JP3430607B2 - ダイカスト金型の潤滑剤塗布方法および塗布装置 - Google Patents

ダイカスト金型の潤滑剤塗布方法および塗布装置

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JP3430607B2
JP3430607B2 JP00691194A JP691194A JP3430607B2 JP 3430607 B2 JP3430607 B2 JP 3430607B2 JP 00691194 A JP00691194 A JP 00691194A JP 691194 A JP691194 A JP 691194A JP 3430607 B2 JP3430607 B2 JP 3430607B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ダイカスト金型を型閉
めした状態で金型キャビティの内面に潤滑剤を塗布する
方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイカスト鋳造においては、金型キャビ
ティで成形された鋳物の型離れをよくするために潤滑剤
が使用されている。潤滑剤は、植物性油脂、鉱物油、そ
の他の油、または水溶性の溶剤にアルミニウム粉末や黒
鉛粉末などを混合したものを使用しており、このような
潤滑剤を金型キャビティやこれに連通する射出スリーブ
の内面に塗布しておくと、潤滑剤の薄い被膜が形成され
ることから、溶湯の溶着が防止され、離型が容易にな
る。
【0003】このような潤滑剤を金型キャビティおよび
射出スリーブの内面に塗布する方法として、従来、特開
昭62−127150号に開示されているように、型閉
め状態でキャビティ内に潤滑剤を供給する方法が知られ
ている。
【0004】上記の潤滑剤塗布方法は、金型に接続され
た真空ポンプによって金型キャビティ内を大気圧以下に
減圧状態にし、この吸引作用によって潤滑剤のミストを
金型キャビティに導入するという方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記公報に示された従
来の塗布方法は、金型キャビティの一端からこの金型キ
ャビティ内の空気を抜き取って大気圧以下に減圧し、こ
の減圧を継続したまま金型キャビティの他端から潤滑剤
ミストを金型キャビティ内に供給する方法であるため、
潤滑剤は金型キャビティの他端から一端に向かって流
れ、したがってこの流れる経路に沿って潤滑剤が塗布さ
れる。
【0006】しかし、このような塗布方法の場合は、潤
滑剤の流れる経路が固定したまま広がらず、この経路か
ら枝分かれした箇所や凹部、または奥まった箇所に潤滑
剤が拡散しなく、均等な塗布を阻害するという現象が発
生する。このため、この方法を複雑形状、多数個取りの
金型に適用すると、全面に潤滑剤が行き渡らず、行き渡
らない部分で充分な膜厚の塗布膜が形成されないから、
焼付やかじりを発生し、複雑形状、多数個取りの金型に
は適用困難という問題があった。
【0007】したがって本発明は、複雑形状の金型キャ
ビティであっても潤滑剤を均等に供給することができ、
膜厚差の少ない潤滑剤塗布膜を全面に亘り付着させるこ
とができるダイカスト金型の潤滑剤塗布方法および塗布
装置を提供しようとするものである。
【0008】
【0009】
【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため
請求項の発明方法は、ダイカスト金型を型閉めして金
型キャビティ内を閉空間とし、この閉空間を一端に接続
した減圧装置により大気圧以下に減圧し、この後この閉
空間に他端から噴射ノズルより潤滑剤を噴射し、閉空間
