
この回転方式装置は、一つの回転ユニットK1により構成されている。回転ユニットK1はその近辺に配置した外部電荷Aの極性に従って、クーロン相互作用により回転ユニットK1の回転部材が回転する。
【0455】
例えば、回転ユニットK1の近辺に配置した外部電荷Aの極性が負の場合であれば、クーロン相互作用によって安定状態になるまで、回転ユニットK1の回転部材は回転し、つまり、外部電荷A側に回転ユニットKの回転部材の正端部(第1の横軸部材または第3の横軸部材)が固定するまで回転する。
【0456】
したがって、出力電荷Aの極性と検出手段が検出する極性とは反対になり、回転ユニットK1により構成された本実施例の回転方式装置は、インバータとして機能する。本実施例の場合も第29の実施例と同様に、配線や消費電力や発熱の問題を改善できる。
【0457】
なお、本実施例では一つの回転ユニットを用いたが、三つの回転ユニットを用いても良い。要は奇数個の回転ユニットを用いれば良い。
【0458】
また、第29、第30の実施例では、電荷極性に従うクローン相互作用で説明しているが、これらは磁極性に従う磁気相互作用でも同様の効果を得ることができる。
【0459】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施例を適宜組み合わせても良い。具体的には、第12〜第15の実施例の円形の量子箱を用いた量子ドットセルを、第9の実施例の正方形の量子箱を用いた量子ドットセルに置き換えても良い。
【0460】
また、第9の実施例等の量子人工分子を用いて、図1のセル接続型インバータ装置や、図3のセル接続型OR装置や、図4のセル接続型AND装置を構成しても良い。
【0461】
また、第12の実施例等の量子人工分子を用いて、図1のセル接続型インバータ装置や、図3のセル接続型OR装置や、図4のセル接続型AND装置を構成しても良い。
【0462】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施できる。
【0463】
【発明の効果】
本発明(請求項1,2)によれば、状態が不確定なセルが無くなるので、動作の安定化が図れた接続セル型の論理装置を実現できる。
【0464】
本発明(請求項3)によれば、信号の情報を保持したまま信号の伝搬方向を変えることができる量子効果装置を実現できるようになる。
【0465】
本発明(請求項4)によれば、信号の情報を保持したまま信号を分岐できる量子効果装置を実現できるようになる。
【0467】
本発明(請求項)によれば、3次元的に量子人工分子を配列することにより、量子人工分子間の距離を小さくしなくても、量子人工分子の基底状態と第1励起状態とのエネルギー準位差を大きくできるので、高温の動作が可能な量子効果装置が得られるようになる。
【0472】
本発明(請求項)によれば、量子配線にバリスティック電子を衝突させることにより、量子配線を流れる情報を制御できる。すなわち、バリスティック電子の利用により、従来不可能であった量子配線における情報伝達の制御を行なえるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係るセル接続型インバータ装置の概略構成を示す模式図
【図2】4量子ドットセルの概略構成を示す模式図
【図3】本発明の第2の実施例に係るセル接続型OR装置の概略構成を示す模式図
【図4】本発明の第3の実施例に係るセル接続型AND装置の概略構成を示す模式図
【図5】本発明の第4の実施例に係るバリスティック電子を用いた散乱衝突型インバータ装置の概略構成を示す模式図
【図6】本発明の第5の実施例に係るバリスティック電子を用いた散乱衝突型NOR装置の概略構成を示す模式図
【図7】本発明の第6の実施例に係るバリスティック電子を用いた散乱衝突型NAND装置の概略構成を示す模式図
【図8】レシーバの具体的な構成を示す図
【図9】主エミッタ部の具体的な構成を示す図
【図10】本発明の散乱衝突型論理装置の変形例を説明するための図
【図11】本発明の第7の実施例に係る電子波方向性結合スイッチの概念図
【図12】本発明の第7の実施例に係る平面型の電子波方向性結合スイッチの具体的な構成を示す斜視図
【図13】本発明の第7の実施例に係る積層型の電子波方向性結合スイッチの具体的な構成を示す斜視図
【図14】本発明の第8の実施例に係る電子波方向性結合スイッチの概念図
【図15】本発明の第8の実施例に係る平面型の電子波方向性結合スイッチの具体的な構成を示す斜視図
【図16】本発明の第8の実施例に係る積層型の電子波方向性結合スイッチの具体的な構成を示す斜視図
【図17】従来のトランジスタを用いたインバータ回路を示す図
