JP3539301B2 - ダイカスト装置およびダイカスト方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製や樹脂製の各種成形品の製造に用いられるダイカスト装置およびダイカスト方法に関し、とくに、型空間内を減圧して同型空間に溶湯の射出を行うダイカスト装置と、そのダイカスト装置を使用したダイカスト方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のダイカスト装置としては、例えば図2に示すようなものがある。図示のダイカスト装置は、成形品の鋳造空間である型空間101を形成する固定型102および可動型103を備えている。固定型102および可動型103は、外側を形成する固定側および可動側の各ブロック102A,103Aと、夫々のブロック102A,103Aに組み込まれて型空間101を形成する固定側および可動側の各入れ子102B,103Bを備えている。
【0003】
固定型102は、型空間101の下部に連通する射出スリーブ104を備えており、射出スリーブ104には、充填した溶湯105を加圧して型空間101へ射出するためのプランジャ106が収容してある。他方、可動型103は、型空間101の上部から図外の減圧装置に連通する排気通路107と、排気通路107の途中を開閉するカットオフバルブ108と、カットオフバルブ108を開閉駆動するシリンダ109を備えている。また、可動型103は、型を摺動自在に貫通し且つ型空間101等に対して先端が突没する複数の押出しピン110と、型外において各押出しピン110を取付けた押出しプレート111を備えると共に、型空間101と射出スリーブ104の間における湯口の近傍には、冷却液の流通系112を備えている。
【0004】
さらに、固定型102には、可動型103との間を密閉するシール材113が設けてあり、可動型103には、可動側ブロック103Aと可動側入れ子103Bの間に、当該可動型103と押出しピン110の隙間を密閉するシール材114や、当該可動型103と冷却液の流通系112の隙間を密閉するシール材115が設けてある。
【0005】
上記のダイカスト装置は、固定型102と可動型103を開いた状態にして型空間101の内面に離型剤をスプレーして塗布したのち、固定型102と可動型103を閉じるとともにカットオフバルブ108を開位置にして、減圧装置により排気通路107を介して型空間101内を減圧する。その後、減圧装置の停止とともにカットオフバルブ108を閉位置にして型空間101の減圧状態を維持し、続いて、プランジャ106により射出スリーブ104内の溶湯105を加圧して型空間101内に射出する。そして、溶湯が凝固したのちに固定型102と可動型103を開き、押出しプレート111とともに各押出しピン110を型空間101側に駆動して成形品を離型させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したようなダイカスト装置にあっては、型空間101の内面に離型剤を塗布した際に、可動型103と押出しピン110の隙間に離型剤が入り込み、その後、型空間101内を減圧した際に、隙間から離型剤が吸い出されて隙間の出口で離型剤の量が過剰になり、そこに溶湯105が射出されると溶湯105の熱で離型剤が膨脹し、これにより成形品に巣が発生することがある。
【0007】
そこで、例えば特開平7−85829号公報に記載されているように、可動型の内部に押出しピンの挿入部と減圧装置に連通するチャンバーを設け、型空間内を減圧する前にカットオフバルブを閉位置にしてチャンバー内を減圧し、型空間とチャンバーの圧力差によって可動型と押出しピンの隙間に入り込んだ離型剤をチャンバー側に排出するようにしたものがあった。
【0008】
しかしながら、上記したようにチャンバー内を減圧して可動型と押出しピンの隙間の離型剤を排出するダイカスト装置にあっては、隙間の離型剤を完全に排出することが難しく、隙間に残留した離型剤によって押出しピンの動きが次第に悪くなる恐れがあるほか、鋳造の際には、型空間内だけでなくチャンバー内も低圧になるので、可動型と押出しピンの隙間に溶湯が入り込んで成形品にばりが発生するという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0009】
また、この種のダイカスト装置では、成形品の品質と型空間の真空度に相関があり、成形品の品質を高く維持するために型空間の真空度を高く保つ必要があることから、シール材の保守管理を頻繁に行っている。
【0010】
これに対して、図2に示すような従来のダイカスト装置にあっては、可動型103において、押出しピン110に対するシール材114を可動側ブロック103Aと可動側入れ子103Bの間に設けていたため、シール材114の交換等を行うためには可動側ブロック103Aと可動側入れ子103Bを分解しなければならず、保守管理の作業に多くの手間と時間がかかると共に、装置の稼働率が極端に低下するという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0011】
【発明の目的】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、型を貫通する摺動部材を備えるとともに型空間の減圧を行うダイカスト装置において、第1に、型と摺動部材の隙間における離型剤の残留やばりの発生を防止することができるダイカスト装置およびダイカスト方法を提供することを目的とし、第2に、型と摺動部材の隙間を密閉するシール材の保守管理を容易に行うことができるダイカスト装置およびダイカスト方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わるダイカスト装置は、請求項1として、型空間を形成する固定型および可動型と、固定型および可動型の少なくとも一方において型を摺動自在に貫通し且つ型空間に対して先端が突没する摺動部材を備え、型空間内を減圧して同型空間内に溶湯を射出するダイカスト装置において、摺動部材を備えた型に、摺動部材が貫通するチャンバーを設けると共に、チャンバーに空気を加圧供給する空気供給手段を備えた構成とし、請求項2として、摺動部材を備えた型が、型の外側を形成するブロックと、ブロック内に固定されて相手型との間で型空間を形成する入れ子を備えると共に、ブロックと入れ子の間にチャンバーを設けた構成とし、請求項3として、摺動部材を備えた型の外側に、型と摺動部材の隙間を密閉するシール材と、摺動部材を摺動自在に貫通させ且つシール材を覆う押え板を備えた構成としており、上記の構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0013】