の減圧と潤滑剤の噴射を同時に進行させ、次に減圧を止
めてこの閉空間を大気圧以上の加圧状態にして上記噴射
した潤滑剤を上記閉空間の内面に付着させるようにした
ことを特徴とする。
【0010】請求項の発明方法は、上記閉空間の減圧
と潤滑剤の噴射を同時に進行させる場合、閉空間の圧力
を大気圧より高い正圧状態に保つことを特徴とする。請
求項の発明方法は、上記閉空間の減圧と潤滑剤の噴射
を同時に進行させる場合、閉空間の圧力を大気圧未満
保つことを特徴とする。
【0011】請求項の発明装置は、ダイカスト金型の
内部に形成される金型キャビティの一端に連通された減
圧装置と、この金型キャビティの他端に連通され給湯口
を備えた射出スリーブと、上記給湯口を開閉する給湯口
用蓋と、この給湯口用蓋に設けられ、この給湯口用蓋が
上記給湯口を閉塞した場合に射出スリーブに挿入される
潤滑剤噴射ノズルと、この噴射ノズルから噴射される潤
滑剤の噴射圧力を制御する圧力制御手段と、上記減圧装
置および圧力制御手段の作動タイミングを制御して金型
キャビティの閉空間を大気圧未満および大気圧より高い
状態に制御するタイミング制御手段と、を具備したこと
を特徴とする。
【0012】
【0013】
【作用】 請求項の発明方法によれば、減圧工程と加圧
工程との間に閉空間の減圧と潤滑剤の噴射を同時に進行
させる工程を設けたから、金型キャビティに噴射された
潤滑剤ミストが金型キャビティの他端から一端に向かっ
て流れ、したがって少なくともこの流れる経路に沿って
潤滑剤は分布される。この状態で閉空間が大気圧より高
い状態に加圧されるから、この経路から枝分かれした箇
所や凹部、または奥まった箇所に潤滑剤が良好に拡散
し、かつ潤滑剤ミストが押されて閉空間の内面に押し付
けられる。よって、均等な塗布膜を作ることができる。
【0014】請求項の発明方法によれば、閉空間の減
圧と潤滑剤の噴射を同時に進行させる場合に、閉空間を
加圧状態に維持するから、閉空間の壁面に対する潤滑剤
ミストの押し付けが促され、潤滑剤ミストの付着性が向
上する。
【0015】請求項の発明方法によれば、閉空間の減
圧と潤滑剤の噴射を同時に進行させる場合に、閉空間を
減圧状態に維持するから、残留空気の排除が良くなり、
潤滑剤ミストの付着性が向上する。
【0016】請求項の発明装置によれば、上記請求項
1ないし請求項に記載された方法を実行できるととも
に、給湯口を開閉する給湯口用蓋を設けたので金型キャ
ビティが閉空間に保たれるようになり、しかもこの給湯
口用蓋に潤滑剤噴射ノズルを取り付けたので、構造が簡
素化する。
【0017】
【実施例】以下本発明について、図面に示す第1の実施
例にもとづき詳細に説明する。図1は潤滑剤塗布装置を
付設したアルミダイカストマシンの構成を示すものであ
り、図において1はダイカストマシンである。ダイカス
トマシン1は、固定ベース10に固定母型11を取り付
けるとともに、この固定母型11に固定入子12を取り
付けてあり、かつ可動ベース13に可動母型14を取り
付けるとともに、この可動母型14に可動入子15を取
り付けて構成してある。可動ベース13が固定ベース1
0に接近するように移動されると、可動入子15が固定
入子12に当接し、これら入子12、15間に形成され
た金型キャビティ16を閉空間にするようになってい
る。この金型キャビティ16の他端は射出スリーブ17
に連通しており、この射出スリーブ17の先端部には給
湯口18が開口されている。給湯口18からは図示しな
い溶解鍋で溶融された溶湯が射出スリーブ17に供給さ
れるようになっており、射出スリーブ17に供給された
溶湯は、射出プランジャ19の前進移動によって金型キ
ャビティ16に押し出されるようになっている。
【0018】上記金型キャビティ16の一端には、減圧
