JP3536118B2 - 硫黄系悪臭物質含有被処理水の脱臭方法 - Google Patents

硫黄系悪臭物質含有被処理水の脱臭方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、硫黄系悪臭物質、
すなわち、一般的に脱臭が困難な硫化メチル又は二硫化
メチルによる臭気を発生する被処理水の脱臭方法に関す
る。本発明によれば、前記の2種の硫黄系悪臭物質、す
なわち、硫化メチル及び二硫化メチルによる臭気を、高
い効率で同時に除去することができ、更に、硫化水素及
びメチルメルカプタンによる臭気も高い効率で同時に除
去することができる。 【0002】 【従来の技術】従来、排水、汚泥、又はし尿等の廃液又
は廃ガスから発生する悪臭を除去するために、化学薬品
を添加して悪臭を化学的に除去する脱臭方法が、広く実
施されている。この化学的脱臭方法は、化学薬品による
中和作用又は酸化作用を利用して、悪臭の原因物質それ
自体を低揮散性化合物又は無臭化合物に変換させるもの
である。これらの化学的脱臭方法は、他の脱臭方法、例
えば、活性炭処理法に比べると、設備や操作が簡単であ
る。一般的な化学的脱臭方法において、中和作用を利用
する方法では、酸性臭気原因物質に対しては水酸化ナト
リウム等が、またアルカリ性臭気原因物質に対しては硫
酸又は塩酸等が中和剤として知られている。また、酸化
作用を利用する方法では、酸化剤として、例えば、過酸
化水素、次亜塩素酸ソーダ、又は過炭酸ソーダを用いて
悪臭物質を酸化し、無臭物質又は低臭物質に変化させ
る。しかし、硫化メチル及び二硫化メチルにおいては、
金属塩又は酸化剤の添加などの化学的脱臭方法では、除
去率約20〜40%程度にとどまっており、活性炭処理
法が主に用いられていた。この活性炭処理法には、ラン
ニングコストが高いという欠点があった。 【0003】このように、硫化メチル及び二硫化メチル
の臭気を、満足できる程度まで有効に除去する化学的脱
臭方法は、従来知られていなかった。本発明の発明者
は、最高原子価状態よりも低い原子価状態の遷移金属の
塩(例えば、第一鉄塩、第二鉄塩、2価マンガン、2価
コバルト、2価ニッケル、又は2価銅)と酸化剤とを添
加することにより、硫化水素、メチルメルカプタン、硫
化メチル、及び二硫化メチルによる悪臭を、1つの化学
的操作によって同時に除去する方法を開発した(特願平
8−35472号)。この方法によれば、通常の被処理
流体から、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチ
ル、及び二硫化メチルを同時に50%以上の除去率で除
去することができる。更に、本発明の発明者は、懸濁固
形分を高濃度で含有する特定の被処理水に対して、ポリ
硫酸第二鉄と、第一鉄塩、3価アルミニウム塩又は2価
亜鉛塩と、酸化剤とを添加することにより、特に硫化メ
チル及び二硫化メチルを、1つの化学的操作によって一
層効率よく、同時に除去する方法も開発した(特願平8
−257827号)。この方法によれば、前記の特定の
被処理流体から、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化
メチル、及び二硫化メチルを同時に60%以上の除去率
で除去することができる。本発明者は、特定の被処理水
に対してではなく、一般的な被処理水に対して、硫化メ
チル及び二硫化メチルを一層効率的に、同時に除去する
ことのできる手段を探求した結果、特定の金属塩の組合
せによって、それを達成することができることを見出し
た。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、硫黄系悪臭物質四物質のうち、硫化メチル及び二硫
化メチルによる悪臭を、物理的操作を伴わず簡便な単独
の化学的操作により、同時に除去できる脱臭方法を提供
することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】前記の目的は、硫化メチ
ル又は二硫化メチルを含む被処理水に、(1)ポリ硫酸
第二鉄、(2)鉄(II)化合物、(3)マグネシウム
塩、及び(4)過酸化水素を添加し、添加した後の被処
理水において、前記ポリ硫酸第二鉄の添加による第二鉄
イオンの濃度が0.93mmol/L以上で、前記鉄
II )化合物の添加による第一鉄イオンの濃度が0.4
7mmol/L以上であり、マグネシウムイオン濃度が
0.4mmol/L以上であり、過酸化水素濃度が12
mmol/L以上となることを特徴とする、前記被処理
水の脱臭方法によって解決することができる。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明方法によれば、被処理水か
ら発生する硫化メチル及び二硫化メチルによる臭気をそ
れぞれ実質的に除去することができる。前記の硫化メチ
ル及び二硫化メチルの他に、硫化水素及びメチルメルカ
プタンを加えた四物質は、硫黄系悪臭物質四物質とされ
ている。これらの硫黄系悪臭物質四物質の中でも、硫化
メチル及び二硫化メチルの脱臭処理が困難である。本発
明方法によれば、脱臭処理が困難な硫化メチル又は二硫
化メチルを効率よく除去することができるので、当然
に、硫化水素及びメチルメルカプタンも一層効率よく除
去することができる。 【0007】ここで、「臭気を実質的に除去する」と
は、本発明方法によって処理した液体を空気と共に密封
容器内に封入した後に密封容器から気相を採取して測定
した場合に、その気相内に存在する硫化メチル及び二硫
化メチルの濃度(以下、「臭気濃度」と称することがあ
る)が、処理前に比べてそれぞれ75%以上減少してい
ることを意味する。好ましくは、硫化メチルについては
90%以上、そして二硫化メチルについては80%以上
減少することである。 【0008】本発明方法によって処理することのできる
被処理水は、硫化メチル又は二硫化メチルの少なくとも
いずれか1種による臭気を発生する液体であれば、特に
限定されないが、例えば、工場(例えば、製紙工場若し
くは食品工場)の排水、汚泥、又はし尿等を挙げること
ができる。工場の排水、汚泥、又はし尿等を本発明方法
によって処理する場合には、被処理水を希釈せずに、通
常そのまま処理することができるが、被処理水中の硫化
メチル又は二硫化メチルの臭気濃度がかなり高い場合に
は、その被処理水を適当に希釈してから本発明方法の添
加工程を実施することもできる。 【0009】本発明方法において使用するポリ硫酸第二
鉄は、式: [Fe2 (OH)n (SO4 3-n/2 ]m 〔式中、nは2より小さい数であり、mは10より大き
い数である〕で表わされる化合物であり、その塩基度は
式: (n/6)×100% で示される(特公昭51−17516号公報参照)。ポ
リ硫酸第二鉄の添加量は特に限定されるものではない
が、硫化メチルの除去率を90%以上とし、そして二硫
化メチルの除去率を75%以上とする場合においては、
被処理水中での第二鉄イオンの濃度が0.93mmol
/リットル以上となるように添加するのが好ましく、硫
化メチルの除去率を90%以上とし、そして二硫化メチ
ルの除去率を80%以上とする場合においては、被処理
水中での第二鉄イオンの濃度が1.0mmol/リット
ル以上となるように添加するのが好ましい。被処理水中
での第二鉄イオンの濃度が、0.93mmol/リット
ル未満では、硫化メチル又は二硫化メチルを充分に除去
できないことがある。 【0010】また、被処理水中での第二鉄イオンの濃度
の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは
1.67mmol/リットル以下の濃度になるように添
加することができる。本発明方法により処理した被処理
