JP3540818B2 - 質量流量計に使用されるテーパ状ヒータ密度関数を有するヒータ - Google Patents
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Description
本発明は、概略的に言えば、質量流量計に関する。より詳細に言えば、本発明は、質量流量計に使用され不均一なテーパ状ヒータ密度関数を与える、改善されたヒータに関する。
発明の背景
図1は、従来技術の質量流量計100の部分断面図を示している。この質量流量計は、バイパス管110と、センサ管112と、上流側のヒータコイル114と、下流側のヒータコイル116と、層流要素(LFE)118と、熱クランプ120とを備えている。バイパス管110の一端部は、入口ポート122を画定しており、また、バイパス管110の他端部は、出口ポート124を画定している。これにより、流体126が、入口ポートから出口ポートまで矢印128で示す下流側の方向へ流れることができる。LFE118は、バイパス管110を通る流体126の流れを制限するように、バイパス管の中に設けられている。センサ管112の上流側の端部は、入口ポート122とLFE118との間でバイパス管110に接続されており、また、センサ管112の下流側の端部は、LFE118と出口ポート124との間でバイパス管110に接続されている。入口ポートから出口ポートへ流れる流体の全質量の中の一定の割合の質量が、センサ管112を通って流れる。センサ管112は、一般的に(必然的なものではないが)、毛細管の寸法を有しており(例えば、約0.305mm(0.012インチ)の内径と、約0.457mm(0.018インチ)の外径とを有している)、流体126の熱伝導率に比較して比較的高い熱伝導率を有するという特徴を備えた材料(例えば、スチール)から形成されている。
各々のヒータコイル114、116は、感温性の抵抗導体であって、センサ管112の対応する部分の周囲に可能な限り密に且つ均一に巻かれている。上記導体の各々の連続的な巻線は、その前の巻線に対して可能な限り接近していて、一定のピッチで巻かれている。ヒータコイル114、116は各々、センサ管112の対応する部分に沿って長さLにわたって軸方向に伸長している。下流側のヒータコイル116は、ヒータコイル114の下流側に設けられている。上記コイルは、互いに当接するか、あるいは、製造上の便宜を図るために比較的小さなギャップによって分離されていて、管112の中央において電気的に接続されている。各々のヒータコイルは、ヒータコイルの温度の関数に従って変化する電気抵抗を示す。一方、各々のヒータコイルの温度は、それぞれの抵抗導体を通って流れる電流の関数に従って変化し、また、センサ管112の中の質量流量の関数にも従って変化する。従って、各々のヒータコイル114、116は、ヒータ/センサを構成し、コイルは、該コイルを通って流れる電流の関数に従って熱を発生するヒータとして作用し、また、センサは、上記コイルによって与えられる電気抵抗の関数に従ってコイルの温度を測定することを可能とするセンサとして作用する。説明の便宜上、ヒータコイル114、116の導体は、実際の寸法比に基づいて図示されていないが、上記導体の直径は、一般的に、センサ管112に対して、図面に示される直径よりもかなり小さな直径を有している。
流量計100は、また、電子的な測定回路132を備えている。ヒータコイル114の上流側の端部は、導線134を介して回路132に電気的に接続されており、また、ヒータコイル114の下流側の端部及びヒータコイル116の上流側の端部を電気的に接続する接続点すなわちノードは、導線136を介して回路132に電気的に接続されており、更に、ヒータコイル116の下流側の端部は、導線138を介して回路132に電気的に接続されている。
流量計110のケーシングの一部とすることのできる熱クランプ120は、開口130を画成し、この開口130の中にヒータコイル114、116を封入している。熱クランプ120は、ヒータコイル114の上流側の端部の付近及びヒータコイル116の下流側の端部の付近でセンサ管112に取り付けられており、該センサ管と良好な熱接触を行っている。
作動の際に、流体126は、入口ポート122から出口ポート124へ流れ、上記流体の一部が、抑制LFE118を通って流れる。残りの流体は、センサ管112を通って流れる。回路132は、ヒータコイル114、116に電流を流し、これにより、ヒータコイル114、116は、熱を発生し、この熱をセンサ管112、並びに、該センサ管112を通って流れる流体126に与える。通常、入口ポート122に入る前には周囲温度にある流体126は、センサ管112を通って流れる際に、ヒータコイル114、116から熱を奪う。上流側のヒータコイル114は、下流側のヒータコイル116によって包囲されたセンサ管112の部分に流体が到達する前に、幾分かの熱を流体126に伝達するので、流体126は、ヒータコイル116から奪う熱よりも多い熱をヒータコイル114から奪う。2つのヒータコイル114、116から奪われる熱量の差は、センサ管112を通る流体126の質量流量を表す。回路132は、ヒータコイル114、116のそれぞれの電気抵抗を測定することにより、ヒータコイルから奪われた熱量の差を測定し、センサ管112を通って流れる流体126の質量流量を表す出力信号を発生する。センサ管112を通る質量流量は、入口ポート122から出口ポート124へ流れる全質量の中の一定の割合の質量であるので、上記出力信号は、流量計100を通る全質量流量も表す。1995年10月31日にHinkle et al.に発行され、本件出願人に譲渡されている、米国特許第5,461,913号は、流量計100に使用することのできる測定回路132の一つの形態を開示している。
一般的に、センサ管112の熱伝導率に比較して比較的高い熱伝導率を有するという特徴を備えた材料から形成される熱クランプ120は、ヒータコイル116の直ぐ下流側のセンサ管112の部分、並びに、ヒータコイル114の直ぐ上流側のセンサ管112の部分と良好な熱接触を行う。従って、熱クランプ120は、ヒータコイル114、116を包囲してこれらを保護すると共に、ヒータコイル114の直ぐ上流側のセンサ管112の部分、並びに、ヒータコイル116の直ぐ下流側のセンサ管112の部分を、周囲温度あるいは周囲温度付近の温度に熱的に固定する。従来技術の流量計100に関する一つの問題点は、その性能が、熱クランプ120の位置の小さな変動に対して非常に敏感であるということである。これは、同じ又はほぼ同じ性能特性を共有する流量計100を大量に製造することをこのようなにしていた。
熱クランプ120の位置の小さな変動に対して比較的敏感でない流量計を製造することは有用である。しかしながら、過去においては、そのような流量計を製造することは不可能であると考えられており、その理由は、流量計が、熱クランプ120の位置の変動に対して感度を有する理由が良く理解されていなかったからである。
発明の目的