装置2が接続されている。すなわち、金型キャビティ1
6は排気通路21を介して真空ポンプ22に接続されて
いる。この排気通路21の途中には開閉弁23が設けら
れており、この開閉弁23は制御シリンダ24の制御ピ
ストン25に連結されている。制御シリンダ24は切換
弁26の切換え作用により制御されるようになってい
る。
【0019】なお、27は排気通路21内の真空度を計
測する真空計を示し、また28は鋳造品を取り出す場合
に作動される押出しピンを示す。上記ダイカストマシン
1の給湯口18近傍には、潤滑剤ミスト供給装置3が設
けられている。この潤滑剤ミスト供給装置3は、潤滑剤
加圧タンク31と、潤滑剤微粒化用噴射ノズル32と、
本発明の圧力制御手段に相当するエアー供給用電磁バル
ブ33および潤滑剤供給用電磁バルブ34とで構成され
ている。潤滑剤加圧タンク31には、植物性油脂、鉱物
油またはその他の油に、アルミニウム粉末や黒鉛粉末な
どを混合して構成された潤滑剤が蓄えられているととも
に、工場内に敷設されたエアー配管から供給される空気
圧が導入するようになっている。この空気圧により潤滑
剤加圧タンク31内の圧力は所定の圧力に保たれてお
り、よって潤滑剤は上記空気圧により加圧状態に保たれ
ている。そして、潤滑剤供給用電磁バルブ34を開く
と、上記潤滑剤加圧タンク31内の加圧状態の潤滑剤が
潤滑剤微粒化用噴射ノズル32に供給されるようになっ
ている。この時、エアー供給用電磁バルブ33を開く
と、工場内に分配されている所定圧の空気がこのエアー
供給用電磁バルブ33から潤滑剤微粒化用噴射ノズル3
2に供給される。したがって、潤滑剤微粒化用噴射ノズ
ル32においては、潤滑剤加圧タンク31から供給され
た加圧状態の潤滑剤と、上記エアー供給用電磁バルブ3
3側から供給される所定圧の空気とが混合され、これに
より噴射ノズル32内で潤滑剤が微粒化され、ミスト状
態となって噴射される。
【0020】上記潤滑剤微粒化用噴射ノズル32は給湯
口用蓋35に取り付けられており、この給湯口用蓋35
は昇降用シリンダー36に取り付けられている。また昇
降用シリンダー36は水平移動シリンダー37に取り付
けられている。水平移動シリンダー37の作動により昇
降用シリンダー36を水平に移動させて給湯口用蓋35
を給湯口18の真上に移動させ、次に昇降用シリンダー
36を作動させると、給湯口用蓋35が給湯口18を閉
止するようになっている。これにより給湯口用蓋35に
取着されている上記潤滑剤微粒化用噴射ノズル32が射
出スリーブ17の中央部に移動されるようになってい
る。
【0021】このような構成によるダイカストマシンの
作動順序を説明する。作動は、図1に示すタイミング制
御手段、例えばコンピュータ100により制御されるよ
うになっており、その作動を図2に示すフローチャート
にもとづき説明する。
【0022】ダイカスト鋳造する場合、可動ベース13
を固定ベース10に接近するよううに移動させると、可
動入子15が固定入子12に当接し、これら入子12、
15間の金型キャビティ16が閉じられるから、ステッ
プ101に示すように型閉がなされる。このような型閉
じ完了後、ステップ102に示すように水平移動シリン
ダー37を前進させ、昇降シリンダー36を介して給湯
口用蓋35を給湯口18の真上に移動させる。次にステ
ップ103に示すように昇降シリンダー36を作動させ
て給湯口用蓋35を下降させ、給湯口18に密着させ
る。これにより給湯口18は給湯口用蓋35によって閉
塞される。よって金型キャビティ16およびこれに連通
する射出スリーブ17が閉空間となる。
【0023】そして、この時、給湯口用蓋35に取り付
けられている潤滑剤微粒化用噴射ノズル32は射出スリ