水を、例えば、外部環境に放出するか、あるいは別の処
理工程に移行させる場合に、問題が生じない範囲で使用
することが好ましい。また、ポリ硫酸第二鉄の添加量が
必要量よりもかなり多い場合には、ポリ硫酸第二鉄の添
加量の増加に対応した硫化メチル又は二硫化メチルの除
去効果が得られなくなるので、処理コスト及び除去率を
考慮して添加量を選択することが好ましい。 【0011】本発明方法において使用することのできる
鉄(II)化合物としては、例えば、第一鉄の無機塩又は
第一鉄の有機化合物などを挙げることができる。第一鉄
の無機塩としては、例えば、FeO、Fe(OH)2
FeCl2 、Fe(NO3 2 、FeSO4 、又はFe
CO3 を挙げることができ、第一鉄の有機化合物として
は、例えば、鉄フタロシアニン化合物を挙げることがで
きる。鉄フタロシアニン化合物として水溶性鉄フタロシ
アニン化合物、例えば、鉄フタロシアニンテトラスルホ
ン酸を用いることができる。第一鉄の無機塩としては、
FeSO4 を用いることが、経済性及び塩素ガスが発生
しない点で好ましい。 【0012】前記鉄(II)化合物の添加量は特に限定さ
れるものではないが、硫化メチルの除去率を90%以上
とし、そして二硫化メチルの除去率を75%以上とする
場合においては、被処理水中での第一鉄イオンの濃度が
0.47mmol/リットル以上となるように添加する
のが好ましく、硫化メチルの除去率を90%以上とし、
そして二硫化メチルの除去率を80%以上とする場合に
おいては、被処理水中での第一鉄イオンの濃度が0.5
mmol/リットル以上となるように添加するのが好ま
しい。被処理水中での前記第一鉄イオンの濃度が、0.
47mmol/リットル未満では、充分に硫化メチル又
は二硫化メチルを除去できないことがある。 【0013】また、被処理水での第一鉄イオンの濃度の
上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは
0.83mmol/リットル以下の濃度になるように添
加することができる。本発明方法により処理した被処理
水を、例えば、外部環境に放出するか、あるいは別の処
理工程に移行させる場合に、問題が生じない範囲で使用
することが好ましい。また、前記鉄(II)化合物の添加
量が必要量よりもかなり多い場合には、前記鉄(II)化
合物の添加量の増加に対応した硫化メチル又は二硫化メ
チルの除去効果が得られなくなるので、処理コスト及び
除去率を考慮して添加量を選択することが好ましい。 【0014】本発明方法において添加するポリ硫酸第二
鉄中の第二鉄イオン量と前記鉄(II)化合物中の第一鉄
イオン量とのモル比は、特に限定されるものではない
が、硫化メチルの除去率を90%以上とし、そして二硫
化メチルの除去率を75%以上とする場合においては、
ポリ硫酸第二鉄中の第二鉄イオン1モルに対して、前記
第一鉄イオンが0.2〜18モルとなるように添加する
のが好ましい。また、硫化メチルの除去率を90%以上
とし、そして二硫化メチルの除去率を80%以上とする
場合においては、ポリ硫酸第二鉄中の第二鉄イオン1モ
ルに対して、前記第一鉄イオンが0.5〜8モルになる
ように添加するのが好ましい。 【0015】本発明方法において使用することのできる
マグネシウム塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、
硝酸マグネシウム、又は塩化マグネシウムを挙げること
ができる。前記マグネシウム塩の添加量は特に限定され
るものではないが、硫化メチルの除去率を90%以上と
し、そして二硫化メチルの除去率を75%以上とする場
合においては、被処理水中でのマグネシウムイオンの濃
度が0.4mmol/リットル以上の濃度になるように
添加するのが好ましく、硫化メチルの除去率を90%以
上とし、そして二硫化メチルの除去率を80%以上とす