さらに、本発明に係わるダイカスト方法は、請求項4として、請求項1〜3のいずれかに記載のダイカスト装置を用いてダイカストを行うに際し、固定型と可動型を開いて型空間の内面に離型剤を塗布すると共に、空気供給手段でチャンバーに空気を加圧供給して型と摺動部材の隙間から型空間へ空気を噴出させ、その後、固定型と可動型を閉じると共に、チャンバーへの空気の加圧供給を停止し、型空間内の減圧およびチャンバーと外気の遮断を行ったのち、型空間内に溶湯を射出する構成とし、請求項5として、型空間内の減圧を開始したのち、所定時間だけチャンバーを外気に開放する構成としており、上記の構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0014】
【発明の作用】
本発明の請求項1に係わるダイカスト装置では、ダイカストを行うに際し、固定型と可動型を開いた状態にしてスプレー等で型空間の内面に離型剤を塗布するのと同時に、空気供給手段によってチャンバーに空気を加圧供給する。ここで、当該ダイカスト装置では、固定型および可動型の少なくとも一方において、型を摺動自在に貫通する摺動部材がチャンバーにも貫通しているので、チャンバーに空気を加圧供給すると、その空気が型と摺動部材の隙間から型空間の内面に噴出し、その気流によって隙間への離型剤の入り込みが阻止される。こののち、当該ダイカスト装置は、固定型と可動型を閉じるとともに空気供給手段を停止させ、空気供給手段において、チャンバーと外気を遮断しあるいはチャンバーを大気圧まで減圧させてからチャンバーと外気を遮断し、型空間内を減圧して同型空間内に溶湯を射出する。このとき、当該ダイカスト装置では、型空間内の減圧とともに型と摺動部材の隙間を介してチャンバー内も減圧されるが、隙間がきわめて小さいのでチャンバー内の減圧の度合いが低く、型空間内を所定の減圧状態にした直後はチャンバーの内圧が型空間の内圧よりも大きい状態にある。したがって、減圧直後の型空間に溶湯を射出すれば、チャンバーと型空間の圧力差によって型と摺動部材の隙間への溶湯の入り込みが阻止され、これによりばりの発生も防止される。
【0015】
本発明の請求項2に係わるダイカスト装置では、摺動部材を備えた型が、型の外側を形成するブロックと、ブロック内に固定されて相手型との間で型空間を形成する入れ子を備えると共に、ブロックと入れ子の間にチャンバーを設けているので、摺動部材を備えた型の製造段階において、型の内部に位置するチャンバーの成形が容易になる。
【0016】
本発明の請求項3に係わるダイカスト装置では、摺動部材を備えた型の外側において、型と摺動部材の隙間を密閉するシール材と、摺動部材を摺動自在に貫通させ且つシール材を覆う押え板を備えているので、型と摺動部材の間の気密性が高められると共に、摺動部材が貫通するチャンバーの気密性が確保され、これにより型空間の気密性も確保される。また、押え板を取外すとシール材が露出状態となり、摺動部材を取外せばシール材の取出しが可能になるので、シール材の保守管理に容易に対処し得ることとなる。
【0017】
本発明の請求項4に係わるダイカスト方法では、ダイカストを行うに際し、固定型と可動型を開いて型空間の内面に離型剤を塗布すると共に、空気供給手段でチャンバーに空気を加圧供給して型と摺動部材の隙間から型空間へ空気を噴出させる。この噴出気流によって隙間への離型剤の入り込みが阻止される。その後、固定型と可動型を閉じると共に、チャンバーへの空気の加圧供給を停止し、型空間内の減圧およびチャンバーと外気の遮断を行ったのち、型空間内に溶湯を射出する。このとき、型空間内の減圧とともに型と摺動部材の隙間を介してチャンバー内も減圧されるが、隙間がきわめて小さいのでチャンバー内の減圧の度合いが低く、型空間内を所定の減圧状態にした直後はチャンバーの内圧が型空間の内圧よりも大きい状態にある。したがって、減圧直後の型空間に溶湯を射出すれば、チャンバーと型空間の圧力差によって型と摺動部材の隙間への溶湯の入り込みが阻止され、これによりばりの発生も防止される。
【0018】
本発明の請求項5に係わるダイカスト方法では、型空間内の減圧を開始したのち、所定時間だけチャンバーを外気に開放する。すなわち、型空間内を減圧すると、型と摺動部材の隙間を介してチャンバー内も減圧されることから、型空間内の減圧開始から所定時間だけチャンバーを外気に開放すれば、減圧される型空間の内圧とほぼ大気圧となるチャンバーの内圧との差がより大きなものとなり、その後に行う溶湯射出の際に、大きな圧力差によって型と摺動部材の隙間への溶湯の入り込みがより確実に阻止される。
【0019】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わるダイカスト装置によれば、型を貫通する摺動部材を備えるとともに型空間の減圧を行うダイカスト装置において、チャンバーおよび空気供給手段を採用したことにより、型と摺動部材の隙間から空気を噴出させて隙間に離型剤が入り込むのを阻止することができ、残留した離型剤によって成形品に巣が発生したり、残留した離型剤によって摺動部材の動きが悪くなったりするといった不具合を解消することができると共に、型空間内の減圧および溶湯の射出の際には、型空間の内圧よりもチャンバーの内圧を高くして型と摺動部材の隙間に溶湯が入り込むのを阻止することができ、これによりばりの発生を防止して高品質の成形品を得ることができる。
【0020】