【図18】従来のトランジスタを使用しないインバータ回路を示す図
【図19】5量子ドットセルの概略構成を示す模式図
【図20】従来のバリスティック電子を用いた半導体論理装置の模式図
【図21】本発明の第24の実施例に係るセル接続型信号分岐装置の概略構成を示す模式図
【図22】本発明の第9の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す平面図
【図23】図1の量子効果装置の断面図
【図24】本発明の第10の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す平面図
【図25】図24の量子効果装置の断面図
【図26】本発明の第11の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す平面図
【図27】本発明の第12の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図
【図28】本発明の第13の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図
【図29】本発明の第14の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図
【図30】本発明の第15の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図
【図31】図27の4量子ドットセルにおける基底状態と第1励起状態とのエネルギー準位差の外力として働くセルの電子分布の値の依存性を示す図
【図32】従来の4量子ドットセルにおける基底状態と第1励起状態とのエネルギー準位差の外力として働くセルの電子分布の値の依存性を示す図
【図33】本発明の第16の実施例に係る量子効果装置(量子効果配線)の概略構成を示す模式図
【図34】バリスティック電子と人工分子との衝突過程の種類を示す図
【図35】本発明の第17の実施例に係る量子箱の形成方法を示す工程断面図
【図36】臨界核を説明するための図
【図37】回転ユニットの具体的な構成を示す模式図
【図38】本発明の第18に係る回転方式論理装置(情報伝達経路)の概略構成を示す模式図
【図39】本発明の第23の実施例に係るセル接続型信号方向転換装置の概略構成を示す模式図
【図40】本発明の第20に係る回転方式論理装置(ANDゲート)の概略構成を示す模式図
【図41】本発明の第21の実施例に係る回転方式論理装置(ORゲート)の概略構成を示す模式図
【図42】従来の5量子ドットセルを示す模式図
【図43】従来の5量子ドットセルを用いた量子配線置を示す模式図
【図44】従来の量子効果デバイス(量子効果情報制御システム)の概念図
【図45】本発明の第22の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す斜視図
【図46】本発明の第23の実施例に係るセル接続型信号方向転換装置の概略構成を示す模式図
【図47】本発明の第24の実施例に係るセル接続型信号分岐装置の概略構成を示す模式図
【図48】折れ曲がり配線を示す模式図
【図49】マルチ・ファン・アウト分岐配線を示す模式図
【図50】本発明の第25の実施例に係る量子効果装置の入力部を示す模式図
【図51】本発明の第26の実施例に係る量子効果装置の出力部を示す模式図
【図52】従来の量子効果信号伝達装置の概略構成を示す模式図
【図53】従来の他の量子効果信号伝達装置の概略構成を示す模式図
【図54】X方向位置と電荷密度との関係を示す特性図
【図55】従来の量子効果信号伝達装置のより具体的な構成を示す平面図
【図56】図55の量子効果信号伝達装置のB−B´断面図
【図57】本発明の第27の実施例に係る量子効果信号伝達装置の概略構成を示す模式図
【図58】図57の量子効果信号伝達装置のA−A´断面図
【図59】従来の微細金属パターンの形成方法を示す工程断面図
【図60】本発明の第28の実施例に係る微細金属パターンの形成方法を示す工程断面図
【図61】本発明の第29の実施例に係る回転方式論理装置(情報伝達経路)の概略構成を示す模式図
【図62】“+”形状タイプの回転ユニットを示す斜視図
【図63】“T”形状タイプの回転ユニットを示す斜視図
【図64】本発明の第30の実施例に係る回転方式装置(インバータ)の概略構成を示す模式図
【図65】本発明の第20の実施例に係る量子効果装置の概略構成を示す断面図
【符号の説明】
C1〜C7…量子ドットセル
1,1a…主エミッタ部(第1のエミッタ部)
2,2a…入力エミッタ部(第2のエミッタ部)
