JP3541367B2 - プラスチゾル組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、スラッシュモールディング加工及びローテーションモールディング加工に用いるための乳幼児・児童玩具成形品用プラスチゾル組成物、詳しくは、安全衛生上に特に優れた可塑剤の使用により、人体もしくは環境上において、無毒性を向上させたプラスチゾル成形品を提供できるポリ塩化ビニル重合体のプラスチゾル組成物に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
従来、食品包装用のポリ塩化ビニル製品を製造する配合剤は、国によって規定が異なり、アメリカではFDA、ドイツではBGA、日本ではJHPAなどがPL(ポジティブリスト)を作成しており、これらを使用した製品が安全衛生性を考慮したものと広く認識されている。
プラスチゾルは、汎用可塑剤でもあるDBP、DEHP、Dn−OP、DINP、DIDPなどフタル酸エステル系もしくは、DOA、DINAなどのアジビン酸エステル系が主に使用されている。
ところが近年、上述の可塑剤等は、生物の内分泌系に撹乱作用を及ぼす物質(環境ホルモン)であると報道されており、▲1▼河川・湖沼などへの流出、▲2▼食品包装用途、乳幼児および児童向け玩具などの製品への使用が社会問題化してきている。
【0003】
本発明者らは、従来の可塑剤に比べさらなる安全性を高めるために鋭意検討を進め、環境ホルモンであるとの指摘のないアセチルクエン酸トリブチル(ATBC)を可塑剤として使用してプラスチゾルの製造に成功した。
プラスチゾルの製造には、従来から汎用のポリ塩化ビニル重合体(重合度700〜1500程度)が使用されているが、これに可塑剤としてATBCを加えると粘度の安定性も低下し、しかも熱安定性や耐光性も低下する。一方、高重合度のポリ塩化ビニル重合体は成形が困難であり、製品のつやも悪くコストも高い等の理由でペーストレジンとしては殆んど使用されていなかった。ところが意外にも、高分子量のポリ塩化ビニルに可塑剤としてATBCを使用したところ、前述したような汎用のポリ塩化ビニルを用いた場合に見られるような欠点がなく、また製品のつやもよいプラスチゾルの成形品が得られることを知った。
したがって本発明は、重合度1600以上、好ましくは1900、さらに好ましくは2000以上の高重合度のポリ塩化ビニル重合体にATBCを可塑剤として加えたプラスチゾル組成物に関する。
【0004】
本発明を詳細に説明すると、スラッシュモールディング加工及びローテーションモールディング加工に用いるための乳幼児・児童玩具成形品用プラスチゾル組成物の主成分であるポリ塩化ビニル重合体は、通常のプラスチゾル用のものであればよく、塩化ビニル単独またはこれと他の共重合性モノマーとの共重合体でもよい。
上記共重合性モノマーとしては、ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、マレイン酸エステル類、フマール酸エステル類、ビニルエーテル類、シアン化ビニル類、α−オレフィン類、塩化ビニル以外のハロゲン化ビニルもしくはビニリデン類があげられるが、塩化ビニルに対して約10%以下の共重合体が好ましい。したがって、本発明にいうポリ塩化ビニル重合体とはこれらの共重合体をも含めた語である。
そして重合度2000以上のポリ塩化ビニル重合体は既に市販されており、例えば、P−43H、PN−900、PQHHなど(新第一塩ビ製)、PSH−443など(鐘淵化学製)があげられる。
【0005】
また重合度2000以上のポリ塩化ビニル重合体と重合度2000以下のポリ塩化ビニル重合体とを混合して使用することもできるが、全重合体の平均した重合度は1600以上、好ましくは1900以上であることが必要である。重合度2000以下の塩化ビニル重合体の具体例としては、P−21、PQHK、P−31A、P−25、P−35J、700Z、PB103ZXA、PB51Jなど(新第一塩ビ製)、PSH−180、PSM−31、PSL−31、PCH−183、S−1007、PBM−4など(鐘淵化学製)などが既に市販されている。
【0006】
本発明においては、可塑剤としてはATBCが使用されるが、使用量はポリ塩化ビニル重合体100部(重量部、以下同様)に対して20〜200部となる割合で使用されればよい。
本発明では変色防止のため安定剤が使用されるが、このような安定剤に有機酸金属化合物(ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウムなど)、有機酸金属複合系(カルシウム−亜鉛、マグネシウム−亜鉛、バリウム−亜鉛、カルシウム−マグネシウム−亜鉛など)、有機ホスファイト(アリルホスファイト、トリアルキルホスファイト、アルキルアリルホスファイトなど)があげられる。これらは2種以上の使用もでき、溶媒、光安定化剤、粘度調整剤、滑剤などの混合により、複合安定剤として使用することもできるものであり、使用量は1〜5部の範囲が好ましい。特に初期発色の防止にジオクチル錫ビスオクチルチオグリコレートが使用量0.1〜1.0部の割合で、また熱分解(黒化)の安定化に対してはエポキシ化合物が使用量0.5〜5部の割合で用いられる。さらにカルシウム−マグネシウム−亜鉛/有機ホスファイトの混合物である液状安定剤(旭電化製:QL−231)、ジオクチル錫ビスオクチルチオグリコレート(大協化成:STX−80I)、エポキシ化大豆油(旭電化製:O−130P)も有利に使用できる。