本発明の一つの目的は、従来技術の上述の問題を十分に低減するあるいは解消することである。
本発明の別の目的は、熱クランプの位置に対して比較的敏感ではない、改善された質量流量計を提供することである。
本発明の別の目的は、センサ管に沿って生ずる温度の外乱に対して比較的敏感ではない、改善された流量計を提供することである。
本発明の更に別の目的は、ヒータの特定の入力電力に関して、従来技術の流量計と同等の又は改善された性能を示す、改善された高感度の流量計を提供することである。
本発明の更に別の目的は、センサ管の一部に沿って不均一なヒータ密度関数を発生する、改善された流量計を提供することである。
本発明の更に別の目的は、センサ管に沿って逆「V字」型の特徴を有するヒータ密度関数を発生する、改善された流量計を提供することである。
本発明の別の目的は、余弦関数のアーチを有するという特徴を備えたヒータ密度関数をセンサ管に沿って発生する、改善された流量計を提供することである。
本発明の更に別の目的は、センサ管の一部に沿ってあるヒータ密度関数を発生し、これにより、上記一部の両端部の温度が周囲温度あるいは周囲温度にほぼ等しい温度になるようにする、改善された流量計を提供することである。
本発明の更に別の目的は、実質的に直線的にすなわち線形に増大する部分、及び、実質的に直線的にすなわち線形に減少する部分を含むヒータ密度関数を発生する、改善された流量計を提供することである。
本発明の更に別の目的は、センサ管の一部に沿ってあるヒータ密度関数を発生し、これにより、上記ヒータ密度関数の軸方向の位置に関する一次導関数が上記一部の大部分に関してゼロにならないようにする、改善された流量計を提供することである。
本発明の更に別の目的は、センサ管の一部に沿ってあるヒータ密度関数を発生し、これにより、上記ヒータ密度関数の軸方向の位置に関する二次導関数が上記一部の大部分に関して実質的にゼロになるようにする、改善された流量計を提供することである。
本発明の更に別の目的は、センサ管の一部に沿う軸方向の位置に関係無く、センサ管とこのセンサ管を通って流れる流体との間の熱伝達を実質的に一定の速度で行う、改善された流量計を提供することである。
発明の概要
上述の及び他の目的が、センサ管及びヒータを備える改善された流量計によって達成される。上記センサ管は、入口端と、出口端と、入口端から出口端まで伸長する内部通路とを画成し、上記入口端から上記通路を通って上記出口端まで流体が流れることを許容する。上記ヒータは、第1及び第2の端部を有していて、これら第1及び第2の端部の間に不均一なヒータ密度関数を確立する。本明細書で使用する不均一なヒータ密度関数という用語は、管の単位長さ当たりに与えられる局部的な加熱電力が、少なくともその関数の範囲の一部にわたって実質的に一定でないことを意味する。ヒータは、センサ管を加熱するように該センサ管の付近に設けられる。
本発明の更に別の目的及び利点は、本発明の最善の態様の単なる例として幾つかの実施の形態を図示し説明する以下の詳細な説明から、当業者には容易に理解することができよう。後に分かるように、本発明は、他の異なる実施の形態を取ることができ、その幾つかの細部は、本発明から逸脱することなく、種々の点に関して変更することができる。従って、図面及び以下の説明は、本質的に例示的なものであって、限定的な又は制限的な意味をもたず、本件出願の範囲は、請求の範囲に示されている。
【図面の簡単な説明】
本発明の性質及び目的のより良い理解を図るために、同じ参照符号を用いて同じ又は同様の部品を示している添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を参考にされたい。
図面において、
図1は、従来技術の流量計の部分的なブロック図及び部分的な半径方向断面図を示しており、
図2は、図1に示す従来技術の流量計が使用するヒータ密度関数を表すグラフであり、
図3は、図1に示す流量計のセンサ管の温度分布を表すグラフであり、
図4は、図1に示すセンサ管と該センサ管を通って流れる流体との間の温度差の分布を表すグラフであり、
図5は、本発明に従って構成された流量計の部分的なブロック図及び部分的な半径方向断面図を示しており、
図6は、図5に示す流量計に使用される好ましい不均一ヒータ密度関数を表すグラフであり、
図7は、図5に示すセンサ管と該センサ管を通って流れる流体との間の温度差の分布を表すグラフであり、
図8は、本発明に従って構成された別の流量計の部分的なブロック図及び部分的な半径方向断面図を示しており、
図9は、集中的なヒータがX軸の原点においてセンサ管に与えられた場合の、センサ管の温度分布を表すグラフである。
図面の詳細な説明
図2は、Y軸が、流量計100(図1に示す)のヒータコイル114、116によって発生されるヒータ密度関数(すなわち、ワット/メートル(W/m)の単位で測定することのできる、単位長さ当たりのヒータ電力)を表し、また、X軸が、センサ管112に沿って測定された軸方向の位置を表している、グラフを示している。図示のグラフは、(a)熱クランプ120を備えておらず、(b)ヒータコイル114、116がX軸の原点において当接し、(c)ヒータコイル114の軸方向の長さ及びヒータコイル116の軸方向の長さが各々のLに等しいように構成された、流量計100の実施の形態に関するものである。図3及び図4は、図2と同じ構成に関するグラフを示しており、このグラフにおいて、Y軸は、温度を表しており、また、X軸は、流量計100のセンサ管112に沿って測定された軸方向の位置を表している。後に詳細に説明するように、上記両グラフは、従来技術の流量計100が熱クランプ120の位置に対して敏感であるすなわち感度を有する理由、並びに、従来技術の流量計の他の欠点を示している。
図2は、ヒータコイル114、116によって発生された不均一ヒータ密度関数λ(x)をx(xは、X軸に沿って測定された距離又は位置を表す)の関数として表したグラフを示している。ヒータコイル114、116の導体は、センサ管112の回りで均一に巻かれているので、ヒータコイルの単位長さ当たりの加熱電力は、−LとLとの間の総てのxの値に関して、実質的に一定である。λ(x)は、均一な関数であり、その理由は、ヒータコイルの加熱電力は、その関数の全範囲(すなわち、x=−Lからx=Lまで)にわたって実質的に一定であるからである。図3は、ヒータコイル114、116が図2に示す均一ヒータ密度関数λ(x)を与え、また、流体126がセンサ管112を通って全く流れている場合の、センサ管112の温度分布をxの関数として示すグラフである。図3に示すように、センサ管112に沿う温度分布は、対称形であり、下方に向かって凹型である。センサ管112の最大温度は、ヒータコイル114、116が当接するあるいは接続される、X軸の原点にある。従って、センサ管112の温度は、原点からの距離が増大するにつれて、減少する。図示のように、この温度曲線は、原点においてゼロであり原点からの距離が増大するにつれて連続的に変化する、勾配を有している。