る場合においては、被処理水中でのマグネシウムイオン
の濃度が0.6mmol/リットル以上の濃度になるよ
うに添加するのが好ましい。被処理水中での前記マグネ
シウムイオンの濃度が、0.4mmol/リットル未満
では、充分に硫化メチル又は二硫化メチルを除去するこ
とができないことがある。 【0016】また、被処理水中でのマグネシウムイオン
濃度の上限は、特に限定されるものではないが、好まし
くは1.2mmol/リットル以下の濃度になるように
添加することができる。本発明方法により処理した被処
理水を、例えば、外部環境に放出するか、あるいは別の
処理工程に移行させる場合に、問題が生じない範囲で使
用することが好ましい。また、前記マグネシウム塩の添
加量が必要量よりもかなり多い場合には、前記マグネシ
ウム塩の添加量の増加に対応した硫化メチル又は二硫化
メチルの除去効果が得られなくなるので、処理コスト及
び除去率を考慮して添加量を選択することが好ましい。 【0017】本発明方法において添加するポリ硫酸第二
鉄中の第二鉄イオンと前記マグネシウム塩中のマグネシ
ウムイオンとのモル比は、特に限定されるものではない
が、硫化メチルの除去率を90%以上とし、そして二硫
化メチルの除去率を75%以上とする場合においては、
ポリ硫酸第二鉄中の第二鉄イオン1モルに対して、前記
マグネシウム塩中のマグネシウムイオンが0.24〜
1.3モルとなるように添加するのが好ましい。また、
硫化メチルの除去率を90%以上とし、そして二硫化メ
チルの除去率を80%以上とする場合においては、ポリ
硫酸第二鉄中の第二鉄イオン1モルに対して、前記マグ
ネシウム塩中のマグネシウムイオンが0.36〜0.8
3モルになるように添加するのが好ましい。 【0018】酸化剤としての過酸化水素の添加量は特に
制限されるものではないが、硫化メチルの除去率を90
%以上とし、そして二硫化メチルの除去率を75%以上
とする場合においては、被処理水中での過酸化水素の濃
度が12mmol/リットル以上の濃度になるように添
加するのが好ましく、硫化メチルの除去率を90%以上
とし、そして二硫化メチルの除去率を80%以上とする
場合においては、被処理水中での過酸化水素の濃度が2
0mmol/リットル以上の濃度になるように添加する
のが好ましい。被処理水中での過酸化水素の濃度が、1
2mmol/リットル未満では、充分に硫化メチル又は
二硫化メチルを除去できないことがある。 【0019】また、添加する過酸化水素の添加量の上限
は、特に限定されるものではないが、好ましくは3.6
mmol/リットル以下の濃度になるように添加するこ
とができる。本発明方法により処理した被処理水を、例
えば、外部環境に放出するか、あるいは別の処理工程に
移行させる場合に、問題が生じない範囲で使用すること
が好ましい。また、過酸化水素の添加量が必要量よりも
かなり多い場合には、過酸化水素の添加量の増加に対応
した硫化メチル又は二硫化メチルの除去効果が得られな
くなるので、処理コスト及び除去率を考慮して添加量を
選択することが好ましい。 【0020】本発明方法において添加するポリ硫酸第二
鉄中の第二鉄イオンと過酸化水素とのモル比は、特に限
定されるものではないが、硫化メチルの除去率を90%
以上とし、そして二硫化メチルの除去率を75%以上と
する場合においては、ポリ硫酸第二鉄中の第二鉄イオン
1モルに対して、過酸化水素が7.2〜38.7モルと
なるように添加するのが好ましい。また、硫化メチルの
除去率を90%以上とし、そして二硫化メチルの除去率
を80%以上とする場合においては、ポリ硫酸第二鉄中
の第二鉄イオン1モルに対して、過酸化水素が12〜3
6モルになるように添加するのが好ましい。 【0021】本発明方法においては、ポリ硫酸第二鉄と
鉄(II)化合物とマグネシウム塩と過酸化水素とを組合
せて用いることにより、前記特願平8−35472号明
細書及び前記特願平8−257827号明細書に記載の
