JP3540348B2 - 酸処理黒鉛の製造方法及び膨張黒鉛の製造方法 - Google Patents

酸処理黒鉛の製造方法及び膨張黒鉛の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、酸処理黒鉛の製造方法、及び、この酸処理黒鉛を加熱処理して膨張黒鉛を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、膨張黒鉛を製造するには、次の方法があった。
(1)化学薬品浸漬法
多量の酸化性媒体中に、多量の酸化剤、又は高濃度の酸化剤を添加することによって、黒鉛粒子を化学的に酸化する方法である。具体的には、濃度98%の濃硫酸と酸化剤(濃硝酸、重クロム酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素等)とを混合して、酸性の混合物を製造する。この酸性混合物に黒鉛粒子を浸漬し、酸処理黒鉛を製造する。この方法は、工業的量産に採用されている。
【0003】
しかし、多量の濃硫酸、多量の酸化剤を使用するため、これらの取扱は困難である。特に、多量の濃硫酸等を使用することから、そのままでは周囲環境の汚染等を引き起こすおそれがあるため、これらの有害物質の処理施設や公害防止施設が必要である。また、有毒ガスの発生による作業環境の汚染のおそれがある。更に、多量の濃硫酸を使用することから、水洗が困難である。また、黒鉛粒子を酸性混合物中へと浸漬するときに、酸化反応が瞬間的に激しく生ずるため、酸化反応の度合いに不均一が生ずる。これにより、酸処理黒鉛を加熱処理したときに、膨張状態にムラが生じ、未膨張の部分が残ったり、あるいは膨張倍率が低くなることがあった。また、この膨張倍率をシート状にしたときに、このシートの引っ張り強度が低下することがあった。
【0004】
(2)電解酸化処理法
多量の酸化性媒体中で、黒鉛粒子を電気化学的に酸化する方法である。この方法によれば、濃度70%〜95%の硫酸等の、比較的に低濃度の電解液中で、黒鉛粒子を処理することができる。しかし、均一な、膨張倍率の高い酸処理黒鉛を製造するためには、長時間の電解酸化が必要であるため、酸処理黒鉛の量産が困難である。また、電解液に対して、長時間電流を流すため、電解液の温度の上昇が著しく、このため装置の材質の劣化を招く。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、多量の濃硫酸を使用する必要がない方法を提供することである。
また、本発明の課題は、酸処理黒鉛を加熱処理したときに、膨張状態にムラが生じたり、未膨張の部分が残ったり、膨張倍率が低くなったり、シートの引っ張り強度が低下したりするのを、防止することである。
また、本発明の課題は、短時間で黒鉛粒子を酸処理する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る酸処理黒鉛の製造方法は、濃度90%〜98%の濃硫酸を黒鉛粒子に加えて攪拌することによりペーストを生成させ、このペーストを冷却してペーストの温度を10°C以下にし、このペーストを攪拌しながら、温度10°C以下の過酸化水素水をペーストへと添加して黒鉛粉末を酸化することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る膨張倍率の製造方法は、濃度90%〜98%の濃硫酸を黒鉛粒子に加えて攪拌することによりペーストを生成させ、このペーストを冷却してペーストの温度を10°C以下にし、このペーストを攪拌しながら、温度10°C以下の過酸化水素水をペーストへと添加して黒鉛粉末を酸化させることにより酸処理黒鉛を製造し、次いでこの酸処理黒鉛を700°C以上の温度で加熱して膨張黒鉛を生成させることを特徴とする。
【0008】
【作用】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意研究を進めた。この結果、冷却した少量の濃硫酸を黒鉛粒子に加えて攪拌し、ペースト状態(粘稠性の高い状態)とし、こうして得たペーストを冷却し、かつ攪拌しつつ、冷却した低濃度の過酸化水素水をこのペーストに対して添加することにより、膨張倍率が高く、膨張状態にムラが生じず、未膨張部分が生じない酸処理黒鉛を製造できることを発見した。
【0009】
また、こうして得た膨張黒鉛からシートを製造してシートの引っ張り強度を測定してみたが、化学薬品浸漬法によって得たものに比べて、シートの引っ張り強度が顕著に向上していた。
【0010】
この理由は、明らかではないが、化学薬品浸漬法に比べて、黒鉛粒子の酸化反応が緩やかであり、適度に制御されるために、反応にムラがなく、未反応の黒鉛粒子が生じにくいためであろう。
