JP3906353B2 - Yag微粉末の製造法 - Google Patents
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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(以下、YAGという)焼結体原料ばかりでなくサイアロンや窒化アルミニウム等の焼結助剤、蛍光体原料、触媒等として有用な分散性に優れたYAG微粉末を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、YAGはレーザー材料としてばかりでなく高温材料や種々の検出素子材料などの重要な材料として知られている。それらの材料を効率良く安価に製造するには易焼結性YAG粉末の調製が必要不可欠である。また、サイアロンや窒化アルミニウム等を緻密に焼結するには緻密化促進剤としてYAG等の分散性の良いイットリウムの化合物が利用されている。
【0003】
YAG焼結体の原料粉末の多くは、酸化イットリウム粉末と酸化アルミニウム粉末をYAG組成になる割合で混合し、これを仮焼して固相反応でYAG相の粉末とした後に、ボールミル等で粉砕する方法で製造している。
【0004】
また、イットリウムイオンとアルミニウムイオンを含む酸性水溶液を水酸化ナトリウムまたはアンモニアで中和してイットリウム化合物とアルミニウム化合物を共沈させ、得られた共沈物を仮焼して、YAGを合成する製造法も開発されている。この共沈法をさらに高度化した、水酸化ナトリウムやアンモニア水の代わりに尿素の熱分解で発生するアンモニアで共沈させ、該共沈物を仮焼して、YAG粉末を合成する製造法(尿素による均一沈殿法:特開平2−92817号公報参照)も開発されている。さらに、イットリウムとアルミニウムのアルコキシドを加水分解する方法も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
酸化イットリウム粉末と酸化アルミニウム粉末を仮焼して、YAG粉末を合成する方法では、YAG単一相を得るために1600℃以上で仮焼する必要がある。このために得られた粉末の粒径は大きく、焼結性に劣るので、ボールミル等で粉砕する必要があった。粉末の粉砕はボール等で粉末粒子に機械的衝撃を与えて行うが、この衝撃でボール等から不純物が剥離して試料に混入するという欠点があった。
【0006】
近年、鋼球にプラスチックを覆い、実質的に不純物の混入がない粉砕用のボールも開発された。しかしながら、このボールの粉砕能力は非常に小さく、粉末粒子の粒径が1μm以下になるまで粉砕することはできず、必然的にこの方法で製造したYAG粉末の焼結性は非常に悪いという欠点があった。
【0007】
通常の共沈法で得られる沈殿はゼリー状であり、該沈殿を乾燥すると非常に硬い塊となる。これを砕いても1次粒子までほぐすことは不可能で、1次粒子が多数集合した凝集粒子を形成している。該粉末を仮焼してYAG粉末にしてもこの凝集は残っており、焼結性に劣るという欠点があった。
【0008】
上記の尿素の熱分解による共沈法で得られる沈殿粒子は適度の硬さのフロックを形成し、ろ過速度が速く容易に洗浄できるという長所がある。しかしながら、得られたYAG前駆体中のイットリウムとアルミニウムが大きく分離しているので、YAG単一相を得るには1300℃以上で仮焼する必要があり、得られたYAGは焼結性に劣るという欠点があった。
【0009】
アルコキシドの水和による製造法では、イットリウムとアルミニウムが原子オーダーで混合した組成変動が無視できるYAG前駆体を製造できるが、アルコキシドは高価であるばかりでなく、大気中の水と容易に反応するのでその取り扱いが困難であるという欠点があった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解消すべく案出されたものであり、特定条件下で合成したX線的にはアモルファスであるが、組成的には炭酸イットリウム(Y2(CO3)3・nH2O、ここで、nは水和水の数であり、沈殿の合成条件や乾燥の程度で異なる)とアンモニアドーソナイト(NH4AlCO3(OH)2)が3対5の割合で混合したものに相当する組成を有する前駆体を製造し、該前駆体を仮焼することにより、1次粒子径が小さく凝集のないYAG粉末を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の製造方法は、上記課題を解決するために、イットリウムとアルミニウムの酸性塩水溶液を、0.1モル/l〜2.5モル/lの範囲の炭酸含有アンモニウム塩水溶液であってアルカリを加えていない水溶液に滴下することによって、YAGに対してモル比で0.01〜1の硫酸イオンが存在する条件で該炭酸含有アンモニウム塩水溶液のpHを7.4〜9に調整して、X線的にはアモルファス相であるが炭酸イットリムとアンモニアドーソナイトが3対5の割合で混合したものに相当する組成を有する沈殿であって、微細な1次粒子を集合させて0.02μm〜1μmのサイズの個々に分離した丸みのある凝集粒子からなる沈殿を生成せしめ、沈殿の熟成を10時間以内に制限して、該沈殿から結晶性の炭酸イットリウムが生成する以前にろ過した後、該沈殿を洗浄し、ろ過したアモルファス状の沈殿を900〜1300℃で仮焼して、1次粒子の大きさが40〜400nmのYAG微粉末とすることを特徴とする。
