JP3535133B2 - 排煙脱硫装置のスプレー式吸収塔 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、火力発電所などか
ら排出される燃焼排ガス中の硫黄酸化物及びばいじんを
除去する湿式排煙脱硫装置のスプレー式吸収塔、詳しく
はコンパクト化及び電力消費量の低減を図ることができ
る湿式排煙脱硫装置のスプレー式吸収塔に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】火力発電所などから排出される燃焼排ガ
ス中の硫黄酸化物を除去するために用いられる排煙脱硫
装置としては、吸収剤として石灰石又は石灰を使用し副
生品として石膏を回収する湿式石灰（石）・石膏法を採
用するのが現在のところ主流である。この湿式石灰
（石）・石膏法を実施する装置において主要機器となる
吸収塔には、スプレー式のものが多く採用されている。

【０００３】特開平１０−２７２３３５号公報には、吸
収塔下部の吸収液タンクから循環供給される吸収液スラ
リーを、吸収塔内上部に設けられた循環スプレーヘッダ
ーのスプレーノズルから噴霧して、吸収塔内に流入する
排ガス中の硫黄酸化物及びばいじんを除去するととも
に、吸収塔内で排ガスに同伴される吸収剤のミストを除
去する湿式排煙脱硫方法であり、吸収塔内のガス流れ方
向が塔頂部近傍で反転してガスアップフロー部とガスダ
ウンフロー部が形成されるような仕切板を、ガスアップ
フロー部の断面積とガスダウンフロー部の断面積との比
が４：１〜２：１の範囲となるような位置に設けて、ガ
スダウンフロー部での排ガスの流速を６〜１６m ／s の
範囲となるようにした湿式排煙脱硫方法及びスプレー式
吸収塔が記載されている。

【０００４】また、特開２０００−１５０５０号公報に
は、吸収塔下部の吸収液貯留部から循環ポンプにより循
環供給される吸収液スラリーが、吸収塔内上部に設けら
れた循環スプレーヘッダーにおける分岐スプレー管のス
プレーノズルから噴霧されて、ガス入口ダクトから吸収
塔内に流入した排ガス中の硫黄酸化物及びばいじんが除
去され、処理済みガスがガス出口ダクトから排出される
ようにした湿式排煙脱硫装置におけるスプレー式吸収塔
において、循環スプレーヘッダーを、塔底部から塔頂部
方向に設けられた支柱により支持する構成とした排煙脱
硫装置におけるスプレー式吸収塔が記載されている。

【０００５】従来のスプレー式吸収塔においては、図８
及び図９に示すように、吸収塔のガスアップフロー部１
０及びガスダウンフロー部１２に循環スプレー主ヘッダ
ー１４、１６及びサブヘッダー（分岐スプレー管）１
８、２０を挿入し、これらのサブヘッダー１８、２０に
スプレーノズル２２、２４を液が均一噴霧するように配
置していた。この場合、ガスアップフロー部では排ガス
に対し向流方向（下向き）に吸収液を噴霧するように
し、ガスダウンフロー部では排ガスに対し並流方向（下
向き）、あるいは向流方向（上向き）、あるいは並流方
向と向流方向の両方向に吸収液を噴霧するようにする。
なお、ガスダウンフロー部に主ヘッダー及びサブヘッダ
ーを設けない場合もある。２６、２８は吸収液循環配
管、３０は内部仕切板、３２は吸収剤供給ライン、３４
はガス入口ダクト、３６はガス出口ダクト、３８は吸収
液タンク、４０はミスト分離板、４２は出口ミストエリ
ミネータである。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】この場合、ガス空塔速
度はガス圧力損失（圧損）より、ガスアップフロー部で
２．５m ／s 〜３．５m ／s 、ガスダウンフロー部で８
〜１２m ／s 程度が適用範囲であった。これは、スプレ
ーヘッダー通過部のガス速度が最も速くなるため、この
部分における（１）排ガス圧損が上昇する。（２）ロー
ディング現象（ガス速度がある値を超えると液ホールド
アップが次第に増加し、ガスの圧力損失が急激に増加す
る。）により適用排ガス速度に上記制約があった。

【０００７】湿式排煙脱硫装置の吸収塔においては、低
コスト化（イニシャルコスト、ランニングコスト共）が
要求されており、装置のコンパクト化、電力消費量の低
減が必要となっている。本発明は上記の点に鑑みなされ
たもので、本発明の目的は吸収塔内の排ガス高流速化に
よる装置のコンパクト化と、排ガス圧損の低減を実現
し、電力消費量の低減を図ることができる吸収塔構造と
して、吸収塔内部にある仕切板内に循環スプレー主ヘッ
ダーを組み込み一体構造とするようにした排煙脱硫装置
のスプレー式吸収塔を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の排煙脱硫装置のスプレー式吸収塔は、塔
内を上部と下部に開口部が形成されるように内部仕切板
で仕切り、仕切板下部は吸収液タンクで液シールにより
ガス流れを遮断し、ガス流れ方向が塔頂部付近で反転し
て、ガスアップフロー部とガスダウンフロー部が形成さ
れるようにした排煙脱硫装置のスプレー式吸収塔におい
て、内部仕切板に循環スプレー主ヘッダーを組み込んで
一体構造として構成されている（図１〜図４参照）。