方法と比べて、一層効率的に硫化メチル及び二硫化メチ
ルによる悪臭を除去することができる。すなわち、前記
特願平8−35472号明細書及び前記特願平8−25
7827号明細書に記載の方法における各金属塩や過酸
化水素の使用量よりも少ない使用量で、同程度の悪臭除
去率を達成することができる。あるいは、同程度の使用
量で、更に高度の悪臭除去率を達成することができる。
本発明方法においては、硫化メチル又は二硫化メチルに
よる臭気の除去反応は、好ましくは10〜70℃で実施
することができ、50℃以上で実施すると、反応を促進
させることができる。 【0022】本発明方法は、(1)ポリ硫酸第二鉄、
(2)鉄(II)化合物、及び(3)マグネシウム塩を、
溶液状若しくは固体状で、又はそれらを組合せて(すな
わち、ポリ硫酸第二鉄、鉄(II)化合物、及びマグネシ
ウム塩の少なくとも1種類の化合物を溶液で、それ以外
の化合物を固体で)、被処理水に添加して処理すること
ができる。溶液でポリ硫酸第二鉄、鉄(II)化合物、又
はマグネシウム塩を加えると、液体中で速やかに拡散す
るので好ましい。 【0023】本発明方法において、ポリ硫酸第二鉄、鉄
(II)化合物、マグネシウム塩、及び過酸化水素を添加
して被処理水の処理を実施する場合には、被処理水のp
Hが、好ましくはpH2〜9、より好ましくはpH3〜
7の範囲内で実施することができる。pHが2未満であ
るか、あるいはpHが9を越えると、充分に硫黄系悪臭
物質四物質を除去できないことがある。被処理水のpH
が前記の好ましい範囲であれば、pH調節を行わずにそ
のまま本発明方法により処理することができる。被処理
水のpHが2未満の場合には、例えば、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カルシウム、又は水酸化マグネシウム等によ
って、また、被処理水のpHが9を越える場合には、例
えば、硫酸又は塩酸等によって、適当なpHになるよう
に調整した後に、本発明方法により処理することができ
る。使用するポリ硫酸第二鉄、前記金属塩、及び/又は
酸化剤の種類により、それらを被処理水に添加すると被
処理水のpHが変化する場合がある。例えば、酸化剤と
して過酸化水素を用いると、被処理水のpHが酸性側に
変化するので、例えば、pH約3〜7の被処理水は、特
にpH調整を実施せずにそのまま過酸化水素によって処
理することができる。 【0024】本発明方法においては、被処理水中の少な
くとも硫化メチル及び二硫化メチルの2種類の硫黄系悪
臭物質による臭気がすべて実質的に除去されるまで反応
させることが好ましい。具体的には、本発明方法によっ
て処理した被処理水を空気と共に密封容器内に封入した
後に、密封容器から採取した気相部分をガスクロマトグ
ラフィー等で分析し、硫化メチル及び二硫化メチルの各
濃度が、処理前と比較して、除去率75%以上の状態に
なるまで処理することが好ましい。従って、本発明方法
では、経時的に硫化メチル及び二硫化メチルの濃度を測
定しながら処理の終期を決定することができる。あるい
は、例えば、パイロット試験等で除去率の目標値以上に
なる条件を予め検討し、その結果に基づいて処理の終期
を決定することもできる。本発明方法においては、硫化
メチル及び二硫化メチルによる臭気がすべて実質的に除
去されるまで処理すると、硫化水素及びメチルメルカプ
タンも同時に除去される。 【0025】硫化メチル及び二硫化メチルの除去は、ポ
リ硫酸第二鉄、鉄(II)化合物、マグネシウム塩、及び
過酸化水素を、被処理水に添加した後、一般的には、2
0分以内、好ましくは5分以内に実質的に完了する。ポ
リ硫酸第二鉄、鉄(II)化合物、マグネシウム塩、及び
過酸化水素の被処理水への添加は、同時であっても、別
々に添加してもよい。別々に添加する場合の好ましい添
加順序としては、まず、ポリ硫酸第二鉄と鉄(II)化合