【0012】 また、上記のYAG微粉末の製造法において、ろ過したアモルファス状の沈殿を900〜1300℃で仮焼して、同じ凝集粒子に属する1次粒子から生成したYAG粒子が互いに合体し、1個または少数個のYAGの1次粒子になった、一次粒子の大きさが40〜400nmであって、平均粒径が0.02μm〜0.06μmの個々に分離した粒子で構成されるYAG粉末とすることを特徴とする。
【0013】
【作用】
本発明者等は、1次粒子が細かく凝集粒子のない焼結用YAG粉末について種々調査・研究した。その結果、特定条件化で合成したX線的にはアモルファスであるが炭酸イットリムとアンモニアドーソナイトが3対5の割合で混合したものに相当する組成を有する沈殿から得られたYAG粉末は焼結原料粉末や種々の添加剤粉末として好適であることを見出した。
【0014】
すなわち、イットリウムとアルミニウムの酸性塩水溶液を炭酸水素アンモニウム水溶液に滴下して、硫酸イオンの存在下で生成した沈殿粒子を該沈殿粒子が結晶化する以前にろ過、洗浄し、乾燥すると、この乾燥体は乳鉢等で軽く砕くだけで容易に微粉化できる。これを仮焼して得た粉末は、添加物を用いることなく通常の焼結法でYAG透明焼結体が製造できるほど焼結性に優れている。
【0015】
本発明の方法で調製した前駆体は、複酸化物の易焼結性粉末の前駆体に求められる(1)仮焼時の大きな凝集粒子生成の原因となる微細粒子の緻密で大きな集合が存在しないこと、(2)仮焼後に異常粒成長の原因となる大きな組成変動がないこと等の要件を満足する。このため、該YAG前駆体を仮焼することにより微細な1次粒子が個々に分離した易焼結性のYAG粉末が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のYAG前駆体は、イットリウムイオンを含む酸性水溶液とアルミニウムイオンを含む酸性水溶液をイットリウムイオンとアルミニウムイオンの比が3対5になるように混合し、この溶液を50℃以下の温度で濃度が0.1モル/l〜2.5モル/lの炭酸含有アンモニウム塩水溶液に滴下することによって、硫酸イオンが存在する条件でpHを7.4〜9に調整して沈殿させる方法で合成する。
【0017】
本発明の原料のイットリウム酸性塩としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の水溶性無機酸塩または有機酸塩のうち、一種または2種以上が使用される。また、アルミニウムの酸性塩原料として、塩化物、硝酸塩、アンモニウム明礬等の水溶性無機酸塩または有機酸塩のうち、一種または2種以上が使用される。
【0018】
本発明で使用する炭酸含有アンモニウム塩には、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等が例示される。炭酸水素アンモニウムは、該化合物の水溶液中の濃度が多少変化しても、さらには沈殿反応の進行の程度によらずpHはほぼ7.6〜8を保つ。
【0019】
本発明で使用する硫酸イオンを生じさせる化学物質として硫酸や硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウム、硫酸イットリウム、アンモニウム明礬等が例示されるが、本発明の特徴を発揮する水溶液中で硫酸イオンを発生させる化学物質であれば特にその種類に制限されない。また、それらは一種または2種以上で使用される。
【0020】
本発明では、イットリウムイオンとアルミニウムイオンを含む水溶液のアルミニウムイオンの濃度は0.05モル/l以上が好ましい。この濃度以下であると沈殿物はベーマイトを含み、ろ過が非常に困難であると同時に仮焼後に得られるYAG粉末は硬い凝集粒子を含むので好ましくない。該溶液のアルミニウムイオン濃度の上限は特に制限は無く、飽和溶液でも好ましい結果が得られる。
【0021】
しかしながら、飽和濃度は温度によって顕著に変化するので、飽和濃度に近い溶液を用いると、沈殿操作中に溶液温度が低下した場合、塩が晶析してそれ以上の作業ができなくなることもある。このことから該溶液のアルミニウムイオン濃度は0.01モル/l〜0.5モル/lが特に好ましい。一方、イットリムイオン濃度はアルミニウムイオンとイットリウムイオンの濃度比が5対3という条件から自動的に決定される。
【0022】
本発明に使用される炭酸含有塩基性塩水溶液の濃度は0.1モル/l〜2.5モル/lの範囲が好ましい。該濃度が0.1モル/l以下であると沈殿反応時の炭酸イオンの量が少なく本発明で必要なアンモニアドーソナイトの化学組成を有する沈殿の代わりにベーマイトが沈殿する。この沈殿はゼラチン質で乾燥すると硬い凝集粒子を作るので好ましくない。
