JP3532290B2 - 新規マルトースホスホリラーゼ及びその製造方法 - Google Patents

新規マルトースホスホリラーゼ及びその製造方法

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JP3532290B2 JP11270695A JP11270695A JP3532290B2 JP 3532290 B2 JP3532290 B2 JP 3532290B2 JP 11270695 A JP11270695 A JP 11270695A JP 11270695 A JP11270695 A JP 11270695A JP 3532290 B2 JP3532290 B2 JP 3532290B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、マルトースを加リン酸
分解し、β−D−グルコース−1−リン酸とD−グルコ
ースを生成する新規マルトースホスホリラーゼ及びその
製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】マルトースは、デンプンに、例えばβ−
アミラーゼを作用させて得られるが、最近になり、工業
的に純粋なものが大量生産されるようになり、その用途
も拡大してきている。このマルトースの甘味は、砂糖の
30〜40%といわれるが、穏やかな丸みのある甘味
は、糖類の中で最も美味な甘味とされている。マルトー
スは、砂糖の甘味を減らすことを目的として用いられる
ほかに、マルトース自身のもつ物性を利用して広く食品
分野で使われており、特に、味の改善、色の保持、食品
物性の改良などの目的で使われている。この他、医薬で
は、マルトースは、インシュリンを必要とせずに吸収消
化され、かつ、グルコースの2倍濃度の等張液が調製で
きることから、糖尿病患者及び手術中・手術後の患者の
静脈注射用補糖液としても使われている。このようなこ
とから、食品中のマルトース含有量を定量することは、
食品を評価する上から、官能検査と同様に産業上非常に
重要な意義を有している。また、糖尿病患者等の血液中
のマルトース含有量を簡便に測定することも、当業者か
ら強く要望されている。 【0003】従来、マルトース含有試料中のマルトース
を定量する方法として、例えば、該試料中のマルトー
スに、α−グルコシダーゼを作用させ、生成するグルコ
ースを定量する方法[メソッヅ・オブ・エンザイマティ
ック・アナリシス(Methods of Enzym
atic Analysis)、第3巻、第1185
頁、1974年]、該試料中のマルトースに、ヒ酸塩
の存在下にマルトースホスホリラーゼを作用させ、生成
するグルコースを定量する方法[アナリティカル・バイ
オケミストリー(Analytical Bioche
mistry)、第57巻、第303頁、1974年]
などが知られている。 しかしながら、前記の方法
は、α−グルコシダーゼがマルトース以外にマルトトリ
オース〜マルトペンタオースなどにも作用するため、精
度良くマルトースを定量できない欠点を有している。一
方、前記の方法は、マルトースホスホリラーゼが、マ
ルトースに特異的に作用し、他の少糖類には作用しない
ことから、マルトースの定量には優れていることが知ら
れている。 【0004】ところで、従来のマルトースホスホリラー
ゼとしては、ネイセリア・メニンギチヂス(Neise
rria meningitidis)から得たもの
[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー
(Journal of Biological Ch
emistry)第199巻、153頁、1952
年]、あるいは、ラクトバチルス・ブレビス(Lact
obacillus brevis)IFO3345か
ら得たもの[アグリカルチュラル・アンド・バイオロジ
カル・ケミストリー(Agricultural an
d Biological Chemistry)、第
37巻、2813頁、1973年]、また、ラクトバチ
ルス・ブレビス(Lactobacillus bre
vis)DSM20054、NCIB8836、856
1、8562、ラクトバチルス・プランタルム(Lac
tobacillus plantarum)DSM2
0174及び微工研菌寄第4628号、ラクトバチルス
・レウテリ(Lactobacillus reute
ri)DSM20016、ラクトバチルス・フェルメン
テュム(Lactobacillus ferment
um)DSM20052、ストレプトコッカス spe
c.(Streptococcus spec.)微工
研菌寄第4624号、微工研菌寄第4625号、微工研
菌寄第4626号、微工研菌寄第4627号などから得
たもの(特公昭60−54036号公報)、さらにま
た、ラクトバチルス・サンフランシスコ(Lactob
acillussanfrancisco)から得たも
の(特開平1−91778号公報)、などが知られてい