図4は、流体126が管112を通って流れている場合の、センサ管112の温度と流体126の温度との間の差をxの関数として表すグラフである。図4に示すように、センサ管112と流体126との間の最大の温度差は、x=−L及びx=Lの位置(すなわち、ヒータコイル114の上流側の端部、及び、ヒータコイル116の下流側の端部の位置)で生ずる。温度差は、上記位置から離れた総てのxの値に関して、ゼロまで急激に減少する。センサ管112と流体126との間で伝達される熱量は、それぞれの温度差に比例するので、最大の熱伝達量は、x=−L及びx=Lで生ずる。流量計100は、センサ管112と流体126との間で伝達される熱量を測定することにより作動するので、位置x=−L及びx=Lにおいて温度を乱す傾向を有するファクタは総て、流量計100の性能に大きな影響を与えることになる。
熱クランプ120を流量計100に追加すると、位置x=(L+δ1)及びx=(−L−δ2)において、センサ管112は周囲温度あるいは周囲温度付近の温度に熱的に固定される。δ1及びδ2は、比較的小さい距離である。従って、熱クランプ120は、ヒータコイル114の直ぐ上流側、及び、ヒータコイル116の直ぐ下流側において、センサ管112を周囲温度に熱的に固定し、従って、熱クランプ120は、位置x=L及びx=−Lにおいて、センサ管112の温度に大きな影響を与える。距離δ1及びδ2の変動は総て、位置x=L及びx=−Lにおける温度に対して熱クランプ120が有する効果を変化させることになり、これは、流量計100の性能が熱クランプ120の位置に対して大きな感度を有する理由を説明するものである。
図4に示すグラフは、また、従来技術の流量計100の他の欠点も表している。大部分の熱伝達は、絶縁された位置(すなわち、x=L及びx=−L)において生ずるので、流量計100の性能は、そのような位置におけるヒータコイルの性能の総ての変化に対して特に敏感であり、そのような変化は、例えば、ヒータコイルの導体の欠陥によって生ずる可能性がある。また、大部分の熱伝達は、熱クランプ120の付近で生ずるので、ヒータコイルが発生する熱の多くが消費され、流体126を加熱するために使用されるのではなく、熱クランプ120によって奪われる。
図5は、本発明に従って構成された改善された流量計200の部分的な断面図を示している。この改善された流量計200は、従来技術の流量計100と同様であるが、改善された流量計200は、ヒータコイル114、116ではなく、改善されたヒータコイル214、216を備えている。ヒータコイル214、216は、センサ管112の回りで不均一な状態で巻かれており、従って、不均一ヒータ密度関数を有するという特徴を備えている。これは、ヒータコイル214、216の単位長さ当たりの局部的な加熱電力が、両コイルの長さにわたって実質的に一定でないことを意味する。後に詳細に説明するように、不均一ヒータ密度関数を用いると、流量計200の性能が改善される。図示の実施の形態においては、ヒータコイル214、216は、センサ管112の中央で当接した状態で示されており、各々のヒータコイルは、センサ管112の対応する部分に沿って長さLにわたって軸方向に伸長している状態で示されている。しかしながら、当業者は、本発明が他の構成のヒータコイル214、216も包含することを理解することができよう。すなわち、製造を容易にするために、上流側及び下流側の加熱コイルの間に小さなギャップを設けることができる。
図6及び図7は、ヒータコイル214、216がX軸の原点で当接しており、ヒータコイル214の軸方向の長さ及びヒータコイル216の軸方向の長さがLに等しい実施の形態において、X軸が、流量計200(図5に示す)のセンサ管112に沿って測定された距離を表す、グラフを示している。図6において、Y軸は、ヒータコイル214、216によって発生されてセンサ管112に与えられるヒータ密度関数(すなわち、単位長さ当たりの局部的なヒータ電力)を表しており、また、図7においては、Y軸は、温度を表している。後に詳細に説明するように、上記グラフは、流量計200の改善された性能を示している。
図6は、ヒータコイル214、216によって与えられる好ましい不均一ヒータ密度関数λ(x)のグラフを示している。λ(x)は、不均一な関数であり、その理由は、ヒータコイル214、216の単位長さ当たりの局部的な加熱電力が、関数の全範囲(すなわち、位置x=−L及びx=Lの間)にわたって実質的に一定でないからである。このヒータ密度関数は、概ね、逆「V」字型の形状によって特徴づけられる。これは、上記関数は、x=0において最大値を有しており、上記関数は、xの絶対値が0からLまで増大するにつれて減少することを意味する。上記関数λ(x)は、「テーパ状」の関数と呼ぶこともでき、その理由は、上記関数は、中間位置(すなわち、x=0)において最大値を有しており、上記関数の値は、上記中間値からの距離が増大するにつれて減少する傾向を有しているからである。上記関数λ(x)は、また、x=−L及びx=Lの間で連続であり、x=−L、x=0及びx=L以外の総ての点において滑らかである。一つの好ましい形態において、ヒータコイル214、216によって与えられるヒータ密度関数λ(x)は、区分的線形関数であって、下式(1)によって表される。
上式において、HAは、一定のヒータ基準密度を表す定数であり、勾配mは、定数であり、Lは、ヒータコイル214、216の各々の軸方向の長さである。従って、上流側のヒータコイル214のヒータ密度は、xが−Lから0まで増大するにつれて、その上流側の端部(すなわち、位置x=−L)におけるHAの最小値からその下流側の端部(すなわち、位置x=0)における最大値まで、直線的に且つ連続的に増大し、また、下流側のヒータコイル216のヒータ密度は、xが0からLまで増大につれて、その上流側の端部(すなわち、位置x=0)における最大値からその下流側の端部(すなわち、位置x=L)におけるHAの最小値まで、直線的に且つ連続的に減少する。図6に示すグラフは、また、ヒータコイル214、216がセンサ管112に図6に示すヒータ密度関数λ(x)を与える場合の、センサ管112の温度分布を概ね表している。
一つの好ましい実施の形態において、定数HAは、実質的に0に等しく、ヒータ密度関数λ(x)は、ヒータの両端部(すなわち、位置x=−L及びx=L)における最小温度が周囲温度に等しくなるように、選択される。別の実施の形態においては、ヒータコイルの両端部(すなわち、位置x=−L及びx=L)における温度が周囲温度に厳密に等しくない場合には、そのような温度を周囲温度よりも少しだけ高くし、これにより、センサ管の温度が、上記位置から比較的小さい距離(すなわち、xが−Lよりも若干小さい位置、また、xがLよりも若干大きい位置)において、周囲温度に落ち着く(熱クランプ120の支援を受けずに)ようにするのが好ましい。従って、センサ管112の温度は、−L以下のxの値に関して、また、L以上のxの値に関して、周囲温度に等しいかあるいはほぼ等しいのが好ましく、センサ管112の温度は、xが−Lから0まで増大するにつれて、周囲温度から最大温度まで増大し、また、センサ管112の温度は、xが0からLまで増大するにつれて、上記最大値から周囲温度まで減少する。上記温度分布をセンサ管112に与えることにより、流量計200は、熱クランプ120の位置の変動に対して感度をもたなくなる。通常は周囲温度又は周囲温度付近の温度にあるセンサ管の部分(すなわち、ヒータコイル214の上流側、及び、ヒータコイル216の下流側)に熱クランプ120を取り付ける限り、熱クランプ120は、センサ管112と流体126との間の熱伝達に影響を与えることはなく、熱クランプ120の位置の小さな変動が、流量計200の性能に影響を与えることはない。熱クランプ120の位置に対する上記不感性は、同一の性能特性をもたらす流量計200を大量に製造することを容易にする。