ーブ17の中央部に設置されるようになる。この状態で
減圧装置2の真空ポンプ22を運転し、かつ切換弁26
を切換える。すると、制御シリンダ24の制御ピストン
25が後退し、ステップ104に示すように開閉弁23
が排気通路21を開く。このため、金型キャビティ16
およびこれに連通する射出スリーブ17からなる閉空間
の空気が真空ポンプ22に吸引されて排気されるように
なり、閉空間は大気圧以下に減圧される。
【0024】所定の時間排気して、所定の負圧になる
と、上記開閉弁23を開いたまま、つまり減圧を継続し
たまま、ステップ105に示すように電磁バルブ33、
34を開く。すると、潤滑剤加圧タンク31から加圧状
態の潤滑剤が潤滑剤微粒化用噴射ノズル32に供給され
るとともに、工場配管の所定圧の空気が潤滑剤微粒化用
噴射ノズル32に供給される。このため、これら潤滑剤
と空気は潤滑剤微粒化用噴射ノズル32内で混合されて
潤滑剤が微粒化され、ミスト状態となって射出スリーブ
17内に噴射される。
【0025】この状態を所定時間続けたのち、ステップ
106に示すように開閉弁23を閉じる。この後、潤滑
剤微粒化用噴射ノズル32から潤滑剤ミストの吹付けを
続ける。
【0026】さらに一定の時間経過後、ステップ107
に示すように電磁バルブ34、33を閉じ、潤滑剤ミス
トの吹付けを終了する。次に、ステップ108に示すよ
うに昇降シリンダー36を上昇作動させて給湯口18か
ら給湯口用蓋35を外し、ステップ109に示すように
水平移動シリンダー37を後退させて潤滑剤微粒化用噴
射ノズル32を原位置に戻す。
【0027】このような潤滑剤の塗布が終了すると、ス
テップ110に示すように、図示しない溶解鍋で溶融さ
れた溶湯、例えば溶融アルミを給湯口18から射出スリ
ーブ17内に給湯し、射出プランジャー19の作動によ
りこの溶湯を金型キャビティ16に押し出して、通常の
公知のダイカスト鋳造に移行する。
【0028】このようなダイカストマシンにおける減圧
装置2の作動時間と、電磁バルブ33、34の開き時
間、つまり噴射および加圧時間との関係を図3に示す。
図3に示すように、減圧時間に対して噴射および加圧時
間を一定時間遅らせてある。この減圧作用による金型キ
ャビティ16内の大気圧以下の圧力と、加圧作用による
大気圧以上の圧力を加えたものが金型キャビティ16お
よびこれに連らなる射出スリーブ17からなる閉空間の
圧力であり、その圧力変化の波形を図4に示す。この圧
力波形において、減圧のみを行う時間aで閉空間の排気
を行い、減圧と加圧を同時に行う時間bで潤滑剤ミスト
の供給とこのミストが衝突する部分への付着を行い、か
つ加圧のみを行う時間cで潤滑剤ミストが流れにくい部
分、すなわち潤滑剤ミストの流れる経路から枝分かれし
た箇所や凹部、または奥まった箇所への付着を行う。
【0029】さらに説明すれば、減圧のみを行う工程a
では、閉空間の空気を外部に引き出して負圧にする。こ
れにより残留空気を少なくすることができる。そして、
減圧と加圧を同時に行う工程bでは、他端の噴射ノズル
32から噴射された潤滑剤ミストが一端の排気通路21
を経て引き出されるから、噴射ノズル32から排気通路
21に亘って潤滑剤ミストの流れが生じ、この潤滑剤ミ
ストの流れにより一端から他端に亘り潤滑剤ミストが分
散される。仮に、この流れが生じない場合は、潤滑剤ミ
ストは奥まった端部に残留している空気に阻害されて奥
まった箇所に届かないことがあるが、流れが生じること
により少なくとも流束の範囲で潤滑剤ミスト一端まで達
する。
【0030】このような状態に続いて、加圧のみを行う
工程cでは、少なくとも流れ経路に沿って分散している
潤滑剤ミストが押されるから、流れの経路から枝分かれ
した箇所や凹部、または奥まった箇所へ押し込まれ、潤