る。 【0005】しかしながら、このような従来のマルトー
スホスホリラーゼは、至適pHが5.5付近と低く、ま
た、熱安定性も不十分である。ところで、近年では、臨
床検査項目などは、酵素類を含む測定用試薬を用い、自
動分析法などによって中性域で測定されるのが通例であ
る。このため、酵素類としてマルトースホスホリラーゼ
を使用する場合においては、従来のもののごとく至適p
Hが酸性域のものでは、中性域においてはその反応速度
が遅く、該酵素の使用量も多くなるという欠点を有して
いる。このようなことから、中性付近に至適pHを有す
るマルトースホスホリラーゼが望まれており、さらに、
特に最近、液状試薬の普及に伴ない、熱安定性の優れ
た、長期保存にも耐え得るマルトースホスホリラーゼが
要望されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、至適pHが
中性付近にあり、かつ熱安定性の優れた新規マルトース
ホスホリラーゼ及びその酵素を容易に製造する方法を得
ることを目的としてなされたものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、エンテロコッ
カス属、ロイコノストック属又はラクトコッカス属に属
する菌株が、マルトースホスホリラーゼを生産するこ
と、そしてその生産された酵素の至適pHが中性付近に
あり、また熱安定性に優れていることを見出し、この知
見に基づいて本発明を完成するに至った。 【0008】すなわち、本発明は、下記の理化学的性
質: (1)作用:1モルのマルトースを加リン酸分解し、1
モルのβ−D−グルコース−1−リン酸と1モルのD−
グルコースを生成する。 (2)基質特異性:マルトースに特異的に作用し、シュ
ークロース、ラクトース、トレハロース、マルチトール
及びセロビオースには作用しない。 (3)至適pH及び安定pH範囲:至適pHは6.5〜
7.5であり、安定pH範囲は、37℃、15分間処理
により、pH5.5〜8.0で安定。 (4)作用適温の範囲:45℃〜50℃。 (5)pH、温度などによる失活の条件:pH7.0、
10分間処理により、55℃程度まで安定。 (6)阻害、活性化及び安定化:HgCl2 及びAgN
3 により強く阻害され、またCuSO4 及びZnSO
4 によっても阻害されるが、活性化及び安定化に特別に
寄与する金属塩は見当たらない。 (7)分子量:約220,000(ゲルろ過法)。を有
するマルトースホスホリラーゼであり、また、本発明
は、エンテロコッカス属、ロイコノストック属又はラク
トコッカス属に属し、マルトースホスホリラーゼを生産
する能力を有する菌株を培地に培養し、その培養物から
該マルトースホスホリラーゼを採取することを特徴とす
るマルトースホスホリラーゼの製造方法である。 【0009】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず、本発明の新規マルトースホスホリラーゼ(以下「本
酵素」ということもある)の理化学的性質は下記のとお
りである。 【0010】(1)作用:1モルのマルトースを加リン
酸分解し、1モルのβ−D−グルコース−1−リン酸と
1モルのD−グルコースを生成する。すなわち、 【0011】 【化1】 で示される反応を触媒する。 【0012】(2)基質特異性:マルトースに特異的に
作用し、シュークロース、ラクトース、トレハロース、
マルチトール、セロビオース又はマルトトリオースには
作用しない。本酵素の各種基質に対する相対活性を調べ
た結果の一例を表1に示す。 【0013】 【表1】 【0014】(3)至適pH及び安定pH範囲:至適p
Hは、50mM酢酸ナトリウム−酢酸緩衝液(pH3.
4〜5.4)、50mMメス−水酸化ナトリウム緩衝液
(pH5.5〜7.1)、50mMヘペス−水酸化ナト
リウム緩衝液(pH7.1〜8.1)及び50mMビシ
ン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.1〜8.8)を
用い、各pHにおける本酵素の活性測定を行って求め
た。その結果は、図1に示すとおりであり、本酵素の至
適pHは、6.5〜7.5であり、特にpH7.1付近
である。なお、図1中に示すマークで、□は50mM酢
酸ナトリウム−酢酸緩衝液(pH3.4〜5.4)を、
■は50mMメス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH5.
5〜7.1)を●は50mMヘペス−水酸化ナトリウム
緩衝液(pH7.1〜8.1)を、また、○は50mM
ビシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.1〜8.
8)を、それぞれ用いたときの結果を示している。 【0015】また、安定pH範囲は、50mM酢酸ナト
リウム−酢酸緩衝液(pH4.5〜5.5)、50mM
メス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH5.5〜6.