【0023】
一方、該濃度が2.5モル/l以上になると炭酸イットリウムが急激に成長し、沈殿中のイットリウムとアルミニウムの分離が進み、YAG単一相となる仮焼温度が高くなり、焼結性が低下するので好ましくない。
【0024】
本発明の前駆体は、硫酸イオンの存在する条件でpHが7.4〜9の間で調製する必要がある。pHが7.4以下であると、アルミニウムイオンは完全に沈殿するが、イットリウムイオンの一部は水溶液に残る。このため、pHが7.4以下であると、沈殿中のイットリウムとアルミニウムの組成はYAGの組成からずれるので好ましくない。一方、pHが9よりも高いと沈殿中に異常に大きな炭酸イットリウム粒子が生成し、前駆体中のイットリウムとアルミニウムの分離が進み、YAG単一相粉末を製造するための仮焼温度が高くなり、焼結性が悪くなるので好ましくない。
【0025】
本発明の沈殿反応時における硫酸イオンは、沈殿物の極めて微細な1次粒子を集合させて、約0.02μm〜1μmのサイズの個々に分離した丸みのある凝集粒子を形成させる働きを有する。該沈殿物を仮焼すると、同じ凝集粒子に属する1次粒子から生成したYAG粒子は互いに合体し、1個または少数個のYAGの1次粒子になる。
【0026】
しかしながら、この仮焼過程で別の凝集粒子に属した1次粒子から生成したYAG粒子とは強固に焼結することはないので、仮焼して得られるYAG粉末は平均粒径が0.02μm〜0.06μmの個々に分離した粒子で構成される。
【0027】
本発明で使用する硫酸イオンの量は、YAGに対してモル比で0.01以上あれば効果を発揮する。該モル比として0.1以上が特に好ましい。しかしながら、該モル比として1以上になると、硫酸イオンの使用量の割に使用効果の向上は認められない。
【0028】
本発明で生成する沈殿の乾燥体は炭酸イットリウムとアンモニアドーソナイトが3対5の割合で混合した化学組成を有する。該乾燥体はX線的にはアモルファス相である。沈殿生成後に長時間熟成すると、アモルファス質の該沈殿からまず結晶質の炭酸イットリウムが出現し、さらに熟成を続けると結晶質のアンモニアドーソナイトが認められるようになる。
【0029】
結晶性の炭酸イットリウムが出現すると沈殿物中のイットリウムとアルミニウムの分離が進み、仮焼によりYAG単一相の粉末を製造するにはより高温で仮焼する必要がある。その結果,仮焼して得られるYAG粉末は大きくなり焼結性が悪くなる。このため、本発明では沈殿の熟成は10時間以内に制限する必要がある。
【0030】
本発明では、イットリウムとアルミニウムの酸性溶液を炭酸含有塩基性塩水溶液に滴下し終わった直後に、ろ過洗浄工程に入っても好ましい結果が得られる。特に好ましい熟成時間はYAG前駆体の生成量や沈殿反応に使用する容器などの個々の合成条件により異なるので,実際の合成プロセスごとに求める必要がある。本発明における沈殿反応温度が50℃以上であると、洗浄操作に入る前に該前駆体から結晶質の炭酸イットリウムとアンモニアドーソナイトが生成・成長し、イットリウムとアルミニウムの分離が進むので、YAG単一相粉末を得るには仮焼温度が高くなり、焼結性が低下するので好ましくない。該温度が50℃以下であると、YAG前駆体がアモルファス状態から結晶性の炭酸イットリウムやアンモニアドーソナイトへ変化するまでにかなり時間があり、洗浄を十分に行えるので好ましい。
【0031】
本発明の沈殿の洗浄は、沈殿反応後の水溶液に存在する硝酸イオンやアンモニウムイオン等の不要なイオンを除去するために行う。この除去の目的が達成できるならば、洗浄の方法や洗浄回数などは特に制限はない。
【0032】
本発明の方法で製造したYAG前駆体を仮焼すると、1次粒子が0.01μm〜0.2μmと微細で、凝集粒子のないYAG粉末が製造できる。仮焼温度は900℃〜1300℃が好ましい。仮焼温度が900℃よりも低いと仮焼後に得られる粉末はYAGの単一相でないので、焼結による緻密化は不均一になり焼結で気孔を完全に取り除くことはできない。また、粒子サイズも小さいので、成形体作製時の粒子の成形性も悪い。他方、1300℃を超える高温で仮焼すると、1次粒子や2次粒子の成長が激しく、粒度分布が広く不均一な粒子となるので好ましくない。
【0033】
【実施例】
実施例1:
マグネチックスターラーで炭酸水素アンモニウム濃度が1.5モル/lの水溶液200mlを攪拌する。この液に0.15モル/lのアンモニウム明礬と0.09モル/lの硝酸イットリウムを含む酸性の水溶液の320mlを5ml/minの速度で滴下して沈殿を生成する。この時のpHは7.8であった。
【0034】
沈殿が生成した水溶液を滴下後30分間攪拌したのち、ろ過する。ろ過後の沈殿物を蒸留水に分散し、ろ過する。この蒸留水への分散とろ過を4回繰り返して、沈殿物を洗浄する。最終的にろ過した沈殿物は室温の窒素ガス気流中で乾燥する。この乾燥前駆体を乳鉢で軽くほぐす。この前駆体の一部を化学分析したりX線回折法で結晶構造を調べたり、SEM観察試料などの前駆体の特性づけに使用する。残りの前駆体は管状電気炉で酸素気流中で、2時間仮焼する。