図7は、流体126が改善された流量計200を通って流れている時の、センサ管112と流体126との間の温度差の分布を表すグラフである。センサ管112と流体126との間の温度差は、位置x=−Lにおいて(すなわち、ヒータコイル214の上流側の端部において、0に等しいかあるいは0にほぼ等しく、xが−Lから−Lよりも若干大きな値(すなわち、ヒータコイル214の上流側の端部から若干下流側の位置における)まで増大するにつれて、温度差は、0から値T1まで増大する。T1は、センサ管112を通る流体126の質量流量に依存する。温度差は、xが0よりも若干小さい値(すなわち、ヒータコイル214の下流側の端部の若干上流側の位置における)まで増大する際に、T1で実質的に一定のままである。その後、温度差は、xが0よりも若干大きい位置(すなわち、ヒータコイル216の上流側の端部の若干下流側の位置)における値−T1に到達するまで、xが増大するにつれて減少する。その後、温度差は、xがLよりも若干小さい値(すなわち、ヒータコイル216の下流側の端部の若干上流側の位置における)まで増大する際に、−T1で実質的に一定のままである。その後、温度差は、xがLまで増大するにつれて、増大する。
従って、センサ管112と流体126との間の温度差は、上流側のヒータコイル214の長さの大部分にわたって(すなわt、ヒータコイル214の上流側の端部の若干下流側の位置からヒータコイル214の下流側の端部の若干上流側の位置まで)、一定値T1に実質的に等しく、また、温度差は、下流側のヒータコイル216の長さの大部分にわたって(すなわち、ヒータコイル216の上流側の端部の若干下流側の位置からヒータコイル216の下流側の端部の若干上流側の位置まで)、一定値−T1に実質的に等しい。従って、流体126は、上流側のヒータコイル214を冷やすと共に下流側のヒータコイル216を暖める傾向を有しており、ヒータコイル214の長さの大部分にわたって、上流側のヒータコイル214から流体126へ実質的に一定の速度で熱が伝達され、また、ヒータコイル216の長さの大部分にわたって、流体126から下流側のヒータコイル216へ実質的に一定の速度で熱が伝達される。従来技術の流量計100(図1に示す)においては、センサ管112と流体126との間の熱伝達は、絶縁された点(すなわち、位置x=−L及びx=L)に集中されるが、改善された流量計200においては、熱伝達は、ヒータコイル214、216の長さの大部分にわたって均一に分布される。従って、改善された流量計200は、従来技術の流量計100に比較して、センサ管112と流体126との間の熱伝達をより大きく制御する。流量計200の絶縁された点に生ずる温度の乱れ(例えば、ヒータコイル214、216の一方の導体に欠陥が生じた場合に発生する)が生じても、流量計200の性能に大きな影響を与えることはないが、従来技術の流量計100は、位置x=−L及びx=Lにおける総ての温度の乱れに対して非常に敏感である。
改善された流量計200は、好ましくは、ヒータコイル214、216を用いて、図6に示す逆「V」字型の形状を有する特徴を備えたテーパ状ヒータ密度関数λ(x)を発生させることにより、改善された性能を提供し、上記ヒータ密度関数は、センサ管112の温度が位置x=−L及びx=Lにおいて周囲温度又は周囲温度付近の温度に等しくなるように選択されるのが好ましい。不均一ヒータ密度関数λ(x)の望ましい特性は、流量計200の熱力学を表す式を評価することによって理解することができる。下の式(2)及び(3)は、結合された微分方程式であって、センサ管112と、ヒータコイル214、216と、流量計200を通って流れる流体126との間の熱力学的な関係を表している。
式(2)及び(3)において、kは、センサ管112の熱伝導率に等しく、kFは、流体126の熱伝導率に等しく、Aは、センサ管112の外側断面積に等しく、AFは、センサ管112の中の流体126の断面積(すなわち、センサ管の内側断面積)に等しく、Tは、センサ管の長さに沿ってx(あるいは、距離)の関数として示されるセンサ管112の温度を表しており、TFは、xの関数として示される流体126の温度を表しており、T0は、センサ管112を包囲する空間の周囲温度であり、ρは、センサ管112の質量密度であり、ρFは、流体126の質量密度であり、Cは、センサ管112の比熱であり、CFは、流体126の比熱であり、hは、センサ管112と流体126との間の(センサ管と流体との間の境界面における、すなわち、センサ管112の内径における)熱伝達係数であり、h'は、センサ管112と外部環境との間の熱伝達係数であり、mは、流体126の質量流量であり、λは、ヒータコイル214、216によって単位長さ当たり局部的に与えられる熱をx及び時間(t)の関数として表したものであり、TVは、粘性加熱(通常は比較的小さく、流量の増大並びに流体126の粘度の増大と共に増大する)の効果を表している。
式(2)及び(3)を組み合わせて数学的に処理し、定常状態におけるセンサ管112と流体126との間の温度差を軸方向の位置xの関数として表すD(x)=T(x)−TF(x)に関する高次式を得ることができる。この高次式は、ヒータ密度関数の関数の形態に依存する原因項(source term)を有しており、この原因項は、温度差分布を軸方向の位置の関数として主として決定する。上記原因項は、下式(4)によって与えられる。
式(4)の中の項K2、L1、及び、L3は、下式(5−7)に説明されている。