5)、50mMヘペス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH
7.0〜8.0)及び50mMトリス−塩酸緩衝液(p
H8.0〜9.5)を用い、pH4.5〜9.5におい
て37℃、15分間それぞれ処理した後、本酵素の残存
活性を測定して求めた。その結果は、図2に示すとおり
であり、本酵素の安定pH範囲は5.5〜8.0であ
る。なお、図2中に示すマークで、□は50mM酢酸ナ
トリウム−酢酸緩衝液(pH4.5〜5.5)を、■は
50mMメス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH5.5〜
6.5)を、●は50mMヘペス−水酸化ナトリウム緩
衝液(pH7.0〜8.0)を、また、○は50mMト
リス−塩酸緩衝液(pH8.0〜9.5)を、それぞれ
用いたときの結果を示している。 【0016】(4)作用適温の範囲:後記力価の測定法
におけると同一の基質・酵素混合液を用い、種々の温度
(25℃〜60℃)にて本酵素の活性測定を行った。そ
の結果は、図3に示すとおりであり、本酵素の作用適温
の範囲は45℃〜50℃である。 【0017】(5)pH、温度などによる失活の条件:
本酵素は、37℃、15分間の処理では、pH5.5〜
8.0で安定であり、図2からわかるように、それより
酸性側又はアルカリ性側では急激に失活する。また、5
0mMヘペス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH7.0)
を用いて、各温度で10分間処理した場合の本酵素の熱
安定性を調べた。その結果は、図4に示すとおりであ
り、本酵素は55℃程度まで安定であり、60℃以上で
ほぼ失活する。 【0018】(6)阻害、活性化及び安定化:後記力価
の測定法におけると同一の基質・酵素混合液に、表2に
示す種々の金属塩(各々1mMの濃度)を添加して酵素
活性を測定し、その影響を調べた。その結果は、表2に
示すとおりであり、本酵素は、HgCl2 及びAgNO
3 により強く阻害され、またCuSO4 及びZnSO4
によっても阻害されるが、活性化及び安定化に特別に寄
与する金属塩は見当たらない。 【0019】 【表2】 【0020】(7)分子量:TSKgel G3000
SWXL(東ソー社製)によるゲルろ過法で、分子量は約
220,000である。なお、SDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動法による分子量は約100,000で
あるため、本酵素はダイマーと考えられる。 【0021】(8)力価の測定方法:酵素の力価の測定
は下記の2種類のいずれかの方法で行い、適宜これらの
測定方法を使用した。 [測定法1]マルトース20μモル及びリン酸塩20μ
モルを50mMヘペス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH
7.0)に溶解した反応液0.4mlを30℃で予備加
温し、次に酵素液0.1mlを加え、30℃で10分間
反応を行った後、沸騰水中で反応を停止する。反応液中
に生成したグルコースを、市販のグルコース測定キット
(和光純薬工業社製、グルコースCII−テストワコ
ー)を用いて測定する。また、対照は、本酵素0.1m
lの代わりに50mMヘペス−水酸化ナトリウム緩衝液
(pH7.0)を0.1ml添加する以外はすべて前記
と同一操作により測定する。なお、1分間に1μモルの
グルコースを生成する酵素量を1単位(U)とする。 [測定法2]マルトース20μモル及びヒ酸塩20μモ
ルを50mMヘペス−水酸化ナトリウム緩衝液(pH
7.0)に溶解した反応液0.4mlを30℃で予備加
温し、次に酵素液0.1mlを加え、30℃で10分間
反応を行った後、沸騰水中で反応を停止する。反応液中
に生成したグルコースを、市販のグルコース測定キット
(和光純薬工業社製、グルコースCII−テストワコ
ー)を用いて測定する。また、対照は、本酵素0.1m
lの代わりに50mMヘペス−水酸化ナトリウム緩衝液
(pH7.0)を0.1ml添加する以外はすべて前記
と同一操作により測定する。なお、1分間に2μモルの
グルコースを生成する酵素量を1単位(U)とする。 【0022】(9)精製方法:本酵素の単離、精製は常
法に従って行うことでき、例えば硫安塩析法、有機溶媒
沈澱法、イオン交換体などによる吸着処理法、イオン交
換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル
ろ過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ア
フィニティークロマトグラフィー、電気泳動法などが単
独又は適宜組合わせて用いられる。 【0023】(10)Km値:ラインウエーバー・バー
クのプロットから、マルトース、ヒ酸及びリン酸に対す
るKm値は、それぞれ1.9mM、8.3mM、3.4
mMである。 【0024】(11)SDS−ポリアクリルアミドゲル
電気泳動:アクリルアミド4〜20%(W/V)の濃度
勾配を有するポリアクリルアミドゲルを用い、常法によ
りSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下SD