【0035】
本実施例で生成したYAG前駆体及び仮焼YAG粉末のX線回折データを図1に示す。この図でGはYAGのX線回折ピークを、PはYAlO3 のX線回折ピークを、また各温度は仮焼温度を示す。この図から分かるように、前駆体からは特定の回折ピークは得られないので、前駆体はアモルファスである。
【0036】
化学分析の結果、Al:Y:C:NH4 のモル比は1:0.67:1.89:0.95であった。この値は炭酸イットリウム(Y2(CO3)3)とアンモニアドーソナイト(NH4AlCO3(OH)2)が3対5の割合で混合したものに相当する。図2に1100℃で仮焼したYAG粉末のSEM写真を示す。この図から分かるように、100nm〜200nmの1次粒子が個々に分離していて、凝集が殆ど認められない。このYAG粉末を200MPaの静水圧で成形した後に真空雰囲気、1700℃で1時間焼結すると焼結密度は理論密度の99.9%であり、透光性に優れた焼結体を製造できた。
【0037】
実施例2:
マグネチックスターラーで炭酸水素アンモニウム濃度が1.5モル/lの水溶液200mlを攪拌する。この液に0.15モル/lの硝酸アルミニウムと0.09モル/lの硝酸イットリウムおよび0.009モル/lの硫酸アンモニウムを含む酸性の水溶液の320mlを5ml/minの速度で滴下して沈殿を生成する。この時のpHは7.8であった。生成した沈殿を実施例1の方法で洗浄、仮焼した。得られた仮焼粉末の形態や焼結性はほぼ実施例1で得られた仮焼粉末と同じであった。
【0038】
実施例3:
マグネチックスターラーで炭酸アンモニウム濃度が0.8モル/lの水溶液200mlを攪拌する。この液に0.15モル/lのアンモニウム明礬と0.09モル/lの硝酸イットリウムを含む酸性の水溶液の320mlを5ml/minの速度で滴下して沈殿を生成する。この時のpHは8であった。その後の操作は実施例1の方法で行った。得られた前駆体やYAG粉末の形態は実施例1で得られたものとほぼ同じであった。酸素気流中、1100℃、2時間仮焼したYAG粉末の成形体を実施例1の条件で焼結すると、実施例1とほぼ同じ透明度の焼結体が得られた。
【0039】
比較例1:
熟成を48時間行った以外は実施例1と同じ条件でYAG前駆体やYAG粉末を合成した。図3に得られた前駆体と1100℃で仮焼した粉末のX線回折データを示す。この図で、YやM、P、G、D、CはそれぞれY2O3、Y4Al2O9、YAlO3、H4AlCO3(OH)2、Y2(CO3)3からのX線回折ピークである。また、YAG単一相を得るには1100℃以上で仮焼する必要があることが分かる。1200℃で仮焼したYAG粉末を用いて実施例1の方法で焼結したところ、焼結密度は理論密度の85%であり、熟成によりYAG粉末の焼結性が低下した。
【0040】
比較例2:
マグネチックスターラーで炭酸水素アンモニウム濃度が0.05モル/lの水溶液1000mlを攪拌する。この液にアンモニウム明礬を0.15モル/lと硝酸イットリウムを0.09モル/l含む酸性の水溶液の80mlを5ml/minの速度で滴下して沈殿を生成する。この時のpHは7.6であった。その後の処理は実施例1の方法で行った。
【0041】
得られた沈殿を乾燥すると硬い塊となった。これを乳鉢で砕き実施例1の条件で仮焼したところ、微細な1次粒子が硬く凝集したYAG粉末を得た。実施例1と同じ条件で焼結したところ嵩密度は理論密度の約94%であった。
【0042】
比較例3:炭酸水素アンモニウム水溶液を酸性水溶液に滴下する以外は実施例1と同じ条件でYAG前駆体やYAGを合成した。ベーマイトと炭酸イットリウムが混合した前駆体が得られた。仮焼後のYAG粉末は微細な1次粒子が硬く凝集していて、実施例1の条件で焼結したところ、焼結密度は理論密度の92%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1における前駆体および該前駆体を仮焼した粉末のX線回折パターンを示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1における前駆体を1100℃で仮焼した粉末の図面代用SEM写真である。
【図3】図3は、比較例1における48時間熟成した前駆体および1100℃で2時間仮焼した粉末のX線回折パターンを示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(以下、YAGという)焼結体原料ばかりでなくサイアロンや窒化アルミニウム等の焼結助剤、蛍光体原料、触媒等として有用な分散性に優れたYAG微粉末を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、YAGはレーザー材料としてばかりでなく高温材料や種々の検出素子材料などの重要な材料として知られている。それらの材料を効率良く安価に製造するには易焼結性YAG粉末の調製が必要不可欠である。また、サイアロンや窒化アルミニウム等を緻密に焼結するには緻密化促進剤としてYAG等の分散性の良いイットリウムの化合物が利用されている。
