JP3531678B2 - 安定化剤を固溶したジルコニア粉の製造方法 - Google Patents

安定化剤を固溶したジルコニア粉の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は安定化剤を固溶したジル
コニア粉の製造方法に係り、特に結晶粒が微細で焼結性
の良好なジルコニア粉を安価に製造でき、かつ製造履歴
の異なる水酸化ジルコニウムを原料として選択すること
により、粉体特性の異なるジルコニア粉を造り分けるこ
ともできる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、安定化剤を固溶したジルコニア粉
の製造方法として、次の2方法等が知られている。すな
わち、 ジルコニウム可溶性塩と安定化剤の可溶性塩とを含む
水溶液をアンモニア水等で中和して共沈させ、この沈殿
を濾過水洗した後、乾燥仮焼する方法。 ジルコニウム可溶性塩と安定化剤の可溶性塩とを含む
水溶液を加水分解させて得た水酸化物を乾燥、仮焼する
方法。 ところが、上記従来方法には次のような欠点がある。す
なわち、の方法は安定化剤とジルコニウムの沈殿のP
Hが異なるため水酸化ジルコニウムに安定化剤が均質に
分解させることが困難で、均質な組成及び結晶子を有す
る安定化剤を固溶したジルコニアが得られない。また、
の方法ではオ−トクレ−ブ内で高温高圧下に長時間処
理するという工程を必須としており、これらの高価な製
造設備並びに該設備の運転費用の面で経済性にかける。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来法の欠点を排除して、安定化剤を均一に固溶した均
質な組成および結晶子を有する焼結性の良好なジルコニ
ア粉を安価に製造する効果的な方法を提供することにあ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、次
の2発明によって何れも満足して達成できることを見出
した。該2発明のそれぞれ要旨とするところは次の如く
である。すなわち、 (1)水酸化ジルコニウムを水に解砕してスラリー化す
る段階と、前記スラリーを撹拌しながらジルコニア安定
化剤の水可溶性塩を含む水溶液を添加して混合する段階
と、前記処理したスラリーを中和する段階と、得られた
水酸化ジルコニウムとジルコニア安定化剤の混合沈殿物
を分離した後仮焼する段階と、有して成ることを特徴
とする安定化剤を固溶したジルコニア粉の製造方法。 (2)水酸化ジルコニウムを水に解砕してスラリー化す
る段階と、前記スラリーを撹拌しながらジルコニア安定
化剤の水可溶性塩を含む水溶液を添加して混合する段階
と、前記処理したスラリーを中和する段階と、得られた
水酸化ジルコニウムとジルコニア安定化剤の混合沈殿物
を分離した後仮焼する段階と、を有して成り、かつ、前
記スラリーを撹拌しながらジルコニア安定化剤の水可溶
性塩を含む水溶液を添加して混合する段階において液温
を昇温状態におくことを特徴とする安定化剤を固溶した
ジルコニア粉の製造方法。
【0005】本発明を詳細に説明する。まず水溶性ジル
コニウム化合物、例えばオキシ塩化ジルコニウム等の水
溶液又は塩基性硫酸ジルコニウム沈殿を含むスラリーを
アンモニア水等のアルカリ溶液で中和することにより得
られた水酸化ジルコニウム沈殿を濾過、水洗し、これを
繰り返して不純物の少ない水酸化ジルコニウムを得る。
次に該水酸化ジルコニウムを適量の水に解砕してスラリ
ー状にする。このときの添加する水の量は水酸化ジルコ
ニウムがスラリー化するに足る十分な量であれば良い。
撹拌混合しているスラリー中にZrO21モル当たり必
要量の安定化剤、例えばY23の場合には塩化イットリ
ウム、硝酸イットリウム等の水溶性イットリウム化合物
の必要量を添加する。水酸化ジルコニウムはイオン交換
能力があるので添加した3価のイットリウム等の安定化
剤金属イオンの大部分が水酸化ジルコニウムに吸着固定
される。このように安定化剤金属イオンを水酸化ジルコ
ニウムに分子レベルで均質に固定化させることが本発明
の特徴の一つである。添加量が4モル%以下であると安
定化剤を一度に添加しても吸着率は高く保たれるが、8
モル%程度の高い添加率の場合には一度に添加すると吸
着率が低下するので2度に分割して操作する。すなわ
ち、4モル%分を添加して吸着させた後にアンモニア水
で中和し濾過して、濾過ケークを再びスラリー化して残
りの4モル%分を添加して同じ操作で吸着させると、吸
着率は最初の4モル%分と同様に高くなる。これをアン
モニア水で中和して濾過、水洗を行い仮焼する。