S−PAGEということがある)を行った結果、図5に
示すごとく本酵素の単一なバンドが認められた。40m
A、60分間通電後の相対移動度(Rf)は、0.41
である。 【0025】本発明の酵素の主要な理化学的性質は前記
のとおりであるが、本酵素が新規なものである根拠を次
に示す。前記したごとく、本発明の酵素は、特にその至
適pH、熱安定性などにおいて従来知られているマルト
ースホスホリラーゼ、例えば前記のラクトバチルス・ブ
レビス(Lactobacillus brevis)
IFO3345から得られたもの[アグリカルチュラル
・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agric
ultural and Biological Ch
emistry)、第37巻、2813頁、1973
年](文献1)及びラクトバチルス・サンフランシスコ
(Lactobacillus sanfrancis
co)から得られたもの(特開平1−91778号公
報)とは異なるものである。本酵素とこれらの文献に記
載のマルトースホスホリラーゼとの主要な理化学的性質
の比較を表3に示す。 【0026】 【表3】 【0027】表3に示すごとく、特に、至適pHが本酵
素はpH7.1付近であるのに対して、公知の酵素はp
H5.4又はpH5.5付近であること、また熱安定性
が本酵素は55℃程度まで安定(10分間処理)である
のに対して、公知の酵素は約40℃まで安定(10分間
処理)又は40℃(15分間処理)で失活しないこと、
さらにまた、分子量が本酵素は220,000(ゲルろ
過法)、100,000(SDS−PAGE法)である
のに対して、公知の酵素はそれぞれ150,000(ゲ
ルろ過法)、80,000(SDS−PAGE法)又は
150,000±20,000(ゲルろ過法)、75,
000±4,000(SDS−PAGE法)であること
などから、本酵素は、前記公知のマルトースホスホリラ
ーゼとは異なる性質を有する新規なものであることがわ
かる。 【0028】次に、本酵素の製造方法について説明す
る。まず、使用される微生物は、エンテロコッカス属、
ロイコノストック属又はラクトコッカス属に属し、前記
のマルトースホスホリラーゼ生産能を有する菌株であっ
て、その具体例としては、エンテロコッカス属では、エ
ンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus
hirae)IFO3181など、ロイコノストック属
では、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuc
onostoc mesenteroides)ATC
C12291など、ラクトコッカス属では、ラクトコッ
カス・ラクチス・サブエスピー・ラクチス(Lacto
coccus lactis subsp. lact
is)IFO12007などが挙げられ、これらの菌株
の変種又は変異株も用いられる。なお、本発明における
新規マルトースホスホリラーゼとしては、前記した作
用、基質特異性、至適pH、作用適温の範囲、熱安定
性、分子量などの主要な理化学的性質を有するものであ
ればよく、その他の理化学的性質が多少の相違を示すも
のであっても、本酵素として包含される。そして前記の
各微生物は、このようなマルトースホスホリラーゼを得
るための使用菌の一例であって、本発明においてはエン
テロコッカス属、ロイコノストック属又はラクトコッカ
ス属に属し、マルトースホスホリラーゼ生産能を有する
菌株であれば全て使用できる。 【0029】次に、マルトースホスホリラーゼ生産能を
有する微生物を用いて、マルトースホスホリラーゼを製
造するためには、通常の固体培養法でもよいが、液体培
養法が好ましい。そしてその培地としては、炭素源、窒
素源、無機物、その他の栄養素を程よく含有するもので
あれば、合成培地又は天然培地のいずれでも使用でき
る。炭素源としては、同化可能な炭素化合物であればよ
く、例えばマルトース、グルコース、デンプン加水分解
物、グリセリン、フラクトース、糖蜜などが使用され
る。また、窒素源としては、利用可能な窒素化合物であ
ればよく、例えば酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コ
ーンスチープリカー、大豆粉、アミノ酸、硫安、硝酸ア
ンモニウムなどが使用される。その他、食塩、塩化カリ
ウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄、
リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、炭酸ナトリ
ウム、酢酸ナトリウムなどの種々の塩類、ビタミン類、
消泡剤などが使用される。これらの栄養源はそれぞれ単
独で用いることもでき、また組み合わせて用いることも
できる。このようにして調製した培地を用いて本酵素を
製造するには、通気攪拌深部培養または振盪培養などに
より好気的に培養しても良いが、無通気で、低速度攪拌
で深部培養するのが好ましい。その際に、培地の初発p
Hを5〜9程度に調整し、20〜37℃、好ましくは2
5〜35℃前後の温度で10〜50時間、好ましくは1