【0003】
YAG焼結体の原料粉末の多くは、酸化イットリウム粉末と酸化アルミニウム粉末をYAG組成になる割合で混合し、これを仮焼して固相反応でYAG相の粉末とした後に、ボールミル等で粉砕する方法で製造している。
【0004】
また、イットリウムイオンとアルミニウムイオンを含む酸性水溶液を水酸化ナトリウムまたはアンモニアで中和してイットリウム化合物とアルミニウム化合物を共沈させ、得られた共沈物を仮焼して、YAGを合成する製造法も開発されている。この共沈法をさらに高度化した、水酸化ナトリウムやアンモニア水の代わりに尿素の熱分解で発生するアンモニアで共沈させ、該共沈物を仮焼して、YAG粉末を合成する製造法(尿素による均一沈殿法:特開平2−92817号公報参照)も開発されている。さらに、イットリウムとアルミニウムのアルコキシドを加水分解する方法も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
酸化イットリウム粉末と酸化アルミニウム粉末を仮焼して、YAG粉末を合成する方法では、YAG単一相を得るために1600℃以上で仮焼する必要がある。このために得られた粉末の粒径は大きく、焼結性に劣るので、ボールミル等で粉砕する必要があった。粉末の粉砕はボール等で粉末粒子に機械的衝撃を与えて行うが、この衝撃でボール等から不純物が剥離して試料に混入するという欠点があった。
【0006】
近年、鋼球にプラスチックを覆い、実質的に不純物の混入がない粉砕用のボールも開発された。しかしながら、このボールの粉砕能力は非常に小さく、粉末粒子の粒径が1μm以下になるまで粉砕することはできず、必然的にこの方法で製造したYAG粉末の焼結性は非常に悪いという欠点があった。
【0007】
通常の共沈法で得られる沈殿はゼリー状であり、該沈殿を乾燥すると非常に硬い塊となる。これを砕いても1次粒子までほぐすことは不可能で、1次粒子が多数集合した凝集粒子を形成している。該粉末を仮焼してYAG粉末にしてもこの凝集は残っており、焼結性に劣るという欠点があった。
【0008】
上記の尿素の熱分解による共沈法で得られる沈殿粒子は適度の硬さのフロックを形成し、ろ過速度が速く容易に洗浄できるという長所がある。しかしながら、得られたYAG前駆体中のイットリウムとアルミニウムが大きく分離しているので、YAG単一相を得るには1300℃以上で仮焼する必要があり、得られたYAGは焼結性に劣るという欠点があった。
【0009】
アルコキシドの水和による製造法では、イットリウムとアルミニウムが原子オーダーで混合した組成変動が無視できるYAG前駆体を製造できるが、アルコキシドは高価であるばかりでなく、大気中の水と容易に反応するのでその取り扱いが困難であるという欠点があった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解消すべく案出されたものであり、特定条件下で合成したX線的にはアモルファスであるが、組成的には炭酸イットリウム(Y2(CO3)3・nH2O、ここで、nは水和水の数であり、沈殿の合成条件や乾燥の程度で異なる)とアンモニアドーソナイト(NH4AlCO3(OH)2)が3対5の割合で混合したものに相当する組成を有する前駆体を製造し、該前駆体を仮焼することにより、1次粒子径が小さく凝集のないYAG粉末を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の製造方法は、上記課題を解決するために、イットリウムとアルミニウムの酸性塩水溶液を、0.1モル/l〜2.5モル/lの範囲の炭酸含有アンモニウム塩水溶液であってアルカリを加えていない水溶液に滴下することによって、YAGに対してモル比で0.01〜1の硫酸イオンが存在する条件で該炭酸含有アンモニウム塩水溶液のpHを7.4〜9に調整して、X線的にはアモルファス相であるが炭酸イットリムとアンモニアドーソナイトが3対5の割合で混合したものに相当する組成を有する沈殿であって、微細な1次粒子を集合させて0.02μm〜1μmのサイズの個々に分離した丸みのある凝集粒子からなる沈殿を生成せしめ、沈殿の熟成を10時間以内に制限して、該沈殿から結晶性の炭酸イットリウムが生成する以前にろ過した後、該沈殿を洗浄し、ろ過したアモルファス状の沈殿を900〜1300℃で仮焼して、1次粒子の大きさが40〜400nmのYAG微粉末とすることを特徴とする。
【0012】 また、上記のYAG微粉末の製造法において、ろ過したアモルファス状の沈殿を900〜1300℃で仮焼して、同じ凝集粒子に属する1次粒子から生成したYAG粒子が互いに合体し、1個または少数個のYAGの1次粒子になった、一次粒子の大きさが40〜400nmであって、平均粒径が0.02μm〜0.06μmの個々に分離した粒子で構成されるYAG粉末とすることを特徴とする。
【0013】
【作用】