本発明の請求項2に係わるダイカスト装置によれば、請求項1と同様の効果を得ることができるうえに、型においてブロックと入れ子の間にチャンバーを設けたことから、摺動部材を備えた型の製造段階において、型の内部に位置するチャンバーの成形が容易になり、製造コストの低減等を実現することができる。
【0021】
本発明の請求項3に係わるダイカスト装置によれば、請求項1および2と同様の効果を得ることができるうえに、シール材および押え板によって型と摺動部材の間の高い気密性を得ることができるうえに、シール材および押え板を型の外側に設けたことから、チャンバーの高い気密性を得ることができ、これによりチャンバー内への空気の加圧供給ならびに型空間への空気の噴出を効率良く行うことができ、さらに型空間の高い気密性も得られるので、成形品の品質のさらなる向上に貢献することができる。また、押え板を取外すだけでシール材が露出状態になり、さらに摺動部材を取外せばシール材を取出すことが可能になるので、シール材の点検や交換等の保守管理をきわめて容易に且つ短時間で行うことができ、保守管理の時間短縮に伴って装置の稼働率も高く維持することができる。
【0022】
本発明の請求項4に係わるダイカスト方法によれば、ダイカストを行うに際して型空間の内面に離型剤を塗布するときに、型と摺動部材の隙間から空気を噴出させることにより、隙間に離型剤が入り込むのを阻止することができ、残留した離型剤によって成形品に巣が発生したり、残留した離型剤によって摺動部材の動きが悪くなったりするといった不具合を解消することができる。また、型空間内の減圧および溶湯の射出の際には、型空間の内圧よりもチャンバーの内圧を高くして型と摺動部材の隙間に溶湯が入り込むのを阻止することができ、これによりばりの発生を防止して高品質の成形品を得ることができる。
【0023】
本発明の請求項5に係わるダイカスト方法によれば、請求項4と同様の効果を得ることができるうえに、型空間内の減圧を開始したのち、所定時間だけチャンバーを外気に開放することにより、減圧時の型空間の内圧とチャンバーの内圧との差をより大きくして、型と摺動部材の隙間への溶湯の入り込みをより確実に阻止することができ、ばりの無い高品質の成形品を得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下、図面に基づいて、本発明に係わるダイカスト装置の一実施例およびダイカスト方法を説明する。
【0025】
図1に示すダイカスト装置は、成形品の鋳造空間である型空間1を形成する固定型2および可動型3を備えている。固定型2および可動型3は、外側を形成する固定側および可動側の各ブロック2A,3Aと、夫々のブロック2A,3Aの内側に組み込まれて型空間1を形成する固定側および可動側の各入れ子2B,3Bを備えている。
【0026】
固定型2は、湯口4を介して型空間1の下部に連通する射出スリーブ5を備えており、射出スリーブ5には、充填した溶湯6を加圧して型空間1へ射出するためのプランジャ7が収容してある。他方、可動型3は、型空間1の上部から真空ポンプ8に連通する排気通路9と、排気通路9の途中を開閉するカットオフバルブ10と、カットオフバルブ10を開閉駆動するシリンダ11を備えていると共に、湯口4の近傍等に対する冷却液の流通系12を備えている。カットオフバルブ10は、図示の状態において排気通路9を閉塞しており、図示の状態からシリンダ11とともに右方向に移動して排気通路9を開放する。
【0027】
また、固定型2および可動型3は、各々の型を水平方向に摺動自在に貫通し且つ型空間1等に対して先端が突没する摺動部材としての複数の押出しピン13,14と、型外において各押出しピン13,14を取付けた押出しプレート15,16を備えていると共に、各押出しピン13,14が貫通するチャンバー17,18と、各チャンバー17,18に空気を加圧供給する空気供給手段19,20を備えている。
【0028】
固定型2の押出しプレート15は、図示しない駆動機構により駆動されて型空間1に対して押出しピン13を突没させる。可動型3の押出しプレート16は、図示しない駆動機構あるいは可動型3の開閉動作に協働する機構により駆動されて、型空間1に対して押出しピン14を突没させる。
【0029】
各チャンバー17,18は、各々の型を構成するブロック2A,3Aと入れ子2B,3Bの間に設けてあり、このような構造とすることで型製作の際に容易に形成し得るものとしてある。各チャンバー17,18は、各々の下部に通じる供給通路21,22を介して各空気供給手段19,20に連通している。
【0030】
各空気供給手段19,20は、いずれも電磁弁23とエアポンプ24を備えた構成になっている。電磁弁23は、チャンバー17,18とエアポンプ24を連通させる第1モードM1、チャンバー17,18を外気に開放する第2モードM2、およびチャンバー17,18と外気を遮断する第3モードM3を切換えるようになっており、図示の状態ではチャンバー17,18とエアポンプ24を連通させる第1モードM1になっている。
【0031】
さらに、ダイカスト装置は、固定型2に、可動型3との間を密閉するシール材25が設けてあると共に、可動型3の可動側ブロック3Aと可動側入れ子3Bの間に、可動型3と冷却液の流通系12の隙間を密閉するシール材26が設けてあり、固定型2および可動型3の夫々の外側に、型と押出しピン13,14の隙間を密閉するシール材27,28と、押出しピン13,14を摺動自在に貫通させ且つシール材27,28を覆う押え板29,30を備えている。ここで、可動型3においては、押え板30に、冷却液の流通系12およびチャンバー18への供給通路22も貫通しており、可動型3と供給通路22の隙間にも押え板30により覆われるシール材31が設けてある。
【0032】
型の外側に設けた各シール材27,28,31は、例えばOリングであって、押出しピン13,14や供給通路22の外側に嵌合した状態にして、各型の外側に形成した凹部内に取付けてある。各押え板29、30は、いずれも一枚板であって、固定型2および可動型3に対して、ボルト類によって取外し可能に固定してある。
【0033】
次に、上記の構成を備えたダイカスト装置の作用を本発明に係わるダイカスト方法とともに説明する。
【0034】
