JP3525843B2 - 高強度低合金耐熱鋼 - Google Patents
高強度低合金耐熱鋼Info
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Description
業、原子力用などの分野における熱交換器、配管、耐熱
バルブおよび接続継手などで、特にその成形時に冷間加
工、温間加工および高周波曲げ加工を必要とする場合な
ど、使用中の延性低下が問題となりやすい部位などに用
いて好適な低合金耐熱鋼に関し、400℃以上の高温で
のクリープ強度が高く、かつクリープ延性に優れた高強
度低合金耐熱鋼に関する。
には、Cr含有量が数質量%までの低Crフェライト
鋼、Cr含有量が9〜12質量%の高Crフェライト
鋼、オーステナイト鋼などに大別され、使用環境(温
度、圧力など)および経済性を考慮して適宜選択され
る。
フェライト鋼やオーステナイト鋼に比べて格段に安価
で、熱膨張率が小さく、かつ熱伝導性が優れていること
が特徴である。
IS規格に規定されるSTBA12(0.5Mo)、S
TBA22(1Cr−0.5Mo)、STBA23
(1.25Cr−0.5Mo)、STBA24(2.2
5Cr−1Mo)などが知られている。
であり、使用温度によらず高強度であることが望まし
い。特に、ボイラ、化学工業、原子力用などに用いられ
ている耐熱耐圧鋼管では、素材の高温強度に応じて管の
肉厚が決定される。
rフェライト鋼においては、多くの場合、析出強化によ
る強度向上対策が採られている。具体的には、析出強化
元素であるV、Nb、Tiなどを添加し、微細な炭化
物、窒化物または炭窒化物を析出させて高温強度の改善
が実現される。
ば、特開昭57−131349号、同57−13135
0号、同59−226152号、特開平8−15802
2号などの各公報に示されるように数多く提案され、実
用化もされている。
工などが施されると、しばしば延性が低下し、構造物の
安全性が必ずしも保証されなくなる場合もある。
しては、例えば、特開昭55−6458号公報に示され
るように、鋼中のSb、As、Cu、Pなどの不純物元
素量を制限する方法などがある。しかしながら、高強度
材に関しては、不純物元素の低減だけでは十分な効果が
得られない。
0℃以上の高温でのクリープ強度が高く、しかもクリー
プ延性に優れた高強度低合金耐熱鋼を提供することにあ
る。
高強度低合金耐熱鋼にある。
i:0.7%以下、Mn:1%以下、Mo:0.7〜3
%、Nb:0.02〜0.08%、N:0.001〜
0.01%を含み、残部は実質的にFeで、かつ下式を
満たす高強度低合金耐熱鋼。
(0.32×Mo2)≧0.3 ここで、式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有
量(質量%)を意味する。
の合金成分の他に、必要に応じて、下記のイ〜トのグル
ープのうちから選ばれた1または2グループ以上の元素
を含むものであってもよく、不純物として含まれるPと
Sの含有量は、それぞれ、質量%で、0.03%以下、
0.015%以下であることが好ましい。
Mg:0.0001〜0.01%のいずれか一方または
両方。 ホ:質量%で、B:0.0001〜0.01%。 ヘ:質量%で、Ti:0.001〜0.1%、Ta:
0.002〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%お
よびHf:0.001〜0.1%のうちから選ばれた1
種または2種以上。
場合には、式「0.65−(15×N)−(0.7×C)−(0.10×Mo)
+(0.32×Mo2)−(0.23×Cr)+(0.04×Cr2)≧0.3」を満
たす必要がある。なお、式中の元素記号は鋼中に含まれ
る各元素の含有量(質量%)を意味する。
に数多くの実験を行った結果、以下のことを知見して本
発明を完成させた。
などを添加し、微細なMX型の析出物による析出強化手
法が多く用いられてきた。ここで、MX型の析出物と
は、金属元素をM、CまたはNをXとした場合にMXで
表される結晶粒内に析出する析出物で、V、Nb、T
i、Ta等を主成分とするVC、VN、NbC、Nb
N、TiC、TiN、TaC、TaN等の微細な炭化
物、窒化物または炭窒化物およびこれらの複合析出物の
総称のことである。
有するため、その強化能は極めて高い。しかし、MX型
析出物は、転位の回復を抑制するため、残留応力の緩和
が起こりにくくなる。そして、鋼中の残留応力は、クリ
ープ延性や靱性を低下させる原因になる。