流量計200の感度を最大限にするために、ヒータ密度関数λ(x)は、式(4)中の流量依存項(すなわち、流量計200を通って流れる流体の量の関数に従って変化する項)を最大限にし、また、式(4)中の流量非依存項を最小限にするように、選択されなければならない。そのようなヒータ密度関数λ(x)は、流体流量とは独立して生じる総ての熱伝達を最小限にし、従って、流体流量に対する流量計の感度を高めることによって、流量計200の精度を高めることになる。式(4)において、ヒータ密度関数λ(x)は、xに関する単なる一次導関数及び二次導関数の形態として表現されており、一次導関数にはL1が乗ぜられ、また、二次導関数には(L3)2が乗ぜられている。λ(x)自体に比例する項は存在しない。従って、空間的に一定のすなわち均一なヒータ密度関数は、ヒータ領域の両端部におけるヒータ密度の急激な遷移に起因して生ずることのあるものを除いて、センサ管と流体との間に流量に依存する温度差を生ずることはない。式(6)及び(7)によって示すように、L1は、流量依存性であり、一方、L3は、流量非依存性である。従って、感度を最大限にするために、ヒータ密度関数λ(x)は、xに関するその一次導関数がヒータコイル214、216の全長にわたって非ゼロであり、(L1を含む流量依存項を非ゼロにするために)、また、xに関するその二次導関数がヒータコイル214、216の全長にわたって実質的にゼロに等しくなる(L3を含む流量非依存項を相殺するために)ように、選択される。線形関数は、非ゼロの一次導関数及びゼロの二次導関数によって特徴づけられ、従って、ヒータ密度関数λ(x)は、xに関して実質的に線形の大きな部分を含むことが好ましい。そのようなヒータ密度関数は、流量非依存性の総ての熱伝達を最小限にすることにより、流量計の精度を最大限にする。
上述のように、流量計200は、熱クランプ120の位置に対して比較的非感応性であるのが望ましく、そのような非感応性を達成する一つの方法は、センサ管112の温度を位置x=−L及びx=Lにおいて周囲温度あるいは周囲温度付近の温度にすることである。これは、ヒータ密度関数λ(x)に別の制約を与える。従って、一つの好ましいヒータ密度関数λ(x)は、位置x=−L及びx=Lにおいて、ゼロ又は概ねゼロであり、位置x=−L及びx=Lの間の総ての又は少なくとも大部分のxの値に関して、非ゼロの一次導関数及びゼロの二次導関数を有する。上述の制約の大部分を満足する一つの関数は、上述の式(1)によって表されて図6に示されている関数である。
しかしながら、式(1)によって示される関数に関する一つの問題は、その二次導関数が、位置x=−L、x=0及びx=Lにおいて非ゼロであるということである。比較的小さい質量流量に関して、流量依存性の熱伝達項が非常に小さい場合には、非ゼロ二次導関数の流量非依存項は、センサ管112と流体126との間の熱交換を支配する傾向があり、従って、低い流量に関する流量計200の精度を阻害する。
式(1)に示す関数λ(x)の二次導関数は、位置x=−L、x=0及びx=Lにおいて非ゼロであり、その理由は、λ(x)の勾配(あるいは、一次導関数)がそのような位置において不連続的に変化するからである。λ(x)の二次導関数の非ゼロ部分の効果を最小限にするために、式(1)を位置x=−L、x=0及びx=L付近に有限幅の「勾配一致領域(slope matching regions)」を含むように変更し、これにより、λ(x)の一次導関数が−LとLとの間の全範囲にわたって連続するようにすることが望ましい。また、λ(x)の高次導関数(例えば、二次導関数、又は、四次導関数)も連続するように、式(1)を変更することも望ましい。上述の「勾配一致領域」を含めることは、図6に示すグラフの「隅部」を「円滑化する」又は「丸める」ことと概ね等価であるということは、当業者には理解されよう。λ(x)の逆「V」字型の形状を維持し、x=−L及びx=Lの間の範囲の大部分に関してλ(x)の直線性を維持し、更に、λ(x)の二次導関数の大きさが所望の閾値を決して超えないように、式(1)を変更するには、多くの方法が存在する。上述の「勾配一致領域」を含めることにより、ヒータコイル214、216の製造コストが増大する可能性があり、従って、比較的低い流量に関して高い精度を有する流量計を製造するという要求と廉価な流量計を製造するという要求との間の相克が生ずる可能性がある。
好ましいヒータ密度関数λ(x)の上記分析は、また、図2に示す均一ヒータ密度関数を用いる従来技術の流量計(図1に示す)には別の欠点が存在することも明らかにする。上記ヒータ密度関数の一次導関数は、二次導関数も非ゼロである位置x=−L及びx=Lにおける場合を除く、他の総ての位置においてゼロである。従って、従来技術の流量計100の熱伝達は、非常に不安定であり、また、流量非依存性のファクタに大きく依存しており、従って、図2に示す均一ヒータ密度関数を用いる流量計は総て、限定された精度しか示すことができない。
上述のように、流量計200は、熱クランプ熱クランプ120の位置に対して改善された非感応性を示し、また、例えば、ヒータコイルの欠陥によって生ずる可能性のある孤立した温度分布に対して改善された非感応性を示すので、効果的である。流量計200は、また、同じ入力電力を使用する従来技術の流量計100(図1に示す)によって達成される温度よりも高い温度まで流体126を効果的に加熱する。従来技術の流量計100は、ヒータコイルの両端部(すなわち、位置x=−L及びx=L)付近の位置において、大部分の熱を流体126に伝達し、熱クランプ120は、上記位置に極めて近いセンサ管112の部分を熱的に固定する。従って、ヒータコイル114、116によって発生される熱の大部分は、流体126に与えられるのではなく、熱クランプ120によって奪われる。従来技術とは対照的に、改善された流量計200の熱クランプ120は、センサ管112から比較的少量の熱しか奪わず、あるいは、全く熱を奪わず、ヒータによって発生された実質的に総ての熱は、流体126に与えられる。従って、同じ電力に関して、改善された流量計200は、大きな熱量を流体126に与え、従って、流量計200の感度及び精度を高める。また、図2に示されていて従来技術の流量計100によって使用されている均一ヒータ密度関数λ(x)は、ヒータの両端部(すなわち、位置x=−L及びx=L)において不連続であり、そのような不連続性は、流量計100の作動の不安定性を生じさせ、一方、図6に示されていて流量計200によって使用されている不均一ヒータ密度関数は、マイナス無限大から無限大まで連続的である。流体126の温度は、改善された流量計200のセンサ管112の長さに沿って徐々に変化するので、流量計200は、従来技術の流量計100よりも、流れている流体126に潜在流れ又は熱的な不安定性を生じさせる可能性が低い。
図5に示すように、所望の不均一ヒータ密度関数λ(x)を与えるようにヒータコイル214、216を具体化する一つの方法は、ヒータコイル214、216の巻線の間隔を不均一にするすなわちピッチを不均一にすることである。下の表は、式(1)に示すヒータ密度関数λ(x)に対する有効な近似を行う、ヒータコイル214、216の製造方法の一例を示している。下の表は、好ましいヒータコイルの各々の巻線の間の所望のピッチ(インチ単位)の例を示しており、ゼロ番目の巻線は、2つのヒータコイルの接続部(すなわち、位置x=0)にあり、また、より上位の巻線ほど、ヒータコイルの上記接続部から益々離れている。