滑剤ミストはこれらの箇所に残留している空気に強制的
に混合され、その内面に付着されることになる。このこ
とから、複雑形状の金型キャビティであっても潤滑剤を
均等に供給することができ、膜厚差の少ない潤滑剤塗布
膜を全面に亘り付着させることができる。
【0031】そして減圧と加圧を同時進行する時間bに
おいて、吸引力よりも加圧力を大きくして金型キャビテ
ィ16内を大気圧以上の正圧状態に保ちつつ潤滑剤ミス
トを供給すると、常に潤滑剤ミストを枝分かれした箇所
や凹部、または奥まった箇所へ押し込むように付勢する
から、複雑形状のキャビティや複数のキャビティに潤滑
剤を均等供給することが可能になる。
【0032】上記のような作用を確認するため、図5に
示すような実験装置を製作し、この装置を用いてキャビ
ティ内の圧力を種々変更した場合の塗布効果の違いを調
べた。
【0033】図5において、51はダイカスト金型に相
当するハウジングであり、このハウジング51は一端に
噴射口52を有するとともに他端に排出口53を有し、
噴射口52には噴射ノズル54が接続されているととも
に排出口53には真空ポンプ55が接続されている。噴
射ノズル54は毎分100リットルの潤滑剤を噴射する
能力があるとともに真空ポンプ55は毎分80リットル
の空気を吸引する能力を備えている。ハウジング51内
には、アルミダイカストの場合の金型と同等温度となる
ように加熱ヒータ56を敷設してあり、かつ複数のブロ
ック57…を配置してある。これら複数のブロック57
…は、寝かしたり、立てたり、間隔を存して配置するこ
とにより、複数の塗布面58a、58b、58c、58
d、58eを形成してある。塗布面58aは一端の噴射
口52から他端の排出口53に至る潤滑剤の流れ経路に
平行に形成されており、また、塗布面58bは流れ経路
と交差して上流側に面して形成されている。塗布面58
cは流れ経路と交差し、上記塗布面58bの背面に位置
して流れの下流側に面して形成されている。塗布面58
dおよび58eは流れ経路と交差して窪んで形成された
凹部59に面して形成されている。
【0034】このようなキャビティを形成したハウジン
グ51内に、一端の噴射口52から噴射ノズル54を通
じて潤滑剤を噴射し、他端の排気口53から真空ポンプ
55により真空引きして減圧する。
【0035】この場合、潤滑剤の付着量を定量評価する
ため、最初に減圧することなく、いきなり噴射ノズル5
4から潤滑剤を噴射した場合の各塗布面の膜厚を図6の
斜線棒で示す。また、最初真空ポンプ55を介してハウ
ジング51内を減圧し、この空間が所定の大気圧以下の
負圧になったときに減圧を止め、この状態で噴射ノズル
54から潤滑剤を噴射した場合の各塗布面の膜厚を図6
の白抜き棒で示す。さらに、上記実施例の場合のよう
に、当初真空ポンプ55を介してハウジング51内を減
圧し、この空間が所定の大気圧以下の負圧になったとき
に一端の噴射口52から噴射ノズル54を通じて潤滑剤
を噴射し、この減圧と加圧を同時に行ったのち、最後の
加圧のみを行った場合の各塗布面の膜厚を図6の黒塗り
棒で示す。
【0036】図6の結果から理解できる通り、加圧のみ
(斜線棒)や減圧のみ(白抜き棒)の場合は、流れの裏
面になる塗布面58cや凹部59の内面となる塗布面5
8dおよび58eで潤滑剤の付着量は0.1〜0.2μ
mであり、殆ど付着しないのに対し、吸引と加圧の併用
(吸引と加圧のタイミングラグあり)の場合(黒塗り
棒)、背面の塗布面58cや凹部59の塗布面58d、
58eにも1.0μm以上の付着量が得られることが確
認できた。これは最初の吸引で型内の空気(特に凹部に
残留する空気)を排気し、その後に潤滑剤ミストを送っ