本発明者等は、1次粒子が細かく凝集粒子のない焼結用YAG粉末について種々調査・研究した。その結果、特定条件化で合成したX線的にはアモルファスであるが炭酸イットリムとアンモニアドーソナイトが3対5の割合で混合したものに相当する組成を有する沈殿から得られたYAG粉末は焼結原料粉末や種々の添加剤粉末として好適であることを見出した。
【0014】
すなわち、イットリウムとアルミニウムの酸性塩水溶液を炭酸水素アンモニウム水溶液に滴下して、硫酸イオンの存在下で生成した沈殿粒子を該沈殿粒子が結晶化する以前にろ過、洗浄し、乾燥すると、この乾燥体は乳鉢等で軽く砕くだけで容易に微粉化できる。これを仮焼して得た粉末は、添加物を用いることなく通常の焼結法でYAG透明焼結体が製造できるほど焼結性に優れている。
【0015】
本発明の方法で調製した前駆体は、複酸化物の易焼結性粉末の前駆体に求められる(1)仮焼時の大きな凝集粒子生成の原因となる微細粒子の緻密で大きな集合が存在しないこと、(2)仮焼後に異常粒成長の原因となる大きな組成変動がないこと等の要件を満足する。このため、該YAG前駆体を仮焼することにより微細な1次粒子が個々に分離した易焼結性のYAG粉末が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のYAG前駆体は、イットリウムイオンを含む酸性水溶液とアルミニウムイオンを含む酸性水溶液をイットリウムイオンとアルミニウムイオンの比が3対5になるように混合し、この溶液を50℃以下の温度で濃度が0.1モル/l〜2.5モル/lの炭酸含有アンモニウム塩水溶液に滴下することによって、硫酸イオンが存在する条件でpHを7.4〜9に調整して沈殿させる方法で合成する。
【0017】
本発明の原料のイットリウム酸性塩としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の水溶性無機酸塩または有機酸塩のうち、一種または2種以上が使用される。また、アルミニウムの酸性塩原料として、塩化物、硝酸塩、アンモニウム明礬等の水溶性無機酸塩または有機酸塩のうち、一種または2種以上が使用される。
【0018】
本発明で使用する炭酸含有アンモニウム塩には、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等が例示される。炭酸水素アンモニウムは、該化合物の水溶液中の濃度が多少変化しても、さらには沈殿反応の進行の程度によらずpHはほぼ7.6〜8を保つ。
【0019】
本発明で使用する硫酸イオンを生じさせる化学物質として硫酸や硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウム、硫酸イットリウム、アンモニウム明礬等が例示されるが、本発明の特徴を発揮する水溶液中で硫酸イオンを発生させる化学物質であれば特にその種類に制限されない。また、それらは一種または2種以上で使用される。
【0020】
本発明では、イットリウムイオンとアルミニウムイオンを含む水溶液のアルミニウムイオンの濃度は0.05モル/l以上が好ましい。この濃度以下であると沈殿物はベーマイトを含み、ろ過が非常に困難であると同時に仮焼後に得られるYAG粉末は硬い凝集粒子を含むので好ましくない。該溶液のアルミニウムイオン濃度の上限は特に制限は無く、飽和溶液でも好ましい結果が得られる。
【0021】
しかしながら、飽和濃度は温度によって顕著に変化するので、飽和濃度に近い溶液を用いると、沈殿操作中に溶液温度が低下した場合、塩が晶析してそれ以上の作業ができなくなることもある。このことから該溶液のアルミニウムイオン濃度は0.01モル/l〜0.5モル/lが特に好ましい。一方、イットリムイオン濃度はアルミニウムイオンとイットリウムイオンの濃度比が5対3という条件から自動的に決定される。
【0022】
本発明に使用される炭酸含有塩基性塩水溶液の濃度は0.1モル/l〜2.5モル/lの範囲が好ましい。該濃度が0.1モル/l以下であると沈殿反応時の炭酸イオンの量が少なく本発明で必要なアンモニアドーソナイトの化学組成を有する沈殿の代わりにベーマイトが沈殿する。この沈殿はゼラチン質で乾燥すると硬い凝集粒子を作るので好ましくない。
【0023】
一方、該濃度が2.5モル/l以上になると炭酸イットリウムが急激に成長し、沈殿中のイットリウムとアルミニウムの分離が進み、YAG単一相となる仮焼温度が高くなり、焼結性が低下するので好ましくない。
【0024】
本発明の前駆体は、硫酸イオンの存在する条件でpHが7.4〜9の間で調製する必要がある。pHが7.4以下であると、アルミニウムイオンは完全に沈殿するが、イットリウムイオンの一部は水溶液に残る。このため、pHが7.4以下であると、沈殿中のイットリウムとアルミニウムの組成はYAGの組成からずれるので好ましくない。一方、pHが9よりも高いと沈殿中に異常に大きな炭酸イットリウム粒子が生成し、前駆体中のイットリウムとアルミニウムの分離が進み、YAG単一相粉末を製造するための仮焼温度が高くなり、焼結性が悪くなるので好ましくない。
【0025】