物との混合溶液を最初に添加し、次いで、マグネシウム
塩と過酸化水素との混合溶液を添加する。除去反応は短
時間で完了するので、添加したポリ硫酸第二鉄、鉄(I
I)化合物、マグネシウム塩、及び過酸化水素が被処理
水中に速やかに拡散することができるように、ポリ硫酸
第二鉄、鉄(II)化合物、マグネシウム塩、及び過酸化
水素の添加後に、例えば、被処理水を攪拌、又は振盪す
ることが好ましい。 【0026】本発明方法により処理した被処理水を、例
えば、外部環境に放出するか、あるいは別の処理工程に
移行させる場合には、前記の硫化メチル及び二硫化メチ
ル、並びに硫化水素及びメチルメルカプタンの硫黄系悪
臭物質の除去反応完了後に、例えば、水酸化ナトリウム
等を加えて、pHを中性付近に戻すことが好ましい。 【0027】本発明方法は、前記の硫黄系悪臭物質の除
去反応に要する時間が極めて短時間であるので、特別に
バッチ式の反応槽等を設ける必要がなく、例えば、ライ
ン注入等によっても処理が可能である。 【0028】 【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。以下の実施例又は比較例では、以下の水溶液を使用
した。すなわち、ポリ硫酸第二鉄を含む水溶液として、
ポリ硫酸第二鉄溶液を蒸留水で希釈し、第二鉄イオンの
濃度が60g/リットル(1.07mol/リットル)
になるように調整した水溶液を用いた。また、第一鉄塩
を含む水溶液として、硫酸第一鉄の7水塩を蒸留水に溶
解し、第一鉄イオンの濃度が30g/リットル(0.5
4mol/リットル)になるように調整した水溶液を用
いた。また、マグネシウム塩を含む水溶液として、硫酸
マグネシウムを蒸留水に溶解し、マグネシウムイオンの
濃度が24.3g/リットル(1mol/リットル)に
なるように調整した水溶液を用いた。また、過酸化水素
水として、過酸化水素の濃度が3.1重量%(1mol
/リットル)の水溶液を使用した。 【0029】 【実施例1】硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチ
ル、及び二硫化メチルを含むドレン水(pH8.3)1
00mlを300mlの三角フラスコに入れ、硫酸第一
鉄水溶液及びポリ硫酸第二鉄水溶液、硫酸マグネシウム
水溶液、並びに過酸化水素水を、表1に示す濃度になる
ように添加した。なお、本実施例においては、硫酸第一
鉄水溶液の第一鉄イオン及びポリ硫酸第二鉄水溶液の第
二鉄イオンを、鉄イオン濃度に関して1:2の割合とな
る溶液を使用した。 【0030】三角フラスコの口をシーロンフィルム(富
士写真フィルム社製)で密栓し、室温(約25℃)で1
分間振盪した。1分間静置した後、0.1mlのマイク
ロシリンジでフラスコ内の気相から気体0.1mlを採
取し、ガスクロマトグラフィーで悪臭物質濃度、すなわ
ち臭気の濃度を分析した。なお、処理前、すなわち、硫
酸第一鉄水溶液及びポリ硫酸第二鉄水溶液、硫酸マグネ
シウム水溶液、並びに過酸化水素水を添加する前のドレ
ン水の硫化メチル濃度は11.9×10-3mmol/リ
ットルであり、二硫化メチル濃度は4.9×10-3mm
ol/リットルであった。 【0031】本発明方法による悪臭物質の除去率等を表
1に示す。除去率a(%)は、式: a={(b−c)/b}×100 (式中、bは、処理前の被処理水の臭気の濃度であり、
cは、処理後の被処理水の臭気の濃度である)により算
出した。表1において、欄「A」は、硫酸第一鉄水溶液
及びポリ硫酸第二鉄水溶液添加後の第一鉄イオン及び第
二鉄イオンの合計濃度(単位:mmol/リットル)を
示し;欄「B」は、過酸化水素水添加後の過酸化水素の
濃度(mmol/リットル)を示し;欄「C」は、硫酸
マグネシウム水溶液添加後のマグネシウムイオンの濃度
(mmol/リットル)を示し;欄「D」は、硫化メチ