【０００９】また、本発明の排煙脱硫装置のスプレー式
吸収塔は、塔内を上部と下部に開口部が形成されるよう
に内部仕切板で仕切り、仕切板下部は吸収液タンクで液
シールによりガス流れを遮断し、ガス流れ方向が塔頂部
付近で反転して、ガスアップフロー部とガスダウンフロ
ー部が形成されるようにした排煙脱硫装置のスプレー式
吸収塔において、循環スプレー主ヘッダーを内部仕切板
の上下方向に多段に配置し、これらの主ヘッダーを板で
接続することにより仕切部材を構成し、さらに、主ヘッ
ダーにサブヘッダーを接続して、ガスアップフロー部、
又はガスアップフロー部及びガスダウンフロー部にサブ
ヘッダーが配置されるようにし、排ガスに対しガスアッ
プフロー部では向流方向に、又は排ガスに対しガスアッ
プフロー部では向流方向に並びにガスダウンフロー部で
は並流方向、向流方向及び並流方向と向流方向の両方向
のいずれかに吸収液を噴霧するようにしたことを特徴と
している（図１〜図４参照）。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。本発明は下記の実施の形態に何ら限定され
るものではなく、適宜変更して実施することができるも
のである。図１は本発明の実施の第１形態による排煙脱
硫装置のスプレー式吸収塔の内部の立面を示し、図２は
内部の平面を示している。吸収塔５０内が、上部と下部
に開口部５２、５４が形成されるように内部仕切板５６
で仕切られ、仕切板５６下部の開口部５４は吸収液タン
ク３８内の液で液シールによりガス流れが遮断されるよ
うにして、ガス流れ方向が塔頂部付近で上方から下方に
反転して、ガスアップフロー部１０とガスダウンフロー
部１２が形成されるように構成されている。

【００１１】このように構成されたスプレー式吸収塔に
おいて、内部仕切板５６に循環スプレー主ヘッダー５８
を組み込んで一体構造としている。具体的には、循環ス
プレー主ヘッダー５８を内部仕切板５６の上下方向に多
段に配置し、これらの主ヘッダー５８を板６０で接続す
ることにより仕切部材を構成している。さらに、主ヘッ
ダー５８にサブヘッダー（分岐スプレー管）６２、６４
を接続して、ガスアップフロー部１０及びガスダウンフ
ロー部１２にサブヘッダー６２、６４が配置されるよう
にして、排ガス流に対しガスアップフロー部１０では向
流方向に、ガスダウンフロー部１２では並流方向に吸収
液が噴霧されるように構成されている。６６、６８はス
プレーノズル、７０は吸収液循環配管である。なお、本
実施形態では、一例として、ガスダウンフロー部では排
ガスに対し並流方向（下向き）に吸収液を噴霧している
が、向流方向（上向き）あるいは並流方向と向流方向の
両方向に吸収液を噴霧する構成としてもよい。このよう
に、本実施形態においては、循環スプレー主ヘッダーを
吸収塔内部の仕切板に組み込んで一体構造とし、ガスア
ップフロー部及びガスダウンフロー部のガス通過部に
は、サブヘッダーのみを配置する構造になっている。

【００１２】図３は本発明の実施の第２形態による排煙
脱硫装置のスプレー式吸収塔の内部の立面を示し、図４
は内部の平面を示している。本実施形態は、ガスダウン
フロー部１２にサブヘッダーを設けることなく、ガスア
ップフロー部１０のみにサブヘッダー６２を設けたもの
である。他の構成及び作用は実施の第１形態の場合と同
様である。

【００１３】

【実施例】以下に、実施例及び比較例を示し、本発明の
特徴とするところをより一層明確にする。図６、図７は
従来のスプレー式吸収塔を比較例として示し、図５は本
発明の実施例のスプレー式吸収塔を示している。スプレ
ー式吸収塔まわりの循環配管を図５、図６、図７に示す
ように構成し、両者を比較すると、次のような結果が得
られた。７２、７４、７６は循環ポンプである。 従来例（比較例） 実施例 吸収塔ガス流速 ２．５m ／s 〜３．５m ／s ４．５m ／s 排ガス圧力損失 ベース（１００） （９５） 吸収塔径 ベース（１００） （７０〜８０） 循環ポンプ台数 ４台（図６の場合） ３台