5〜25時間培養する。こうすることによって、培養物
中に本酵素が生成、蓄積する。この培養物から本酵素を
採取するには、通常の酵素採取手段を用いることができ
る。 【0030】本酵素は、主に菌体内に存在する酵素であ
るため、培養物から、例えばろ過、遠心分離などの操作
により菌体を分離し、この菌体から本酵素を採取するの
が好ましい。この場合、常法、例えば超音波破砕機、フ
レンチプレス、ダイナミルなどの種々の破壊手段を用い
て菌体を破壊する方法、リゾチームなどの細胞壁溶解酵
素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、トリトンX−1
00などの界面活性剤を用いて菌体から酵素を抽出する
方法などを単独又は組み合わせて採用することができ
る。次いで、ろ過又は遠心分離などにより不溶物を除
き、本酵素の粗酵素液を得る。このようにして得られた
粗酵素液から本酵素を必要により単離するには、前記の
精製方法が適用できる。 【0031】 【発明の効果】本酵素は、その至適pHが、自動分析法
などにおいて用いられる酵素類を含む測定用試薬の反応
系のpH領域と一致して中性域であることから、本酵素
を用いた場合には、従来のマルトースホスホリラーゼに
比して酵素反応速度が速く、該酵素の使用量を低減でき
る。また、本酵素は、その熱安定性も従来になく優れて
いるため、長期保存にも耐えることができるので、特に
液状試薬への使用には極めて好適である。そして、本発
明の方法によれば、従来のマルトースホスホリラーゼと
比較して、至適pHが中性付近にあり、しかも熱安定性
が優れたマルトースホスホリラーゼを容易に製造するこ
とができる。 【0032】 【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定され
るものではない。 実施例1 マルトース・一水和物1.0%(W/V)、ポリペプト
ン2.0%(W/V)、酵母エキス1.0%(W/
V)、酢酸ナトリウム1.0%(W/V)、リン酸一カ
リウム0.5%(W/V)、MgSO4・7H2O 0.
02%(W/V)、MnCl2・4H2O 0.0002
%(W/V)及び水道水からなる培地(pH7.0)2
0Lを30L容ジャーに入れて、120℃で10分間殺
菌した。この培地に、エンテロコッカス・ヒラエ(En
terococcus hirae)IFO3181の
保存スラント(3本)から、生理食塩水を用いて調製し
た菌体懸濁液を接種し、これを30℃で約24時間、無
通気、低速度攪拌で培養した。培養終了後、培養液20
Lから旭化成工業社製マイクローザを用いて菌体を集
め、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)にて菌体を洗
浄した後、菌体を同緩衝液を用いて懸濁し4000ml
とした。本酵素の精製は、この菌体懸濁液の半分である
2000mlに対して、以下に示す操作により行った。 【0033】ステップ1 (粗酵素液の調製):前記菌
体懸濁液2000mlにリゾチーム4gを添加、混合し
た後、35℃2時間溶菌し、次に、遠心分離にて不溶物
を除去した。この上澄液を限外ろ過膜を用いて濃縮し、
2mMエチレンジアミン四酢酸を含有する10mMリン
酸緩衝液(pH7.5)(以下緩衝液Aという)に対し
て透析した。 ステップ2 (フェニル−セファロースCL−4B・ク
ロマトグラフィー):透析液(110ml)に15%飽
和になるように硫安粉末を添加、混合した後、フェニル
−セファロースCL−4Bのカラム(2.5×17c
m)に本酵素を吸着させ、15%飽和硫安を含有する緩
衝液Aにてカラムを洗浄した。次に、15%〜0%飽和
硫安を含有する緩衝液Aの逆直線濃度勾配法により本酵
素を溶出させ、活性画分を限外濃縮し、0.1M塩化カ
リウムを含有する緩衝液Aに対して透析した。 ステップ 3 (QAE−セファデックスA−50・ク
ロマトグラフィー):透析液(79ml)を、QAE−
セファデックスA−50のカラム(2.5×17cm)
に吸着させた後、0.3M塩化カリウムを含有する緩衝
液Aにてカラムを洗浄し、次ぎに0.3M〜1.0M塩
化カリウムを含有する緩衝液Aの直線濃度勾配法により
溶出させ、活性画分を限外濃縮し、1mMリン酸緩衝液
(pH7.0)に対して透析した。 ステップ4 (ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラ
フィー):透析液(9.4ml)を、ヒドロキシルアパ
タイトのカラム(2.5×15cm)に吸着させた後、
1mMリン酸緩衝液(pH7.0)でカラムを洗浄し、
次に、1mM〜50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)
の直線濃度勾配法にて溶出させ、活性画分を限外濃縮し
た。 ステップ5 (セファデックスG−200・クロマトグ
ラフィー):濃縮液(2ml)を、セファデックスG−
200のカラム(2.5×95cm)に通塔させた後、
0.1M塩化カリウムを含有する10mMリン酸緩衝液
(pH7.0)を用いてゲルろ過を行い、溶出された活
性画分80mlを採取した。該画分は、SDS−ポリア
クリルアミドゲル電気泳動(図5)により、均一と判断
された本酵素の精製標品であり、全タンパク量が11.