【0011】
このように、黒鉛粒子に硫酸を加えて、粘稠性の高いペーストを生成させるので、化学薬品浸漬法とは異なり、硫酸の添加量がごく少ない。また、過酸化水素水の濃度も、後述するように低くてもよい。
【0012】
従って、周囲環境の汚染等を引き起こすおそれがない。また、有毒ガスの発生による作業環境の汚染のおそれも少ない。更に、濃硫酸の量が少ないことから、少量の水で水洗を完了させることができるので、水洗が容易であり、硫酸水溶液の排水処理対策も容易になる。
【0013】
しかも、ペーストに対して過酸化水素水を添加して黒鉛粒子を酸化処理する工程は、例えば30分間程度の短い時間で、問題なく実施できることも確認した。従って、本発明の方法は、極めて量産に適したものであり、産業上の利用性が大きい。従来の電解酸化処理法によれば、これと同様のケースでも、例えば5時間程度の長時間、電解酸化を実施する必要があった。
【0014】
また、本発明の方法によって製造した酸処理黒鉛を、700°C以上の温度で加熱処理すると、膨張黒鉛が得られる。この加熱処理温度の上限は、好ましくは、1000°Cである。
【0015】
【実施例】
原料の黒鉛粒子は、好ましくは、天然リン片状黒 鉛、熱分解黒鉛及びキッシュ黒鉛からなる群より選ばれた1種以上の黒鉛粒子である。黒鉛粒子の平均粒径は、特に制限されないが、10〜200メッシュの範囲内の黒鉛粒子が好ましい。
【0016】
硫酸の温度は、特に限定されていないが、15°C以下とすることが好ましい。即ち、硫酸を黒鉛粒子に添加して混合させると、発熱するので、硫酸を予め冷却して硫酸の温度を15°C以下にすると、ペーストの温度を10°C以下にまで冷却することが、短時間で可能になるので、好ましい。この観点から、硫酸の温度を10°C以下とすることが好ましい。また、工業的に見ると、0°C以下にまで冷却するのは非効率なので、この観点からは、硫酸の温度を0°C以上とすることが好ましい。
【0017】
ただし、硫酸の温度が15°Cを越える場合であっても、ペーストの温度を10°C以下にまで冷却するための時間が長くなるが、その他の点では特に問題はない。
【0018】
硫酸の濃度が高ければ高いほど、酸化反応が進行し易いので、好ましい。特に、硫酸の濃度が90%未満であると、酸化反応がほとんど進行しなくなるので、90%以上とする必要がある。この観点から、硫酸の濃度を95%以上とすることが好ましい。また、実際上、硫酸の濃度を98%以下とするのが好ましい。
【0019】
ペーストの温度は10°C以下とする。これが10°Cを越えると、過酸化水素の分解が速くなり、酸化反応が不均一になる。また、過酸化水素水をペーストに添加したとき、発熱反応によって、ペーストの温度が瞬時に60°Cを越えるため、反応時に黒鉛粒子が膨張してしまう。こうなると、酸処理黒鉛の体積が増大するため、加熱処理後における膨張倍率が小さくなるので、使用することができなくなる。
【0020】
また、ペーストの冷却温度は、0°C以上とすることが好ましい。工業的に見ると、0°C以下にまで冷却するための装置は高価であり、非効率だからである。
【0021】
ペーストへと過酸化水素水を添加する際には、スプレーによって過酸化水素水を噴霧することが好ましい。過酸化水素水の温度は10°C以下とする。過酸化水素水の温度が10°Cを越えると、過酸化水素の分解が速くなり、酸化反応が不均一になるからである。
【0022】
過酸化水素水の濃度は、好ましくは、10%以上、30%以下である。過酸化水素水の濃度が10%未満であると、酸化反応が充分には行われない傾向がある。過酸化水素水の濃度が30%を越えると、酸化反応が激しくなり、ペーストの温度が瞬時に60°Cを越え、膨張の不均一の原因となる。
【0023】
黒鉛粒子100重量部に対して、過酸化水素水を10重量部〜40重量部添加することが好ましい。過酸化水素水の添加量が10重量部未満であると、過酸化水素の量が少なくなるので、酸化反応が不均一になりやすい傾向がある。過酸化水素水の添加量が40重量部を越えても、特に膨張倍率等の諸特性には影響はないし、過酸化水素の量が増えるので、経済的ではない。
【0024】
以下、更に具体的な実験結果について説明する。
最初に、粒度分布30〜60メッシュの天然リン片状黒鉛粉末(嵩密度0.66g/ml)を使用した実験結果について説明する。
【0025】
上記の天然リン片状黒鉛粉末100重量部に、硫酸150重量部を添加し、この混合物を攪拌し、ペースト状とした。この硫酸の濃度、温度は、表1に示す。このペーストを、表1に示す温度まで冷却した。このペーストを攪拌しながら、表1に示す温度に冷却した過酸化水素を、ペーストに対してスプレーによって噴霧し、30分間攪拌した。過酸化水素の濃度、量は、表1に示す。