上の表は、センサ管112の外径は約0.457mm(0.018インチ)に等しく、また、ヒータコイル214、216を形成するために使用された抵抗導体の直径は、実質的に約0.0356mm(0.0014インチ)に等しく、上記抵抗導体は、比較的高い抵抗温度係数(例えば、3,500ppm/℃)を有する合金から形成されているものと仮定している。上述の例の各々のヒータコイルは、センサ管の回りに148の巻線を有している。導線の全長は、約213.0mm(約8.384インチ)であり、センサ管の軸方向の巻き長さは、約10.3mm(約0.405インチ)である。
上述のように、ヒータ密度関数λ(x)の一つの好ましい形態が、図6に示されていて上述の式(1)に示されており、このヒータ密度関数は、定常状態における流量計200の感度を最大限にする。しかしながら、このヒータ密度関数は、流量計200の時間応答性(すなわち、流量計200が質量流量の変化に応答するために必要とされる時間)を最適化することはできない。この非最適な時間応答性は、図6に示す逆「V」字型の形状のヒータ密度関数のフーリエ展開を検討することにより、理解することができる。上記ヒータ密度関数のフーリエ展開は、大きな(すなわち、無視することができない)大きさを有する幾つかの項を含んでおり、これら項の各々は、異なる時定数で流量計200の時間応答性に寄与する。当業界で周知のように、流量計は、「位相先行(phase lead)」すなわち「スピードアップ(speed up)」回路を用いて、望ましくない遅い時間応答性を部分的に補償することができ、そのような位相先行回路を回路132(図5に示す)に内蔵することができる。しかしながら、そのような位相先行補償回路を用いることは、流量計の時間応答性が多数の時定数によって特徴づけられる場合には、困難である。従って、逆「V」字型のヒータ密度関数を用いると、流量計200の時間応答性を改善するために位相先行回路を使用することを複雑にする。
流量計200に使用される一つの好ましいヒータ密度関数λ(x)は、余弦関数のアーチによって与えられ、これにより、関数λ(x)は、−L以上のx及びL以下のxに関して、cos(πx/2L)に実質的に比例し、そのような関数は、「コサイン型」のヒータ密度関数と呼ぶこともできる。コサイン型のヒータ密度関数は、中央(すなわち、位置x=0)において最大値を有し、上記中央からの距離が増大するにつれて、円滑に且つ連続的に減少する。従って、そのような関数も、テーパ状ヒータ密度関数である。コサイン型のヒータ密度関数のフーリエ展開は、単一の項しか含んでおらず、コサイン型のヒータ密度関数を用いた流量計の時間応答性は、単一の時定数だけによって特徴づけられ、従って、流量計と共に使用されるあらゆる位相先行回路を単純化させる。従って、コサイン型のヒータ密度関数は、流量計200の時間応答性を最適化するために好ましく、また、逆「V」字型のヒータ密度関数(例えば、図6に示す)は、定常状態における流量計200の感度又は精度を最大限にするために好ましい。当業者には理解されるように、コサイン型のヒータ密度関数は、ヒータコイル214、216の巻線のピッチを変えることによって具体化することができる。
所望のヒータ密度関数λ(x)を発生するヒータコイル214、216を使用するという意味において、改善された流量計200を上に説明した。しかしながら、本発明が、不均一に巻かれたヒータコイル214、216の代わりに使用して同じヒータ密度関数を発生させることのできる、他のタイプのヒータを包含することは、当業者には理解されよう。例えば、ヒータコイル214、216は、上述のヒータコイルではなく、例えば、米国特許第5,398,549号に開示されるタイプの薄膜抵抗ヒータを用いて具体化することができ、その際には、センサ管112に薄膜を螺旋状のパターンで設け、センサ管に沿って上記薄膜の厚さを変化させ、これにより、所望のヒータ密度関数を与えるヒータを形成する。また、ヒータ/センサとしても機能するコイルという意味において、ヒータコイル214、216を上に説明したが、センサとしても機能しない他のヒータを用いて、所望の不均一ヒータ密度関数を発生してこれをセンサ管に与えることができ、また、別個の温度センサを用いて流量計を通って流れる流体の流量を測定することができる。別の実施の形態として、2つのヒータを設けるのではなく、センサ管に沿って逆「V」字型の温度分布を用いる流量計を本発明に従って構成し、この流量計に、センサ管の回りに設けられた単一の集中ヒータ又は「点ヒータ」を設けることもできる。
図8は、本発明に従って構成され、2つのヒータコイル214、216ではなく単一の集中ヒータ310を備えている、上述のような流量計300の実施の形態の部分的な断面図を示している。追加の2つの温度センサ312、314が、センサ管112の回りに設けられていて、ヒータ310のそれぞれ上流側及び下流側のセンサ管112の温度を感知するようになされている。この実施の形態においては、集中ヒータ310の軸方向の長さは、センサ管112の軸方向の長さよりも比較的短いのが好ましく、これにより、ヒータ310は、軸方向に関して、熱の「点源」として、あるいは、可能な限り熱の点源に近い態様で作動する。従って、ヒータ310は、インパルス又はデータ関数によって実質的に説明される不均一ヒータ密度関数の特殊なケースを与える。この関数は、かなりの長さにわたって存在しないので、不均一である。従って、不均一という用語は、特定の範囲にわたって一定ではない関数を概ね意味するが、不均一という用語は、また、かなりの範囲にわたって存在しないインパルス型の関数も含む。この実施の形態においては、センサ管112は、流量計200(図5に示す)に使用されたセンサ管よりも短いのが好ましい。
図9は、温度対距離のグラフであって、流量計300のセンサ管112の長さが短い方が良い理由を説明している。図9は、点源ヒータが位置x=0においてセンサ管に熱を与える場合の、センサ管(熱クランプが位置x=+L及びx=−Lにある)の温度をセンサ管の距離の関数として示している。図9に示すように、センサ管112の温度は、ヒータが位置している位置(すなわち、x=0)において最大値を有しており、センサ管の温度は、ヒータからの距離が増大するにつれて、指数関数的に減少する。上述のように、一つの好ましい温度分布は、逆「V」字型の形状によって特徴づけられ、その関数の少なくとも大部分にわたって実質的に直線的である。図9に示す分布は、逆「V」字型の形状によって特徴づけられる。しかしながら、上記分布は、直線的ではなく指数関数的である。センサ管112の全長を、温度が指数関数的に減少する割合に比較して、比較的小さくなるように選択することは、図9に示す分布の比較的小さく実質的に直線的な部分だけを実質的に選択することになる。従って、センサ管112の長さを十分に小さくし、これにより、センサ管112の温度プロフィールが実質的に直線的な逆「V」字型の形状によって特徴づけられるようにするのが好ましい。