5mg、全活性が338U、比活性が29.4U/mg
のものであった。 【0034】実施例2 実施例1と同様にして調製した培地30mlを大型試験
管に入れて、120℃で10分間殺菌した。この培地
に、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuco
nostocmesenteroides)ATCC1
2291の保存スラントから、1白金耳の菌量を接種
し、これを35℃で約22時間、静置培養した。なお、
培養液中の菌の生育量は、660nmにおける吸光度を
測定して求めた。次いで、この培養液30mlから遠心
分離により菌体を集め、10mMリン酸緩衝液(pH
7.5)にて菌体を洗浄した後、−20℃にて一晩凍結
保存した。この凍結菌体を室温にて融解後、0.5%ト
リトンX−100と0.2%リゾチームを含有する上記
緩衝液2.0mlを添加、混合し、35℃で2時間加温
処理した。この処理液から不溶物を遠心分離により除去
した後、上澄液を採取して、粗酵素液とした。前記の力
価の測定方法に従って、本菌株由来の粗酵素液のマルト
ースホスホリラーゼ活性(U)を測定し、生育量(66
0nmにおけるOD値)当たりの活性値(U/生育量)
を求めた。その結果、0.155U/生育量のマルトー
スホスホリラーゼを好適に生産していることを認めた。 【0035】実施例3 実施例2と同様にして調製した培地に、ラクトコッカス
・ラクチス・サブエスピー・ラクチス(Lactoco
ccus lactis subsp. lacti
s)IFO12007の保存スラントから、1白金耳の
菌量を接種し、これを30℃で約22時間、静置培養し
た。次いで、実施例2と同様にして上澄液を採取して、
粗酵素液とした。本菌株由来の粗酵素液のマルトースホ
スホリラーゼ活性を実施例2と同様の方法で測定した結
果、0.067U/生育量のマルトースホスホリラーゼ
を好適に生産していることを認めた。
【図面の簡単な説明】 【図1】 本酵素の至適pHを示すグラフ。 【図2】 本酵素の安定pH範囲を示すグラフ。 【図3】 本酵素の作用適温の範囲を示すグラフ。 【図4】 本酵素の熱安定性を示すグラフ。 【図5】 本酵素の電気泳動図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−80488(JP,A) 特開 平1−91778(JP,A) J.Bacteriol., 1994, Vol.176, No.17, p. 5304−5311 Agr.Biol.Chem., 1973, Vol.37, No.12, p.2813−2819 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 9/00 - 9/99 BIOSIS/MEDLINE/WPID S(STN) PubMed

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】以下の理化学的性質を有するマルトースホ
    スホリラーゼ。 (1)作用:1モルのマルトースを加リン酸分解し、1
    モルのβ−D−グルコース−1−リン酸と1モルのD−
    グルコースを生成する。 (2)基質特異性:マルトースに特異的に作用し、シュ
    ークロース、ラクトース、トレハロース、マルチトール
    及びセロビオースには作用しない。 (3)至適pH及び安定pH範囲:至適pHは6.5〜
    7.5であり、安定pH範囲は、37℃、15分間処理
    により、pH5.5〜8.0で安定。 (4)作用適温の範囲:45℃〜50℃。 (5)pH、温度などによる失活の条件:pH7.0、
    10分間処理により、 55℃程度まで安定。 (6)阻害、活性化及び安定化:HgCl及びAgN
    により強く阻害され、またCuSO及びZnSO
    によっても阻害されるが、活性化及び安定化に特別に
    寄与する金属塩は見当たらない。 (7)分子量:約220,000(ゲルろ過法)。
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Agr.Biol.Chem., 1973, Vol.37, No.12, p.2813−2819
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