【0026】
次いで、このペーストから黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥し、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行った。これにより、実施例1─1では、嵩密度0.0044g/mlの膨張黒鉛を得た。
【0027】
原料である天然リン片状黒鉛粉末の嵩密度をA(0.66g/ml)とし、膨張黒鉛の嵩密度をB(0.0044g/ml)とすると、膨張率はB/Aである。従って、実施例1─1では、膨張倍率B/Aは150倍であった。また、未膨張部分は存在しなかった。実施例1─2では、膨張倍率B/Aは151倍であり、未膨張部分は存在しなかった。この結果を表2に示す。
【0028】
また、上述のようにして得た膨張黒鉛を、ロールに通して、厚さ0.3mmのシート状に成形し、このシートの引っ張り強度を評価した。ただし、シートの形状は、「ダンベル1号」の形状とした。引っ張り速度は、100mm/分とした。この結果も表2に示す。
【0029】
一方、比較例1─1においては、上記の天然リン片状黒鉛粉末100重量部を、濃度98%の硫酸(400重量部)中に浸漬した。硫酸を攪拌しながら、ペルオキソ二硫酸アンモニウム20重量部を硫酸に添加し、次いで30分間攪拌した。
【0030】
次いで、この酸性混合物から黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥して酸処理黒鉛を得た。この酸処理黒鉛を、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行い、膨張黒鉛を得た。この膨張黒鉛について、上記の各実施例と同様にして、膨張倍率、引っ張り強度、未膨張の有無を測定した。この結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0003540348
【0032】
【表2】
Figure 0003540348
【0033】
表1、表2によれば、膨張倍率、引っ張り強度ともに、本発明の実施例1─1、実施例1─2の方が優れている。また、実施例1─1、1─2では、硫酸の使用量が、比較例1─1に比べてはるかに少ない。実施例1─2は、過酸化水素の濃度を50%として処理したものであり、膨張倍率等の諸特性は、実施例1─1と比べてまったく遜色はない。ただし、過酸化水素の濃度が高いことから、コスト的には不利である。
【0034】
次に、粒度分布30〜60メッシュの熱分解黒鉛粉末(嵩密度0.40g/ml)を使用した実験結果について説明する。
【0035】
上記の熱分解黒鉛粉末100重量部に、硫酸150重量部を添加し、この混合物を攪拌し、ペースト状とした。この硫酸の濃度、温度は、表3に示す。このペーストを、表3に示す温度まで冷却した。このペーストを攪拌しながら、表3に示す温度に冷却した過酸化水素を、ペーストに対してスプレーによって噴霧し、30分間攪拌した。過酸化水素の濃度、量は、表3に示す。
【0036】
次いで、このペーストから黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥し、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行った。こうして得た膨張黒鉛の膨張倍率、引っ張り強度、未膨張の有無を、表4に示す(実施例2─1)。
【0037】
また、上記の熱分解黒鉛粉末100重量部を、濃度95%の硫酸400重量部中に浸漬し、攪拌しながら、濃度50%の過酸化水素水を添加した。この混合物を30分間攪拌した。次いで、この酸性混合物から黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥して酸処理黒鉛を得た。この酸処理黒鉛を、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行い、膨張黒鉛を得た。この膨張黒鉛について、膨張倍率、引っ張り強度、未膨張の有無を測定した。この結果を表4に示す(比較例2─1)。
【0038】
【表3】
Figure 0003540348
【0039】
【表4】
Figure 0003540348
【0040】
実施例2─1では、膨張倍率B/Aは133倍であり、未膨張部分は存在しなかった。比較例2─1では、膨張倍率、引っ張り強度ともに実施例2─1よりも劣っており、未膨張部分も存在している。
【0041】
次に、粒度分布30〜60メッシュのキッシュ黒鉛粉末(嵩密度0.46g/ml)を使用した実験結果について説明する。
【0042】