ダイカスト装置は、ダイカストを行うに際し、固定型2と可動型3を開いた状態にして、スプレー等により型空間1の内面に離型剤を塗布する。このとき、各空気供給手段19,20の電磁弁23を第1モードM1にしてチャンバー17,18とエアポンプ24を連通状態にし、各エアポンプ24を作動させて各チャンバー17,18に大気圧よりも充分に高い圧力で空気を加圧供給する。これにより、各チャンバー17,18に供給した空気が型2,3と押出しピン13,14の隙間から型空間1側に噴出し、その空気流によって離型剤が隙間に入り込むのが阻止される。
【0035】
次に、離型剤の塗布が完了した後には、各空気供給手段19,20のエアポンプ24を停止させると共に、電磁弁23を第2モードM2にして各チャンバー18,19を外気に開放状態にし、続いて、カットオフバルブ10を開放位置にすると共に、固定型2と可動型3を閉じたのち、真空ポンプ8を作動させて型空間1内を減圧する。このとき、当該ダイカスト装置およびダイカスト方法では、減圧開始から所定時間(例えば1〜2秒)だけ各チャンバー17,18を外気に開放状態にし、その後、各チャンバー17,18と外気を遮断する。つまり、真空ポンプ8の作動開始から所定時間だけ各電磁弁23を第2モードM2にし、その後、各電磁弁23を第3モードM3にする。
【0036】
すなわち、当該ダイカスト装置およびダイカスト方法では、型空間1内を減圧すると、型と各押出しピン13,14の隙間を介して各チャンバー17,18内も減圧される。しかし、隙間がきわめて小さいので、各チャンバー17,18内の減圧の度合いは低く、型空間1内を所定の減圧状態にした直後は各チャンバー17,18の内圧が型空間1の内圧よりも大きい状態になる。このような圧力差により、後に射出される溶湯6が型と押しピン13,14の隙間に入り込むのを阻止することができる。ここで、型空間1内の減圧を開始すると共に、各チャンバー17,18を外気と遮断しても所定の圧力差を得ることができるが、先に述べたように、型空間1内の減圧を開始してから各チャンバー17,18を所定時間だけ外気に開放すれば、減圧される型空間1とほぼ大気圧となる各チャンバー17,18の圧力差がより大きいものとなり、これにより後の溶湯6の入り込みを阻止する機能がより一層高められる。
【0037】
上記の如く型空間1内の減圧をしたのちには、カットオフバルブ10を閉塞位置にすると共に、プランジャ7により射出スリーブ5内の溶湯6を加圧して型空間1内に射出する。このとき、型空間1の内圧に対して各チャンバー17,18の内圧が高く維持されているので、その圧力差によって型と押出しピン13,14の隙間に溶湯6が入り込むのが阻止され、溶湯6の凝固後にはばりの無い高品質な成形品が得られることとなる。
【0038】
このように、上記実施例で説明したダイカスト装置およびダイカスト方法によれば、型空間1の内面に離型剤を塗布する際に、型と押出しピン13,14の隙間に離型剤が入り込むことがないので、残留した離型剤によって成形品に巣が発生したり押出しピン13,14の動きが悪くなったりすることもなく、溶湯6を射出した際には、型空間1と各チャンバー17,18の圧力差だけで型と押出しピン13,14の隙間に溶湯6が入り込むのを阻止することができる。
【0039】
また、当該ダイカスト装置およびダイカスト方法では、シール材27,28および押え板29,30により、型と押出しピン13,14の間の高い気密性が得られるうえに、シール材27,28および押え板29,30を型の外側に設けているので、チャンバー17,18の高い気密性が得られ、これによりチャンバー17,18内への空気の加圧供給ならびに型空間1への空気の噴出が効率良く行われると共に、型空間1の高い気密性も得られるので、先に述べた圧力差による溶湯6の入り込みの阻止機能と相俟ってより高品質な成形品が得られる。
【0040】
さらに、当該ダイカスト装置は、固定型2および可動型3から各押え板29,30を取外せば、各シール材27,28,31が露出状態になり、各押出しピン13,14や供給通路22を外せば、各シール材27,28,31を取出すことができるので、各シール材27,28,31の点検や交換を短時間で容易に行うことが可能であり、各シール材27,28,31の保守管理がきわめて容易なものとなっている。
【0041】
なお、本発明に係わるダイカスト装置は、詳細な構造が上記実施例のみに限定されることはなく、摺動部材としては、上記実施例の押出しピンのほかに可動の入れ子等であっても良く、型の外側に設ける押え板は、単数の摺動部材あるいは選択された複数の摺動部材に対応するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるダイカスト装置の一実施例を説明する断面図である。
【図2】従来におけるダイカスト装置を説明する断面図である。
【符号の説明】
1 型空間
2 固定型
2A 固定側ブロック
2B 固定側入れ子
3 可動型
3A 可動側ブロック
3B 可動側入れ子
6 溶湯
8 真空ポンプ
13 14 押出しピン(摺動部材)
17 18 チャンバー
19 20 空気供給手段
27 28 シール材
29 30 押え板
23 電磁弁(空気供給手段)
24 エアポンプ(空気供給手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製や樹脂製の各種成形品の製造に用いられるダイカスト装置およびダイカスト方法に関し、とくに、型空間内を減圧して同型空間に溶湯の射出を行うダイカスト装置と、そのダイカスト装置を使用したダイカスト方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のダイカスト装置としては、例えば図2に示すようなものがある。図示のダイカスト装置は、成形品の鋳造空間である型空間101を形成する固定型102および可動型103を備えている。固定型102および可動型103は、外側を形成する固定側および可動側の各ブロック102A,103Aと、夫々のブロック102A,103Aに組み込まれて型空間101を形成する固定側および可動側の各入れ子102B,103Bを備えている。