【0006】吸着はイオン交換反応であるからイオン濃
度が高い方が吸着率は高い。従つて水酸化ジルコニウム
のスラリー濃度は高いほど金属イオンの吸着率が高くな
り好ましい。また金属イオンの添加後にスラリーを加熱
昇温することも金属イオンの吸着率向上に効果がある。
これは、温度により反応平衡が移動して結合する金属イ
オンが増加することによるものと考えられる。このよう
にして大部分の安定化剤金属イオンを水酸化ジルコニウ
ムに吸着させるとともに、水酸化ジルコニウムに吸着し
ていない安定化剤金属イオンはアンモニア水等のアルカ
リ溶液で中和して水酸化物沈殿となし、水酸化ジルコニ
ウム沈殿の表面に沈殿させる。撹拌混合しているスラリ
ー中で沈殿が進行するため安定化剤金属イオンの水酸化
物は分子レベルの接触には至らないが、ほぼ均一に水酸
化ジルコニウム表面に安定化剤の水酸化物が沈殿する
【0007】安定化剤吸着、沈殿した水酸化ジルコニ
ウムは濾過、水洗により陰イオンを十分に除去した後仮
焼して安定化剤固溶のジルコニアを得るのであるが、分
子レベルで安定化剤金属イオンを吸着、沈殿した水酸化
ジルコニウムは、極めて低温の仮焼で容易に金属イオン
を固溶することができる。すなわち、600℃〜100
0℃の温度で仮焼することにより安定化剤を固溶させた
ジルコニア仮焼粉とした後に、これを粉砕して粒度を整
え微粒の安定化剤固溶ジルコニア粉とすることができ
る。この方法では仮焼温度が低いため結晶粒子の成長が
少なく、これを焼成する場合には1400℃程度の低温
で真比重に近い密度に焼結することができる。かくの如
く本発明方法によると、極めて操作が容易で、しかも長
時間の反応操作を必要とせずに安定化剤固溶したジル
コニア粉を製造することができ、しかも安定化剤の大部
分は分子レベルで水酸化ジルコニウムと接触しているた
め仮焼時の反応が容易で、低温度で固溶させることがで
きるので結晶子のグレインサイズの小さな焼結性の良好
な原料ジルコニア粉を製造することができる。上記本発
明の方法によつて得られたジルコニア粉は、ジルコニウ
ム源となる水酸化ジルコニウムを仮焼したときの粉体特
性を受け継ぎ、これに極めて類似した粉体特性を有する
安定化剤固溶ジルコニアになる。従って目的に応じた水
酸化ジルコニウムを選ぶことにより粉体特性の異なる安
定化剤固溶ジルコニア粉の作り分けを行うこともでき
る。
【0008】
【実施例】
【実施例1】原料水酸化ジルコニウムの一種を水に解砕
してスラリーとした。スラリー中のZr0量は41.
6g、スラリーは全容量が1リットルになるようにし
た。スラリーを撹拌しながらYとして3モル%に
相当する2.36gを含むYCl溶液を加えた。30
分後に上澄み液の3価のイットリウム濃度を分析して水
酸化ジルコニウムに結合しているYの総添加量に対する
比率を計算すると78%であつた。撹拌を続けながらア
ンモニア水50ml添加して30分撹拌継続後に濾過、
洗浄を繰り返して過剰のアンモニア分、塩化物を除去し
た後に得られた水酸化ジルコニウムを800℃で2時間
仮焼した。得られた粉末の粉体特性はD50 1.2μ
m、嵩密度0.2g/cm、タップ密度0.4g
/cm、比表面積32m/g、X線回折したとき
正方晶系のd=2.96(111)、単斜晶系d=
3.16(111)、d=2.84(111)とから正
方晶率を計算すると89%であった。X線回折結果を
第1図に示す。なお正方晶率=正方晶系ピーク高さ/
(単斜晶系ピーク高さ(d2.84.+d3.16)+正方晶系ピー
ク高さ)として計算した。また、D50はマイクロトラ
ックにより測定した平均粒径(μm)を指す。
【0009】
【実施例2】実施例1と同じ方法で水酸化ジルコニウム
スラリーにYCl3溶液を加えた。該スラリーを撹拌し
ながら加熱して80℃まで昇温した後、上澄み液の3価
のイットリウム濃度を分析して水酸化ジルコニウムに結
合しているイットリウムの総添加量に対する比率を計算
すると85%であつた。撹拌を続けながらアンモニア水
50ml添加し、以後実施例1と同様に濾過、洗浄を行
い仮焼した。仮焼は600℃2時間及び800℃2時間
の2つの条件で行い、得られた粉末をX線回折した。X
線回折結果をそれぞれ第2図および第3図に示す。60
0℃仮焼の粉は、800℃仮焼の粉に比べて結晶化が悪
いが単斜晶系はほとんど見られず、イットリアを十分に
固溶していることを示しており、正方晶系率を計算する
といずれも97%と極めて高い値が得られた。実施例1
と比較してイットリウムイオンの吸着率が高くなつたこ
とにより固溶率も向上したことを示している。800℃
仮焼の粉末を1.0t/cm2、1.5t/cm2、2.