本発明の沈殿反応時における硫酸イオンは、沈殿物の極めて微細な1次粒子を集合させて、約0.02μm〜1μmのサイズの個々に分離した丸みのある凝集粒子を形成させる働きを有する。該沈殿物を仮焼すると、同じ凝集粒子に属する1次粒子から生成したYAG粒子は互いに合体し、1個または少数個のYAGの1次粒子になる。
【0026】
しかしながら、この仮焼過程で別の凝集粒子に属した1次粒子から生成したYAG粒子とは強固に焼結することはないので、仮焼して得られるYAG粉末は平均粒径が0.02μm〜0.06μmの個々に分離した粒子で構成される。
【0027】
本発明で使用する硫酸イオンの量は、YAGに対してモル比で0.01以上あれば効果を発揮する。該モル比として0.1以上が特に好ましい。しかしながら、該モル比として1以上になると、硫酸イオンの使用量の割に使用効果の向上は認められない。
【0028】
本発明で生成する沈殿の乾燥体は炭酸イットリウムとアンモニアドーソナイトが3対5の割合で混合した化学組成を有する。該乾燥体はX線的にはアモルファス相である。沈殿生成後に長時間熟成すると、アモルファス質の該沈殿からまず結晶質の炭酸イットリウムが出現し、さらに熟成を続けると結晶質のアンモニアドーソナイトが認められるようになる。
【0029】
結晶性の炭酸イットリウムが出現すると沈殿物中のイットリウムとアルミニウムの分離が進み、仮焼によりYAG単一相の粉末を製造するにはより高温で仮焼する必要がある。その結果,仮焼して得られるYAG粉末は大きくなり焼結性が悪くなる。このため、本発明では沈殿の熟成は10時間以内に制限する必要がある。
【0030】
本発明では、イットリウムとアルミニウムの酸性溶液を炭酸含有塩基性塩水溶液に滴下し終わった直後に、ろ過洗浄工程に入っても好ましい結果が得られる。特に好ましい熟成時間はYAG前駆体の生成量や沈殿反応に使用する容器などの個々の合成条件により異なるので,実際の合成プロセスごとに求める必要がある。本発明における沈殿反応温度が50℃以上であると、洗浄操作に入る前に該前駆体から結晶質の炭酸イットリウムとアンモニアドーソナイトが生成・成長し、イットリウムとアルミニウムの分離が進むので、YAG単一相粉末を得るには仮焼温度が高くなり、焼結性が低下するので好ましくない。該温度が50℃以下であると、YAG前駆体がアモルファス状態から結晶性の炭酸イットリウムやアンモニアドーソナイトへ変化するまでにかなり時間があり、洗浄を十分に行えるので好ましい。
【0031】
本発明の沈殿の洗浄は、沈殿反応後の水溶液に存在する硝酸イオンやアンモニウムイオン等の不要なイオンを除去するために行う。この除去の目的が達成できるならば、洗浄の方法や洗浄回数などは特に制限はない。
【0032】
本発明の方法で製造したYAG前駆体を仮焼すると、1次粒子が0.01μm〜0.2μmと微細で、凝集粒子のないYAG粉末が製造できる。仮焼温度は900℃〜1300℃が好ましい。仮焼温度が900℃よりも低いと仮焼後に得られる粉末はYAGの単一相でないので、焼結による緻密化は不均一になり焼結で気孔を完全に取り除くことはできない。また、粒子サイズも小さいので、成形体作製時の粒子の成形性も悪い。他方、1300℃を超える高温で仮焼すると、1次粒子や2次粒子の成長が激しく、粒度分布が広く不均一な粒子となるので好ましくない。
【0033】
【実施例】
実施例1:
マグネチックスターラーで炭酸水素アンモニウム濃度が1.5モル/lの水溶液200mlを攪拌する。この液に0.15モル/lのアンモニウム明礬と0.09モル/lの硝酸イットリウムを含む酸性の水溶液の320mlを5ml/minの速度で滴下して沈殿を生成する。この時のpHは7.8であった。
【0034】
沈殿が生成した水溶液を滴下後30分間攪拌したのち、ろ過する。ろ過後の沈殿物を蒸留水に分散し、ろ過する。この蒸留水への分散とろ過を4回繰り返して、沈殿物を洗浄する。最終的にろ過した沈殿物は室温の窒素ガス気流中で乾燥する。この乾燥前駆体を乳鉢で軽くほぐす。この前駆体の一部を化学分析したりX線回折法で結晶構造を調べたり、SEM観察試料などの前駆体の特性づけに使用する。残りの前駆体は管状電気炉で酸素気流中で、2時間仮焼する。
【0035】
本実施例で生成したYAG前駆体及び仮焼YAG粉末のX線回折データを図1に示す。この図でGはYAGのX線回折ピークを、PはYAlO3 のX線回折ピークを、また各温度は仮焼温度を示す。この図から分かるように、前駆体からは特定の回折ピークは得られないので、前駆体はアモルファスである。
【0036】
化学分析の結果、Al:Y:C:NH4 のモル比は1:0.67:1.89:0.95であった。この値は炭酸イットリウム(Y2(CO3)3)とアンモニアドーソナイト(NH4AlCO3(OH)2)が3対5の割合で混合したものに相当する。図2に1100℃で仮焼したYAG粉末のSEM写真を示す。この図から分かるように、100nm〜200nmの1次粒子が個々に分離していて、凝集が殆ど認められない。このYAG粉末を200MPaの静水圧で成形した後に真空雰囲気、1700℃で1時間焼結すると焼結密度は理論密度の99.9%であり、透光性に優れた焼結体を製造できた。