【0003】
固定型102は、型空間101の下部に連通する射出スリーブ104を備えており、射出スリーブ104には、充填した溶湯105を加圧して型空間101へ射出するためのプランジャ106が収容してある。他方、可動型103は、型空間101の上部から図外の減圧装置に連通する排気通路107と、排気通路107の途中を開閉するカットオフバルブ108と、カットオフバルブ108を開閉駆動するシリンダ109を備えている。また、可動型103は、型を摺動自在に貫通し且つ型空間101等に対して先端が突没する複数の押出しピン110と、型外において各押出しピン110を取付けた押出しプレート111を備えると共に、型空間101と射出スリーブ104の間における湯口の近傍には、冷却液の流通系112を備えている。
【0004】
さらに、固定型102には、可動型103との間を密閉するシール材113が設けてあり、可動型103には、可動側ブロック103Aと可動側入れ子103Bの間に、当該可動型103と押出しピン110の隙間を密閉するシール材114や、当該可動型103と冷却液の流通系112の隙間を密閉するシール材115が設けてある。
【0005】
上記のダイカスト装置は、固定型102と可動型103を開いた状態にして型空間101の内面に離型剤をスプレーして塗布したのち、固定型102と可動型103を閉じるとともにカットオフバルブ108を開位置にして、減圧装置により排気通路107を介して型空間101内を減圧する。その後、減圧装置の停止とともにカットオフバルブ108を閉位置にして型空間101の減圧状態を維持し、続いて、プランジャ106により射出スリーブ104内の溶湯105を加圧して型空間101内に射出する。そして、溶湯が凝固したのちに固定型102と可動型103を開き、押出しプレート111とともに各押出しピン110を型空間101側に駆動して成形品を離型させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したようなダイカスト装置にあっては、型空間101の内面に離型剤を塗布した際に、可動型103と押出しピン110の隙間に離型剤が入り込み、その後、型空間101内を減圧した際に、隙間から離型剤が吸い出されて隙間の出口で離型剤の量が過剰になり、そこに溶湯105が射出されると溶湯105の熱で離型剤が膨脹し、これにより成形品に巣が発生することがある。
【0007】
そこで、例えば特開平7−85829号公報に記載されているように、可動型の内部に押出しピンの挿入部と減圧装置に連通するチャンバーを設け、型空間内を減圧する前にカットオフバルブを閉位置にしてチャンバー内を減圧し、型空間とチャンバーの圧力差によって可動型と押出しピンの隙間に入り込んだ離型剤をチャンバー側に排出するようにしたものがあった。
【0008】
しかしながら、上記したようにチャンバー内を減圧して可動型と押出しピンの隙間の離型剤を排出するダイカスト装置にあっては、隙間の離型剤を完全に排出することが難しく、隙間に残留した離型剤によって押出しピンの動きが次第に悪くなる恐れがあるほか、鋳造の際には、型空間内だけでなくチャンバー内も低圧になるので、可動型と押出しピンの隙間に溶湯が入り込んで成形品にばりが発生するという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0009】
また、この種のダイカスト装置では、成形品の品質と型空間の真空度に相関があり、成形品の品質を高く維持するために型空間の真空度を高く保つ必要があることから、シール材の保守管理を頻繁に行っている。
【0010】
これに対して、図2に示すような従来のダイカスト装置にあっては、可動型103において、押出しピン110に対するシール材114を可動側ブロック103Aと可動側入れ子103Bの間に設けていたため、シール材114の交換等を行うためには可動側ブロック103Aと可動側入れ子103Bを分解しなければならず、保守管理の作業に多くの手間と時間がかかると共に、装置の稼働率が極端に低下するという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0011】
【発明の目的】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、型を貫通する摺動部材を備えるとともに型空間の減圧を行うダイカスト装置において、第1に、型と摺動部材の隙間における離型剤の残留やばりの発生を防止することができるダイカスト装置およびダイカスト方法を提供することを目的とし、第2に、型と摺動部材の隙間を密閉するシール材の保守管理を容易に行うことができるダイカスト装置およびダイカスト方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わるダイカスト装置は、請求項1として、型空間を形成する固定型および可動型と、固定型および可動型の少なくとも一方において型を摺動自在に貫通し且つ型空間に対して先端が突没する摺動部材を備え、型空間内を減圧して同型空間内に溶湯を射出するダイカスト装置において、摺動部材を備えた型に、摺動部材が貫通するチャンバーを設けると共に、チャンバーに空気を加圧供給する空気供給手段を備えた構成とし、請求項2として、摺動部材を備えた型が、型の外側を形成するブロックと、ブロック内に固定されて相手型との間で型空間を形成する入れ子を備えると共に、ブロックと入れ子の間にチャンバーを設けた構成とし、請求項3として、摺動部材を備えた型の外側に、型と摺動部材の隙間を密閉するシール材と、摺動部材を摺動自在に貫通させ且つシール材を覆う押え板を備えた構成としており、上記の構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0013】