ルの除去率(%)を示し;欄「E」は、二硫化メチルの
除去率(%)を示し;欄「F」は、処理前の硫化メチル
の濃度(11.9×10-3mmol/リットル)に対す
る、添加した第一鉄イオン及び第二鉄イオンの合計濃度
の比[=(添加した第一鉄イオン及び第二鉄イオンの合
計濃度)/(処理前の硫化メチルの濃度)]を示し;欄
「G」は、処理前の二硫化メチルの濃度(4.9×10
-3mmol/リットル)に対する、添加した第一鉄イオ
ン及び第二鉄イオンの合計濃度の比[=(添加した第一
鉄イオン及び第二鉄イオンの合計濃度)/(処理前の二
硫化メチルの濃度)]を示す。表1から明らかなよう
に、硫化メチル1モルに対して、第一鉄イオン及び第二
鉄イオンを合計118モル添加することによって、硫化
メチルを90%除去することができた。また、二硫化メ
チル1モルに対して、第一鉄イオン及び第二鉄イオンを
合計286モル添加することによって、二硫化メチルを
75%除去することができた。 【0032】 【表1】A B C D E F G 0.5 12 0.4 73 30 42 102 1.0 12 0.4 83 59 84 204 1.4 12 0.4 90 75 118 286 1.5 12 0.4 93 83 126 306 2.0 12 0.4 100 93 168 4082.5 12 0.4 100 95 210 510 【0033】 【比較例1】本比較例では、硫酸第一鉄水溶液及びポリ
硫酸第二鉄水溶液、硫酸マグネシウム水溶液、並びに過
酸化水素水を添加する代わりに、硫酸第一鉄水溶液及び
ポリ硫酸第二鉄水溶液、並びに過酸化水素水を添加する
こと以外は、前記実施例1の操作を繰り返した。結果を
表2に示す。表2における欄「A」〜欄「G」は、表1
と同じ意味である。表2から明らかなように、本比較例
においても、硫化メチル1モルに対して、第一鉄イオン
及び第二鉄イオンを合計143モル添加することによっ
て、硫化メチルを90%除去することができ、二硫化メ
チル1モルに対して、第一鉄イオン及び第二鉄イオンを
合計347モル添加することによって、二硫化メチルを
75%除去することができた。しかし、硫化メチル及び
二硫化メチルを除去するために必要な第一鉄イオン及び
第二鉄イオンの添加量を比較すると、本発明方法の方
が、本比較例1より少ない添加量で本比較例同等以上の
除去率を達成することができた。 【0034】 【表2】A B C D E F G 0.5 12 0 70 29 42 102 1.0 12 0 79 43 84 204 1.5 12 0 88 69 126 306 1.7 12 0 90 75 143 347 2.0 12 0 93 79 168 4082.5 12 0 95 85 210 510 【0035】 【実施例2】本実施例では、硫酸第一鉄水溶液及びポリ
硫酸第二鉄水溶液、硫酸マグネシウム水溶液、並びに過
酸化水素水を表1に示す濃度になるように添加する代わ
りに、硫酸第一鉄水溶液及びポリ硫酸第二鉄水溶液、硫
酸マグネシウム水溶液、並びに過酸化水素水を表3に示
す濃度になるように添加すること以外は、前記実施例1
の操作を繰り返した。また、ドレン水として、処理前、
すなわち、硫酸第一鉄水溶液及びポリ硫酸第二鉄水溶
液、硫酸マグネシウム水溶液、並びに過酸化水素水を添
加する前の硫化メチル濃度が12.1×10-3mmol
/リットルであり、二硫化メチル濃度が5.3×10-3
mmol/リットルのドレン水を用いた。 【0036】結果を表3に示す。表3において、欄
「A」〜欄「E」は、表1と同じ意味であり、欄「H」
は、処理前の硫化メチルの濃度(12.1×10-3mm
ol/リットル)に対する、添加した過酸化水素の濃度
の比[=(添加した過酸化水素の濃度)/(処理前の硫
化メチルの濃度)]を示し;欄「I」は、処理前の二硫
化メチルの濃度(5.3×10-3mmol/リットル)
に対する、添加した過酸化水素の濃度の比[=(添加し