【0007】
本発明に用いられる顔料は、通常のプラスチゾル用のものであれば良く、液状にする場合は分散剤(可塑剤)としてATBCを用いなければならない。
本発明に係るポリ塩化ビニル系プラスチゾル組成物は、所定割合のポリ塩化ビニル重合体、可塑剤、安定剤から構成され、また必要に応じて通常の添加剤、たとえば充填剤、離型剤、粘性調整剤などを適宜配合しても良く、これらのうち充填剤としては炭酸カルシウム、タルク、クレイ、シリカ、硫酸バリウムなどの無機系充填剤およびセルロース粉、粉末ゴム、再生ゴムなどの有機系充填剤をあげることができ、離型剤および粘性調整剤は、脂肪酸エステル(オレイン酸ブチルなど)、アルキル芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などをあげることができ、それらの使用量は、プラスチゾルの所望する流動性、加工性、コスト、塗料密着性および安全衛生性などにより適宜選択される。
【0008】
加工方法としては、スラッシュモールディング、ローテーションモールディング、ディップコーティングまたはディップモールディングなどが採用される。
次に、実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0009】
【実施例】
実施例1
塩化ビニル重合体として平均重合度2800の塩化ビニルペースト樹脂PSH−443(鐘淵化学製)100重量部と、可塑剤ATBC 45重量部を擂潰機(石川式)に投入した。
常温常圧下で混練を開始し、約5分ほどで均一分散された液状分散体を得たのち、混練を継続しながら可塑剤ATBC 15重量部を少量ずつ投入する。
そして、それに続いて熱安定剤QL−231(旭電化製)3重量部、STX−80I(大協化成)0.5重量部、O−130P(旭電化製)1重量部、および離型剤として重質アルキルベンゼン2重量部を投入し、約5分ほど混練し、液状の均一分散体を得た。
擂潰機での混練を終了させ、分散体を金属製容器に移し換え、真空脱泡装置で760mmHgにて20分間減圧撹拌脱泡を行い、混練時の混入気泡および水分を除去した。
【0010】
実施例2および比較例1、2
実施例1と同様にして実施例2および比較例1、2を実施した。
これらの結果を表1に要約して示す。
【0011】
【表1】
Figure 0003541367
【0012】
なお、表1中の物性の測定は以下の方法によった。
1) 粘度測定法
トキメック製、BM型粘度計(3号ローター)を使用し、23℃×50%RHの雰囲気における粘度および降伏値を測定した。
2) 昇温時における粘度変化
トキメック製、昇温粘度測定機を用い、80℃容器内に充填した際の常温域からの経時的粘度変化をBM型粘度計(3号ローター、回転数6rpm)にて測定した。
3) 強度測定
JIS K6251引張強さ・伸び率、JIS K6252引裂強さ、JIS K6261衝撃脆化限界温度に準拠し、測定した。
4) スラッシュ成形
【表2】
Figure 0003541367
【0013】
前記の表1から以下のことが理解できるであろう。
1.粘度・降伏値:特に問題無し。
2.貯蔵安定性:実施例は従来型配合にはやや及ばないが、スラッシュ成形においてリターンゾルの粘度上昇が抑えられる。またその結果、繰り返し作業での着肉量の増加傾向が抑えられる。
3.80℃での粘度上昇時間:実施例は従来型配合に比して多少劣るが、スラッシュ成形において着肉時間が確保され、着肉量の安定化が図られる。また、細い成型物において成形品内部のムク状態が起き難くなる。その結果、離型性も改善される。
4.スラッシュ加工試験:同じ着肉時間において従来型配合と同等の着肉量で上がり、加工後の粘度変化が少ない。
5.強度測定:特に問題無し。
6.艶:特に問題無し。

Claims (3)

  1. 重合度1600以上のポリ塩化ビニル重合体とアセチルクエン酸トリブチルとを含有する、スラッシュモールディング加工及びローテーションモールディング加工に用いるための乳幼児・児童玩具成形品用プラスチゾル組成物。
  2. 重合度1900以上のポリ塩化ビニル重合体、アセチルクエン酸トリブチルおよび熱安定剤からなる請求項1記載のプラスチゾル組成物。
  3. 重合度1600以上のポリ塩化ビニル重合体100部当りアセチルクエン酸トリブチル20〜80部を含有する請求項1記載のプラスチゾル組成物。
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