一例において、センサ管112の軸方向の長さは、約5.1mm(0.2インチ)であり、集中ヒータ310の軸方向の長さは、約0.203mm(0.008インチ)である。集中ヒータ310は、任意の種類のヒータを用いて具体化することができ、感温性の装置を必要としない。その理由は、集中ヒータは、センサ管112に熱を与えるためだけに使用され、センサ管112の温度を感知する必要がないからである。温度センサ312、314は、センサ管の上の−L及び0の間の位置、及び、0及び+Lの間の位置にそれぞれ設けられていて、センサ管112の温度を感知するためにだけ使用され、センサ管112に熱を与えるためには使用されない。従って、温度センサは、任意のタイプの温度センサを用いて具体化することができ、例えば、均一に巻かれたあるいは不均一に巻かれた感温性の抵抗コイルを用いて具体化することができる。
米国特許第5,036,701号は、あるタイプの質量流量計を開示しており、この質量流量計は、中央のヒータと、上流側及び下流側の温度センサとを備えているが、上記米国特許は、センサ管の長さを十分に短く選定して、センサ管の温度プロフィールを実質的に直線的にすることを開示しておらず、また、そのような直線的な温度プロフィールの利点も開示していない。
ゼロ又はほぼゼロ(すなわち、位置x=−L及びx=Lにおいて)であるのが好ましく、実質的に線形の逆「V」字型の形状によって特徴づけられるのが好ましく、あるいは、余弦関数のアーチの形状によって特徴づけられるのが好ましい、ヒータ密度関数λ(x)を用いることに関して、本発明を上に説明した。当業者には理解されるように、ヒータの両端部の温度を周囲温度又は周囲温度にほぼ等しい温度に維持することにより、流量計200は、熱クランプ120の位置に対して十分に感度をもたなくなる。また、ヒータ密度関数λ(x)の大部分を線形にして、流量非依存性のあらゆる熱伝達を最小限にすることにより、流量計200の精度が高まる。好ましいヒータ密度関数は、上述の両方の特性(すなわち、実質的に線形であり、ヒータの両端部付近におけるセンサ管の温度分布を周囲温度又は周囲温度付近の温度に等しくする)を有しているが、本発明は、上記特性の一方だけを有するヒータ密度関数を用いる流量計も包含することは、当業者には理解されよう。例えば、流量計を本発明に従って構成し、ヒータを用いて、これらヒータの外方端においてゼロ又はほぼゼロである実質的に非線形のヒータ密度関数を生じさせることができる。そのような流量計における熱伝達の一部は、流量非依存性であり、従って、流量計は、最大の精度を有することはできないが、そのような流量計は、熱クランプ120の位置の変動に対して実質的に感度をもたず、ヒータ密度関数がコサイン型の関数である場合には、流量計の時間応答性を最適化することができる。
別の例として、流量計を本発明に従って構成し、ヒータを用いて、これらヒータの両端部においてゼロではない実質的に線形のヒータ密度関数を発生させることができる。そのような流量計は、熱クランプ120の位置の変動に対して非感応性ではないが、あらゆる流量非依存性の熱伝達を減少させるので、高い精度を有することになる。本件出願人に譲渡されている米国特許第5,142,907号は、線形の温度分布を使用する質量流量計を開示している。上記温度分布は、センサ管の両端部に設けられるヒータを用いて発生され、各々のヒータは、不均一ヒータ密度関数を発生すると共に、ヒータの一方は、他方よりも熱くなるようになっている。この流量計は、線形の温度分布の利点を得ようとするものであるが、センサ管の両端部の2つのヒータを正確に温度調節することに依存しており、また、そのような温度調節を行うことは困難であるので、実際的なものではない。上記米国特許は、不均一ヒータ密度関数を発生するヒータを用いることによって線形の温度分布を得ることができることを開示していない。
本発明は、非対称的な形状のヒータ密度関数を発生するヒータを用いた流量計を包含することも、当業者には理解されよう。そのような非対称的な形状のヒータ密度関数は、例えば、異なる長さを有する2つのヒータコイルを用い、逆「V」字型の形状の一方の脚部(原点の一方の側の)を他方の脚部(原点の他方の側の)よりも長くすることにより、発生させることができる。また、互いに当接する2つのヒータコイル214、216を用いることに関して本発明を上に説明したが、本発明は、互いに当接せず、比較的平坦な中央の領域によって結合することのできる増大領域及び減少領域を有する台形状の形状によって特徴づけられるヒータ密度関数を発生することのできる、ヒータを用いた流量計を包含することは、当業者には理解されよう。
本発明の範囲から逸脱することなく、上述の装置に幾つかの変更を加えることができるので、本明細書に記載されたあるいは添付の図面に示された総ての事項は、例示的なものであって、限定的な意味で理解してはならない。
Claims (25)
- 質量流量計トランスジューサであって、
(A)入口端、出口端、及び、前記入口端から前記出口端まで伸長する内部通路を画成し、前記入口端から前記内部通路を通って前記出口端まで流体が流れることができるように構成された、センサ管と、
(B)代の端部及び第2の端部を有するヒータ手段とを備えており、該ヒータ手段は、前記第1及び第2の端部の間に不均一ヒータ密度関数を確立し、また、前記ヒータ手段は、前記センサ管の少なくとも一部を加熱するように前記センサ管の付近に設けられていること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。 - 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ手段は、ある部分を有しており、このある部分において、前記ヒータ密度関数は、前記第1の端部における最小値から前記第1及び第2の端部の間の点に位置する最大値まで単調関数的に増大し、その後、前記第2の端部における最小値まで単調関数的に減少するするように構成されたこと、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ手段は、ある部分を有しており、このある部分において、前記ヒータ密度関数は、前記第1の端部における最小値から前記第1及び第2の端部の間の点に位置する最大値まで連続的に増大し、その後、前記第2の端部における最小値まで連続的に減少するように構成されたこと、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ密度関数は、逆V字型の形状の関数であること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ手段は、ある部分を有しており、このある部分において、前記ヒータ密度関数は実質的に直線的に増大するように構成されたこと、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ手段は、ある部分を有しており、このある部分において、前記ヒータ密度関数は実質的に直線的に減少するように構成されたこと、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ密度関数の位置に関する二次導関数が、前記第1及び第2の端部の間の長さの大部分にわたって実質的にゼロに等しく、前記位置は、前記第1及び第2の端部の間の