正に選択すると、MX型の析出物に代わってMo2C、
Cr2N、M7C3 (M7 のMは、Fe、Cr、Moおよ
びWなどの金属元素を意味する)などのHCP型(稠密
六方晶型)の析出物が高密度に析出する。
関係を有するだけで、転位回復の障害になりにくい。
出強化された鋼では、残留応力の緩和が起こりやすく、
クリープ延性や靱性に悪影響を与えない。
または(2) 式で求められるHCP型析出物の析出指数で
あるそれぞれ[HCP]1 、[HCP]2 によって表す
ことができ、この析出指数が0.3以上の場合にクリー
プ強度が向上する。
量を上記の範囲内としたうえで、その化学組成をHCP
型析出物の析出指数が0.3以上になるように調整すれ
ば、クリープ延性が格段に向上することを知見した。
鋼を上記のように定めて理由について詳細に説明する。
なお、以下において、「%」は「質量%」を意味する。
る。また、本発明鋼は、HCP型析出物により析出強化
を図るものであるが、C含有量が0.01%未満では析
出強化の効果が得られないだけでなく、焼入性が低下し
て強度と靱性を損なう。一方、0.3%を超えて含有さ
せると、HCP型析出物以外の炭化物の析出量が増え、
クリープ強度と靱性が劣化する。したがって、C含有量
は0.01〜0.3%とした。好ましい範囲は0.03
〜0.25%、より好ましい範囲は0.07〜0.13
%である。
耐水蒸気酸化特性を高める元素である。しかし、0.7
%を超えて含有させると、靱性が著しく低下し、クリー
プ強度に対しても有害である。したがって、Si含有量
は0.7%以下とした。なお、下限は特に定めないが、
0.01%以上とするのが望ましい。好ましい範囲は
0.1〜0.6、より好まし範囲は0.15〜0.45
%である。
れ、鋼の熱間加工性や焼入れ性を向上させる元素であ
る。しかし、1%を超えて含有させると、クリープ強化
に有効な微細な炭窒化物の安定性を損ない、高温長時間
のクリープ強度が低下する。したがって、Mn含有量は
1%とした。なお、下限は特に定めないが、0.01%
以上とするのが望ましい。好ましい範囲は0.1〜0.
7%、より好ましい範囲は0.3〜0.6%である。
の含有量の増加に伴ってHCP型析出物の析出量も増加
する。また、固溶Moは固溶強化作用も有する。しか
し、その含有量が0.7%未満では、HCP型析出物の
代わりにMX型析出物が析出し、クリープ延性の向上が
不十分である。一方、3%を超えて含有させると、HC
P型析出物以外の粗大な炭化物が増加し、靱性やクリー
プ強度に悪影響を与える。したがって、Mo含有量は
0.7〜3%とした。好ましい範囲は0.7〜2%、よ
り好ましい範囲0.7〜1.2%である。
る元素の一つであり、微量の含有量でHCP型析出物の
粗大化を抑制し、析出強化作用を長時間持続させる。し
かし、その含有量が少ないと上記の効果が得られない。
一方、過剰に含有させると、鋼が著しく硬化して靱性、
溶接性および加工性が損なわれる。よって、Nb含有量
の好ましい範囲は0.02〜0.08%である。
fと窒化物を形成して結晶粒を細粒にし、靱性の改善に
寄与する。しかし、その含有量が0.001%未満では
上記の効果が得られない。一方、0.01%を超えて含
有させると、粗大な窒化物を形成するのに加え、HCP
型析出物の析出量を減少させる。したがって、N含有量
は0.001〜0.01%とした。好ましい範囲は0.
002〜0.008%である。
十分であるが、以下に述べる元素を含むものであっても
よい。また、不純物としてのPとSの含有量は以下に述
べる量以下であることが好ましい。
すれば、耐酸化性と高温耐食性を向上させる元素であ
る。このため、必要に応じて添加してもよく、その効果
は0.1%以上で顕著になる。しかし、3%を超えて含
有させると、HCP型析出物の析出量が減少するのに加
え、経済性が低下し、低合金鋼の利点が少なくなる。し
たがって、添加する場合のCr含有量は0.1〜3%と
するのがよい。好ましい範囲は0.2〜2.5%、より
好ましい範囲は0.5〜1.5%である。
ば、微細なMX型の析出物を形成して高強度化に寄与す
る元素である。このため、必要に応じて添加してもよ
く、その効果は0.005%以上で顕著になる。しか
し、0.5%を超えて含有させると、MX型の析出物が
粗大化するのに加え、HCP型析出物の析出量が減少し
て靱性と強度を損なう。したがって、添加する場合のV
含有量は0.005〜0.5%とするのがよい。好まし
い範囲0.005〜0.3%、より好ましい範囲は0.