て減圧と加圧を同時進行させることによって一端から他
端に亘り潤滑剤ミストの分散を促し、かつ最後に加圧す
ることにより、分散した潤滑剤ミストを背面の塗布面5
8cや凹部59の塗布面58d、58eに押し付けるこ
とから、付着効率が向上するものと考えられる。
【0037】このような現象は、図1に示した実際のア
ルミダイカスト鋳造の場合にも生じるものと推測され
る。この結果、第1の実施例の方法を採用すると、離型
性が良くなり、鋳造性が向上する。
【0038】すなわち、第1の実施例の方法によって自
動車用オルタネータのアルミ製フレーム(図示しない)
を鋳造製造する場合について、連続鋳造時の離型力の推
移を調べたところ、図7のような測定結果を得た。図7
から分かるように、上記第1の実施例で示した新規に開
発した方法は、従来法に比べて離型力は低いレベルとな
り、鋳造性が向上した。また、下記表1は品質レベルを
従来法と比べた結果を示す。
【0039】
【表1】
【0040】上記表1から、品質レベルの評価項目とし
ての静破壊強度は、開発した方法と従来法はともに遜色
なく、また切削巣の不良評価も同等であった。しかし、
製品内ガス量は従来法に比べて開発した方法は遥かに少
なくなっており、品質の向上が認められた。製品内ガス
量が従来法に比べて少なくなった理由は、今回開発した
方法であると、潤滑剤として油性潤滑剤を用いても膜厚
差の少ない潤滑剤塗布膜が金型キャビティの内面全面に
亘り付着させることができためであると考えられる。す
なわち、従来法の場合は金型キャビティの内面全面に亘
り均等な付着が難かしかったために、分散性に優れた水
溶性の潤滑剤を使用せざるを得なく、水溶性潤滑剤の場
合は水分が残って製品内に鋳込まれる割合が多いため、
ガスが残る。これに対し、今回開発した方法は潤滑剤と
して油性の潤滑剤を使用しても均等な膜厚が得られるか
ら、水分の残留が少なく、よって製品内ガス量が従来法
に比べて少なくなる。
【0041】なお、上記第1の実施例では、図4に示す
通り、減圧期間a、減圧と噴射加圧を同時に進行する期
間b、および加圧のみを継続する期間cの3段階の工程
によりキャビティ内の圧力制御をなす場合を説明した
が、図8に示す第2の実施例や、図9の第3の実施例の
ようにしてもよい。
【0042】すなわち、図8の第2の実施例は、図4に
示した基本圧力波形から、減圧と加圧との同時進行する
区間bを省略した例である。この方法によると、減圧工
程aからいきなり加圧工程cに移行する瞬間に、金型キ
ャビティ16およびこれに連通する射出スリーブ17か
らなる閉空間の内面に潤滑剤ミストが衝突させられるか
ら、全面への付着が可能である。この第2の実施例の方
法は、噴き付けが短時間で完了することからサイクルタ
イムの短い小物等に有効である。
【0043】また、図9に示す第3の実施例では、減圧
・加圧の同時進行の区間bを負圧とした例である。(こ
の例は真空型で生じることが多い)。この例では、区間
bで負圧に維持されていても潤滑剤ミストの流れが発生
するから、潤滑剤は流れ経路に沿って供給され、区間b
から区間cに移行する瞬間に強制的に押されて均等供給
が行われ、結果的に全面付着が可能になる。この方法
は、小物や形状の単純な鋳造品、及び1ケ取りの鋳造品
で実用可能である。
【0044】
【発明の効果】以上説明した通り本発明の方法および装
置によれば、金型キャビティの閉空間を減圧装置により
大気圧以下に減圧してこの閉空間に潤滑剤を噴射し、か
つこの閉空間を大気圧以上の加圧状態にするから、金型
キャビティの枝分かれした箇所や凹部、または奥まった
箇所の空気が抜き出された後に潤滑剤ミストが閉空間の
内面に押し付けられるようになり、このため、閉空間の
内面に膜厚差の少ない潤滑剤塗布膜を全面に亘り付着さ