【００１４】上記結果から、実施例においては、ガス流
速（空塔速度）を高流速化できるので、吸収塔径を小さ
くすることができて、排ガス圧損を小さくすることがで
き、すなわち塔をコンパクト化することができることが
わかる。また循環ポンプ台数を少なくすることができ
て、さらに循環配管を簡素化でき、これらの点からもコ
ンパクト化に寄与することができることがわかる。

【００１５】

【発明の効果】本発明は上記のように構成されているの
で、つぎのような効果を奏する。 （１） スプレーヘッダー部のガス通過面積が大きくと
れる（スプレーパイプの投影（占有）面積が小さくな
る）ため、塔内排ガスの高速流化が可能となり、その結
果、吸収塔径を小さくコンパクトにすることができる。 （２） スプレーヘッダー部の投影（占有）面積が小な
い分、排ガス圧損は低減でき、ＢＵＦ（排ガスブースタ
ファン）の電力消費量が低減する。 （３） 循環スプレー主ヘッダーのサポートは仕切板で
兼ねることから、サポートが不要となり、内部構造がシ
ンプルになる。 （４） ガスアップフロー部とガスダウンフロー部両方
にスプレーヘッダーを配置する場合、ガスアップフロー
部とガスダウンフロー部に別々に循環スプレー主ヘッダ
ーを配置する必要がなく、主ヘッダーは共通となるた
め、循環ポンプ台数を減らすことができる（１ポンプ、
１ヘッダの場合）。 （５） 循環ポンプからスプレーヘッダーまでの循環配
管が簡素化される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の第１形態による排煙脱硫装置の
スプレー式吸収塔の縦断面説明図である。

【図２】図１に示すスプレー式吸収塔の横断面説明図で
ある。

【図３】本発明の実施の第２形態による排煙脱硫装置の
スプレー式吸収塔の縦断面説明図である。

【図４】図３に示すスプレー式吸収塔の横断面説明図で
ある。

【図５】実施例において用いたスプレー式吸収塔の概略
構成図である。

【図６】比較例において用いたスプレー式吸収塔の概略
構成図である。

【図７】比較例において用いたスプレー式吸収塔の概略
構成図である。

【図８】従来の排煙脱硫装置のスプレー式吸収塔の一例
を示す縦断面説明図である。

【図９】図８に示すスプレー式吸収塔の横断面説明図で
ある。

【符号の説明】

１０ ガスアップフロー部 １２ ガスダウンフロー部 １４、１６、５８ 循環スプレー主ヘッダー １８、２０、６２、６４ サブヘッダー（分岐スプレー
管） ２２、２４、６６、６８ スプレーノズル ２６、２８、７０ 吸収液循環配管 ３０、５６ 内部仕切板 ３２ 吸収剤供給ライン ３４ ガス入口ダクト ３６ ガス出口ダクト ３８ 吸収液タンク ４０ ミスト分離板 ４２ 出口ミストエリミネータ ５０ 吸収塔 ５２、５４ 開口部 ６０ 板 ７２、７４、７６ 循環ポンプ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B01D 53/50,53/18

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 塔内を上部と下部に開口部が形成される
   ように内部仕切板で仕切り、仕切板下部は吸収液タンク
   で液シールによりガス流れを遮断し、ガス流れ方向が塔
   頂部付近で反転して、ガスアップフロー部とガスダウン
   フロー部が形成されるようにした排煙脱硫装置のスプレ
   ー式吸収塔において、内部仕切板に循環スプレー主ヘッ
   ダーを組み込んで一体構造としたことを特徴とする排煙
   脱硫装置のスプレー式吸収塔。
2. 【請求項２】 塔内を上部と下部に開口部が形成される
   ように内部仕切板で仕切り、仕切板下部は吸収液タンク
   で液シールによりガス流れを遮断し、ガス流れ方向が塔
   頂部付近で反転して、ガスアップフロー部とガスダウン
   フロー部が形成されるようにした排煙脱硫装置のスプレ
   ー式吸収塔において、循環スプレー主ヘッダーを内部仕
   切板の上下方向に多段に配置し、これらの主ヘッダーを
   板で接続することにより仕切部材を構成し、さらに、主
   ヘッダーにサブヘッダーを接続して、ガスアップフロー
   部、又はガスアップフロー部及びガスダウンフロー部に
   サブヘッダーが配置されるようにし、排ガスに対しガス
   アップフロー部では向流方向に、又は排ガスに対しガス
   アップフロー部では向流方向に並びにガスダウンフロー
   部では並流方向、向流方向及び並流方向と向流方向の両
   方向のいずれかに吸収液を噴霧するようにしたことを特
   徴とする排煙脱硫装置のスプレー式吸収塔。