【0037】
実施例2:
マグネチックスターラーで炭酸水素アンモニウム濃度が1.5モル/lの水溶液200mlを攪拌する。この液に0.15モル/lの硝酸アルミニウムと0.09モル/lの硝酸イットリウムおよび0.009モル/lの硫酸アンモニウムを含む酸性の水溶液の320mlを5ml/minの速度で滴下して沈殿を生成する。この時のpHは7.8であった。生成した沈殿を実施例1の方法で洗浄、仮焼した。得られた仮焼粉末の形態や焼結性はほぼ実施例1で得られた仮焼粉末と同じであった。
【0038】
実施例3:
マグネチックスターラーで炭酸アンモニウム濃度が0.8モル/lの水溶液200mlを攪拌する。この液に0.15モル/lのアンモニウム明礬と0.09モル/lの硝酸イットリウムを含む酸性の水溶液の320mlを5ml/minの速度で滴下して沈殿を生成する。この時のpHは8であった。その後の操作は実施例1の方法で行った。得られた前駆体やYAG粉末の形態は実施例1で得られたものとほぼ同じであった。酸素気流中、1100℃、2時間仮焼したYAG粉末の成形体を実施例1の条件で焼結すると、実施例1とほぼ同じ透明度の焼結体が得られた。
【0039】
比較例1:
熟成を48時間行った以外は実施例1と同じ条件でYAG前駆体やYAG粉末を合成した。図3に得られた前駆体と1100℃で仮焼した粉末のX線回折データを示す。この図で、YやM、P、G、D、CはそれぞれY2O3、Y4Al2O9、YAlO3、H4AlCO3(OH)2、Y2(CO3)3からのX線回折ピークである。また、YAG単一相を得るには1100℃以上で仮焼する必要があることが分かる。1200℃で仮焼したYAG粉末を用いて実施例1の方法で焼結したところ、焼結密度は理論密度の85%であり、熟成によりYAG粉末の焼結性が低下した。
【0040】
比較例2:
マグネチックスターラーで炭酸水素アンモニウム濃度が0.05モル/lの水溶液1000mlを攪拌する。この液にアンモニウム明礬を0.15モル/lと硝酸イットリウムを0.09モル/l含む酸性の水溶液の80mlを5ml/minの速度で滴下して沈殿を生成する。この時のpHは7.6であった。その後の処理は実施例1の方法で行った。
【0041】
得られた沈殿を乾燥すると硬い塊となった。これを乳鉢で砕き実施例1の条件で仮焼したところ、微細な1次粒子が硬く凝集したYAG粉末を得た。実施例1と同じ条件で焼結したところ嵩密度は理論密度の約94%であった。
【0042】
比較例3:炭酸水素アンモニウム水溶液を酸性水溶液に滴下する以外は実施例1と同じ条件でYAG前駆体やYAGを合成した。ベーマイトと炭酸イットリウムが混合した前駆体が得られた。仮焼後のYAG粉末は微細な1次粒子が硬く凝集していて、実施例1の条件で焼結したところ、焼結密度は理論密度の92%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1における前駆体および該前駆体を仮焼した粉末のX線回折パターンを示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1における前駆体を1100℃で仮焼した粉末の図面代用SEM写真である。
【図3】図3は、比較例1における48時間熟成した前駆体および1100℃で2時間仮焼した粉末のX線回折パターンを示すグラフである。
Claims (2)
- イットリウムとアルミニウムの酸性塩水溶液を、0.1モル/l〜2.5モル/lの範囲の炭酸含有アンモニウム塩水溶液であってアルカリを加えていない水溶液に滴下することによって、YAGに対してモル比で0.01〜1の硫酸イオンが存在する条件で該炭酸含有アンモニウム塩水溶液のpHを7.4〜9に調整して、X線的にはアモルファス相であるが炭酸イットリムとアンモニアドーソナイトが3対5の割合で混合したものに相当する組成を有する沈殿であって、微細な1次粒子を集合させて0.02μm〜1μmのサイズの個々に分離した丸みのある凝集粒子からなる沈殿を生成せしめ、沈殿の熟成を10時間以内に制限して、該沈殿から結晶性の炭酸イットリウムが生成する以前にろ過した後、該沈殿を洗浄し、ろ過したアモルファス状の沈殿を900〜1300℃で仮焼して、1次粒子の大きさが40〜400nmのイットリウム−アルミニウム−ガーネット粉末とすることを特徴とするYAG微粉末の製造方法。
- 請求項1記載の方法において、ろ過したアモルファス状の沈殿を900〜1300℃で仮焼して、同じ凝集粒子に属する1次粒子から生成したYAG粒子が互いに合体し、1個または少数個のYAGの1次粒子になった、一次粒子の大きさが40〜400nmであって、平均粒径が0.02μm〜0.06μmの個々に分離した粒子で構成されるイットリウム−アルミニウム−ガーネット粉末にすることを特徴とするYAG微粉末の製造方法。
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