さらに、本発明に係わるダイカスト方法は、請求項4として、請求項1〜3のいずれかに記載のダイカスト装置を用いてダイカストを行うに際し、固定型と可動型を開いて型空間の内面に離型剤を塗布すると共に、空気供給手段でチャンバーに空気を加圧供給して型と摺動部材の隙間から型空間へ空気を噴出させ、その後、固定型と可動型を閉じると共に、チャンバーへの空気の加圧供給を停止し、型空間内の減圧およびチャンバーと外気の遮断を行ったのち、型空間内に溶湯を射出する構成とし、請求項5として、型空間内の減圧を開始したのち、所定時間だけチャンバーを外気に開放する構成としており、上記の構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0014】
【発明の作用】
本発明の請求項1に係わるダイカスト装置では、ダイカストを行うに際し、固定型と可動型を開いた状態にしてスプレー等で型空間の内面に離型剤を塗布するのと同時に、空気供給手段によってチャンバーに空気を加圧供給する。ここで、当該ダイカスト装置では、固定型および可動型の少なくとも一方において、型を摺動自在に貫通する摺動部材がチャンバーにも貫通しているので、チャンバーに空気を加圧供給すると、その空気が型と摺動部材の隙間から型空間の内面に噴出し、その気流によって隙間への離型剤の入り込みが阻止される。こののち、当該ダイカスト装置は、固定型と可動型を閉じるとともに空気供給手段を停止させ、空気供給手段において、チャンバーと外気を遮断しあるいはチャンバーを大気圧まで減圧させてからチャンバーと外気を遮断し、型空間内を減圧して同型空間内に溶湯を射出する。このとき、当該ダイカスト装置では、型空間内の減圧とともに型と摺動部材の隙間を介してチャンバー内も減圧されるが、隙間がきわめて小さいのでチャンバー内の減圧の度合いが低く、型空間内を所定の減圧状態にした直後はチャンバーの内圧が型空間の内圧よりも大きい状態にある。したがって、減圧直後の型空間に溶湯を射出すれば、チャンバーと型空間の圧力差によって型と摺動部材の隙間への溶湯の入り込みが阻止され、これによりばりの発生も防止される。
【0015】
本発明の請求項2に係わるダイカスト装置では、摺動部材を備えた型が、型の外側を形成するブロックと、ブロック内に固定されて相手型との間で型空間を形成する入れ子を備えると共に、ブロックと入れ子の間にチャンバーを設けているので、摺動部材を備えた型の製造段階において、型の内部に位置するチャンバーの成形が容易になる。
【0016】
本発明の請求項3に係わるダイカスト装置では、摺動部材を備えた型の外側において、型と摺動部材の隙間を密閉するシール材と、摺動部材を摺動自在に貫通させ且つシール材を覆う押え板を備えているので、型と摺動部材の間の気密性が高められると共に、摺動部材が貫通するチャンバーの気密性が確保され、これにより型空間の気密性も確保される。また、押え板を取外すとシール材が露出状態となり、摺動部材を取外せばシール材の取出しが可能になるので、シール材の保守管理に容易に対処し得ることとなる。
【0017】
本発明の請求項4に係わるダイカスト方法では、ダイカストを行うに際し、固定型と可動型を開いて型空間の内面に離型剤を塗布すると共に、空気供給手段でチャンバーに空気を加圧供給して型と摺動部材の隙間から型空間へ空気を噴出させる。この噴出気流によって隙間への離型剤の入り込みが阻止される。その後、固定型と可動型を閉じると共に、チャンバーへの空気の加圧供給を停止し、型空間内の減圧およびチャンバーと外気の遮断を行ったのち、型空間内に溶湯を射出する。このとき、型空間内の減圧とともに型と摺動部材の隙間を介してチャンバー内も減圧されるが、隙間がきわめて小さいのでチャンバー内の減圧の度合いが低く、型空間内を所定の減圧状態にした直後はチャンバーの内圧が型空間の内圧よりも大きい状態にある。したがって、減圧直後の型空間に溶湯を射出すれば、チャンバーと型空間の圧力差によって型と摺動部材の隙間への溶湯の入り込みが阻止され、これによりばりの発生も防止される。
【0018】
本発明の請求項5に係わるダイカスト方法では、型空間内の減圧を開始したのち、所定時間だけチャンバーを外気に開放する。すなわち、型空間内を減圧すると、型と摺動部材の隙間を介してチャンバー内も減圧されることから、型空間内の減圧開始から所定時間だけチャンバーを外気に開放すれば、減圧される型空間の内圧とほぼ大気圧となるチャンバーの内圧との差がより大きなものとなり、その後に行う溶湯射出の際に、大きな圧力差によって型と摺動部材の隙間への溶湯の入り込みがより確実に阻止される。
【0019】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わるダイカスト装置によれば、型を貫通する摺動部材を備えるとともに型空間の減圧を行うダイカスト装置において、チャンバーおよび空気供給手段を採用したことにより、型と摺動部材の隙間から空気を噴出させて隙間に離型剤が入り込むのを阻止することができ、残留した離型剤によって成形品に巣が発生したり、残留した離型剤によって摺動部材の動きが悪くなったりするといった不具合を解消することができると共に、型空間内の減圧および溶湯の射出の際には、型空間の内圧よりもチャンバーの内圧を高くして型と摺動部材の隙間に溶湯が入り込むのを阻止することができ、これによりばりの発生を防止して高品質の成形品を得ることができる。
【0020】
本発明の請求項2に係わるダイカスト装置によれば、請求項1と同様の効果を得ることができるうえに、型においてブロックと入れ子の間にチャンバーを設けたことから、摺動部材を備えた型の製造段階において、型の内部に位置するチャンバーの成形が容易になり、製造コストの低減等を実現することができる。
【0021】
本発明の請求項3に係わるダイカスト装置によれば、請求項1および2と同様の効果を得ることができるうえに、シール材および押え板によって型と摺動部材の間の高い気密性を得ることができるうえに、シール材および押え板を型の外側に設けたことから、チャンバーの高い気密性を得ることができ、これによりチャンバー内への空気の加圧供給ならびに型空間への空気の噴出を効率良く行うことができ、さらに型空間の高い気密性も得られるので、成形品の品質のさらなる向上に貢献することができる。また、押え板を取外すだけでシール材が露出状態になり、さらに摺動部材を取外せばシール材を取出すことが可能になるので、シール材の点検や交換等の保守管理をきわめて容易に且つ短時間で行うことができ、保守管理の時間短縮に伴って装置の稼働率も高く維持することができる。