距離の関数として測定されること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ密度関数は、逆「V」字型の形状によって特徴づけられること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ密度関数は、コサイン型のアーチ形状によって特徴づけられること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ密度関数は、前記第1及び第2の端部付近で実質的にゼロに等しくなるように構成されたこと、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ手段は、前記センサ管の一部の回りに巻かれた抵抗導体であること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項11に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記導体は、不均一に巻かれていること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項1に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、入口ポート及び出口ポートを画成し、前記入口ポートから前記出口ポートまで流体を流すように構成された、バイパス管を更に備えており、前記入口端は、前記入口ポートの付近で前記バイパス管に接続され、また、前記出口端は、前記出口ポートの付近で前記バイパス管に接続されており、これにより、前記入口ポートから前記出口ポートまで流れる流体の中の一定の割合の流体が、前記センサ管の前記内部通路を通って流れるように構成されたこと、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項13に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記バイパス管を通って流れる流体の流量を制限するように前記バイパス管の中に設けられた、層流要素を更に備えており、前記層流要素は、前記入口端及び前記出口端が前記バイパス管にそれぞれ接続される位置の間に設けられていること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項14に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ手段に電流を与えると共に、前記センサ管の前記入口端から前記出口端まで流れる前記流体の量を表す信号を発生する、電子手段を更に備えること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 質量流量計トランスジューサであって、
(A)入口端、出口端、及び、前記入口端から前記出口端まで伸長する内部通路を画成し、前記入口端から前記内部通路を通って前記出口端まで流体が流れることができるように構成された、センサ管と、
(B)不均一ヒータ密度関数を発生し、これにより、前記センサ管の第1の部分に沿って温度分布を発生させるヒータ手段とを備えており、前記温度分布は、逆「V」字型の形状によって特徴づけられると共に、実質的に直線的な領域を含むように構成されたこと、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。 - 請求項16に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ手段は、前記センサ管の前記第1の部分の略中間に位置する単一の集中ヒータを含んでいる、ことを特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項17に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記センサ管の前記軸方向の長さは、十分に短く、これにより、前記温度分布は、前記センサ管の前記第1の部分の略中間から前記センサ管の前記両端部まで実質的に直線的に減少するように構成されたこと、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項16に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ手段は、上流側のヒータと、下流側のヒータとを備えており、前記上流側及び下流側のヒータは、前記センサ管の対応する部分の付近に設けられていること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項19に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記上流側及び下流側のヒータは、前記センサ管の回りに巻かれた抵抗導体から構成されること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項20に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記導体は、不均一に巻かれていること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 質量流量計トランスジューサであって、
(A)入口端、出口端、及び、前記入口端から前記出口端まで伸長する内部通路を画成し、前記入口端から前記内部通路を通って前記出口端まで流体が流れることができるように構成された、センサ管と、
(B)前記センサ管の一部に沿って不均一ヒータ密度関数を発生するヒータ手段とを備えており、前記密度関数は、コサイン型のアーチ形状によって特徴づけられること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。 - 請求項22に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記ヒータ手段は、上流側のヒータと、下流側のヒータとを備えており、前記上流側及び下流側のヒータは、前記センサ管の対応する部分の付近に設けられていること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項23に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記上流側及び下流側のヒータは、前記センサ管の回りに巻かれた抵抗導体から構成されていること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
- 請求項24に記載の質量流量計トランスジューサにおいて、前記導体は、不均一に巻かれていること、を特徴とする質量流量計トランスジューサ。
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