上記のキッシュ黒鉛粉末100重量部に、硫酸170重量部を添加し、この混合物を攪拌し、ペースト状とした。この硫酸の濃度、温度は、表5に示す。このペーストを、表5に示す温度まで冷却した。このペーストを攪拌しながら、表5に示す温度に冷却した過酸化水素を、ペーストに対してスプレーによって噴霧し、30分間攪拌した。過酸化水素の濃度、量は、表5に示す。
【0043】
次いで、このペーストから黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥し、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行った。これにより、膨張黒鉛を得た。この膨張倍率、引っ張り強度及び未膨張の有無を、表6に示す。
【0044】
【表5】
Figure 0003540348
【0045】
【表6】
Figure 0003540348
【0046】
実施例3─1では、膨張倍率B/Aは139倍であり、引っ張り強度は47kg/cm2 であり、未膨張部分は存在しなかった。実施例3─2では、膨張倍率は140倍であり、引っ張り強度は47kg/cm2 であり、未膨張部分は存在しなかった。ただ、過酸化水素水の量が多いので(55重量部)、コストがその分上昇する。
【0047】
比較例3─1は、ペーストの温度を20°Cとして処理したものである。膨張倍率は100倍であり、引っ張り強度は35kg/cm2 であって、共に、実施例3─1、3─2に比べて、大幅に劣っている。
【0048】
次に、粒度分布40〜100メッシュの天然リン片状黒鉛粉末(嵩密度0.60g/ml)を使用した実験結果について説明する。
【0049】
上記の天然リン片状黒鉛粉末100重量部に、硫酸170重量部を添加し、この混合物を攪拌し、ペースト状とした。この硫酸の濃度、温度は、表7に示す。このペーストを、表7に示す温度まで冷却した。このペーストを攪拌しながら、表7に示す温度に冷却した過酸化水素を、ペーストに対してスプレーによって噴霧し、30分間攪拌した。過酸化水素の濃度、量は、表7に示す。
【0050】
次いで、このペーストから黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥し、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行った。こうして得た実施例4─1の膨張黒鉛について、膨張倍率、引っ張り強度及び未膨張の有無を、表8に示す。
【0051】
一方、比較例4─1においては、上記の天然リン片状黒鉛粉末100重量部を、濃度98%の硫酸(450重量部)中に浸漬した。硫酸を攪拌しながら、ペルオキソ二硫酸アンモニウム20重量部を硫酸に添加し、次いで30分間攪拌した。
【0052】
次いで、この酸性混合物から黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥して酸処理黒鉛を得た。この酸処理黒鉛を、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行い、膨張黒鉛を得た。この膨張黒鉛について、上記の実施例4─1と同様にして、膨張倍率、引っ張り強度、未膨張の有無を測定した。この結果を表8に示す。
【0053】
【表7】
Figure 0003540348
【0054】
【表8】
Figure 0003540348
【0055】
表7、表8によれば、膨張倍率、引っ張り強度ともに、本発明の実施例4─1の方が優れている。また、実施例4─1では、硫酸の使用量が、比較例4─1に比べてはるかに少ない。
【0056】
次に、粒度分布40〜100メッシュの熱分解黒鉛粉末(嵩密度0.38g/ml)を使用した実験結果について説明する。
【0057】
上記の熱分解黒鉛粉末100重量部に、硫酸200重量部を添加し、この混合物を攪拌し、ペースト状とした。この硫酸の濃度、温度は、表9に示す。このペーストを、表9に示す温度まで冷却した。このペーストを攪拌しながら、表9に示す温度に冷却した過酸化水素を、ペーストに対してスプレーによって噴霧し、30分間攪拌した。過酸化水素の濃度、量は、表9に示す。
【0058】
次いで、このペーストから黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥し、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行った。こうして得た膨張黒鉛の膨張倍率、引っ張り強度、未膨張の有無を、表10に示す。
【0059】
【表9】
Figure 0003540348
【0060】
【表10】
Figure 0003540348
【0061】