01〜0.25%である。
ば、固溶強化の作用を有し、より高温でのクリープ強度
を向上させるのに有効な元素である。このため、必要に
応じて添加してもよく、その効果は0.01%以上で顕
著になる。しかし、3%を超えて含有させると、M23C
6型炭化物やM6C型炭化物などの粗大な析出物が析出し
やすくなるのに加え、HCP型析出物が減少し、靱性と
強度を損なう。したがって、添加する場合のW含有量
0.01〜3%とするのがよい。好ましい範囲は0.0
1〜2%、より好ましい範囲は0.01〜1%である。
もよいが、添加すれば、介在物を低減させ、鋳造性の向
上に寄与するほか、焼戻脆化や溶接割れを誘因するSを
固定し、靭性の向上にも寄与する元素である。このた
め、必要に応じて添加してもよく、その効果はいずれの
元素も0.0001%以上で顕著になる。しかし、いず
れの元素も0.01%を超えて含有させると、炭化物や
硫化物が増加し、かえって靱性および強度を損なう。し
たがって、添加する場合のCaとMgの含有量は、いず
れも0.0001〜0.01%とするのがよい。いずれ
の元素も、好ましい範囲は0.0002〜0.005
%、より好ましい範囲は0.0005〜0.0035%
である。
ば、焼入性を向上させ、組織を安定にする作用を有する
元素である。このため、必要に応じて添加してもよく、
その効果は0.0001%以上で顕著になる。しかし、
0.01%を超えて含有させると、粒界炭化物の析出を
促進し、かえって靱性を劣化させる。したがって、添加
する場合のB含有量は0.0001〜0.01%とする
のがよい。好ましい範囲は0.0005〜0.015
%、より好ましい範囲は0.001〜0.008%であ
る。
添加しなくてもよいが、添加すれば、いずれの元素も高
温で炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化抑制に寄与す
る。このため、高温での熱処理を必要とする場合など、
必要に応じていずれか1種のみまたは2種以上の複合で
添加してもよく、その効果は、Taについては0.00
2%以上、その他の元素については0.001%以上で
顕著になる。しかし、いずれの元素も0.1%を超えて
含有させると、粗大な析出物を形成し、かえって靱性を
劣化させる。したがって、添加する場合のこれらの元素
の含有量は、Taについては0.002〜0.1%、そ
の他の元素については0.001〜0.1%とするのが
よい。Taの好ましい範囲は0.005〜0.1%、よ
り好ましい範囲は0.01〜0.07%、その他の元素
の好ましい範囲は0.003〜0.05%、より好まし
い範囲は0.005〜0.015%である。
し、いずれの元素も溶接割れや水素割れを助長する。こ
のため、特に、溶接を必要とする場合や、水素割れ、遅
れ破壊などが問題となる用途の場合には、これらの元素
の含有量は可能な限り低い方がよく、Pについては0.
03%以下、Sについては0.015%以下であること
が望ましい。好ましいPの上限は0.015%、Sの上
限は0.003%である。
0.3以上 HCP型析出物とは、前述したように、Mo2C、Cr2
N、M7C3などで、いずれも粒内に微細に析出して析出
強化に寄与する。しかし、下記の(1) 式または(2) 式で
求められるHCP型析出物の析出指数が0.3未満では
その効果が現れない。このため、HCP型析出物の析出
指数は0.3以上とした。
各元素の含有量(質量%)を意味する。
以上であればよく、特にその上限を定める必要はない。
しかし、過剰に大きくするとクリープ延性が低下するこ
とがあるので、その上限は1.5、より好ましくは1.