【0022】
本発明の請求項4に係わるダイカスト方法によれば、ダイカストを行うに際して型空間の内面に離型剤を塗布するときに、型と摺動部材の隙間から空気を噴出させることにより、隙間に離型剤が入り込むのを阻止することができ、残留した離型剤によって成形品に巣が発生したり、残留した離型剤によって摺動部材の動きが悪くなったりするといった不具合を解消することができる。また、型空間内の減圧および溶湯の射出の際には、型空間の内圧よりもチャンバーの内圧を高くして型と摺動部材の隙間に溶湯が入り込むのを阻止することができ、これによりばりの発生を防止して高品質の成形品を得ることができる。
【0023】
本発明の請求項5に係わるダイカスト方法によれば、請求項4と同様の効果を得ることができるうえに、型空間内の減圧を開始したのち、所定時間だけチャンバーを外気に開放することにより、減圧時の型空間の内圧とチャンバーの内圧との差をより大きくして、型と摺動部材の隙間への溶湯の入り込みをより確実に阻止することができ、ばりの無い高品質の成形品を得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下、図面に基づいて、本発明に係わるダイカスト装置の一実施例およびダイカスト方法を説明する。
【0025】
図1に示すダイカスト装置は、成形品の鋳造空間である型空間1を形成する固定型2および可動型3を備えている。固定型2および可動型3は、外側を形成する固定側および可動側の各ブロック2A,3Aと、夫々のブロック2A,3Aの内側に組み込まれて型空間1を形成する固定側および可動側の各入れ子2B,3Bを備えている。
【0026】
固定型2は、湯口4を介して型空間1の下部に連通する射出スリーブ5を備えており、射出スリーブ5には、充填した溶湯6を加圧して型空間1へ射出するためのプランジャ7が収容してある。他方、可動型3は、型空間1の上部から真空ポンプ8に連通する排気通路9と、排気通路9の途中を開閉するカットオフバルブ10と、カットオフバルブ10を開閉駆動するシリンダ11を備えていると共に、湯口4の近傍等に対する冷却液の流通系12を備えている。カットオフバルブ10は、図示の状態において排気通路9を閉塞しており、図示の状態からシリンダ11とともに右方向に移動して排気通路9を開放する。
【0027】
また、固定型2および可動型3は、各々の型を水平方向に摺動自在に貫通し且つ型空間1等に対して先端が突没する摺動部材としての複数の押出しピン13,14と、型外において各押出しピン13,14を取付けた押出しプレート15,16を備えていると共に、各押出しピン13,14が貫通するチャンバー17,18と、各チャンバー17,18に空気を加圧供給する空気供給手段19,20を備えている。
【0028】
固定型2の押出しプレート15は、図示しない駆動機構により駆動されて型空間1に対して押出しピン13を突没させる。可動型3の押出しプレート16は、図示しない駆動機構あるいは可動型3の開閉動作に協働する機構により駆動されて、型空間1に対して押出しピン14を突没させる。
【0029】
各チャンバー17,18は、各々の型を構成するブロック2A,3Aと入れ子2B,3Bの間に設けてあり、このような構造とすることで型製作の際に容易に形成し得るものとしてある。各チャンバー17,18は、各々の下部に通じる供給通路21,22を介して各空気供給手段19,20に連通している。
【0030】
各空気供給手段19,20は、いずれも電磁弁23とエアポンプ24を備えた構成になっている。電磁弁23は、チャンバー17,18とエアポンプ24を連通させる第1モードM1、チャンバー17,18を外気に開放する第2モードM2、およびチャンバー17,18と外気を遮断する第3モードM3を切換えるようになっており、図示の状態ではチャンバー17,18とエアポンプ24を連通させる第1モードM1になっている。
【0031】
さらに、ダイカスト装置は、固定型2に、可動型3との間を密閉するシール材25が設けてあると共に、可動型3の可動側ブロック3Aと可動側入れ子3Bの間に、可動型3と冷却液の流通系12の隙間を密閉するシール材26が設けてあり、固定型2および可動型3の夫々の外側に、型と押出しピン13,14の隙間を密閉するシール材27,28と、押出しピン13,14を摺動自在に貫通させ且つシール材27,28を覆う押え板29,30を備えている。ここで、可動型3においては、押え板30に、冷却液の流通系12およびチャンバー18への供給通路22も貫通しており、可動型3と供給通路22の隙間にも押え板30により覆われるシール材31が設けてある。
【0032】
型の外側に設けた各シール材27,28,31は、例えばOリングであって、押出しピン13,14や供給通路22の外側に嵌合した状態にして、各型の外側に形成した凹部内に取付けてある。各押え板29、30は、いずれも一枚板であって、固定型2および可動型3に対して、ボルト類によって取外し可能に固定してある。
【0033】
次に、上記の構成を備えたダイカスト装置の作用を本発明に係わるダイカスト方法とともに説明する。
【0034】
ダイカスト装置は、ダイカストを行うに際し、固定型2と可動型3を開いた状態にして、スプレー等により型空間1の内面に離型剤を塗布する。このとき、各空気供給手段19,20の電磁弁23を第1モードM1にしてチャンバー17,18とエアポンプ24を連通状態にし、各エアポンプ24を作動させて各チャンバー17,18に大気圧よりも充分に高い圧力で空気を加圧供給する。これにより、各チャンバー17,18に供給した空気が型2,3と押出しピン13,14の隙間から型空間1側に噴出し、その空気流によって離型剤が隙間に入り込むのが阻止される。
【0035】
次に、離型剤の塗布が完了した後には、各空気供給手段19,20のエアポンプ24を停止させると共に、電磁弁23を第2モードM2にして各チャンバー18,19を外気に開放状態にし、続いて、カットオフバルブ10を開放位置にすると共に、固定型2と可動型3を閉じたのち、真空ポンプ8を作動させて型空間1内を減圧する。このとき、当該ダイカスト装置およびダイカスト方法では、減圧開始から所定時間(例えば1〜2秒)だけ各チャンバー17,18を外気に開放状態にし、その後、各チャンバー17,18と外気を遮断する。つまり、真空ポンプ8の作動開始から所定時間だけ各電磁弁23を第2モードM2にし、その後、各電磁弁23を第3モードM3にする。