3,3a…エネルギーフィルタ
4,4a…レシーバ(受信手段)
10…2DEG
11,12…制御電極
13…オーミック電極
14,15…制御端子
21,22…入力導波路
23,24,27,45,46…量子障壁層
25,26,28…量子井戸層
29…結合部
30,31…出力導波路
32,34,47…ゲート絶縁膜
33,35,50…ゲート電極
48…ゲート電極

Claims (6)

  1. 入力用のセルと出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルである量子効果装置であって、
    前記各セルは、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用により決定される、二つ以上の識別可能な状態を有し、
    前記複数のセルは、前記入力用のセルの状態と前記出力用のセルの状態とが所定の論理関係になるべく二次元的または三次元的に配列され、
    且つ前記出力用のセルは、他のセルとともにループ構造を構成するように配置され、該ループ構造は、複数のセルがループ状に配置され、かつ、該ループ状に配置された前記複数のセルの内側にはセルが配置されていない構造であることを特徴とする量子効果装置。
  2. 前記ループ構造は、4つのセルが、それぞれ、3時の方向、6時の方向、9時の方向、12時の方向に配置されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の量子効果装置。
  3. 入力用のセルと、この入力用のセルに入力される信号の伝搬方向とは異なる方向に信号を出力する出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルである量子効果装置であって、
    前記各セルは、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用により決定される、二つ以上の識別可能な状態を有し、
    且つ前記入力用のセルと前記出力用のセルとの間には、第1のループ構造を構成する複数のセルと、第2のループ構造を構成する複数のセルとが設けられ、前記第 1 および第2のループ構造は、それぞれ、複数のセルがループ状に配置され、かつ、該ループ状に配置された前記複数のセルの内側にはセルが配置されていない構造であることを特徴とする量子効果装置。
  4. 一つの入力用のセルと、この入力用のセルに入力される信号を分岐する複数の出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルである量子効果装置であって、
    前記各セルは、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用により決定される、二つ以上の識別可能な状態を有し、
    且つ前記入力用のセルと前記複数の各出力用のセルとの間には、それぞれ、第1のループ構造を構成する複数のセルと、第2のループ構造を構成する複数のセルとが設けられ、前記第 1 および第2のループ構造は、それぞれ、複数のセルがループ状に配置され、かつ、該ループ状に配置された前記複数のセルの内側にはセルが配置されていない構造であることを特徴とする量子効果装置。
  5. 入力用のセルと出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルである量子効果装置であって、
    前記各セルは、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用により決定される二つ以上の識別可能な状態を有し、
    前記複数のセルは、入力出力関係が所定の所定の論理関係になるべく3次元的に配列されていることを特徴とする量子効果装置。
  6. 入力用のセルと出力用のセルとを含む複数のセルからなり、前記セルが4つまたは5つの量子ドットを含み、これらの各量子ドット中に二つ電子が注入されてなる量子ドットセルからなる量子配線であって、前記各セルが、該各セル中の電子と該各セルに隣接するセル中の電子との間に働く電磁相互作用を利用して情報伝達を行なう量子配線と、
    この量子配線にバリスティック電子を衝突させて前記量子配線の状態を変化させることにより、前記量子配線を流れる情報を制御する情報伝達制御手段と、
    前記量子配線と前記バリスティック電子との衝突により生じる前記量子配線の状態変化を検出する検出手段と
    を具備してなることを特徴とする量子効果装置。
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