せることができる。よって、多数個取りや複雑形状の金
型の全面に均等な油膜が形成されるようになり、安定し
た離型性を得ることができる。このようなことから、噴
射量を低減して環境改善や省資材が可能になり、離型性
が向上するので作業効率が高くなり、製品品質が向上
し、型寿命が伸長するなどの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示し、アルミダイカス
トマシンの構成図。
【図2】同実施例の作動を説明するフローチャート。
【図3】同実施例の圧力制御の仕方を示す図。
【図4】同実施例のキャビティ内の圧力変化波形を示す
図。
【図5】実験装置の構成を示す断面図。
【図6】同実験装置を用いて圧力制御した場合の塗布面
膜厚を測定した結果の図。
【図7】連続鋳造時の離型力の推移を調べた測定結果の
図。
【図8】本発明の第2の実施例におけるキャビティ内の
圧力変化波形を示す図。
【図9】本発明の第3の実施例におけるキャビティ内の
圧力変化波形を示す図。
【符号の説明】
1…ダイカストマシン 2…減圧装置 3…潤滑剤ミスト供給装置 10…固定ベース 12…固定入子 13…可動ベース 15…可動入子 16…金型キャビティ 17…射出スリーブ 18…給湯口 19…押出しチップ 21…排気通路 22…真空ポンプ 23…開閉弁 31…潤滑剤加圧タンク 32…潤滑剤微粒化
用噴射ノズル 33…エアー供給用電磁バルブ(圧力制御手段) 34…潤滑剤供給用電磁バルブ(圧力制御手段) 35…給湯口用蓋 100…タイミング制御手段
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 17/20 B22C 23/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ダイカスト金型を型閉めして金型キャビ
    ティ内を閉空間とし、この閉空間を一端に接続した減圧
    装置により大気圧未満に減圧し、この後この閉空間に他
    端から噴射ノズルより潤滑剤を噴射し、この閉空間の減
    圧と潤滑剤の噴射を同時に進行させ、次に減圧を止めて
    この閉空間を大気圧より高い加圧状態にして上記噴射し
    た潤滑剤を上記閉空間の内面に付着させるようにしたこ
    とを特徴とするダイカスト金型の潤滑剤塗布方法。
  2. 【請求項2】 上記閉空間の減圧と潤滑剤の噴射を同時
    に進行させる場合、閉空間の圧力を大気圧より高い正圧
    状態に保つことを特徴とする請求項に記載のダイカス
    ト金型の潤滑剤塗布方法。
  3. 【請求項3】 上記閉空間の減圧と潤滑剤の噴射を同時
    に進行させる場合、閉空間の圧力を大気圧未満に保つこ
    とを特徴とする請求項に記載のダイカスト金型の潤滑
    剤塗布方法。
  4. 【請求項4】 ダイカスト金型の内部に形成される金型
    キャビティの一端に連通された減圧装置と、 この金型キャビティの他端に連通され給湯口を備えた射
    出スリーブと、 上記給湯口を開閉する給湯口用蓋と、 この給湯口用蓋に設けられ、この給湯口用蓋が上記給湯
    口を閉塞した場合に射出スリーブに挿入される潤滑剤噴
    射ノズルと、 この噴射ノズルから噴射される潤滑剤の噴射圧力を制御
    する圧力制御手段と、上記減圧装置および圧力制御手段
    の作動タイミングを制御して金型キャビティの閉空間を
    大気圧未満および大気圧より高い状態に制御するタイミ
    ング制御手段と、 を具備したことを特徴とするダイカスト金型の潤滑剤塗
    布装置。
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