【0036】
すなわち、当該ダイカスト装置およびダイカスト方法では、型空間1内を減圧すると、型と各押出しピン13,14の隙間を介して各チャンバー17,18内も減圧される。しかし、隙間がきわめて小さいので、各チャンバー17,18内の減圧の度合いは低く、型空間1内を所定の減圧状態にした直後は各チャンバー17,18の内圧が型空間1の内圧よりも大きい状態になる。このような圧力差により、後に射出される溶湯6が型と押しピン13,14の隙間に入り込むのを阻止することができる。ここで、型空間1内の減圧を開始すると共に、各チャンバー17,18を外気と遮断しても所定の圧力差を得ることができるが、先に述べたように、型空間1内の減圧を開始してから各チャンバー17,18を所定時間だけ外気に開放すれば、減圧される型空間1とほぼ大気圧となる各チャンバー17,18の圧力差がより大きいものとなり、これにより後の溶湯6の入り込みを阻止する機能がより一層高められる。
【0037】
上記の如く型空間1内の減圧をしたのちには、カットオフバルブ10を閉塞位置にすると共に、プランジャ7により射出スリーブ5内の溶湯6を加圧して型空間1内に射出する。このとき、型空間1の内圧に対して各チャンバー17,18の内圧が高く維持されているので、その圧力差によって型と押出しピン13,14の隙間に溶湯6が入り込むのが阻止され、溶湯6の凝固後にはばりの無い高品質な成形品が得られることとなる。
【0038】
このように、上記実施例で説明したダイカスト装置およびダイカスト方法によれば、型空間1の内面に離型剤を塗布する際に、型と押出しピン13,14の隙間に離型剤が入り込むことがないので、残留した離型剤によって成形品に巣が発生したり押出しピン13,14の動きが悪くなったりすることもなく、溶湯6を射出した際には、型空間1と各チャンバー17,18の圧力差だけで型と押出しピン13,14の隙間に溶湯6が入り込むのを阻止することができる。
【0039】
また、当該ダイカスト装置およびダイカスト方法では、シール材27,28および押え板29,30により、型と押出しピン13,14の間の高い気密性が得られるうえに、シール材27,28および押え板29,30を型の外側に設けているので、チャンバー17,18の高い気密性が得られ、これによりチャンバー17,18内への空気の加圧供給ならびに型空間1への空気の噴出が効率良く行われると共に、型空間1の高い気密性も得られるので、先に述べた圧力差による溶湯6の入り込みの阻止機能と相俟ってより高品質な成形品が得られる。
【0040】
さらに、当該ダイカスト装置は、固定型2および可動型3から各押え板29,30を取外せば、各シール材27,28,31が露出状態になり、各押出しピン13,14や供給通路22を外せば、各シール材27,28,31を取出すことができるので、各シール材27,28,31の点検や交換を短時間で容易に行うことが可能であり、各シール材27,28,31の保守管理がきわめて容易なものとなっている。
【0041】
なお、本発明に係わるダイカスト装置は、詳細な構造が上記実施例のみに限定されることはなく、摺動部材としては、上記実施例の押出しピンのほかに可動の入れ子等であっても良く、型の外側に設ける押え板は、単数の摺動部材あるいは選択された複数の摺動部材に対応するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるダイカスト装置の一実施例を説明する断面図である。
【図2】従来におけるダイカスト装置を説明する断面図である。
【符号の説明】
1 型空間
2 固定型
2A 固定側ブロック
2B 固定側入れ子
3 可動型
3A 可動側ブロック
3B 可動側入れ子
6 溶湯
8 真空ポンプ
13 14 押出しピン(摺動部材)
17 18 チャンバー
19 20 空気供給手段
27 28 シール材
29 30 押え板
23 電磁弁(空気供給手段)
24 エアポンプ(空気供給手段)
Claims (5)
- 型空間を形成する固定型および可動型と、固定型および可動型の少なくとも一方において型を摺動自在に貫通し且つ型空間に対して先端が突没する摺動部材を備え、型空間内を減圧して同型空間内に溶湯を射出するダイカスト装置において、摺動部材を備えた型に、摺動部材が貫通するチャンバーを設けると共に、チャンバーに空気を加圧供給する空気供給手段を備えたことを特徴とするダイカスト装置。
- 摺動部材を備えた型が、型の外側を形成するブロックと、ブロック内に固定されて相手型との間で型空間を形成する入れ子を備えると共に、ブロックと入れ子の間にチャンバーを設けたことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト装置。
- 摺動部材を備えた型の外側に、型と摺動部材の隙間を密閉するシール材と、摺動部材を摺動自在に貫通させ且つシール材を覆う押え板を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のダイカスト装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のダイカスト装置を用いてダイカストを行うに際し、固定型と可動型を開いて型空間の内面に離型剤を塗布すると共に、空気供給手段でチャンバーに空気を加圧供給して型と摺動部材の隙間から型空間へ空気を噴出させ、その後、固定型と可動型を閉じると共に、チャンバーへの空気の加圧供給を停止し、型空間内の減圧およびチャンバーと外気の遮断を行ったのち、型空間内に溶湯を射出することを特徴とするダイカスト方法。
- 型空間内の減圧を開始したのち、所定時間だけチャンバーを外気に開放することを特徴とする請求項4に記載のダイカスト方法。
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