2とするのがよい。
鋼は、上記の範囲内で、かつ(1) 式または(2) 式を満た
すように成分調整された化学組成を有する鋼を常法に従
って溶製し、次いで熱間加工などを施して所定の製品形
状に成形した後、以下に述べるいずれかの熱処理を施す
ことにより、製造することができる。
ならした後、Ac1変態点以下で焼戻す方法、第2の熱
処理は、Ac3変態点以上から徐冷した後、Ac1変態点
以下で保持する方法、第3の熱処理は、熱間加工をAc
3変態点以上で終了した後、Ac1 変態点以下で焼戻す
方法である。
製し、得られたインゴットを熱間鍛造後、熱間圧延にて
板厚30mmの鋼板とした。次いで、これらの鋼板に、
いずれもAc3 変態点以上の温度である950〜105
0℃の範囲で焼きならした後、いずれもAc1 変態点以
下の温度である650〜740℃の範囲で焼戻す熱処理
を施した。その際、焼戻し処理は、焼戻軟化曲線におい
て二次析出硬化ピークが生ずる範囲で行った。
ら透過電子顕微鏡観察用の薄膜試料を作製し、4万倍の
倍率で観察されたHCP型析出物の析出数も測定した。
P型析出物の析出数と525℃×10万時間のクリープ
破断強度(MPa)との関係を図1に示した。
符1〜6及び9〜17)は、いずれも4万倍での1視野
当たりのHCP型析出物の析出数が12個以上と高密度
に析出しており、525℃×10万時間のクリープ破断
強度が168MPa以上、クリープ破断時の絞り率が8
9%以上で、良好なクリープ強度とクリープ延性を示し
た。
6)は、いずれも4万倍での1視野当たりのHCP型析
出物の析出数が少なく、クリープ強度または/およびク
リープ延性が不芳であった。
含有量とHCP型析出物の析出指数が本発明で規定する
範囲を外れているためにクリープ強度、クリープ延性と
も不芳であった。代符19の鋼は、Cr含有量とHCP
型析出物の析出指数が本発明で規定する範囲を外れるた
めにクリープ強度が不芳であった。代符20の鋼は、M
o含有量とHCP型析出物の析出指数が本発明で規定す
る範囲を外れているためにクリープ強度が不芳であっ
た。代符21の鋼は、HCP型析出物の析出指数は本発
明で規定する範囲内であるものの、Nbを含有していな
いためにクリープ強度、クリープ延性とも不芳であっ
た。
析出指数は本発明で規定する範囲内で、4万倍での1視
野当たりのHCP型析出物の析出数も12個と高密度に
析出していてクリープ強度は良好であるものの、Nb含
有量が多すぎるためにクリープ延性が極度に不芳であっ
た。代符23の鋼は、HCP型析出物の析出指数は本発
明で規定する範囲内であるが、V含有量が多すぎるため
にクリープ延性が不芳であった。代符24の鋼は、HC
P型析出物の析出指数は本発明で規定する範囲内である
が、W含有量が多すぎるためにクリープ延性が不芳であ
った。
本発明で規定する範囲内であるものの、HCP型析出物
の析出指数が本発明で規定する範囲を外れているために
クリープ延性が不芳であった。代符26の鋼は、N含有
量とHCP型析出物の析出指数が本発明で規定する範囲
を外れているためにクリープ強度、クリープ延性とも不
芳であった。
クリープ強度とクリープ延性が良好である。このため、
高温に長時間曝される構造材、特に使用中における延性
低下、熱応力や振動の影響による疲労強度が問題となる
構造材に用いて好適である。
出数と525℃×10万時間のクリープ破断強度との関
係を示す図である。
Claims (8)
- 【請求項1】質量%で、C:0.01〜0.3%、S
i:0.7%以下、Mn:1%以下、Mo:0.7〜3
%、Nb:0.02〜0.08%、N:0.001〜
0.01%を含み、残部は実質的にFeで、かつ下式を
満たす高強度低合金耐熱鋼。 0.65−(15×N)−(0.7×C)−(0.10×Mo)+(0.32×Mo2)
≧0.3 ここで、式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有
量(質量%)を意味する。 - 【請求項2】質量%で、C:0.01〜0.3%、S
i:0.7%以下、Mn:1%以下、Cr:0.1〜3
%、Mo:0.7〜3%、Nb:0.02〜0.08
%、N:0.001〜0.01%を含み、残部は実質的
にFeで、かつ下式を満たす高強度低合金耐熱鋼。 0.65−(15×N)−(0.7×C)−(0.10×Mo)+(0.32×Mo2)
−(0.23×Cr)+(0.04×Cr2)≧0.3 ここで、式中の元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有
量(質量%)を意味する。 - 【請求項3】Feの一部に代えて、質量%で、V:0.
005〜0.5%を含む請求項1または2に記載の高強
度低合金耐熱鋼。 - 【請求項4】Feの一部に代えて、質量%で、W:0.
01〜3%を含む請求項1〜3のいずれかに記載の高強
度低合金耐熱鋼。 - 【請求項5】Feの一部に代えて、質量%で、Ca:
0.0001〜0.01%およびMg:0.0001〜
0.01%のいずれか一方または両方を含む請求項1〜
4のいずれかに記載の高強度低合金耐熱鋼。 - 【請求項6】Feの一部に代えて、質量%で、B:0.
0001〜0.01%を含む請求項1〜5のいずれかに
記載の高強度低合金耐熱鋼。 - 【請求項7】Feの一部に代えて、質量%で、Ti:
0.001〜0.1%、Ta:0.002〜0.1%、
Zr:0.001〜0.1%およびHf:0.001〜
0.1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含む
請求項1〜6のいずれかに記載の高強度低合金耐熱鋼。 - 【請求項8】不純物としてのPとSの含有量が、それぞ
れ、質量%で、0.03%以下、0.015%以下であ
る請求項1〜7のいずれかに記載の高強度低合金耐熱
鋼。
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