0t/cm2の圧力で成形し、1300〜1500℃で
2時間焼成した後の焼結密度の測定値は表1に示すとお
りであり、極めて焼結性の良好な粉であることを示して
いる。
【表1】
【0010】
【実施例3】実施例2とは製造履歴の異なる原料水酸化
ジルコニウムを使用して実施例2と同様の操作でイット
リウム固溶のジルコニアを製造した。水酸化ジルコニウ
ムスラリーにYCl水溶液を添加し80℃に加熱した
後イツトリウムの吸着率は89%であり、得られたジル
コニアのX線回析結果から正方晶率を計算すると97%
であつた。粉体特性測定値は平均粒径d50 0.73
μm、嵩密度0.45/cm、タツプ密度0.7
5g/cm、比表面積35m/gであつた。
【0011】
【発明の効果】上記実施例から明らかな如く、本発明に
よる安定剤を固溶したジルコニウム粉の製造方法は次の
如きすぐれた効果を有している。 (イ)本発明方法の操作は極めて容易で、かつ長時間の
反応操作を必要としない。 (ロ)安定化剤の大部分は分子レべルで水酸化ジルコニ
ウムと接触しているため、仮焼時の反応が容易であつて
低温度で固溶させることができる。その結果、仮焼後の
機械的粉砕をほとんど必要としない。 (ハ)結晶粒の小さい焼結性の良好な原料ジルコニア粉
を安価に製造することができる。 (ニ)本発明によるジルコニア粉は、ジルコニウム源と
なる水酸化ジルコニウムを仮焼したときの粉体特性を受
け継ぎ、これと極めて類似した粉体特性を有する安定化
剤を固溶したジルコニア粉となる。 (ホ)その結果、目的に応じて適当な水酸化ジルコニウ
ム原料を選ぶことにより、任意の粉体特性のジルコニア
粉を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における800℃で2時間仮焼したジ
ルコニア粉のX線回折図である。
【図2】実施例2における600℃で2時間仮焼したジ
ルコニア粉のX線回折図である。
【図3】実施例2における800℃で2時間仮焼したジ
ルコニア粉のX線解折図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水酸化ジルコニウムを水に解砕してスラ
    リー化する段階と、前記スラリーを撹拌しながらジルコ
    ニア安定化剤の水可溶性塩を含む水溶液を添加して混合
    する段階と、前記処理したスラリーを中和する段階と、
    得られた水酸化ジルコニウムとジルコニア安定化剤の混
    合沈殿物を分離した後仮焼する段階と、有して成るこ
    とを特徴とする安定化剤を固溶したジルコニア粉の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 水酸化ジルコニウムを水に解砕してスラ
    リー化する段階と、前記スラリーを撹拌しながらジルコ
    ニア安定化剤の水可溶性塩を含む水溶液を添加して混合
    する段階と、前記処理したスラリーを中和する段階と、
    得られた水酸化ジルコニウムとジルコニア安定化剤の混
    合沈殿物を分離した後仮焼する段階と、を有して成り、
    かつ、前記スラリーを撹拌しながらジルコニア安定化剤
    の水可溶性塩を含む水溶液を添加して混合する段階にお
    いて液温を昇温状態におくことを特徴とする安定化剤を
    固溶したジルコニア粉の製造方法。
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