実施例5─1では、膨張倍率B/Aは127倍であり、引っ張り強度は43kg/cm2 であり、未膨張部分は存在しなかった。比較例5─1は、スプレーする過酸化水素水の温度を15°Cとして処理したものである。膨張倍率は106倍であり、引っ張り強度は38kg/cm2 であり、共に、実施例5─1に比べて、大幅に劣っている。
【0062】
次に、粒度分布40〜100メッシュのキッシュ黒鉛粉末(嵩密度0.43g/ml)を使用した実験結果について説明する。
【0063】
上記のキッシュ黒鉛粉末100重量部に、硫酸190重量部を添加し、この混合物を攪拌し、ペースト状とした。この硫酸の濃度、温度は、表11に示す。このペーストを、表11に示す温度まで冷却した。このペーストを攪拌しながら、表11に示す温度に冷却した過酸化水素を、ペーストに対してスプレーによって噴霧し、30分間攪拌した。過酸化水素の濃度、量は、表11に示す。
【0064】
次いで、このペーストから黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥し、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行った。こうして得た膨張黒鉛の膨張倍率、引っ張り強度、未膨張の有無を、表12に示す(実施例6─1)。
【0065】
また、上記のキッシュ黒鉛粉末100重量部を、濃度95%の硫酸400重量部中に浸漬し、攪拌しながら、濃度50%の過酸化水素水を添加した。この混合物を30分間攪拌した。次いで、この酸性混合物から黒鉛を取り出し、黒鉛を充分水洗し、乾燥して酸処理黒鉛を得た。この酸処理黒鉛を、温度800°Cの電気炉内に投入し、加熱処理を行い、膨張黒鉛を得た。この膨張黒鉛について、膨張倍率、引っ張り強度、未膨張の有無を測定した。この結果を表12に示す(比較例6─1)。
【0066】
【表11】
Figure 0003540348
【0067】
【表12】
Figure 0003540348
【0068】
実施例6─1では、膨張倍率B/Aは116倍であり、引っ張り強度は41kg/cm2 であり、未膨張部分は存在しなかった。比較例6─1では、膨張倍率、引っ張り強度ともに実施例2─1よりも劣っており、未膨張部分も存在している。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、膨張倍率が高く、膨張状態にムラが生じず、未膨張部分が生じない酸処理黒鉛を製造できる。しかも、こうして得た膨張黒鉛からシートを製造してシートの引っ張り強度を測定してみたが、化学薬品浸漬法によって得たものに比べて、シートの引っ張り強度が顕著に向上していた。
【0070】
このように、黒鉛粒子に硫酸を加えて、粘稠性の高いペーストを生成させるので、化学薬品浸漬法とは異なり、硫酸の添加量がごく少ない。また、過酸化水素水の濃度も、低くてもよい。従って、周囲環境の汚染等を引き起こすおそれがない。また、有毒ガスの発生による作業環境の汚染のおそれも少ない。更に、濃硫酸の量が少ないことから、少量の水で水洗を完了させることができるので、水洗が容易であり、硫酸水溶液の排水処理対策も容易になる。
【0071】
しかも、ペーストに対して過酸化水素水を添加して黒鉛粒子を酸化処理する工程は、例えば30分間程度の短い時間で、問題なく実施できる。従って、本発明の方法は、極めて量産に適したものであり、産業上の利用性が大きい。

Claims (4)

  1. 濃度90%以上の濃硫酸を黒鉛粒子に加えて攪拌することによりペーストを生成させ、このペーストを冷却してペーストの温度を10°C以下にし、このペーストを攪拌しながら、温度10°C以下の過酸化水素水を前記ペーストへと添加して前記黒鉛粉末を酸化することを特徴とする、酸処理黒鉛の製造方法。
  2. 前記黒鉛粒子が、天然リン片状黒鉛、熱分解黒鉛及びキッシュ黒鉛からなる群より選ばれた1種以上の黒鉛粒子である、請求項1記載の酸処理黒鉛の製造方法。
  3. 前記過酸化水素水の濃度が10%以上、30%以下であり、前記黒鉛粒子100重量部に対して前記過酸化水素水を10重量部〜40重量部添加する、請求項1記載の酸処理黒鉛の製造方法。
  4. 濃度90%以上の濃硫酸を黒鉛粒子に加えて攪拌することによりペーストを生成させ、このペーストを冷却してペーストの温度を10°C以下にし、このペーストを攪拌しながら、温度10°C以下の過酸化水素水を前記ペーストへと添加して前記黒鉛粉末を酸化させることにより酸処理黒鉛を製造し、次いでこの酸処理黒鉛を700°C以上の温度で加熱して膨張黒鉛を生成させることを特徴とする、膨張黒鉛の製造方法。
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