た過酸化水素の濃度)/(処理前の二硫化メチルの濃
度)]を示す。表3から明らかなように、硫化メチル1
モルに対して、過酸化水素1008モルを添加すること
によって、硫化メチルを90%除去することができた。
また、二硫化メチル1モルに対して、過酸化水素306
1モルを添加することによって、二硫化メチルを75%
除去することができた。 【0037】 【表3】A B C D E H I 1.0 3 0.1 72 16 252 612 1.0 6 0.2 79 33 504 1224 1.0 12 0.4 90 68 1008 2449 1.0 15 0.5 94 75 1261 3061 1.0 24 0.8 99 88 2017 48981.0 36 1.2 100 95 3025 7347 【0038】 【比較例2】本比較例では、硫酸第一鉄水溶液及びポリ
硫酸第二鉄水溶液、硫酸マグネシウム水溶液、並びに過
酸化水素水を添加する代わりに、硫酸第一鉄水溶液及び
ポリ硫酸第二鉄水溶液、並びに過酸化水素水を添加する
こと以外は、前記実施例2の操作を繰り返した。結果を
表4に示す。表4における欄「A」〜欄「E」並びに欄
「H」及び欄「I」は、表3と同じ意味である。表4か
ら明らかなように、本比較例においても、硫化メチル1
モルに対して、過酸化水素2017モルを添加すること
によって、硫化メチルを90%除去することができ、二
硫化メチル1モルに対して、過酸化水素7347モルを
添加することによって、二硫化メチルを75%除去する
ことができた。しかし、硫化メチル及び二硫化メチルを
除去するために必要な過酸化水素の添加量を、本比較例
2と前記実施例2とで比較すると、本発明方法の方が、
本比較例2より少ない添加量で本比較例同等以上の除去
率を達成することができた。 【0039】 【表4】A B C D E H I 1.0 3 0 70 15 252 612 1.0 6 0 73 30 504 1224 1.0 12 0 80 60 1008 2449 1.0 24 0 90 70 2017 48981.0 36 0 95 75 3025 7347 【0040】 【発明の効果】本発明方法によれば、硫黄系悪臭物質、
すなわち、一般的に脱臭が困難な硫化メチル又は二硫化
メチルを、高い効率で同時に除去することができ、更
に、硫化水素及びメチルメルカプタンも高い効率で同時
に除去することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−247891(JP,A) 特開 平8−168785(JP,A) 特開 昭62−247809(JP,A) 特開 昭56−168898(JP,A) 特開 昭56−150483(JP,A) 特開 平3−106493(JP,A) 特開 昭59−203692(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 1/72 C02F 1/52 C02F 1/58

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 硫化メチル又は二硫化メチルを含む被処
    理水に、(1)ポリ硫酸第二鉄、(2)鉄(II)化合
    物、(3)マグネシウム塩、及び(4)過酸化水素を添
    し、添加した後の被処理水において、 前記ポリ硫酸第二鉄の添加による第二鉄イオンの濃度が
    0.93mmol/L以上で、前記鉄( II )化合物の添
    加による第一鉄イオンの濃度が0.47mmol/L以
    上であり、 マグネシウムイオン濃度が0.4mmol/L以上であ
    り、過酸化水素濃度が12mmol/L以上となる こと
    を特徴とする、前記被処理水の脱臭方法。
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